III-V 化合物半導体のキャリアを用いたメタマテリアルの共振周波数変化 Carrier Induced Resonance Frequency Change in Metamaterial Loaded III-V Semiconductor 東京工業大学 電気電子工学専攻 1,量子ナノエレクトロニクス研究センター2,理化学研究所 3 ○ 明賀 聖慈 1, 雨宮 智宏 2 ,石川 篤 3, 西山伸彦 1, 田中 拓男 3, 荒井 滋久 1,2 1Department of Technology, 3Metamaterials Laboratory, RIKEN (The Institute of Physical and Chemical Research) Seiji Myoga1, Tomohiro Amemiya2, Atsushi Ishikawa3, Nobuhiko Nishiyama1, Takuo Tanaka3, Shigehisa Arai1,2 E-mail: myoga.s.ab@m.titech.ac.jp, amemiya.t.ab@m.titech.ac.jp, http://www.pe.titech.ac.jp/AraiLab/ 2.デバイス構造とシミュレーション結果 本研究では、化合物半導体 GaInAs 上に微細金 属共振器アレイを配置し、半導体のキャリア濃度を変 化させることで、メタマテリアルの特性を制御すること を考えた。まず、キャリアの散乱モデル(合金散乱が支 配的となる)から半導体の導電率を導出し、その後、 有限要素法電磁場解析および均質化理論を用いて 透磁率の変化を解析した。計算結果を Fig. 1 に示 す。半導体のキャリア濃度が高くなるにつれ、半導体部 分の導電率が増加し、メタマテリアルの共振周波数が 30THz から高周波側(50THz 程度)へシフトする。 3.実験結果 上記理論解析に基づいて、実際に素子の作製を 行った。OMVPE により、半絶縁性 InP 基板上に 150 nm 厚 の GaInAs 薄膜を成長した後、その上に Au 40 nm / Ti 10 nm の微細 U 字形リングアレイを電子 ビーム描画および lift-off プロセスを用いて作製した。 今回は、GaInAs のキャリア濃度が異なる 2 種類 (ND-NA=5×1016 cm-3 ;ノンドープ、ND-NA=2×1019 cm-3 )の試料を用意した。 作製した素子の FT-IR 透過スペクトルを Fig. 2 に 示す。縦軸は、構造を持たない同じキャリア濃度の基 板に対する透過率であり、微細共振器の特性変化の みを抽出した。実験では、偏光に対する依存性を測 定するため、共振器リングのギャップに対する入射電 界の向きが、垂直(Fig. 2a)および水平(Fig. 2b)にな るよう調節した。透過強度の減少が観測される周波 数で、作製した U 字形リングの共振が起きていると考 えられる。Fig. 2 より、ノンドーピングの場合に比べて、 高ドーピングを施した場合の共振周波数が高周波側 へシフトしており、理論解析で得た傾向と一致する結 果が得られている。 謝辞 本研究は文部科学省科学研究費補助金 (#19002009, #22360138, #21226010, #21860031,) の援助により行われた。 <参考文献> [1] W. Cai et al., Opt. Express 15, 3333 (2007). [2] W. J. Padilla et al., PRL 96, 107401 (2006). [3] T. Driscoll et al., APL 93, 024101 (2008). 4 Real part of effective µr 1.はじめに 近年、金属や誘電体でできた微細構造体を空間 に分散させたメタマテリアルを用いることで、高周波 帯域において誘電率や透磁率の制御を目指す研究 が盛んに行われている。現行の研究の多くは、その静 的特性を調べることに特化しており、光通信帯・可視 領域までの動作が実現されている[1]。しかし、将来の デバイス応用なども見据えると、メタマテリアルを何ら かの外部信号によって制御すること(動的制御)が必 要不可欠である。これについては、半導体の電気光 学効果[2]や酸化物の熱伝導効果[3]などを用いた、 いくつかの報告があるが、いずれも 10 数 THz 領域で の動作となっている。 本研究では、光通信帯域でのメタマテリアルのデ バイス応用を目指し、化合物半導体のキャリア濃度変 化を利用した動的制御の可能性を検討した。具体的 には、GaInAs 上に金属微細共振器構造を装荷した 構造において 50THz 近辺での透過スペクトルの変 化を観測したのでご報告する Imag part of effective µr ○ of Electrical and Electronic Engineering, 2Quantum Nanoelectronics Research Center, Tokyo Institute N=1×1018 cm-3 N=5×1018 cm-3 N=1×1019 cm-3 3 2 1 0 -1 -2 4 20 30 20 30 40 50 60 50 60 3 2 1 0 40 frequency [THz] Fig 1. Calculated real and imaginary parts of the effective permeability of gold-based SRRs on GaInAs layer with the different carrier concentrations. Fig. 2. Transmission spectra of gold-based SRR array fabricated on GaInAs/InP. Insets show the polarization configuration of the incident electromagnetic field.
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