線形代数・資料 2006年度版 c °2004–2006 YH 1 シラバス記載内容 科目概要 開講年度 教育課程名 授業科目名 開講学期 単位数 対象学科・学年 必修・選択の別 授業方法 担当教員 教員室番号 連絡先 オフィスアワー 2006 年度 主専門教育課程 共通科目(昼間コース) 線形代数(Linear Algebra) 前期 2 単位 情報工学科および応用化学科 1 年 必修 講義 長谷川雄之(HASEGAWA,Yuji)(共通講座・数理科学講座) N464 (E-Mail)yuji@mmm.muroran-it.ac.jp ※緊急連絡に限る。件名に必ず学籍番号・氏名を記すこと。 (未定) シラバス 授業のねらい 到達度目標 授業計画 線形代数学は、工学部のどの課程でも必要となる数学の基礎知識のひと つである。本講では、線形代数学の初歩を講義する。最大のテーマは、 行列の基本変形(掃き出し法)の習得である。連立1次方程式の解法は 基本変形を使って与えられ、また、逆行列や行列式も基本変形を使って 計算できるようになるからである。ところで、線形代数学は論理の学習 のための非常によい教材でもある。その特性を生かして、多少なりとも 論理的思考力を身につけてもらうこともねらいのひとつである。 与えられた条件からどのように結論を得たのか、論理的に説明できる。 和・積などの演算規則や正則行列・行列式の定義を把握する。行列の基 本変形を確実に行うことができる。また、その応用として連立1次方程 式の求解や正則性の判定・逆行列の計算および行列式の計算をすること ができる。余因子展開を用いて行列式を計算することができる。 教科書の第1章から第3章までを扱う。 ●行列 (1) 行列とその和 (2) 行列の積 (3) 正則行列,逆行列 (4) 行列の分割(特に行分割・列分割) ●連立1次方程式 (5) 連立1次方程式の解き方(1) (6) 行列の簡約化 (7) 連立1次方程式の解き方(2) (8) 中間試験 (9) 基本行列 (10) 逆行列の性質と計算法 ●行列式 (11) 置換と転倒数 (12) 行列式の定義と特別な場合の計算 (13) 行列式の性質(1) (14) 行列式の性質(2) (15) 行列式の展開 2 シラバス記載内容 教科書及び教材 線形代数 桂田・竹ヶ原・千吉良・長谷川・山崎 共著/学術図書出版 社/本体1800円 参考書 成績評価方法 履修上の注意 教員からのメッセージ ●1.成績(詳細は初回講義時の冒頭に述べる。) 成績は中間および定期試験の得点をもって評価する。 合格基準は次の (1),(2) を満たすこととする。 (1) 中間試験の得点×0.4+定期試験の得点×0.6≧60 (2) 定期試験の得点≧40 ●2.試験採点基準 次の点を考慮して採点する: (1) 定義をよく把握しているか (2) 論 理的な考察をしているか (3) しっかりした手順で計算できているか (4) 丸暗記していないか。 解答のみが正しくても配点どおりの点になるとは限らない。途中経過を 詳しく書くべきところでいきなり結論を書いた場合は低い評価となる。 ●1.出欠席 次の者は不履修とする。 ・中間試験を欠席した者および定期試験を欠席した者 次の者は再試験(下記2参照)を受験することができない。 ・欠席回数が 3 回を超えた者 ※居眠りや継続的な私語のほか、下記5で述べる行為に該当する場合 は欠席とみなすから注意のこと。 ●2.再試験の合格基準(詳細は初回講義時の冒頭に述べる。) 再試験とは、「成績評価方法」の式で算出した得点が合格基準に達し ていない学生を対象に行う試験のことである。再試験における合格基 準は次のとおり。 再試験実施時点での持ち点×0.3+再試験の得点×0.7≧60 再試験に合格した場合、成績簿上の得点を60点に修正する。 ●3. 【重要】試験についての注意(特に過年度生) (再試験を行う場合は下記に準ずる) 中間試験の日程は、講義時及び掲示板で事前に通知する。 中間試験は通常の講義時間外に行うこともある。 掲示板に掲載される情報に常々注意を払うこと。 ●4.講義および試験欠席の申し出は 1 週間以内に 本項目は病気・事故などやむを得ない事情による欠席を 1 週間以内に 申し出た者に限り適用する。 申し出時に欠席事由を証明するもの(診断書等)の提示を求める場合 がある。なお、大学教務課あてにも必ず欠席届を提出すること。 ・講義欠席:申し出があった場合、上記1の欠席回数に数えない。 ・試験欠席:申し出があった場合、追試験の対象とする。ただし 1 週 間経過後は無断欠席扱いとし、追試験等は一切行わないものとする。 ●5.演習 講義中に適宜「小演習問題」を実施する。 解答にあたって、教科書・ノートの参照/学生どうしの相談を認める。 このとき解答欄を空欄のままにしていると欠席とみなすことがある。 講義中に解答を述べた場合は自己採点をすること。 小演習問題の提出を求められた場合は速やかに提出すること。事後提 出や解答欄が空欄の提出は欠席扱いとする。 講義に関する最新の情報はN464前掲示板または http://www.mmm.muroran-it.ac.jp/~yuji/lecture info/ 学習・教育目標との対応 関連科目 「線形代数」は、副専門「思考と数理」コース 2 年次後期開講の「線形 空間」の前提となる科目である。 内容は、2006 年 1 月 17 日現在のものです。最新の内容は、Web で公開されているものを参照して下さい。 3 成績評価について 成績評価について — シラバスの補足 — ◆1.合格基準 成績は中間および定期試験の得点をもって評価する。 試験はそれぞれ 100 点満点で行う。合格基準は次の (1), (2) をともに満たすこととする。 ¶ ³ (1) 中間試験の得点 × 0.4 + 定期試験の得点 × 0.6 = 60 (2) 定期試験の得点 = 40 µ ´ ◆2.成績簿に記入する得点 (1) が満たされていても (2) が満たされていない場合は、成績簿に 59 点と記入する。 それ以外は、(1) の左辺の値(小数点以下切り捨て)を成績簿に記入する。 ◆3.計算例 中間試験0点、定期試験100点→0+60→60点(合格) 中間試験20点、定期試験87点→8+52.2→60点(合格) 中間試験89点、定期試験40点→35.6+24→59点(不合格) 中間試験100点、定期試験39点→59点((2)を満たさないので不合格) 期末試験終了時点における合格・不合格の分岐は概ね下図のとおり。 100 90 60 20 40 60 87100 ◆4.再試験について(再試験を実施する場合) 再試験での合格基準は次を満たすこととする。ただし「再試験実施時点での持ち点」 とは◆2で成績簿に記入した得点のことである。 ¶ ³ 再試験実施時点での持ち点 × 0.3 + 再試験の得点 × 0.7 = 60 (左辺の合計点で、小数点以下は切り捨てる) µ 再試験に合格した場合、成績簿に記入した得点を60点に修正する。 (再試験での得点に修正するわけではないので注意のこと) ´ 4 記 号・記 法 表 記号・記法表 以下に数学で多用される記号・記法の一覧とその説明をまとめておく. ● 特別な数の集合に対しては,次のような記号が使われる: N:自然数 0, 1, 2, . . . の全体[Natural numbers] (0 を含めるのは整数論の流儀) Z: 整数 0, ±1, ±2, . . . の全体[ドイツ語 Zahlen] a Q: 有理数 (a, b は整数,b 6= 0) の全体[Quotients] b R: 実数の全体[Real numbers] √ √ C: 複素数 a + b −1 (a, b は実数, −1 は虚数単位) の全体[Complex numbers] N, Z, Q, R, C を手書きするときにはいちいち太い部分を塗りつぶすのは面倒なの で,N, Z, Q, R, C あるいはこれに似た形にすることが多い. √ −1 は i で表すことも多いが,i はしばしば添字などの可変整数を √ 表すので,混同を避ける必要がある場合には −1 を用いるほうがよい. なお,虚数単位 ● 数学ではギリシャ文字も多用される. 大文字 小文字 読 み 大文字 小文字 読 み 大文字 小文字 読 み A α アルファ I ι イオタ P ρ ロー B β ベータ K κ カッパ Σ σ シグマ Γ γ ガンマ Λ λ ラムダ T τ タウ ∆ δ デルタ M µ ミュー Υ υ ウプシロン E ², ε イプシロン N ν ニュー Φ φ, ϕ ファイ Z ζ ゼータ Ξ ξ グザイ X χ カイ H η エータ O o オミクロン Ψ ψ プサイ Θ θ シータ Π π パイ Ω ω オメガ 文字によっては上の表とは違う読み方をしている人もいる.たとえば Θ, θ を「テー タ」,Ξ, ξ を「クシー」など. ● 教科書によっては, 「定理」のほかに「命題」 「補題」 「系」という項目が立っている ことがある. 命題 (Proposition; (略)Prop.):理論を展開していく上で重要なことがら.要証明. 定理 (Theorem; (略)Thm., Th.):命題のうちとりわけ重要度の高いもの. 補題 (Lemma; (略)Lem.):定理や命題を証明する際に使われる補助的な命題のこと. 系 (Corollary; (略)Cor.):定理や命題の直接の帰結として得られる命題のこと. 5 記 号・記 法 表 ● 次の省略形は板書でしばしば使われる: i.e.:すなわち;言い換えれば. [ラテン語 id est (=that is) の略] s.t.:∼であるような,∼をみたすような. [such that の略] q.e.d., Q.E.D.:証明終わり. [ラテン語 quod erat demonstrandum の略] 証明終わりを「¤」や「 」で表すことも多い. cf.:参照せよ;比較せよ. [ラテン語 confer の略] e.g.:例えば. [ラテン語 exempli gratia の略] etc.:など. [ラテン語 et cetera の略] ● 次の記号もよく用いられる. ∀ 全ての;任意の.[Any, All, Ar- ∃ 存在する.[Exist] ∴ ゆえに;したがって. bitrary] ∵ なぜならば. ≥, > 「=」と同じ意味. ≤, 6 「5」と同じ意味. ⊇ 「k」と同じ意味. ⊆ 「j」と同じ意味. ● 集合の包含関係を表す「A ⊂ B 」「B ⊃ A」は A = B であることを排除しないこ とも多い.この場合,A が B に含まれかつ A 6= B であることを明示するときは 「A $ B 」「A ( B 」あるいは「B % A」「B ) A」と表す. 一般に S を集合とするとき,a が S の ‘要素’ であることを「a ∈ S 」または「S 3 a」 と書く.例えば「a ∈ Z」は「a が整数全体の集合 Z の要素」,つまり a が整数とい うことである. S の要素のうち条件 P をみたすもの全体からなる集合を「{x | x ∈ S, P}」あるい は「{x ∈ S | P}」と書く. ● これまでに説明してきた記号について以下にいくつか使用例を挙げておく. 例 f (x) = 1 + x2 とすると f (α) 6= 0 (∀ α ∈ R). [どんな実数 α をとっても f (α) 6= 0 である. ] 例 ∀ a ∈ R ∃ b ∈ R s.t. b3 = a. [任意の実数 a に対して b3 = a となる実数 b が 存在する. ] 例 座標平面上の原点を中心とする単位(閉)円板は {(x, y) ∈ R2 | x2 + y 2 5 1} と書くことができる.ただし R2 は座標平面のことである. 7 1 行 列 8 第 1 章 行 列 1.1 和の記号 P について(行列の積の結合法則) n 個の数 x1 , x2 , . . . , xn の和を,記号 n X P を使って n P xi で表す: i=1 xi = x1 + x2 + · · · + xn . i=1 左辺は詳しくいえば「整数 i を 1 から n まで動かすときの xi の和」を表している.動 n P かす整数を表す文字を i 以外に代えても和はもちろん変わらないから,たとえば xk k=1 とかかれていても同じ和を意味する. 定数 c をこの和の左または右からかけると,分配法則により c(x1 + x2 + · · · + xn ) = P (x1 + x2 + · · · + xn )c = cx1 + cx2 + · · · + cxn であるが,これを記号 を用いて表すと P ¶ と分配法則 ³ n n n ³X ´ ³X ´ X c xi = xi c = cxi i=1 i=1 (1.1) i=1 µ ´ 次に,二重の添字つきの場合について考える.mn 個の数 xij (1 5 i 5 m; 1 5 j 5 n) の総和を求めてみよう.そのために xij を次のように行列の成分のように配置してみ る.以下では「横方向が行,縦方向が列」という行列の用語を流用する. x11 x21 .. . x12 x22 .. . → S1 · · · x2n .. ... . ° 2 xm1 xm2 · · · xmn 1↓ ● 2↓ ● T1 T2 ° 1 · · · x1n → S2 .. . ' ' ' $&%& ! " # W.)X (-Y,/ W.)Z ! " # (*),+ 4 n↓ ● ··· ° m → Sm Tn (-(.+ (*)0/ (-1.) 24352 687:9:;=<?>A@CBED=FG7:DIHKJKL MONP<Q8R:BEDSFG7ADIHTJKLCMGUIV i = 1, 2, . . . , m に対して第 i 行目の成分の和を Si とおく.つまり第 1 行目に関しては n n P P S1 = x11 + x12 + · · · + x1n = x1j であり,一般に第 i 行目に関しては Si = xij で j=1 ある.成分の総和はもちろん S1 , S2 , . . . , Sm の和に等しいから記号 P j=1 を使って とかける.次に j = 1, 2, . . . , n に対して第 j 列目の成分の和を Tj とおく:Tj = すると成分の総和は n P j=1 m P Si i=1 m P xij . i=1 m n P P Tj に一致するから, Si = Tj という等式が得られる. (要 i=1 j=1 するに,横方向に足し算するのと縦方向に足し算するのとどっちを先にするかの違い P があるだけである. )ここで Si , Tj を の形に戻すと, P 1.1. 和の記号 について(行列の積の結合法則) P ¶ の交換法則 9 ³ mn 個の数 xij (1 5 i 5 m; 1 5 j 5 n) について等式 n m ³X X i=1 m n ³X ´ X ´ xij = xij j=1 が成り立つ.つまり,i に関する j=1 P (1.2) i=1 と j に関する P は交換可能である. µ ´ 最後に,これまで述べてきたことを使って行列の積の結合法則 (AB)C = A(BC) を 示したい.ここで,A = (aij ), B = (bjk ), C = (ckl ) はそれぞれ m × n 型,n × r 型, r × s 型の行列とする.示すべきことは,(AB)C と A(BC) の (i, l) 成分がすべての i, l (1 5 i 5 m; 1 5 l 5 s) について一致することである.そこで,A(BC) の (i, l) 成分を gil , BC の (j, l) 成分を fjl とおくと,fjl の定義から n n r ³X ´ X X gil = aij fjl = aij bjk ckl j=1 j=1 k=1 となる.今しばらくの間 i と l を固定しておくことにすると,この式に現れる 4 種類の 添字のうち動くものは j と k のみであることに注意する. さて,まず初めに 1 つの j を取り出してこれも固定してしまおう.すると動いてい る添字は k のみであり,aij は k によらず一定なので,分配法則 (1.1) によって r r ´ X ³X aij bjk ckl . bjk ckl = aij fjl = aij (1.3) k=1 k=1 ☞添字がごちゃごちゃして見づらい時には,動かさない添字を伏せてみるとよい.たとえ ば aij → a および bjk ckl → bk ck とおきかえると,式 (1.3) は r r ´ X ³X a bk ck = abk ck k=1 k=1 となって,確かに分配法則 (1.1) と同じ形になる.以下でも同様. P 次に j を 1 から n まで動かして (1.3) を辺々加え, の交換法則 (1.2) を使うと n r n ³X r ³X ´ X ´ X aij bjk ckl = aij bjk ckl ← (1.3) を辺々加える j=1 j=1 k=1 = j に関する P k=1 r ³X n X k=1 ´ aij bjk ckl . ← X の交換法則 j=1 をみると,ckl は j の値に関わらず一定だから,再び分配法則により n n ³X ´ X aij bjk ckl = aij bjk ckl . j=1 j=1 10 第 1 章 行 列 よってこれを k に関して辺々加えれば r ³X n X k=1 ´ aij bjk ckl = j=1 n r ³X X k=1 ´ aij bjk ckl j=1 となる.以上をまとめると gil = n X j=1 aij r ³X k=1 ´ bjk ckl = n r ³X X k=1 ´ aij bjk ckl j=1 が成り立つことがわかった.ところでこの式の右辺は積 (AB)C の (i, l) 成分である.i, l は任意に固定しておいたので,結局どの i, l についても上式が成り立つことになる. すなわち (AB)C = A(BC) であることが示された. 1.2. 行列の積と平面の回転 1.2 11 行列の積と平面の回転 平面上のすべての点を,原点を中心として角度 θ だけ反時計回りに回転させること を考える.P = (x, y) が P0 = (x0 , y 0 ) にうつったとき,x0 , y 0 を x, y および θ を用いて 表してみよう.P を半径 r の円周上の点とし,x 軸と OP のなす角を α とすると, ½ ½ x = r cos α y = r sin α θ x0 = r cos(α + θ) y 0 = r sin(α + θ) α α θ である.第 2 の式は,三角関数の加法公式を用いると ½ 0 x = r cos α cos θ − r sin α sin θ = x cos θ − y sin θ y 0 = r sin α cos θ + r cos α sin θ = x sin θ + y cos θ と書くことができる.あるいは,行列の積を用いれば µ 0¶ µ ¶µ ¶ x cos θ − sin θ x = . 0 y sin θ cos θ y さて,点 P0 をさらに θ0 だけ回転させた点を P00 = (x00 , y 00 ) とすると, µ 00 ¶ µ ¶µ 0 ¶ µ ¶½µ ¶µ ¶¾ x cos θ0 − sin θ0 x cos θ0 − sin θ0 cos θ − sin θ x = = (1.4) y 00 sin θ0 cos θ0 y0 sin θ0 cos θ0 sin θ cos θ y であるが,P00 は P を θ + θ0 回転させた点とみることもできるから µ 00 ¶ µ ¶µ ¶ x cos(θ + θ0 ) − sin(θ + θ0 ) x = y 00 sin(θ + θ0 ) cos(θ + θ0 ) y µ ¶µ ¶ cos θ cos θ0 − sin θ sin θ0 − sin θ cos θ0 − cos θ sin θ0 x = sin θ cos θ0 + cos θ sin θ0 cos θ cos θ0 − sin θ sin θ0 y ½µ ¶µ ¶¾µ ¶ 0 0 cos θ − sin θ cos θ − sin θ x = sin θ0 cos θ0 sin θ cos θ y (1.5A) (1.5B) (1.5C) という関係も成り立つ.ただし,(1.5A) から (1.5B) への変形は三角関数の加法公式, (1.5B) から (1.5C) への変形は行列の積の定義を用いた.(1.4) と (1.5C) を比べると,こ の例では行列の積の結合法則が確かに成立していることがわかる. 以上のことからも,行列の積の定義が自然なものであると考えることができる. (原 点を中心とする平面の回転は線形変換と呼ばれるもののひとつで,実際には線形変換 の合成に対応するように行列の積が定められているのである. ) 12 1.3 第 1 章 行 列 行列の分割と積 行列をいくつかの水平線,垂直線で区分けすることを行列の分割と呼ぶ.例えば, a11 a12 a13 A = a21 a22 a23 a31 a32 a33 は 3 次正方行列の分割である.この分割により 4 つの小さな行列 µ ¶ µ ¶ a21 a22 a23 A11 = (a11 ), A12 = (a12 a13 ), A21 = , A22 = a31 a32 a33 が生じるが,その意味で µ A= A11 A12 A21 A22 ¶ と表してよい.また,しばしば成分と小行列を組み合わせて a11 a12 a13 A = a21 A22 a31 などのように表すこともある. 積の計算において行列の分割が効果を発揮する例を以下に挙げておこう.いずれも 簡単な計算で確かめることができる. ¶ 特別な形の 3 次正方行列の積 A, B を 2 次正方行列とするとき, a 0 0 b 0 0 ab 0 0 0 0 = 0 A B AB 0 0 0 0 0 0 A B AB 0 0 = 0 0 0 a 0 0 b 0 0 ab ³ (1.6) (1.7) µ ¶ 特別な形の 4 次正方行列の積 A, B, C, D を 2 次正方行列,O を 2 次零行列とするとき, à !à ! à ! A O C O AC O = O B O D O BD ´ ³ (1.8) µ なお,区切り線は見やすさのために記入しているので,省いても別に構わない. ´ 1.4. 積の行列の行分割表示 1.4 13 積の行列の行分割表示 A, B をそれぞれ m × n 行列,n × r 行列とすると積 AB が定義され,その (i, j) 成 分は cij = ai1 b1j + ai2 b2j + · · · + ain bnj で与えられるのであった.ここで,aik , bkj はそ れぞれ A の (i, k) 成分,B の (k, j) 成分である.AB の第 i 行 (ci1 ci2 · · · cin ) を求め るには A の第 i 行 ai と B との積 ai B b11 a a · · · a b21 in . i1 i2 .. を計算すればよいことはすぐにわかるであろう. b12 · · · b1r b22 · · · b2r c c ··· c i1 i2 ir = .. . . . . .. . bn1 bn2 · · · bnr すなわち,積 AB に関して次の表示を得る: ¶ 積 AB の行分割表示 ³ a1 a1 B a2 B a2 AB = . B = . .. .. am B am (1.9) µ ´ 次に,A の左から l × m 行列 B をかけたとき,積 BA の行分割表示を調べよう.B の第 i 行を bi とすれば,BA の第 i 行は (1.9) より bi A であるが,これを a1 , a2 , . . . , am を用いて表すことを考えたい. m 次単位行列 E の第 i 行を ei とし,B = (bij )l×m とすると B の第 i 行は bi = (bi1 bi2 · · · bim ) = bi1 e1 + bi2 e2 + · · · + bim em と表すことができる.また,直接計算から簡単にわかるように ei A = ai である.した がって,行列の積の分配法則により bi A = (bi1 e1 + bi2 e2 + · · · + bim em )A = bi1 a1 + bi2 a2 + · · · + bim am . これが各 i についていえるから,積 BA の行分割表示は次のようになることがわかる: b11 a1 + b12 a2 + · · · + b1m am a1 b11 b12 · · · b1m .. .. .. . . . . . . .. .. = . . bl1 a1 + bl2 a2 + · · · + blm am am bl1 bl2 · · · blm (1.10) この表し方は通常の行列どうしの積と同じ配置になっていて印象的である.ただし太 字のところはあくまで行ベクトルであるから注意. l = m = 2 のときに,いくつかの B に対して積 BA を具体的に表してみよう. 14 第 1 章 行 列 µ (a) B (b) B (c) B (d) B (e) B ¶ µ 0 1 0 = のとき……BA = 1 0 1 µ ¶ µ k 0 k = のとき……BA = 0 1 0 µ ¶ µ 1 0 1 = のとき……BA = 0 k 0 µ ¶ µ 1 l 1 = のとき……BA = 0 1 0 ¶ µ µ 1 1 0 のとき……BA = = l l 1 ¶ µ ¶ a1 a2 = a2 a1 ¶µ ¶ µ ¶ 0 a1 ka1 = 1 a2 a2 ¶µ ¶ µ ¶ 0 a1 a1 = k a2 ka2 ¶µ ¶ µ ¶ l a1 a1 + la2 = 1 a2 a2 ¶µ ¶ µ ¶ a1 0 a1 = 1 a2 a2 + la1 1 0 ¶µ 第 1 行と第 2 行が 入れ換わる 第 1 行が k 倍され る 第 2 行が k 倍され る 第 1 行に第 2 行の l 倍が加えられる 第 2 行に第 1 行の l 倍が加えられる ●積の行列の列分割表示 次に,AB の列分割表示について考える.AB の第 j 列を求めるには A と B の第 j 列との積を計算すればよい. a11 a21 .. . a12 a22 .. . · · · a1n · · · a2n .. .. . . am1 am2 · · · amn b1j b2j .. . = bnj c1j c2j .. . cmj そこで B の第 j 列を b0j とおくことにより次の表示を得る. ¶ 積 AB の列分割表示 AB = A(b01 b02 · · · b0n ) = (Ab01 Ab02 · · · Ab0n ) ³ (1.11) µ ´ n × (r + s) 行列 B の列分割表示を (c01 · · · c0r d01 · · · d0s ) とし,C = (c01 · · · c0r ), D = (d01 · · · d0s ) とおく.C, D はそれぞれ n × r 行列,n × s 行列であり,B = (C D) と分割表示することができる.m × n 行列 A に対して,積 AC, AD の列分割表示は (1.11) よりそれぞれ AC = (Ac01 Ac02 · · · Acr0 ), AD = (Ad01 Ad02 · · · Ad0s ) である が,これと積 AB の列分割表示を見比べると,AB = (AC AD) となることがわかる. 一般に,B の列を何本かずつまとめて t 個の行列に分けたとき次のことが成り立つ. B = (B1 B2 · · · Bt ) と分割したとき, AB = (AB1 AB2 · · · ABt ) (1.12) なお,列分割においても前項の (1.10) にあたる性質が成り立つが,ここでは省略す る.また,(1.12) と双対的な性質が行方向への分割に対しても成立するが,前項では 省略した. 15 2 連立1次方程式 16 第 2 章 連立1次方程式 ●連立 1 次方程式の変形 1 〔解なし〕 ¤ 3x1 + x2 + 2x3 = 3 x1 + x2 + 2x3 = 1 2x + 3x + 6x = 3 1 2 3 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 3x1 + x2 + 2x3 = 3 2x + 3x + 6x = 3 1 2 3 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 − 2x2 − 4x3 = 0 x2 + 2x3 = 1 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 x2 + 2x3 = 0 x2 + 2x3 = 1 x1 x1 ↓ =1 x2 + 2x3 = 0 0=1 ↓ =0 x2 + 2x3 = 0 0=1 2 〔解 ¤ 1 組〕 3x1 + x2 + 2x3 = 3 x1 + x2 + 2x3 = 1 2x + x3 = 1 1 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 3x1 + x2 + 2x3 = 3 2x + x3 = 1 1 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 − 2x2 − 4x3 = 0 − 2x − 3x = −1 2 3 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 x2 + 2x3 = 0 − 2x − 3x = −1 2 3 x1 x1 ↓ = 1 x2 + 2x3 = 0 x3 = −1 ↓ x2 = 1 = 2 x3 = −1 3 〔解 2 組以上(実は無数)〕 ¤ 3x1 + x2 + 2x3 = 3 x1 + x2 + 2x3 = 1 2x + 3x + 6x = 2 1 2 3 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 3x1 + x2 + 2x3 = 3 2x + 3x + 6x = 2 1 2 3 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 − 2x2 − 4x3 = 0 x2 + 2x3 = 0 ↓ x1 + x2 + 2x3 = 1 x2 + 2x3 = 0 x2 + 2x3 = 0 x1 ↓ =1 x2 + 2x3 = 0 0=0 2.1. 行列の簡約化 2.1 17 行列の簡約化 ¶ 例題(初級) ³ 行基本変形により,次の行列を簡約化せよ. 1 2 −1 2 1 2 −1 2 (1) 2 5 −3 6 (2) 2 7 −5 7 2 1 2 −3 3 5 2 −3 µ (1) 最も基本的な例題である. ° 1 (1, 1) 成分が 1 なので,これを使って第 1 列の他の成分を 0 にする. R21 (−2) 1 2 −1 2 1 2 −1 2 R31 (−2) 2 5 −3 6 −→ 0 1 −1 2 2 1 2 −3 0 −3 4 −7 ° 2 (2, 2) 成分が 1 なので,これを使って第 2 列の他の成分を 0 にする. R12 (−2) 1 2 −1 2 1 0 1 −2 R32 (3) 0 1 −1 2 −→ 0 1 −1 2 0 −3 4 −7 0 0 1 −1 ° 3 (3, 3) 成分が 1 なので,これを使って第 3 列の他の成分を 0 にする. 13 (−1) 1 0 1 −2 R 1 0 0 −1 R23 (1) 0 1 −1 2 −→ 0 1 0 1 0 0 1 −1 0 0 1 −1 (2) 変形過程における (2, 2) 成分や (3, 3) 成分は,当然ながら (1) のように都合よく一発で 1 になるとは限らない. ° 1 (1, 1) 成分が 1 なので,これを使って第 1 列の他の成分を 0 にする. R21 (−2) 1 2 −1 2 1 2 −1 2 R31 (−3) 2 7 −5 7 −→ 0 3 −3 3 3 5 2 −3 0 −1 5 −9 ° 2 (2, 2) 成分が 3 なので,まず第 2 行を 3 で割って (2, 2) 成分を 1 にする.次にこの 1 を 使って第 2 列の他の成分を 0 にする. R12 (−2) 1 2 −1 2 1 2 −1 2 1 0 1 0 R (1) 32 2 (1/3) 0 3 −3 3 R−→ 0 1 −1 1 −→ 0 1 −1 1 0 −1 5 −9 0 −1 5 −9 0 0 4 −8 ° 3 (3, 3) 成分が 4 なので,まず第 3 行を 4 で割って (3, 3) 成分を 1 にする.次にこの 1 を 使って第 3 列の他の成分を 0 にする. R13 (−1) 1 0 0 2 1 0 1 0 1 0 1 0 R23 (1) R3 (1/4) 0 1 −1 1 −→ 0 1 −1 1 −→ 0 1 0 −1 0 0 1 −2 0 0 4 −8 0 0 1 −2 ´ 18 第 2 章 連立1次方程式 ¶ 例題(中級) ³ 行基本変形により,次の行列を簡約化せよ. 3 6 −2 −4 1 −1 2 1 (1) 4 3 −8 9 (2) 2 −2 3 4 2 1 −9 −3 3 −3 4 7 µ ´ (1) ポイント 分数はできる限り避けた方が計算は楽になる. (もちろん不可避な場合もある. ) ° 1 (1, 1) 成分を 1 にするには第 1 行を 3 で割ってもよいが,分数が出てきてしまうので別 の操作を考える.第 1 行から第 3 行を引くと (1, 1) 成分が 1 になるから,それを使って第 1 列の他の成分を 0 にする. 21 (−4) 3 6 −2 −4 1 5 7 −1 R 1 5 7 −1 R31 (−2) R13 (−1) 4 3 −8 9 −→ 4 3 −8 9 −→ 0 −17 −36 13 2 1 −9 −3 2 1 −9 −3 0 −9 −23 −1 ° 2 次いで (2, 2) 成分を 1 にしたい.第 2 行を −17 で割ってしまうと分数が出てくるから, 第 2 行と第 3 行を使って 1 を作ってみよう(第 1 行は使ってはならない).ここでは第 2 行 から第 3 行の 2 倍を引けばよく,こうしてできた 1 を使って第 2 列の他の成分を 0 にする. 12 (−5) 1 5 7 −1 1 5 7 −1 R 1 0 −43 −76 R (9) 32 (−2) 0 −17 −36 13 R23 10 15 −→ 0 1 10 15 −→ 0 1 0 −9 −23 −1 0 −9 −23 −1 0 0 67 134 ° 3 (3, 3) 成分を 1 にするには,第 3 行を 67 で割ればよい.この 1 を使って第 3 列の他の成 分を 0 にする. 13 (43) 1 0 −43 −76 1 0 −43 −76 R 1 0 0 10 R23 (−10) R3 (1/67) 0 1 10 15 −→ 0 1 10 15 −→ 0 1 0 −5 0 0 67 134 0 0 1 2 0 0 1 2 (2) ここまでの例では,第 i 列 (1 5 i 5 3) が基本ベクトル ei になるように変形することがで きた.しかし,そのようにできないこともある.それどころか e1 , e2 , e3 を全部つくること ができない場合もある. ° 1 (1, 1) 成分の 1 を使って第 1 列の他の成分を 0 にする. 21 (−2) 1 −1 2 1 R 1 −1 2 1 R31 (−3) 2 −2 3 4 −→ 0 0 −1 2 3 −3 4 7 0 0 −2 4 ° 2 (2, 2) 成分を 1 にしたいが,第 2, 第 3 行をどう使ってもそのようにはできない(第 1 行 は使ってはならない) .あきらめて右隣に移ると,(2, 3) 成分は 1 にできるのでそれを使っ て第 3 列の他の成分を 0 にする. R12 (−2) 1 −1 0 5 1 −1 2 1 1 −1 2 1 R32 (2) 2 (−1) 0 0 −1 2 R−→ 0 0 1 −2 −→ 0 0 1 −2 0 0 0 0 0 0 −2 4 0 0 −2 4 ° 3 第 4 列をみると,一番下の成分が 0 であるからこれを 1 にすることはできない(第 1, 第 2 行は使ってはならない).よって,° 2 の一番右の行列が (2) の行列の簡約化である. 2.1. 行列の簡約化 19 ●行列の簡約化(一般の場合) 行列 A の簡約化は,次のように進めていく. A が零行列ならばそれは既に簡約化されている.そこで A は零行列でないとする. このとき 0 でない成分をもつ列があるので,それらのうち最初のもの(最も左側にあ るもの)が e1 になるように A に行基本変形を施す.変形後の行列を A1 とする. 次に,A1 において第 2 成分以下に 0 でない成分をもつ列を探す.もし見つからなけ れば作業は終了である.一方,そのような列があったときは,それらのうち最初のも のが e2 になるように A1 に行基本変形を施す.ただし,前の段階で作った e1 が不変と なるような行基本変形のみを許すこととする.変形後の行列を A2 とする. 一般に,A を m × n 型行列とし A0 = A とおくと,簡約化の第 i 段階は次のように 述べることができる. ¶ 簡約化の第 i 段階 ³ Ai−1 において,第 i 成分以下に 0 でない成分をもつ列を探す. ° 1 見つからないとき 作業は終了である. (→ Ai−1 が A の簡約化となる. ) ° 2 見つかったとき そのような列のうち最初のものが ei になるように Ai−1 に行 基本変形を施す.ただし,これまでの段階で作った e1 , . . . , ei−1 が不変となるよう な行基本変形のみを許すこととする.変形後の行列を Ai とし,i = m の場合は作 業を終了する. (→ Am が A の簡約化となる. )そうでなければ第 i + 1 段階へ進む. µ ´ 簡約化の過程を,2 つの具体例で見てみよう. 次の A を A0 とおいて作業開始 0 1 1 2 1 2 A = 0 2 3 5 2 5 0 3 5 8 4 9 次の A を A0 とおいて作業開始 1 2 0 5 1 3 0 7 A= 3 1 1 6 2 2 0 6 第 1 段階 第 1 成分以下に 0 でない成分をも つ最初の列は第 2 列.これを e1 に変形. 第 1 段階 第 1 成分以下に 0 でない成分をも R21 (−2) つ最初の列は第 1 列.これを e1 に変形. yR31 (−3) R21 (−1) R (−3) y 31 0 1 1 2 1 2 R41 (−2) A1 = 0 0 1 1 0 1 1 2 0 5 0 0 2 2 1 3 0 1 0 2 A1 = 第 2 段階 第 2 成分以下に 0 でない成分をも 0 −5 1 −9 つ最初の列は第 3 列.これを e2 に変形. 0 −2 0 −4 R12 (−1) この行基本変形で, yR32 (−2) 第 1 段階で作った 第 2 段階 第 2 成分以下に 0 でない成分をも e1(第 2 列)は不変 つ最初の列は第 2 列.これを e2 に変形. 0 1 0 1 1 1 R12 (−2) R (5) A2 = 0 0 1 1 0 1 y 32 R42 (2) 0 0 0 0 1 1 1 0 0 1 第 3 段階 第 3 成分以下に 0 でない成分をも 0 1 0 2 つ最初の列は第 5 列.これを e3 に変形. A2 = 0 0 1 1 この行基本変形で, R (−1) これまでに作った 0 0 0 0 y 13 e1 , e2 (第 2, 第 3 列)は不変 第 3 段階 第 3 成分以下に 0 でない成分をも 0 1 0 1 0 0 つ最初の列は第 3 列.既に e3 になっているの A3 = 0 0 1 1 0 1 で,A3 = A2 として第 4 段階へ. 0 0 0 0 1 1 第 4 段階 第 4 成分以下に 0 でない成分をも A は 3 × 6 型なのでここで終わり.A3 が A の つ列がないので作業終了.A3 (= A2 ) が A の 簡約化となる. 簡約化となる. 21 3 行 列 式 22 3.1 第3章 行 列 式 置換と転倒数,符号 ●置換の定義 1, 2, 3 の並べ方は ° 1 1, 2, 3 ° 2 1, 3, 2 ° 3 2, 1, 3 ° 4 2, 3, 1 ° 5 3, 1, 2 ° 6 3, 2, 1 の 6 通りある.一般に,1, 2, . . . , n について全部で n! = n × (n − 1) × · · · × 1 通りの 並べ方があり,それらを 1, 2, . . . , n の順列という. 順列は,文字(数字)の置き換え操作を表していると考えることができる.例えば, n = 3 の場合で° 1 は 1 を 1 に,2 を 2 に,3 を 3 に置き換えるという操作,つまり何も しないという操作のことである.また,° 4 は 1 を 2 に,2 を 3 に,3 を 1 に置き換える 操作を表している. ° 1 の順列 1 2 3 ↓ ↓ ↓ 1 2 3 ° 4 の順列 1 2 3 ↓ ↓ ↓ 2 3 1 一般に,1, 2, . . . , n の順列 k1 , k2 , . . . , kn に対し,1 を k1 に,2 を k2 に,. . . ,n を kn に置き換える操作 1 2 ··· n ↓ ↓ ↓ k1 k2 · · · kn が定まる.順列からこのようにして得られる置き換え操作を,集合 {1, 2, . . . , n} 上の 置換と呼ぶ.順列 k1 , k2 , . . . , kn から決まる置換は µ ¶ 1 2 ··· n k1 k2 · · · kn で表される. (行列ではないので混同しないこと! !)順列が与えられればそれに応じて 置換が決まるが,異なる順列には当然異なる置換が対応するから,順列と置換は実質 的に同じものである. 集合 {1, 2, . . . , n} 上の置換の全体を Sn で表す. 例 S3 は 6 個の置換からなる.それらは次の通りである: µ ¶ µ ¶ µ 1 2 3 1 2 3 1 ι= , σ= , τ= 1 2 3 1 3 2 2 µ ¶ µ ¶ µ 1 2 3 1 2 3 1 ρ= , ξ= , η= 2 3 1 3 1 2 3 ●転倒数 1 5 i, j 5 n とする.σ = µ 1 2 ··· n k1 k2 · · · kn ¶ 2 3 , 1 3 ¶ 2 3 . 2 1 ¶ ∈ Sn において i < j であるのに ki > kj となるような組 (i, j) の個数を σ の転倒数と呼び,E(σ) で表す.また,χ(σ) = (−1)E(σ) を σ の符号と呼び,χ(σ) = +1, −1 のとき σ をそれぞれ隅置換,奇置換という. 3.1. 置換と転倒数,符号 23 µ ¶ 1 2 3 4 例 σ= ∈ S4 の転倒数を求めてみよう.大小を比較する 2 数の組み合 4 1 3 2 わせは次のように選んでいけばよい. 4µとの組み合わせ ¶ 1 2 3 4 4 1 3 2 1µとの組み合わせ ¶ 1 2 3 4 4 1 3 2 3µ との組み合わせ ¶ 1 2 3 4 4 1 3 2 つまり,次の 2 数の組み合わせから転倒数を求めることになる. (4, 1) (4, 3) (4, 2) (1, 3) (1, 2) (3, 2) これらのうち,右側の数の方が小さい組み合わせは (4, 1), (4, 3), (4, 2), (3, 2) の 4 通り だから,E(σ) = 4 である. ●転倒数の増減と符号の変化 µ ¶ µ ¶ 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 σ= ∈ S6 および τ = ∈ S6 をとる.σ と τ 6 2 4 1 5 3 6 2 1 4 5 3 では,対応する順列の中央の隣り合う 2 数(1 と 4)が入れ換わっている.E(σ) = 8, E(τ ) = 7 であることは組み合わせを数え上げればすぐにわかるが,以下に述べるよう に,実は E(σ) を求めておけば E(τ ) は数え上げをすることなく求めることができる. このことを見るために,E(σ) と E(τ ) の間の関係をもう少し詳しく見てみよう.σ, τ それぞれについて大小を比較する 2 数の組み合わせを書き出すと次のようになる. (6, 2) (6, 4) (6, 1) (6, 5) (6, 3) (2, 4) (2, 1) (2, 5) (2, 3) (4, 1) (4, 5) (4, 3) (1, 5) (1, 3) (5, 3) (6, 2) (6, 1) (6, 4) (6, 5) (6, 3) (2, 1) (2, 4) (2, 5) (2, 3) (1, 4) (1, 5) (1, 3) (4, 5) (4, 3) (5, 3) ただし左側が σ, 右側が τ に関するものであり,どちらも 黒字は,1 も 4 も含まない組 緑字は,1 を含むが 4 は含まない組 青字は,4 を含むが 1 は含まない組 赤字は,1, 4 どちらも含む組 という具合に色分けしてある.両者を見比べると,赤字のところが (4, 1) から (1, 4) に 変化しているが,黒字の組は不変で,緑字の組と青字の組は場所が入れ換わっている だけである.つまり,赤字の組以外は全体としては一致していることがわかる.よっ て,τ では (4, 1) が (1, 4) になった分を考慮して E(τ ) = E(σ) − 1 = 8 − 1 = 7 となる. 上記の考察は一般に通用する.それを符号を用いて述べたものを補題として掲げて おく. 24 第3章 行 列 式 ¶ 1 2 ··· n 補題 σ = ∈ Sn において,隣り合う 2 数 ki と ki+1 を入れ換えた k k · · · kn µ 1 2 ¶ ··· i i+1 · · · とすると,χ(τ ) = −χ(σ) が成り立つ. 置換を τ = · · · ki+1 ki · · · µ 証明 大小を比較する 2 数の組み合わせは,σ については (k1 , k2 ) (k1 , k3 ) · · · (k1 , ki ) (k1 , ki+1 ) (k1 , ki+2 ) ··· (k1 , kn ) (k2 , k3 ) · · · ... (k2 , ki ) .. . (k2 , ki+1 ) .. . (k2 , ki+2 ) .. . ··· (k2 , kn ) .. . (ki−1 , ki ) (ki−1 , ki+1 ) (ki−1 , ki+2 ) · · · (ki , ki+1 ) (ki , ki+2 ) (ki−1 , kn ) ··· (ki+1 , ki+2 ) · · · ... (ki , kn ) (ki+1 , kn ) .. . (kn−1 , kn ) であり,τ については (k1 , k2 ) (k1 , k3 ) · · · (k1 , ki+1 ) (k1 , ki ) (k1 , ki+2 ) ··· (k1 , kn ) (k2 , k3 ) · · · ... (k2 , ki+1 ) .. . (k2 , ki ) .. . (k2 , ki+2 ) .. . ··· (k2 , kn ) .. . (ki−1 , ki+1 ) (ki−1 , ki ) (ki−1 , ki+2 ) · · · (ki−1 , kn ) (ki+1 , ki ) (ki+1 , ki+2 ) · · · (ki+1 , kn ) (ki , ki+2 ) ··· ... (ki , kn ) .. . (kn−1 , kn ) である.ここで,色分けの仕方は先ほどと同様の規則に従った.両者は赤字の部分 を除けば全体として一致していて,赤字のところは (ki , ki+1 ) が (ki+1 , ki ) になるから, ki < ki+1 なら E(τ ) = E(σ) + 1 となり,ki > ki+1 なら E(τ ) = E(σ) − 1 となることが わかる.ゆえに,χ(τ ) = (−1)E(τ ) = (−1)E(σ)±1 = −(−1)E(σ) = −χ(σ). この補題を用いて,次のことが示される. µ ¶ 1 2 ··· n 命題 1 5 i < j 5 n とする.σ = ∈ Sn において ki と kj を入れ換 k1 k2 · · · kn µ ¶ ··· i ··· j ··· えてできる置換を τ = とすると,χ(τ ) = −χ(σ) が成り立つ. · · · ki · · · kj · · · 証明 σ を τ にするには,kj と左隣との入れ換えを j −i 回,次いで ki と右隣との入れ換 えを j −i−1 回行えばよい.隣どうしの入れ換えを都合 (j −i)+(j −i−1) = 2(j −i)−1 回行うと τ に到達するから,符号に関して所期の結果が得られる: χ(τ ) = (−1)2(j−i)−1 χ(σ) = −χ(σ). ° ↓ ° ° ° ° a12 a13 ° a12 a13 ° a21 a22 a23 a31 a32 a33 11 a ° a11 a23 a32 µ +1 µ −1 1 2 3 1 3 2 置 換 の 符 号 1 2 3 1 2 3 ¶ ¶ 対応する置換(上段に行番号,下段に列番号を書く) a11 a22 a33 ° 印をつけた成分を上から順にかけ合わせる ° a21 a22 a23 a31 a32 a33 11 a ° ° ° ° ° ° a11 a12 a13 a21 a22 a23 a31 a32 a33 第 3 行で a31 を選ぶ µ −1 µ +1 1 2 3 2 3 1 置 換 の 符 号 1 2 3 2 1 3 ¶ ¶ a12 a23 a31 対応する置換(上段に行番号,下段に列番号を書く) a12 a21 a33 ° 印をつけた成分を上から順にかけ合わせる ° a11 a12 a13 a21 a22 a23 a31 a32 a33 第 3 行で a33 を選ぶ ↓ ↓ 第 3 行で a32 を選ぶ ↓ 第 3 行で a33 を選ぶ ↓ 第 3 行では第 2,第 3 列以外から選ぶ 第 3 行では第 2,第 1 列以外から選ぶ 第 3 行では第 1,第 3 列以外から選ぶ 第 3 行では第 1,第 2 列以外から選ぶ ↓ ↓ ° a11 a12 a13 a21 a22 a23 a31 a32 a33 ↓ ° a21 a22 a23 a31 a32 a33 a11 a12 a13 ↓ 第 2 行で a23 を選ぶ ↓ ° a11 a12 a13 ° 第 2 行で a21 を選ぶ ↓ 第 2 行では第 2 列以外から選ぶ ° ° ° a11 a12 a13 ° a21 a22 a23 a31 a32 a33 ↓ 置 換 の 符 号 対応する置換(上段に行番号,下段に列番号を書く) ° 印をつけた成分を上から順にかけ合わせる ° ° a11 a12 a13 a21 a22 a23 a31 a32 a33 ↓ ↓ ° ↓ ° a11 a12 a13 ↓ ° a21 a22 a23 a31 a32 a33 ° a21 a22 a23 a31 a32 a33 a11 a12 a13 ↓ ↓ ↓ a21 a22 a23 a31 a32 a33 ↓ 第 2 行で a23 を選ぶ ° a11 a12 a13 a21 a22 a23 a31 a32 a33 ° 第 1 行で a13 を選ぶ a11 a12 a13 a21 a22 a23 a31 a32 a33 第 1 行で a12 を選ぶ a21 a22 a23 a31 a32 a33 a11 a12 a13 ° 第 2 行で a22 を選ぶ 第 2 行では第 1 列以外から選ぶ ↓ a11 a12 a13 a21 a22 a23 a31 a32 a33 第 1 行で a11 を選ぶ 3 次行列式における成分の積のとり方 25 ●行列式の定義における成分の積のとり方(3 次行列の場合) 各行各列からそれぞれただ 1 つだけ成分を取り出して積をとる. 26 第3章 行 列 式 ●行列式の定義における成分の積のとり方(4 次行列の場合° 1 :第 1 行から a11 を選ぶ) 第 1 行で a11 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ↓ 第2行では第1列以外から選ぶ 第 2 行で a23 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ° 21 22 23 31 32 33 14 12 13 a14 a24 a34 a44 第 3 行で a32 を選ぶ a11 a 21 a31 a41 °a 12 a13 a23 a33 a43 ↓ ↓ 11 第 3 行では第 1, 第 4 列以外から選ぶ 第 3 行で a34 を選ぶ a14 a11 a a24 21 a34 a31 a44 a41 °a 12 a13 a23 a33 a43 a14 a24 a34 a44 ↓ a a a ° a a a ° ↓ a a a a ° a a a a ° a a ° a a 13 ↓ ↓ ↓ 第 3 行で a34 を選ぶ 12 ° 第 3 行では第 1, 第 3 列以外から選ぶ 第 3 行で a33 を選ぶ 11 ° ° ↓ 第 3 行では第 1, 第 2 列以外から選ぶ 第 2 行で a24 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 第 3 行で a32 を選ぶ a a ° 11 12 a13 a23 a33 a43 ↓ ° ↓ ↓ ↓ 第 2 行で a22 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 第 3 行で a33 を選ぶ a14 a24 a34 a44 a a ° 11 12 a13 a23 a33 a43 a14 a24 a34 a44 a41 a42 a43 21 22 23 34 a31 a32 a33 a44 a41 a42 a43 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 第 4 行では第 1,第 2, 第 3 列以外から選ぶ 第 4 行では第 1,第 2, 第 4 列以外から選ぶ 第 4 行では第 1,第 3, 第 2 列以外から選ぶ 第 4 行では第 1,第 3, 第 4 列以外から選ぶ 第 4 行では第 1,第 4, 第 2 列以外から選ぶ 第 4 行では第 1,第 4, 第 3 列以外から選ぶ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 24 ↓ 第 4 行で a44 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ° ° ° ° 第 4 行で a43 を選ぶ a a a ° a a a ° 11 12 13 21 22 23 a31 a32 a33 a41 a42 a43 ° a14 a24 a34 a44 ° a22 a32 a42 ° ° 第 4 行で a44 を選ぶ a a ° 11 12 a21 a22 a31 a32 a41 a42 ° a13 a23 a33 a43 ° a22 a32 a42 ° ° 第 4 行で a42 を選ぶ a14 a24 a34 a44 ° a a ° 11 12 a21 a22 a31 a32 a41 a42 ° a13 a23 a33 a43 ° a14 a24 a34 a44 ° a21 a22 a31 a32 a41 a42 ° ° a a ° 11 12 a21 a22 a31 a32 a41 a42 ° a13 a23 a33 a43 ° ° ° ↓ 第 4 行で a43 を選ぶ a21 a22 a31 a32 a41 a42 第 4 行で a42 を選ぶ a14 a11 a21 a24 a34 a31 a44 a41 ° °a 12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 ° a14 a24 a34 a44 ° ° 印 を つ け た 成 分 を 上 か ら 順 に か け 合 わ せ る a11 a22 a33 a44 a11 a22 a34 a43 µ ¶ 1 2 3 4 1 2 3 4 µ a11 a23 a32 a44 a11 a23 a34 a42 a11 a24 a32 a43 対 応 す る 置 換 (上 段 に 行 番 号, 下 段 に 列 番 号 を 書 く) 1 2 3 4 1 2 4 3 ¶ µ 1 2 3 4 1 3 2 4 ¶ µ 1 2 3 4 1 3 4 2 ¶ µ 1 2 3 4 1 4 2 3 ¶ a11 a24 a33 a42 µ 1 2 3 4 1 4 3 2 置 換 の 符 号 +1 −1 −1 +1 +1 −1 ¶ 4 次行列式における成分の積のとり方 27 ●行列式の定義における成分の積のとり方(4 次行列の場合° 2 :第 1 行で a12 を選ぶ) 第 1 行で a12 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ↓ 第2行では第2列以外から選ぶ 第 2 行で a23 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ° 12 °a 22 a32 a42 13 a23 a33 a43 ° a14 a24 a34 a44 a a ° 12 °a 22 a32 a42 13 a23 a33 a43 a14 a24 a34 a44 ° a a ° a ° a 12 13 22 23 °a 32 a42 a33 a43 ↓ ↓ a11 a 21 a31 a41 第 3 行で a31 を選ぶ a11 a 21 a31 a41 第 3 行では第 2, 第 4 列以外から選ぶ 第 3 行で a34 を選ぶ a14 a11 a a24 21 a34 a31 a44 a41 a a a ° a ° a a a a ° a 12 13 14 22 23 24 32 33 34 a42 a43 a44 ↓ a a ° ↓ a11 a 21 a31 a41 第 3 行では第 2, 第 3 列以外から選ぶ 第 3 行で a34 を選ぶ ° ↓ ↓ ↓ ° ° ↓ 第 3 行では第 2, 第 1 列以外から選ぶ 第 3 行で a33 を選ぶ 第 2 行で a24 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 第 3 行で a31 を選ぶ a11 a 21 a31 a41 ° 第 3 行で a33 を選ぶ a a ° 12 ↓ ° ↓ ↓ ↓ 第 2 行で a21 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 13 a22 a23 a32 a33 a42 a43 a14 a24 a34 a44 ° a11 a 21 a31 a41 a a ° 12 13 a22 a23 a32 a33 a42 a43 ° a14 a24 a34 a44 ° ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 第 4 行では第 2,第 1, 第 3 列以外から選ぶ 第 4 行では第 2,第 1, 第 4 列以外から選ぶ 第 4 行では第 2,第 3, 第 1 列以外から選ぶ 第 4 行では第 2,第 3, 第 4 列以外から選ぶ 第 4 行では第 2,第 4, 第 1 列以外から選ぶ 第 4 行では第 2,第 4, 第 3 列以外から選ぶ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 第 4 行で a44 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ° ° ° 第 4 行で a43 を選ぶ a11 a21 a31 a41 a a ° 12 °a 22 a32 a42 13 a23 a33 a43 ° a14 a24 a34 a44 ° 第 4 行で a44 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a a a ° a ° a a 12 13 22 23 a32 a33 a42 a43 第 4 行で a41 を選ぶ 14 a34 a44 24 ° a11 a21 a31 a41 a a a ° a ° a a a a ° a °a 12 13 14 22 23 24 32 33 34 42 a43 a44 第 4 行で a43 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a a ° 12 13 a22 a23 a32 a33 a42 a43 ° 第 4 行で a41 を選ぶ a14 a24 a34 a44 ° a11 a21 a31 a41 ° a a ° 12 13 a22 a23 a32 a33 a42 a43 ° a14 a24 a34 a44 ° ° 印 を つ け た 成 分 を 上 か ら 順 に か け 合 わ せ る a12 a21 a33 a44 a12 a21 a34 a43 µ µ 1 2 3 4 2 1 3 4 ¶ a12 a23 a31 a44 a12 a23 a34 a41 a12 a24 a31 a43 対 応 す る 置 換 (上 段 に 行 番 号, 下 段 に 列 番 号 を 書 く) 1 2 3 4 2 1 4 3 ¶ µ 1 2 3 4 2 3 1 4 ¶ µ 1 2 3 4 2 3 4 1 ¶ µ 1 2 3 4 2 4 1 3 ¶ a12 a24 a33 a41 µ 1 2 3 4 2 4 3 1 置 換 の 符 号 −1 +1 +1 −1 −1 +1 ¶ 28 第3章 行 列 式 ●行列式の定義における成分の積のとり方(4 次行列の場合° 3 :第 1 行で a13 を選ぶ) 第 1 行で a13 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ↓ 第2行では第3列以外から選ぶ 第 2 行で a22 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° a a ° 13 ° 14 a23 a24 a33 a34 a43 a44 ° a12 a22 a32 a42 a a ° 13 14 a23 a24 a33 a34 a43 a44 ° ° a12 a22 a32 a42 a ° 13 °a 23 a33 a43 ↓ ↓ a11 a 21 a31 a41 第 3 行で a31 を選ぶ a11 a 21 a31 a41 第 3 行では第 3, 第 4 列以外から選ぶ 第 3 行で a34 を選ぶ a14 a11 a a24 21 a34 a31 a44 a41 a12 a22 a32 a42 a a ° 13 °a 23 a33 a43 14 a24 a34 a44 ° ↓ ° a12 a22 a32 a42 ↓ a11 a 21 a31 a41 第 3 行では第 3, 第 2 列以外から選ぶ 第 3 行で a34 を選ぶ ° ↓ ↓ ↓ ° ↓ 第 3 行では第 3, 第 1 列以外から選ぶ 第 3 行で a32 を選ぶ ° 第 2 行で a24 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 第 3 行で a31 を選ぶ a11 a 21 a31 a41 ° ↓ ° ° ↓ ↓ ↓ 第 2 行で a21 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 第 3 行で a32 を選ぶ a a ° a ° a a12 a22 a32 a42 13 23 a33 a43 a11 a 24 21 a34 a31 a44 a41 14 a12 a22 a32 a42 a a ° a ° a 13 14 23 °a 33 a43 24 a34 a44 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 第 4 行では第 3,第 1, 第 2 列以外から選ぶ 第 4 行では第 3,第 1, 第 4 列以外から選ぶ 第 4 行では第 3,第 2, 第 1 列以外から選ぶ 第 4 行では第 3,第 2, 第 4 列以外から選ぶ 第 4 行では第 3,第 4, 第 1 列以外から選ぶ 第 4 行では第 3,第 4, 第 2 列以外から選ぶ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 第 4 行で a44 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ° ° ° 第 4 行で a42 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a12 a22 a32 a42 a a ° 13 ° 14 a23 a24 a33 a34 a43 a44 ° 第 4 行で a44 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a12 a22 a32 a42 a a ° °a 13 23 a33 a43 第 4 行で a41 を選ぶ 14 a24 a34 a44 ° a11 a21 a31 a41 a12 a22 a32 a42 a a ° 13 °a ° 23 a33 a43 14 a24 a34 a44 ° 第 4 行で a42 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a12 a22 a32 a42 ° a ° 13 a23 a33 a43 第 4 行で a41 を選ぶ a14 a11 a21 a24 a34 a31 a44 a41 ° ° a12 a22 a32 a42 ° a a ° a ° a 13 14 23 24 a33 a34 a43 a44 ° 印 を つ け た 成 分 を 上 か ら 順 に か け 合 わ せ る a13 a21 a32 a44 a13 a21 a34 a42 µ ¶ 1 2 3 4 3 1 2 4 µ a13 a22 a31 a44 a13 a22 a34 a41 a13 a24 a31 a42 対 応 す る 置 換 (上 段 に 行 番 号, 下 段 に 列 番 号 を 書 く) 1 2 3 4 3 1 4 2 ¶ µ 1 2 3 4 3 2 1 4 ¶ µ 1 2 3 4 3 2 4 1 ¶ µ 1 2 3 4 3 4 1 2 ¶ a13 a24 a32 a41 µ 1 2 3 4 3 4 2 1 置 換 の 符 号 +1 −1 −1 +1 +1 −1 ¶ 4 次行列式における成分の積のとり方 29 ●行列式の定義における成分の積のとり方(4 次行列の場合° 4 :第 1 行で a14 を選ぶ) 第 1 行で a14 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ↓ 第2行では第4列以外から選ぶ 第 2 行で a22 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° a13 a23 a33 a43 a ° ° a12 a22 a32 a42 a13 a23 a33 a43 a ° ° 14 a24 a34 a44 ° a12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 ↓ ↓ a11 a24 a21 a34 a31 a44 a41 14 第 3 行で a31 を選ぶ a11 a 21 a31 a41 第 3 行では第 4, 第 3 列以外から選ぶ 第 3 行で a33 を選ぶ a14 a11 a a24 21 a34 a31 a44 a41 ° a12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 a ° 14 ° a24 a34 a44 ↓ ° a12 a22 a32 a42 ↓ a11 a 21 a31 a41 第 3 行では第 4, 第 2 列以外から選ぶ 第 3 行で a33 を選ぶ ° ↓ ↓ ↓ ° ↓ 第 3 行では第 4, 第 1 列以外から選ぶ 第 3 行で a32 を選ぶ ° ° 第 2 行で a23 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 第 3 行で a31 を選ぶ a11 a 21 a31 a41 ° a12 a22 a32 a42 a13 a23 a33 a43 ↓ ° ° ↓ ↓ ↓ 第 2 行で a21 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 第 3 行で a32 を選ぶ ° a ° a11 a24 a21 a34 a31 a44 a41 14 a12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 a ° °a 14 24 a34 a44 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 第 4 行では第 4,第 1, 第 2 列以外から選ぶ 第 4 行では第 4,第 1, 第 3 列以外から選ぶ 第 4 行では第 4,第 2, 第 1 列以外から選ぶ 第 4 行では第 4,第 2, 第 3 列以外から選ぶ 第 4 行では第 4,第 3, 第 1 列以外から選ぶ 第 4 行では第 4,第 3, 第 2 列以外から選ぶ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 第 4 行で a43 を選ぶ a11 a12 a13 a14 a21 a22 a23 a24 a31 a32 a33 a34 a41 a42 a43 a44 ° ° ° ° 第 4 行で a42 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 ° a ° 14 a24 a34 a44 第 4 行で a43 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 ° 第 4 行で a41 を選ぶ a ° a11 a24 a 21 a34 a31 a44 a41 14 a12 a22 a32 a42 ° ° a13 a23 a33 a43 ° a ° 14 a24 a34 a44 第 4 行で a42 を選ぶ a11 a21 a31 a41 ° a12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 ° 第 4 行で a41 を選ぶ a ° a11 a24 a21 a34 a31 a44 a41 14 ° a12 a22 a32 a42 ° a13 a23 a33 a43 a ° °a 14 24 a34 a44 ° 印 を つ け た 成 分 を 上 か ら 順 に か け 合 わ せ る a14 a21 a32 a43 a14 a21 a33 a42 µ µ 1 2 3 4 4 1 2 3 ¶ a14 a22 a31 a43 a14 a22 a33 a41 a14 a23 a31 a42 対 応 す る 置 換 (上 段 に 行 番 号, 下 段 に 列 番 号 を 書 く) 1 2 3 4 4 1 3 2 ¶ µ 1 2 3 4 4 2 1 3 ¶ µ 1 2 3 4 4 2 3 1 ¶ µ 1 2 3 4 4 3 1 2 ¶ a14 a23 a32 a41 µ 1 2 3 4 4 3 2 1 置 換 の 符 号 −1 +1 +1 −1 −1 +1 ¶ 例 題 例題およびその解答 1 拡大係数行列を 簡約化 することにより,次の連立 1 次方程式を解け. x1 1 1 2 1 1 0 2 3 5 1 5 x2 1 x3 = 2 2 4 3 3 2 x4 3 2 5 5 1 1 x5 1 2 2 3 1 0 −→ 0 0 1 1 3 5 1 5 3 1 ° 2 +° 1 ×(−2) 1 1 2 1 1 0 ° 3 +° 1 ×(−2) ° 4 +° 1 ×(−3) 0 1 1 −1 3 1 −→ 0 0 0 1 1 2 1 0 −1 −1 2 −2 1 3 2 2 2 5 4 5 0 1 0 0 ° 1 +° 3 ×(−2) 1 2 −2 −1 ° 1 2 +° 3 ×1 ° 4 +° 3 ×(−1) 0 1 −1 3 1 −→ 0 0 1 1 2 0 1 1 2 0 0 1 0 0 ↑ ↑ 1 1 0 0 0 −4 −5 0 4 3 1 1 2 0 0 0 ★簡約行列において区切り 線の階段が 1 段下がったと き,そこに位置する列は必 ず基本ベクトルである.こ のことの確認は忘れがちで あるからよく注意すること. ↑ e1 e2 e3 x1 最後の行列は確かに簡約行列である.また,連立 1 次方程式 している. 0 ° 1 +° 2 ×(−1) ° 4 +° 2 ×1 1 ← 2 1 + x3 x2 + x3 − 4x5 = −5 + 4x5 = 3 を表 x4 + x5 = 2 x1 −5 −1 4 x2 3 −1 −4 ∴ s, t を任意の数として x3 = s, x5 = t とおくと x3 = 0 + s 1 + t 0 . x4 2 0 −1 x5 0 0 1 2 次の A が正則かどうかを (A E) に行基本変形を施すことにより調べ,正則の場合は逆 行列を求めよ.ただし,E は 3 次単位行列である. 1 1 2 A = 2 3 4 3 1 4 1 2 3 1 −→ 0 0 1 −→ 0 0 2 +° 1 ×(−2) 1 1 1 2 1 0 0 ° ° 3 +° 1 ×(−3) 0 1 3 4 0 1 0 −→ 0 −2 1 4 0 0 1 1 0 0 2 3 −1 0 ° 1 +° 3 ×1 0 1 1 0 −2 1 0 −→ 0 0 0 −2 −7 2 1 0 0 −4 1 1 1 0 −2 1 0 7 0 1 2 −1 − 12 ° 1 +° 2 ×(−1) 2 1 0 0 ° 3 +° 2 ×2 0 −2 1 0 ← −2 −3 0 1 0 −4 1 1 ° 3 ×(− 21 ) 0 −2 1 0 ← −2 −7 2 1 行基本変形により (A E) が (E B) の形 (左半分が単位行列) に変形された. −4 ∴ A は正則で, A−1 = −2 7 2 ★正方行列 A が正則 ⇔ (A E) が行基本変形によって (E B) の形に変形される. しかもこのとき B が A の逆行列を与える. 1 1 1 0 . −1 − 12 3 次の置換の転倒数と符号を求めよ. µ ¶ 1 2 3 4 (1) 2 1 3 4 µ (2) 1 2 3 4 3 1 4 2 ¶ (1) i < j だが ki > kj であるような組 (ki , kj ) は (2, 1) のみだから転倒数は 1, よって符号は (−1)1 = −1 となる. (2) i < j だが ki > kj であるような組 (ki , kj ) は (3, 1), (3, 2), (4, 2) の 3 つだから転倒数は 3, よっ て符号は (−1)3 = −1 となる. ★ 3 次,4 次の置換についてよく調べておくこと. 4 次の行列式を,行基本変形により上三角行列の行列式の計算に持ち込むことにより求め よ. ¯ ¯ ¯1 2 2¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (1) ¯1 3 2¯ ¯ ¯ ¯3 4 1¯ (1) ¯ ¯1 ¯ ¯2 ¯ (3) ¯ ¯3 ¯ ¯1 ¯ ¯ ¯ 1 3 3¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (2) ¯−1 3 2¯ ¯ ¯ ¯ 2 3 4¯ 3 7 8 6 2 5 2 4 ¯ 2¯¯ 5¯¯ ¯ 5¯ ¯ 3¯ ¯ ¯ 2 +° ¯ ¯ ¯ 1 ×(−1) ¯ ¯1 2 2¯ ° ¯ ¯ 2 2 ¯¯ ° 2 ¯¯ 3 +° 1 ×(−3) ¯1 3 +° 2 ×2 ¯1 2 ¯ ¯° ¯1 3 2¯ ¯0 1 0 ¯¯ = ¯¯0 1 0 ¯¯ = 1 × 1 × (−5) = −5. = ¯ ¯ ¯ ¯3 4 1¯ ¯0 −2 −5¯ ¯0 0 −5¯ 答 −5. (2) ¯ ¯ 2 +° ¯ ¯ 1 ×1 ¯ 1 3 3¯ ° ¯ 3 3 ¯¯ ° 3 +° 1 ×(−2) ¯1 3 +° 2 × 12 ¯ ¯° ¯−1 3 2¯ ¯ ¯ 5¯ = = ¯ ¯ ¯0 6 ¯ 2 3 4¯ ¯0 −3 −2¯ ¯ ¯1 3 ¯ ¯0 6 ¯ ¯0 0 ¯ 3 ¯¯ 5 ¯¯ = 1 × 6 × 1¯ 1 2 = 3. 2 答 3. (3) ¯ ¯1 ¯ ¯2 ¯ ¯3 ¯ ¯1 3 7 8 6 2 5 2 4 ¯ ¯1 ¯ ¯0 = −3 × ¯¯ ¯0 ¯0 ¯ ¯ ¯ ¯° 2 +° 1 ×(−2) ¯ ¯1 3 2 2 ¯¯ 3 2 2 ¯¯ ° 2¯¯ ° 3 +° 2 ×1 3 +° 1 ×(−3) ¯1 ¯ ¯ 4 +° 2 ×(−3) ¯ 4 +° 1 ×(−1) ¯ 1 ¯¯ 1 1 ¯¯ ° 5¯¯ ° ¯0 1 1 ¯0 1 = = ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ 5¯ ¯0 0 −3 0 ¯ ¯0 −1 −4 −1¯ ¯0 0 −1 −2¯ ¯0 3 2 1¯ 3¯ ¯ ¯ ¯ ¯1 3 2 2 ¯ 3 2 2 ¯¯ ¯ ¯ 4 +° 3 ×1 ¯0 1 1 1 ¯ 1 1 1 ¯¯ ° ¯ = −3 × {1 × 1 × 1 × (−2)} = 6. ¯ = −3 × ¯ ¯ 0 1 0 ¯¯ ¯0 0 1 0 ¯ ¯ ¯ 0 0 0 −2¯ 0 −1 −2 答 6. ★行列式は,基本変形によって符号が反転したり定数倍されたりするので注意すること. 5 ¯ ¯ ¯2 0 3¯ ¯ ¯ 行列式 ¯¯1 2 1¯¯ を各行に関する余因子展開により求めよ. ¯3 1 5¯ 求める行列式を ∆ とおく. 第 1 行に関する余因子展開 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯2 1¯ ¯ 1 2¯ 1+1 1+3 ¯ + 3 × (−1) ¯ = 18 − 15 = 3. ∆ = 2 × (−1) × ¯¯ × ¯¯ 1 5¯ 3 1¯ 第 2 行に関する余因子展開 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯0 3¯ ¯ 2 3¯ ¯2 0¯ 2+1 2+2 2+3 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ = 3 + 2 − 2 = 3. ∆ = 1 × (−1) ׯ + 2 × (−1) ׯ + 1 × (−1) ׯ 1 5¯ 3 5¯ 3 1¯ 第 3 行に関する余因子展開 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯0 3¯ ¯2 3¯ ¯2 0¯ 3+1 3+2 3+3 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ = −18 + 1 + 20 = 3. ∆ = 3 × (−1) ׯ + 1 × (−1) ׯ + 5 × (−1) ׯ 2 1¯ 1 1¯ 1 2¯ 6 a11 a12 a13 A = a21 a22 a23 とおくとき,以下の問いに答えよ. a31 a32 a33 (1) A に次の行基本変形を施して得られる行列 A0 を求めよ. 第 3 行に第 1 行の a24 倍および第 2 行の −a14 倍を加える. 0 (2) |A| = |A | であることを用いて,6 つの 2 次行列式の間に成り立つ次の等式を示せ. ¯ ¯¯ ¯ ¯ ¯¯ ¯ ¯ ¯¯ ¯ ¯a11 a12 ¯¯a13 a14 ¯ ¯a11 a13 ¯¯a12 a14 ¯ ¯a11 a14 ¯¯a12 a13 ¯ ¯ ¯¯ ¯−¯ ¯¯ ¯+¯ ¯¯ ¯=0 ¯a a ¯¯a a ¯ ¯a a ¯¯a a ¯ ¯a a ¯¯a a ¯ 21 22 23 24 21 23 22 24 21 24 22 23 a11 a12 a13 . a21 a22 a23 (1) A0 = a31 +a11 a24 −a21 a14 a32 +a12 a24 −a22 a14 a33 +a13 a24 −a23 a14 (2) A0 を第 3 行に関して余因子展開すると, ¯ ¯ ¯a12 a13 ¯ 0 ¯ ¯ |A | = (a31 +a11 a24 −a21 a14 )¯ a22 a23 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯a11 a13 ¯ ¯a11 a12 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ − (a32 +a12 a24 −a22 a14 )¯ + (a33 +a13 a24 −a23 a14 )¯ a21 a23 ¯ a21 a22 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯a12 a13 ¯ ¯a11 a13 ¯ ¯a11 a12 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ = a31 ¯ − a32 ¯ + a33 ¯ a22 a23 ¯ a21 a23 ¯ a21 a22 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯a11 a12 ¯ ¯a11 a13 ¯ ¯a12 a13 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ − (a12 a24 −a22 a14 )¯ + (a11 a24 −a21 a14 )¯¯ ¯a21 a23 ¯ + (a13 a24 −a23 a14 )¯a21 a22 ¯ a22 a23 ¯ ¯ ¯¯ ¯ ¯ ¯¯ ¯ ¯ ¯¯ ¯ ¯a a ¯¯a a ¯ ¯a a ¯¯a a ¯ ¯a a ¯¯a a ¯ = |A| + ¯¯ 11 14 ¯¯¯¯ 12 13 ¯¯ − ¯¯ 11 13 ¯¯¯¯ 12 14 ¯¯ + ¯¯ 11 12 ¯¯¯¯ 13 14 ¯¯. a21 a22 a23 a24 a21 a23 a22 a24 a21 a24 a22 a23 ここで行列式の性質より |A| = |A0 | だから 与式 = 0 となる. µ 7 ¶µ ¶ a11 a21 a23 a24 の行列式を 2 通りの方法で計算することにより 6 (2) の等式 a12 a22 −a13 −a14 の別証を与えよ. ¯ ¯a11 ¯ ¯a12 ¯ ¯a11 ¯ ¯a21 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯a23 a24 ¯ ¯a13 a14 ¯ ¯ a23 a24 ¯¯ a21 ¯¯ ¯¯a11 a12 ¯¯ ¯ より求める行列式は ¯ ¯ ¯ ¯ = = −¯ および ¯ = a13 a14 ¯ ¯a23 a24 ¯ −a13 −a14 ¯ a22 ¯ ¯a21 a22 ¯ ¯ ¯¯ µ ¶µ ¶ µ ¶ a11 a21 a23 a24 a11 a23 − a13 a21 a11 a24 − a14 a21 a12 ¯¯ ¯¯a13 a14 ¯¯ . 一方 = a12 a22 −a13 −a14 a12 a23 − a13 a22 a12 a24 − a14 a22 a22 ¯ ¯a23 a24 ¯ であり,この右辺の行列式をとることにより 6 (2) の等式を得る.詳細は略す. 演習問題 連立1次方程式関連の演習問題 略解 1 次の行列を簡約化せよ. 1 3 (1) 1 2 −2 −6 −2 −4 0 1 5 −2 1 0 3 −1 1 −2 0 1 0 0 1 −1 0 0 0 0 0 0 0 0 2 3 2 −8 −2 5 −1 −7 2 3 −7 −4 4 1 3 (2) 2 −1 −3 1 1 3 −2 5 −2 −8 −9 −8 1 −6 1 0 0 0 0 −2 0 1 0 −3 1 −1 0 2 0 1 0 0 1 1 0 −1 0 0 0 0 1 2 次の連立 1 次方程式を,拡大係数行列の簡約化により解け.解のみ記しておく. x + x − 2x = 1 1 2 3 2x1 − x2 − 5x3 = −3 (2) (1) x1 + 3x2 = 0 4x1 + 3x2 − 3x3 = 8 −x + x + 3x = 2 2x + 3x − 8x = −1 1 2 3 1 2 3 x1 2 x2 = 1 x3 1 3x1 − x2 + 2x3 = 3 (3) 2x1 + x2 + 3x3 = 7 −x + 2x + x = 4 1 2 3 x3 = s(s は任意の数)として x1 2 −1 x2 = 3 + s −1 x3 0 1 x1 − x2 − x3 + 4x4 = 4 (5) 5x1 − 5x2 − 2x3 + 3x4 = 1 2x − 2x − 3x + 7x = 1 1 2 3 4 x2 = s(s は任意の数)として 1 1 x1 1 x2 0 = + s 0 x3 5 0 2 x4 x1 3 x2 = −1 x3 2 5x1 + 3x2 + x3 = 1 (4) x1 + x2 − x3 = 1 3x + x + 3x = 3 1 2 3 解なし 3x1 + x2 − 5x3 − 4x4 = 5 (6) 5x1 + 2x2 − 9x3 − 8x4 = 8 2x + 3x − 8x − 4x = 9 1 2 3 4 x3 = s(s は任意の数)として 1 2 x1 2 x2 3 = + s 1 x3 0 0 1 x4 2x1 + 2x2 − 3x3 − 9x4 − 4x5 = 8 (7) 3x1 − x2 − 2x3 − 7x4 − 9x5 = 1 2x + x − x − 6x − 2x = 8 1 2 3 4 5 x4 = s, x5 = t(s, t は任意の数)として x1 3 2 1 x2 4 1 −2 x3 = 2 + s −1 + t −2 x4 0 1 0 x5 0 0 1 x1 + x2 − x3 3x + 4x − 4x 1 2 3 (9) −2x − x + 3x 1 2 3 + x4 −x1 + x3 + x4 =2 =5 =3 =3 x1 3 x2 1 = x3 2 x4 4 x1 − x2 + 2x4 = 2 2x − 2x − x + 3x = 1 1 2 3 4 (11) 2x − 2x + x + 5x 1 2 3 4=7 x1 − x2 + x3 + 3x4 = 5 x2 = s, x4 = t(s, t は任意の数)として x1 2 1 −2 x2 0 1 0 = + s + t x3 3 0 −1 x4 0 0 1 x1 − x3 + 3x4 = 0 2x + x =0 1 2 (13) x2 + 2x3 − 6x4 = 0 3x1 + 2x2 + x3 − 3x4 = 0 x3 = s, x4 = t(s, t は任意の数)として −3 1 x1 6 −2 x2 = s + t 0 1 x3 1 0 x4 2x1 − 4x2 − 3x3 + 5x4 + 2x5 = 5 (8) 3x1 − 6x2 + 2x3 + x4 − 4x5 = −8 4x − 8x + x + 3x − x = 6 1 2 3 4 5 x2 = s, x4 = t(s, t は任意の数)として x1 2 2 −1 x2 0 1 0 x3 = 3 + s 0 + t 1 x4 0 0 1 x5 5 0 0 x1 + x3 − x4 3x − 2x + 2x + x 1 2 3 4 (10) x − 3x + x 1 2 4 5x1 − 5x2 + 3x3 + x4 = 3 = 5 = −2 = 6 x4 = s(s は任意の数)として x1 1 −7 x2 1 −2 = + s x3 2 8 x4 0 1 x1 + x2 + x3 + x4 + x5 = 5 3x + x + x + x − 3x = 3 1 2 3 4 5 (12) x + 2x + x + x + 4x 1 2 3 4 5=6 2x1 + x2 + 2x3 + x4 − 3x5 = 7 x5 = s(s は任意の数)として x1 −1 2 x2 1 −3 x3 = 3 + s 2 x4 2 −2 x5 0 1 x1 − x2 − 2x4 = 0 2x + 2x + 3x =0 1 2 3 (14) −x1 + 2x2 + x3 + 3x4 = 0 x1 + 3x2 + 3x3 − x4 = 0 0 x1 x2 0 = x3 0 0 x4 逆行列・行列式関連の演習問題 略解 1 正方行列 A が正則である m 次の行列は正則かどうか調べ,正則ならば逆行列を求めよ. この大問では解答のみ記す. 2 −1 −1 (1) 1 3 4 −1 1 1 1 0 1 正則で,逆行列は 5 −1 9 −4 1 −7 5 3 1 (2) 3 2 1 1 1 1 (A E) が行基本変形により (E B) の形に変形される. また,このとき B が A の 逆行列となる. 1 0 4 (4) 2 −1 1 −1 1 0 0 3 1 (3) 3 1 2 1 1 1 1 2 −5 1 −3 正則で,逆行列は 1 −2 −3 9 1 1 0 (5) 2 3 3 1 4 5 3 1 1 (6) −1 2 0 4 1 2 1 2 1 0 2 1 2 −1 (7) 1 −3 0 −1 2 2 3 −1 2 −1 1 0 −1 2 −1 −1 正則で,逆行列は 1 −3 1 2 5 −7 3 3 3 5 7 3 2 2 1 3 −1 4 4 1 −1 4 7 正則で,逆行列は 3 1 −1 −1 −3 5 −3 1 正則で,逆行列は 7 −5 3 4 −5 3 −1 1 2 (9) 3 1 正則でない 3 2 3 1 4 −1 −2 1 2 −1 正則で,逆行列は 2 5 −9 1 7 1 1 −3 −1 2 1 −4 −1 (8) −1 −1 6 0 −2 −1 3 2 −1 1 7 正則で,逆行列は 2 1 1 1 1 (10) 2 2 1 7 3 5 1 4 2 3 1 3 1 1 1 5 1 3 1 9 2 5 正則でない 3 3 1 3 1 −2 −4 5 −2 0 1 0 正則で,逆行列は 1 3 6 −8 1 −1 −3 3 2 次の置換の転倒数と符号を求めよ. µ ¶ 1 2 3 4 (1) 3 4 2 1 µ ¶ 1 2 3 4 (2) 2 3 1 4 転倒数は 5, 符号は −1 転倒数は 2, 符号は +1 µ ¶ 1 2 3 4 5 (3) 2 3 1 5 4 µ ¶ 1 2 3 4 5 (4) 1 5 2 3 4 転倒数は 3, 符号は −1 転倒数は 3, 符号は −1 µ 3 数を大きい順に並べ換える置換 σ = 1 2 ··· n n n−1 · · · 1 ¶ ∈ Sn の転倒数 E(σ) と符号 χ(σ) を求めよ. 題意から明らかに,i < j ならば ki > kj である.大小を比較すべきすべての 2 数の組み合わせ について大きさの転倒が起こっているから, n(n − 1) . E(σ) = (n−1) + (n−2) + · · · + 1 = 2 したがって n(n − 1) が 4 で割れるとき χ(σ) = +1 で,そうでないときは χ(σ) = −1 となる. n, n − 1 はどちらか一方のみが偶数であることに注意すると次のことがわかる: ½ +1 n または n − 1 が 4 の倍数のとき; χ(σ) = −1 それ以外のとき. µ 4 σ= 1 2 ··· n k1 k2 · · · kn ¶ ∈ Sn に対して σ 0 ∈ Sn を次のように定める: ¶ µ · · · i−1 i i+1 · · · 0 . σ = · · · ki+1 ki ki−1 · · · すなわち,σ の下段の i−1 番目と i+1 番目を入れ換えたものが σ 0 である.E(σ), E(σ 0 ) を それぞれ σ, σ 0 の転倒数とするとき,E(σ 0 ) を E(σ) で表せ. 隣り合う 2 数の入れ換えを次のように行うと σ を σ 0 にすることができる. ° 1 ki−1 ki ki+1 → ki−1 ki+1 └─ ─┘ └─ ──┘ 入れ換え 入れ換え ° 2 ki ° 3 → ki+1 ki−1 ki → ki+1 ki ki−1 └──┘ 入れ換え 3 数 ki−1 , ki , ki+1 の大小の組み合わせで場合分けする.結果は次の通りである. 大小関係 ki−1 < ki < ki+1 ki−1 < ki+1 < ki ki+1 < ki < ki−1 ki < ki−1 < ki+1 ki < ki+1 < ki−1 ki+1 < ki−1 < ki 転倒数の増減 ° ° ° 1 2 3 +1 +1 +1 −1 +1 +1 −1 −1 −1 +1 +1 −1 +1 −1 −1 −1 −1 +1 E(σ 0 ) E(σ) + 3 E(σ) + 1 E(σ) − 3 E(σ) + 1 E(σ) − 1 E(σ) − 1 5 次の行列式を,行基本変形により上三角行列の行列式の計算に持ち込むことにより求め よ. ¯ ¯ ¯ 1 −3 4 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (1) ¯−3 8 −9¯ ¯ ¯ ¯ 3 −6 4 ¯ = 1 0 0 = 1 × (−1) × 1 = −1 °+ 2 °×3 1 °+ 3 °×(−3) 1 −3 −1 3 ¯ ¯ ¯2 −1 3 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (3) ¯4 2 1¯ ¯ ¯ ¯1 3 −2¯ 7 4 °+ 3 °×3 2 = 1 0 0 −3 −1 0 4 3 1 1 (以降は結果のみ記し,途中の行基本変形は省略する. ) ¯ ¯ ¯1 3 −2¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (4) ¯2 1 1¯ ¯ ¯ ¯1 −1 2 ¯ ¯ ¯ ¯−2 −3 7 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (6) ¯−3 −2 4 ¯ ¯ ¯ ¯2 3 −6¯ 0 ¯ ¯2 ¯ ¯2 ¯ (7) ¯ ¯1 ¯ ¯3 4 3 −8 0 ¯ ¯ ¯5 1 9¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (5) ¯3 2 4¯ ¯ ¯ ¯4 5 3¯ 6 ¯ ¯ ¯3 −2 2 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (2) ¯2 1 −3¯ ¯ ¯ ¯1 3 −6¯ −5 3 1 4 6 1 3 5 1 ¯ 4¯¯ 2¯¯ ¯ 2¯ ¯ 7¯ ¯ ¯5 ¯ ¯1 ¯ (8) ¯ ¯7 ¯ ¯6 2 4 2 4 4 2 5 1 ¯ 1¯¯ 3¯¯ ¯ 1¯ ¯ 5¯ 2 次の行列式を,各行に関する余因子展開により求めよ. ¯ ¯ ¯0 第 1 行に関する余因子展開: 2 1¯¯ ¯ 1+2 × −2 3 + 1 × (−1)1+3 × −2 ¯ ¯ 2 × (−1) −1 0 −1 ¯−2 0 3¯ ¯ ¯ ¯−1 −3 0¯ 0 −3 第 2 行に関する余因子展開: 2 1 2+3 × 0 + 3 × (−1) −2 × (−1)2+1 × −3 −1 0 第 3 行に関する余因子展開: 0 −1×(−1)3+1 × 20 13 +(−3)×(−1)3+2 × −2 = (−2 × 3) + (1 × 6) = 0 2 −3 = (2 × 3) + (−3 × 2) = 0 1 3 = (−1×6)+(3×2) = 0 7 次の行列の行列式を,異なる 2 通りの方法で求めよ. 0 0 a b c 0 0 0 d e A = −a 0 0 0 f −b −d 0 0 0 −c −e −f 0 0 以下に 2 つの方法を例示する. その 1. A は交代行列,すなわち tA = −A だから |A| = |tA| = |−A| = (−1)5 |A| = −|A|. したがって |A| = 0 である. その 2. 0 0 −a −b −c 0 0 0 −d −e a 0 0 0 −f b d 0 0 0 c 0 第 3 行に関す e る余因子展開 0 3+1 f = −a × (−1) × −d 0 −e 0 0 a b 0 0 d = −a × 0 0 −d −e −f 0 a 0 0 −f c e +f 0 0 0 c 0 e 3+5 + f × (−1) × 0 −b −c 0 0 0 a b 0 0 0 d × 0 0 −b −d −c −e −f 0 b d 0 0 0 0 −d −e a 0 0 −f b d 0 0 以降の詳細は略すが,第 1 項,第 2 項をそれぞれ第 3 行,第 2 行に関して余因子展開し,現れた 3 次行列式をさらに適当な行で余因子展開してその値を求めると,もとの行列式の値は 0 である ことがわかる. 1 a 1 −a a −1 1 a A= が正則であるための条件を求めよ. 1 1 a −a a −a 1 1 8 A が正則であるための必要十分条件は |A| 6= 0 となることである.そこで行列式を計算してみ ると |A| = 2a(a − 1)2 (a + 1) であるから, A が正則 ⇐⇒ a 6= 0, 1, −1. 小演習問題 小演習問題 第1回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 次の問いに答えよ. (1) 次の行列の型を答えよ. µ ¶ 2 1 0 1 は 2 × 3 型 3 は 3 1 2 1 µ ¶ 3 4 は 2×2 型 1 2 3×1 型 1 −1 2 1 2 3 1 2 (2) の第 2 行および第 3 列を書け.また,(3, 2) 成分を答えよ. 1 2 0 1 −2 −1 3 1 2 1 第 2 行は (2 3 1 2),第 3 列は 0,(3, 2) 成分は 2. 3 2 次の計算をせよ.ただし,計算不可能の場合はその理由を述べよ. 1 2 3 3 1 5 (1) 2 3 4 − 2 2 1 3 4 5 1 0 2 µ ¶ µ ¶ t 1 2 3 1 0 1 (2) 2 −3 3 1 2 1 2 0 −2 1 −2 0 1 3 . 2 4 3 不可能. (第 1 項,第 2 項の行列はそれぞれ 3 × 2 型,2 × 3 型で,型が異なるから和・差が定義でき ない) 小演習問題 第2回 科 年 学籍番号: 氏名: µ ¶ 0 1 0 1 0 1 1 0 1 A = 1 0 1, B = 0 0 1 , C = 0 1 とするとき,次の問いに答えよ. 0 0 1 1 0 (1) 次のうち,積が正しく定義できるものを⃝で囲め. A ⃝ BC ⃝ 2 BCA AC BA ⃝ ⃝ CA CB C ⃝ CBA BAC BCB ⃝ ⃝ ⃝ AB 2 B2 ABC (AB)2 ★積 XY が定義できる ⇔ X の列の数と Y の行の数が等しい (2) 次の計算をせよ.ただし,計算不可能の場合はその理由を述べよ. [和や積が定義できるかよく注意すること. ] (a) AC + BC 計算不可能 (A, C はそれぞれ 3 × 3 型,3 × 2 型であるから,積 AC は確かに定義できる.同様 に,積 BC も定義できることがわかる.ところが AC は 3 × 2 型,BC は 2 × 2 型であ り,型が異なるから和は定義できない) (b) t C tA 上で述べたように,積 AC は定義できる.また,転置行列の性質より t(AC) = tC tA だ から t 0 1 µ ¶ tC tA = t(AC) = 2 0 = 0 2 1 . 1 0 0 1 0 (ここでは転置行列の積の性質を使ったが,積 tC tA を直接計算しても構わない) (c) BAC + BC 繰り返しになるが,積 AC は定義でき,それは 3 × 2 型になる.B が 2 × 3 型で AC と C が 3 × 2 型だから,分配法則より µ ¶ 0 1 1 0 1 1 0 2 0 + 0 1 BAC + BC = B(AC + C) = 0 0 1 1 0 1 0 µ ¶ µ ¶ 1 1 3 2 1 1 0 2 1 = . = 2 0 0 0 1 2 0 (分配法則を使わずに計算しても構わない) 小演習問題 第3回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 下の (a)∼(c) で与えられる行列 A, B について,次の問いに答えよ. 1 0 0 1 0 0 (a) A = 0 1 1, B = 0 1 −1 0 0 1 0 0 1 0 0 0 1 0 0 (b) A = 0 1 0, B = 0 0 0 1 0 0 0 0 1 1 0 −1 2 0 1 (c) A = 0 2 0, B = 0 1 0 0 0 1 0 0 2 (1) (a)∼(c) のそれぞれについて,積 AB および BA を計算せよ. 1 0 0 (a) AB = BA = 0 1 0 (= E3 ). 0 0 1 0 0 0 0 0 0 (b) AB = 0 0 0 (= O3 ), BA = 0 0 0. 0 0 0 1 0 0 2 0 0 (c) AB = BA = 0 2 0 (= 2E3 ). 0 0 2 (2) (a)∼(c) のそれぞれの A について正則かどうかを答えよ.また,正則の場合には逆 行列を求めよ. 1 0 0 = B = 0 1 −1. 0 0 1 (a) AB = BA = E3 だから A は正則で,A−1 (b) O3 でない行列 B を右からかけると AB = O3 となるから A は正則ではない. ☞教科書・例題 1.3.1 (1) ³1 ´ ³1 ´ (c) AB = BA = 2E3 だから A B = B A = E3 . 2 2 1 0 −1 1 1 0 1 0 . したがって A は正則で,A−1 = B = 2 2 0 0 2 小演習問題 第4回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 A を 3 × n 行列とする.次の行列を A の左からかけると,A の各行はどのようになるか. 「第 i 行が k 倍される」「第 i 行と第 j 行が入れ換わる」「第 i 行に第 j 行の k 倍が加えられ る」などのように答えよ. [A を行分割して考える] 1 0 0 a1 1 0 0 a1 0 1 k a2 = a2 + ka3 (1) 0 1 k a3 a3 0 0 1 0 0 1 1 0 0 (2) 0 0 1 0 1 0 1 0 0 (3) 0 1 0 0 0 3 1 0 0 a1 a1 0 0 1 a2 = a3 0 1 0 a3 a2 ∴第 2 行に第 3 行の k 倍が加えら れる. ∴ 第 2 行と第 3 行が入れ換わる. 1 0 0 a1 a1 0 1 0 a2 = a2 0 0 3 a3 3a3 ∴ 第 3 行が 3 倍される. ☞第 8 回(教科書 2.4 節)に関連 2 行列 A, B, C を次のように定めるとき,以下の問いに答えよ. 0 0 1 −1 1 0 1 0 A = 1 0 1, B = 0 0 1, C = 0 1 0 1 0 1 0 0 1 1 (1) 積 AB および AC を求めよ. 0 AB = 1 0 0 AC = 1 0 0 1 −1 1 0 1 0 0 0 1 0 0 1 = 0 1 0 (= E3 ). 1 0 1 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 1 0 1 0 1 = 2 1. 0 1 1 1 1 0 (2) 3 × 5 型行列 D が D = (B C) と分割されるとき,(1) の結果を用いて積 AD を求めよ. 1 0 0 1 1 AD = A(B C) = (AB AC) だから AD = 0 1 0 2 1. 0 0 1 0 1 ☞「積の行列の列分割表示」の項参照 小演習問題 第5回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 次の連立1次方程式を解く過程を,拡大係数行列の行基本変形を用いて詳しく書け. x + 2x = 1 x = −1 x1 −1 3 1 1 (1) ∴ x2 = 0 . 3x1 + x2 + 5x3 = 2 → · · · 変形 · · · → x2 = 0 2x + 2x + x = −1 x3 = 1 x3 1 1 2 3 以下に変形の一例を与える. ° 1, ° 2, ° 3 はそれぞれ変形直前(矢印左側)の行列の第 1, 第 2, 第 3 行を表すものとする. ° 2 +° 1 ×(−3) 1 0 2 1 1 0 2 1 1 0 2 1 ° 3 +° 2 ×(−2) ° 3 ×(−1) ° 3 +° 1 ×(−2) 3 1 5 2 0 1 −1 −1 0 1 −1 −1 −→ −→ ← 2 2 1 −1 0 2 −3 −3 0 0 −1 −1 ° 1 +° 3 ×(−2) 1 0 2 1 1 0 0 ° 2 +° 3 ×1 0 1 0 −→ 0 1 −1 −1 −→ 0 0 1 1 0 0 1 = −1 x1 x2 = 0 最後の行列は連立 1 次方程式 x3 = 1 −1 0 1 に対応している. x1 −1 ∴ x2 = 0 . x3 1 ★変形の過程を表す矢印はあくまで矢印で,等号ではない. (行列として等しくないのに等 号で結んではいけない) + 2x3 = 0 x1 (2) 2x1 + 2x2 + x3 = −3 → · · · 3x + x + 5x = −2 1 2 3 x1 変形 · · · → x2 = 2 = −3 x3 = −1 x1 2 ∴ x2 = −3. x3 −1 丸付き数字の意味は (1) と同じとする. ° ° 2 +° 1 ×(−2) 2 と° 3を 1 0 2 0 1 0 2 0 1 0 2 0 ° 3 +° 1 ×(−3) 入れ換え 2 2 1 −3 0 2 −3 −3 −→ 0 1 −1 −2 −→ 3 1 5 −2 0 1 −1 −2 0 2 −3 −3 ° 3 +° 2 ×(−2) ← ° 1 +° 3 ×(−2) 1 0 0 2 1 0 2 0 1 0 2 0 ° 3 ×(−1) ° 2 +° 3 ×1 0 1 0 −3 −→ 0 1 −1 −2 −→ 0 1 −1 −2 −→ 0 0 1 −1 0 0 1 −1 0 0 −1 1 2 = 2 x1 x1 x2 = −3 に対応している. x2 = −3. ∴ 最後の行列は連立 1 次方程式 −1 x3 = −1 x3 ★ (2) の解において,第 2 段階で° 2 と° 3 を入れ換える代わりに ° 2 × 12 としてもよいが,その 場合分数計算が必要になる.上の解答例のように,行列の成分に可能な限り分数が現れない ように変形することで計算ミスを減らすことができる. 小演習問題 第6回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 次の行列を簡約化せよ. 2 1 3 以下に変形の一例を示す.(☞「行列の簡約化」も参照のこと. ) ° (1) 3 2 5 1,° 2,° 3 はそれぞれ変形直前(矢印左側)の行列の第 1, 第 2, 第 3 行 を表す. 1 0 1 ° ° 1 と° 3を 2 +° 1 ×(−3) 2 1 3 入れ換え 1 0 1 ° 1 0 1 ° 2 × 12 3 +° 1 ×(−2) 3 2 5 −→ 3 2 5 0 2 2 −→ ← 1 0 1 2 1 3 0 1 1 第2段階 変形できたら,1 の下 階段の下側に 0 でな を回るように階段をつ い成分がある最初の列 くり,第 2 段階へ (第 2 列)を e2 に変形 第1段階 第 1 列には 0 でない成 分があるので,e1 に 変形 1 0 1 1 ° 3 +° 2 ×(−1) 0 −→ 0 1 1 −→ 0 1 1 0 e1 0 1 1 1 0 0 e2 第3段階 1 0 1 ∴ 簡約化は 0 1 1. 0 0 0 変形できたら 1 の下 階段の下側には 0 し を回るように階段を 1 かないので作業終了 段増やし,第 3 段階へ (e3 はつくれない) 1 −1 −2 3 −5 (2) 3 −3 1 −4 7 2 −2 −3 7 −4 ° ° 2 と° 3を 2 +° 1 ×(−3) 1 −1 −2 3 −5 ° 1 −1 −2 3 −5 入れ換え 3 +° 1 ×(−2) 3 −3 1 −4 7 0 0 7 −13 22 −→ ← 0 0 1 1 6 2 −2 −3 7 −4 第1段階 第 1 列を e1 に 階段の下に 0 しかない 第2段階 第 3 列を e2 に 列はとばす(階段は水 平に伸ばす) ° 1 +° 2 ×2 1 1 −1 −2 3 −5 ° 1 −1 0 5 7 ° 3 ×(− 20 ) 3 +° 2 ×(−7) 0 0 1 −→ 0 0 1 1 6 1 6 −→ ← 0 0 7 −13 22 0 0 0 −20 −20 第3段階 第 4 列を e3 に ° 1 +° 3 ×(−5) 1 −1 0 5 7 ° 1 −1 0 0 2 2 +° 3 ×(−1) 0 0 1 0 5 −→ 0 0 1 1 6 −→ 0 0 0 1 1 0 0 0 1 1 e1 e2 e3 作業終了 1 −1 0 0 2 ∴ 簡約化は 0 0 1 0 5. 0 0 0 1 1 ★上のように左から右へ 1 段ずつ下がる階段をつくっていき,階段が行列の一番右または一 番下まで到達したときに次の 2 点が満たされていなければならない. ° 1 階段の下側にある成分はすべて 0 である. ° 2 階段が 1 段下がっている位置の列はすべて基本ベクトルである.もう少し詳しくいうと, i 段目の位置にある列は第 i 基本ベクトル ei である. 小演習問題 第7回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 次の連立1次方程式を解け. x1 1 3 5 −2 −3 x2 (1) 1 5 9 6 = 3 x3 2 −3 −8 −2 5 x4 拡大係数行列を簡約化して解く.以下に変形の一例を示しておく. ° 1, ° 2, ° 3 はそれぞれ変形直前(矢印左側)の行列の第 1,第 2,第 3 行を表すものとする. ° 2 +° 1 ×(−1) 1 3 5 −2 −3 ° 1 3 5 −2 −3 ° 2 × 21 3 +° 1 ×(−2) 1 5 0 2 9 6 3 4 8 6 −→ ← 2 −3 −8 −2 5 0 −9 −18 2 11 ° 1 +° 2 ×(−3) 1 1 3 5 −2 −3 ° 1 0 −1 −14 −12 ° 3 × 38 3 +° 2 ×9 0 1 2 −→ 0 1 2 4 3 4 3 −→ ← 0 −9 −18 2 11 0 0 0 38 38 ° 1 +° 3 ×14 1 0 −1 −14 −12 ° 1 0 −1 0 2 ° 2 + 3 ×(−4) 0 1 2 0 −1 −→ 0 1 2 4 3 −→ 0 0 0 1 1 0 0 0 1 1 x1 2 1 x2 −1 −2 ∴ s を任意の数として x3 = s とおくと x3 = 0 + s 1 . x4 1 2 (2) 2 1 0 1 3 2 1 2 2 1 1 0 −→ 0 0 2 5 7 4 1 x1 0 4 x2 0 = 2 x3 0 1 x4 0 0 1 3 2 2 5 7 4 0 1 0 0 2 1 1 2 0 1 0 −4 1 4 2 1 2 +° 1 ×(−2) ° 0 ° 3 +° 1 ×(−2) 1 ° 4 +° 1 ×(−1) 0 −→ 0 0 0 0 0 0 1 3 2 1 +° 3 ×(−1) ° 1 0 ° 2 +° 3 ×(−2) ° 4 +° 3 ×4 0 0 −→ 0 0 0 0 2 1 3 2 0 1 0 0 1 2 0 0 2 1 0 0 0 ° 3 +° 2 ×(−3) 1 ° 4 +° 2 ×(−2) 0 −→ 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 0 0 0 2 1 0 ° 3 ×(− 61 ) 1 2 0 ← 0 −6 0 0 −4 0 0 0 0 0 −2 x1 −1 x2 ∴ s を任意の数として x3 = s とおくと x3 = s 1 . 0 x4 ★同次連立 1 次方程式なので,拡大係数行列の最後の列(第 5 列)は変形の過程で常に零ベ クトルである.したがって,最後の列を省き,係数行列を簡約化しても解を求めることがで ::::::::: きる. 小演習問題 第8回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 4 次の基本行列のうち,次の行基本変形に対応するものを具体的に書け. (1) 第 3 行に第 1 行の −2 倍を加える 1 0 −2 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 f 1 , . . . , f 4 を 4 次単位行列 E4 の第 1 行, . . . , 第 4 行とすると, (1), (2) の行列の行分割表示はそれぞれ f4 f1 f 2 f 2 f 3 + (−2)f 1 , f 3 である. f1 f4 (2) 第 1 行と第 4 行を入れ換える 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 0 0 ☞第 4 回を参照 1 0 2 0 1 0 2 1 4 を順に施して簡約化 C = 0 1 3 0 1 ∼¤ A = 0 1 3 2 に次の行基本変形¤ 2 0 4 1 0 0 0 1 を得た.これをもとに,BA = C をみたす 3 次正則行列 B を求めよ. 2 0 0 1 0 1 ¤ 2 ¤ 3 ¤ 4 ¤ 第 3 行に第 1 行の −2 倍を加える 第 3 行を −1 倍する 第 1 行に第 3 行の −1 倍を加える 第 2 行に第 3 行の −2 倍を加える 4 のようすを 行基本変形¤ 1 ∼¤ 1 2 3 4 A −→ A1 −→ A2 −→ A3 −→ A4 = C と表せば, A1 A2 A3 A4 = T31 (−2)A, = M3 (−1)A1 = M3 (−1)T31 (−2)A, = T13 (−1)A2 = T13 (−1)M3 (−1)T31 (−2)A, = T23 (−2)A3 = T23 (−2)T13 (−1)M3 (−1)T31 (−2)A である.したがって B = T23 (−2)T13 (−1)M3 (−1)T31 (−2). B は T31 (−2) の左に M3 (−1), T13 (−1), T23 (−2) を順にかけて得られるが,このことは T31 (−2) 4 を施したものが B である,と言い換えることができるから, 3,¤ に順に¤ 2,¤ −1 0 1 −1 0 1 1 0 0 1 0 0 4 3 2 T31 (−2) = 0 1 0 −→ 0 1 0 −→ 0 1 0 −→ −4 1 2 = B. −2 0 1 2 0 −1 2 0 −1 2 0 −1 −1 0 1 答 B = −4 1 2 . 2 0 −1 ☞教科書・定理 2.4.1 ★積 T23 (−2)T13 (−1)M3 (−1)T31 (−2) を直接計算しても当然同じ結果になるが,計算量が増える. 小演習問題 第9回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 次の行列は正則かどうか調べ,正則の場合は逆行列を求めよ. 1 0 −1 (1) A = 2 1 −4 1 1 −2 以下に変形の一例を示す. 21 (−2) 1 0 −1 1 0 0 R 1 0 −1 1 0 0 R32 (−1) R31 (−1) (A E) = 2 1 −4 0 1 0 −→ 0 1 −2 −2 1 0 ← 1 1 −2 0 0 1 0 1 −1 −1 0 1 13 (1) 1 0 −1 1 0 0 R 1 0 0 2 −1 1 R23 (2) −→ 0 1 −2 −2 1 0 −→ 0 1 0 0 −1 2 0 0 1 1 −1 1 0 0 1 1 −1 1 (A E) の簡約化が (E B) の形になった. 2 −1 1 ∴ A は正則で,逆行列は 0 −1 2. 1 −1 1 1 2 1 (2) A0 = 2 5 8 1 3 7 1 (A0 E) = 2 1 1 −→ 0 0 21 (−2) 2 1 1 0 0 R 1 2 1 1 0 0 R12 (−2) R31 (−1) R32 (−1) 5 8 0 1 0 −→ 0 1 6 −2 1 0 ← 3 7 0 0 1 0 1 6 −1 0 1 0 −11 5 −2 0 1 6 −2 1 0 0 0 1 −1 1 (A0 E) の簡約化が (E B) の形にならないから A0 は正則でない. ★正方行列 A に対して, 「A が正則 ⇔ (A E) の簡約化が (E B) の形」で,しかもこのとき A−1 = B となる. ☞教科書・定理 2.4.4 小演習問題 第10回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 5 次の置換のうち,σ(1) = 1, σ(2) = 2 であるものをすべて求めよ. 以下の 6 個が求めるものである. µ ¶ µ 1 2 3 4 5 1 , 1 2 3 4 5 1 µ ¶ µ 1 2 3 4 5 1 , 1 2 4 5 3 1 ¶ µ 2 3 4 5 1 , 2 3 5 4 1 ¶ µ 2 3 4 5 1 , 2 5 3 4 1 ¶ 2 3 4 5 , 2 4 3 5 ¶ 2 3 4 5 . 2 5 4 3 ★ 5 次の置換は全部で 5! = 120 個ある. ★ 5 次の置換のうち,σ(1) = 1 であるものは全部で (5 − 1)! = 24 個ある. 2 次の置換の符号を求めよ. ¶ µ 1 2 3 4 5 (1) σ = 2 3 1 5 4 転倒数を数えてみる. 1 5 i 5 5 に対して ki = σ(i) とおくと,1 5 i < j 5 5 かつ ki > kj となる (i, j) は (1, 3), (2, 3), (4, 5) の 3 組であるから,符号は χ(σ) = (−1)3 = −1. ¶ µ 1 2 3 4 5 6 7 (2) τ = 2 6 4 5 7 1 3 (1) と同様に考えて,τ の転倒数は 11 だから符号は χ(τ ) = (−1)11 = −1. 小演習問題 第11回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 定義に従って,次の行列式を求めよ. [サラスの方法(たすきがけ)は使わないこと. ] ¯ ¯ ¯4 7 ¯ ¯ ¯ (1) ¯ ¯ = 4 × 11 − 7 × 6 = 2. ¯6 11¯ ¯ ¯ ¯a11 a12 ¯ ¯ = a11 a22 − a12 a21 ただし,右の表より ¯¯ a21 a22 ¯ であることを用いた. σ ¡1 2¢ ¡ 11 22 ¢ E(σ) χ(σ) a1σ(1) a2σ(2) 0 1 +1 −1 a11 a22 a12 a21 21 ¯ ¯ ¯1 2 1¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (2) ¯3 1 2¯ = 1 × 1 × 1 + 2 × 2 × 2 + 1 × 3 × 1 − 1 × 2 × 1 − 2 × 3 × 1 − 1 × 1 × 2 = 2. ¯ ¯ ¯2 1 1¯ ただし,下の表より ¯ ¯ ¯a11 a12 a13 ¯ ¯ ¯ ¯a21 a22 a23 ¯ = a11 a22 a33 + a12 a23 a31 + a13 a21 a32 − a11 a23 a32 − a12 a21 a33 − a13 a22 a31 ¯ ¯ ¯a31 a32 a33 ¯ であることを用いた. σ ¡1 2 3¢ ¡ 11 22 33 ¢ ¡ 21 32 13 ¢ 312 2 E(σ) χ(σ) a1σ(1) a2σ(2) a3σ(3) 0 2 2 +1 +1 +1 a11 a22 a33 a12 a23 a31 a13 a21 a32 σ ¡1 2 3¢ ¡ 11 32 23 ¢ ¡ 21 12 33 ¢ 321 E(σ) χ(σ) a1σ(1) a2σ(2) a3σ(3) 1 1 3 −1 −1 −1 a11 a23 a32 a12 a21 a33 a13 a22 a31 次の行列式を求めよ. ¯ ¯ ¯2 4 1¯ ¯ ¯ ¯ ¯ (1) ¯0 1 2¯ = 2 × 1 × 3 = 6. ¯ ¯ ¯0 0 3¯ ★一般に,上三角行列の行列式はすべての対角成分の積となる. ¯ ¯3 ¯ ¯1 ¯ (2) ¯ ¯0 ¯ ¯0 2 1 0 0 ☞教科書・系 3.2.2 (2) ¯ 5 2 ¯¯ ¯ ¯ ¯ ¯ 0 −1¯¯ ¯¯3 2¯¯ ¯¯1 −3¯¯ = 1 × 13 = 13. × ¯= 1 −3¯ ¯1 1¯ ¯2 7 ¯ ¯ 2 7¯ ¯ ¯ ¯A C ¯ ¯ = |A| × |B|. ¯ ★ A, B, C を 2 次正方行列とするとき,¯ O B¯ ☞教科書・定理 3.2.1 小演習問題 第12回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 次の行列式を求めよ. ¯ ¯ ¯ ¯0 2 1 3¯ ¯0 ¯ ¯ ¯0 0 1 4¯ R23 ¯¯ 1 ¯ ¯ (1) ¯ ¯ = − ¯¯ ¯1 0 0 0¯ ¯0 ¯ ¯ ¯0 ¯0 0 3 1¯ 2 0 0 0 ¯ 3¯¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯0 2¯ ¯1 4¯ 0¯¯ ¯×¯ ¯ = −(−2) × (−11) = −22. = − ¯¯ 4¯¯ 1 0¯ ¯3 1¯ 1¯ 1 0 1 3 ★ 2 つの行を入れ換えると行列式は −1 倍される. ¯ ¯1 ¯ ¯2 ¯ (2) ¯ ¯1 ¯ ¯2 1 3 1 2 2 5 4 4 ¯ 1¯¯ 4¯¯ ¯ 3¯ ¯ 7¯ R21 (−2) R31 (−1) R41 (−2) = ¯ ¯1 ¯ ¯0 ¯ ¯0 ¯ ¯0 1 1 0 0 2 1 2 0 ☞教科書・定理 3.2.4 (2) ¯ 1¯¯ 2¯¯ = 1 × 1 × 2 × 5 = 10. 2¯¯ 5¯ ★ある行に別の行の定数倍を加えても,行列式の値は変わらない. ☞教科書・定理 3.2.5 (2) ¯ ¯1 ¯ ¯2 ¯ (3) ¯ ¯1 ¯ ¯2 1 3 2 5 2 3 1 3 ¯ 3¯¯ 4¯¯ ¯ 1¯ ¯ 4¯ R21 (−2) R31 (−1) R41 (−2) = ¯ ¯1 ¯ ¯0 ¯ ¯0 ¯ ¯0 ¯ 1 2 3 ¯¯ 1 −1 −2¯¯ = 0. 1 −1 −2¯¯ 3 −1 −2¯ ★ 2 つの行が等しい行列式の値は 0 である. (第 2 行と第 3 行が等しい. ) ☞教科書・定理 3.2.5 (1) 小演習問題 第13回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 A を奇数次の交代行列とする.すなわち,A は次数が奇数の正方行列で,かつ tA = −A を満たすとする.このとき,|A| を求めよ. A の次数 n は奇数なので,ある整数 m = 0 により n = 2m + 1 と書けるから, |tA| = |−A| = (−1)2m+1 |A| = −|A|. 一方,転置行列の行列式はもとの行列の行列式に等しいから |tA| = |A|. ゆえに −|A| = |A| と なる.この等式が満たされるのは |A| = 0 のときに限る. 答 |A| = 0. 2 次の行列式の値が 0 になるための条件を求めよ. ¯ ¯a ¯ ¯1 ¯ ¯ ¯1 ¯ ¯1 1 a 1 1 1 1 a 1 ¯ ¯ 1¯¯ ¯1 ¯ 1¯¯ R14 ¯¯1 ¯ = −¯ 1¯ ¯1 ¯ ¯a a¯ 1 a 1 1 1 1 a 1 ¯ R21 (−1) ¯ ¯ a¯¯ R31 (−1) ¯¯1 1 1 a ¯¯ 1¯¯ R41 (−a) ¯¯0 a − 1 0 1 − a ¯¯ = −¯ ¯ 1¯ 0 a − 1 1 − a ¯¯ ¯0 ¯0 1 − a 1 − a 1 − a2 ¯ 1¯ ¯ ¯ ¯ ¯1 1 ¯1 1 a ¯¯ R42 (1) ¯ ¯ ¯ ¯ R (1) ¯ 43 0 1 0 −1 3 3 ¯ = −(a − 1) ¯0 = −(a − 1) ¯¯ ¯ ¯0 1 −1 ¯ ¯0 0 ¯ ¯0 −1 −1 −1 − a¯ ¯0 1 1 0 0 ¯ 1 a ¯¯ 0 −1 ¯¯ 1 −1 ¯¯ 0 −3 − a¯ = −(a − 1)3 × {1 × 1 × 1 × (−3 − a)} = (a − 1)3 (a + 3). したがって,与式が 0 になるのは a = 1 または a = −3 のときである. ★対角成分がすべて a,残りの成分がすべて 1 である n 次行列式は (a − 1)n−1 (a + n − 1) とな ることが確かめられる. 小演習問題 第14回 科 年 学籍番号: 氏名: 1 次の行列式を,指定の行または列に関する余因子展開を行った上で求めよ. ¯ ¯ ¯2 0 0 3¯ ¯ ¯ ¯1 2 1 3¯ ¯ ¯ (1) ¯ (第 1 行) ¯ ¯4 0 3 1¯ ¯ ¯ ¯1 0 0 2¯ ¯ ¯2 1 ¯ 1+1 ¯0 3 与式 = 2 × (−1) ¯ ¯0 0 ¯ ¯ ¯ ¯1 2 1¯ ¯ ¯ ¯ C12 ¯2 ¯ ¯ ここで ¯4 0 3¯ = − ¯¯0 ¯1 0 0¯ ¯0 ¯ ¯ ¯1 3¯¯ ¯ 1+4 ¯4 ¯ 1¯ + 3 × (−1) ¯ ¯1 ¯ 2 ¯ ¯ ¯2 1 1 1¯¯ C23 ¯ 2 ¯ 4 3¯ = (−1) ¯¯0 3 ¯0 0 1 0¯ ¯ ¯ ¯ ¯1 2 1¯ 2 1¯¯ ¯ ¯ 0 3¯¯ = 24 − 3 ¯¯4 0 3¯¯. ¯1 0 0¯ 0 0¯ ¯ 1¯¯ 4¯¯ = 2 × 3 × 1 = 6 だから, 1¯ 与式 = 24 − 3 × 6 = 6. ¯ ¯2 ¯ ¯2 ¯ (2) ¯ ¯4 ¯ ¯2 1 1 2 3 0 2 0 1 ¯ 3¯¯ 3¯¯ ¯ 3¯ ¯ 4¯ (第 3 列) ¯ ¯ ¯ ¯ ¯2 1 3¯ ¯2 1 3¯ ¯ ¯ ¯ ¯ 与式 = 2 × (−1)2+3 ¯¯4 2 3¯¯ + 1 × (−1)4+3 ¯¯2 1 3¯¯. ¯2 3 4¯ ¯4 2 3¯ 第 2 項の行列式は,第 1 行と第 2 行が等しいから 0 である. ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯2 1 3¯ R21 (−2) ¯2 1 3 ¯ ¯0 −3¯ ¯ ¯ R31 (−1) ¯ ¯ ¯ = 2 × 6 = 12 であるから, ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ 第 1 項の行列式は,¯4 2 3¯ = ¯0 0 −3¯ = 2 × ¯ 2 1¯ ¯0 2 1 ¯ ¯2 3 4¯ 与式 = 2 × (−1) × 12 = −24.
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