Financial Services Architect Vol.34 2014年夏号 金融サービス本部 デジタルチャネルに求められる新たな役割 トレーディングビジネスにおけるグローバル経営管理の強化 事務・システム構造変革のアプローチ 目次 1.デジタルチャネルに求められる新たな役割 ~The New Sales Machine シニア・マネジャー 渡瀬 亮平 2.トレーディングビジネスにおけるグローバル経営管理の強化 ~グローバル経営管理インフラ整備の重要性 マネジング・ディレクター 山本 浩史 3.事務・システム構造変革のアプローチ ~BPMS/BRMSの活用 シニア・マネジャー 石河 賢 4.最近話題のプロジェクト 5.アライアンスおよびパッケージ・システム 6.弊社外部講演およびレポートのご紹介 7.会社概要 Financial Services Architect Financial Services Architect (FSアーキテクト)は、 金融業界のトレンド、最新の IT情報、 弊社サービスおよび貴重なユーザ事例を紹介する、 日本オフィス発のビジネス季刊誌です。 1 拝啓 盛夏の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと、お慶び申し上げます。 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 10 回目となる CSO ワークショップを 5 月に軽井沢で開催致しました。業界を問わず 約 30 社の弊社クライアント企業の CSO、もしくはそれに準ずる方々にご参加いただ きました。今回のテーマは「今後の日本経済の成長を支える、日本のエネルギー政策」 でした。日本のエネルギー政策が日本のビジネスに与える影響について活発な議論が なされました。海外の先進事例では、小売業者・電力会社・金融機関(決済)が一体と なったサービス展開もなされているようです。 この CSO ワークショップは、大企業の次世代経営者が集う場を設ける目的で 10 年前に スタート致しました。同様に、CIO ワークショップは 7 月 4 日、CEO ワークショップは 9 月 26 日に開催予定です。 テーマは「デジタルがもたらす創造的破壊」です。デジタルがもたらす新たなビジネス・ IT について皆様と議論させていただきたいと存じます。皆様のご参加をお待ちして おります。 引き続き、貴社のビジネス価値の向上に貢献する競争力のあるサービスの構築に向け、 鋭意努力させていただく所存ですので、ご検討の上ご用命いただければ幸いに存じます。 今後ともご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。 敬具 2014 年 7 月吉日 アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 統括本部長 中野 将志 2 デジタルチャネルに求められる新たな役割 ~The New Sales Machine 社会のデジタル化が進展する中で銀行の個人顧客における主要なチャネルは 支店からデジタル(主にスマートフォン、タブレット、PC 、モバイルなど)に移り つつある。その結果、来店率は低下し貴重なセールスの機会が減少している。 セールス機会の減少を補うためには、デジタルチャネルを収益向上へつなげる セールスの場として活用する必要がある。 デジタルチャネルの「 The New Sales Machine」への変革。キーワードは「1. 商品 「3. 双方向のコミュ をパーソナライズする」 「2. バスケットセールスで購入させる」 ニケーションを行う」の3つである。 渡瀬 亮平 2004 年 アクセンチュア㈱入社 金融サービス本部 シニア・マネジャー 銀行グループ担当 前号においては、デジタル化が進む中 での銀行店舗のセールス強化について セールス強化のための 3 つの ポイント 考察した。今回は、銀行の主たる顔と 「The は 3 つの機能を組み込むことが重要で ルス強化」について論じたい。 ある。 デジタルチャネルにおけるセールス 強化の重要性 1. 商品をパーソナライズする に達した。顧客はあらゆるサービスを い つ で も ど こ か ら でも行えるように なってきている。その結果、銀行にお ける個人顧客の来店率は低下し、貴重 なセールスの機会が減少している。 2. バスケットセールスで購入させる 3. 双方向のコミュニケーションを行う 海外の銀行においてはこの 3 つの機能 により、支店や個人 RM(Relationship Management)が行っている営業プロ セスをデジタルチャネルで実現してい 一方、現状のデジタルチャネルは、コス る。その 3 つのポイントと事例につい ト 削 減 が 主 た る 目 的でセールスのた て詳しく紹介する(図表 1)。 めの機能はほとんど無い。トランザク ション機能が中心のデジタルチャネル を「The 1. 商品をパーソナライズする 一方で、支店のローカウンターや個人 RM が張り付く富裕層や準富裕層には、 顧客の資産状況やライフステージに応 じて商品の組み合わせや金利を工夫し た、パーソナライズされた商品を提供 している。このような有効な取り組み を富裕層や準富裕層に留めるのではな く、テクノロジーを活用することでマ ス層へ広げることはできないだろうか。 具体的には既存顧客の属性や取引履歴 / ソーシャル上の行動 / 嗜好から顧客 像を類型化し、一人一人の顧客のニー ズにあったパーソナライズされた商品 の提供をすることである。一人一人の New Sales Machine」 へ 変 革 商品の観点でデジタルチャネルを見た 顧 客 ニ ー ズ に あ っ た 商 品 の 分 析 に させる必要がある。 3 優遇した専用商品を提供している程度 New Sales Machine」への変革に に留まっている。 なりつつあるデジタルチャネルの「セー 国内のスマートフォンの普及率は 6 割 差別化したとしても支店より 金 利 を 場合、多くの金融機関はリアルの店舗 あたっては、大量のデータを分析する と同様の商品を提供している。または 必要がある。 図表 1 デジタルチャネルに求められる新たな役割と果たすべき機能 デジタルチャネルに求められる新たな役割 環境の変化 デジタルチャネルの役割 テクノロジーの進化 コスト削減 デジタルの世代の増加 (スマホ普及率6割) 来店率の減少 セールス 役割を果たすために必要な機能 支店・個人RMでの営業 現状のデジタルチャネル The New Sales Machine 顧客のニーズに合わせて 商品を提案 画一的な商品を顧客が選択 1. 商品をパーソナライズする 機能 複数商品まとめて リスク説明→条件入力→約定 商品ごとに リスク説明→条件入力→約定 2. バスケットセールスで 購入させる機能 双方向のコミュニケーションで 相談・最後の一押し 一方通行 3.双方向のコミュニケーションを 行う機能 デジタルの力を活用 Bigdata / Analytics / Mobile / Cloud / Social © 2014 Accenture All rights reserved. かつて大量データの分析にあたっては、 これにより顧客一人一人にあうパーソ 膨 大 な マ シ ン パ ワ ーと大容量のスト ナライズされた商品を提供し、有効性 営業プロセスの観点でデジタルチャネ レージが必要であった。しかし、近年 を 確 認 す る PDCA を 短 い 期 間 で 回 す の CPU そのものの高性能化や並列分散 環境が整った。 処理の実用化、ストレージ価格の低下 やクラウドとの組み合わせにより大量 データの分析は充分可能となっている。 2. バスケットセールスで購入させる オーストラリアの銀行では、過去の属 性や取引履歴データ、顧客のライフス テージをベースに、11 の顧客セグメン ルを見た場合、現状のデジタルチャネ ルにおいて商品を購入する際、1 つの 商 品 を 顧 客 が 選 択 し、 規 約 を 読 み、 金額などの条件を入力し、購入ボタン をクリックすることで完結する。複数 従来、統計技術も学術の世界か一部の トに分けてパーソナライズされた商品 の商品を同時に購入する際も同様のプ しかし、データサイエンティストの増 トごとにパーソナライズされた Web 加により、あらゆる企業でのデータ分 サイトでは、顧客のライフステージに 一方で、支店のローカウンターや個人 ビジネスでしか利用されていなかった。 を提供している。その結果、セグメン ロセスを再度、繰り返す必要がある。 析の活用が可能な下地が整いつつある。 あった商品の提案を受け取ることが可 また、マシンパワーの向上により機械 学習も実用化のレベルに至り、PDCA (Plan RM の外交時では複数の商品の提案を 同時に行い、商品を組み合わせること 能となった。Web サイトも音声や動画 でもう つの商品の金利を下げるなど、 1 などビジュアルを多用化することで まとめて購入することを促しているの Do Check Action)のサイクルを デジタル世代へより訴求しやすくなっ が現状である。銀行以外の Amazon や 高速に回し予測精度を継続的に向上し 続けることが可能となった。 ていることも見逃せない。 楽天市場等のショッピングサイトでは、 複数の商品を「バスケット」に入れて、 最後に一括購入するプロセスが当たり 前となっている。この考え方を銀行の 4 図表 2 デジタルチャネルでの営業プロセスの変革「②バスケットセールスで購入させる」 これまでの営業プロセス 商品選択 商品・リスク 説明 条件入力 これからの営業プロセス 約定 商品提示 条件入力 規約画面 条件入力 画面 約定 まとめて購入する 商品ごとの条件を入力する バスケット 画面 商品・リスク 説明 説明を理解する 商品を選択する お薦め 商品画面 クロスセルの提案を受ける 適切な商品を提示する 投資信託 画面 投資信託 投資信託 外貨画面 外貨預金 外貨預金 定期預金 定期預金 定期画面 商品選択 完了画面 ① 単品販売を前提にしたプロセス設計 ① 複数商品販売 (クロスセル) を前提にしたプロセス設計 ② システムは事務プロセスをサポート ② システムはセールスプロセスをサポート ③ 商品ごとの情報入力 (項目が重複・手順が商品で異なる) ③ 商品横断で入力項目を簡素化 「契約の締結」を1商品ずつ確実に進める(商品ごと・契約締結型) 「顧客のニーズ」を確実に拾う(ニーズ喚起・一括申込型) © 2014 Accenture All rights reserved. デジタルチャネルに適用したのが「バ に変更し、申し込みプロセスのデザイ うことがあった場合、自ら比較検討を Web の 行 動 履 歴 の 分 析 や A/B 行わねばならない。 商品ごとに選択 / 条件入力 / 購入とい テスト(A/B スプリットランテスト)の 支店や個人 RM の双方向でのコミュニ スケットセールス」である。具体的には、 ン も うプロセスから、ショッピングサイト 活用、顧客からのヒアリングなど分析 のようなバスケットの機能を導入し、 的 な ア プ ロ ー チ を 多 用 し 構 築 し た。 顧客は購入したい商品を選択し最後に その結果として 50% の成約率の向上 一括購入するプロセスへ変更する。 と、従来の 8 倍のクロスセルを実現し これにより顧客は商品ごとに同じよう なデータを入力する煩雑さから解放さ れる。一方、銀行は顧客が商品をバス ケットに入れた際に、協調フィルタリ ている。 3. 双方向のコミュニケーションを 行う ケーションであれば、その場での説明 や、顧客の迷いに対しても丁寧に対応 し「最後のひと押し」の言葉を投げか けることで成約に至るケースも多い。 この事実を踏まえると、デジタルチャ ネルであっても双方向のコミュニケー ションが有効なのではないだろうか。 現状の支店のローカウンターや個人 ングのようなレコメンデーション機能 RM の営業プロセスにおいては、顧客 例えば、顧客のデジタルチャネルでの を活用して、クロスセルの機会を増や に商品を説明し、顧客のニーズを把握 すことが可能となる(図表 2)。 するなどの双方向のコミュニケーショ ンを通じて成約にまで至る。 行動をリアルタイムでとらえ、迷って いるような行動の兆候が見られる場合 は能動的に銀行側からチャットや電話 でアクションを起こし「最後のひと押 一方、現状のデジタルチャネルでは、 し」を顧客へ投げかけるのである。 セールスによるワンクリックショッピン コミュニケーションは一方方向からに グの機能を Web チャネルに導入した。 しかし、全ての顧客のデジタルチャネ 限られている。すなわち、銀行が一方 さらに Web チャネルの KPI (Key Perルの動きを有人で監視することは非現 的に商品を提供し、顧客も一方的に商 formance Indicator) を 商 品 の「 申 込 品を選択している。そのため、顧客は 実的であるため、デジタルの力を活用 数」から「1 回あたりの同時申込数」 し、顧客の行動をリアルタイムでとら 商品についての疑問や、他の商品と迷 米国の地方銀行においてはバスケット 5 える仕組みを構築し、予めルールを定 デジタルチャネルを「The 義する必要がある ( 例えば、3 つの商 Machine」へ変革させるためには、一 になる」と宣言し、テクノロジーがあ New Sales 弊社は「すべてのビジネスがデジタル 品の画面を 3 回以上遷移している等 )。 方通行ではない双方向のコミュニケー らゆる業界、業種、企業に対し新たな その兆候を検知した場合のみ、銀行か チ ャ ン ス を も た ら す と 考 え て い る。 ションが有効であることを実証した例 ら能動的にアクションを起こすことで、 であるといえる。 デジタルチャネルにおいても顧客との 効率的な顧客へのアプローチが可能と コミュニケーションの充実化を図り、 なる。 総括 これまでのデジタルチャネルはコスト 昨今のマシンパワーの向上やストレー 削減を目的としたトランザクションの ジの価格低下により、顧客のデジタル 場としての位置づけであったが、顧客 チャネルでの行動履歴をリアルタイム がデジタル化して支店への来店率が減 でトラック・蓄積することは充分可能 少する現状においては、セールスの場 である。実例として、オーストラリア としての役割が重要となる。 の銀行では Web チャネルで顧客の行 動をリアルタイムでトラックしている。 そして、予め定義した兆候を検知した 際は、銀行側から能動的にチャットで 話しかける仕組みを構築した。その結 果、話しかけた顧客の 25% が商品の 購入にまで至っている。これは収益拡 大に取り組んでいる邦銀にとっても魅 力的な数字と言えるであろう。 ニーズに柔軟に対応し、クロスセルを 加速する銀行が競争力を強めていくこ とは疑う余地がない。 基 本 的 な 考 え 方 は 支 店 や 個 人 RM が 行っている営業プロセスをデジタルの 力を活用してデジタルチャネルにも組 み込むことだと考える。「商品をパーソ ナライズする」「バスケットセールス購 入させる」「双方向のコミュニケーショ ンを行う」の 3 つを取り込むことで、 デジタルチャネルをセールスの場へと 変革することが可能と考える。 6 トレーディングビジネスにおける グローバル経営管理の強化 ~グローバル経営管理インフラ整備の重要性 日本の金融機関においては、日本経済の持ち直しにより、目先の業績を急回復 させてきているが、国内のビジネスが成熟する中、新たな成長機会を求めて 海外ビジネスを強化していく必要がある。そのためには海外ビジネスを適切に ガバナンスするための仕組み、つまりグローバルベースの経営管理の実現が 必要である。 また、各国において金融規制の強化が強まる中、ビジネスを営む上で対応不 可避な各種規制に対して、的確に対処していくためにも、グローバルベースの 経営管理インフラの整備は不可欠である。 「グロー 本稿では、銀行・証券会社におけるトレーディングビジネスを対象として、 山本 浩史 バル経営管理インフラ整備」を主軸に考察したい。 1994年 アクセンチュア㈱入社 金融サービス本部 マネジング・ディレクター キャピタルマーケット担当 引き続き不透明かつ不安定な グローバルビジネス環境 新 興 国 経 済 も、 ブ ラ ジ ル、 ロ シ ア、 海 外 ビ ジ ネ ス 強 化 に 際 し て は、 海 外 イ ン ド、 中 国 に お い て、 経 済 成 長 が ビジネスの成長戦略の策定に加えて、 日本の金融機関においては、アベノミ 減 速 し て き た と い わ ざ る を 得 な い。 策定された戦略を確実に遂行・運営し クスによる日本経済の持ち直しにより、 金融機関においては、世界経済の状況 ていくための仕組み、つまりグローバル 目 先 の業 績 を 急 速 に回復させてきて に 加 え て、 各 国 に て 強 化 さ れ る 金 融 経 営 管 理 の 仕 組 み が 不 可 欠 で あ る。 いるが、将来に向けた成長戦略は未だ 規制の影響を受けてビジネスそのもの 特に日本の金融機関にとっ て は 海 外 描 き 切 れ て い な い。 世 界 経 済 は 金 融 の見直しを迫られている。 ビジネスをどのようにガバナンスする 危機から回復しつつあるものの、未だ かは大きなテーマであり、このテーマ 不透明かつ不安定な状況といえ、外需 依存の強い日本経済にとっては大きな 不安要素である。そしてそれは日本の 金 融 機関 に と っ て も大きな影響を与 える。ヨーロッパ経済は危機から回復 基調にはあるものの各ユーロ参加国の 構造的な改革はまだ完遂していない。 米 国 も緊 急 時 の 量 的緩和からの出口 戦略を探っている状況にある。また、 先進国が経済危機からの回復を探る中、 こ れ まで 世 界 経 済 をリードしてきた 7 日本経済の持ち直しにより目先の業績 を回復さ せてきた日本の金融機関に とっては、今後成熟化する国内経済に おいて、リテール向けビジネス領域で 如何に戦い抜くかが重要テーマである。 一 方、 将 来 の 成 長 機 会 を 求 め て 海 外 ビジネスを強化していく必要がある。 海外ビジネスにおいてはホールセール・ は過去において必ずしも成功してきた わけではない。今後、日本の金融機関 がグローバルベースのビジ ネ ス 運 営 モデルを確立し、適切に運営していく た め に も、 グ ロ ー バ ル ベ ー ス の 経 営 管理インフラの整備は、重要経営テーマ の 1 つである。 リ テ ー ル 双 方 の 領 域 に て、 ビ ジ ネ ス 本 稿 で は グ ロ ー バ ル ビ ジ ネ ス 内 で、 強化のための取り組みが必要である。 トレーディングビジネスに絞って論考 を進める。 図表 1 トレーディングビジネスにおける 10 の挑戦(2014 年)- 弊社グローバル調査 ビジネス構造改革の推進 ビジネス運営基盤の強化 成長に向けたポジショニング • 収益力強化と規制対応の要求が強まる • 金融ビジネスに対するコンプライアンス • 将来の成長機会に向けたビジネス領域 中、構造改革の推進が必要 • 顧客に対して付加価値を提供し続けて いくためには、構造改革的なアプローチ が不可欠 1 2 3 銀行破綻対応に伴う事業再編 リングフェンシング対応 業務運営モデルの抜本的な見直し 構造改革による合理化推進 新たなエコシステム ユーティリティの活用 が強化される中、 ビジネス運営上の基盤 機能の強化が不可欠 • 予期せぬ状況が起こり得る中、 業務継続 の見直し、情報技術の活用 • まずは考え、投下資本を集中し、柔軟性 を確保 が可能な体制の整備が必要 4 5 6 新たな資金調達体制の確立 担保・流動性資金の効果的な管理 モニタリング強化 コンプラ強化/コンダクトリスク低減 戦略推進のためのファイナンス 機能強化 7 8 9 ビジネスの意思決定に資する情報提供 10 © エクイティビジネスにおける 収益力の強化 差別化要素の識別とコストコントロールの強化 新たな情報技術の活用 技術がもたらすビジネス機会の捕捉 デジタル化の価値の再考 新たな顧客ニーズの捕捉方法の確立 次世代の育成 効果的な報酬体系 2014 Accenture All rights reserved. 投資ビジネスにおける 10 の挑戦 からは金融規制対応が要求される中、 が 進 む 社 会 に お い て、 そ れ ら を ど の ア ク セ ン チ ュ ア の グローバルキャピ 自社の経営・業務運営の方法、すなわ タ ル マ ー ケ ッ ト グ ル ー プ で は 毎 年 ち業務運営モデル(オペレーティング ように活用し、顧客ニーズを的確かつ スピーディにとらえていくかは、ビジ 「トレーディングビジネス(投資銀行 モデル)をこれまでの延長ではなく、 ネス戦略如何に関係なく、検討が必要 ビジネス)の来年度における 10 の挑戦」 抜本的に見直す取り組みである。次に なテーマであると考えられている。 と い う 調 査 を 実 施 し て い る。 図 1 は 「②ビジネス運営基盤の強化」とは、 本 稿 で は、 前 述 の つ の 課 題 領 域 の 3 2014 年の挑戦を取りまとめた結果で ビジネス運営の基盤であるコーポレー う ち、「 ② ビ ジ ネ ス 運 営 基 盤 の 強 化 」 ある。多くの金融機関が「①ビジネス ト機能の内、特にリスク・ファイナンス・ 関連のテーマとして「グローバル経営 構造改革の推進」「②ビジネス運営基盤 コンプライアンスに関連する機能を 管理基盤の強化」を、銀行・証券会社 の強化」「③成長に向けたポジショニン 強化する取り組みである。これは最近 におけるトレーディングビジネスの対 グ」の 3 領域のテーマを 2014 年の経営 の規制強化への対応の色彩が強いテー 象としてもう少し詳しく考察する。 課題として掲げている。この内容は日 マである。そして最後の「③成長に向 本の金融機関にとっても該当するもの と考えている。 け た ポ ジ シ ョ ニ ン グ 」 と は、 将 来 の グローバル経営管理の構成要素 成長に向けたポジショニングを確立 図 2 はトレーディングビジネスにおけ するための取り組みである。マーケッ るグローバル横串運営に向けた経営管 3 つ の 課 題 領 域 の 取 り 組 み に 関 し て トでどのようなポジショニングを確立 理の検討要素を整理したものである。 簡単に説明すると、まず「①ビジネス するかは各社のビジネス戦略によって グローバル経営管理を整備していく際 構造改革の推進」とは、ステークホル 異なるが、日々進歩する情報技術(IT) には、 「①組織運営モデル(オペレーティ ダ ー か ら は 収 益 力 の 強 化、 規 制 当 局 を如何に活用するか、またデジタル化 ングモデル)の定義」、「②経営管理 / 8 図表 2 トレーディングビジネスにおけるグローバル横串運営に向けた経営管理の検討要素 拠点別運営 JP UK US グローバル横串運営 HK ... JP UK (管理単位/ 階層・組織権限) ... M&A • 組織運営規程の見直し (ラインヘッドの責任・権限範囲の 見直し) DCM/ECM • 管理単位、 管理階層の定義 US 組織運営モデル グローバル横串運営実現に 必要な要件 HK EQ/FICC ... 経営管理 •(管理単位やインフラの情報 粒度が変わることによる) 収益・ コスト配賦ルール、 算出方法の 見直し 経営管理/ 業績管理指標 • 管理単位、 管理階層に応じたKPI の定義 JP UK US HK ... JP 経営管理 インフラ UK US HK ... グローバル共通システム (会計等) 顧客 Risk 会計 Tran HR • マスターデータを含むトランザク ション/会計データ類管理の 一元化 • 会計/リスク管理/人事システム 等各業務システムのグローバル 共通化 © 2014 Accenture All rights reserved. 業績管理指標(KPI 等)の準備」、「③ なお、経営管理に必要となるデータの アクションを打つことができ、データ 経営管理インフラ(システム等)の整備」 整 備 に 際 し て は、 や み く も に デ ー タ としての重要性が高まる。従ってモニ の 3 つの要素に関して、それぞれの要 収集するのではなく、次の 3 つの要件 タリングしている指標から、どの顧客、 素間の整合性を確保した上で、経営管 を明確にした上でデータ整備のインフ どの商品、最終的にはどの契約・取引 理の仕組みを構築していく必要がある。 ラを構築することが重要である。 経営管理の仕組みといった場合、会計 1 つ目は組織運営モデルの管理単位・ シ ス テ ム( 財 務 会 計・ 管 理 会 計 ) や 階層・権限に照らし合わせて、どのよ がその要因となっているか、遡ること が可能である必要がある。 3 つ目は収集するデータに関して適切 リスク管理システムといった経営管理 うな指標を、どのような単位・切り口 な鮮度を定義することである。理想的 の た め の シ ス テ ム イ ン フ ラ 整 備 を で 見 る べ き か を 決 め る こ と で あ る。 なことをいえば、リアルタイムで全て イメージされる方も多いと思うが、本質 単 位・ 切 り 口 は 経 営 層 レ ベ ル、 部 門 のデータが収集されていることが望ま 的 に は 前 述 の 3 つ の 要 素 全 て を 検 討 レベル、部署レベルによって異なる。 しいが、インフラの整備・維持・運用 す る 必 要 が あ る。 ま ず は 将 来 の 成 長 また昨今は社内組織の切り口に加えて、 のための費用対効果も考慮して、デー 戦 略 を 踏 ま え た 組 織全体の業務運営 顧客別・チャネル別といった切り口の タ種類ごとに適切な鮮度を定 義 す る モデルを定義し、その組織運営をモニ 指標が重要視されてきている。なおこ ことが必要である。また鮮度と密接に タリングするための各種業績管理指標 こで定義される各種指標・必要データ 関わる議論としてのデータの正確性が (KPI - Key Performance Indicator)等 は内部向けに提供されるものだけでは ある。財務諸表向けのデータに関して を定義した上で、その指標および指標 なく、外部の規制当局向けに提供され は正確性を担保する必要があ る た め の 元 と な る 各 種 デ ー タ を 収 集・ 分 析 るものも含まれる。 鮮度は低くても問題ない。一方リアル するためのインフラを整備する。この タイムマーケティング等の指標は必ず 経営管理インフラを通じてトップマネ ジメントやミドルマネジメントが必要 とする情報(データ)が提供されるこ とになる。 9 2 つ目は各種指標から、それらの内容 を詳細にブレークダウンできることで ある。通常、指標は何かしらの結果を 示すものであって、その結果となった 要 因 分 析 が で き て、 は じ め て 必 要 な しも精緻な数値を求められないものの、 鮮度は極めて高いものが要求される。 Front Office 図表 3 トレーディングビジネスのアプリケーションアーキテクチャ例 Data Management OMS/EMS Internal Sources Security Master Legal Entity Master Data Structured Loans Middle Office Back Office Acquisition, Quality Check and Normalization RMS Post Trade Capture Data Management Distribution Layer External Sources Product Catalog Risk and P&L on-line Transactional Database Compliance Check Post Trade Distribution ETD OTC FX/MM Equities Debts Corporate Core Product Integration Corporate Database Finance/Risk Credit Risk Market Risk Accounting Reports © 2014 Accenture All rights reserved. 経 営 管 理 イン フ ラ の 整 備・運 営 は 点 が 重 要 で あ り、 図 3 の よ う に 全 体 従って、実際のインフラ整備やインフ ビジネス・IT 一体が不可欠 アプリケーションアーキテクチャを ラの維持・運用に際してはビジネス部 最後に、経営管理インフラ整備・運営 を成功させるための要因を 2 点挙げさ せていただく。1 点目は全社レベルの 全体システムアーキテクチャから取り 組みの姿を描くことである。2 点目は 経営管理インフラの整備および運営・ 維持はビジネス・IT 一体で推進するこ とである。 銀行・証券会社のトレーディングビジ ネ ス の シ ス テ ム イ ンフラは歴史的に マーケットに対する対応スピードを優 先させてきた結果、商品・業務単位に 個別最適化されたシステム構成となっ ていることがほとんどである。昨今は コスト削減、各種規制対応をきっかけ にアプリケーション(データを含む) 全体を最適化させるためのロードマッ プを作成し、取り組みを推進している 金融機関が増えている。経営管理イン フラの整備に際しても、全体最適の観 定義し、その方針に基づいて各アプリ 門が一定の責任を有するこ と が イ ン ケーションシステムを整備していくこ フラ整備およびインフラの運営の成功 とが重要である。なお、システムイン 要因の 1 つとなる。 フラ整備の投資には通常、費用対効果 を 見 極 め る こ と が 不 可 欠 で あ る が、 経営管理インフラの整備を管理目的の インフラ整備コストとしてとらえるの ではなく、将来の成長戦略実現のため の基盤整備投資としてとらえることも 重要である。 また、経営管理インフラの整備に際し 国内金融機関においては、現在、規制 対応を目的として各種データ整備の取 り組みを推進している金融機関も多い が、このデータ整備の取り組みをグロー バルビジネスを支えるためのデータイ ンフラの整備、そしてグローバルベー スの運営モデルを支えるグ ロ ー バ ル 経営管理インフラとして整備ができる ては、このインフラで取り扱うデータ かによって、将来のグローバルビジネ を 如 何 に 管 理 す る か が 重 要 で あ る。 スにおける競争を左右すると思われる。 インフラ整備・データマネジメントと つまり、今後の海外ビジネスにおける いうと IT 部門が推進役と考える方々も 成長に向けては、グローバルベースの 多 い が、IT 部 門 は デ ー タ を 整 備 す る 組織運営モデル、経営管理モデルといっ ためのシステムインフラを構築する た基盤が整備され、それらを確実に運 役割であって、システムにインプット 用できるかが、マーケットでの勝負を されるビジネスデータそのものは、ビ 決める要素の 1 つになるであろう。 ジネス部門が責任をもつべきである。 10 事務・システム構造変革のアプローチ ~BPMS/BRMSの活用 保険業界を取り巻く環境は、国内市場の飽和・顧客ニーズの多様化・対応チャ ネルの拡大など、依然として厳しいが、数十年にわたって構築してきた事務・シ ステムが次なる成長の足かせとなりつつある。 海外では、BPMS(Business Process Management Suite)/BRMS( Business Rule Management System)を活用することにより、過去の資産を活用しなが ら、商品開発期間の短縮化や、査定・損害/保険金業務に代表される事務品 質・事務効率の向上などを実現し始めており、国内保険会社が学ぶところも 多くあると考える。 本稿では、事務・システム構造改革の一手として、BPMS / BRMS の活用業務・ 石河 賢 活用方法と、活用にあたっての要点について考察したい。 東京工業大学大学院卒業 2002年 アクセンチュア㈱入社 金融サービス本部 シニア・マネジャー 保険グループ担当 事務・システム構造改革の必要性 BPMS /BRMS の活用 保険業界を取り巻く環境はますます厳 事務・システムにおいて次なる成長を しくなっている。国内人口の減少、少 生み出す主なポイントは、従来から大 子高齢化の急速な進展の結果、国内市 きく変わっておらず、商品開発の早期 場は飽和、加えて保険加入率も減少し 化、新契約・査定事務の簡素化・早期化、 ている。また、顧客の嗜好・行動の多 顧客・代理店のロイヤリティ向上、損害・ 様化により、従来のプロダクトアウト・ 保険金支払業務の品質向上、事務効率 画一的な営業はすでに限界を迎えてお り、対応チャネルの拡大、きめ細かな 顧客ニーズへの対応などが急務である。 • ビジネスの 活 動 状 況を可 視 化し、改 善 点 の 分 析 を 行う B A M ( Busine s s Activity Monitoring)機能 • 前述のシステムの開発生産性を向上 させる開発アーキテクチャ 一方、BRMS は、各種業務規程・事務 / 化などである。 商 品 規 定・ ビ ジ ネ ス 戦 略 な ど の 各 種 それらを支援するソリューションとし クをシステムから独立して管理・実行 て、海外では BPMS/BRMS の活用が目 チェック・意思決定・計算等のロジッ 資意欲が旺盛になり始めている。 するために、ルール開発機能・ルール 立つようになってきている(図表 1)。 管理機能・ルール実行機能を提供する BPMS とは、業務プロセスの継続的な ソフトウェアである。 しかし、大半の保険会社が数十年メイ 弊社では標準的に以下の機能を保持し 一方、市況の好転により、保険会社の 財務状況は好調であり、従来に比べ投 ンフレーム上に構築してきた事務・シ ステムの資産がブラックボックス化さ れ、結果的に事務・システムの変革の 大きな足かせになっているケースが多 い。本来、保持している資産のスケー ルメリットを活かしやすい業界といわ れているが、「過去の遺産」を保持して いることがマイナスに働いてしまって いる。 11 改善・高度化を支援するツールであり、 BPMS/BRMS の活用を最大化するメリッ ている統合パッケージと定義している。 トは以下の通りである。 • 業務プロセスのモデル化・モデル分析・ • 業務機能・システム機能の再利用性を 高められることによる開 発 生 産 性 の シミュレーションを行うBPA( Business Process Analysis)機能 • 処 理 の 自 動 化 、ワ ー クフロ ー 、E A I (Enterprise Application Integration) 等を支援するBPE ( Business Process Execution)機能 向上 • 業務ルール・プロセスの可視化による、 標準プロセスの見極め、自動化の推進 および業務変更時の影響の可視化 図表 1 BPMS/BRMS 活用方法 他社との差別化要素 チャネル BPMS Web(マイページ) マーケティング /営業 ウェブ サービス 経由での データ連携 • 商品提案のパーソナライズ • チャネルにとらわれない 顧客向けサービスの高度化 代理店 代理店向け 画面の提供 リコメンデーションエンジン (意思決定エンジン) 商品試算エンジン 手数料試算エンジン 業務ルール 承認ルール プロセス制御 エンジン 新契約ビジネスロジック 契約照会ビジネスロジック 契約者・代理店 向けサービス コールセンター 向け システム の実装 • 代理店・営業戦略を支える 手数料体系の多様化 • コールセンターオペレー ションの簡易化 保険金ビジネス ロジック 試算ビジネスロジック コンタクトセンター 査定ビジネス ロジック • 事務効率の向上 BRMSを活用した機能(例) メインフレーム 新契約 /査定 • 契約リスクの低減と自動化・ 効率化の推進による契約 成立短期化 各業務機能をサービスとして 呼び出すSOA 機能 商品開発 • カスタマーセントリックの 商品の開発・リリースの 迅速化 実現ソリューション タブレット 損害・保険金 プロセスを高度化する ワークフロー機能 タブレット・ モバイル アプリの 自動構築 • 損害・保険金支払い プロセスの品質向上・効率化 査定・保全・損害/ 保険金等社内事務 業務状況を可視化する BAM機能 © 2014 Accenture All rights reserved. • SOA の考え方に基づき、プロセスと業 また、BRMS の顕著な活用方法としては、 拡張した弊社のDuck Creek Ratingを導 務機能の関係を疎結合にすることで、 以下が挙げられる。 入。商品定義の共通化等を図ることによ 業務変更の影響を局所化 り、商品構造が可視化され、結果、商品開 • BAMにより、継続的に業務状況の可視 化と改善点の把握 保険業界における BPMS/BRMS の活 用ソリューション 保険業界において BPMS の活用範囲は 広く、 活用事例は多い (図表2) 。 • 顧 客 接 点 を 管 理 す る た め の 、S O A ( Service Oriented Architecture)の 考え方を用いた顧客サービスプラット フォーム • 継続的な高度化および STP ( Straight • 保険商品の定義・各種規定・算出ロジ ックを 実 装 することで 、商 品 定 義 の 管理・設計を可能とするプロダクトファク 欧州大手銀行 トリ リコメンデーションエンジンの導入 • 代理店・募集人に対して、代理店戦略・ クロスセルの強化を目的として、セール 営業戦略の高度化を可能とする手数料 ス・マーケティング用のデータウェアハウ エンジン ス、分析基盤、およびBRMSを拡張したリ • 各種業務のチェック・意思決定エンジン • 商品のおすすめ等を行うリコメンデー ションエンジン BPMS/BRMS の活用事例 Through Processing )の推進が求め 海外の活用例をいくつか紹介する。 られる、査定業務・損害/保険金業務へ の活用 • 顧客接点向上のために期待が高まる コールセンター/コンタクトセンター システムへの活用 発期間が最大50% 程度まで短縮された。 米国大手・中堅保険会社 プロダクトファクトリの導入 コメンデーション基盤を導入。インバウン ドコールに対するリコメンデーションか らスタートし、段階的にアウトバウンド・ 他チャネルへ展開。結果、 クロスセルの 提案受託率が飛躍的に向上し、サービス イン後 4ヶ月で投資コストを回収。また、 キャンペーン実行のための準備作業が 飛躍的に効率化され、最短 1日でキャン ペーン準備が完了できるようになった。 州ごとの商品差異への対応と、商品開発 スピードの向上を目的として、BRMS を 12 図表 2 BPMS/BRMS 活用事例 他社との差別化要素 他社との差別化要素 商品開発 マーケティング /営業 新契約 /査定 契約者・代理店 向けサービス 損害・保険金 クライアント ソリューション 効果 • カスタマーセントリックの 商品の開発・リリースの 迅速化 • 米国大手保険会社 • 保険料試算エンジンとして、 プロダクトファクトリー (Accenture Duck Creek Rating モジュール)を導入 • 商品開発期間の短縮 (最大50%程度) • 商品提案のパーソナライズ • 欧州大手銀行 • キャンペーンマネジメントの高度 • 4ヶ月で投資コストを回収 化を目的としてリコメンデーション キャンペーン準備期間の短縮 エンジンを導入 • チャネルにとらわれない 顧客向けサービスの高度化 • 米国大手保険会社 • 各チャネルをサポートするシステ ムのハブ基盤として、BPMS製品 を導入 • 顧客ロイヤリティ向上のための 施策実行の迅速化 • 契約リスクの低減と自動化・効 率化の推進による契約 成立短期化 • 米国大手保険会社 • 高度医療費保険の査定業務標準 化・業務可視化をを目的として、 BPMS製品を導入 • 査定状況の可視化に加え、 査定結果の透明性向上、 事務効率向上 • 代理店・営業戦略を支える手 数料体系の多様化 • グローバル大手通信会社 • 代理店手数料戦略高度化を 目的として、 営業報酬管理 ソリューションを導入 • 手数料策定オペレーションの 効率化 • コールセンターオペレー ションの簡易化 • 北米大手金融機関 • カード会社買収に伴うコール センターシステムの再構築を BPMS製品で実装 • コールセンター業務の簡易化 • 開発コスト削減 • 損害・保険金支払い プロセスの品質向上・効率化 • 米国大手保険会社 • 米国、 中南米、 英国損害システム の標準化をBPMS製品で実装 • 平均電話応対時間30%削減 • 米国中堅保険会社 等多数 • 事務効率の向上 © 2014 Accenture All rights reserved. 米国大手保険会社 高額医療費保険の査定業務は、マニュ カスタマエクスペリエンスサービス アル作業が多く作業が属人化した結果、 プラットフォームにBPMSを導入 エラーの発生リスクが高く、査定期間が Webセルフサービス、電話セルフサービ ス、 コールセンター、バックオフィス業務 の統合プラットフォームとしてBPMSを活 用し、顧客満足度を向上させるための基 盤を整備。また合わせて、顧客満足度向 長期化しており、 また査定状況も不透明 な状態であった。この状況を改善する ため、BPMS を活用し、モデルベースで 事務・システム改革の成功の要諦 BPMS /BRMS の導入に際しては、従来の システム開発方法とは異なった開発アプ ローチを採用したほうが、効果を最大化 しやすいと考える (図表3) 。 査定業務の標準化を行いながら、事務 ① 継続的な付加価値の追求 自動化領域とサービスレベル向上余地 BAMによる業務状況の可視化は、施策に を識別し、査定システムを開発。これによ • 顧客満足度の分析・施策を識別 よる効果の把握と、次の改善点の把握の り、査定状況の可視化、査定期間の短縮、 ために大きく役立つ。それゆえ、 ビジネス 作業品質の向上を実現した。 部門内が改善するべきKPI(Key • システム/事務プロセスの変更 北米大手保険会社 上のため、 • 施策効果の測定 を、 ビジネス・ITが一体となり迅速かつ継 続的に実行可能になった。 米国・中南米・英国の損害システム標準化 にBPMSを導入 書 類 を 中 心とした 損 害 業 務 で あった ため、非効率な事務が常態化していた 米国大手保険会社 が、BPMS を導入と合わせて、3ヶ国のプ 高額医療費保険の査定業務標準化に ロセスを標準化することにより、事務を BPMSを導入 効率化。結果として、事故受付の電話応 13 対時間の30% 削減に成功した。 Performance Indicator)を定義し、KPI を改 善させるための PDCA( Plan Do Check Action)プロセスを定義、実行で きる組織を構築する必要がある。 図表 3 BPMS/BRMS 活用における開発手法の変化と成功の要諦 従来のシステム開発 BPMS/BRMSを用いた • 明確なKPIの定義 ワンタイムプロジェクトの 成功に注力 継続的な付加価値の追求 2 網羅的な要件の洗い出しと、 Vモデルによる確実な システム開発 投資効果の高い領域に対し、 クイックに構築し効果を 早期刈り取り 3 ビジネス部門とIT部門の分業 ビジネス部門・IT部門一体の チーム構築 4 要件の網羅的なシステム化 標準業務・標準プロセスの維持・ 拡張と、例外業務・発生頻度 極小業務の可視化・局所化 1 成功の要諦 開発アプローチ • 業務PDCAプロセスの定義 • 実行体制の構築 • ガバナンスモデルの強化 • 継続的な投資対効果の可視化 • 要員ケイパビリティの向上 •(場合によって) ビジネス部門内 ITチームの構築 • 活用テクノロジの標準化 • 業務・システムデザインの ガイドラインの整備 © 2014 Accenture All rights reserved. ②迅速な意思決定のための て要員のケイパビリティの育成が必須で ガバナンスモデルの整備 ある。また、場合によっては組織の壁が、 現行機能全てのマイグレーションを前提 一体となったチーム構築の阻害要因に とした事務・システム構造改革の取り組 なりうるため、 ビジネス部門内にITチーム みが多いが、 この前提には疑問を感じる。 を作るような取り組みも効果的である。 売り止め商品に関する処理などの、 ビジ ネス効果が限定的な領域については、 現状維持の判断が賢明な場合も多い。 その判断のためにも、投資対効果を把握 できる仕組みを整備したうえで、迅速な 総括 従来はシステム化をすることで、コスト 削 減 、リスク低 減 などビジネス効 果 の 向上を図ることが可能であった。 しかし、 変化が激しい今日、その変化に対応した ④ 標準業務・標準プロセスの維持・ 舵取りが求められる。このような状況下 拡張と、例外業務・発生頻度極小業務 では大きな投 資で抜 本 的に事 務・シス の可視化・局所化 テムを見直すアプローチよりも、効果が 業務品質向上のため、従来は業務機能 見込める領域を見極め、必要最小限の を網羅的に洗い出し、それを可能な限 投 資を繰り返し、ビジネス効 果を積 み を整備することが必要である。 りシステム化することが一般的だった。 重 ねるような 機 動 的 アプロ ー チ の 方 結果として、一部の例外業務や発生頻度 が適切である。BPMS /BRMSはこのアプ ③ ビジネス部門・IT 部門一体の が低い業務機能が、 システム全体の複雑 ローチを実現するための基盤となるもの チーム構築 さを助長させているケースがある。ビジ 意思決定を可能とするガバナンスモデル ビジネスの継続的な高度化には、ビジ ネス価値向上のためには、現行の商品体 ネスが提供する価値をIT部門が深く理解 系のシンプル化・見直し、提供サービスの すると同時に、 ビジネス部門がシステム 廃止など含めた業務の見直しも必要であ の 制 約を理 解したうえで、提 供できる る。そのためには、標準的な業務プロセ で、事務・システムの構造改革の打ち手と して導入の検討をお勧めしたい。変化に 対応できるものだけが成長していけるこ とを忘れてはならない。 それ ビジネスの価値の最大化を考えることも スを見極めるためのガイドラインと、 必要である。そのためには、 ビジネス・IT と平仄をとったシステム構造とシステム テクノロジー標 相 互 の 状 況 を 把 握 するた め 、要 員 の デザインのガイドライン、 役割の変更や体制の見直し、必要に応じ 準の整備が肝要である。 14 最近話題のプロジェクト 昨今の顧客情報の利活用、 ビッグデータを活用した営業力強化といった潮流 が鮮明になってきており、情報系システムの刷新、それらに基づくフロント チャネル (顧客接点) に関する改革のご支援機会を多数頂いております。 弊社ではビジネスとテクノロジーを融合させ、業態の垣根を越えた新しい ビジネス機会の創出、 抜本的な業務効率化のご支援を一層強化して取り組ん で参りたいと考えております。 業態 案件概要 CS 銀行 次世代本部分析環境の構築および高度化 ○ 勘定系システム更改の要件定義・プロジェクト推進管理支援 ○ ○ リテール営業力強化に向けた全社情報系システムの構想立案 ○ ○ 営業力強化に向けた情報活用基盤の刷新支援 ○ ○ 十数のIT人材強化策の枠組整備、 整合担保、 展開導入、 KPI管理支援 ○ 総合証券会社としての管理会計再構築・導入支援 ○ 証券 保険 Salesforce.com Service Cloudによるコールセンターシステムの保守・拡張開発 ○ ○ ノンバンク 顧客接点の最適化 ○ カード ○ 基幹システム統合プロジェクトにおける業務側支援及びPMO (略) CS:コンサルティング、OS:アウトソーシング、TC:テクノロジー 15 TC ○ ○ ○ タブレット端末向け代理店オンラインシステムの構築 ホストシステム統合の技術的実現性検証 OS ○ アライアンスおよびパッケージ・システム 社名/ソリューション名 ソリューションタイプ ソリューション概要 弊社/ Accenture Multi Channel Platform (MCP) 銀行向け プラットフォーム グローバルも含めた銀行業経験と先進トレンドを反映した次世代ハブソリューション。フロントエンドとバッ 弊社/ 銀行・カード会社向け プラットフォーム Accenture Mobility Managed Service (AMMS) 弊社/ Accenture Life Insurance Platform (ALIP) 弊社/ Claim Components Solution(CCS) クエンドを分離し、商品・サービスの多様化や顧客志向のクロスセル営業プロセスをマルチチャネルで実現 する。顧客チャネル追加やバックエンドシステム統廃合を想定したSOA2.0型の柔軟なシステム間連携機能や、 マ ルチチャネルでの顧客情報統合管理、複数商品を跨るバンドル商品も含めた新商品・サービス生成、先進のチャ ネルフロント構築機能をベースに、あるべき銀行のシステム全体像構築を効率的かつ強力に支援。 モバイルコマースのサービスデリバリープラットフォーム。モバイルバンキング・ポイント管理・ペイメント(NFC 含む)・クーポン・マーケティングなどのモバイルマネー系のコンポーネントを有する。従来、携帯キャリアが 提供していたモバイルマネー系のサービスを金融プレーヤーが主導で構築できるため、スマートデバイスを新 たな攻めのチャネルとして活用することが可能。欧米において多数の導入実績を有する。 生命保険会社向け 契約管理システム 生命保険・年金保険の契約管理(サイクル)業務を包括的に支援する基幹系パッケージシステム。コン ポーネント単位の組み合わせによって、最適な機能のみの導入が可能。北米を中心に60 社以上に 提 供 中。2006 年 8月アクセンチュアが NaviSys 社を買収後、ソリューション名をアクセンチュア 生命保険プラットフォーム(Accenture Life Insurance Platform–ALIP)に改称。 損害保険会社向け パッケージシステム 損害サービス業務全般をカバーするグローバル No.1のソリューション。北米トップ三社のうち二社 が導入しており、約7万人の事案担当者が日々CCSを使用、米国個人保険損害全事案中 36%は CCS で処理されている。初期導入は1998 年で、16 社に導入済。個人保険、企業保険といった全商品に 対応。業務分析ツール等変革に必要となる要素を包括的に含む。 弊社/ Underwriting Components Solution (UWC) 弊社/ Memetrics (Digital Marketing Optimization) Pega 損害保険会社向け 引受業務支援 パッケージ アカウント管理、 リスクセグメンテーション、外部データとの統合、指標管理といった機能に強みを持つ 全商品に対応し、引受業務全般をカバー。より迅速かつ適切な見積・引受を可能にし新たなリスクセグ メントの開拓、 コンバインド・レシオの改善に大きな効果をもたらす。英RSAや米Allstate, Travelersといった欧米ト ップ企業9 社が既に採用済。 マーケティング チャネル最適化 ソリューション Webサイトのランディングページ、E-mail、DM、リスティング広告、コールセンター等ダイレクトマーケ ティング手段の活用を最適化し、売上増加、口座開設率の向上等、ROI の最大化を科学的かつ自動 的に実現。2007 年 12 月アクセンチュアが Memetrics 社を買収したことにより、コンサルティングを 含めたより総合的なソリューションとして提供可能。 BPM CRM ルールエンジン ソフトウェア 業務プロセス・ルールベースのシステムを構築するための統合開発プラットフォームで、 Pegaの活用によりビジネ スプロセスとシステムは一体となり、 整合性のある柔軟なシステム構築を実現。 Next-Best-Action Marketingによ り、 市場・消費者動向に応じた機動性の高い柔軟な対応ができ、 クロスセル・アップセルの強化、 営業推進の強化が 行える。弊社はPlatinum Partnerとして、多くの海外事例に基づいた銀行、保険などの金融機関へのシ ステム提供が可能。 Calypso Murex トレーディング・ リスク管理システム デリバティブ(株式、金利、コモデティ、クレジット)、外為関連のディーリングフロントオフィス・リスク 管理やバックオフィス業務を行うための市場系システムの導入支援。欧 州を中心に世界で 200 名 以上のエンジニア(国内では約20名)と多数の導入経験により培った方法論を最大活用。 日興システム ソリューションズ (NKSOL) 証券・資産運用系 システム& コンサルテーション 銀行、証券、投信投資顧問等を主要顧客として、総合証券システム、オンライントレーディングシステム、 投信窓販システム、投信経理システム等を、ASP 型のシステムサービスとして提供。また、豊富な実務・ 運用経験に基づく、業務・システム・技術コンサルティングを展開。2005 年、より高度で幅広いサービス をワンストップで提供すべく、 アクセンチュアとアライアンスを締結。 Oracle Financial Services Software 銀行勘定系システム コア・バンキングパッケージとして、新 規 顧 客 獲 得 数 4 年連 続 世界 第一 位にランキング( 2002 ~ 2005 年 、IBS 誌 ) 。現 在 の 顧 客 数 500 以 上、115ヵ国 以 上で サービ スを 提 供して い る「 Oracle FLEXCUBE 」。モジュール・アーキテクチャとして、機能が部品化されており、必要な機能のみの導入 が可能。また、商品をパラメータで設定可能なため、新商品の導入が容易。 SAP SAS Institute Temenos BaselⅡ 対応システム 銀行勘定系システム ERP(人事・会計)システム データベース・システム イベント・ベースト・ マーケティング クレジットライン最適化 リスク・マネジメント サステナビリティ 銀行勘定系システム 高品質・高付加価値な導入コンサルテーション、豊富な成功事例に裏づけされた安全・確実なシス テム導入、およびSAP社とのグローバルアライアンスに基づく手厚いサポートを提供。 “BWを中核とした情 報系システムの再構築”等、個別課題へのソリューションとして提供可能。 CRM、リスクマネジメント、サステナビリティ等同社ソフトウェア・コンポーネントにより、金融業界では、 個人・法人向け顧客営業支援、 クレジットカード与信分析、BaselⅡAMA 分析、カーボンモデリング等の CSR環境アプローチ等、様々な分野における高度データ分析をリードするソフトウェア。 バンキング・システムとして、世界 120カ国、600 顧客サイトで利用されている「 Temenos」。 「 T24」は、 オープン・アーキテクチャにもとづき、カスタマイズ性と拡張性を提供し、 リアルタイム対応を可能と するモジュラー構造。ハイ・パフォーマンスをリードするコア・バンキング・ソフトウェア。 16 弊社外部講演およびレポートのご紹介 「消費者が変わる、 保険が変わる」 外部講演のご案内 外部講演のご報告 セミナーインフォ社の有料セミナー ブロードリッジ・マーケット戦略 2014 「Digital Insurer 3.0」 9 月 30 日 ( 火 ) 13:30 ~ 16:30 「新たな競争環境下の証券ホールセース ビジネスにおいて取り組むべき重要課題」 レポートのご案内 「消費者が変わる、保険が変わる」 日本人消費者 500 人に保険に関する 調 査 を 行 い、 明 ら か に な っ た 3 つ の 弊社マネジング・ディレクター原仁志、 5 月 22 日 ( 木 ) 開催 シニア・マネジャー大喜多雄志及びマネ マネジング・ディレクター山本浩史が こ の 内 容 は、 メ デ ィ ア で 取 り 上 げ ら ジャー原田英明が、メディアで取り上げ 講演致しました。イベントのレポートを られた弊社消費者調査や「テクノロジー ご覧ください。 トレンドと弊社の提言をまとめました。 れました。是非ご一読下さい。 www.accenture.com/jp/ins-survey2013 ビジョン」を元に、デジタル化時代に http://goodway.co.jp/fip/htdocs/ なお、こちらのサイトにはレポートの 内 容 の 概 要 を 紹 介 し た 3 分 の ビ デ オ おける保険業の次なる一手について講演 johr0aqj9-3242/#_3242 致します。 場所 : 千代田区九段南 2-2-3 九段プラザビル 2F セミナーインフォカンファレンスルーム 詳細及びお申込みは http://www.seminar-info.jp/ をご参照 ください。 17 金融フォーラム 2014 「デジタル時代のリテール銀行の 8 つの 及びグローバルのレポートも 併 せ て 掲載しております。 チャレンジ - Next Generation Banking」 5 月 23 日 ( 金 ) 開催 マネジング・ディレクター森健太郎が 講演を行いました。特に「異業種との連 携の海外事例が面白かった」との声をい ただき、ご好評いただきました。 以上ご不明な点などございましたら、 金融サービス本部マーケティング担当 (AccentureAsiaPacific@accenture.com) までお問い合わせ下さい。 会社概要 グローバル拠点数: アクセンチュア株式会社 お問合せ先 世界 56 カ国 本社所在地: ニューズレターの掲載内容に関する 200 都市以上 売上高: 286 億米ドル (2013 年 8 月期) 従業員数: 28 万 9 千名以上 〒 107-8672 東京都港区赤坂 1-11-44 お問合せは、 金融サービス本部 赤坂インターシティ 電話番号 : 03-3588-3000(代表) FS Architect 担当 マネジング・ディレクター 森 健太郎 AccentureAsiaPacific@accenture.com へご連絡ください。 送付先の変更 ・ 停止等に関するご連絡 ピエール・ナンテルム FAX: 03-3588-3001 (Pierre Nanterme) 従業員数: ください。 会長兼最高経営責任者 : 5,000 名以上(2013 年 8 月 31 日時点) 代表者: 代表取締役社長 程 近智 URL : www.accenture.com/jp は、同封の Fax 用紙・ご郵送にてご連絡 03-3588-3000( 代表 ) 03-3588-3001(FAX) FS Architect 専用サイト www.accenture.com/jp/fsarchitect 金融サービス本部トップページ www.accenture.com/jp/fs 18 アクセンチュアについて アクセンチュアは、経営コンサルティング、 テクノロジー・サービス、アウトソーシング・ サービスを提供するグローバル企業です。 約28万9千人の社員を擁し、世界120カ国以上 のお客様にサービスを提供しています。豊富 な経験、あらゆる業界や業務に対応できる 能力、世界で最も成功を収めている企業に 関する広範囲に及ぶリサーチなどの強みを 活かし、民間企業や官公庁のお客様がより 高いビジネス・パフォーマンスを達 成でき るよう、その実現に向けてお客 様とともに 取り組んでいます。2013年 8月31日を期末と する2013年会計年度の売上高は、286 億US ドルでした(2001年7月19日NYSE上場、略号: ACN)。 アクセンチュアの詳細は www.accenture.comを、 アクセンチュア株式会社の詳細は www.accenture.com/jpをご覧ください。 Copyright © 2014 Accenture All rights reserved. Accenture, its logo, and High Performance Delivered are trademarks of Accenture. 14-3571 / 11-8885
© Copyright 2024 Paperzz