控訴審の勝訴判決に関するお知らせ

ナノフォトン株式会社
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2014年9月17日
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控訴審の勝訴判決に関するお知らせ
2014年9月17日、知的財産高等裁判所は、レニショウパブリックリミテッドカンパニー外1社(以下「原
告」)のわが社に対する損害賠償請求に関する控訴※を棄却しました。原告は、2010年11月16日に、東京
地方裁判所に訴状を提出し、2013年8月30日に原告の請求を棄却する判決が言い渡されておりました。
原告は一審判決を不服とし、知的財産高等裁判所に控訴していました。
※特許権侵害訴訟控訴事件(平成25年(ネ)第10090号)
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ナノフォトン社のメッセージ
R社との騒動の顛末
ナノフォトンの創業者・河田聡の科学者としてのアイデンティティーは、分光学と光学とを繋いだこと、
そしてそこにナノ科学を生み出してきたところにある。光学と分光学はともに「光」を扱う科学でありなが
ら、全く別のコミュニティーを形成してきた。学会で言うと「光学」は応物学会(その中に光学会がある)
が中心であり、「分光学」は日本分光学会が中心である。産業で言うなら、「光学」はニコン(元の社名は
まさに日本光学)、キヤノン、ミノルタ(今はコニカミノルタ)などがあり、一方「分光学」では島津、堀
場、日立ハイテク、日本分光などが活躍している。海外も同様であり、ツアイス、ライカなどの光学メーカー
に対して、パーキンエルマーなどの分光メーカーが著名である。
二つの学問体系の違いを河田は、「光学」は反射、屈折、透過、回折などフォトンの運動量を扱う科学で
あり、それは「運動量保存則」に支配されると言う。一方「分光学」はフォトンが物質と相互作用すること
によって生まれる吸収、散乱、蛍光などを扱う。「エネルギー保存則」に支配される科学である。分析化学
に近い。
河田のアイデンティティーはこの二つの分野をマイクロ・ナノスケールにおいて融合させた点にあり、そ
れを彼は「フォトニクス」だと定義する。80年代初めから、蛍光分光顕微鏡や赤外顕微鏡など分光学と光
学が融合した論文を数多く著している。フーリエ分光法や分散型分光法と光学顕微鏡や走査型顕微鏡との組
み合わせを議論し、「画像分光法」(分光研究1989年)「イメージングスペクトロスコピー」(光学、
1989年)という用語を定義している。
また線形・非線形数理学を駆使して、スペクトルと画像の回復法(超解像や位相回復、未知成分の推定な
ど)を多く提言している。主成分分析や自己回帰モデル、最大エントロピー法などを分光画像法に組み合わ
せた論文を多数出版した。また、80-90年代において、機械的走査の要らないフーリエ変換分光器や、アキ
シコンによるベッセルビームを用いた超深度レーザー走査顕微鏡や超深度加工法を発明している。スリット
コンフォーカル顕微鏡の光学系や結像特性なども、いち早く発表している。1992年には表面プラズモンセ
ンサと近接場分光学研究の集大成としてのTERS顕微鏡を発明し特許化し、1994年に世界で最初の論文が発
表されている。
これらの経験を元に、レーザー走査顕微鏡の開発製造企業の開発部長であった大出孝博氏と共に2003年
にナノフォトン社を創業した。大阪大学が教授の兼業兼職の規制を緩和して直ちのことであった。こうして
高速イメージングのRAMAN-11(いまはRAMANtouchに進化)や、その広視野バージョンのRAMANviewが生
まれた。
今でこそ「ラマン顕微鏡」という言葉も世に認知されてきたが、ナノフォトン社の登場までには「顕微ラ
マン装置」と呼ばれるラマン分光器に光学顕微鏡を追加しただけの微小領域測定のラマン分光器しか無かっ
た。しかし非軸光学系中心の分散型分光器と光軸光学系が中心のレーザー顕微鏡の安易な組み合わせは、ザ
イデルの5収差から逃れられない。収差が空間分解能とスペクトル分解能を対立させる。そこで各所に工夫
された発想の異なる光学設計、分光設計が必要である。
「ナノフォトン」の会社設立理念は、これまでにない全く新しい分析装置を社会に提供することにある。
応用物理学科教授を兼務する河田の存在は、これを可能とする。研究大学では、教授は最先端の科学を開拓
することが求められている。不可能を可能とすることが科学者の使命である。そしてその成果を技術移転す
るのが、大学発企業の役割である。
これまで存在しなかった新しい原理、新しい発想の製品は当初は使いこなすことが難しく、顧客に理解を
得られるのに時間がかかる。しかしこのプロセスを経なければ、新しい原理の製品は生まれない。WalkmanもiPhoneもDysonもiRobotも、市場の開拓に苦労をした。そしてそれが成功すると、後追い真似商品に
苦労する。後追いしながら、特許戦争を仕掛ける企業すらある。
ナノフォトン社も大企業によって特許裁判訴訟を受け、長く苦しめられた。地裁でナノフォトンが勝訴し
た後も、相手企業は高裁に控訴した。ナノフォトンは「裁判で争うのではなく顧客に新商品を提供すること
によって競いましょう」と主張したが、理解を得ることはできなかった。
2014年9月17日、私たちは高裁で再び勝訴した。とはいえ長年にわたる裁判で多額の裁判費用と長期の技
術者たちの時間的ロス、そして精神的負担を被った。訴えられているという事実だけで失注すらした。盛田
昭夫氏は1986年の「Made in Japan」ですでに、海外企業の裁判ゲームについて手厳しく批判している。
ナノフォトン社は、相手の体力を消耗させて勝つのではなく、顧客のためにより良い製品をより多く提供す
ることが製造業の本来の競争であると考えている。
お問い合わせ先: ナノフォトン株式会社 広報担当 TEL: 06-6878-9911 Email: info@nanophoton.jp