2016年 vol.1春号 - 国立成育医療研究センター

国立成育医療
研究センターだより
National Center for Child Health and Development News
CONTENTS
理事長あいさつ
………………………………………………… 2
(五十嵐 隆)
国立成育医療研究センターの
臨床・研究内容のご紹介……………………………… 5
お知らせ………………………………………………………… 3
受診のご案内・交通案内………………………裏表紙
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
National Center for Child Health and Development
Vol. 1
2016
理事長あいさつ
理事長 五 十 嵐 隆
国立成育医療研究センターは受精・妊娠に始まり、胎児期、新生児期、乳児期、学童期、思春期を経て次世代を育
成する成人期へと至るリプロダクションによってつながれたライフサイクルに生じる疾患
(成育疾患)
に関する医療
(成育医療)
と研究を推進するために設立されました。成育医療と成育疾患に関する研究とを推進するにあたり、私
どもは子どものためのアドボカシー
(advocacy:自己主張できない存在の代わりになってその存在のために行動を
おこすことをアドボカシーと言います)
の理念を持つことが基本と考えます。
当センターは必要とするすべての子どもや成人に優れた成育医療を提供したいと考えます。その際、感染症など
の急性疾患や難病などの慢性疾患を持つ子どもとその御家族、および、合併症妊娠や出産を願う女性やその御家
族が安心して当センターで医療を受けることができるように、安全でこころのこもった医療・看護・患者支援を行う
ことを第一に心がけます。医療従事者には「清く、正しく、美しく」の基本的姿勢が重要で、特に「正しく」
とは
「honestであること」
と信じます。
優れた医療を提供するためには、優れた医学研究が必要です。医療と医学研究とはお互いを補う存在であるから
です。世界の医療や医学を革新する優れた成果を生み出すために、当センターでは病院と研究所が密接に協力して
運営をいたします。なお、医学研究には、iPS細胞などを用いた基礎的医学研究から、基礎的医学研究の成果を臨床
に応用するための研究、患者を対象とする臨床研究、さらに、社会学的な研究まで多岐にわたります。平成27年4月
からは研究所の組織を一新して研究体制を強化し、世界をリードする研究を目指します。
私ども当センターのすべての職員は成育医療や医学研究を通じて社会に貢献することを願っています。しかしな
がら、医療や医学研究には多くの矛盾と危険性が含まれています。人を対象とする研究を行って成果を得るとはい
かなることか、医療や医学研究に貢献するとは何か、自分たちの仕事を通して私どもはどのような社会を作ろうとし
ているのかなどの省察が常に当センター職員にも求められています。さらに、私どもが得意とする成育医療、看護、
保健、福祉、医学研究、医学教育の分野で将来頑張ってくれる若い有能な人材を育て上げることも当センターの重
要な使命です。
わが国の成育医療と医学研究を推進するため、当センターの職員一同はこれからも一層の努力をいたす所存で
す。多くの方々の御支援とお力添えを戴けますよう、こころよりお願い申し上げます。
2
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
お知らせ
自宅で 医 療ケアを必 要とする子どもとその 家 族を支える医 療 型 短 期 滞 在
施設「もみじの家」が、国立成育医療研究センターにオープンしました。
医療の進歩により、多くの子どもたちの生命を助けること
ができるようになりました。その一方で、生涯にわたり医療ケ
アを受けながら生活する子どもたちも増えつづけています。
急性期の治療が終わり、状態が安定してくると退院して自
宅で過ごします。子どもにとって最も居心地のよい、そして
成長発達のために最良の場所は、家族と一緒に暮らす我が
家です。
しかし医療ケアは24時間、365日つづくのです。 多くの
子どもたちにとって当たり前のこと、たとえば、お風呂に入
事業内容、支援方法などは公式ホームページで随時ご確
認いただけます。
▶ ▶ ▶ http://home-from-home.jp/
ご支援いただける方々を募っていま
す。皆様のお気持ちをわたしたちに託し
て戴くことで、重い病気を持つ子どもと
家族のためによりよい生活と未来を届
けることをお約束いたします。
る、友だちと遊ぶ、公園に行く。それがとても難しくて、いつ
も家の中で過ごしている子どもたち、そうした子どもたちが
医療ケアを受けながら楽しい時間を過ごすための穏やかな
くつろぎの場所、それが
「もみじの家」
です。
「もみじの家」
は、本年4月より使用を開始しました。重い病
気を持つ子どもと家族ひとり一人が 家でその人らしく生き
られる未来を創っていきたいと考えています。
National Center for Child Health and Development
3
2月15日は「国際小児がんの日」でした。
国立成育医療研究センターは、小児がん拠点病院であり、小児がん中央機関として拠点病院を牽引する役割を担っています。小
児がんセンターを中心として日本の小児がん診療、小児がん医療体制の整備を行っています。
小児がんの子どもたちの写真展 MY NEW LIFE 開催。
2016年2月15日から29日まで、成育医療研究センター
玄関ホールで、チェコ大使館のご協力のもと、小児がんの子
どもたちの写真展を開催しました。
この写真展は2015年9月からチェコセンター
(広尾)
、象
の鼻テラス
(横浜)
、スパイラル
(表参道)
で開催され、好評を
博したものです。生き生きとしたチェコの小児がん経験者の
子どもたちの笑顔の写真は、とても輝いて、普通の子どもた
ちと同じという事を印象づけました。
来場者のご意見
(一部抜粋)
ー“終わりではなく、新しい生き方の第一歩である" この言葉
にとても励まされます。
ー この写真を見て涙が出そうに、心を打つものがありました。
ー「普通」
というものの固定観念の強い人々の多いことに失望
を深く感じています。
(中略)
七転八起、九転十起 足りません
連絡先:チェコセンター東京/ Czech Centre Tokyo
TEL:03-3400-8129 E-mail:cctokyo@czech.cz
世界的指揮者チョン・ミョンフンさん、入院中の患者さんを慰問。
2016年2月27日
(土)
に、世界的指揮者でピ
アニストでもあるチョン・ミョンフンさんが、入院
中の患者さんのために当センターを訪問されま
した。このコンサートは、マエストロ チョン フ
ァミリークラブ
(MCFC)
の社会貢献活動の一環
として、ゴールドリボン・ネットワーク、東京フィル
ハーモニーのご協力のもと実現した企画です。
コンサートの合間の土曜日に、病棟訪問とロ
ビーでのお話と少しだけのピアノ演奏でした。
左肩と首の故障から、腕を休めながらの演奏で
したが、そのパワーに圧倒される素晴らしい演
奏でした。
病棟では、マエストロは入院患者さんのピアノ
を暖かく見守り、時に一緒に弾いたりと、その優
しいお人柄がにじみ出る慰問となりました。
特に、長期入院をしているお子さんのご家族
のお気持ちまで思い遣るマエストロの姿に、入院
している患者さんと家族から、惜しみない拍手
がわき上がっていました。
本当にありがとうございました。
4
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
プレコンセプションケアセンター
基 本 情報
荒田 尚子 三戸 麻子
専門分野
近年慢性疾患合併妊娠やトランジション症例の妊
娠・出産が増加しています。疾患のコントロールをし
ながらより良い妊娠転帰を得るためには、周産期に
・プレコンセプション相談外来
病気を持った女性
(糖尿病・甲状腺疾患・膠原病・腎
臓病・高血圧・気管支喘息・炎症性腸疾患・こころの
特別な管理が必要となる場合が多く、
とくに妊娠前は
病気・がん既往・まれな病気など)
重要です。プレコンセプションケアセンターでは将来
先天性疾患・小児期からの慢性疾患をもったひと、
の妊娠に対する様々な疑問にお答えする
「相談外来」
小児期に臓器移植をうけたひと、小児がんを経験
と、病気の有無にかかわらず、すべての女性が妊娠前
したひととその家族 など
にしておくべきこととして
「プレコンセプション・チェッ
クプラン
(検診とカウンセリング)
」
を提供します。右記
(専門分野参照)
のような方の将来の妊娠に関するご
相談は
「プレコンセプション相談外来」
に、いつかの妊
娠のための健康・栄養チェックをご希望の方には
「プ
レコンセプション・チェックプラン
(検診とカウンセリン
グ)
」
をぜひご紹介ください。
妊娠できない、流産してしまうカップル
前回の妊娠が大変だった、赤ちゃんが先天性の病
気だった場合など
家族に遺伝疾患がある場合
など
担当診療科:母性内科・産科・不妊診療科・婦人科・
不育診療科・小児各専門科・臓器移植センター・小児
がんセンター・こころの診療部・妊娠と薬情報センタ
ーなど
診 療 内容 ※完全予約制です
プレコンセプション相談外来
プレコンセプション・
毎週火曜日
9:00∼12:00
チェックプラン
毎週金曜日
9:30∼11:30 (検診とカウンセリング)
第1・3・5金曜日 13:30∼15:30
第2・4金曜日 9:30∼
予約電話
予約電話
03-3416-0277
03-5494-5486
月・木 祝祭日除く
月∼金 祝祭日除く
14:00∼15:30
8:30∼16:30
・プレコンセプション・チェックプラン
すべての女性が妊娠前にしておくべき
ヘルスチェック
(内科・婦人科)
専門医師によるカウンセリング
管理栄養士によるカウンセリング
リプロダクションサイクルの思春期から
周産期のケアに注目し、成育医療の発展を目指します。
実績
プレコンセプション相談外来(2015年11月開設)
・成人慢性疾患と妊娠について
・前回妊娠時の合併症について
・不妊・挙児希望例
・婦人科疾患合併例
・小児慢性疾患のトランジション例
WHOのサイト
(Preconception care)
より引用・改変
など 計33名
プレコンセプション・チェックプラン
(検診とカウンセリング)
(2016年1月開設)
プレコンセプションケアセンター
ホームページ
National Center for Child Health and Development
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不妊診療科
基 本 情報
不妊患者の中には治療してもなかなか妊娠し
ない難治性の不妊症患者がいます。難治性の患
医長 齊 藤 英 和
専門分野
高齢難治性不妊
高齢難治性不妊患者は、下垂体ホルモンである卵胞刺激ホル
者の中には、複数の不妊原因を持つ患者、また、
モン
(FSH)
や黄体化ホルモン
(LH)
は高値になっている場合と月
子宮鏡下手術や腹腔鏡下手術が必要な不妊患者
経周期ごとに大きく変動している場合があります。
もおります。さらに内科や精神科などの他科の疾
血中のホルモン状態に合わせて治療を選択することが必要で
患を合併している患者もおり、これらの患者には
す。高値の場合は継続的にエストロゲンを投与し、頻回にFSHや
時間をかけ原因を検査し、原因にあった治療を行
LHを測定しFSHを正常範囲に制御し、卵胞発育を待つことが必
い、必要に応じで、腹腔鏡下・子宮鏡下手術を併用
要です。時々FSH値を少し上げ卵胞発育を促すこともあります。
して不妊治療を行うことが必要です。さらに、他科
この時も、血中にFSH値の頻回の測定が必要です。月経周期ごと
との緊密な連携をしながら不妊治療と他科の治療
に大きく変動している場合は、頻回にFSH,LHを測定し、その値に
を同時に計画し実行することも必要となります。こ
合わせてゴナドトロピンの種類、投与量を変更し卵胞発育を図る
れら難治性の不妊患者を積極的に受け入れ治療
必要があります。
をしています。一般の不妊治療で、なかなか妊娠
内科合併症不妊
に至らない患者や、他科の疾患を合併している不
妊患者がおりましたら、ぜひご紹介ください。
内科合併症不妊患者で代表的は内科疾患には甲状腺機能異
常、耐糖能異常、自己免疫疾患などがあります。これらの内科疾
患を合併している不妊患者では、内科疾患を治療しながら不妊
治療を行うことが大切になります。これらの内科疾患をしっかり
治療していないとたとえ妊娠しても、母体だけでなく胎児にも障
害を起こすことがあります。当不妊診療科では母性内科と連携し
診 療 内容 ※ 完 全 予 約 制です
ながら、内科疾患合併の不妊症患者に対して、安全な妊娠に向け
月曜日∼金曜日
(水曜日の午後を除く)
て、内科的な治療を含む包括的な治療を行っています。
8:30∼17:00
子宮内膜ポリープ・子宮粘膜下筋腫
受診には予約が必要です。予約センターに連絡
子宮内腔に子宮内膜ポリープ・子宮粘膜下筋腫が吐出してい
し、予約してください。予約の変更も予約センター
ると、受精卵が子宮内膜に着床しにくくなり、不妊になります。若
で対応します。
い方ですとこの治療後すぐに妊娠が期待できます。また、他の不
初めて受診
(初診)
する場合は、医療機関
(医院、病
妊原因も合併している方でも、子宮内腔の状態をポリープや子宮
院)
からの紹介状が無くても受診できます。医療機
筋腫を除去しておかないと他の治療だけでは妊娠しにくい状態
関
(医院、病院)
からの紹介状がある場合は受診の
は変わりません。これらの治療は全身麻酔下にポリープ除去、子
際に提出してください。
宮筋腫除去を行いますので、入院が必要となります。当科では積
極的にこのような患者を受け入れています。
機能性不妊・卵管水腫・子宮内膜症・子宮外妊娠
これらの疾患は、状況にもよりますが、腹腔鏡下手術で治療で
実 績 (2 0 1 3 年 度)
・外来初診患者数:332人、平均年齢:38.6歳
・手術実績:35例
(腹腔鏡下手術
(筋腫核出、子宮
内膜症卵巣
のう腫核出
など)
7例子
宮鏡下手術
11例、子宮
内容除去術
15例、開腹
手術2例)
6
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
きる場合があります。機能性不妊患者に対しては、不妊の原因検
索や治療を兼ねることができます。卵管水腫の場合は、体外受精
などの生殖補助医療をする前に卵管水腫を摘出しておくことによ
り妊娠しやすくなります。子宮内膜症はステージにより、治療法が
異なりますが、腹腔鏡下に内膜症病変を除去して、妊娠しやすく
する場合もあります。子宮外妊娠も卵管が破裂する前ですと、腹
腔鏡下に摘出可能な場合もあります。患者の状況を正確に把握
し、手術の適応を決めています。
不妊カウンセリング
不妊治療は、患者の心の負担がとても大きい治療です。医師・
認定看護師をはじめ、こころのケアに配慮して不妊治療にあたっ
ています。
アレルギー科
基 本 情報
アレルギー疾患は急性増悪を伴う慢性疾患が多く、患
医長 大 矢 幸 弘
専門分野
アトピー性皮膚炎
者さんの成長発達にともなう長期管理が必要です。その
アトピー性皮膚炎の標準的治療である①スキンケア
(きれ
ためアレルギー科では医療連携を重視し、他の医療機関
いで潤いのある皮膚を保つ)
、②薬物治療
(皮膚の炎症を抑
等からの患者さんの紹介を積極的に受け入れています。
える)
、③環境整備
(悪化因子をみつけ、
できるだけ排除する)
疾患の重症度が高く、通常の治療ではうまくいかない
症例を始め、環境要因、社会心理学的要因、アドヒアラン
の3本柱を中心に症状をコントロールし、日常生活に支障が
なくなるように治療を行います。
スなどが問題で、コントロール不良になってしまう症例な
また、症状寛解
(皮膚がつるつるの状態)
を維持するために
ど、お困りの患者がいらっしゃいましたら、ぜひご紹介く
プロアクティブ療法を継続することで、最終的にほとんどス
ださい。
テロイド軟こうを使用しなくても皮膚の状態が保てるように
なることを目標としています。
乳児の重症アトピー性皮膚炎では、体重増加不良や低た
んぱく血症、低ナトリウム血症等の重篤な症状が引き起こさ
診 療 予約
初診の場合
(毎月始めの平日9時から電話で翌月の予
約を受け付けています。月曜日:アトピー性皮膚炎、火曜
日:偶数週が喘息、奇数週は薬物アレルギー・蕁麻疹・その
他、木曜日:食物アレルギー、金曜日:0歳児専用)
初診の患者さんも完全予約制になっております。紹介状
を渡して患者さんに直接電話予約を取っていただくことも
可能です。
(ただ、現状では月初めの1日で予約枠が埋まる
ことが多いです。)
お急ぎの場合
お急ぎの場合には医療機関から医療連携室に直接ご連
絡いただければ、早めに予約をいたします。緊急入院を要
すると思われる重症な患者さんの場合でも、
まずは医療連
携室にご連絡ください。
ご紹介いただいた患者さんは、長期的な治療方針が安
定した状態になりましたら、原則として紹介元の先生方に
継続診療をお願いしております。紹介した患者さんの経過
などご不明な点がありましたら、遠慮なくお問い合わせく
ださい。
れることがあります。この場合でも点滴は行わず、集中的な
スキンケアを行うことで、
しっかり治療することが可能です。
食物アレルギー
食物アレルギーは不必要な除去が行われていることが多
く、
まず、正確な診断が必要になります。アレルギーを専門
とする医師により、自宅で食べられるものや、食物負荷試験
による正確な診断が必要なもの等を見極めていきます。
また、食物アレルギーの治療として、近年は除去して待
つだけではなく、安全な量を少しずつ食べることによって
耐性獲得を目指す
「食物経口免疫療法」
の有効性が報告
されています。当院では外来を中心に行う緩徐経口免疫
療法を中心として、患者が
「楽しく食べられる」
ようになる
ことを目指して、診療・研究を重ねています。
消化管アレルギー
食物アレルギーの一つです。原因となる食物
(粉ミルク
など)
を摂取してから、
しばらくして
(短くて1-2時間後、長
いと数日後)
嘔吐や血便、ひどい下痢などが起こります。ア
レルギー科ではこれまでの治療経験を活かして、センター
内の他の診療科や全国の専門施設とともに、新たな診断
治療法の研究開発の中心的な役割を担っています。
アレルギー疾患の発症予防
アレルギー疾患はアレルギーマーチとも呼ばれ、年齢が
実 績 (2 0 1 2∼2 0 1 4 年 度)
上がるごとに発症しやすい疾患が変わってきます。当科で
はアレルギー疾患そのものの発症予防について研究を行
い、臨床に還元できるよう努めています。
難治性心因性喘息
気管支喘息発作を繰り返すため治療を増強したが、全く発
作が減らないという患者がいます。このような患者の中に
「声帯機能不全」
などの病態が多く含まれていることが分かっ
ています。当科では、気管支喘息の治療を増強するだけでは
なく、喘息の負荷試験や耳鼻咽喉科と連携し、
これらの疾患
を鑑別して、行動療法を応用しながら治療を行っています。
National Center for Child Health and Development
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内分泌・代謝科
基 本 情報
内分泌代謝科は、小児内分泌疾患全般と肥満・糖
尿病、代謝疾患を専門的に診療する部門です。
医長 堀 川 玲 子
専門分野
【対象疾患】
内分泌疾患では、脳下垂体のホルモン分泌不全に
内分泌疾患には、成長障害
(低身長症など)
、性分
よる成長障害、性分化疾患と性成熟異常症、副腎疾
化疾患、性成熟異常
(思春期早発症、思春期遅発症)
、
患を最も得意としています。また、甲状腺、副甲状腺
甲状腺疾患、副腎疾患、副甲状腺疾患、間脳下垂体
疾患、骨系統疾患、染色体や遺伝子異常に伴う成長
疾患など様々なものがあります。骨系統疾患と呼ば
障害の診療を幅広く行っています。
れる骨の病気も、内分泌代謝科で診療しています。
代謝疾患では、糖代謝異常、特に小児糖尿病の患
者を多数診療しています。稀少な内分泌疾患や代謝
疾患の患者も多数診療しています。
診 療 内容
受診には原則として予約が必要です。予約センタ
ーに連絡し、予約してください。予約の変更も予約セ
基礎研究は、国立成育医療研究センター併設の研
究所と連携し、主に疾患の分子生物学的病因の解明
と疾患成立機序の検討を行っています。
また、内分泌代謝科では院内のセミナーの他、院外
ンターで対応します。初めて受診
(初診)
する場合は、
施設と共同でセミナーを行い、世田谷ENDOフォー
医療機関
(医院、病院)
からの紹介状が必要です。
ラム、性分化疾患Webカンファランス、こども病院内
再診の方は、予約センターで予約してください。曜
日毎に担当医が決まっているため、担当医の希望が
あれば、予約時に伝えてください。新生児マススクリ
分泌代謝ネットワークを主催しており、外部施設から
の参加も可能です。
【先進医療・特殊医療】
ーニングで精検が必要になった方や、糖尿病や副腎
遺伝子診断を基盤に、症例に適した治療法の選択
不全で緊急の診療が必要な方はすぐに診察しますの
を実施しています。高インスリン血性低血糖症、成長
で、相談してください。
障害・性分化疾患の臨床研究・トランスレーショナルリ
お子様の成長が気になる、二次性徴が早すぎる・遅
サーチを背景にした医療も行っています。代謝疾患で
すぎる、水を飲みすぎて尿量が多い
(多飲多尿)
、など
は、肝
(細胞)
移植を移植外科と共同で行っています。
ありましたらどうぞご相談ください。
初診: 月、水、木 午前/午後 要予約
*新生児スクリーニング検査陽性など、至急診察が
必要な場合は随時受け付けています。内分泌代謝科
外来までご連絡下さい。
内分泌代謝一般外来: 月 午後、 水・木 午前午後、金 午後
糖尿病外来
(1型糖尿病専門外来)
:毎月第1
(第2)
金 午後
実 績 (2 0 1 5 年 度)
・外来受診患者数:月1200名、 年間延べ14400名
・新規患者数:月約40名 年間約500名
・入院患者数:一日平均10名
・海外からの受診患者:年間4名
(H27年度)
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国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
内分 泌 臓 器
遺伝診療科
基 本 情報
当科では、さまざまな先天異常をもつ子ども
(染色
体異常症、多発奇形症候群、代謝異常症、遺伝性疾
患、骨系統疾患、原因不明など)
の診断・治療や遺伝
医長 小 﨑 里 華 小 須 賀 基 通
専門分野
【遺伝診療】
染色体異常症、多発奇形症候群、代謝異常症、遺
伝性疾患、骨系統疾患、原因不明などの診療
性疾患についての相談を行っております。臨床遺伝
全身の診察や一般的な検査に加え、臨床検査部と
専門医資格を有する小児科専門医、専任看護師
(遺
協力して染色体検査や遺伝子検査を実施し、確定診
伝カウンセリングナース)
、産科医師などが協力し、チ
断を行います。診断の確定後、各疾患に固有な合併
ームで診療を行っています。
症の予防・早期発見や治療・酵素補充療法などを行う
稀な遺伝性疾患や原因不明の先天性疾患を有す
る患者さんがおりましたら、ご紹介ください。
とともに、院内各科との連携を図っています。
保険収載されている従来の検査法に加えて、臨床
検査部、当センター研究所、他施設とも連携して、シ
ークエンシング法やマイクロアレイ染色体検査法、次
世代シーケンサーなどの最新の遺伝子解析技術を活
診 療 内容
遺伝診療〈保険診療〉
遺伝性疾患の患者の診断、合併症の評価、他診療科
への橋渡しなど、総合的なフォローアップ診療
遺伝相談〈自費診療〉
遺伝に関する相談
外来診療日:月・火曜日 午前、水・金曜日 午後
成育遺伝外来〈自費診療〉
過去に染色体異常の胎児の妊娠など、妊娠について
ハイリスクと推定される方を対象にした相談。
外来診療日:月曜日 午後、水曜日 午前
お申し込み
お電話で、03-3416-0181
(病院代表)
から遺伝カウ
ンセリングナースをお呼び出しください。
予約受付時間は下記のとおりです
・月∼金曜日 午前9時00分∼午前11時00分
遺伝診療科スタッフが直接対応し、相談者や家族の
相談内容は厳重に取り扱います。まず、電話で相談内
容を把握するため、病名やこれまでに行われた検査
内容、家族構成などについて伺うことがあります。
用し、遺伝性疾患の原因検索の研究を行っています。
【遺伝相談外来】
染色体異常、遺伝性疾患、先天奇形症候群、その他
の先天性疾患などの遺伝に関するご相談をうけてい
ます。
・患者の両親が次の子どもを考えている
・患者自身が子どもを希望した場合に同じ疾患・体
質をもつ可能性を知りたい
・親戚に遺伝性の病気の方がおり、遺伝について
心配
・妊娠中に受けた検査結果について詳しく知りたい
・先天性
(遺伝性)
の病気について原因を検査したい
・診断がついていないため、今後について不安が
ある
など
染色体や遺伝子検査などの結果の説明などを含め
て、最新の遺伝医学情報を提供しております。
【成育遺伝外来】
過去に染色体異常の胎児の妊娠を繰り返す、遺伝
性疾患の保因者であるなど、ハイリスクと推定される
方を対象に、ご相談を行っております。染色体や遺伝
子検査など出生前遺伝学的検査の実施を行っており
ます。
National Center for Child Health and Development
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研究所 小児血液・腫瘍研究部
部長 清 河 信 敬
小児がんの分子特性の解析から新規診断・治療法の開発へ
小児血液・腫瘍研究部では、小児がんの分子特性の解析
ら、重要な成育疾患の一つです。
を通じて、発症および病態形成のメカニズムの解明や新規
また、小児がんは、成人のがんとは異なり、出生、発育、成
診断・治療法の開発に貢献することを目指しています。小児
長に伴う組織の発生や細胞の分化の機構の破綻と密接に関
がんは、小児の死因の上位を占めていますが、正しい診断に
係しているなどの独自の特徴があります。
基づく適切な治療によって多くの症例で治癒を望み得るこ
そこで当部では、小児がんの遺伝子や蛋白の発現の特徴
と、治療終了後に思春期や成人期を向かえるため治療に伴
や異常、各分子の機能とがんの生物学的特性との関係など
う晩期障害等の多くの問題を生じる場合が多いことなどか
の基礎研究を行っています。
小児がんがどうやって、そして、
なぜ発病するのか、その問いに
答える
当部には、
“造血腫瘍発生研究室”
と
“分子病理研
究室”
の2つの研究室があり、白血病を始めとする
血液腫瘍と、小児腎腫瘍などの固形腫瘍に対して
遺伝子の異常や、それによって生じるタンパクの機
能の異常について、様々な手法で研究を行っていま
す。
最近では、小児の腎明細胞肉腫の全例に存在す
るBCOR遺伝子の異常
(BCOR-ITD)
、B前駆細胞
性急性リンパ芽球性白血病の原因遺伝子と考えら
れる
や
などを
世界で初めて発見し、報告しています。現在、これら
の新規遺伝子異常がどのようなメカニズムでがん
【腎明細胞肉腫のBCOR-ITD】
正常
の発生に関与するのか、その機能解析を進めるとと
もに、新たな検査法としての臨床応用を目指してい
ます。
我が国の小児がんの治療研究に
おける中央診断機能
わたしたちの重要な役割として、研究の成果や技
腎明細胞肉腫では、正常DNA配列の矢印の位置にbox内の配列が挿入され
ている。
さらに、
その挿入配列は、直前にある配列
(赤線)
と同じである。
【上記のアミノ酸配列】
正常
術を活かし、白血病のマーカー診断や固形腫瘍の
遺伝子診断など、我が国の小児がんの治療研究に
おける中央診断の様々な部分を担当しており、迅速
で詳細な検査結果を各診療施設に提供することを
目標にしています。
以上の研究を通じ、小児がんの診療の向上に貢
献したいと考えています。
10
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
上記DNA配列の挿入により、
アミノ酸配列にも、正常配列の一部に挿入(矢
印box)
が生じる。
その配列は、挿入箇所の直前にある配列
(赤線)
と同じである。
(縦列重複)
臨床研究開発センター 臨床試験推進室
当センターで、現在募集中の治験・先進医療をご紹介させていただきます。
候補患者がいらっしゃいましたら、当室まで、お問い合わせいただけますと幸甚です。
〈お問い合わせ先〉
臨床試験推進室 電話:03-5494-7120
(内線5371)
時間:9:00-17:00
(平日のみ)
現在募集中の治験
対象疾患
対象年齢
薬の形
血友病A
6歳未満
注射剤
血友病B
6歳未満
注射剤
肺動脈性肺高血圧症
生後6カ月∼18歳未満
錠剤
肺動脈性肺高血圧症
1∼17歳
ドライシロップと錠剤
原因不明の不育症
42歳未満
注射剤
潰瘍性大腸炎
4∼17歳
注射剤
現在募集中の先進医療
対象疾患
対象年齢
薬の形
難治性頻回再発型/ステロイド依存性
ネフローゼ症候群
2歳以上
(発症時年齢18歳未満)
カプセル剤
難治性テロイド抵抗性ネフローゼ症
候群
2歳以上
(発症時年齢18歳未満)
注射剤
注1)募集人数に達した場合や担当医師の診察によって参加基準に当てはまらなかった場合は、治験・先進医療に参加できないこともあります。
注2)治験・先進医療への参加を希望される方は当センターを受診し、参加基準に該当するか、担当医師が診察・検査を行います。この際の受診料や検査料は、治
験に参加するか否かにかかわらず、通常の保険診療と同様に患者の方の負担になります。
注3)担当医師の判断によっては、治験・先進医療が終了した際に地域の医療機関への受診を勧めることがあります。
National Center for Child Health and Development
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受診のご案内
予約センター(直通)
03−5494−7300
月∼金 9時∼17時 (祝祭日を除く)
交通案内
バス
成育医療研究センター前、成育医療研究センターバス停
下車
・小田急線 成城学園前駅より 小田急バス、東急バス
で約10分
(渋谷駅、用賀駅、等々力操車所、都立大学駅
北口、弦巻営業所行)
外来は、すべて予約制ですので、当院で受診される方
・東急田園都市線 用賀駅より バスで約15分
(成城学
は
『事前予約』が必要です
園前駅行き)
・東急田園都市線 二子玉川駅より バスで約25分
(成
国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入して
育医療研究センター、美術館行)
おります。
・渋谷駅より バスで約40分
(小田急バス 成城学園前
駅西口、調布駅南口行)
(東急バス 成城学園前駅西
当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書
(紹介状)
をお手元にご用意の上、予約センター
(電話 035494-7300)
で予約をお取りになってからご来院ください
口行)
タクシー・徒歩
・小田急線 成城学園前駅南口より タクシーで5分
(予約取得時に、紹介状の確認をしております)
。
・小田急線 祖師ヶ谷大蔵駅より 徒歩15分
診療時間
診療時間
(初診)
は、8:30∼17:00です。初診については、
原則的に3ヶ月先の月末まで、アレルギー科に関しては1ヶ月
先までの診療予約を受付けています。
予約は、診療を希望する医師もしくは、診療科で予約を取
ることができます。
専門診療科予約について
受診する専門診療科が決まっている場合は、その科を
予約してください。
受診する専門診療科が分からない場合は、総合診療部
を予約してください。適切な診療科と連携を取ります
(診
ⓒ Google
療内容によっては、後日、専門診療科にいらしていただく
ことがあります)
。
当院受診時に他施設入院中の患者さんの診察料は自費
扱いとなります。
ご家族のみでご来院の場合も、同様の扱いとなります。
他施設で診断され、当院への受診を希望される場合は、主
治医の先生と相談し、当院へ紹介していただくようお願い致
します。紹介状は、必ずご持参くださいますようお願いいた
します。
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
国立成育医療研究センターだより
〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1 電話:03-3416-0181 FAX:03-3416-2222