コンクリート構造物劣化の原因となる有害因子は、コンクリート中の空隙を移動経路として侵入する。しかしながら、 コンクリートの物質移動抵抗性 物質移動抵抗性と コンクリートの 物質移動抵抗性と空隙構造指標との 空隙構造指標との対応 との対応に 対応に関しては、 しては、未だに統一的 だに統一的な 統一的な見解が 見解が得られていない。連続 られていない 連続 した空隙 した空隙の 空隙の最小径である 最小径である「 である「閾細孔径」 閾細孔径」は、水銀圧入法(MIP)により抽出されるため、試料の厚さや含水率等の影響 は受けない。一方、実際の連続空隙の最小径は、例えば供試体が薄い場合、確率的に骨材の遷移帯や粗大空隙 が連続する可能性が高くなるため増加する。また気体の移動に関しては、保有する水分量も移動経路に影響する。 このような、コンクリート コンクリート試料 コンクリート試料の 試料の厚さや含水率 さや含水率などにより 含水率などにより変化 などにより変化する 変化する連続空隙 する連続空隙の 連続空隙の最小径の 最小径の指標を 指標を広義の 広義の閾細孔径とし 閾細孔径とし て、「透過抵抗代表径」 透過抵抗代表径」と定義する。 定義 Schiessl et al. (1994) 閾細孔径/透過抵抗代表径 閾細孔径 透過抵抗代表径 閾細孔径と各種拡散挙動との関係 閾細孔径は、圧入水銀量増加率が最大となる時点など、急激な圧入が生じる空隙径とされる例が多いが、コンク コンク リートから採取 採取された リートから 採取された試料 された試料では 試料では急激 では急激な 急激な圧入が 圧入が生じにくいため、 じにくいため、閾細孔径を 閾細孔径を同定することが 同定することが困難 することが困難である。本研究では 困難 MIPにより得られる累積空隙径分布の傾きが最大になる時点の空隙径を閾細孔径とする。しかしながら通常のMIP 測定では、細骨材の遷移帯など粗大な空隙を通じて水銀が奥まで圧入されるため、閾細孔径に達した時点での未 圧入領域は大きくない。これにより、急激な圧入が生じる位置、すなわち傾きが最大になる地点の判定が困難とな る。そこで、通常MIPで使用する5mm角の試料を、約4mm2を残してエポキシ エポキシ樹脂 エポキシ樹脂で 樹脂で被覆して 被覆して測定 して測定を 測定を行うことで、閾 細孔径に達した時点での未圧入領域が大きくなり、より明確に圧入曲線の急増、すなわち閾細孔径を捉えられる。 コンクリート試料 閾細孔径 急激な増加 累積細孔量(ml/ml) 累積細孔量(ml/ml) セメントペースト試料 細孔半径(nm) 通常試料 エポキシ被覆試料 エポキシ被覆試料 エポキシ被覆試料 緩慢な 増加 閾細孔径? 細孔半径(nm) W/C55%、C/S30%のモルタル試料を対象とした測定結果を見ると、エポキシ被覆した試料では20nm程度に傾き のピークが生じていることが確認できる。この20nmが、本研究の定義に基づく閾細孔径となる。測定を途中で停止 し、試料を割裂して内部を観察すると、通常の試料では圧入により、82nmから徐々に試料の色が変化しているが、 エポキシ被覆した場合には15nmにおいて急激に断面全体の色が黒く変化する結果となった。上記は、50nmから 15nmの間で急激な圧入が生じたことを示しているが、この結果は圧入曲線の傾きのピークから求めた20nmという 閾細孔径と一致する。以上は、本手法により閾細孔径 閾細孔径が適切に抽出されることを示していると考えられる。 閾細孔径 被覆試料 細孔半径(nm) 15nm 通常試料 通常試料 50nm 被覆 試料 82nm 細孔半径(nm) エポキシ 被覆試料 通常試料 ⊿累積圧入水銀量 ⊿log細孔半径 累積圧入水銀量(ml/g) 82nm 50nm 15nm 検討に用いた室内供試体の配合はW/C(40、55、70%)、セメント種(普通N、中庸熱M、低熱L、早強H)、混和材(高 炉スラグB、フライアッシュF)であり、脱型後、各種養生条件(水中1、封緘2、送風3)を材齢28日まで与えた後に 20℃で気中養生とした。測定は材齢約3年で実施している。また材齢11年の既設コンクリート構造物( W/Cは42~ 50%:高欄、橋台、橋脚、舗装)から採取されたコアも検討に用いた。 閾細孔径(nm) 室内供試体 閾細孔径(nm) ( 閾細孔径・透過抵抗代 表径 (nm ) = 46 × 表層透気係数 × 10 −16 m 2 ) (×10-9cm/s) 透水係数( 室内供試体 表層透気係数(×10-16m2) 表層透気係数 閾細孔径(nm) コアサンプル エポキシ エポキシ被覆試料 被覆試料 室内供試体 透水係数(×10-9cm/s) 透水係数 表層透気係数(×10-16m2) 表層透気係数 普通試料 表層透気係数はトレント法により、透水試験は約2.5MPaの圧力でアウトプット法 により実施した。測定結果を見ると、普通試料と比較して、エポキシ被覆した試 料を用いた場合、両試験結果と高い相関を示していることが確認できる。 コアサンプル 室内供試体 閾細孔径(nm) 回帰式 窒素ガスが満たされたガラス容器の上にコンクリート試験体(厚さ4cm)を置き、その反 対面に設置した容器内の酸素濃度低下量を測定することで、窒素の透過挙動を検討し た。測定終了後、使用した供試体の表層透気係数を測定し、前項の回帰式を用いて閾 細孔径に換算した。酸素濃度の低下率と閾細孔径との関係は、傾きの異なる2本の直 線上に分布した。空間が微小になると分子と壁面との衝突頻度が増加し、支配的な拡 散形態が変化する。今回の測定条件から理論的な拡散係数を求めると100nm付近が その境となっており、測定結果と整合する結果となった。 DM:分子拡散係数[cm2/s],DK:クヌーセン拡散係数[cm2/s] T:温度[K],M:分子量,P:全圧[atm],σ:衝突直径[Å] ΩD:衝突積分,r:細孔半径[cm] 厚さ1cm~4cmのコンクリート試験体の上面から給水し、貫通した水分により下面に貼り付けられた感水紙の色が 変化するまでの時間を測定した。液状水が毛管張力と摩擦抵抗により支配された状態で円管中を浸潤する場合、 浸潤時間は浸潤距離の2乗に比例し、管半径に反比例する。供試体厚さの2乗を閾細孔径で割った値を指標として、 貫通に要する時間との関係を見ると、配合や養生条件ごとに異なる傾向を示した。原因として、閾細孔径では供試 体厚さの影響が考慮されないことが挙げられる。そこで供試体厚さに伴い変化する閾細孔径、すなわち透過抵抗代 表径を、表層透気係数から回帰式を用いて求めた。いずれも、供試体厚さが3cm以下で表層透気係数が急増し、そ れ以上ではほぼ一定である。この透過抵抗代表径から指標を求めると、貫通時間と非常に高い相関が得られた。 水分による塩化 コバルト紙の変色 エポキシ被覆した試料を用いたMIPから得られた閾細孔径や、表層透気係数から回帰式により換算された透過抵 抗代表径は、各種物質移動抵抗性と非常に高い相関を示した。以上は、閾細孔径/透過抵抗代表径により各種物 質移動抵抗性を統一的に評価可能であることを示していると考えられる。今後イオン移動についても検討を行う。
© Copyright 2025 Paperzz