Technical Article OBD 、AUTOSARに出会う ∼AUTOSARベーシックソフトウェアへのOBD機能の統合で、診断の実装がシンプルに∼ パワートレインのハイブリッド化に伴い、OBD(on-board diagnostics:オンボード診断システム)に関連するECUの 数は増加の一途をたどっています。その結果、標準化されたソリューション、つまり理想的にはAUTOSARに基づく ソリューションへの要求が一層高まっています。本稿では、AUTOSARベーシックソフトウェアにどのようなOBD機能が 統合されるのか、そしてそれらがどのようなユースケースに対応するのかについて解説します。 OBDの背景 運転者への警告表示を制御します。 「プライマリー ECU」は局所 的なデータを自身のフォールトメモリー内に記録するECUで、ス 近年、内燃機関搭載車に課せられる排気ガス規制の厳格化 キャンツールとの通信も行います。 「セカンダリー ECU」は排気 が進んでいます。数年に及ぶ車両運用の期間を通してこの規制 ガス浄化に関する処理を実行しますが、これらは格納が必要な を順守するには、オンボード診断システムでコンポーネントやシ データを常にプライマリー ECUやマスター ECUに送信します。 ステムをモニターし、障害のない動作を実現しなければなりま コンポーネントとシステムをモニターする機能は2つのカテゴ せん。このようなオンボード診断システムは、カリフォルニア州 リーに細分化されます。 「主要モニター」は排気ガスの値に直 大気資源局 (CARB:Californian Air Resources Board) が 接影響するシステムを対象とするもので、これには燃料噴射装 1988 年型車両を対象に策定したOBD Iで初めて要求されまし 置および排気ガス再循環システム、触媒コンバーター、粒子状 た。これに続くOBD II では、1996 年型車両を対象として、故障 物質除去フィルターが含まれます。 「包括的コンポーネントモニ 診断コード (DTC:Diagnostic Trouble Code) と外部スキャン ター」では、主要モニターに必要なシステムや、排気ガスに間接 ツールの接続コネクターの標準化が図られました。この標準は 的に作用するシステムがチェックされます。これには回生ブレー EUで広く採用され、ヨーロッパの 2001 年型以降の車両を対象 キ、バッテリー管理、空調制御などのシステムに関連した機能が に、EOBDとして義務化されました。 含まれます。 通常、1台の車両には3つのクラスのECUが定義されています。 「マスター ECU」は主要データを収集・処理し、供給するほか、 October 2013 1 Technical Article 固有のサービスを実装します ( 図 1)。しかも、OBD のリクエスト はUDS (Unified Diagnostic Services) のリクエストよりも高 い優先度で、またはそれと並行して処理されます。DEMモジュー ルにも、UDS の機能に加えて多彩なOBD 拡張が含まれます。こ れにはUDSとは異なるDTC 記録方式や、Permanent DTC の格 納、フリーズフレームデータの保存、IUMPR (In Use Monitor Per formance Ratio) の計算などが該当します。さらに、DEM モジュールはPID $21 の「 Distance travelled while MIL is activated」といった補助的なデータも提供します。FIMモジュー ルと組み合わせれば、特定の異常が検出された時点でIUMPRカ ウンターの加算を直ちに無効化できます。 図1:DCMモジュールのOBD固有の拡張には、9個のサービ スが新たに含まれます DEM、DCM、FIMモジュールの量産化可能なOBD拡張は、ベク ターの AUTOSAR 4 ベーシックソフトウェアですでに利用が可能 となっています (図2)。これはAUTOSAR 3のソリューションにも 統合できます。ベクターは現在、自動車メーカー 5 社について、 AUTOSARベーシックソフトウェアの一部となるOBD機能 各社独自の修正を加えたOBD機能を提供しています。 電動アシスト駆動の急速な普及により、包括的コンポーネン トモニター機能を持つプライマリー ECUもその数を増していま す。とすれば、こういったECU のための OBD 機能を標準のソフト ウェアの枠組みに実装する足掛かりは作っておくべきではない 本稿は2013年10月発行のATZ extra (10 Years AUTOSAR)に掲載 されたベクター執筆による記事を和訳したものです。 でしょうか。AUTOSARはDCM (Diagnostic Communication M a n a g e r ) 、D E M ( D i a g n o s t i c E v e n t M a n a g e r ) 、F I M (Function Inhibition Manager) の各モジュールに実装すべき OBD機能を規定しています。それらはOBDの標準と指令の規定 提供元: 見出し画像/図1および2:Vector Informatik GmbH を相当レベルまで参照していますが、具体的な実装はソフトウェ アの供給元が自動車メーカーと協力して定義しなければなりま リンク: せん。 ベクター・ジャパン http://www.vector-japan.co.jp DCMモジュールは$04の「Clear/Reset Emission-Related DTCs」や$09の「Request Vehicle Information」といったOBD 図2:OBDはすでにDEM、 DCM、FIMの各モジュール で使用可能です October 2013 2 Technical Article 執筆者: Thomas Necker(Dr. Ing.) 組込ソフトウェア分野のチームリーダーと して、診断モジュールとその OBD拡張の 開発を担当しています。 Oliver Garnatz (Dipl. Ing.) 組込ソフトウェア分野のプロダクトマネー ジャーであり、AUTOSARのほか、自動車診 断分野のISOのメンバーも務めています。 ■ 本件に関するお問い合わせ先 ベクター・ジャパン株式会社 営業部(組込ソフトウェア関連製品) TEL: 03-5769-7808 E-Mail: EmbeddedSales@jp.vector.com October 2013 3
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