Bridgestone World Solar Challenge 2013 記者報告会 工学院大学ソーラーカープロジェクト Kogakuin University Solar Vehicle Project 2013年10月28日 Team member 学生34名 (4学科+大学院、1年生~大学院生) 海外遠征組 選抜11名 (残る23名は日本で天気予測等を行った) 監督 濱根 洋人 メカニック・CFRP 坂井 聡美 学生リーダ ドライバ・電気 齋藤 翔 メカニック・設計 行方 吾一 ドライバ 広報 稲葉 亮太 メカニック・設計 小島 弘也 ドライバ・メカニック 長澤 拓 電気・CFRP 池田 賢司 ドライバ・CFRP 渡邊 涼介 電気・戦略 吉村 嘉織 戦略 平間 雄輔 戦略・広報 榎本 浩之 2 本チームの特徴 設立5年目 世界大会に初出場 2009年 初のソーラーカープロジェクトが設立 2011年 国内大会で準優勝 2012年 国内大会でソーラーカー部門優勝 2013年 世界大会へ初出場 3 本チームの特徴 学生が自ら、企画・設計・製作まで行う 学生 企画~製作の期間 約11か月間 (2012年9月~2013年8月) 支援 サポート企業様・団体様 大学 学生、製作時のビデオ 自らの 手で!! 4 サポート企業・団体 5 Bridgestone World Solar Challenge 2013 世界最高峰のソーラーカーレース 1) 2年毎に開催 2) DarwinからAdelaideまでの約3000km ⇒9つのコントロールストップに停車 3) 今大会は40チーム(23か国)が参加 4) 企業チームも参加 (学生チームだけではない) 5) 3つのクラス ・ チャレンジャークラス ・ クルーザークラス ・ アドベンチャークラス 6 Classes 本チームは、チャレンジャークラスに出場 Max. Length: 4.5mt Max. Width: 1.8mt Max. Solar Array: 6^m Wheels: 4 Driver: 1 Stages: Single stage Darwin to Adelaide Wheels: 4 Driver / Passenger: 1 / 1 both facing forwards Stages: Over-night charging at selected locations Max. Length: 5.0m Max. Width: 1.8m Max. Solar Array: 6^m Wheels: 3 Driver: 1 Stages: Two Stages 7 Vehicle specification 車体諸元 車名: Practice (驍勇) 全長 全幅 全高 車両重量 トレッド 巡航速度 最高速度 4,500mm 1,800mm 1,100mm 151kg 1,000mm (前輪) 900 mm(後輪) 75~80km/h 155km/h 太陽電池 Sunpower 変換効率22.6%, 面積6m2 ブリヂストン EVAフィルム(EVA-SKY)でラミネート MPPT 柏会 分散MPPT 15チャンネル モーター ミツバ ブラシレスDCダイレクトドライブモーター 軸受 NTN セラミックボールベアリング (4輪すべてに使用) バッテリー ENAX リチウムイオン電池、21kg 5.0kWh ボディ及び材料 タイヤ ブレーキ 帝人 炭素繊維(テナックス) GHクラフト、東邦テナックス ブリヂストン Radial R16 4輪 油圧ディスク& 回生ブレーキ 8 1号機を改良した新車両 1号機(チーム設立時) 2号機(新車両) 車名: Practice (驍勇) ⇒ 実用性と安全性を重視したコンセプト 9 Final result -Challenger Classトレーラで運び。残念ながら、3022kmを完走できなかった。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Nuon Solar Car Team Tokai University Solar Team Twente Stanford Solar Car Project Solar Energy Racers Punch Powertrain Solar Car Team Team Arrow Blue Sky Solar Racing University of Michigan Onda Solare トレーラ運用 UWS Solar Car Kanazawa Institute of Technology EAFIT-EPM Solar Car Team Kogakuin University KUST SunSPEC ITU Solar Car Team Ecole de Technologie Superieure Sun Shuttle Jonkoping University Solar Team ITS Solar Car Racing Team UMP Solar リタイヤ Cambridge University Eco Racing オランダ 日本 オランダ アメリカ スイス ベルギー オーストラリア カナダ アメリカ イタリア 到達時間 33hrs 3min 36hrs 22min 37hrs 38min 39hrs 31min 40hrs 13min 40hrs 28min 43hrs 38min 45hrs38min 45hrs 55min 48hrs 25min オーストラリア 日本 コロンビア 走行距離 (km) 2891 2564 2505 日本 韓国 シンガポール 1676 トルコ カナダ 中国 スウェーデン 1301 インドネシア 748 マレーシア イギリス 平均速度 (km/h) 90.71km/h 82.43 79.67 75.86 74.54 74.08 68.71 65.71 65.29 61.92 常に100km/h以上で走行 しないとこの速度にならない 2450km 2013 1613 1530 1398 616 10 本戦の考察 Day 天気 走行距離 トランスポータ 消費 出来事 Day1 10月6日 晴れ 480km 0km 消費大 消費が大きい原因が見つからない。指令車パンク、 人数少なくメディア報告を断念。トランスポータ運 用をオブザーバから知らされる 苦戦 Day2 10月7日 晴れ 390km 120km 改良を続ける 空力改善に全力をつくす(ダクトを装着とサス調 整)。オブザーバ体調不良。発電1360Wの最高 値を計測 Day3 10月8日 晴れ 390km 210km 改良を続ける 空力改善に全力をつくす(後輪ホイルハウスを外 す、サスを調整)。指令車パンク。 Day4 10月9日 晴れ 強風 575km 14km 消費回復 空力回復。カナダ トロント大学のトランスポータ が本チームのソーラーカーの直前で横転。あわや 衝突の危機。4号車のパンク。 車外温度42度。 パトランプが強風で飛ぶ。パトランプが高温で焼き つく。 回復 Day5 10月10日 曇り・雤 超強風 310km 230km 天気荒れる 悪天候苦戦 Day6 10月11日 曇り 303km 0km 消費回復 回復 計2448km 昨日の改良にも関わらず、台風なみの強風と悪 天候。多数のチームが苦戦。 十分な体力で、巡航80km/h以上で予定よりも 1時間早く、ゴール。 計574km 総合距離 3022km 11 本戦の考察 チームは、コンセプトの車両で、健闘した! レース中に、すこしでも消費を下げようと、 さまざまな空力の工夫・改善策を考えて、悪戦苦闘を続けた。 チームはできる限りのことはした。(改良後に575kmを走破) 1)ノントラブルだった ⇒ レース中にマシンにトラブルの誤報 初日から多い消費のため空力の改良に時間がかかった 2)改良は3日間を要して、ようやく本車両の最高スペックが出せた 12 オランダ nuon 1位 比較 東海大 2位 前方投影面積(前方から見た車両の面積)に差があり過ぎる 世界大会は、スピード重視のストイックな戦い 13 工学院大学 総重量 240.0 トップチーム 総重量 240.0 転がり抵抗の 速度項 0.003 0.050 転がり抵抗 転がり抵抗の 速度項 0.003 0.050 転がり抵抗 車輪数 Cd値 4 車輪数 0.23 Cd値 4 投影面積 空気密度 1.04 投影面積 0.21 0.65 空気密度 制御回路 消費電力 1 3.00 制御回路 消費電力 1 3.00 WSCの領域 消費≒Cd ×A(前面投影面積) トップチームは 90~100km/hで巡航 国内レースの領域 14 ★Cd値とは、どのくらいスムーズに空気が流れるかという空気抵抗係数 横風に強い 直進性のCd値は薄型と同じ 15 予選 (車両運動性能の発揮) 予選2位 (本戦のスタートグリッドを決めるタイムトライアル) タイム 2分06秒8 82.33km/h (Hidden Valley サーキット) ただし、ストレートが他チームより、明らかに伸びなかった。(空力性能) 16 レース中の工夫(初日から悩んだ低燃費化) Before ノーズ下がる After ノーズ上がる 17 レース中の工夫(初日から悩んだ低燃費化) Before ノーズ下がる ノーズ上がる 18 改良 (初日から悩んだ低燃費化) ダウンフォースが効きすぎて、走行性能が多い 改良1) シャーシに穴をあけて、圧力を逃がす (乱流を気にしていられない) 改良2) ノーズからのエアーをダクトでシャーシ下へ流して、下向きに力を不える 穴による圧力調整 ダクトによる エアー 19 改良3) 後輪ホイルハウスを外して、前方から空気の流れを逃がす。 ⇒ 後輪ホイルハウスが空気の逃げ場をなくしていた。 ホイルハウス エアの流れ ホイルハウスなし 20 改良4) フロント、リアのサスペンション設定を変更 ⇒ 調整範囲のギリギリまで攻めた 4通りの工夫・改良の探し出し、試行。 多くの日数を費やしてしまった。 21 改良後 (初日から悩んだ低燃費化) 4日目にようやく575kmを走行 (天気が良いときは、80km/h巡航をした) 100.00 初日よりも同速度で計500Wの低損失化 90.00 80.00 速度 70.00 60.00 50.00 速度 (km/h) 40.00 30.00 20.00 ただし、巡航80km/hが限度であると計算もされた。 優勝にはストイックに前面投影面積を削減しなくては 理論的に巡航100kmは丌可能。 10.00 0.00 6:00:00 7:00:00 8:00:00 9:00:00 10:00:00 11:00:00 12:00:00 13:00:00 14:00:00 15:00:00 16:00:00 17:00:00 18:00:00 19:00:00 時間 22 技術的な効果 1. 車体重量 工学院大学 151kg (ドライバを除く) ボディー材料 超軽量炭素繊維 「テナックス」 帝人様、GHクラフト様、東邦テナックス様のご協力で、超軽量・高剛性を実現 ⇒ 車体面積は他チームよりも大きいにも関わらず、重量は変わらない ★ 参考データ 上位チームは150~160kg 東海大学 150kg (ホームページより) カナダ トロント大学 230kg (ヒアリングより) 23 技術的な効果 2.太陽光発電 工学院大学 最高値 1360W (6m^2) 1) Sunpower Japan様, 高効率太陽パネル、up to 22.6% (優勝したオランダチームも使用) 2) ブリヂストン様 EVAフィルム ★ 参考データ 他チーム 1000W~1100W (ヒアリングより) 24 3.タイヤ 工学院大学 ノーパンク、ノートラブル ブリヂストン様のご協力で、ソーラーカー用タイヤ(エコピアを供給) 1. ノーパンク、ノントラブルのため少ない本数で走行 ⇒ タイヤ交換なしでも全走行ができた 2. 超低損失で優れたコーナリング性能 (予選2位) ★ 参考データ 1) 他チームは数回のパンク 2) 他チームは予選時に予選用タイヤを装着 25 4.衛星通信 工学院大学 日本の天気班との連絡 JSAT mobile様のご協力で、 走行中にも、衛星電話、インターネットが可能に 高解像度 レーダー画像を受信 26 5.低損失ベアリング 工学院大学 汎用品の半分以下の抵抗 NTN様のご協力で、 ソーラーカー専用のセラミックベアリングを、 4輪ともに使用 ミツバ製モータ内にも使用 6.部品運搬と保護 工学院大学 過酷な環境から部品を守る 未来樹脂様のご協力で、 リサイクルプラスチックから作られた 搬送用保護部材を使用 空力改良後を含む大会動画 空力改良前の日本での試走動画 28 Transporterの運用について コントロールストップはアデレイドのゴールまでに9か所ある。1か所あたり30分の停車をしなくてはならない。レース終了まで合計で4時間半のス トップをすることになる。6日間での完走を考えると、コントロールストップの停車時間で実質は約5日間分の走行時間しかないことになる。大会 側は大会終了後にパレードや展示のイベントを用意していて、コントロールストップは次々に閉鎖されていく。ルートノートに記載されたコントロー ルストップの閉鎖時間をたどれば、そもそも大会側は6日間で全車両が走行を終える予定になっている。したがって、6日間でレースを考えている チームは必然とトランスポータを利用して、正味5日での走行をすることになる。トランスポータを使わない場合には5日間でレースを終えるに巡 航速度70~80km/h以上の車でないと難しい計算だ。半数以上のチームはトランスポータを利用することになるとすぐに計算して理解できた。 1日目のキャンプ地の夜、オブザーバから巡航スピードがなんらかのミスで時速65kmに低下する、バッテリ切れを起こすなど1回もしくは2回のミス があると、もはやコントロールストップの閉鎖時刻に間に合わないことがアドバイスされる。大会側も大会終了に多くのイベントを用意していて、ト ランスポータを運用することはルール違反ではなく前回大会から通常となっていることが告げられた。 次のコントロールストップのDunmarraは明日の10:30に閉鎖。さらに次のコントロールストップのTennant Creekは明日の17:10に閉鎖される。 現地点からおおよそTennant Creekまでは約550kmである。コントロールストップの停車時間もあるので、一般車でも時速80km以上で走行し なくてはTennant Creekの閉鎖までに間に合わない計算となる。レギュレーションには、コントロールストップの閉鎖までに1回は間に合わなくても 良いが、2回、間に合わない場合にはリタイヤと記載されている。トランスポータの運搬は何回してもよく、総合的なソーラーカーの走行距離で 順位が決定されると記載されている。70km/h~80km/hの巡航スピードで走行していても、2回のミスがあればトランスポータを利用しなくては コントロールストップの閉鎖に間に合わなくなる。スピードを求めるレースが世界大会であると思い知らされた。4輪化が義務付けられても、勝つた めには巡航スピード100km/hの車を製作しなくてはならない。トップチームが薄型車を設計対象にして、コンピュータによる空力の最適化を施す 理由をチームは痛感することになる。 400km後半付近には多数のチームがキャンプをしていた。ほとんどのチームが次から次へとトランスポータを使う方法を取る。前回大会に出場し てすでにこのルールを熟知していたチームはトランスポータで運送中も発電をしていたりする工夫をしてきていた。運送中の発電を考えて、チーム メンバーの荷物とソーラーカーを分けて運ぶ車を用意するなど、充電体制はトランスポータ運送中も万全に準備している他チームであった。本学 チームはトランスポータの運用は考えておらず、運送中の発電はゼロになる。トランスポータを使った場合には、日の出(6:00)から日の入り (18:00)まで移動しても構わないとのこと。ソーラーカーの場合は8:00から17:00の走行しかできない。トランスポータの運用でどう走るかは大きく 変わる。すでに1日目でミスをした本チームは必然とトランスポータを使ったレース運用に方向転換しなくてはならなくなった。 薄型に特化した車を上位層が作る理由はここにあり、勝つためにはストイックな必須条件が存在することを知る。近年の参レースに参加してみ なくてはわからない事実。レギュレーションには記載されず、報道もされない事実。初出場の本チームにとって、レース初日から世界大会の洗礼 を受けることになった。 29 Transporterの運用について 前回大会のトランスポータルールを熟知しているチーム 発電しながら運搬するチーム 夕方になると続々と運搬されてくる 30 再車検について ヘッドレストの追加装着 屋外35℃の中で 追加製作 31 その他の出来事 トランスポータ故障 ホース抜け オイル噴き出す チームは、ホームセンターへ走り、部材とオイルを購入。 突貫工事で、ホースをつなぎ、オイルを入れ・エア抜き して修理。車検と試走へ行けることになった。 その後、日本から架装メーカ様が来られて、 徹夜で修理を頂いた。 32 今後に向けて 2年後のWSC2015、リベンジをする WSCはスピードを求める大会 ・巡航100km/hの車を製作しなくては優勝できない ⇒ストイックに勝ちにいく、戦略・設計が必要 ⇒他チームは曲がらない(直進性のみ) ・空力を強化する。 ⇒CFD(コンピュータによる空力最適化)を重点的に強化 33 Discussion More Information? hamane@cc.kogakuin.ac.jp 34
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