月刊 第37巻第10号通巻434号2015年10月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可 10 2015年 都市のソフト・パワーを高めるための 5つのキー・ドライバー ◆視点・観点 ウェーバー・シャンドウィック アジア太平洋地域チーフ・ストラテジー・オフィサー イアン・ラムズビー ◆ANGLE (一社) 日本貿易会 広報・調査グループ長兼広報部長 木村 昭 ◆マスコミ事情 434 October ビジネスリーダーの悩みに応える 『プレジデント』 編集長 鈴木勝彦 産経新聞大阪本社の編集方針と取材体制 産経新聞大阪本社 経済部長 内田 透 今 月 の 表 紙 ダイキン工業は、世界7カ所で、地球の空気をはぐく む森を守り育て、未来に繋げていくことを目的とした 「 “空気をはぐくむ森”プロジェクト」を実行している。 写真は、カンボジアでのオープニングセレモニーにて 政府関係者、住民、NGOと共に撮影 『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に 掲載しています。 10 月の 動 き 国内 7日 8月の景気動向指数速報 (内閣府) 8日 8月の国際収支速報 (財務省) 9月の景気ウォッチャー調査 (内閣府) 13日 9月の消費動向調査結果 (内閣府) 21日 9月の貿易統計 (財務省) 30日 9月の失業率 (総務省) 9月の有効求人倍率 (厚生労働省) 海外 2日 9月の米雇用統計 (米労働省) 6日 8月の米貿易収支 (米商務省) 14日 9月の米小売売上高 (米商務省) 20日 9月の米住宅着工件数 (米商務省) 22日 ECB (欧州中央銀行) 定例理事会 (マルタ) 27 ~ 28日 FOMC (米連邦公開市場委員会) (米FRB (連邦準備制度理事会) ) 視点・観点 都市のソフト・パワーを高めるための 5つのキー・ドライバー 2015年10月号目次 2 イアン・ラムズビー (ウェーバー・シャンドウィック アジア太平洋地域チーフ・ストラテジー・オフィサー) ANGLE つなぐ世界、むすぶ心 木村 昭((一社)日本貿易会 広報・調査グループ長兼広報部長) 5 マスコミ事情 ビジネスリーダーの悩みに応える 6 産経新聞大阪本社の編集方針と取材体制 8 鈴木勝彦(『プレジデント』編集長) 内田 透(産経新聞大阪本社 経済部長) 企業広報研究 「外見リスクマネジメント」から企業風土改革 ~楽しくリスク感性を磨こう~ 10 石川慶子(広報コンサルタント/日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 理事) 視点・観点 『ライフデザイン白書2015年』に見る 人々の生活意識の変化 12 的場康子((株)第一生命経済研究所 上席主任研究員) グループ広報戦略 4 「コーポレートブランドの価値向上」を目指した グループ広報戦略 14 帝人グループ 企業広報講座ダイジェスト3 メディアリレーションとリリース作成 17 経済広報センター活動報告 これからの戦略イノベーションとガバナンス ~欧州ビジネススクール教授招聘プログラム~ 米国地域社会との対話 ―ビジネス・スピーカー・シリーズ― 18 20 国際プロジェクト紹介③ 広東省大学学生招聘プログラムを実施 24 連載 経済広報センター NEWS 企業広報ニュース(広報トピックス/ Book) 企業・団体のCSR活動 (ダイキン工業 (株) ) 10月の動き 22 25 裏表紙 表紙裏 発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部 東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021 印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751 ※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。 2015年10月号〔経済広報〕 1 視点・観点 都市のソフト・パワー を高めるための5つの キー・ドライバー イアン・ラムズビー ウェーバー・シャンドウィック アジア太平洋地域チーフ・ストラテジー・オフィサー ■聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 常務理事・国内広報部長 高い経済成長を続けるアジア太平洋地域の影響力はグローバル市場で注目されている。そうした背景を踏 まえ、ウェーバー・シャンドウィックは、アジア太平洋地域の都市が持つソフト・パワーの理解を促進し、 行政・ビジネスの活用促進と、国際都市としての地位向上への貢献を目的とし、KRCリサーチ社と共にア ジア太平洋地域主要8都市の一般消費者4147人を対象に、オンラインで 「ソフト・パワー」調査を実施した。 この調査を監修した、アジア太平洋地域チーフ・ストラテジー・オフィサーのイアン・ラムズビー氏が8月 上旬に来日した機会に、東京のソフト・パワーの影響力などを聞いた。 16項目中10項目で第1位の東京 ■図1:ソフト・パワー要素16項目 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. ■アジア太平洋地域の主要都市「ソフト・パワー」調 査とは、どのような内容か。 ラムズビー 昨年7~8月に実施したもので、ソ フト・パワーの要素とした項目は「1.観光」「2.食 文化」「3.ジェンダーに関する寛容性」「4.小売店 と周辺地域」 「5.政治的意思決定」 「6.美術・文学」 「7.ニュース・メディア」 「8.現代建築とデザイン」 「9.見習いたい都市」 「10.スポーツ/レジャー施設」 「11.金融機能」 「12.学術研究・高等教育」 「13.サステ ナビリティーと環境」「14.音楽」「15.ソーシャルメ ディアとデジタルテクノロジー」 「16.生活水準」の16 項目 (図1参照)。調査対象の都市は、バンコク、香 2 港、クアラルンプール、ソウル、上海、シンガポー ■この調査の目的は。 ル、シドニー、東京の8都市である。今年末までに ラムズビー アジアの国々が急激に都市化し、都市 は、さらに6都市を追加して調査したい。 への投資、観光収入、クリエイティブな人材の確保 〔経済広報〕2015年10月号 視点・観点 をめぐる競争が激しさを増したことで、都市ブラン けでなく観光客のニーズや興味にも応えている。渋 ドの評価・評判の向上は行政や都市の優先課題と 谷のスクランブル交差点にしても、東京に住む人に なっている。2030年には全世界の人口の60%が都 とっては、人で混み合うイライラする場所でしかな 市部に住むことになると予測されている。それだけ いだろうが、外国人からすると、大勢の人がぶつか に都市がどのように発展するかは居住者、ビジネス らずに何事もないかのように渡り切る光景は、エネ に大きな影響を与える。都市が成功するかどうかの ルギッシュで、エキサイティング。また、そのシー カギは、その都市ならではのユニークなソフト・パ ンから日本人の規律正しさというストーリーが生ま ワー要素の相互の繋がりを構築し、発展させ、明確 れる。 に発信する能力にある。公的機関には、都市の強み ■ご自身は、東京にどのような印象を持たれている か。 を発信していく責任がある。 ■東京のソフト・パワーの評価は。 ラムズビー 東京はエキサイティングな都市だ。建 ラムズビー 先ほど紹介した16項目のうち10項目 築物も優れているが、近代的な建物の間に小さな街 で東京が第1位だった。東京以外が第1位だった 並みがあり、文化の多様性がある。また食文化も優 項目は、シンガポールが「13.サステナビリティーと れている。例えば、シドニーも世界で最も食事が楽 環境」「16.生活水準」、香港が「11.金融機能」、シド しめる都市のひとつであり、オーストラリア観光局 ニーが 「10.スポーツ/レジャー施設」「8.現代建築 も 「レストラン・オーストラリア」 とPRするほどだ とデザイン」 「3.ジェンダーに関する寛容性」 「14.音 が、残念ながら調査では食文化が体験できる都市と 楽」 だった。 しての認識がまだまだ低いとの結果であった。その 東京が突出した影響力を維持し続けている強み 主な理由としては、オーストラリアには国民的料理 は、効率性、サービスの質、しきたりや勤勉さと が存在しないこと、シドニーの優れた食文化が周辺 いった歴史に深く根差した規範という3つの無形な 地域に存在しがちであることが挙げられる。また、 因子の存在がある。これらによって東京の様々な側 東京には、人々のパワーも感じる。 面が結びつき、そうした文化的な要因が中核になっ ソフト・パワーを高める 5つのキー・ドライバー て東京の強みを後押ししている。また、東京には銀 座、新宿、渋谷とエリアごとに個性がある。住民だ ■どうすれば、ソフト・パワーをさらに高められる ■表1:東京の一部結果―円グラフ か。 ラムズビー アジアの都市の評価・評判を高める推 進力には、次の5つの要素がある。 1つは、 「アイデンティティー」 。訪問地としての 魅力度を高め、都市独自のブランド・アイデンティ ティーを形成すること。 2つ目は 「周辺地域」 。都市の周辺地域は、都市が 1.観光 15.ソーシャルメディアと デジタルテクノロジー 2.食文化 持つユニークで多様なソフト・パワー要素を居住者 と非居住者に示す文化の集積(クラスター)といえ る。周辺地域は、ソフト・パワー要素を体験する場 を提供する。 3つ目は、 「アドボカシー」 。今回調査した8都市 9.見習いたい都市 6.美術・文学 3.ジェンダーに関する 寛容性 の居住者は、自分の都市の各ソフト・パワー要素に 対して、非居住者よりも平均して18ポイント高く 2015年10月号〔経済広報〕 3 視点・観点 評価している。居住者のプライドを引き出すこと そのソフト・パワーをさらに高めるマイルストー は、都市のソフト・パワーに大きく影響し、都市の ン、スタートポイントにすべきということである。 ブランディングに寄与する。 k ■表2:東京の居住者の自尊心 (非居住者との評価の差) 4つ目は 「クリエイティブ・クラス」。クリエイ ティブな人たちは、音楽やテクノロジーから持続可 自己評価 能性や設計に至る全てで、アイデア主導の経済を創 外部評価 造し、都市のイノベーションの強力な力となる。行 政担当者は、都市に必要なクリエイティブな人材を 引きつける多様な環境の醸成を戦略的に考える必要 75% 75% 50% 50% 25% 25% がある。 5つ目は、「ピープル・パワー」。魅力的な体験を 提供できなければ、都市インフラへの巨大投資の効 果が損なわれてしまう。空港であれ、スポーツ施設 であれ、それぞれの場所での体験の評価は、判断す 13. 8. 現代建築とデザイン 2. サステナビリティー と環境 3. 食文化 11. ジェンダーに関する 寛容性 ■先ほどの「アドボカシー」で東京の居住者は、東京 5. 金融機能 ることができる。 1. 政治的意思決定 学術研究・高等教育 12. く、快適な」都市としての評価・評判を確実に高め 観光 る人々にかかっている。人によるサービスは、 「温か をどう評価しているのか。 ラムズビー 東京に住む人は、東京のソフト・パ ワーを高く評価している。東京の居住者は、住む場 所としても働く場としても、東京の洗練度が最高水 75% 75% 50% 50% 25% 25% 準であると認識している。非常に高く評価している のは、 「16.生活水準」 「11.金融機能」 「12.学術研究・高 等教育」 「2.食文化」 「5.政治的意思決定」などだ。 自分の住む都市に対する自尊心が最も高いのがシ 15. おり、多方面にわたり影響力を維持するためにいっ そうソフト・パワー向上に努力を払う必要がある。 2020年の東京オリンピック・パラリンピックはそ うした努力の最たるものとして実を結び、東京滞在 でユニークな体験が得られることに世界が目を向け るきっかけになるだろう。イノベーションや創造 性、エネルギーを生み出す代表的な近代都市として 大きな関心を集め、必然的に多くの才能を引きつけ るだろう。さらに重要なのは、東京そして日本は、 2020年をそうした努力を結集するゴールではなく、 4 〔経済広報〕2015年10月号 イアン・ラムズビー ウェーバー・シャンドウィック・オーストラリア・チェ アマン。20年以上にわたり、テクノロジー、自動車、航空、 ヘルスケアなど幅広い分野で、企業・団体のレピュテー ションマネジメントや市場形成、CSRなど包括的なコ ミュニケーション・ソリューションのデザイン・戦略開 発とコンサルティングを行う。 ウェーバー・シャンドウィックの「ソフト・パワー」調査 レポート本文、および関連動画コンテンツは以下のウェ ブサイトよりご覧いただけます。 http://webershandwick.jp/engaging_cities_jp/ ソーシャルメディアと デジタルテクノロジー 16. 生活水準 4. 小売店と周辺地域 7. ニュース・メディア 9. 見習いたい都市 ラムズビー 都市全体としては経済問題が山積して 10. スポーツ/ レジャー施設 に向けて何をすべきか。 14. 音楽 ■2020年の東京オリンピック・パラリンピック 6. 美術・文学 ドニーで、最も低いのがソウルとなっている。 ANGLE つなぐ世界、むすぶ心 日 本貿易会は貿易活動に関係す ③懸賞論文の募集:国内外の重要 る企業および団体の業界団体 な経済・社会的課題に対して一 です。会員企業は多様性に富み、専 般の皆さんから意見や提言を募 門性の高い貿易商社や幅広い分野で る活動です。10年以上継続して 貿易・投資活動を行う総合商社、ま おり、国籍や年齢は不問で、英 た商品や地域別の貿易諸団体などで 語または日本語で応募できるた 構成されています。 め、約7割が海外からの応募と 当会の広報活動は下記の4つの活 なっています。テーマの設定に 動を中心にしていますが、常に心掛 当たっては、日本と関係するも けていることは当会の活動目的であ る、 「貿易・投資活動を通じて我が国 の経済の繁栄と国際社会の発展に寄 与する」ことであり、当会のキャッ 木村 昭 (きむら・あきら) (一社)日本貿易会 広報・調査グループ長兼広報部長 チフレーズ、 「つなぐ世界、むすぶ心 ので、かつ海外からの応募者が 不利にならないように配慮して います。皆さんも、是非、応募 してみてください! ④商社シンポジウムの開催:とか ~新たな英知で世界に貢献~」とい く分かりにくいといわれる商社 う言葉にそれが集約されています。 の活動について理解を深めていただこうという趣旨 ①機関誌の発行:機関誌である『日本貿易会月報』 で、毎年1回、広く一般の皆さまを対象にシンポジ を年に11回発行し、会員、官公庁、大使館、メ ウムを開催しています。今年度は10月16日に大手 ディアなどに広く配布しています。毎号、貿易 町の日経ホールで「商社ビジネス最前線 ~未来を や商社の活動に関係する豊富な内容をお楽しみ 拓く商社の 『投資』~」 というテーマで行います。 いただいています。特に、日本が世界といかに 共存共栄の関係にあるか、国境を超えた貿易・投 資活動がいかに関係各国にウイン・ウインの恩 恵をもたらすかといった国際関係や自由貿易に 関わる内容に力を入れて企画・編集しています。 このほか、会長記者会見などの報道対応も会長会 社と密に連携して行っています。 また、経済広報センターとの関係では2013年か ら 「教員の民間企業研修」 に毎年協力させていただい ②ホームページ(http://www.jftc.or.jp/)の運営:当 ています。児童や生徒の皆さんが将来のグローバル 会の活動や組織の紹介、日本の貿易に関する各 人材に育ってもらえるよう、プログラム編成に工夫 種統計など商社や貿易に関係する様々なコンテ を凝らしています。 ンツが掲載されています。特に人気のあるコン 私が三井物産から当会に出向してきて約3年。最 テンツは 「きっず☆サイト」です。もともとは小 も苦労しているのは 「商社とは何か?」 という問いに 中学生を対象に貿易や商社の活動を分かりやす 簡潔に答えられないこと。しかし、この「捉えどこ く説明しようという目的で開設しましたが、実 ろのなさ」 「融通無碍」 こそ、商社の強みであろうと 際には幅広い層の方にご覧いただき、好評を博 感じつつ、日々の業務に励んでいます。 k しています。 2015年10月号〔経済広報〕 5 マスコミ事情 ビジネスリーダーの 悩みに応える 鈴 木 勝 彦(すずき・かつひこ) 『プレジデント』 編集長 創刊号に掲載された激励文 『プレジデント』は1963年の創刊以来一貫して、 ういう悩みをもち、それをどう解決していったかと いうことを知りたがっているからだ」 。 今も昔も変わりなく、ビジネスリーダーの悩みが ビジネスリーダーのための問題解決マガジンとして いかに深いか、雑誌への期待がいかに大きかったか 読者の悩みに応えていこうという姿勢で編集に取り よく分かります。特に、 《一度読んでしまっても、ま 組んでまいりました。この50年間、幾度となくリ た引き出しから出して読む、そんな雑誌であっても ニューアルを図ってまいりましたが、それは時代の らいたい》という部分は、私のビジネス誌編集者と 変化に伴い、読者の置かれた環境の変化、悩みの質 しての道標になっています。 の変化に応えようとしたもので、根本的な編集姿勢 激励文を編集に生かす はずっと変わっておりません。創刊号である1963 年5月号に「読者の声」のページがあり、三菱石油の 私は2012年春に『プレジデント』編集長に就任し 竹内俊一会長のお名前による激励文が載っていま てからというもの、仕事に迷うたびに何度も創刊号 す。それがこの50年間変わらぬ私どもの編集方針 を開いて、この言葉を見つめ直し、意味を噛みし となっていますので、ここに引用いたします。 め、編集会議でスタッフに繰り返し話してまいりま (余談ですが、なぜ創刊号に「読者の声」があるか といえば、創刊号の前にテスト号としての0号があ り、それをご覧いただいた感想を編集部に寄せてい す。 裏方である編集者の仕事をあれこれ吹聴すること ただいたためです) を好みませんが、竹内会長のお言葉をどう雑誌編集 次の一文です。 に反映させているかについてご理解をいただくため 「細かい点はさておき、 〝プレジデント〟は、一度で に、その一端をお話したいと思います。 読み捨てにする雑誌ではなく、楽しんで読む雑誌 昨年、2014年7月に表紙を少し変えました。こ ……一度読んでしまっても、また引き出しから出し のとき版形をひと回り大きくしたことは新聞紙上で て読む、そんな雑誌であってもらいたいと願ってい も謳いましたが、デザインを変更したことはお伝え る。 しませんでしたので、まったく気づいていらっしゃ それにはまず一ページ、一ページを芸術品にする ことだ。この点、カラーのポートフォリオは貴重な 存在になる。また人間の面を強調したストーリーは 6 した。議論を重ねた上で雑誌編集に反映させていま らない読者の方も多いと思います。この表紙デザイ ン変更には理由があります。 編集長になって一年が経ったころ、私はビジネス 非常に楽しめる。そればかりか、教訓も得られる。 マンの話に耳を傾けていて、あることに気がつきま 経営者はみな悩みをもっているが、他の経営者がど した。特に20代後半から30代半ばの人から、男女 〔経済広報〕2015年10月号 マスコミ事情 を問わず「会社にロールモデルがいない」という声を よく聞くようになったのです。 「将来はあの人のような働き方がしたいという先 輩がいない」。 「いつかはあの先輩のようなプロフェッショナル になりたいという人がいない」。 「心から信頼できる、尊敬できる上司が身の周り にいない」…… さらに通勤電車では、入社して間もないと思わし になりました。 不思議とこのように考え方を変えると、すぐに読 者の反応が変わってきました。表紙デザインを修正 する数カ月も前のことです。もっといえば議論を始 めた段階で若い読者にも伝わり始めていたかもしれ ません。 見えない読者ニーズにいかに迫るかというのは難 しい課題ですが、いつでも創刊号の竹内会長のお言 葉が私に考えるきっかけをつくってくれるのです。 き女性がふたりで隣に座ってこんな話をしていまし 『プレジデント』 のDNA た。 「バブル社員はさ、プライドが高くて偉そうなこ とは言うけどコンサバでさ、全然挑戦しないんだよ ね。言うばっかりで、自分のことしか考えてない。 ほんっと、使えない」。 振り返れば2000年2月、月刊誌から月2回刊の 雑誌にリニューアルするときもそうでした。 『プレジデント』 はかつて、1980年代に 「歴史特集」 が大いにウケて部数を伸ばしました。戦国、幕末・ 折しも、2013年7月に始まった大銀行の理不尽 明治、太平洋戦争、中国史が歴史特集の4本柱。当 な職場を描いたTBSドラマ「半沢直樹」が大ヒッ 時の読者はこうした歴史特集を通してリーダーはい ト。会社の上司がすっかりバカにされる存在になっ かに生きるべきかを学びました。いや当時の読者の ていました。 方々は歴史の知識が豊富でしたから、弊誌を読んで ここで、はたと考えました。創刊50年の『プレジ 学んだというよりも、歴史上の英傑や参謀たちにわ デント』は、若いビジネスマンからみたらどういう が身を重ね、あるときは自分を鼓舞し、あるときは 存在に見えるだろうか。もしも「上司そのもの」のイ 「歴史のイフ」 に頭を巡らせて戦略的思考を磨く―― メージだったとしたら、通勤電車で居合わせた女子 生きた教材として読んでいただいたことでしょう。 社員のように「ほんっと、使えない」と読みもしない それが90年代に入って日本型経営に赤信号が灯 のに思われているとしたら……。 り、 「自己責任」 が声高に叫ばれるようになると、時 誌面を見直せば確かに「プライドが高くて偉そう 代の要請か 「仏教特集」 のような心の安定を得られる なことばかりいう上司」のように見えなくもありま ものに人気が出るようになりました。しかし、それ せん。しかも私は1991年大学卒の、最後のバブル も一時のことに終わり広がりを欠いたため、さらな 世代。耳が痛い。どうすれば若い彼ら、彼女らに伝 るリニューアルが求められました。そこで2000年 わるだろうかと思案します。 に 「ビジネスリーダーのための問題解決マガジン」 で そこで竹内会長の言葉に戻るわけです。 《一度読んでしまっても、また引き出しから出し て読む、そんな雑誌であってもらいたい》 そのためにまず上から目線を排し、読者とパラレ ルな関係をつくるための表紙を志向してデザインを 修正したというわけです。上司像のイメージチェン ジです。 あることを旗色鮮明にし、再び向上心を持ったビジ ネスマンに向けた本づくりにカジを切るようになり ます。 『プレジデント』 編集部には、その時々の読者ニー ズに合わせていくDNAが絶えず残っています。 書店・コンビニ・駅売店で買ってくださる市販読 者の平均年齢はいつの時代も40代半ばで変わって しかし表紙デザインを変えただけでは看板を挿げ いません。つまりはビジネスの最前線で指揮を執る 替えただけで大した意味がありません。中身につい 人たちです。 『プレジデント』はこれからも、どんな ても 「何度も何度も引き出しから出して読んでもら 時代になっても、ビジネスリーダーの人生の伴走者 える本」を目指して日々編集現場が知恵を絞るよう となる雑誌をつくってまいります。 k 2015年10月号〔経済広報〕 7 マスコミ事情 産経新聞大阪本社の 編集方針と取材体制 内 田 透(うちだ・とおる) 産経新聞大阪本社 経済部長 経済広報センターは7月23日、会員企業・団体の広報担当者を対象に、大阪で 「企業広報講座」を開催し た。産経新聞大阪本社経済部長の内田透氏が、同社経済部の取材体制や関西における経済報道について講演 した。参加者は約35名。 産経新聞の組織体制・取材体制 があるため、東西で記事の内容が変わってくること 産経新聞は、東京本社、大阪本社の2本社制を もある。大阪編集局では、関西、西日本のニュース 取っている。大阪本社は富山県、石川県、岐阜県、 を大きく扱うケースが多い。関西ネタを原則必ず第 愛知県以西をカバーしている。産経新聞の特徴とし 1面に入れたいという編集をしている。そのため、 て、両本社に編集局があり、それぞれ編集権を持っ 関西ネタについてはほかの新聞社と比べて大きく扱 て、紙面を作成していることである。大阪本社で われる傾向がある。 は、編集長が2人、その補佐が2人おり、計4人で 担当している。大阪経済部は全部で20人。部長の 大阪本社と東京本社の違い 下、部次長(デスク)が4人いて、朝刊デスク、連載 大きく3つの違いがある。1つは、東京本社では 企画の最終出稿を担当している。また、夕刊デス 夕刊を発行せず、大阪本社のみが夕刊を発行してい ク、 『フジサンケイビジネスアイ』を支援する編集委 る。これは、当社だけの特徴である。午後2時まで 員・専門記者が2人おり、実際に現場へ出向く記者 のニュースは当然夕刊で取り上げるが、東京は翌朝 は13人。これらは主に、エネルギー、財界、医療・ 刊が第1報となる。そのため、大阪の翌日の朝刊で 製薬、住宅関連などを担当するチーム、機械、金融 は、夕刊で取り上げた記事を外し、大胆な組み換え 関連を担当するチーム、空港・交通インフラ・流 が必要になることもあり、大阪のデスクは苦労す 通、サービス業などを担当するチームの3つに分か る。一方で、朝刊で新たな記事を掲載できるため、 れている。ただし、大きな案件が起きたときは、経 他社に比べて、関西ネタが扱いやすくなるというメ 済部全体で協力し、総力取材を行っている。 リットがある。 毎日の紙面作成について説明する。朝刊を例に取 2つ目は各社共通であるが、大阪には中央省庁が ると、午後4時ごろに、東京、大阪の両編集長がテ ない点。大阪での政治ネタは社会部が担当してお レビ会議を行い、その日のニュースを確認し、第1 り、それに加えて、西日本エリアの選挙報道も行っ 面から第3面に掲載する記事を決める。その後、大 ている。大阪本社経済部では、日銀、財務省、経済 阪本社では午後6時から朝刊早版の編集会議を開催 産業省といった取材先はない。企業報道こそが命で し、編集長、各部のデスクが、社会面、経済面につ ある。そのため、関西の企業ネタ取材に全力を挙げ いて綿密に記事の方向性を決めていく。その後、新 て取り組んでおり、他紙ともその分野でしのぎを しいニュース情報が入ってきた場合には、その情報 削っている。 を盛り込むかなど適宜打ち合わせをしながら紙面を 8 作成していく。このように、東西それぞれに編集権 〔経済広報〕2015年10月号 3つ目は東京、大阪でそれぞれウェブサイトを編 マスコミ事情 集、運営している点である。東京では、ブルーがイ 産学官の連携を含め、関西の財界セミナーでも取り メージカラーの産経ニュースと呼ばれるウェブサイ 組みを強化していくことが同意された。また、医療 トを、大阪では、産経WESTと呼ばれるピンクが 機器などは優れた技術を持つ中小企業も参入できる イメージカラーのウェブサイトをそれぞれ運営して 余地があることから関西全体で大きな力になる可能 いる。東西で記事の融通も行っているが、ライバル 性を秘めているはずである。 でもある。産経WESTでは、西日本のニュースを 2つ目は、外国人旅行客によるインバウンド需 いち早く、他紙のウェブサイトより早くアップされ 要の取り込みである。今期上半期の訪日観光客数 ることが求められている。特に社会部を中心に24 が913万人、前年同期比46%増だと発表された。通 時間体制で対応している。また、独自のコンテンツ 年で1800万人となるペースである。中国人観光客 として、「経済裏読み」というシリーズをデスクが中 による 「爆買い」 も大阪の百貨店や小売業は恩恵を受 心に執筆している。また、「ビジネスの裏側」という けている。ただし、先ほどのライフサイエンス産業 シリーズは担当記者が執筆しており、文字数の関係 も含め、これらの活動は関西全体でやっていかなけ で紙面に載せ切れなかった情報を裏話、舞台裏とい ればならない。大阪だけではなく、京都や神戸を含 う形でスポットライトを当て、読者により多くの情 め、関西全体で横断的な取り組みが必要であり、今 報を提供できるよう工夫している。 ある府県といった、壁を超えなければならないと考 大阪編集局、経済部の関心事 えている。 3つ目は、IR (統合型リゾート) の誘致計画であ 現在、編集局で最大の関心事は、11月22日、大 る。国会で審議中であり、今国会で成立するかは見 阪府知事選挙と大阪市長選挙が同時に行われる大阪 通せないが、IR整備による地域への経済貢献は大 ダブル選挙である。最近では、大阪都構想の住民投 きい。大阪では、湾岸の人工島にIR誘致の計画を 票が大きな話題となり、その中身、現状を読者へ分 立てている。しかし、橋下市長によるIR実現に向 かりやすい形で提供してきた。大阪維新の会の新た けた調査費が議会によって減額されたのに対し、ラ な候補者や、橋下氏の去就、自民、公明などの野 イバルとされる横浜市が既に調査結果をまとめて誘 党の動向など、まだ選挙戦の構図が固まっていない 致へ攻勢をかけているなど、後れを取り始めている が、これから情報が出てくるはずなので、分かりや ことが気掛かりである。そのほかにも、関西空港の すく、正確に読者に伝えていきたい。 民間への運営権売却や、川内原発再稼働に関連し 関西経済界に期待をかける「3つの可能性」 関西経済は地盤沈下を続けている。平成7年から た、関西圏の原発再稼働の動きにも注目している。 記者が求める情報とは 平成17年までの名目GDP(国内総生産)の成長率 記者が重視するポイントは、社会性、話題性、独 を見ると、東京、愛知がプラスなのに対し、大阪は 占性である。記者は読者にどれだけアピールできる 逆にマイナスと、1人負けだ。併せて、平成24年 か、どういう見出しが取れるのかを常に意識してい 度1人当たり県民所得も東京が442万円のところ、 る。そのひとつの要素として世界初、日本初などの 大阪府は294万円と148万円もの差が生まれている。 冠があると記者も食いつきやすい。話題性とは、今 また、資本金100億円以上の大企業が本社機能を大 のトレンドとどう関わっているかということであ 阪から移すという傾向も続いている。このようなネ る。インバウンド、健康医療、教育問題などが絡む ガティブな要因を抱える関西経済の復権には関西経 と記事として大きくなりやすい。最後に独占性であ 済の成長が不可欠である。その中で大きく3つの可 るが、記者が一番求めているものは特ダネである。 能性について期待している。 情報を大きなネタにできるかは記者の感性、センス 1つは、ライフサイエンス産業である。関西に に直結しているが、広報担当の皆さんには記者にこ は、iPS細胞研究所を有する京都大学を筆頭に、 のような社会性、話題性、独占性に富んだ情報を迅 大阪大学、理化学研究所といった優れた研究機関が 速、正確に提供していただければと思う。 あり、大阪には歴史ある製薬会社が集積している。 k (文責:国内広報部主任研究員 西田大哉) 2015年10月号〔経済広報〕 9 企業広報研究 「外見リスクマネジメント」 から企業風土改革 ~楽しくリスク感性を磨こう~ 石 川 慶 子(いしかわ・けいこ) 広報コンサルタント/日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 理事 リスクマネジメントは組織的に取り組む必要があ 含め4000人以上のメディアトレーニングを実施し るが、仕組みだけつくっても運用する個人のリスク てきた私自身の経験の中から、会見を組み立てる広 感性がなければ形骸化する。かといって、コンプラ 報部門の力量に焦点を当てて課題を指摘すると①リ イアンスを声高に叫んで、あれもだめ、これもだ スク予測力、②メッセージ構築力、③外見演出力、 め、これを守れ、では組織は硬直化し、雰囲気は暗 となる。 くなってしまう。楽しくリスクマネジメントに取り 組める方法はないだろうか、と考え続けてきた。メ ディアトレーニングを通して見えてきた課題を整理 メディアトレーニングで予測すべきリスクとは、 する中で、ひとつの可能性を感じたのが、今年から 「分かりにくい説明で誤解を与えるリスク、失言で 提唱している「外見リスクマネジメント」である。個 不快感を与えるリスク、その場にふさわしくない外 人の外見リスクに焦点を当て、自分を客観視する訓 見で違和感を与えるリスク」などである。そこを踏 練が積み重なれば、組織的なリスク感性を高めるこ まえて担当者は準備を進め、振り返りにおいても、 とに繋がるのではないか。服装、姿勢、歩き方やヘ 相手に与えた印象、客観的視点で評価する。伝えた アメイクに目を向け、リスク感性を高める「外見リ かどうかよりも、伝わっているかどうか、といっ スクマネジメント」の考え方を解説する。 た評価視点が重要だが、 「言いたいことが言えたかどう メディアトレーニングの現場から か」 という評価項目を要望してくるケースは今もある。 メッセージ構築に当たっては、予防系リスク、半 メディアトレーニングとは、言うまでもなく、カ 予防系リスク、非予防系リスクの考え方は、シンプ メラを通して自分を客観視する訓練で、報道陣の質 ルで現場では活用しやすい。不祥事系の予防すべき 問に適切に対応できる能力を育成することを目的と リスクが発生した際には、謝罪の言葉。サイバーテ している。 ロなどの外部からの攻撃では、敵に有利な情報を与 米国では、大統領選でニクソンとケネディがラジ えない。自然災害など事前回避できない危機発生時 オ討論とテレビ討論で結果が逆転したことから、イ には、被害者へのいたわりの言葉、といったメッ メージ向上のために、その必要性が認識された。日 セージの軸を組み立てられるからである。 本では、大手食品メーカ-の食中毒事件の際、社 この2点を確実にカバーした上で、外見演出も忘 長が報道陣に囲まれる中 「俺は寝てないんだ」発言を れてはいけない。なぜなら、記者は事実関係を取材 きっかけに、危機管理広報の中でニーズが高まった。 する力はあるが、調査力を持たない一般市民は「見 メディアトレーニングは、平時のイメージ向上と 危機管理広報の両面でその役割を果たすが、米国で はブランディング重視、日本ではリスクマネジメン トでのニーズ、と発展のきっかけが違うのは国民性 を反映しているようで興味深い。 10年以上にわたり、グループワークショップも 10 リスク予測力とメッセージ構築力 〔経済広報〕2015年10月号 た目」 で判断するからだ。 外見演出力 外見とは、表情や視線、姿勢、しぐさ、服装、髪 型、化粧といった非言語コミュニケーションの領域 のことである。非言語コミュニケーションの領域は 企業広報研究 心理学では様々な研究がある。例えば、日本人は、 込みを排除し、徹底的にリスクを洗い出し、発見す 顔面表情はあいまい度が高く、特に否定的な感情に ることだ。 「発見できないリスクはコントロールする ついては抑制的である、外国人に比べて視線恐怖症 ことができない」 。広報とリスクマネジメント両領 状を示すため、相手を直視することが少ない。 「も 域の先輩であった伝説の広報マン故・山中塁氏は、 の」 によるコミュニケーション研究は、化粧、髪型、 ミントの優しい香りが漂うタバコを手に口癖のよう 服装、メガネやアクセサリーを用いた感情の表出や に語っていた。私の中でずっと生き続けている言葉 他者操作などが可能だ。 でもある。 外見リスクとは、自分がこう見られたいと思って エグゼクティブの外見リスクマネジメントの具体 いる姿と実際に人に与えている印象とのギャップの 的目標はただひとつ。内面と同じレベルに外見を引 ことである。スポークスパーソンとして華やかさを き上げること。メディアトレーニングにおいては、 演出しなければいけないのに、地味に見えて埋没し 話し方は完璧なのに外見だけが見劣りしてしまう てしまう。反対に、反省と謝罪の気持ちを伝えたい ケースは多々あった。実にもったいないことだ。外 のに、派手過ぎて反感を持たれる。これは外見演出 見ばかりを気にする若者には、内面を磨け、と説教 の失敗である。スポークスパーソン個人の責任にす したくなるが、エグゼクティブにこそ、内面と同じ るのではなく、広報部門が知識を身につけ、外見演 輝きを外見にも備えてほしいと思う。ファッション 出にも的確なアドバイスを行い、専門家を手配する やマナーではなく、リスクマネジメントとして取り ネットワークを持つ必要があるだろう。 組むと、そこには全く違う景色が見えてくると強く 内面と同じレベルに外見を引き上げる 映画製作に10年間携わっていたこともあり、リ 訴えたい。 リスクの自分事化 アル空間とカメラというフレームが作り出す世界の ISO31000 として知られるリスクマネジメントの 違いには関心が高かった。リアル空間で気にならな 国際規格においては、リスク発見、分析、評価、対 いことであってもフレームになった途端、その人の 応までの流れの中でコミュニケーションと評価は仕 姿勢や視線、手の動きや服装のアンバランスさなど 組みを機能させる重要なファクターとして位置付け 悪い部分が強調されてしまうという現実は確かにあ られている。しかし、組織構成員の一人ひとりの意 る。その意味では、記者会見に限らず、自分の姿を 識が 「他人事」 では、仕組みは形骸化する。 カメラというフレームで捉え直すことは大変有効 外見リスクマネジメントとは、自分を客観視する だ。つまり、現実の自分の姿に向き合う、ここが出 メディアトレーニングの手法を活用し、個人が関心 発点だ。 を持ちやすい外見に焦点を当てることで、知識と共 カメラの中の自分はどう見えるだろうか。決して 若いとはいえないが、味わいのある、何かにじみ出 に表現力とリスク感性を高めようとする考え方だ。 “リスクの自分事化” と言い換えてもいい。 るような佇まいがあるはずだ。しかし、よく見てほ 一人ひとりが自分の外見をリスクとして捉えるこ しい。年相応の身なりとなっているか、服や髪型に とが、日々のリスク感性を磨く訓練となり、経営に 清潔感や信頼感は出ているだろうか。服のサイズは おけるリスクマネジメントにも役立つのではない 自分の体に合っているか、姿勢や歩き方、所作は か。外見というパーソナルなブランディングと、経 堂々としているか、メイクやアクセサリーはその場 営としてのリスクマネジメントを組み合わせた外見 にふさわしいか。一般的に、男性の場合は年齢と共 リスクマネジメントという領域が生まれることで、 に清潔感が薄れ、女性の場合は身につけ方が過剰に 広報実務家の活躍舞台も広がる。リスクマネジメン なる。男性はより清潔感を、女性はよりシンプルに トを楽しんで取り組める企業風土づくりにも繋がる すると品位が演出できる。 と期待したい。 「分からない」 「これ以上どうにもならない」と思い 込んだり、諦めたりはしないでほしい。現実の自分 の外見リスクに向き合うことは、客観的視点を養う にはうってつけだ。最もハードルの高い訓練といえ るかもしれない。リスクマネジメントの肝は、思い k 参考文献 『広報・パブリックリレーションズ入門』(猪狩誠也 編集、 宣伝会議) 『しぐさのコミュニケーション~人は親しみをどう伝えあ うか~』(大坊郁夫 著、サイエンス社) 2015年10月号〔経済広報〕 11 視点・観点 『ライフデザイン白書 2015年』に見る 人々の生活意識の変化 的 場 康 子(まとば・やすこ) (株) 第一生命経済研究所 上席主任研究員 人々の生活意識をたどる 『ライフデザイン白書』 少子高齢化による人口構造の変化は、人々の生活 にも様々な影響を及ぼしている。こうした社会環境 の変化に対応するため、人々はどのようなライフデ ザインを考えているのだろうか。 イフデザインを描くことができるように、学校にお ける学習科目のみでなく、幅広い教育を受けられる 社会の仕組みづくりが望まれる。 第2章 地域 我々が地域で生活していく上では、安全性や安心 『ライフデザイン白書』は、生活者の意識と行動の 感も重要な要素となる。犯罪や災害について不安に 変化を捉えるべく、ライフデザイン研究所 (現・第 思っていることを尋ねたところ、最も不安が大き 一生命経済研究所)が1995年に1回目を発表して以 かったのは 「地震」 (67.2%) であった。以下 「空き巣、 来、97年、99年、2001年、03年、05年、10年 と 長 ひったくりなどの犯罪」 (35.9%) 、 「過失などによる 期にわたり調査・発刊してきたものである。 火災」 (30.5%) と続いている。 本書は、ライフデザインを形成する6つの領域、 こうした日ごろの不安を少しでも軽減するため 「家族」 「地域」 「消費」 「就労」 「健康・介護」 「人生設計」 に、人々はどのようなことを必要と考えているのだ について、人々の意識と実態をまとめている。 本稿では同白書の全章から、注目されるデータを 抜粋して紹介する。 第1章 家族 ~親子関係と子どもの教育~ 子どもの成長過程には、学校教育だけでなく、 ろうか。地域の安心・安全を実現するために必要 だと思うことを聞いたところ、最も多く挙げられた のは 「日頃からの近所づきあい」 (47.0%) であり、以 下 「防犯カメラの設置」 (39.5%) 、 「街路灯の設置や公 園の見通しなどの整備」 (37.4%) 、 「防災グッズや食 料・水などの備蓄」(37.1%)と続いている。多くの 様々な教育が必要である。そこで、様々な教育内容 人が地震等の災害に備え、日ごろからの近所づきあ を提示して 「わが国の中学生・高校生に対し、以下 いや防災グッズなどの備蓄の必要性を感じている。 のような教育は十分であると感じているか」と尋ね たところ、 「国算理社などの学習科目」 「芸術教育」は、 12 た人の割合が8割近くを占めた。子どもが自らのラ 第3章 消費 十分である ( 「十分である」と「まあ十分である」の合 近年、自分の暮らし向きの水準を 「中程度」 と認識 計)と答えた人の割合が半数を超えた。他方、「消 する中間層が減少し、二極化が進んでいることが指 費・金融教育」「人生設計教育」は十分ではない(「十 摘されているが、本書でも同様の結果となった。こ 分ではない」と「あまり十分ではない」の合計)と答え うした中、モノを買うときの意識については、 「よく 〔経済広報〕2015年10月号 視点・観点 考えてからモノを買うようにしている」(以下「よく しながら仕事を続けるための支援策も今後の課題で 考えてから買う」)とする人が多く、2015年では6 ある。 割を超えた (図表1) 。これに「買い物をするのが好 きだ・楽しい」 「ある程度高くても良質のモノを購入 第6章 人生設計 するようにしている」などが続く。 「よく考えてから 本書では人生設計を経済計画だけでなく、仕事や 買う」と「買い物をするのが好きだ・楽しい」が、こ 学業、家庭生活、余暇生活、老後の生活など、すべ の10年で増加しており、人々が消費を楽しみつつ ての面を含んだ「自分の生涯総合計画」と定義した。 も熟考して購入する傾向が示された。 その実施状況を尋ねたところ、 「設計ができている」 第4章 就労 と答えた人が19.1%、「現在考えているところであ る」 が38.4%、 「考えていない」が42.5%であった。こ 老齢厚生年金の支給開始年齢は、男性が2025年 の実施状況別に 「自分の万が一 (死亡) 」 に対する不安 度以降、女性は2030年以降65歳となる。これに合 意識を見ると、人生設計ができている人では、でき わせて2025年度以降、原則希望者全員を65歳まで ていない人に比べて不安意識が低くなっていた。 「自 雇用することが高年齢者雇用安定法の改正により企 分や配偶者の老後費用」や「自分の老後の介護問題」 業に義務付けられた。こうした制度の変化に合わせ についても、人生設計ができている人では、これら て、自らのライフデザインを考えることが必要であ の不安意識が低い傾向が見られる。 る。 人々が生きていく上では、災害だけでなく、健康 高齢期にどのように生活をしたいかを尋ねたと 面、就労面など様々なリスクに直面する。人生設計 ころ、「できるだけ収入につながる活動や仕事をし を行うことには、こうしたリスクに備え不安を軽減 たい」が39.7%で最も多く、 「金額は少なくてもいい させる効果がある。今後は、企業、学校、地域社会 から、なんらかの収入を伴う活動や仕事をしたい」 など様々な場面で、人々に人生設計を行うことの大 (37.5%)が続いている。これらを合わせると、約8 切さを伝える取り組みが求められる。 k 割の人が高齢期も収入を伴う仕事をしたいと考えて いる。今後、企業をはじめ社会全体で働き方の多様 化を進め、高齢者雇用の受け皿のさらなる整備が求 められる。 第5章 健康・介護 がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中は日本 人の死亡原因の上位を占め、三大疾病とも呼ばれて いる。過去5年間に病気やケガで入院または手術を したことがある人々に、その経験によってどのよう な状況になったかを尋ねたところ、「今後の人生や 万が一のことについて深く考えた」(30.5%)が最も 高かった。傷病の経験が人生設計を考える上での きっかけのひとつになることが分かる。次いで「収 入が減った」 (18.5%)や、収入減の要因にもなり得 る 「働き方 (勤務時間・形態、仕事の内容など)を変 えざるを得なかった」 (12.8%)、「仕事を辞めざるを 得なかった」 (11.2%)という仕事に関係する項目が 挙がっている。病気に直面しても、可能な限り治療 ■図表1:モノの購入に対する考え方<複数回答> 52.9 59.5 63.3 よく考えてからモノを 買うようにしている 28.5 買い物をするのが 好きだ・楽しい 32.2 44.2 43.7 41.7 34.1 ある程度高くても良質のモノを 購入するようにしている 15.3 14.2 24.8 いつも決まったモノを 購入することが多い 30.1 24.2 24.5 モノを買うときは見た目よりも 使いやすさを重視することが多い とにかく価格の安いモノを 選ぶようにしている 15.2 16.8 22.8 自分の欲しいモノが 売っていないと思うことがある 17.2 16.6 23.8 買い物に行くと疲れる 16.6 15.4 17.2 捨てるときのことまで 考えてモノを買うようにしている 12.8 11.3 13.9 7.2 8.4 好きなブランドにこだわる ■ 2005年 ■ 2010年 ■ 2015年 11.4 3.8 3.9 5.0 どれもない 0 10 20 30 40 50 60 70 80(%) 2015年10月号〔経済広報〕 13 グループ広報戦略 4 「コーポレートブランドの価値向上」 を目指したグループ広報戦略 帝人グループ 帝人グループは2003年に「帝人グループの認知度向上と正確な理解の促進」「国際市場での存在感の向上」 「帝人グループの一体感と求心力の向上」を目的に、“テイジンブランド”の確立を打ち出した。広報、宣伝を 中心に「コーポレートブランドの価値向上」を意識したコミュニケーション活動を実践している帝人グループ のグループ広報戦略を聞いた。 コミュニケーションの組織・体制 部)は、これらグループ全体の広報、宣伝をはじめ とするコミュニケーション機能、ブランディング機 帝人グループは1918(大正7)年に帝国人造絹絲 能を統括している (組織図参照) 。この中で、東京広 として発足し、繊維事業からスタートした。その 報では海外広報も含めて担っており、CSRコミュ 後、事業の拡大と多角化を進め、現在では「高機 ニケーションとしては、社会貢献、統合報告書な 能繊維・複合材料」「電子材料・化成品」「ヘルスケ どを主に担当している。また、BtoB素材メーカー ア」 「繊維製品・流通」 「IT」など、多岐にわたる事 でありながら、 「テイジン未来スタジオ」 と呼ばれる 業をグローバルに展開しており、企業理念である ショールームを2007年11月に開設し、帝人グルー 「Quality of Life」の向上に努めている。国内58社、 プの製品、技術を顧客などのステークホルダーに広 海外94社の合計152社 (2015年3月31日現在)のグ く発信するための総合展示場として運営している。 ループ会社を持ち、欧州、北米、アジアなど全世界 帝人グループの技術力はアピールポイントのひとつ に展開。従業員数は国内9268人、海外6512人の合 であるが、素材メーカーの製品は、どこにどのよう 計1万5780人(2015年3月31日現在)であり、海外 に使用されているかを紹介するのも難しい。CC部 の従業員が多いことも特徴である。 はこのスタジオを運営・活用することによって、説 コーポレートコミュニケーション部(以下、CC 明が難しい内容も含め、社外へしっかりとアピール していく考えだ。 コーポレートコミュニケーション部の組織・体制 コーポレートコミュニケーション部長 一方、グループ会社の中には、独自に広報機能を 持つ会社もある。IT事業を手掛けるインフォコム という会社はJASDAQに上場しており、広報・ 広報課長 IR機能を担う組織を持っている。ここでは、リ 宣伝課長 リースの発信や取材対応は独自に行っているが、C 東京広報 (海外広報含む) 大阪広報 テイジン 未来スタジオ 未来スタジオ 宣伝・ ブランド WEBサイト CSR コミュニケーション 広報機能を有するグループ会社 ● インフォコム、テイジン・アラミド ● C部とは定期的にミーティング機会を持っており、 情報共有体制を整えるなど密に連携している。 ○グローバル広報について CC部では、海外への情報発信も強く意識してお 14 〔経済広報〕2015年10月号 グループ広報戦略 4 り、積極的に発信を行っている。現在、帝人グルー 最近では、コーポレートブランドの価値向上に加 プとして、日本語でのニュースリリースが年間200 え、マーケティングに資する活動にも積極的に取り 件近くあるが、そのうち英文、中文で発信して意味 組んでいる。帝人グループの場合、プロダクトブラ のあるものについては極力海外に向けて発信するよ ンドは本来各事業の管轄であるが、CC部は広報、 うにしており、内容や表現は、その言語でより効果 宣伝、ウェブ、ショールームなど、製品プロモー 的に伝わるように心掛けている。また、こうしたこ ションを支援できる機能やツールを多く持ち合わせ とを背景に、英語、中国語での広報対応が可能な体 ているため、特にリソースを投入しにくい新製品 制づくりを目指している。 や、消費者が関心を持ちやすい製品について、情報 一方、海外にもインフォコムと同じく独自に広報 発信を通じてサポートしていく考えだ。これもまた 機能を持つグループ会社がある。2000年に買収し コーポレートブランドの価値向上に繋がるものと考 た、オランダでアラミド繊維事業を手掛けるテイジ えている。また、そのほかに、アワードやランキン ン・アラミドという会社で、欧州中心の広報活動を グなどで社外からより高い評価を得ることも意識し 展開しているが、同社とも日ごろより連携を図りな ており、そのためにも今後より一層、関連部署と連 がら活動を進めている。こうした取り組みも含め、 携して進めていきたいとしている。 まだ緒についたところではあるが、帝人グループ ではCC部がグローバルに広報活動を推進してい る。 コーポレートブランドの価値向上が目標 事業グループとの情報共有・連携体制 CC部では、国内外にグループ会社を持つ各事業 グループと密接に連携している。特に情報発信の機 会損失を避け、各事業の情報について広報バリュー 現在は、 「コーポレートブランドの価値向上」を を見定めて効果的な広報活動に繋げるためにも、C ミッションとしてコミュニケーション活動を推進 C部は常に最新の情報が手に入る環境にあることが しており、成果も見えてきているが、以前はBtoB 求められている。帝人グループでは、事業グループ 素材メーカーということもあり、世の中に実体が伝 ごとに、海外のグループ会社に関することを含め、 わっておらず、事業が多様化しているにもかかわら 情報が入ってくるようになっている。日常の情報収 ず、 「古い体質の繊維会社」とのイメージを持たれて 集努力はもちろん大切であるが、それを支える仕組 いたことがあった。こうした状況に対し、1997年 みもまた重要であるということだ。以前、持株会社 ごろからは「広報、IRは経営トップの仕事」と位置 制に移行したときには、各事業からの情報収集や密 付けられるようになり、IR活動もスタート。広 な連携を行うため、 「グループ広報・IR委員会」 を 報、宣伝と一体となったコミュニケーション活動を 設置し、四半期ごとに会議を開く仕組みを整備し 展開してきた。2012年には広報・宣伝とIRが分 た。ところが、分社化されたことで事業間の壁が高 割されたが、引き続きこの3機能は密に連携して くなり、情報共有や議論などがうまく回らず、形式 対応している。この間、一貫してテイジンという 的な会議になってしまったという。 「コーポレートブランドの価値向上」を目指して活動 そのため現在は、各事業・機能との連携をより密 してきたわけだが、その中で広報機能としては、大 にして広報活動を行っていくために、毎年、年度初 きく 「社会的責任を果たす(情報開示)」「前向きに情 頭にCC部が事業と膝詰めでやりとりし、年間の情 報提供する(情報発信)」「ブランド価値低下を防ぐ 報発信計画を策定している。そして、その進捗状況 (リスク・クライシス対応)」の3点を担ってきてお や、月々の計画・実績、主なアクションなどについ り、メディア露出の増大や、認知度・好感度の向上 ては、毎月開催される経営会議体で共有・審議して といった形で成果を挙げている。 いる。広報担当者の具体的な動きとしては、計画の 2015年10月号〔経済広報〕 15 グループ広報戦略 4 進捗を確認しながら、新たな情報入手、発信のタイ 内から外への遠心力が働く中で、テイジンブランド ミングの調整、効果的な発信方法の選定などを日常 の名の下にグループの一体感、求心力を醸成するた 的に行っており、これにより、取りこぼしのない最 めの活動としてインターナルブランディングの推進 大限の発信、そして最も効果的な発信方法の選定が が求められた。CC部はそのけん引役を担う立場と 可能となっている。 して、ブランド管理を強化するとともに、グループ PDCAサイクルによる効果的な情報発信 関係現局と連携して広報活動を行っていくために グループ報をインターナルブランディングツールと 位置づけて、経営トップのメッセージはもちろん、 は、その広報活動の戦略、そして成果が非常に重要 ブランディングに資する活動を行う社員や組織の になる。CC部では、効果測定としてよく行われて 紹介記事などを発信している。また、2013年から いるアウトプット(報道)の評価・分析のほか、イン は全社的な取り組みとして、“One Teijin”というス プット(発信)についても独自の管理・評価を行って ローガンを掲げ、全ての社員が、組織や事業、地域 いる。 や国境、営業/技術といった職種を超えて持てる力 アウトプットの効果測定は、露出量、論調、広告 換算の3つの要素を指標化して報道分析を行ってお を結集し、一丸となって強くたくましい帝人グルー プを創っていくことを目指している。 り、半年単位で集約するとともに、毎月の進捗を 以前は、事業グループ間、営業・技術間、地域間 チェックしている。また、英文、中文の報道につい などに壁があり、同じ顧客に対して各事業が別々に ても、国内の分析ほどではないが、発信量、露出量 アプローチしているようなことがあった。このよう などをチェックしている。 なことをなくし、顧客に対して帝人グループが一丸 一方で、インプットについては、策定した情報発 となって取り組むことができれば、より付加価値を 信計画の進捗状況を把握・フォローするとともに、 高めた提案に繋がり、グループ全体の収益向上に貢 各事業・機能の責任者を中心とした積極的な情報発 献できる。全社的な施策としては、営業担当が一堂 信を期して、情報発信を点数化し、各事業・機能に に集まる営業大会を開催したり、グループ横断的な 目標値を設定して、毎月管理している。運用ルール 営業研修、マーケティング研修などを強力に推進 や配点基準なども、試行錯誤しながら整備を重ねて しているほか、“One Teijin”を冠したアワードなど きており、昨今は、社内でその点数の進捗などを意 も展開している。その中にあってCC部としては、 識した会話が交わされるようにもなっている。こう した取り組みについては情報発信強化に有用なこと “One Teijin”を推進するためのツールを制作・活用 しているほか、帝人グループの総合展示場であり、 として、毎月の経営会議体で報告、共有を行ってお “One Teijin”を象徴する場とも言うべき「テイジン り、広報活動の取り組みを目視化すると同時に、各 未来スタジオ」をグループ全体の融合の場としても 事業・機能から広報活動に対する理解・協力を得る 活用している。 ためにも効果を発揮している。 このように、同社では、情報発信計画の策定から CC部では、このようなグループ全体での一体感 の醸成、また、社員、組織の行動変革を目指して、 積極的な情報発信、経営層との共有・連携、実績の さらにインターナルブランディングを推進し、広 フォローまでの「PDCAマネジメント」を実践して 報・宣伝をはじめとするエクスターナルの取り組み おり、より効果的な情報発信に結びつけている。 とともに、究極のミッションである「コーポレート インターナルブランディングの着実な推進 2003年の持株会社制移行に際し、分社化されて 16 内への意識づけのためにブランド研修を行ったり、 〔経済広報〕2015年10月号 ブランドの価値向上」 にさらに注力していく考えだ。 k (文:国内広報部主任研究員 西田大哉) 3 企業広報講座ダイジェスト メディアリレーションと リリース作成 メディアリレーション さて、前号に続き、今回も、東京会場第1回の篠 ステムと記者の特性、マスコミの組織とスケジュー ル、パブリシティーの手法、記者の取材スタンスな どについて説明しました。 崎良一氏、大阪会場第1回の五十嵐寛氏の講座の模 プレスリリースの作成 様をお伝えします。前回は、両氏に共通する 「企業 広報の基本」について紹介しましたが、今月号では、 次は五十嵐氏の、プレスリリース作成に関する講 両者の講義の後半部分、篠崎氏の「メディアリレー 義内容です。プレスリリースとは「マスコミに記事 ション」 、五十嵐氏の 「プレスリリースの作成」につ を書いてもらうための資料で、社会に対する約束と いて報告します。 同じ扱い。ホームページに掲載するなら一般の人の まず、「メディアリレーション」ですが、メディア 目も意識する。情報の最上流なので、10人が読ん には、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、インターネッ で10人が同じ理解になるような書き方を」と五十嵐 トの5つがありますが、篠崎氏は、各メディアの規 氏は述べています。 模・影響力を測るために、広告費(2014年)を示し また、良いリリースを書くには、 「単なる前例踏 ました。それによると、テレビが1兆9564億円で 襲、独りよがりは考えもの。書いたリリースと記者 トップ。第2位は、なんとインターネットで1兆 の書いた記事を見比べること。担当記者に自社のリ 519億円。第3位が新聞(通信社)で6057億円、続い リースについて意見を聞く。同業他社、異業種など て雑誌が2500億円、ラジオが1272億円でした。イ のリリースをチェックすること」 を勧めています。 ンターネットの時代が到来していることが分かりま さらに、五十嵐氏は、見出し、リード、本文の書 す。特に若者は新聞やテレビを見ないでインター き方をひとつずつ丁寧に説明しました。見出しのつ ネットを利用しているため、若手にリーチするに け方については「コンパクトに、インパクトを持た は、インターネットを活用した広報が重要といえま せ、できるだけ12文字以内に収める」「見出しには す。 社名は不要」 「世界初、日本初など、初、最は人気が ただ、そうはいいながら、日本の場合、新聞の購 ある見出し」とアドバイスしました。リードの書き 読率、影響力には大きいものがあります。篠崎氏 方については「ベタ記事を参考に、ここだけで意味 は、その理由として①記者クラブ制度による一次情 が通じるように」 。本文については 「リードで説明し 報の独占、②巨大な部数、③新聞に対する高い信頼 たニュースについて、記者 (読者、視聴者) の 『なぜ』 度を挙げています。日本の新聞が、読売987万部、 に回答する」 ように、とご自身の考えを述べました。 朝日754万部、毎日335万部、日経278万部であるの このほかにもご紹介したい内容は数多くあります に対し、ウォール・ストリート・ジャーナルが148 が、ご本人の著作権もありますので、ご関心を持た 万部、ニューヨーク・タイムズ73万部、ワシント れた方は、当センターの企業広報講座にぜひご参加 ン・ポスト47万部。日本の新聞の部数がいかに多 ください。 いかが分かるでしょう。その後、篠崎氏は、取材シ k (文・常務理事・国内広報部長 佐桑 徹) 2015年10月号〔経済広報〕 17 経済広報センター活動報告 これからの 戦略イノベーションとガバナンス ~欧州ビジネススクール教授招聘プログラム~ 経済広報センターでは、7月13日~ 17日、欧州のビジネススクール教授を招聘し、日本経済・企業に関 する幅広い理解を深めてもらうことを目的に「欧州ビジネススクール教授招聘プログラム」 を実施した。 今回来日したのは、英国・シティ大学Cassビジネススクールのアンドレ・スパイサー教授、フランス・ HEC経営大学院のエレーヌ・ミュシカス客員教授、フランス・ESSECビジネススクールのマリー =ロー ル・ジェリック教授。いずれも、組織論、イノベーション、ビジネスモデル開発、コーポレート・ガバナン ス、CSR(企業の社会的責任)などの専門家で、訪日期間中は、これらの分野を中心に企業関係者、研究者、 政府関係者などと意見交換した。 プログラム前半では日本経済・企業を概観した。 まず慶應大学の竹森俊平教授が、世界経済の中での 日本経済の現状と今後について解説した。議論は折 しもヤマ場を迎えていたギリシャ債務問題にも及ん だ。また、日本総研の足達英一郎理事、一橋大学の 花崎正晴教授から、それぞれ日本企業のCSRと コーポレート・ガバナンスについて解説を受けた。 また、自ら投資も手掛ける経営コンサルティング会 7/14 富士フイルム 古森重隆会長・CEO(右) 「富士フイルムの経営改革」をテーマに 社であるドリームインキュベータの山川隆義社長 と、同社の事業を通して見た日本のビジネス環境や イノベーションなどについて議論した。 これらを念頭に、一連の企業訪問を実施した。イ ノベーション・ビジネスモデル開発面では、富士フ イルムの古森重隆会長から、フィルム事業が先細る 逆境下での事業構造改革の舵取りにつき、経営者自 身の視点からの説明を受けた。デジタル技術やフィ ルムにおける既存技術を活用しての医療機器、医薬 品、化粧品など新分野での成功は、同様の変革を迫 て説明を受けた。小売業界ではセブン&アイ・ホー られたコダック社との比較の面でも大いに教授陣の ルディングスから、主にコンビニ事業について、ド 探究意欲をかき立てた。NTTデータでは、岩本 ミナント戦略によるリアル店舗網を基盤としたeコ 敏男社長から同社のイノベーション戦略の解説を マースの取り込み(商品の支払い・受け取りサービ 受け、また、ウェアラブル端末によるビジネスソ ス)など先進的なビジネスモデル開発の説明を受け リューションなどの技術陣からの説明とデモに目を た。 見張った。学界からは金沢大学の山崎光悦学長に、 イノベーションを支える産学連携や大学改革につい 18 7/14 NTTデータ 岩本敏男社長(中央) イノベーションをテーマに。技術陣からのデモも 〔経済広報〕2015年10月号 CSR面では、同じくセブン&アイ・ホールディ ングスから、近距離の宅配を通した高齢者の見守 経済広報センター活動報告 りといった「近くて 便利」が、公益的に も活用されている ビジネスの紹介が あ っ た。 ま た、 コ マツ粟津工場では、 2014年 竣 工 の 広 々 とした組立工場で、 大型建機の最新鋭 製 造 ラ イ ン や、 省 7/15 コマツ粟津工場・こまつ の杜見学と金沢探訪 エネ操業に資する 地下水を活用した 7/17 シンポジウム「これからのイノベーションとガバナン ス〜欧州研究者の視点」 (左より、入山准教授、ジェリック教授、ミュシカス客員教 授、スパイサー教授) 冷暖房システムも地下ピットで見学したほか、地元 ションの組み合わせ)を目指すべきかという論点に への 「恩返し」として、建機活用による水田整地の省 関し、①欧州では米国流を取り入れつつも、これを 力化や、未利用間伐材チップのバイオマス燃料への 疑問視しマルチステークホルダー志向を見直す動き 活用など、農林業振興への取り組みの紹介があっ もある、②日本ではいずれの方向を目指すのかの分 た。これらは、企業の社会的責任に関する教授陣の 岐点にあり、米国型・欧州型のいずれも目指し得 関心を満たした。 る(コーポレート・ガバナンスコードもいずれの方 コーポレート・ガバナンスについては、関芳弘経 向性も許容)、③技術型とビジネスモデル型のイノ 済産業大臣政務官(自由民主党衆議院議員)、東京証 ベーションは二者択一ではなく両立が必要、④技術 券取引所、東京大学の岩井克人名誉教授との面談に やビジネスモデルのみでなく、製品・サービスのプ おいて、適用開始間もないコーポレート・ガバナン レゼンテーションの改革がビジネス革新を生む「文 スコードの含意、日本企業のガバナンスの戦後から 化的イノベーション」も重要であり、日本企業には の変遷などに関し説明を受け、意見交換した。ま その潜在力がある、といった、欧州の研究者ならで た、第一生命保険、三菱UFJフィナンシャルグ はの視点からの議論が交わされた。 ループから各社の成長戦略とガバナンスにつき説明 を受け懇談した。 招聘教授陣には、5日間という短い滞在期間の 中、各プログラムを通じ、日本企業の様々な側面や 日本企業を取り巻く環境について十分理解しても らった。また、日本は企業の戦略やガバナンスにお いて米国流の思考や手法、システムに範を取るこ とが多く、日本のビジネス環境・風土に照らし、そ れらをどこまで取り込むかは常に議論のあるところ だが、そうした中、第三の視座を持つ欧州のビジネ ス研究者と相互交流を図ることができた点でも、意 7/16 関芳弘 経産大臣政務官(右より2人目) コーポレート・ガバナンスやイノベーション政策を中心に 義深いプログラムとなった。さらに、滞在中に教授 陣が得たものは、日本企業のイノベーション、ガバ 最終日のシンポジウムでは、早稲田大学ビジネ ナンスといった経営学的な関心事への回答だけでな ススクールの入山章栄准教授のモデレーションの く、日本企業関係者や各界有識者との人脈、日本 もと、「これからのイノベーションとガバナンス」を 製品やサービスの心、日本文化・おもてなしなど、 テーマに、プログラムで得られた理解も踏まえ議 論した。欧州企業や日本企業が米国流(株主価値志 向のガバナンスとビジネスモデル中心のイノベー フェース・ツー・フェースでしか得難い多様な日本 「体験」 でもあった。 k (文責:国際広報部主任研究員 田中 勲) 2015年10月号〔経済広報〕 19 経済広報センター活動報告 米国地域社会との対話 ―ビジネス・スピーカー・シリーズ― 経済広報センターは、ワシントンDCの全米日米協会連合、各地の日米協会と協力し、シンポジウム 「ビジ ネス・スピーカー・シリーズ」を全米各地で開催している。2012年からこれまでに、14回実施している。 ビジネス・スピーカーズ・シリーズ開催の背景 ●摩擦の時代 ターが行った調査でも、7割近くが「日本は非常に 信頼できる」 と答え、 「日本と一層親密な関係となる ことを望む」 との回答も8割を超えた。 日本企業による対米直接投資が本格化したのは、 このような米国の対日観の変化は、過去30年に 1980年代後半のことである。自動車業界の場合、 わたり日系企業が積み上げてきた信頼のたまものと 米国での現地生産に主要メーカーが出揃ったのは、 いえよう。多くの日系企業は、地域社会への貢献の 80年代半ばであった。様々な業界にとり対米直接 ために草の根レベルの積極的な活動を行ってきた。 投資は、たび重なる貿易摩擦と、プラザ合意による 経団連も1989年に海外事業活動関連協議会 (現・企 円高を乗り越えるための大きな挑戦であった。 業市民協議会)を設立し、海外の地域社会への貢献 米国での事業活動が最初から大きかったわけでは ない。自動車の現地生産は、1985年には約30万台 を促進する税制の活用などを通じて日系企業のコ ミュニティー・リレーションズを支援してきた。 で、日本からの輸出台数(約313万台)の1割にも満 様々な関係者の真摯な努力により、日系企業の事 たなかった。しかし、それでも当時の米国には、 「異 業活動は大きく拡大した。日本の自動車メーカー 質」な日本が米国の資産を「買いあさる」ことへの強 は、1993年以降、一貫して米国に輸出するより多 い懸念があった。 「 米国の魂を買った」との批判や、 くの車を現地で生産している (2014年の場合、現地 「日本の経済力は、ソ連の軍事力よりも米国にとっ 生産381万台、輸出154万台) 。日系企業全体で見れ て大きな脅威」との世論調査もあった。日系企業は、 ば、2012年には全米で約72万人を雇用し、外資系 決して米国企業と同一には見られていなかった。 企業の中では、英国系企業に次ぐ規模となってい ●対米投資をめぐる変化 る。また、日系企業は、外資系企業の中で最大の輸 それから30年、状況は大きく変化した。第1に、 出者でもある。2012年の日系企業の輸出額は約676 日本の対米直接投資は、大幅に拡大した。投資残高 億ドルで、第2位の英国系企業を大きく引き離して を見ると、1985年の440億ドルから2013年末には約 いる。今や、日本企業にとり、米国はグローバル戦 7.5倍の3314億ドルとなった 。アベノミクス下の円 略の重要拠点であり、米国民の期待も高い。 安傾向にもかかわらず、日本企業は、ますます対米 ■米国における外資系企業の雇用者数 (2012年) 直接投資に積極的になっている。2013年には約400 億ドルの直接投資が行われ、英国などを抜き、日本 【総数:577万1200人】 は最大の対米投資国となった。2014年の投資額は 約380億ドルで、2年連続でトップとなった。 100 第2の変化は、日本の直接投資の拡大にもかかわ らず、かつてのような批判は見られないということ 96.3 (16.7%) 71.9 (12.5%) 62.0 (10.7%) 50 である。2014年にシカゴ・カウンシル・オン・グ ローバル・アフェアーズが行った世論調査では、 「日 本は、競争相手というよりパートナー」との回答が 8割を占めた。2015年にピュー・リサーチ・セン 20 〔経済広報〕2015年10月号 (単位:万人) 150 0 3.8 (0.7%) 1.4 (0.2%) 英国 日本 ドイツ ・・・ 韓国 ・・・ 中国 (1位) (2位) (3位) (19位) (25位) 出典:米商務省 経済広報センター活動報告 ■米国における外資系企業の輸出額(2012年) 【総額:3339億8000万ドル】 (単位:100万ドル) 企業幹部の発言を報じたこともあった。 90,000 60,000 また、ビジネス・スピーカー・シリーズの会合を 取材したメディアが、グローバル展開に関する日本 ■ビジネス・スピーカー・シリーズ開催地(★印) 67,594 (20.2%) 51,782 (15.5%) 45,543 (13.6%) 2012年 12月 2013年 4月 30,000 9,979 (3.0%) 0 実施年月 5月 1,125 (0.3%) 2014年 1月 日本 英国 ドイツ ・・・ 韓国 ・・・ 中国 (1位) (2位) (3位) (9位) (22位) 〃 2月 出典:米商務省 4月 ビジネス・スピーカーズ・シリーズの開催 5月 2015年 1月 日本の対米直接投資が拡大し、期待と注目を集め れば集めるほど、日本企業として積極的に地域社 2月 会と対話し、理解と信頼を深める努力も必要とな 3月 る。この観点から経済広報センターでは、ワシント 4月 ンDCのNAJAS(全米日米協会連合)、ならびに 5月 各地の日米協会と協力し、これまでに14回の会合 9月 を開催し、現地の経済界や大学、州政府関係者など を前に、日系企業のトップが、企業戦略や地域社会 への貢献などを説明、意見交換を行っている。加え て、米国内の日本専門家などを交えて、日米経済関 係強化のための課題について議論するセッションも マイク・ペンス インディアナ州知事 設けている。例えば、ミシガン州デトロイト近郊で 2012年12月に開催された会合では、第1部で日本 の自動車メーカー代表が米国での事業活動の概要や 米国経済への貢献を説明、質疑応答が行われた。第 2部では、元ホワイトハウス高官が日米経済関係の 発展に向けたTPP(環太平洋経済連携協定)の重要 性を強調、TPP実現に向けた政治課題などの議論 今後の取り組み がなされた。 ビジネス・スピーカー・シリーズは、日本の直接 ビジネス・スピーカー・シリーズは4年目を迎 投資の重要性を現地関係者と再確認する貴重な場に え、各地の日米協会から、より多くの開催希望が寄 もなっている。2014年2月にインディアナ州イン せられるようになってきた。同時に、ご協力いた ディアナポリスで行われた会合では、現地の有識 だける日系企業の輪も広がっている。経済広報セン 者、経済界、連邦政府関係者ら約300人を前に、マ ターとしては、引き続き、NAJASと協力し、日 イク・ペンス州知事が挨拶し、250超の日系企業が 米経済関係の発展の基盤を強化すべく、ビジネス・ 同州で約5万人の雇用を生み出していることを紹介 スピーカー・シリーズの活性化と充実に取り組んで した上で、日本との経済関係のさらなる発展につい いく。 ての強い期待を表明した。 k (文責:国際広報部主任研究員 長谷川正彦) 2015年10月号〔経済広報〕 21 6月10日~6月25日 NEWS の企業施設見学会」を開催し、社 浜市と共催)で 「企業人派遣講座」 会広聴会員13名が参加した。 を実施した。 ( テーマ:「都市マネ ジメント~環境未来都市の実現へ 6 / 15 Keizai Koho Center News 「第4回評議員会」を開 ~産業界の挑戦と都市マネジメン 催 し、2014年 度 決 算 に 関 ト」、講師:内山 博文 リビタ 常 する件、役員などの選任に関する 務取締役) 件について原案通り承認された。 また、2014年度事業について報 6 / 10 上智大学で「企業人派遣 告した。 講 座 」を 実 施 し た。 (テー 6 / 17 上智大学で「企業人派遣 講 座 」を 実 施 し た。 (テー マ:「日本の産業とイノベーショ 6 / 15 経団連会館でシンポジ ン~ANA商品サービスにおける ン~グリーン・イノベーションと ウム「インドネシアにおけ 世界との競争~」、講師:岡 功士 水素エネルギー~」 、講師:斎藤 る広報活動のあり方―現地メディ 全日本空輸 CS&プロダクト・ アの現状と留意点」を開催した。 サービス室商品戦略部部長) マ: 「日本の産業とイノベーショ 健一郎 JX日鉱日石エネルギー 中央技術研究所/上席フェロー) 6 / 10 (詳細は、本誌8月号を参照) 6 / 17 早稲田大学国際教養学 部で 「企業人派遣講座」を 慶應義塾大学商学部で 6 / 「企業人派遣講座」を実施 16 実施した。 ( テーマ:「日本企業論 実施した。 ( テーマ: 「日本企業論 した。 (テーマ: 「企業の成長戦略と ~日本企業の国際戦略とその経営 ~日本企業の国際戦略とその経営 国民の経済的繁栄」 、講師:阿波 理念~日本の情報通信市場と国際 理念~日本の建設機械製造業と国 誠一 ヤマト運輸 経営戦略部部長) 連携」 、講師:辻村 清行 元ドコ 早稲田大学国際教養学 モCS 相談役) 際戦略」 、講師:駒村 義範 コマ ツ 特別顧問) 部で 「企業人派遣講座」を 6 / 「企業人派遣講座」を実施 16 同志社大学経済学部で 日本経済新聞に「起業と し た。 ( テ ー マ:「 科 学 と 技 術 ~ 6 / 18 イノベーションに関する 人々の安心・安全を守るための企 席主任調査研究員を講師に迎え、 意識調査結果を公表」と題する「意 業の取り組み~」 、講師:内藤 博 講演会 「Ethical 消費社会を迎え 見広告」 を掲載した。 行 近畿日本鉄道 常勤監査役) るにあたり~グローバル企業のリ 6 / 11 日本貿易振興機構アジ ア経済研究所の佐藤寛上 スクと対応~」を開催した。佐藤 大阪ガスのガス科学館 6 / 13(大阪府高石市)で「生活者 22 〔経済広報〕2015年10月号 6 / 17 横浜国立大学大学院都 市イノベーション学府(横 氏は、欧米ではすでに倫理的消費 者行動の高まりが広がっており、 グローバル展開をしている日本企 災・供給チームマネジャー) を講じる必要性があると主張し 6 / 24 た。参加者は65名。 て、講演会 「日本・台湾連携でグ 点検を行い、できるところから手 ベーションの実例~」 、講師:梶 川 俊一 星野リゾート グループ料 業に対し、バリューチェーンから 経団連の東亜経済人会 飲統括ユニットディレクター) 議日本委員会の協賛を得 ローバル社会を勝ち抜く」 を開催し 6 / 24 6 / 「企業人派遣講座」を実施 23 た。 (詳細は、本誌8月号を参照) 実施した。 ( テーマ:「日本企業論 した。 ( テーマ: 「企業の成長戦略 と国民の経済的繁栄」、講師:名 6 / 24 和 正道 凸版印刷 情報コミュニ 浜市と共催)で 「企業人派遣講座」 マン モルガン・スタンレーMU ケーション事業本部トッパンアイ を実施した。 ( テーマ:「都市マネ FG証券 チーフエコノミスト) デアセンターコミュニケーション ジメント~環境未来都市の実現へ デザイン本部本部長) ~産業界の挑戦と都市マネジメン 慶應義塾大学商学部で 早稲田大学国際教養学 部で「企業人派遣講座」を ~日本企業の国際戦略とその経営 横浜国立大学大学院都 理念~日本の金融市場 (2) 」 、講 市イノベーション学府(横 師:ロバート・アラン・フェルド ト」、講師:井上 成 三菱地所 開 6 / 25 同志社大学経済学部で 6 / 23「企業人派遣講座」を実施 発推進部新機能開発室長) え、「地方創生と日本経済の活性 し た。 ( テ ー マ: 「科学と技術~ 人々の安心・安全を守るための 6 / 24 企業の取り組み~」 、講師:清水 マ:「日本の産業とイノベーショ 謙司 大阪ガス 中央保安指令部防 ン~サービス産業におけるイノ 化」と題する講演会を開催した。 上智大学で「企業人派遣 講 座 」を 実 施 し た。 (テー PR・IR・危機管理 11月号 関西学院大学の林宜嗣 経済学部教授を講師に迎 定価:1300円 (税込) 編集・発行 株式会社宣伝会議 購読申込 (詳細は、本誌8月号を参照) k (国内広報部 鈴木陽子) [大特集]総合誌&専門メディアを網羅 編集長100人が語る 「理想の広報」 [編集長インタビュー] 『日経ビジネス』 『週刊ダイヤモンド』 『週刊エコノミスト』 『AERA』 『クーリエ・ジャポン』 月刊「広報会議」読者サービスセンター TEL: 0 3 - 3 4 7 5 - 3 0 1 0 [DATA] インターネットからもお申し込みいただけます。 http://sendenkaigi.com/ 全メディアの読者層・編集方針・情報提供窓口など 2015年10月号〔経済広報〕 23 企業広報ニュース 国際プロジェクト紹介③ 広東省大学学生 招聘プログラムを実施 経済広報センターは、将来の日中友好の基盤強化を図るため、広東省人民対外友好協会と共催で、8月 3日から7日にかけて、華南農業大学、広東外語外貿大学、中山大学の8人の広東省大学生と関係者を招 聘した。 中国人大学生らは、アサヒグループホールディングス、アサヒビール、花王、三井不動産、カルビーの 5社を訪問、日本企業の環境政策やグローバル人事制度などについて意見交換した。 招聘した大学生のうち3人は、中国共産主義青年団中央の、中国(広東)高校伝媒聯盟に所属。訪日の模 様を中国のソーシャルメディアである「微信」 「微博」を通じて積極的に発信した。 (微信で7回、微博で40回) 【訪問先とテーマ】 面談・見学先など テーマ アサヒグループホールディングス 環境への取り組みとグローバル人材育成策 アサヒビール神奈川工場 環境への取り組み 花王墨田事業所と花王ミュージアム 環境への取り組み 三井不動産柏の葉スマートシティ 環境への取り組みと未来都市について カルビー 環境への取り組みとグローバル人材育成策 在京中国留学生との懇談会 留学生11人と懇談 在京中国メディアとの懇談会 人民日報、新華社、新華網、法制日報、中国青年報と懇談 【コーディネーター】 藤原慎二 経済広報センター 国際広報部主任研究員 掲載記事一覧:微信発信 掲載記事一覧:微博発信 カルビー 広東省大学生記者がアサヒ グループを訪問 広東省の学生記者が花王を 訪問 三井不動産柏の葉スマート シティ k 24 〔経済広報〕2015年10月号 企業広報ニュース 広 報 トピックス インターネットアンケートサービスのNTTコムリサーチとソーシャルメディアコンサル ティング会社のループス・コミュニケーションズはソーシャルメディアの公式アカウントを保 有し、通常業務で運用する立場にある企業担当者を対象に 「第7回 企業におけるソーシャルメ 企業におけるソーシャル メディアの活用状況調査 ディア活用状況」に関する調査を実施した。 調査では、企業のソーシャルメディア活用率は、前回調査から全体的に横ばいで推移した が、最も活用率の高い「フェイスブック」 はさらに上昇し、8割に達した。ソーシャルメディア の併用状況を見ると、 「1種類」という企業は年々減少する一方、 「7種類以上」 が増加して全体の 22.3%を占めている。多種類のメディアを使い分ける企業が増えているといえる。活用施策で は、「フェイスブック」で「自社サイト・自社ブログへのリンク付のつぶやき」 が増加し、今回調 査で最も高い36.3%となった。前回調査では「ツイッター」が最も高かったが、「ツイッター」を 上回り、 「フェイスブック」と自社サイトへの連携強化が進んでいる。また、 「ユーチューブ」 での 「動画を活用した商品やサービスのプロモーション」が28.7%に上昇し、動画による発信も増え ている。 運用上の課題では「営業上の効果が見えない」 「人材の不足」 「教育・トレーニングの不足」 が引 き続き多く挙げられている。今後活用したいソーシャルメディアとしては、 「ツイッター」 「ユー チューブ」 「LINE」 「インスタグラム」が継続して上昇した。中でも、 「インスタグラム」 は11.7%と いう数字であるが、前回調査から2倍以上の伸びを見せており、今後の動向が注目される。k (国内広報部主任研究員 西田大哉) Book 『 パブリックリレーションズ [第2版]』 同書は、2006年3月に発刊された『パブリックリレーション ズ』の全面改訂版だ。インターネット時代、グローバル時代が 到来し、企業を取り巻く社会環境が変化したため、パブリッ ク・リレーションズの役割も変化していると著者は述べてい る。改訂版は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サー ビス)とパブリック・リレーションズとの関係や、パブリッ ク・リレーションズの中核となるメディア・リレーションズ に関する記述が充実し、今日的な内容となっている。 「パブリック・リレーションズ」を日本語で表現すると「広 報」と受け取られがちだが、著者は「『広報』という表現ではパ ブリック・リレーションズの生命ともいえる 『関係構築』要素 が欠落している」と主張する。同書では、パブリック・リレー ションズとは、目的や目標を達成するために高い倫理観に支 井之上 喬 著、 えられた「双方向性コミュニケーション」と「自己修正」をベー 日本評論社 スとした関係構築であると定義し、 「人」 「モノ」 「金」 「情報」 の4 2015年5月発行、 つの経営資源を個々に強化し、統合する 「第5の経営資源」で 2600円 (税別) あると述べる。 同書には、パブリック・リレーションズの歴史や意義に加 えて、企業・組織における危機管理、戦略的パブリック・リレーションズの構築と実践、パブ リック・リレーションズ活動の評価と測定など、経営者や広報担当者の取り組みの参考となる 内容も多く掲載されている。パブリック・リレーションズについての深い考察が感じられる一 k 冊。 (国内広報部主任研究員 大野祥子) 2015年10月号〔経済広報〕 25 2015 10 企業・団体のCSR活動 創業90周年記念 社会貢献事業「“空気をはぐくむ森”プロジェクト」をスタート ダイキン工業(株) お問い合わせ先 ダイキン工業(株) TEL:06-6373-4348(大阪) 03-6716-0112(東京) HP http://www.daikin.co.jp/csr/forests http://www.kkc.or.jp/ 平成 昭和 年 月 日発行 (毎月 回 日発行) 第 年 月 日第 種郵便物認可 55 27 10 10 23 1 3 1 1 Ⓒ Conservation International/photo by Anton Ario コミュニティの収入源となるエコツーリズムの開発のため、コ ミュニティグループとの話し合いを重ねる インドネシアでは2008年より森林再生プロジェクトを実施して いる 37 巻第 Ⓒ Conservation International/photo by Peng Ly て、世界7カ所で、 「“空気をはぐくむ森”プロジェク 域のコミュニティが森林の大切さを理解し、木を切 ト」をスタートさせた。世界自然遺産に登録されて らなくても生活を営めるよう、持続可能な農業支 いる知床半島をはじめ、インドネシア、ブラジル、 援、環境教育、違法伐採・密猟の取り締まりなど、 カンボジア、インド、中国、リベリアで住民の生活 その地域に合った支援を提供し、未来にわたって持 と森林や生物多様性の保全を両立させる取り組みを 続可能な森林管理を目指している。 進めている。現在、二酸化炭素(CO2)を蓄えている 支援地のひとつ、カンボジア南西部の中央カルダ 森林が途上国を中心に減少しており、多くのCO2が モン山地では、森を観光資源として地元住民がガイ 大気中に排出されている。その量は世界の温室効果 ドし収入を得る、エコツーリズムを支援し、地域住 ガス排出の約1割にも上る。途上国での森林減少の 民の代替生計確立に取り組んでいる。また、地域住 主な要因は、農地開拓や薪炭材利用のための過剰伐 民が伐採などの違法行為を取り締まる活動にも支援 採など人的要因が大きく、その根底にあるのは「貧 し、違法行為が減るなど効果が表れているという。 困問題」 である。 これらの取り組みはホームページでも公開してお り、 「現地からのおたより」 という形でプロジェクト の進捗状況が確認できる仕組みとなっている。ま た、グローバル各拠点の従業員が参加できる仕組み をつくり、担当者としてそのプロジェクトに積極的 に携わっているのも大きな特徴である。 同社は今後も、 「温暖化を緩和する森」 「きれいな空 気をはぐくむ森」を地元住民と共に持続可能な方法 Ⓒ Conservation International/photo by Lykhim Ouk 社内から集まった約5000本の鉛筆をカンボジアの子どもた ちに寄贈 発行:一般財団法人 経済広報センター で保全し、事業と社会貢献の両輪から、世界規模で 地球環境に貢献していく考えだ。 k (国内広報部主任研究員 西田大哉) Printed in Japan 434 発行人/渡辺 良 編集人/佐桑 徹 [ ISSN 0918–4600 ] 東京都千代田区大手町一 三 (本体価格三〇〇円+税) - 二 - 経団連会館 電話〇三 六 - 七四一 〇 - 〇 二 一 〒一〇〇 〇 - 〇〇四 ( 送料別、賛助会員の購読料は会費に含む) そこで、同社では、単なる植林だけではなく、地 号 ダイキン工業は、2014年の創業90周年を記念し 号通巻 10
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