広幅員一室箱桁にリブ付き床版構造を採用した 波形鋼板ウエブ橋の設計

技報 第 8 号(2010 年)
広幅員一室箱桁にリブ付き床版構造を採用した
波形鋼板ウエブ橋の設計
あ ら と がわ
-第二東名高速道路 新戸川橋-
東京支店
設計センター
豊田正
東京支店
土木工事部
藤岡篤史
技術本部
技術部
大山博明
東京支店
土木工事部
関井勝己
1.はじめに
図-2 全体一般図
22650
新戸川橋は愛知県新城市に位置する第二東名高速道路の
PRC8 径間連続リブ付き波形鋼板ウエブ箱桁橋である.本橋
非常に広い橋梁である.そのため本橋では,上床版にリブを
2805
2700
設け,張出床版長を長くしウエブ間隔を縮小させることによ
500
4500
本稿では,新戸川橋における広幅員リブ付き床版の設計概
要について報告する.
2700
5505
2700
2805
600
250
500
り 1 室箱桁で広幅員に対応し,主桁重量の軽量化を図ってい
る.
500
310
2700
600
700
310
は片側 2 車線の上下線一体構造であり,全幅員が 22.650m と
10750
1100
10750
11100
5505
図-1 断面図
270
270
2.工事概要
桁高4.
0
00m
発 注 者:中日本高速道路(株) 名古屋支社 豊川工事事務所
構造形式:PRC8 径間連続リブ付き波形鋼板ウエブ箱桁橋
橋
長:735.117m 上下線一体
支 間 長:54.200m+2×94.000m+4×105.500m+68.317m
有効幅員:2×10.750m
本橋の断面図を図-1 に,全体一般図を図-2 に示す.
■境界条件(
固定方向)
鉛直方向
橋軸方向
3.床版の設計
直角方向
3.1 断面力の算出方法
本橋の床版は,図-1 に示すように張出床版長 5.805m,中間床
図-3 FEM モデル概要図
版長 10.500m であり,床版支間が道路橋示方書Ⅲの適用範囲
外となる.また,橋軸方向 4.0m 間隔にリブを有することから,
3.2 床版プレストレスの評価方法
床版の設計においてはこの床版構造の力学的挙動を適切に評
道路橋示方書に準拠した床版横方向の設計では,橋軸方向
価する必要があった.そこで,床版の設計断面力は FEM 解析
幅 1.0m を検討断面として設計を行う.しかし,本橋の床版は
を用いて算出することとした.ただし,プレストレスによる
4.0m 間隔にリブが存在するため,プレストレスの効果および
断面力については,FEM 解析によりクリープ等のプレストレ
影響範囲が不明である.このため,フレーム解析において床
スに及ぼす影響を評価することが困難であると考えたため,
版プレストレスを評価する際の断面形状の選定が課題となっ
フレーム解析により算出することとした.図-3 に FEM 解析
た.そこで,リブ付き床版における床版プレストレスを適切
モデルの概要図を示す.
に評価する断面形状を選定するために FEM 解析およびフレ
ーム解析による比較検討を行った.
4000
1
05
5
0
0
7000
4000
1
05
5
0
0
7000
4000
1
0
5
5
0
0
7000
4000
1
0
55
0
0
7000
4000
7000
9
4
0
0
0
4000
6500
9
4
00
0
4000
6500
8
0
05
4
2
0
0
4000
5
0
0
新戸川橋(上下線)橋長7
3
5
1
1
7
6
8
3
1
7
80
0
5
0
0
技報 第 8 号(2010 年)
3.2.1 床版プレストレスの比較検討
以上の結果から,本橋におけるプレストレスによる応力度
床版プレストレスの比較検討を行った解析モデルの一覧を
表-1 に示す.
の算出では,フレーム解析においてもリブの影響を適切に評
価できる断面形状として,CASE1 を採用した.
FEM 解析では,床版に導入されるプレストレスのリブの有
びリブ無し FEM モデルによる比較検討を行った.各 FEM 解
析モデルを図-4 に示す.
フレーム解析では,橋軸方向幅 4.0m の断面(CASE1)および
リブ位置・リブ間の単位幅断面(CASE2・CASE3)について比
較検討を行った.各断面形状図を図-5 に示す.
プレストレス応力度(N/mm2)
無における相違を確認するために,リブ有り FEM モデルおよ
上縁応力度分布
6.
00
5.
00
4.
00
3.
00
2.
00
CA
SE1
リブ有FEM<
リブ位置>
1.
00
0.
00
ブ付き床版における床版プレストレスを適切に評価できるフ
1260(N/mm2)とした.
表-1 解析モデル一覧
モデル名称
リブ有りFEMモデル
リブ無しFEMモデル
CASE1
CASE2
CASE3
解析
FEM解析
フレーム
解析
橋軸方向幅(m)
-
-
4.0
1.0
1.0
リブの有無
有り
無し
有り
有り
無し
下縁応力度分布
プレストレス応力度(N/mm2)
材配置は 1S28.6ctc500 を想定し,一本当たりの緊張応力を
CA
SE
3
リブ無しFEM
1.
00
FEM 解析およびフレーム解析の比較検討を行い,本橋のリ
レーム解析断面を決定した.なお,両解析とも横締め PC 鋼
CA
SE2
リブ有FEM<
リブ間>
6.
00
C
AS
E1
CA
SE
2
CA
SE
3
リブ有FEM<リブ位置>
リブ有FEM<
リブ間>
リブ無しFEM
5.
00
4.
00
3.
00
2.
00
1.
00
0.
00
1.
00
図-6 解析結果
3.3 横締め PC 鋼材配置
リ ブ位 置
前述の設計方法により床版の設計を行った結果,本橋の横
リブ 無
リ ブ間
プレ スト レス
2
1260(N/mm)
プ レスト レス
2
1260(N/mm)
締め PC 鋼材は 1S28.6 を 500mm 間隔で配置することとなっ
た.鋼材配置形状を図-7 に示す.また,本橋における横締め
リ ブ無し FEMモデル
図-4 FEM 解析モデル図
<CA
S
E2>
1000
方向応力度分布図を図-8 に示す.
<C
AS
E
3>
1000
400 2@396.5
120
<C
A
SE
1>
4000
PC 鋼材配置の決定ケースである温度+設計荷重時の橋軸直角
155
リブ有 りFEMモデ ル
22110
19724
2@396.5 400
R=
45
00
mm
図-7 横締め PC 鋼材配置形状
横締めPC鋼材
300
300
図-5 フレーム解析断面形状図
3.2.2 結果まとめ
T活 荷 重載 荷位 置
T=100(kN)
決定断面
各解析モデルにおける床版上下縁応力度の比較検討結果を
T活 荷重 リブ 間載 荷
図-6 に示す.
(1)CASE1 は,リブ有りモデルにおけるリブ位置,リブ間双方
の FEM 解析結果と比較的よく一致している.
(2)CASE2 は,リブ位置のウエブ直上付近において,CASE1
に比較してリブ有りモデルの FEM 解析結果との差が大きか
った.
(3)CASE3 は,リブ無しモデルの FEM 解析結果とは比較的よ
設 計荷 重時 =自 重+橋面 荷重 +
床 版温 度差 +活 荷重
(プ レス ト レス は含 まず )
T活 荷重 リブ 位 置載 荷
図-8 設計荷重時における直角方向応力度分布
Key Words:リブ,波形鋼板ウエブ,広幅員,FEM 解析
く一致しているが,リブ有りモデルの FEM 解析結果とは大き
く異なる結果となった.
(4)(2)および(3)より,リブ位置・リブ間の単位幅を考慮した個
別断面(CASE2,CASE3)でのフレーム解析では,プレストレ
スを適切に評価できないことがわかった.
豊田正
藤岡篤史
大山博明
関井勝己