イラク - 一般財団法人日本エネルギー経済研究所 中東研究センター

ISSN 1347-7676
国別定期報告
イラク
2006 年 1 - 3 月
政治........................................................................................................................................... 1
外交.............................................................................................................................................................. 1
国際社会関係........................................................................................................................................... 1
米 • 英両国の対イラク政策 ................................................................................................................... 1
対イラン関係........................................................................................................................................... 3
対トルコ関係........................................................................................................................................... 3
対アラブ諸国関係................................................................................................................................... 3
内政.............................................................................................................................................................. 4
政治プロセス........................................................................................................................................... 4
旧フセイン政権裁判............................................................................................................................... 5
クルド地域情勢....................................................................................................................................... 6
治安情勢................................................................................................................................................... 6
経済........................................................................................................................................... 8
経済一般...................................................................................................................................................... 8
IMF 合意を受けてパリ・クラブが第二段階の債務削減を実施....................................................... 8
日本の対イラク民間大口債権のリスケが完了................................................................................... 8
国際社会からの復興資金の供与は低調............................................................................................... 9
2005 年のインフレ率は 32.8% .............................................................................................................. 9
財政、金融.................................................................................................................................................. 9
2006 年度予算が発表.............................................................................................................................. 9
近隣国が買収によりイラク銀行業に参入......................................................................................... 10
2.3 産業、インフラ............................................................................................................................... 10
円借款による対イラク支援がスタート............................................................................................. 11
携帯電話長期ライセンスの事前審査開始......................................................................................... 11
オーストリア航空の就航延期とイラクの航空事情......................................................................... 12
石油、エネルギー.................................................................................................................................... 12
生産・復興状況..................................................................................................................................... 12
外国企業・政府との契約関連............................................................................................................. 15
主要経済指標 ................................................................................................................................ 15
2006 年度予算 ............................................................................................................................... 16
原油生産量、輸出量 .................................................................................................................... 16
石油製品消費量および生産量 .................................................................................................... 17
石油製品の比較 ............................................................................................................................ 17
大先 一正(政治) 吉岡 明子(経済・エネルギー)
(財)日本エネルギー経済研究所 中東研究センター
JIME 国別定期報告「イラク」2006 年 1 - 3 月
1.0 政治
1.1 外交
1.1.1 国際社会関係
1.1.1.1 イ ラ ク戦争 3 周年に向けての世界各地の反戦デモ
2003 年 3 月 19 日の米英軍による対イラク空爆開始から 3 年目を迎える 3 月 18,19 日の週末に多国
籍軍のイラク撤退を求める反戦デモが世界各地で行なわれた。
ニューヨーク市では 3 月 19 日(日)に約 200 人の反戦デモ隊がマンハッタン 5 番街を行進し、タ
イムズ・スクエアーの新兵募集事務所の前で気勢を上げ、包帯姿の人形の様なものを立ち上げようと
して 17 名が逮捕された。ロンドンでは 3 月 18 日(土)に数千人のデモ隊が議会前の広場に集まり、
ブッシュ大統領をテロリストと批判したポスターやブレーア首相の退陣を要求するプラカードを掲げ
てトラファルガー広場に向って行進した。このほか、東京では 2000 人、ソウルでは 1000 人強、シド
ニーでは 500 人、ストックホルムでは 1000 人といった反戦運動参加者がデモ行進をおこなった。
しかし、その規模は世界全体でも数万人規模に留まり、イラク戦争開戦前に見られた反戦機運の高
まり はなく、大規模 な軍勢 を派遣 してい る米国 や英国 などで も反戦 運動の 低調さ が目立 った。
(AP2006.3.18,19,20、Boston Herald 2006.3.19)
1.1.2 米・英両国の対イ ラ ク政策
1.1.2.1 米国ブ ッ シ ュ米大統領の予算教書 (2007 会計年度) と 米軍駐留経費
ブッシュ米大統領は 2 月 6 日に 2007 会計年度(2006 年 10 月∼ 2007 年 9 月)の予算教書を議会に
提出した。今回の予算教書において、非安全保障関連支出(除く国防費・国土安全保障費)は前年度
に比べて 0.5% 削減された 3983 億㌦となっており、2 年連続の緊縮型となった。しかし、対テロ戦争
の支出は聖域扱いであり、国防総省予算を 6.9% 増の 4393 億㌦、国土安全保障費を 3.3% 増の 331 億
㌦としたことから裁量的支出 全体では 3.2% 増の 8707 億ドルに拡大している。このため、2007 年度
の義務的支出 も含めた歳出総額は前年度比 2.3% 増の 2 兆 7700 億ドル(約 329 兆円)に達した。
ブッシュ政権は今回の予算教書とは別にイラクとアフガニスタンにおける米軍駐留経費を賄うた
め、1200 億ドルの追加予算を要請する方針を明らかにしている。これにより、駐留経費は総額 4400
億ドルに膨らみ、現在の物価換算で 5000 億∼ 6000 億ドルといわれるベトナム戦争の負担に迫ること
になる。(日経新聞 2006.2.7、The Guardian 2006.2.4、外務省ホームページ 2006.2.7)
1.1.2.2 イ ラ ク駐留英軍の虐待疑惑の映像公開
2 月 12 日付の英国日曜大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」は、イラク駐留中の英陸軍が 2004
年初めにイラク南部のアマラで少年 4 人に暴行を加え、虐待している状況を英軍関係者が撮影したと
するビデオ映像をホームページ上で公開した。映像によれば、ヘルメットに迷彩服姿の英兵が英軍施
設に向けて投石などをしていたデモ隊から 4 人を施設内に引き込み、棒で殴り、蹴るなど激しい暴行
を加えた。少年らは「助けて」などと懇願したが聞き入れられなかった。イラク人を馬鹿にしたよう
なビデオ撮影者のコメントも録音されている。
この報道を受け、イラクでは南部一帯を中心に反英軍気運が高まり、2 月 14 日にはバスラの英軍本
部にデモ隊が集まり、イラク撤退を求めた。また、バスラ県議会とマイサン県議会は英国に対する抗
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議のために協力関係の断絶を宣言し、統治権限の即時引渡しを求めてた。なお、2 月 19 日の BBC 報
道によるとビデオ事件に関係して英国防省は 3 名の英兵を逮捕している。(AP 2006.2.14, RFERRL
2006.2.17, BBC 2006.2.19)
1.1.2.3 イ ラ ク駐留英軍 2006 年 5 月に 800 人削減へ
リード英国防相は 3 月 13 日に下院(the House of Commons)で本年 5 月にイラク駐留英軍 8000 人
の 1 割に当たる増強大隊 800 人を削減し、7000 人余の態勢とする方針を明らかにした。リード国防相
が駐留軍の撤退に向けた日程を議会で示したのは初めてである。今回の 800 人の駐留軍削減は将来に
向けての幅広い英軍撤退プロセスの一部ではないとしているが、権限移譲への前向きな動きといえる。
我が国の陸上自衛隊が駐留するサマワを州都とする南部ムサンナ州も権限移譲協議の対象に含まれる
とみられ、陸上自衛隊撤退に向けた日程にも影響を与えそうだ。
リード国防相は削減の理由として、イラク人の治安部隊要員が総勢 23 万人に育ってきており、し
かも毎月 5000 名以上の増強が進み、軍施設をイラク治安部隊が警備できるようになったことなどを挙
げた。しかし、英軍が管轄するムサンナなど南部 4 州は現時点で撤退の準備はできていないと指摘し
た。(BBC2006.3.13,17,18 日経新聞 2006.3.13)
1.1.2.4 ブ ッ シ ュ米大統領がイ ラ ク戦争開戦 3 周年に勝利を強調
イラク戦争開戦以降の 3 年間の米兵犠牲者は 2300 名を超えており、イラク国内の民族・宗派間抗
争や米軍の攻撃の巻き添えでなくなったイラク国民は 3 万 3 千人以上と言われている。また、アラウィ
前首相が 3 月 19 日に英国 BBC テレビの番組で「イラクは内戦状態」と発言する一方、昨年 12 月の総
選挙後 3 カ月以上が経ったのにも拘わらず、国民融和を目指す挙国一致内閣の成立は程遠い状況にあ
り、イラク安定化のメドはたっていない。
しかし、ブッシュ米大統領は 3 月 19 日、
「勝利を導く戦略を実行している。イラクでの勝利が米国
をさらに安全にする」と記者団に述べ、イラクの新憲法に基づく本格的な政府づくりに向けた作業が
進んでいると指摘し、イラクの指導者に引き続き努力を促す考えを表明し、先行きに自信を示した。
また、チェイニー米副大統領は、同じ日にテレビ番組に出演し、アラウィ前首相が「内戦状態にあ
る」との見解を示したことに対して「そうは思わない。現地などからの分析と一致していない」と強
調し、国民議会の選挙や新しい憲法を承認した国民投票などを実績として挙げ、
「我々はイラクで成功
に近づいている」と語った。イラク駐留多国籍軍トップのケーシー米軍司令官も同じ番組で「暴動が
拡大しているとは必ずしも思わない。緊張は徐々に薄らいでいく」との見通しを明らかにし、イラク
が内戦状態にあるとの見方を強く否定した。(Washingtonpost・BBC・朝日新聞 2006.3.20)
1.1.2.5 ロ シ アによ る イ ラ ク戦争時の米軍情報漏洩問題の表面化
3 月 24 日、米統合軍司令部は 2003 年 3 月のイラク戦争開戦直後にロシアが米軍作戦情報を旧フセ
イン政権に提供していたこと明らかにした報告書を公表した。報告書は米軍が拘束したフセイン政権
や旧イラク軍幹部の証言や押収書類をもとに作成されており、情報提供ルートを「ロシア情報機関か
らウラジミール・テテレンコ駐イラク・ロシア大使を経由」、
「ロシアが米中央軍司令部内部に持つ情
報源から集めた」などと明記した。
提供された情報の中には「戦略的な機密情報」もあり、米軍はバグダッドを南、東、北から包囲す
る計画であることや、バグダッド南方のカルバラに 1 万 2000 人の兵力を集結させているなどの情報も
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あったという。ただ、クウェートからの侵攻は陽動作戦であるとか、バグダッド侵攻は米軍第 4 歩兵
師団が到着する 4 月半ば以降との誤情報もあり、フセイン政権を撹乱する目的であえて流されたとの
見方もある。
なお、ロシア外国情報機関のスポークスマンは「同様の根拠のない非難がロシア情報機関に対して
再 三 に わ た り な さ れ て い る」と 述 べ、フ セ イ ン 政 権 に 対 す る 情 報 提 供 疑 惑 を 否 定 し た。
(RFERL2006.3.24、BBC・日経新聞 2006.3.25)
1.1.3 対イ ラ ン関係
1.1.3.1 イ ラ ン政府は米国 と イ ラ ク安定化に関する協議開始の方針を表明
3 月 16 日、イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長は、イラク安定化に関して米国との直
接協議に応じる用意があると表明した。両国間の外交関係はテヘランの米国大使館占拠事件により
1980 年 4 月以来、途絶えているが、3 月 15 日にイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の最高指
導者アブドルアジズ・ハキム師がイラクのテレビ放送において「イラクの安定のため、イランは米国
と交渉すべきだ」と述べており、この要請を受けた形となった。
米国政府は昨年、11 月にハリルザド駐イラク米国大使にイラク問題に関してイランと交渉すること
を許可しており、同大使はイラン側に繰り返し交渉を呼び掛けていたが、これまでイラン側は交渉開
始を拒否していた。このため、今回のイランの方針変更は核燃料開発問題に関する国際的な圧力を回
避する意図があるのではないかとの見方もなされている。
なお、イラク国内では米国・イラン間の直接交渉は、イランのイラクに対する内政干渉を公認する
ことになるとして反対する声が強まっている。特にスンニ派指導者はその急先鋒であるが、シーア派
の中でも反米強行派であるサドル師の支持者グループも反対姿勢を示している。(Aljazeera・BBC
2006.3.16,AP 2006.3.17, RFERL 2006.3.23)
1.1.4 対 ト ル コ 関係
1.1.4.1 ジ ャ ァ フ ァ リ 首相の ト ル コ 訪問
2 月 28 日、ジャァファリ首相はトルコ政府の招待を受けてトルコの首都アンカラを訪問し、エルド
ガン首相、ガル外相、セゼール大統領らと会談した。会談の具体的なテーマは両国間の交通・輸送シ
ステムの改善についてであったが、イラクにおいて 2 月下旬のアスカリ聖廟爆破事件以降、治安悪化
が一段と深まったことからイラク安定化に向けての協力関係も大きなテーマとされた。トルコ政府は
イラクが内戦状態となり、イラク・クルド地域が独立国家となった場合には、トルコ・クルド勢力が
より強硬に独立国家の形成を求めることになるのではないかと警戒している。
このジャァファリ首相のトルコ訪問に関し、タラバーニ大統領は事前に大統領評議会や閣議に報告
しないで行われたため、公式訪問とは認められず、訪問中の全ての協定や合意は無効と宣言した。ま
た、本来ならば同行すべきクルド人であるゼバリ外相が、訪問団に加わっていなかったことからも、
本格政府樹立に向けて連立政権内の政治的対立が厳しさを加えていることが示された。
(AP 2006.2.28,
RFERL 2006.3.3)
1.1.5 対ア ラ ブ諸国関係
1.1.5.1 ア ラ ブ首脳会議開幕、 中東和平問題に加えて イ ラ ク問題を協議
アラブ連盟の首脳会議が 3 月 28 ∼ 29 日の二日か間にわたり、スーダンの首都ハルツームで開催さ
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れた。イスラム原理主義組織ハマス率いるパレスチナ自治政府への支援や中東和平問題などに加えて
イラク問題も協議され、最終日にハルツーム宣言が採択された。会議にはサウジアラビアやエジプト
などの 10 カ国の元首が欠席したが、トルコやスペインの首相、韓国外相などの欧州・アジア諸国から
のオブザーバー参加が増えている。
イラクからはジバリ外相が参加し、最終セッションでタラバーニ大統領の演説を代読し、イラク復
興を妨げている武装テロ勢力を幾つかのアラブ国政府と報道機関が支援しているとかってない強い口
調で非難し、
「テロを根絶し、テロ活動の資金源を断つ」のに必要な手助けを行なうように求めた。ま
た、アラブ諸国がバグダッドへ大使派遣の消極的なことにも苦言を呈するとともに数十億㌦の対イラ
ク債権の放棄を求めた。
また、首脳会議はイラク宗教指導者会議の開催に関するヨルダン政府の提案を歓迎し、ムーサ事務
局長は同会議はイラク国内の宗派間対立を和らげることを目的としており、問題解決に向けての第 1
歩であると述べた。(Gulfnews2006.3.30、AP・Aljazeera 2006.3.30)
1.2 内政
1.2.1 政治プ ロ セス
1.2.1.1 昨年 12 月の国民議会選挙の最終結果の発表
1 月 20 日、イラク独立選挙管理委員会は昨年 12 月に実施された国民議会選挙(定数 275)の開票
結果を発表した。これによるとシーア派宗教勢力「統一イラク連合(UIA)」が 128 議席で第 1 党を維
持したが、過半数には届かなかった。第 2 党は少数民族クルド系「クルド同盟」
(53 議席)となり、第
1、2 党は昨年 1 月の暫定国民議会選と同じ組み合わせとなった。第 3 党にはスンニ派政党連合「イラ
ク合意戦線」
(44 議席)が躍進し、同じスンニ派の「イラク国民対話戦線」
(11 議席)と合わせると総
議席の丁度 20% に当たる 55 議席を獲得した。
前評判の高かったアラウィ前暫定政権首相率いる世俗派「イラク国民リスト」(25 議席)は第 4 党
に止まった。米国の後押しを受けていた「イラク国民リスト」の敗退は、世俗派ブランドでは選挙に
勝てないイラクの現状を示した。なお、統一イラク連合から離脱して選挙に臨んだチャラビ副首相、
バフルルウルーム石油相、1 月半ばに辞任したクッパ前首相報道官等の率いる各リストは無議席に終
わった。
イラク独立選挙管理委員会のヒンダウィ委員長は今回の国民議会選挙の投票率が最終的に75%を上
回るとの見方を示した。選管は昨年 12 月下旬、暫定投票率を 69.97% と発表していた。投票率は昨年
1 月の暫定国民議会選が 58%、同年 10 月の恒久憲法案を巡る国民投票は 63% だった。
(日経新聞
2006.1.21、BBC2006.1.21,22、中東研 NR2006.1.23)
1.2.1.2 統一イ ラ ク連合 (UIA) はジ ャ ァ フ ァ リ 首相の続投を決定
12 月の国民議会選挙で第 1 党を維持したシーア派勢力・統一イラク連合(UIA)は、2 月 12 日、現
在の移行政府に代わる本格政府の首相候補の指名投票を実施した。この結果、ダワア党代表のジャァ
ファリ現首相が 64 票を獲得し、63 票を集めたイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)幹部のア
ディル・アブドル・マハディ副大統領を 1 票差で破った。
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当初、マハディ副大統領の優勢が伝えられていたが、対米強硬派指導者サドル師の支持者グループ
がジャァファリ現首相の支持に回ったため、僅差の勝利となった。新憲法は議会最大会派の指導者が
首相になると規定しており、順当に行けばジャァファリ氏の首相続投は確実だが、他陣営にはジャァ
ファリ現首相続投への反発も多く、連立協議は難航が予想された。
なお、本格政府の実権は国軍最高司令官でもある首相が握るが、国家元首は大統領が務めることと
なっている。タラバーニ移行政府大統領は 12 月の議会選挙の直前には「大統領の権限が少なすぎる」
ことを理由に続投を望まないと発言していたが、1 月 17 日の記者会見では「クルド同盟が私を大統領
候補に推し、これを受諾した」と述べ、本格政府においても大統領職を続投する意向を表明した。所
属するクルド同盟の続投要請を受けた格好だが、タラバーニ氏は大統領職を続ける条件として権限拡
大を要求しており、イスラム教シーア派が確保するとみられる首相の権限の一部移譲を求めるとみら
れている。(日経新聞・BBC・AP2006.2.12、日経新聞 2006.1.12,17)
1.2.1.3 イ ラ ク国民議会の初開催、 連立政権協議はなお難航
3 月 16 日、イラク国民議会(定数 275)が昨年 12 月の選挙後、3 カ月を経て初めて開催され、TV
放送を通じて全国に報道された。イラク戦争開戦から間もなく 3 年を迎える状況の下でイラク民主化
計画を完成させる本格政府発足に向けての前進が開始された。しかし、民族・宗派を基盤とする各陣
営の連立協議が難航するなかでの見切り発車であり、正副議長を決めることも出来ずに初日の討議を
約 30 分で打ち切った。なお、議会では最年長議員のパチャーチ元外相(83 歳)が暫定議長に就任し、
元外相は「イラクは宗派間衝突が激化、極めて厳しい状況にある」と演説し、早期の本格政府樹立を
実現し、危機を打開すべきだという考えを示した
国民議会では議会開催後、60 日以内に大統領を選出し、首相と新内閣を信認することとされている
が、統一イラク連合が決定したジャァファリ首相の続投方針に対してスンニ派、クルド勢力、世俗派
から強い反対があり、最終的な決着にはなお時間が掛かると見られた。
(BBC/Canadian Press 2006.3.16,
Washington post 2006.3.17)
1.2.2 旧 フ セ イ ン政権裁判
1.2.2.1 ラ フ マ ン新裁判長の下での進捗する フ セ イ ン裁判
昨年 11 月 19 日にフセイン元大統領ら旧政権幹部 8 被告に対し、1982 年のドジャイル村村民虐殺の
罪を問う裁判が首都バグダッドのイラク高等法廷で開始されており、年明け後の初めての公判である
第 8 回公判が 1 月 29 日に開廷された。第 8 回公判に先立つ 1 月 23 日に被告に甘いと非難されたため
に辞表を提出したアミン前裁判長に代わり、アブドル・ラフマン新裁判長が就任しており、新裁判長
は公判冒頭に被告に対して「政治的な発言は認めない」と述べ、訴訟指揮に強い決意を見せた。新裁
判長の裁判の進め方に反発したフセイン元大統領ら 4 被告が退廷したため、被告席には 4 名が留まっ
た状況で審理が続けられた。
2 月 28 日の第 13 回公判では、検察側より革命裁判所が下したドジャイル村住民 148 名の死刑判決
にフセイ大統領(当時)が署名、確認したとする証拠書類が提出された。翌 3 月 1 日の第 14 回公判に
おいて元大統領は暗殺未遂犯の農地の破壊を命じたことを認めたが、この件で関連するのは元大統領
のみであると述べる一方、法に従った処分が行なわれており、何も悪いことはしていないと主張した。
最近では 3 月 15 日に第 17 回公判が開かれ、フセイン元大統領の異母兄弟であるバルザン・アル・ティ
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クリット被告の関与が審理されており、4 月 5 日に次の第 18 回公判が開催されることになっている。
なお、3 月 19 日の AP 通信は、1980 年代にイラク北部で起きたクルド系住民への化学兵器を使った
攻撃についてフセイン大統領(当時)が事前に承認していた可能性があることが、米軍が最近、機密
扱いを解いたイラク旧政権の文書で明らかにされたと報じた。
イラク軍による毒ガス攻撃では約 5000 人のクルド系住民が殺害されており、イラク高等法廷はハ
ラブジャ事件に関与した疑いでフセイン被告の新たな起訴を準備している。公開された 1987 年 3 月付
の文書は、イラク軍情報機関にあてられたものであり、フセイン大統領(当時)が化学兵器を指すと
みられる「特別な兵器」による奇襲の研究を命じたと記されており、大統領の個人秘書が署名してい
た。(BBC 2006.1.24,23,29、2.28、3.1,15、AP 3.19、日経新聞 2006.3.19)
1.2.3 ク ル ド 地域情勢
1.2.3.1 ハラ ブ ジ ャ ブ で不満分子が暴徒化、 慰霊碑を破壊
3 月 16 日、イラク北部のクルド人の町ハラブジャで 1988 年のイラク軍による毒ガス攻撃事件の 18
周年記念式典が開かれたが、その際にクルド地域政府を代表してシャフ・モハンマド・サイード氏が
演説を行なおうとした所、日頃から地域政府の地元対策に不満を抱いていた群集が暴徒化し、高さ 30m
の記念碑搭に乱入し、犠牲者の写真や着物などの展示物を破壊し、放火した。このため、治安回復に
向かったに警察の発砲により 14 歳のクルド人少年が死亡し、8 名が負傷した。
ハラブジャでは、1988 年 3 月のイラク政府軍による毒ガス攻撃で約 5000 人の死者と約 1 万人の負
傷者が出たとされている。このため、2 年前の式典には、連合国暫定当局(CPA)のブレマー文民行
政官と現在ではイラク大統領を務めているクルド愛国同盟(PUK)代表のタラバーニ氏が参加し、地
域復興の約束をしたが、その後、状況が改善されていないとして地元民の不満が高まっていた。
(BBC2006.3.17,18、KurdishMedia 2006.3.17)
1.2.4 治安情勢
1.2.4.1 開票作業が進む中での爆弾テ ロ、 一日の死者 120 人超
1 月 5 日、イラク中部のシーア派聖地カルバラのイマーム・フセイン廟付近で自爆テロがあり、少
なくとも 60 人が死亡した。また、スンニ派住民が多い中西部ラマディでは警察官やイラク軍兵士の新
規採用センターの近くで自爆テロが起き、約 60 人が死亡した。加えて、首都バグダッドでも自動車に
よる爆弾テロや米兵を狙った仕掛け爆弾によるテロ攻撃などがあり、この日だけで合わせて 120 人以
上が死亡した。
この様に昨年 12 月の国民議会選挙後では最悪の一日となったが、イスラム教シーア派とスンニ派
のそれぞれの政治勢力の拠点が標的とされており、議会選挙後、シーア派・クルド勢力間の連立にス
ンニ派勢力が加わる方向での基本合意の成立が報道されるなど、本格政府の発足を目指す動きが進ん
だことに対し、武装テロ勢力が警戒感を抱き、その妨害に乗り出してきたことが示された。(BBC・
Aljazeera・Washingtonpost2006.1.5)
1.2.4.2 シーア派聖地 「ア ス カ リ 聖廟」 の爆破事件 と 宗派間対立の激化
2 月 22 日、イラク中部のサマラにあるシーア派聖地「アスカリ聖廟」が爆破され、黄金ドームが破
壊された。同日、シーア派最高権威のシスタニ師はアスカリ聖廟爆破への抗議を呼び掛ける一方、暴
力行為の回避と 1 週間の喪に服することを訴えた。また、タラバーニ大統領は TV 放送で実行犯達は
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JIME 国別定期報告「イラク」2006 年 1 - 3 月
挙国一致内閣の樹立を妨害しようとしていると非難し、内戦回避のための団結を呼び掛けた。
イラク移行政府は 2 月 24 日、首都バグダッドと周辺 3 州で夜間に加えて日中も含む外出禁止令を
出し、金曜日の礼拝を事実上阻止する措置を取るなど、厳戒態勢を敷いた。この様な政府、宗教指導
者らの事態収拾への取り組みにもかかわらず、民衆レベルの対立感情は収まらず、首都バグダッドを
中心にイラク各地で宗派間の衝突が頻発した。
2 月 28 日付けの米ワシントン・ポスト紙は両派の衝突による死者は 1300 人を超えたと報道した。
これに対し、イラク移行政府はその報道は過大であるとし、一連の宗派間衝突による死者は 379 人と
反論した。正確な数字の把握は困難と考えられるが、アスカリ聖廟爆破事件後の混乱の中で組閣交渉
も暗礁に乗り上げており、本格政権の樹立が更に遅れることが懸念されている。(BBC2006.2.22,23、
WSJ 2006.2.24、日経新聞 2006.3.1)
1.2.4.3 イ ラ ク軍の単独治安維持地域は今夏末ま でに全土の 75% に拡大
3 月 17 日、イラク駐留米軍 NO.2 のチアレリ中将は、イラク軍が今年夏末までに全土の 75% で治安
維持任務に単独で当たることが可能になるとの見通しを衛星回線でイラクと米国防総省を繋いだビデ
オ会見で示した。ブッシュ大統領は 3 月 13 日の演説で「国土の半分以上の治安維持権限を年末までに
イラク軍に移譲するのが目標」と述べたが、チアレリ中将の発言はイラク軍に対する訓練の進展によ
り、目標より速いペースで権限移譲が可能になるとの認識を示した。
チアレリ中将によると、現在、イラク軍の規模は約 24 万人であり、単独で治安維持に当たること
ができるのはイラク全土の 50% に満たない。しかし、治安維持権限移譲について「夏の終わりまで
に」75% に引き上げることは十分可能と指摘した。ただ、武装テロ勢力の活動が活発なアンバール県
の特定地域などの最も難しい地域の治安維持任務をイラク側に移譲することはない模様である。
(BBC・AP・日経新聞 2006.3.17)
1.2.4.4 イ ラ ク民兵 と 米軍 ・ イ ラ ク軍がサ ド ル師派モ ス ク で銃撃戦
3 月 26 日、バグダッド市内のシーア派ムスタファ・モスク(礼拝所)で反米強硬派のサドル師支持
者と米軍・イラク軍が衝突し、イラク警察の発表では 22 人が死亡した。事件は米軍が同モスクの方角
から銃撃を受けたため、サドル派民兵組織の本部ともなっていたモスク一帯を米軍とイラク軍が包囲
し、イラク軍特殊部隊の兵士が建物の中に入ろうとした時に銃撃戦が始まった。
米軍の声明によると、米軍は作戦中にモスク内には立ち入っておらず、イラク軍特殊部隊が 16 人
の反乱分子を射殺したとしているが、サドル師側は「米軍が非武装の民間人を殺害した」と非難して
いる。バグダッド県のタハン知事はこの事件に対する独立した調査委員会が組織されるまで米軍及び
米国大使館への協力を全面中止すると記者団に語った。また、イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)
のジャバル内務相やバース党のアンジィ治安相などのシーア派政党幹部も一斉に米軍非難の声明を発
表 し て お り、米 国 と シ ー ア 派 勢 力 間 の 関 係 悪 化 が 懸 念 さ れ て い る。(Aljazeera 2006.3.26, BBC
2006.3.27,Gurdian 2006.3.28)
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2.0 経済
2.1 経済一般
2.1.1 IMF 合意を受けてパ リ ・ ク ラ ブが第二段階の債務削減を実施
2005 年末に IMF 理事会が対イラク向けスタンド・バイ融資を承認したことを受けて、パリ・クラ
ブ(主要国債権国会議)は対イラク債権の追加削減(30%)を承認した。パリ・クラブは 2004 年 11
月の会議で、加盟国の対イラク債権を 3 段階で 80% 削減することで合意しており、第 1 段階として即
時 30% の債務削減、第 2 段階として、IMF のスタンド・バイ融資の承認をもってさらに 30% 削減、
2007 年 11 月に予定される同融資の終了をもって、さらに 20% 削減、とされていた。
こうした進展をうけて 1 月、パリ・クラブ加盟国のうちドイツ、フランス、デンマークが対イラク
債権の 80% 削減に応じ、削減額は 3 カ国合計で 108 億ドルとなった。その後、2 月にはイギリスも約
20 億ドルの対イラク債権の 80% 削減に応じた。なお、パリ・クラブにおける第 1 位の債権国である
日本は、2005 年 11 月のジバリ外相訪日時に、対イラク債権の 80%(約 7,100 億円、約 60 億ドル)を
削減することで合意している。
イラク政府は、こうした債務削減によって得られた資金を社会保障サービスにまわしたいとして、
2006 年より貧困ライン以下の家庭 100 万世帯に月額 12 万ドル(約 86 ドル)の補助金を支給すると発
表した。
(MEES, 2006.01.02; al-Zaman, 2006.01.05;MEES, 2006.02.13)
2.1.2 日本の対イ ラ ク 民間大口債権の リ スケが完了
2004 年 11 月のパリ・クラブ会議で公的債務の段階的 80% 削減が決定されたことを受け、イラク政
府は同年 12 月、民間債権登録用のウェブサイトを開設し、民間債務の整理を開始した。2005 年 7 月
に同ウェブサイトが明らかにした民間債務の処理方法は、1 社 3500 万ドル以下の小口債権保有者につ
いては、元利合計の 10.25% の金額でイラク政府がキャッシュで債権を買い取る、それ以上の大口債
権に関しては、パリ・クラブ合意と同様に元利合計の 20% をローンもしくはイラク政府が発行する国
債のいずれかで 22 年で返済するが、遅延損害金は、過去の市場金利率プラスアルファで一律に処理す
るというものである。
日本は 1980 年代の民間債権について、公的債権と一括して原油支払代金の一部から差し引き、返
済されるという両政府間合意(オイル・スキーム)が 1990 年に正式調印されていたが、その後の湾岸
戦争で頓挫していた。上記の処理方法では、遅延金利率についてオイル・スキームに劣る内容であっ
たため、日本貿易会の市場委員会・特定地域小委員会が 2005 年 10 月、オイル・スキームの尊重を求
める書簡をイラク財務省宛に送っていた。しかし、11 月のイラク中央銀行総裁名での返信は、「何十
万件とある案件について個々の契約にさかのぼることはできず、全世界の民間債権者に対して公平で
一律な方法で対処せざるを得ない」というものであった。
同月、訪日していた財務省の担当局長と商社側代表者との会合が在京イラク大使館でもたれ、最終
的にイラク側からは、遅延金利率について、調達コストとして通貨別に過去の市場金利プラスアルファ
で累積計算するという条件が提示され、2006 年 1 月 23 日付で、日本の民間大口債権者のリスケ処理
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が終了した。イラク側が交渉を急いだ背景には、2005 年 12 月に正式政府を選出する国民議会選挙が
控えていたためと見られる。(日本貿易会月報 , 2006.03)
2.1.3 国際社会から の復興資金の供与は低調
2003 年のマドリード会議では、各国から合計 322 億ドルの対イラク資金協力が表明されたが、その
うち米国の 186 億ドルは、2006 年末までに支出を終える見込みである一方、他国からの援助(136 億
ドル)の実行は低調である。米国務省の資料によると、会議で表明された合計額の約 30% しか実行に
うつされていないという。隣国のサウジアラビアとクウェートは併せて 10 億ドルの支援を表明したも
のの、実行額は 1 割にとどまっており、米国はこうした湾岸諸国を中心に、圧力をかけていく見通し
である。米国以外からの援助の 136 億ドルのうち、100 億ドルが借款、36 億ドルが贈与となっている。
ただし、米国の援助によって完成したプロジェクトのうち、武装勢力によって破壊されたり、オペ
レーションの不手際で被害を受けているものもあることが確認されている。治安状況の悪化もあって
経済復興は低調だが、米国は追加支援には消極的で、今後は民間投資を活発化するための政策立案の
支援に軸足を移す模様である。
なお、日本の対イラク支援についても、実行ベースでは援助表明額である 50 億ドルの半分以下に
留まっているが、これは 35 億ドルの有償資金協力(円借款)が正式政府の設立を待って実施されるた
めである。(The Los Angels Times, 2006.01.15; AP, 2006.01.16)
2.1.4 2005 年のイ ン フ レ率は 32.8%
計画省の発表によると、2005 年のイラクのインフレ率は 32.8% であった。こうした高いインフレ率
は、食料品を含めた商品の値上がりに政府が有効な手を打てていないことを示している。
さらに 2006 年 1 月のインフレ率は、食料品、燃料、輸送、家賃などの値上がりが影響して、前月
比 5.8% 上昇し 22% となった。品目別では、輸送、燃料が 27% 上昇ともっとも高く、これは 12 月に
実施された燃料補助金の削減の結果と見られる。その次が食料品の 26.4% で、特に米、砂糖、小麦粉、
植物油などの値上がりが激しい。一方で政府による食糧配給は、行政の非効率が災いして以前より量
が減ったり品目が欠けたりしていると報じられている。
(MEES, 2006.01.16; al-Zaman, 2006.02.14,
2006.03.26)
2.2 財政、 金融
2.2.1 2006 年度予算が発表
EIU (Economic Intelligence Unit)が、イラクは 2006 年度予算を発表したと報じた。それによると、
歳入 45.4 兆ディナール(約 324 億ドル、1 ドル = 約 1400 ディナール)、歳出 51.0 兆ディナール(約
364 億ドル)、財政赤字が 5.6 兆ディナール(約 40 億ドル)の見込みである。この財政赤字は二国間援
助・借款でまかなわれると見られる(図表参照)。
歳入の 93% が石油収入で、こうした石油収入に歳入の大半を依存する財政は少なくとも今後 4 年は
続くだろうと財務省が明らかにしている。前提輸出量は 165 万 b/d、前提油価は $46.61/b とされ、昨年
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と比較して、石油収入は 64% 増加すると見込まれている。165 万 b/d という前提輸出量はイラク戦争
前を下回る水準だが、2005 年の平均輸出量は 139 万 b/d にとどまっており、これでもやや楽観的な数
字と言えよう。
また、関税(復興税)を 5% から 10% に引き上げるとの前提で、復興税収入は前年の 3 倍近い 6000
億ディナールと見込まれている。しかし、2005 年度の収入が 225 億ディナールに留まったのは杜撰な
国境管理や徴税システムに起因するとみられ、税収増加には税率の値上げとともにそうしたシステム
の強化も必要と考えられる。
支出面では、経常支出が 41.7 兆ディナールで、主な内訳は食糧配給 4.5 兆ディナール、燃料輸入 3.8
兆ディナール、公務員給与・年金 3.9 兆ディナール、湾岸戦争賠償金 2.1 兆ディナール、国営企業への
補助金 9000 億ディナールなどである。資本支出は 9.3 兆ディナールで、うち石油開発関連には約 4.9
兆ディナールが割り当てられている模様である。
なお、北部 3 県を中心とするクルド地域政府に対しては、予算の各項目の 17% が割り当てられるこ
とになっているが、「原油生産コスト」の 4.29 億ディナールについてはクルド地域政府への配分がな
い。最近、クルド地域での独自の油田探鉱・開発が注目を集めているが、これは原油生産に地域政府
が直接かかわることを警戒する中央政府の意向を反映したものだろう。
なお、クルド地域政府のラシード・タヒール財務省局長が 3 月 19 日付ハヤート紙に語ったところ
にとると、クルド地域政府には 2006 年度予算のうち、予算法に定められた 17% ではなく 12% しか割
り当てられていないという。同局長は、イラク政府に問い合わせの書簡を送ったと語った。(Country
Report Iraq, 2006.03, EIU; PIW, 2006.01.02; al-Zaman., 2006.01.17; MEES, 2006.03.27)
2.2.2 近隣国が買収に よ り イ ラ ク 銀行業に参入
イラク戦争後、CPA(連合国暫定当局)の政策により、外国銀行によるイラク市場への参入が可能
となった。国内既存銀行の権益獲得による参入と、現地法人の設立や支店開設などの直接参入の方法
があるが、これまでのところ前者の方法が多用されている。
2005 年 11 月半ばには、クウェート資本の 2 行、United Gulf Bank (UGB)と Iraq Holding Company
(IHC)が Bank of Baghdad (BoB)の権益を取得し、BoB の資本基盤は 10 倍の 3600 万ドルに増加し
た。そのうち UGB が 39.1%、IHC が 9.9% を保有している。
また同月末には、バハレーンの Ahli United Bank が Commercial Bank of Iraq の増資を行い、資本基盤
は 960 万ドルから 4370 万ドルへと拡大した。AUB は 49% の権益を保有する。
2006 年 1 月には、サウジの Mansour Almalik Holding Company と Al Khair Financial Investment Company
が合弁で Saudi-Iraqi Bank を立ち上げ、中央銀行からのライセンス発行を待っている状態である。資本
金は 3200 万ドルで、イラク側が半分以上の権益を保有する。(Country Report Iraq, 2006.03, EIU)
2.2.3 2.3 産業、 イ ン フ ラ
チェコ企業がセメント工場プロジェクトを受注
Inekon Group 率いるチェコ企業コンソーシアムが 1 月、約 4 億ドルでセメント・プラント建設事業
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を受注した。クルド地域のドホーク県に設立され、生産能力は 3000t/d、建設期間は 34 ∼ 36 カ月の予
定である。
イラク政府は 2005 年に、農村地帯を中心に 20 件のセメント施設建設のライセンスを発効しており、
発注企業であるイルビルの SJ Company Iraq は 10 月にライセンスを取得していた。今回の受注はこう
したライセンス交付を受けた第一段となる。
プロジェクト費用については、当初はチェコ輸出信用法人の保証付きで、チェコ輸出銀行とシティ
バンクによるシンジゲート・ローンが予定されていたが、最終的に Inekon Group は自己資金で賄うこ
とを決定した模様である。
また、Inekon Group は、SJ Company Iraq と二番目のプラント建設についても交渉を進めている。
(MEED, 2006.01.20-26)
2.2.4 円借款によ る対イ ラ ク 支援がス タ ー ト
日本政府は、イラクへの円借款供与を開始するとして、案件の詳細計画を発表した。合計で 764 億
8900 万円の供与となり、金利は 0.75%、償還期限は 40 年(10 年据置)の予定である。ただし、実行
に移されるのは、イラク正式政権の発足後となる。
具体的な内容は、ウンム・カスル港の浚渫、沈船除去、港湾施設整備などを目的とした「港湾整備
計画」に 302 億 1100 万円、農業生産性向上のための灌漑排水ポンプ、灌漑水路の維持管理用資機材の
提供といった「灌漑セクターローン」に 95 億 1400 万円、バグダードに対する電力供給能力の改善を
目的とした「アル・ムサイブ火力発電所改修計画」に 367 億 6400 万円となっている。
また、対イラク援助の一環として、自衛隊が駐留するサマーワ市に大型発電所(発電能力 60MW)
が建設されることが決定しており、3 月には土地の整備等の工事が始まった。建設費用の 127 億円は、
無償資金協力によって賄われる。
イラクでは電力不足が経済復興全般を阻害する要因となっており、電力部門の復興は喫緊の課題で
ある。今冬は特に発電量が落ち込み、米国務省に推定によると、昨年 11 月 23 日には全国平均で 1 日
当たり 12.6 時間だった通電時間が、1 月 25 日には 9.4 時間に落ち込み、特にバグダードでは、同時期
に 8.7 時間から 4.4 時間へと半減した。(外務省ホームページ ; Country Report Iraq, 2006.03, EIU)
2.2.5 携帯電話長期ラ イ セ ン スの事前審査開始
イラクの通信メディア委員会は 2 月後半、4 社に 15 年間の携帯電話ライセンスを供与するとして、
4 月 10 日まで予備審査への申込みを受けつけると発表した。イラク戦後、2003 年に 3 社に 2 年間のラ
イセンスが供与され、2005 年末にライセンスが失効する予定だったが、国民議会選挙を控えていたこ
ともあり、ライセンスは暫定的に半年間延長されていた。今回発表された 15 年ライセンスの供与先は
6 月末までに決定すると見られている。
現在イラクで携帯電話事業を行っている 3 社は、投資環境の改善を待つためにも、長期ライセンス
への切り替えではなく、現ライセンスの 3 ∼ 5 年延長を求めていた。また、これまで治安状況の困難
な中事業を行ってきたことを鑑み、新ライセンスの供与先決定には、既存事業者への一定の優遇措置
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が取られることを期待しているが、ジュアン・マァスーム通信相を始め移行政府閣僚は、優遇措置に
は難色を示している模様である。
携帯電話事業は戦後急速に成長しており、現在の携帯電話契約数は 400 万∼ 500 万件と見積もられ
ている。ただし、イラク中部を中心に事業展開している Orascom 社によると、米軍の軍事用妨害電波
によってしばしば回線が繋がらないという事態が発生しているという。同社は治安状況が改善しない
ため、同社は年間 250 万ドルを治安対策費に充てているものの、それでも人口密集地の中部地域を拠
点にしているという強みから、他の 2 社をしのぐ収益をあげており、2005 年 1 ∼ 9 月の収益は 2 億
4900 万ドルであったという。同社は JV によって Iraqna ブランドを立ち上げていたが、最近全株式を
買い取り、ライセンスの更新に意欲を見せている。(Business Middle East 2006.02.01-15; Country Report
Iraq, 2006.03, EIU)
2.2.6 オース ト リ ア航空の就航延期 と イ ラ クの航空事情
オーストリア航空が 1 月、イルビル・ウィーンの直行便を 3 月から週 2 便運行すると発表していた
が、直前になって延期された。実現していれば欧州航空会社による初のイラク定期便になる予定であっ
た。延期の理由は、安定した運行スケジュールや管理システムにまだ課題があるためとみられている。
昨年、イルビルとスレイマニアに相次いで国際空港が開港し、クルド地域の建設・産業ブームを背
景に、クルド地域とロンドン、フランクフルト、アンマン、ドバイなどを結ぶ直行便が過去 3 カ月の
間に相次いで就航を開始していた。しかし、まだ管理システムがうまく機能しておらず、運行スケ
ジュールが頻繁に変わるほか、直接問い合わせなければスケジュールも入手できない状況である。チ
ケットは空港で現金払いのみで、予約リストの不備、突然の運行キャンセルや離着陸空港の変更、大
幅な遅れは日常茶飯事となっている。
なお、バグダード空港については、民間機のフライトは午後 6 時までで、それ以降は米軍統制下に
おかれている。システムの不備はイラク航空も同様でオーバーブッキングも多く、座席に座りきれな
い乗客が立ったまま離陸することもあり、安全に関する離陸前の機内放送もされていない状況である。
(MEED, 2006.01.13; Kurdistan Satelite TV, 2006.01.15; AP, 2006.03.09)
2.3 石油、 エネルギー
2.3.1 生産 ・ 復興状況
2.3.1.1 バフルルウルーム石油相が辞任
昨年末、政府が IMF の勧告を受けて実施した石油製品の大幅値上げに抗議し、バフルルウルーム石
油相が辞任を表明した。石油相は値上げ自体に反対していたわけではないが、国民の窮乏を鑑み段階
的な値上げにするべきであると主張していた。その後、エネルギー評議会の議長を務めるアフマド・
チャラビー副首相が石油相代行の地位に就いたが、1 月 9 日にはバフルルウルーム石油相が閣僚や宗
教界の説得を受けて復職したと報じられた。しかし、最終的に 1 月末、正式に辞任し、ファディーラ
党のハーシム・ハーシミー観光相が石油相代行に就くこととなった。
当初のバフルルウルーム石油相の辞任要求は自発的なものであったと見られるが、最終的に同相
は、政治的な圧力によって辞任に追い込まれた模様である。同相は、ジャァファリ首相がハーシム・
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ハーシミー観光相を石油相代行に起用したのは、国民議会選挙で 15 議席を獲得したファディーラ党の
歓心を買うことを意図したのだと 2 月 1 日付け al-Zaman 紙に語っている。また、ファディーラ党は、
バフルルウルーム石油相を辞任させなければ南部からの輸出を停止させると、ジャァファリ首相に
迫ったとも報じられている。
ハーシム・ハーシミー観光相の石油相代行は正式政権が発足するまでに数カ月間のつなぎ人事と見
られている。にもかかわらず、同石油相代行は 3 月、ファディーラ党に近しいと言われるイラク石油
タンカー会社のファリーフ・アミーリー社長を SOMO(石油販売公社)総裁に任命し、ムサブ・ド
ジャイル現 SOMO 総裁が、人事の政治的背景を理由に解任を受け入れないという騒ぎに発展した。こ
うした政治介入の増加が現場の混乱を招き、石油産業の立て直しにも影響を与えている模様である。
(Arab Oil & Gas, 2006.01.16; al-Zaman, 2006.02.01; MEES, 2006.02.06; Weekly Petroleum Argus, 2006.03.13;
PIW, 2006.03.13)
2.3.1.2 今冬の原油輸出量は急減
イラクの原油輸出量は、昨年秋頃までは 150 万 b/d 前後で推移していたが、10 月以降は大幅に減少
し、特に 12 月、1 月は 100 万 b/d をわずかに上回る程度にまで落ち込んだ(図表参照)。
これはイラク戦後では最低の水準である。2 月に入ってからは 140 万 b/d まで回復し、3 月もほぼ同
水準と見られている。ただし、SOMO(石油販売公社)が国際石油会社と締結している 2006 年上期の
長期輸出契約の 157 万 b/d には依然及んでいない。
北部のトルコ向けパイプライン輸出は、サボタージュの影響を受けて昨年 11 月からほとんど停止
しているため、今冬の輸出量急減は南部のペルシャ湾経由の輸出減少の結果である。主な要因は天候
の悪化によるものだが、それに加えて人為的な問題が状況をより悪化させている。南部の輸出を担当
する SOC(南部石油会社)は、タンカーを曳航するタグ・ボートがレンタルできれば輸出の急減は避
けられたが、政府からその許可が得られなかったとして、政府の無策を批判している。こうしたマネー
ジメント面での不手際や非効率が、原油生産や輸出の現場にも影響を及ぼしている模様である。(Oil
Market Report 各号 ; AFP, 2006.02.07)
2.3.1.3 2005 年のサボ タ ージ ュ によ る石油設備被害額は 62.5 億 ド ル
石油省スポークスマンが 2 月 19 日に発表したところによると、2005 年の 1 年間で石油設備に対し
186 回の攻撃があった。それによって失われた石油収入は 62.5 億ドルに上る。内訳は、国内パイプラ
イン:31.2 億ドル、輸出パイプライン:27.1 億ドル、油田設備:4 億ドル、製油所向けパイプライン:
1200 万ドルとなっている。なお、イラク戦争後の累計被害額は 200 億ドルに上るという。
また、こうしたサボタージュによって昨年 1 年間で、エンジニア 47 人、警察及び警備関係者 91 人
が犠牲になった。(BBC, 2006.02.19; MEES, 2006.02.27; Arab Oil & Gas, 2006.03.01)
2.3.1.4 2005 年の石油製品輸入量は 13.7 万 b/d
イラク国内には、バイジ製油所(能力 31 万 b/d)
、バスラ製油所(同 15 万 b/d)、ドーラ製油所(同
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11 万 b/d)など 8 つの製油所があり、その合計能力は約 60 万 b/d とされている。しかし、湾岸戦争で
被害を被ったため実際の能力はその 75% 程度に留まり、1990 年代後半からイラク戦争までの平均生
産量は 47 万 b/d 程度であった。イラク戦争そのものによる製油所へのダメージは少なかったが、戦後
の混乱と設備の老朽化、電力不足などにより、2005 年の製品生産量は 43.8 万 b/d に落ち込んだ。およ
び生産される製品も多くが燃料油であり、ガソリンや軽油などの生産は減少にある模様である。
一方、戦後は輸入が自由化されたことにより、大量の中古車が国内に流入し、石油製品需要が急増
している。戦前の 2002 年の製品消費量は 52.8 万 b/d だったが、2004 年には 56.5 万 b/d、2005 年には
57.5 万 b/d まで増加した。なお、需要増加の一因は、イラク国内に駐留する 10 万以上の外国軍による
石油需要にも求められる。
こうした結果、イラクの 2005 年の石油製品輸入量は 13.7 万 b/d に達し、金額面では 2 億ドルから 3
億ドルとなっている(図表参照)。主な輸入相手国はシリアやトルコなどの近隣国である。
2.3.1.5 石油製品輸入代金の未払い を巡っ て ト ル コ からの製品輸入が一時停止
イラクに石油製品を輸出しているトルコ企業 34 社がイラク側からの支払い不履行のため、1 月 21
日から 2 月半ばまで、イラク向け石油製品の積載作業を停止した。
トルコのトゥズメン国務大臣(対外貿易担当)によると、トルコ企業が輸出した石油製品へのイラ
ク石油販売公社(SOMO)による未払いは 10 億ドルにのぼる。支払いの遅延は昨年もあり、そのとき
は、トルコ側の抗議に対して、「問題の再発を防ぐため、イラク側が石油製品を受け取ってから 45 日
以内に支払いを行うことで双方が合意した」
(同大臣)という。しかし、その後も事態は改善せず、今
年に入ってトルコ側は再び支払いの遅延に抗議を繰り返した。さらに、トゥズメン国務大臣が、遅延
分の支払がない場合には 1 月 21 日から石油製品のイラク向け輸出を停止すると警告した。
これに対して 19 日、SOMO からトルコに 15 日以内に支払いを行うとの連絡が入り、同日の夕刻頃
からトルコ各社にも支払いの意志を伝えるメッセージが届き始めたという。だが、21 日、トゥズメン
国務大臣は、
「トルコ企業は実際に支払われることを望んでいる」として、警告通り、イラク向け輸出
の「荷積みが停止された」と発表した。その後は、未払い金支払いのリスケジュールを双方が合意し、
2 月半ばから輸出は再開された。(Country Report Iraq, 2006.03, EIU; 勝又 郁子「トルコ企業がイラク
への石油製品輸出を一時停止」中東研ニューズリポート , 2006.01.24)
2.3.1.6 石油製品価格の値上げを検討
イラク政府は昨年 12 月、IMF との合意を受け石油製品価格への補助金を圧縮し、製品価格は約 5 倍
に引き上げられたが、近隣諸国と比較してまだかなり安価に据え置かれているため、イラク政府はさ
らなる価格引き上げを検討している。
IMF とのスタンド・バイ合意自体は製品価格の目標値を上げているわけではないが、IMF との合意
には、国内の石油製品販売収入を 2005 年の 9000 億ディナール(6.4 億ドル)から 2006 年には 3 兆
2500 億ディナール(23.2 億ドル)に引き上げるとの内容が含まれている。IMF が値上げを求めている
のは、補助金が財政を圧迫すると同時に、安価な石油製品が国外に密輸されて石油製品不足を招いて
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いる上、その分を近隣国から輸入せざるを得なくなるという悪循環を問題視しているためである。現
在、近隣諸国との石油製品の価格差は 2 ∼ 10 倍あり、イラク政府関係者によるとガソリン価格を段階
的に 10 倍まで引き上げる予定としているが、国民からの猛反発は避けられないであろう(図表参照)。
(Reuters, 2006.02.06; Country Report Iraq, 2006.03, EIU)
2.3.2 外国企業 ・ 政府 と の契約関連
2.3.2.1 Petoil 社がクル ド 地域で新規掘削を開始
クルド地域政府と生産分与契約を締結していたトルコの Petoil 社が 1 月、2800km2 の鉱区で掘削を
開始したと発表した。イラク戦後、外国企業による新規油田の探鉱・開発は 2005 年 11 月に掘削を開
始し翌月油層を掘り当てたノルウェーの DNO 社に続き、2 社目である。
中央政府主導の新規探鉱・開発は、治安・政治情勢が流動化していることや、新炭化水素法が制定
されていないことから進展を見ていないが、その間に治安状況が比較的安定しているクルド地域での
開発が先行している。ただし、地域政府と国際石油会社との契約の法的有効性は、バグダードに正式
政権が発足してから改めて問われることになるだろう。(Weekly Petroleum Argus, 2006.01.23)
2.3.2.2 Heritage 社がクル ド 地域政府 と 2 つ目の MOU を締結
Heritage Erbil Oil 社(カナダの Heritage Oil、地元の Eagle Group、トルコ人投資家の JV)は 2 月 28
日、子会社 K Petroleum Co (KPC)を通じて、クルド地域政府の石油会社 Oil, Gas & Petrochemical
Establishment (OGE)と、イルビル・モスル道路の南部に位置する油田の調査を行う内容の MOU を
締結したと発表した。同社は昨年 MOU を締結したタクタク油田についても、すでにフィールド調査
を開始しており、今回が 2 つ目の MOU 締結となった。同社はこうした MOU 契約を、将来的に PS 契
約につなげたい考えである。
(MEES, 2006.03.10; MEED, 2006.03.10; Weekly Petroleum Argus, 2006.03.27)
図表 1: 主要経済指標
単位
名目GDP
US$ mil
1人当たりGDP
US$
実質GDP成長率
%
石油生産量
1000b/d
マネーサプライ(M2)変化率
%
消費者物価指数上昇率
%
対ドル公式レート(年平均値) ID/US$
外貨準備
US$ mil
人口(年央)
mil
2002
2003
2004
2005
18,974
710
-14.2
2,014
12,739
470
-35.3
1,329
25,539
910
46.5
1,974
29,200
1,010
-3.0
1,816
36
76
80
29
26.3
36.3
31.7
20.0
1,957
4,574
1,936
3,555
1,453
7,999
1,469
9,100
26.55
27.30
28.06
28.82
2006
2007
33,750
1,140
1.4
33,850
1,110
5.5
1,825
13
1,898
14
20.0
1,480
25.0
1,470
10,300
30.39
9,700
29.60
出所:Country Risk Service Iraq, 2006.03, EIU.
注:斜体は推定・予測数字。
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図表 2:2006 年度予算
図表:財政見通し
(単位:10億NID)
収入
石油収入
関税(復興税)
その他
支出
経常支出
資本支出
収支
2005年
28,959
25,623
225
3,111
35,982
28,423
7,559
-7,023
2006年 増加率
45,392
56.7
42,106
64.3
600
166.7
2,686
-13.7
50,963
41.6
41,691
46.7
9,272
22.7
-5,571
-21
出所:Country Report, March 2006, EIU.
図表 3: 原油生産量、 輸出量
(件)
50
(万b/d)
250
200
40
150
30
100
20
50
10
0
0
Jan Apr
2003
生産量
Jul
Oct
Jan Apr
2004
輸出量
Jul
Oct
Jan Apr
2005
Jul
Oct
Jan
2006
パイプラインなど石油関連施設等への襲撃数
出所:Oil Market Report, IEA; Iraq Pipeline Watch.
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図表 4: 石油製品消費量および生産量
(万b/d)
石油製品消費量
石油製品生産量
精製能力
60
50
輸入分
13.7万b/d
(2005年)
40
30
20
10
1980
1983
1986 1989
1992
1995
1998
2001
2004
図表 5: 石油製品の比較
(単位:NID)
値上げ前 値上げ後 湾岸アラブ諸国平均
LPG(12kgシリンダー)
250
600
レギュラー・ガソリン
20
100
350
プレミアム・ガソリン
50
250
400
キロシン
5
25
250
ディーゼル
10
90
250
出所:Country Report, March 2006, EIU.
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この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
国別定期報告 「 イ ラ ク 」 2006 年 1 -3 月 2006 年 4 月 24 日発行
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編集発行 : (財) 日本エネルギー経済研究所 中東研究セ ン タ ー
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