技術内容説明書

技
術
内
容
説
明
書
技 術 の 名 称 蒸気廃熱回収装置「エコ・モルダー」
申
請
者 株式会社ビクター特販(豊中市上津島2丁目18番20号)
連
絡
先 代表取締役社長 平田 弘昭
TEL: 06-6863-3666 FAX: 06-6863-3681 E-mail: hirata@lc-victor.com
①
技術・製品について
■技術・製品の概要

本製品は、水蒸気が熱源として使用された後に凝縮して生成される高温の水(以下「ド
レン」という。
)を、再度熱源として利用するものであり、既存の蒸気配管に接続して
使用する。

主としてクリーニング工場・リネン工場での利用を想定しているが、ボイラーで生成
する水蒸気を熱源として使用する施設全般(食品製造工場など)で利用可能と考えら
れる。
■原理
クリーニング工場等では、ボイラーで生成した高温の水蒸気を乾燥機やプレス機等の熱
源に使用している場合が多い。
乾燥機は、金属管の集まりである「熱交換器」とファン(送風機)で構成される。ボイ
ラーで生成した高温の水蒸気は、熱交換器の金属管内に送られ、金属管内側の水蒸気から
外側の空気に熱が移動することで、外側の空気が熱せられる。熱せられた空気は、送風機
によって熱風となり、洗濯物の乾燥に用いられる。一方、内側の水蒸気は、熱を失い一部
が凝縮して高温の水である「ドレン」となる。(図1)
ファンからの送風
熱交換器
高温水蒸気
高温水蒸気+ドレン
熱風
(洗濯物乾燥に使用)
図1 乾燥機の模式図
本製品は、以下の原理によってドレンを熱源として利用するものである。
① ドレンの吸引回収
熱交換器の蒸気出口からエゼクター※ と呼ばれる機構によってドレンを吸引し、
本体タンク内に導く。
※エゼクター:流体を高速で噴射し、その勢いによって周囲の流体を吸引する機構
② 除鉄(鉄錆の除去)
本体上部に設置した永久磁石で、吸引回収したドレンから鉄錆を除去。
③ 温度制御
除鉄したドレンに、水道水等と混合し、あらかじめ設定された温度の温水にする。
水温は、常温~95℃の間で設定できる。
水温が設定温度を超えた場合、温水を一部排出した後、水道水等を供給すること
で、水温を制御する。
本体タンク内の水量の調整は、水位の変化に合わせてボールタップで弁を開閉し
て行う。
④ リザーブタンクの利用
本製品を別売りのリザーブタンク(予備タンク)と接続すると、本体と異なる
温度の温水(水道水の温度~本製品で生成した温水の温度の間)を生成でき、様々
な温度の温水のニーズに応えることができる。
本体とリザーブタンクを図2のように上下二か所で接続すると、本体とリザー
ブタンクの水の温度差によって自然対流が生じ、その結果リザーブタンク内の冷
水は、本体の温水と混ざり合って加熱される。
リザーブタンクの水が目的の温度に達したら、本体とリザーブタンクの間の弁
を閉じることで必要以上に加熱されないようにする。
図2 リザーブタンクの原理

特許取得済。
(特許第 5187707 号 平成 25 年 2 月 1 日登録)
■特徴・長所
①
ボイラーにおけるエネルギー使用量の削減
本製品は、高温の水であるドレンを熱源として様々な用途に利用できるようにするもの
である。
ドレンは、それ自体高温であるため、ボイラー給水に使うと、常温水道水のみを使う場
合に比べ、ボイラーにおけるエネルギー使用量が削減できる。また、洗濯用温水として使
用しても、水道水の加熱に必要な水蒸気量を減らすことができ、その結果ボイラーにおけ
るエネルギー使用量の削減につながる。
②
スチームトラップ故障がもたらす様々なトラブルの軽減
乾燥機等の中にある熱交換器を構成する金属管の内側は、ドレンと水蒸気が混じった状
態になっているが、ドレンは熱交換効率を落とす原因となるため、熱交換器出口には、水
蒸気の排出を抑えつつドレンを速やかに排出する部品である「スチームトラップ」を設置
するのが一般的である。
スチームトラップがひとたび故障すると、ドレンだけでなく本来熱交換器内に閉じ込め
て熱源として利用すべき水蒸気も排出してしまい、エネルギーが無駄に消費されることに
なる。また、その際に生じる白煙が付近住民の苦情の原因となることもある。
さらに、ドレンとともに排出された高温の水蒸気によって、ドレン回収タンク内の水温
が著しく上昇して沸騰しやすくなり、ボイラー給水ポンプの上流側配管内のドレンに気泡
が生じる。その結果、ボイラーにドレンを圧送するポンプにおいて「エアーがみ」と呼ば
れる現象が生じ、定められた流量でドレンをボイラーに送り込めなくなり、ボイラーが停
止する恐れもある。
また、ボイラー本体の腐食等を防ぐための薬剤である「清缶剤」は、通常ボイラーへの
給水ポンプに連動してボイラー水に投入されるが、エアーがみが生じると水量に対して過
剰に清缶剤を投入されることになり、ボイラーや配管の故障の原因になる。
一方、スチームトラップは、故障の予測が困難である。
本製品があれば、スチームトラップが故障してドレンと共に水蒸気が排出されたとして
も、本製品の温度制御機能によって水蒸気が混じらない一定の温度の温水に変えることが
できるため、これらのトラブルを軽減することができる。
洗濯機
乾燥機
プレス機
白煙発生
水蒸気漏出
ドレン
ドレン回収タンク
ドレン
ストレーナ
(濾し器)
ポンプ
エアーがみ
清缶剤過剰投入
ボイラー停止
ボイラー
スチーム
トラップ
水蒸気
故障
ドレン温度急上昇
※スチームトラップが故障する
と、ドレンと共に水蒸気も排出さ
れ、エネルギーロスとなるだけで
なく、その他様々なトラブルを誘
発する。
本製品を使用してドレンを回収すると、これらのトラブルが軽減できる。
図3 スチームトラップの故障に伴うトラブル
③
除鉄機能
ボイラー本体や熱交換器の素材は金属であるため、ドレンには鉄錆が混入することが多
い。
本製品では、ドレンをボイラー給水や洗濯用温水など幅広い用途に使えるよう、永久磁
石によってドレンから鉄錆を除去している。また、ドレンに混入した鉄錆は、ポンプの故
障などの原因となるため、本製品は、これらのトラブルの軽減にも貢献できる。
永久磁石は本製品上部の開閉蓋から取り出すことができ、付着した鉄錆はティッシュペ
ーパー等で簡単に取り除くことができる。
使用前の永久磁石
使用後の永久磁石
鉄錆の粉が磁石に付着
②
環境性能に関する事項
■環境保全・改善効果
本製品を既存の蒸気配管に接続することで、省エネルギー効果が期待される。
省エネルギー効果は、ドレン排出量や本製品で生成する温水の用途によって大きく異な
り試算が困難である。
そこで、導入事例の実績を以下に示す。
【条件】
導入した装置の
機種・台数
エコ・モルダーVEW1台及びリザーブタンク2台
導入先
リネン工場(大阪府寝屋川市)
導入先施設の
ボイラー(水蒸気供給能力 750kg/hr)を5台設置。
規模
洗濯機、乾燥機、プレス機を多数設置。
時期
備考
2011 年 11 月~2012 年 10 月(本製品導入後)
2009 年 11 月~2010 年 10 月(本製品導入前) を比較
本製品で生成する温水は、洗濯用水に使用。
リザーブタンクは、1台のみ稼働。
以上の条件で、エコ・モルダーの導入前後で商品(リネン)1000 点あたりの都市ガス使
用量を比較したところ(図4)
、エコ・モルダーの導入後のガス使用量は導入前と比べ 11%
減少した。
図4 エコ・モルダー導入前後のガス使用量の比較
また、商品 1000 点あたりのガス使用量の年間平均は、
エコ・モルダー導入前:30.453m3/商品 1000 点
エコ・モルダー導入後:27.388m3/商品 1000 点
であり、削減割合は約
11%であった。
■副次的な環境影響
特になし。
③
経済性
■初期経費と運転・維持管理費

本製品には、貯水能力や付属ポンプ台数の異なる4機種がある。
型式
エコ・モルダー
エコ・モルダー
エコ・モルダー
エコ・モルダー
VESK
VES
VEW
VET-4
180L
220L
220L
360L
1台
1台
2台
1台
ポンプ電源電圧
200V
200V
200V
200V
ポンプ消費電力
0.75kW
0.75kW
1.5kW×2
3.0kW
¥1,430,000
¥1,635,000
¥2,278,000
¥3,450,000
貯水能力
ポンプ台数
価格※
※
価格は、平成 25 年 11 月時点のもの。今後変更することがある。

耐用年数については、本製品の前身モデルで 10 年以上の実績があることから、本製品
も同程度の耐久性を有すると考えられる。

投資回収年数
装置機種
初期経費
装置価格
A 工場
エコ・モルダーVEW1台+
リザーブタンク2台
本体:
¥2,278,000
リザーブタンク2台: ¥1,500,000
維持管理費
設置工事及び
カスタマイズ費
合計
ガス使用量削減
(実績値)
年間ガス代削減
※
投資回収年数
※
年間のガス代は、¥90/m3
B 工場
エコ・モルダーVESK1台
¥1,430,000
¥1,710,000
¥1,042,000
¥5,488,000
¥2,472,000
△37,593m3
△24,000m3
△¥3,383,000
△¥2,160,000
1.62 年
1.14 年
として算出
■従来技術との経済性比較
従来技術としては、間接加熱式の熱交換器を用いるものが考えられる。
ドレンと直接混合して温水を供給する本製品は、間接加熱式の熱交換器を用いてドレン
から温水を供給するものに比べ、エネルギー効率は高いと考えられるが、当社はその定量
的データを持ち合わせていない。
また、従来技術や他社製品には、本製品のように温度を調整してドレンから温水を供給
するものは、見当たらない。
このようなことから従来技術との経済性比較は困難である。
④
その他
■技術・製品に対する法規制及び関係法令
特になし。
■品質管理体制等
ISO9000 シリーズ等の品質マネジメントシステムの認証は受けていないが、本製品のト
ラブルが顧客側で発生した際、当社が自ら調査し技術的課題を明確にして対応する体制を
構築している。
■販売実績
販売数量 7 台(平成 22 年~平成 25 年 11 月現在)
売上高 ¥8,361,914
エコ・モルダ-VESK
【除鉄機能・温度制御装置付ドレン吸引回収装置】
エコ・モルダ-VES
【除鉄機能・温度制御装置付ドレン吸引回収装置】
エコ・モルダ-VEW
【除鉄機能・温度制御装置付ドレン吸引回収装置】
エコ・モルダ-VET-4
【除鉄機能・温度制御装置付ドレン吸引回収装置】