ナバックレター 養豚版Vol.57 離乳時体重の最適化による子豚の飼養成績の改善 1 Linda Baarslag, Gerard van de Bruinhorst (Denkavit Nederland B.V., Tolnegenweg 65, 3781 PV Voorthuizen, PO Box 5, 3780 BA Voorthuizen, The Netherlands) 近年、産子数の増加により、体重1kg未満で出生する子豚が増えており、生き残りが困難であることがよく知られています。 子豚の初期の発育成績が、その後の生育段階において重要であることはますます理解されるようになっており、本稿では、現在 明らかとなっている事実と、子豚の初期発育成績および離乳時体重を最適化する方法についてとりあげます。 飼養成績に及ぼす影響 体重(kg) 前述のとおり、産子数の増加に伴い、生時体重の減少が見られます。Qiuniouら(2002)は、産子数が11頭以下から16頭以上 に増加すると、生時体重1kg以下の個体の割合が7%から23%に増加すると報告しました。 さらにこの試験では、生時体重が100g減少するごとに、離乳時体重は200∼400g減少することが示されました。生時体重が 高いことの優位性は、その後離乳時だけでなく11週齢でも高体重となることからも証明されています(図1参照)。 出生時に生じた体重差は離乳時には約2倍になり、11週齢時には3.5∼6倍にもなります。この増体量への影響は豚の育成期間 中も継続します。Le Dividichら(2003)によって、生時体重が100g低下するごとに、出荷体重に達するのが2、3日遅れる ことが示されています。 30 28 26 24 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 <1500g 1500-1750g >1750g 生時 4週齢 11週齢 各週齢とも、異なる群の体重間すべてに有意差あり(P < 0.05) (Freitagおよび Stalljohann, 2007) 図1 生時体重が離乳時(4週齢)体重および11週齢時体重に与える影響 表1 離乳後第1週の増体量がその後の飼養成績に及ぼす影響(Tokachら(1992)を改変) 離乳後第1週の 離乳後の体重(kg) 出荷までの日数 平均日増体量(g) 28日齢 56日齢 156日齢 ≤0 14.7 30.1 105.4 183.3 0 ∼150 16.0 31.9 108.2 179.2 150 ∼ 227 16.9 32.5 111.3 175.2 ≥ 227 18.2 34.8 113.4 173.3 離乳時の豚の平均日齢は21日、平均体重は6.2 kgでした。28日齢および56日齢は1350頭、156日齢および出荷日は 566頭の豚のデータです。 1 ナバックレター 養豚版Vol.57 生時体重が重要であるだけでなく、子豚の離乳時体重と離乳、育成および肥育期間の増体量にも、明確な正の相関関係があります。 Tokachら(1992)によって、離乳後第1週の子豚の発育成績がその後の発育成績と出荷までの日数に大きな影響を与えること が示されました(表1)。Tokachらの報告では、離乳後第1週の間に体重が変動しないかまたは減少した子豚は、同期間に 227g/日の割合で増体した子豚に比べ、出荷体重に達するまで10日間余分にかかることがわかっています。 要約すると、生時体重、離乳時体重および離乳後第1週の増体量はその後の子豚の飼養成績に大きな影響を及ぼします。これら のデータは、子豚の生時体重がより高く、均一であることの重要性を明確に示しています。 さらにこの結果は、(低体重)子豚の離乳時体重を高め、離乳直後の期間を乗り越えさせることが重要であることも強調しています。 飼養成績の最適化 初期の発育成績とその後の離乳時体重を最適化するためには、少なくとも2つの方法が考えられます。第一に、子豚の生時体重 を改善することです。生時体重は、卵胞発育期に既に決定しており、卵胞の発育は、前回授乳期の離乳1∼2週前に始まります。 卵胞の成長および発育は様々なホルモンの影響を受けますが、その中でも黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH) は重要です。 LHおよびFSHはインスリン刺激により放出されます。卵胞発育を改善するためには、この期間にインスリン濃度を高めること が重要です。血中インスリン値は、糖の影響を受けることが知られています。 ここで、母豚の飼料にどの程度糖を加えると、次産の新生子豚に影響があるのかという疑問が生じます。 Denkavitはワーニンゲン大学と共同で、(授乳期の)母豚に対する糖給与が次産の新生子豚の生時体重および均一性に及ぼす影 響について調べる試験を開始しました。この試験の最初の部分は本誌(International Pig Topics, Vol.22, Number 7)に掲載 されました。離乳時から受精時まで母豚にブドウ糖を給与(75gを1日2回)することにより、次回の分娩時に生時体重1000g 未満の子豚の数が減少し、新生子豚の均一性が改善されるらしいということがわかりました。 続く試験では、さらに離乳前から糖の給与を開始しました。この主な目的は、給与後のインスリン濃度をより高め、より長期間 維持させるためでした。 そこでブドウ糖に続き、乳糖を給与しました。母豚が摂取した乳糖は主に発酵によって後期の血中インスリン値を高めるからで す。このブドウ糖と乳糖の組み合わせを分娩1週間前から受精時まで給与しました。 ブドウ糖/乳糖給与群のほうが、産子の生時体重が高い傾向が見られました(対照群1.483g vs. 給与群1.569g)。さらに、変 動係数の低値傾向も見られました(対照群22.6% vs. 給与群19.9%)。これは、給与群のほうが、産まれた同腹子がより均一 であることを意味します。これは、図2からも分かります。この研究から、分娩1週間前から受精時まで乳糖とブドウ糖を組み 合わせて母豚に給与することにより、次産の新生子豚の生時体重が増加し、より均一になると結論することができます。この方 法によって、離乳前の事故率が減少し、離乳時体重が増加し、育成期および肥育期にもより利益がもたらされるでしょう。 (次号に続く) これは「International Pig Topics, Vol.25, Number 2」を抄訳したものです。 25 ブドウ糖/乳糖給与群 子豚(%) 20 対照群 15 10 5 0 <0.8 <1.0 <1.2 <1.4 <1.6 <1.8 <2.0 <2.2 =2.2 生時体重(kg) 図2 母豚へのブドウ糖および乳糖給与がその後の新生子豚の生時体重および均一性に与える影響 2
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