57-214 2011.3.5 羽田 成田 HP http://www.jalcrew.jp/jfu/ E-MAIL jfu@jalcrew.jp TEL FAX TEL FAX 03-6423-2461 03-5757-0279 0476-34-3932 0476-34-6684 不当解雇撤回 乗員裁判 第一回口頭弁論 原告意見陳述 3月3日の運航乗務員原告 第一回口頭弁論において、原告側弁護士、原告代表が意見陳述を行い、 裁判官に対して、力強く訴えました。 稲森会長の「160 名を残す事が経営上不可能かというと、そうではない」の発言は、違法不 当な解雇であった事を経営自ら認めたものです。一体、私たちの解雇は何だったのか? 〈以下、原告 飯田機長による意見陳述全文〉 私は 1975 年、運輸省航空大学校を卒業、翌 76 年に小型機の会社に入社し、機長 として航空業務に携わりました。その後、1979 年に日本航空に入社、B747 の航空 機関士、副操縦士を経て、2003 年、B747 の機長となり、2008 年には B777 の機長 となりました。総飛行時間は 12,048 時間 29 分となっています。 航空会社の経営基盤は何を置いても「安全運航」である事は言うまでもありませ ん。2009 年、柳田邦男氏を座長とする日航外アドバイザリーグループが出した提言 書「守れ、安全の砦」の中では次のように述べられています。 「財務状況が悪化した時こそ、安全の取り組みを強化するくらいの意識を持って『安 全の層』を厚くすることに精力を注がなければならない。決して、『安全の層』を薄 くする事で、コスト削減を図ってはならない。薄氷を踏みながら航空機を運航する エアラインを、誰が選択するだろうか」 昨年 9 月 23 日、私はシンガポールからの 710 便で成田国際空港に着陸しました。 その 2 日後の 9 月 25 日に出された 10 月の乗務割を見て愕然としました。本来ある べきフライト予定が一切書かれていませんでした。それ以降、私には一度のフライ トもアサインされないまま、60 日後の 11 月 23 日には、乗務資格を失いました。そ のままでは法令に基づく社内規定により、乗務資格を失う事を承知の上で、会社は フライトを入れて来ませんでした。更に、会社は人選基準に基づいて解雇対象と定 めたパイロットに対して、面談を実施すると通告してきました。面接担当の職制は 私に対し「社内に君の活躍する場所はもう無い」「整理解雇の時には、君はその対象 となっている」「先輩としていうが、今、退職一時金等、貰うものをもらった方が良 いと思うよ」と発言し、ひたすら退職を促すもので、実質的に退職を強要するもの となっていました。“本人に何の理由も示されないまま、パイロットが飛行機を取り 上げられ、命綱であるフライトをする資格も失ってゆく、そしてその中で、様々な 退職の強要が行われて行く”、この時の、得も云われぬ絶望感をどの様に伝えたら良 いのでしょうか。 昨年 10 月に行われた、この退職を強要する面談は、個人個人の人生を破壊したと いう事に留まらず、「安全運航」という点においても大きな影を落としました。私の 面接を実施したのは、私と同じ B777 の機長でありましたが、これは「乗員」が「乗 員」に退職を強要するという、日本航空の長い歴史の中でも始めての事態となりま した。日々、同じコックピットの中で乗務する自分の上司が、その部下に向かって 解雇を言い渡すという事態は異常であり、それを目の当たりにした、解雇対象とな っていない若いパイロットにも大きな衝撃を与えました。その結果、職場は一変し “頑な雰囲気”となり「物言えぬ職場」となってしまいました。何十年も掛けて丁 寧に築き上げられてきた、安全にとって何よりも大切な環境である乗員同士の、そ して現場乗員と会社組織との信頼関係が、一気に崩れ去ったと云っても過言ではな いと思います。 この一年間、管財人そして稲盛会長を始めとする新経営が示してきた経営姿勢を 観ると、会社再建という困難な状況を勘案したとしても、寄って立つべき、安全運 航を堅持しなければならないという「強い意思と見識が極めて稀薄である」と考え ます。具体的な安全施策を示さないまま、表面的に何度も繰り返される、管財人か らの「安全運航は当然だ!」という強い口調に、私は運航の最終責任者として、大 きな不安を禁じ得ませんでした。 私は 36 年に渡り、パイロットとして様々な経験を積んで来ました。小型機のパイ ロット時代には、私を指導してくださった教官が、経営からの強引な飛行計画が原 因で、離陸直後に墜落するという事態に直面しました。日本航空に入ってからも、 羽田沖事故、123 便事故を始めとする悲惨な事故や、多くの困難な状況を経験して きました。「安全なフライト」というのは一朝一夕でつくり上げる事はできません。 「安全」とは、過去の教訓を生かし、尐なくとも同じ原因での事故は起こすまい、 という、地道で堅実な努力の中で守られ、向上して行くものです。この度の整理解 雇という事態は、その中で行われてきた具体的な内容を観て行きますと、過去の日 本航空の現場で、先輩乗員達が築き上げてきた安全運航の基盤を、根底から覆す内 容が数多く含まれていることを、正面から指摘せざるを得ません。 一例を挙げますと、今回、会社が一方的に提示した整理解雇の人選基準の中では、 機長は 55 歳以上、副操縦士は 48 歳以上を解雇の対象としています。この年齢の高 いパイロットを解雇対象とする人選基準は、世界的な常識から観ても、余りに無謀 なものといわざるを得ません。ベテラン乗員は、幾度となく悪天候を始めとする様々 な、そして多くのトラブルを乗り越え、日本航空の安全運航を最前線で支えてきた 「百戦錬磨のベテラン」であります。 また、日々の乗務の場は、副操縦士にとっては機長に向けた演錬の場ともなって います。その場での熟練した機長の経験に裏づけされた教育・アドバイスは大変に 貴重である事は云うまでもありません。長年、日本航空が培ってきた様々な技術・ 精神を伝承するという意味からも、安全運航の基盤となっています。 ベテラン乗員は、その存在の大きさが認められているからこそ、世界中の乗員から “ベテラン乗員の解雇はエアラインにとって自殺行為だ”という発言が出されてい るのです。 病気欠勤や制限乗務の解雇基準については、その対象者のほとんどが、身体検査 に関係して病欠した者達などで、決して就労できない者達ではありません。これは 航空法に定められた、安全対策としての身体検査などを、「儲ける体質」をつくるた めの道具として利用した、ということです。これは法の目的を明らかに逸脱してお り、航空身体検査に寄せる乗員の信頼を大きく傷つけました。更には、現在乗務を 続けているパイロットに対しては、“体調が悪くても申告をしてしまうと、将来、解 雇につながるのではないか”という「疑心暗鬼」を生み、不安全要素となる極めて 不健全な職場状況を、会社自らが作ったと云わざるを得ません。 世界 100 カ国、十万人を超えるエアライン・パイロットを代表とする IFALPA(国 際定期航空操縦士協会)は即座に声明を発表しました。そこには「日本航空の人選基 準は国際標準からかけ離れており、航空安全と密接なかかわりを持っている」と述 べ、日本航空のパイロットに対しては、必要なあらゆる援助を行うと表明していま す。 先程、代理人が申し述べました通り、日本航空の経営状況を観ても、人員の削減 目標は達成され、営業利益も史上最高を計上するに至っています。これは、いわゆ る「整理解雇の高度な必要性」は無いという事を意味しています。 2 月 8 日の稲盛会長の「160 名を残す事が経営上不可能かというと、そうではない」 との発言は、違法・不当な解雇であった事を経営自らが認めたものです。 一体、私達の解雇は何だったのか、そして、私達と家族の深い苦しみをどの様に考 えればよいのか、社員とその家族の人生を全くかえりみない経営姿勢に、強い怒り を覚えます。 この度の日本航空の破綻の原因は明らかであり、社員に原因と責任は全くありま せん。これは 2009 年 11 月 13 日の団体交渉の場で、安中常務取締役は経営危機に ついて、「経営に責任がある。社員に責任はない」と明確に認めています。不健全な 航空行政、日本航空の放漫経営、これらの問題が今回の裁判の中で明らかにされな ければ、「真の日本航空の再建」には繋がりません。 忘れてならない点は、その航空政策、放漫経営が、長年に渡る現場乗員からの問 題指摘、是正要求を無視して強行され続けてきたという事実であります。 昨年 1 月 19 日、破綻して以降、多くの困難を乗り越えながら、現場で安全運航を 支えている乗員の頑張りは、本当に、特筆すべきものです。私達原告 74 名は、長年 積み重ねてきた知識・技術・経験を発揮し、運航の現場で最大限の努力を傾注する 強い意思を持っております。全社員が一致団結して再建に立ち向かう姿勢を内外に 示し、営利最優先ではなく、利用者・国民の期待に応え得る、安全安心を守る日本 航空の健全な発展の為には、すみやかに「整理解雇」が撤回され、私達の能力を十 二分に発揮することの出来る「現職復帰」が実現されるべきです。裁判所に於かれ ては早期に公正な判断を下されることをお願い申し上げます。 稲盛会長:「160 名を残す事が経営上不可能かと いうと、そうではない」(2月8日 記者会見 ) 経営上必要のない解雇はただちに撤回を!! 次回 第2回口頭弁論 4 月18日 東京地裁 103号特大法廷 15:30開廷 職場からの参加をお願いします!(集合時間は別途お知らせします) 客室乗務員原告 第1回口頭弁論 集合:12:30 3月11日 東京地裁 103号特大法廷 地裁前(地下鉄霞が関駅A1出口) 地裁前宣伝行動後、14:00開廷。傍聴券は裁判所による抽選になります。 (抽選は 13:10~13:40 に行われます)
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