急性腹症 ‐産婦人科編‐ 鑑別疾患 妊娠関連(妊娠初期) 流産 異所性妊娠 妊娠以外 卵巣腫瘍破裂・茎捻転 卵巣出血 PID(pelvic inflammatory disease) 月経困難症(子宮内膜症) 問診 症状(疼痛の部位、性器出血の有無) 現病歴 家族歴 既往歴(産婦人科受診歴) 妊娠・分娩歴 月経歴(周期、最終月経、性交渉の有無) アレルギー 嗜好 診察・検査 内診 尿検査(妊娠反応含む) 血液検査 腟分泌物培養検査 経腟(経直腸)超音波検査 CT・MRI 鑑別疾患 妊娠関連(妊娠初期) 流産 異所性妊娠 妊娠以外 卵巣腫瘍破裂・茎捻転 卵巣出血 PID(pelvic inflammatory disease) 月経困難症(子宮内膜症) 症例1 20歳代 【主訴】 4週間の無月経 腹痛 性器出血 【現病歴】 4日前に市販の妊娠検査薬にて陽性となった為、 2日前に近医産婦人科受診。子宮腔内に胎嚢認めず。 1日前より腹痛・性器出血あり当院初診。 【月経歴】 最終月経:受診4週前から5日間 28日周期 規則的 経過 【内診・超音波所見】 腟内に血液貯留少量 子宮腔内に胎嚢認めず 両側卵巣腫大なし 【検査所見】 妊娠反応陰性 【診断・治療】 正常月経(r/o 化学的流産) 症例2 30歳代 【主訴】 6週間の無月経 腹痛 性器出血 【現病歴】 5日前に市販の妊娠検査薬にて陽性となった為、 3日前に腹痛・性器出血あり、2日前に近医産婦人 科受診。子宮腔内に胎嚢認めず。 受診当日より腹痛・性器出血あり当院初診。 【月経歴】 最終月経:受診6週前から5日間 28日周期 規則的 経過 【内診・超音波所見】 子宮:明らかな異常所見なし 胎嚢(-) 右付属器:腫大なし 左付属器:不明瞭 【検査所見】 妊娠反応(+) 【診断・治療】 待機療法→手術療法(試験開腹・左卵管切除) 診断:異所性妊娠(左卵管妊娠) 妊娠初期の管理 【月経28日周期、規則的と仮定した場合】 妊娠4週頃~:妊娠検査薬陽性 妊娠5週頃~:子宮腔内に胎嚢を確認 ⇒確認できなければ異所性妊娠の可能性も考慮 妊娠7週頃~:胎児心拍を確認 妊娠10週前後:初期検査、分娩予定日決定 異所性妊娠 【頻度】全妊娠の1%程度 【症状】無月経 腹痛 性器出血 【診断】 妊娠反応(+)→子宮腔内に胎嚢(-) →子宮腔外に胎嚢(+)⇒異所性妊娠と診断 実際には子宮腔外の胎嚢の確認は困難 血中hCG濃度が診断の一助となる 【治療】 手術療法 待機療法 薬物療法(保険適応外) 鑑別疾患 妊娠関連(妊娠初期) 流産 異所性妊娠 妊娠以外 卵巣腫瘍破裂・茎捻転 卵巣出血 PID(pelvic inflammatory disease) 月経困難症(子宮内膜症) 症例3 40歳代 【主訴】 下腹痛 【現病歴】 以前より卵巣腫瘍の指摘有り、近医フォロー中。 受診前日の夕頃より下腹痛自覚、自宅にて経過観察 していたが増悪あり当院救急外来受診。 CTにて右卵巣腫瘍および腹水貯留認め当科紹介。 【月経歴】 45歳閉経 経過 【内診・超音波所見】 子宮:軽度腫大、40㎜大の筋腫様腫瘤あり 右付属器:108×83㎜大の内部不均一な腫瘤 左付属器:不明瞭 【検査所見】 CA125:105.1 CA19-9:1479.0 CT:供覧 【診断・治療】 緊急手術:TAH/BSO/pOM 診断:右卵巣腫瘍破裂、卵巣癌(類内膜腺癌) 症例4 30歳代 【主訴】 下腹痛 【現病歴】 受診前日の夕より下腹痛自覚。増強有り当院救急外 来受診。CTにて卵巣の腫大認め、茎捻転疑いにて当 科紹介。 【月経歴】 最終月経: 受診1か月ほど前から5日間 30日周期 規則的 経過 【内診・超音波所見】 子宮:異常所見なし 子宮腹側に疼痛伴う94mm大嚢胞状腫瘤 左側に43mm大嚢胞状腫瘤(疼痛伴わず) 【検査所見】 妊娠反応:陰性 CT:供覧 【診断・治療】 緊急手術:右付属器切除 左卵巣嚢腫核出術 診断:右卵巣茎捻転 右成熟嚢胞性奇形腫 卵巣腫瘍茎捻転・破裂 茎捻転:支持靭帯を軸としてねじれ、 血流遮断により阻血、強い疼痛を来す 破裂:腫瘍内容物による腹膜刺激症状を来す 【診断】 妊娠反応(-) 有痛性の卵巣腫瘍(+)(茎捻転は5㎝以上が多い) 【治療】 手術療法 (茎捻転は迅速な手術により卵巣温存の可能性有) 鑑別疾患 妊娠関連(妊娠初期) 流産 異所性妊娠 妊娠以外 卵巣腫瘍破裂・茎捻転 卵巣出血 PID(pelvic inflammatory disease) 月経困難症(子宮内膜症) 症例5 20歳代 【主訴】 下腹痛 【現病歴】 夜間突然に発症した下腹痛にて当院救急外来受診。 CTにて腹水貯留・腹腔内腫瘤認め当科紹介。 産婦人科既往:バルトリン腺嚢胞 【月経歴】 最終月経:受診2週前から5日間 28日周期 規則的 経過 【内診・超音波所見】 子宮に明らかな異常所見なし 子宮右側に圧痛伴う75×57mm大の腫瘤影 腹水(+) 【検査所見】 妊娠反応:陰性 CT:供覧 Hb:11.3(来院時)→9.8(当科診察時) →8.6(翌日)→9.2(翌日昼) 【診断・治療】 卵巣出血 安静・止血剤投与にて経過観察 卵巣出血 排卵前後に起こる黄体(卵胞)周囲からの出血 【症状】性交後発症の下腹痛 【診断】 妊娠反応陰性 腹腔内出血(+) 卵巣腫瘍(-) 【治療】 自然止血例が多く、保存的治療が原則 大量出血時は外科的治療 鑑別疾患 妊娠関連(妊娠初期) 流産 異所性妊娠 妊娠以外 卵巣腫瘍破裂・茎捻転 卵巣出血 PID(pelvic inflammatory disease) 月経困難症(子宮内膜症) 症例6 10歳代 【症状】右季肋部痛 右下腹痛・性器出血 【現病歴】 3日ほど前から右季肋部痛・下腹痛・少量性器出血あ り。 受診1日前に近医内科受診しCT施行されるも異 常の指摘なし。改善ないため当院救急外来受診。 腹部超音波検査で異常認めず、妊娠反応陽性の為、 異所性妊娠疑われ当科コンサルト。 【月経歴】 最終月経:7週前頃から7日間 30日周期 規則的 経過1(初診時) 【内診・超音波所見】 子宮内膜肥厚(+) 胎嚢(-) 両側付属器に明らかな異常所見認めず 【検査所見】 妊娠反応:陽性 WBC:8400/μl(Neut 78%) CRP:4.6mg/dl 【診断・治療】 異所性妊娠疑い 右季肋部痛は原因不明 入院にて経過観察指示するも帰宅希望強く、翌日入院 となる 経過2(入院中1) 尿中hCGは陰性化 症状持続あり、発熱も認めたため再度診察・検査 【内診・超音波所見】 子宮右側でtube状の血腫様腫瘤 疼痛(+) 【検査所見】 WBC:8500/μl(Neut 78%) CRP:12.3mg/dl 【診断・治療】 異所性妊娠の流産 卵管留血腫 子宮付属器炎 抗生剤(FMOX)投与開始 経過3(入院中2) 抗生剤投与開始後、症状著変なし 心窩部・左下腹部に疼痛出現 【検査所見】 WBC:7700/μl(Neut 72%) CRP:11.30mg/dl クラミジアPCR:陽性 【最終診断】 抗生剤(AZM)変更で症状ほぼ消失 異所性妊娠 骨盤腹膜炎(s/o Fitz-Hugh-Curtis Syndrome) PID 性感染症の起因菌による子宮頸管・内膜・卵管への 上行感染が惹起した付属器炎や骨盤腹膜炎等、女性 上部生殖器の炎症性疾患の総称 【症状】 骨盤の自発痛 発熱 子宮頸部可動痛・付属器圧痛 【診断】 妊娠反応陰性、他の器質的疾患の否定 診察にて子宮・付属器の圧痛を有する 診断の手順(まとめ) 妊娠・授乳中の投薬 基本的に有益性投与 抗生剤はセフェム系、ペニシリン系は問題なし 妊娠後期にNSAIDsは禁忌 下記を参考に… ・妊娠と授乳(南山堂) ・SafeFetus.com ・国立成育医療研究センター ホームページ
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