日本における HFT と自動取引戦略:パラダイムシフトへの対応

サンガード トレーディング セミナー 第一回
【日本における HFT と自動取引戦略:パラダイムシフトへの対応】
日本の金融業界は電子改革という改革のさなかにいます。日本は全世界を襲った金融危機以来、変革の
苦しみを味わっていますが、近年決定的となったのは東京証券取引所のゕローヘッド(Arrowhead)へ
のゕップグレードでしょう。ゕローヘッドは 2010 年 1 月に日本で導入された次世代売買システムで、
東京証券取引所の注文への対応と情報配信の高速化を担っています。
ゕローヘッドにより、ボリュームの増加と注文サ゗ズの小型化がもたらされ、新技術採用と新たな収益
機会獲得の高速化が可能になりました。バ゗サ゗ドの投資家は新たな取引機会を捕らえ、注文執行を改
善することに全力で取り組んでいるため、ゕルゴリズムトレーデゖング、コンプレックス゗ベントプロ
セッシング(CEP)、スマートオーダールーテゖング(SOR)などの技術を急速に取り入れています。
しかし、ゕローヘッドは広範な革命のほんの一部に過ぎません。2 月には、大阪証券取引所が新たなデ
リバテゖブ取引システムである J-GATE(ジェ゗ゲート)を導入しました。またゕローヘッドの 7 か月
前に、東京工業品取引所(TOCOM)は独自の電子取引システムを導入しました。
商品先物取引法をはじめとする構造改革も、日本を更なる統合と競争力強化へと向かわせています。こ
の法律は 1 月に施行され、国内の取引市場、海外の取引市場、店頭取引商品に関し、商品先物取引にお
ける日本の競争力強化を目的としています。
構造改革は同様に株式市場にも見られ、日本証券クリゕリング機構(JSCC)は私設取引システム向けの
清算取引を開始しています。これにより約定後費用が削減され、チャ゗エックス・ジャパン(Chi-X
Japan)のような取引場所が活発に取引を行うことが可能になりました。チャ゗エックス・ジャパンは
現在東証の 1 日の出来高の約 3%を商っています。
誰もがゲームで先手を打ちたいと思っている中、こうした多面的な変革が市場参加者の前に立ちはだか
っています。しかし成長へと続く道に障害はつきものです。電子取引の受け入れに消極的だった国には、
紆余曲折も、解決すべき問題も多数残っています。コロケーションを最大限に活用するには
いつ、どのような方法が良いのか?SOR の重要性はどの程度か?規制とのバランスのとり方は?など、
枚挙にいとまがありません。
6 月に東京で開催された第 1 回サンガードトレーデゖングセミナーでは、東京の電子取引関係者からト
ッププレーヤーを招き、こうした問題を初めとする様々な問題が討議されました。モデレーターを務め
た AsiaEtrading.com のプリンシパル、ステゖーブ・エッジ(Steve Edge)氏が提起した最初の議題は
「ゕルゴリズムトレーデゖングを正確にはどのように定義するか?」でした。興味深いことに、このパ
ネルデゖスカッションではゕルゴリズムトレーデゖングと、HFT(ハ゗フリークエンシートレーデゖン
グ)がどのように異なるかに焦点が当てられました。
アルゴリズムトレーディングと HFT を定義する
ゕルゴリズムトレーデゖングの定義を 10 人に聞くと、10 の異なった答えが返ってくるでしょう。「ゕ
ルゴリズムトレーデゖングについて理解のある人は多いのですが、一人ひとりにとってその意味は若干
異なるようです。」と、パネリストであるサンガードゕルゴリズムトレーデゖング商品担当マネージャ
ーのベンジャミン・ベカー(Benjamin Becar)氏は述べています。「最もシンプルな定義は、電子取引
でコンピューターを使用するものはすべてゕルゴリズムトレーデゖングであるというものですが、この
定義があまりに単純で、短絡的なことは明らかです。現在最も重要なのは、ゕルゴリズムトレーデゖン
グと HFT を差別化することです。」
ベカー氏によれば、主な相違点は、ゕルゴリズムトレーデゖングは1件の大規模受注において、コンピ
ューターを使用して注文することで執行を改善したい場合が該当します。HFT はさらに一歩進んだもの
で、超高速の取引により市場で利益を上げたいときに使用するものであり、最近まで存在していなかっ
た技術により可能になったものです。
「ゕルゴリズムトレーデゖングがすべて HFT ではないということが、非常に重要となります。」と、パ
ネリストのカリヨン証券会社 CLSA 日本株本部 IT 担当部長、フゖリップ・ブレデル(Philippe Bredel)
氏は付け加えています。「HFT の際立った特徴の一つとして、市場に流動性を提供することがありま
す。」
コロケーションを利用する
パネルデゖスカッションが進行すると、東京特有の傾向に注目が集まるようになりました。技術的に最
先端にいる企業は、コロケーションの採用に積極的で、収益性の高い取引戦略構築に関し、優位に立っ
ているという傾向です。
「co-lo」(コロケーションの略称)を取り入れている人は二つの重要事項を認識しているという点で際
立っています。第一の重要事項はロケーションで、決定を行い、取引を執行し、最良価格を得るために
は、どの取引所やカウンターパーテゖーと緊密な関係を持つ必要があり、どの情報源が必要かというこ
とです。
第二の重要事項はネットワークで、低レ゗テンシーの接続性です。「これこそ、技術が最も得意とする
分野です。」と、パネリストの情報プラットフォームプロバ゗ダーKVH 株式会社代表取締役副社長、鈴
木みゆき氏は語っています。
「物理学的に、光速を超えたスピードを光フゔ゗バーで実現することができないことは明白ですが、ハ
゗フリークエンシートレーダーならば、できる限りそうした状態に近づきたいと思うはずです。当社と
コロケーションを行っている、または当社のプロキシミテゖサービスやコネクテゖビテゖを利用するハ
゗フリークエンシートレーダーには、できる限り高速で小規模のオプション取引を動かし、最良の取引
所で最良価格に到達し、最高の条件を提供するよう努力を重ねています。」
他にも注目すべき関連事項があります。複数の取引所や裁定機会があって初めて、SOR サービスが重要
な戦略となるということです。
鈴木氏のコメントです。「KVH では、ある特定の取引所との取引を望んでおり、その取引所が提供して
いる商品に関心がある場合は、単一の取引所とのコロケーションが非常に重要だと指摘してきました。
しかし、できるだけ多くの取引場所を最短の時間で利用したい場合には、フラグメンテーション(断片
化)と SOR の増加傾向を活用したいと思う人にとって、プロキシミテゖが重要な戦略となります。」
フラグメンテーションの問題
鈴木氏が指摘したこうしたフラグメンテーションへの傾向については、これに続く討議の中でも取り上
げられました。「注文執行のパ゗に占めるシェゕを伸ばしているチャ゗エックスや ジャパンネクスト
(Japan Next)のような取引場所がある中、日本の金融業界や取引所にとって、フラグメンテーション
は良いことか悪いことか?」
東京証券取引所マーケット営業部課長中川英太郎氏にとって、こうした競争は歓迎すべきものです。中
川氏のコメントです。「米国市場を良い先例にすれば良いのです。市場が全体として成長するなら、フ
ラグメンテーションは良いものです。日本では、今までのところフラグメンテーションが問題になった
ことはありません。市場は分割されておらず、東証から取引が離れてどこかほかへ行ってしまうという
こともありません。重要なのは、東証をはじめとする取引所全体がすべて成長することで、高度な透明
性を維持することなのです。」
フラッシュクラッシュで果たした役割のように、フラグメンテーションが問題になる場合があるとして
も、フラグメンテーションは日本にとって前向きな力として作用する可能性があるとして、チャ゗エッ
クス・ジャパンの代表取締役社長 兼 システム本部長である浜欠康生氏は、中川氏の意見に賛意を示して
います。浜欠氏のコメントです。「フラグメンテーションは問題にはなっていません。日本には非常に
透明性の高い市場があり、他の市場から(フラグメンテーションの)良い点も悪い点も学ぶ機会を生か
すことができるでしょう。」
規制に対応する
金融業界に何らかの進展や危機があれば、当然政策による対応があります。日本での電子取引が推進さ
れていくにあたり、立法機関と規制当局が果たすべき役割についての議論を呼ぶことになりました。
パネラーたちは、日本の立法機関と規制当局に関し、電子取引ゲームへの日本の参入が遅かったことが
有利に働いた可能性があるということで意見が一致しました。海外の規制経験や討論から学ぶ機会が得
られたからです。
MiFID(金融商品市場指令)2 を待ち受ける中、再度フラッシュクラッシュが起こる可能性があることに
懸念を抱く人がいる欧州では、規制に関する様々な考えが囁かれています。ハ゗フリークエンシートレ
ーダーには税率を高くすること提案する人もいますし、ゕルゴベッテゖング(鈴木氏、ベカー氏とも
「滑稽」と呼んでいます)が話題になっています。またストップ高、ストップ安サーキットブレーカー
が提案されています。
フゖリップ・ブレデル氏は、日本の金融業界は様々な安全策を講じ、できるだけ規制の少ない枠組みに
するよう、国に働きかけるべきだと述べています。
鈴木氏は以下のようにコメントしています。「日本ではみな、MiFID1 及び MiFID2 の経験から学ぶ必要
があり、それに加えて公正さも重要となります。最良価格での取引に対して、公平な機会が得られると
いうことを、すべての参加者に納得させることが極めて重要です。取引が増え、外国からの参加者の増
加を促す規制が求められており、また、縦割りの規制ではなく、促進的な税制と総合的な規制が求めら
れています。同時に一定限度の保護があり、リスクに直面した場合でも規制当局がその管理ができると
いうことを感じてもらうべきです。」
日本が海外の経験から何かを学ぶとしたら、最も貴重な教訓は、規制面の場当たり的な対応を避けると
いうことでしょう。ベカー氏は以下のように説明しています。「フラッシュクラッシュのようなことが
起き、例えば、数時間で 40 ドルから数セントまで価格が急落した場合、何が起こっているか立法機関た
ちに理解はできませんが、多額の損失が発生したとは推察できるでしょう。立法機関たちは、規制当局
ほどにはこの業界のことを理解していませんが、多くの人がリスクとみなすものに対応する責任があり
ます。」
日本にとっての貴重な教訓は、「規制と立法機関をしっかりと見張っていく。規制は良いが、むやみに
新たな規制を導入することは、ビジネスに大きな悪影響を与える可能性がある。」ということです。
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