実践IT講座 顧客情報管理システムの仕組み 茨城県技術士会情報技術支援プロジェクト 1.顧客管理とは 「これまでにどんな商品を買ってくれた お客さんか」あるいは「どの位の頻度で、 どれ位の額を購入されたか」、を把握し、 一人ひとりの顧客をよく知ることは、企業 の重要な戦略の一つだ。今や資本主義が顧 客主義、更には個客主義とも称されている が、顧客管理は何故必要なのだろうか。 あるデータによれば、顧客が取引を止め る最大の理由は (1) 会社から受けた顧客対応に憤慨したもの (68%) (2) 苦情を会社に伝える者は、たつた 2∼4% (3) 大半は他のブランドに乗り換える (4) 消費者が満足すれば、5∼6 人に伝わる (5) 不満に思えば、9∼10 人に伝える。 顧客管理はこれらを改善するものである。 2.顧客管理で重要なこと 顧客管理で重要なことは、売上が伸びる顧 客管理システムでないと意味がない。 (1) 顧客の接触来歴の記録とその有効活用を図 る。 (2) 顧客の固定客志向の育成をする。 (3) 売上が向上し、顧客が増える仕組みを作る。 であるが、顧客の性格を表わすものとして、 (a) 新規の顧客獲得コストは、既存顧客維持 コストの5∼8倍である。 (b) 平均的な会社は、毎年 20% の割で顧客を 失っている。 れば、最低限日常的な運営はひとまず可能 である。 ここに、いつ何を購入されたかを記録して 顧客の購入経歴を残すことにする。これは 顧客を住所録という点で捉えていたものを 線で捉えて固定客にする近道でもある。 一口に顧客管理ソフトと云っても一万円 以下のものから 50 万円位まである。なかに は広くネットワーで利用できるものまで 各種各様である。 4.最近の顧客管理 情報技術を顧客管理に取り入れ、科学的 に実践していこうとするソリューションと して CRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)や SFA (Sales Force Automation:営業情報支援情報 システム)が導入されつつある。生産過程 を充分合理化したが今なお売上の増加が見 込めない、売れるものが全く予測出来ない、 顧客が見えない状況が続き過去の経験法則 が通用しないことが背景にある。これは間 接部門のバックオフィスではなく、営業部 門のフロントオフィスを改革する必要性を 認識した結果である。フロントオフィスに は、日本的な協調や集団の営業文化があり、 非論理的でありがちになっている。 5.情報の発信とホームページ 企業の商品を顧客に理解してもらう発 信系としてホームページは今や欠かせない ことを認識しなければならない。 ものになった。ここでは FAQ(Frequently 3.顧客リストから顧客接触経歴台帳へ Asked Question 頻繁にでてくる質問に対す 顧客管理の最初は、顧客台帳の作成である。る回答) を充実しておかなくてはならない。 基本的な情報として、 FAQ だけで全てに対応することは出来ない し、多数の顧客を満足することは難しいが、 (1) 顧客の名前、住所、誕生日などの情報管理 サポートセンターに問いかける前に大多数 (2) DM 発行や年賀状などを出すときの印字機能 は Web の FAQ を調べている。顧客シェアで (3) 過去に何を購入したかの情報 が必要である。 同時に顧客からの購入問 はなく One to One marketing が成立する い合わせに即答できる くらいに多くのサービスや情報を提供する。 (4) 商品の在庫情報 これが顧客を固定化し囲い込むことに役立 (5) 商品等の内容、性格、納入実績等の情報 つ。ホームページや電子メールの充実は営 も必要で、(4),(5) は一般に在庫管理シス 業支援に欠かせなくなっている。 テムで取り扱われる。これらを組み合わせ 6.コンビュータと電話の融合 CTI (Computer Telephony Integration) とはコンピュータと電話を統合し業務推 進を支援するシステムである。両者を有 機的に結合し統合化して営業支援をおこ (4) IVR(音声応答装置)機能。コンピュー タの指示により合成音声などで自動的に応 答させ、質問内容により、該当内容の担当 者に転送する。 企業 顧客 電話 SFA(営業情報支援情報システム), CTI (コンピュータ・電話の統合) 顧客管理が One to One に発展している。 バックオフィス フロントオフィス ホームページ カスタマサポート センター FAX により 営業部門 のデータ 製造部門 のデータ 一体化 商品情報 在庫情報 生産管理情報 品質情報 E-Mail 市場調査 双方向通信 営業マン訪問 顧客情報 売上情報 Customer Satisfaction を高めるため Back Office と一体になり、Customer Support Center を運営 する 顧客情報管理システム なうようにしたものである。 1例を挙げよう。多くの場合、クレーム 等の問い合わせは電話でなされるケース が多いが、顧客からの問い合わせを音声 応答システムによって専門家に接続し、 一方において専門家は顧客の購入来歴を 画面に呼び出して、対応を的確・迅速に 応えるようにするものである。従来であ れば、電話を受けてから担当部署に転送 し、場合によっては部署のたらい回しで 顧客の不評を買っていたなどは、CPI を導 入して改善することができる。いくつか のCTI技術を紹介する。 (1) スクリーンホップアップ機能。電話の着信 と同時にコンピュータに蓄積されている 情報を検索し購買来歴などを参照できる 技術 (2) ACD(Automatic Call Distribution) 機 能。着信の電話をオペレータに均等に配分 する機能。チケット予約業務などでオペレ ータの仕事量の均衡を図る。 (3) スケジュール振り分け機能。事前に担当者 のスケジュールを登録しておき、当人に電話 がかかってきた場合、電話を転送する機能。 顧客に最も近い事務所に転送することもで きる。 (5) Webコールバック機能。Web閲覧中に顧 客が Webのボタンを押すと伺いの電話がかかり、 顧客とオペレータが同一の画面を見ながら電 話で話しができるもの。 7.カスタマサポートセンター CRM を論じる場合、往々にしてフロント オフィス系の議論になりがちであるが、 企業にとって重要なデータはバックオフ ィス系にある。これらの情報は長い間の 努力で構築されたもので、商品情報、生 産管理情報、在庫情報等の情報が営業支 援情報として活用できるシステムにしな くてはならない。外部の情報を如何に分 析し営業の支援をするか、が重要で双方 向通信を基軸に、顧客の獲得・維持、生 産性の向上、情報収集と営業支援が主業 務になる。これを効果あらしめるために、 カスタマサポートセンターを設立するこ とは効果的である。 営業を第1にすれば、店頭は第2、ア フターサービスが第3、そしてサポート センターは第4のフロントオフィスであ る。 (社)日本技術士会茨城県技術士会 情報技術支援プロジェクト 頗羅墮(はらだ) 彰 ホームアドレス http://www.icea.jp 問い合わせメールアドレス info@icea.jp
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