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九州歴史資料館 飛び出すむかしの宝物 解説シート
漆黒の土器
こくしょく
平安時代の 黒 色 土器
にし
出土地
うち
柳川市西ノ内遺跡
表面が黒光りする特異な外観の土器です。表面を丁寧に磨いた土師器に炭素
を吸着させて黒色にしたもので、内面だけを黒くしたものと表面全体を黒くし
こくしょく
うちぐろ
たものの2種類があり、前者を「 黒 色 土器A類」または「内黒土器」、後者を
りょうぐろ
「黒色土器B類」または「両黒土器」と呼びます。本資料は9世紀後半のもの
で、身の浅いほうは黒色土器B類の皿で、黒漆を塗ったようにも見えます。深
い方は黒色土器A類の椀です。黒色土器は8世紀後葉に成立したのち、平安時
代に生産量が減少した須恵器に替わって普及します。
が
き
黒色土器が野焼きで焼かれているのに対し、中世に普及する瓦器は窯で焼か
れており、大量生産されたため黒色土器から瓦器に置き換わっていきます。
参考文献:九州歴史資料館 2012『矢加部町屋敷遺跡Ⅳ 蒲船津西ノ内遺跡 蒲船津水町遺
跡』有明海沿岸道路大川バイパス関係埋蔵文化財調査報告第 12 集
黒色土器が模倣した磁器・施釉陶器
平安時代後期になると、黒色土器や土師器・須恵器のほか材質の違うさまざまな器が使
われるようになりますが、希少価値の高い器は身分の高い人々しか使えませんでした。
もっとも高価だったのは、まだ日本では作ることができなかった磁器で、中国から輸入
していました。次に価値が高かったのは緑色の釉薬をかけた緑釉陶器と灰白色の釉薬をか
けた灰釉陶器でした。緑釉陶器の窯は京都・滋賀・愛知・山口にあり、灰釉陶器の窯は東
海地方にしか確認されていないので、九州では緑釉陶器の方が多く出土します。
黒色土器は、表面に光沢のある磁器や緑釉陶器の形を真似して作られているので、表面
に漆を塗ったように光沢があるのも釉薬をかけた器をまねたものでしょう。
緑釉陶器
越州窯青磁
灰釉陶器
苅田町馬場仁王免遺跡出土緑釉陶器・灰釉陶器・越州窯青磁
写真出典;九州歴史資料館 2013『東九州自動車道関係埋蔵文化財調査報告(4)馬場長町遺跡・馬
場仁王免遺跡』
遺物写真:本館撮影
(文化財調査室 秦)