2003 WINTER vol.11 Multimedia Quarterly トップ・ストーリー IPv6はどこまで進展しているか 電磁波と生体環境 世界各国IT事情 世界各国 事情 シンガポール 2003 WINTER vol.11 テクノ・フォーラム 理事長 谷 公士 新年ごあいさつ 2003年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。 旧年中は、当財団の活動に対しまして、格別のご支援ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。 昨年は、本格的なブロードバンド時代が到来し、コンテンツ流通の活発化など、情報通信の高 度化に向けた取り組みが積極的に展開され、多方面でIT社会の実現に向けた動きがございました。 当財団といたしましても、これまでに、関西文化学術研究都市における新世代通信網パイロット 事業やインターネットを用いた電子マネー実験などを行い、先端技術を社会に橋渡しするための 事業を展開して参りましたが、昨年からブロードバンドコンテンツの流通促進施策や政府が推進 している「e-Japan戦略」の目標実現に向けた各種支援施策などに取り組み始めました。 当財団では、マルチメディアが真に我々の生活の向上に直接役立つものとなるよう、今後とも 微力を尽くして参りたいと念願しております。 インターネットをはじめとした情報技術の急速な普及は、ビジネスの世界ばかりでなく、社会 全体に、まさに革命とも言うべき変化をもたらしていますが、情報通信技術を使いこなすには、セ キュリティの問題など、まだまだ多くの課題があります。直接的なビジネスの道具としてだけで なく、生活の道具としてもIT を使いこなしていくためにはどうしたらよいか、その解決に向け、 本年もまたEジャパン協議会をはじめ関連各協議会・研究会と連携し、高度情報通信社会の早期 実現に向け、社会的・制度的・技術的な課題について検討して参りたいと考えております。 また放送コンテンツの2次利用に関する著作権クリアランスシステムの実証実験、教育用コン テンツの流通に関する実証実験、更に「e-Japan戦略」の目標実現に向けた各種支援施策など、高 度情報通信社会の構築およびその発展に向けた施策についても引き続き尽力して参りたいと考え ておりますので、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。 2003 WINTER vol.11 C O N T E N T S 6 3 6 8 16 20 トップ・ストーリー IPv6はどこまで進展しているか テクノ・フォーラム 電磁波と生体環境 東京都立大学大学院工学研究科教授 多氣昌生 表紙の言葉 国宝「風俗図」(彦根屏風部分)は、 FMMC TOPICS 江戸初期の寛永年間(1624∼ TeleManagement World Asia−Pacific 平成14年eビジネス異業種交流会 EJFシンポジウム2002 1644年)に狩野派の流れをくむ 町絵師によって描かれたと推定 されている。舞台となったのは、 京都六条三筋町の遊里で、ここ での庶民の遊びが描かれている。 16 Top Interview 着物の柄までディテールにこっ 新しいソリューション・ビジネスユースを創出する Compaq Tablet PC “TC1000”の優位性を探る た写実は、絵師の技量の確かさ 日本ヒューレット・パッカード株式会社 パーソナルシステムズ事業統括 モバイルビジネス本部 本部長 挽野 元氏 インタビュアー 伊藤聡子 をうかがわせる。そしてその技 量を持った絵師の興味は、一人 ひとりの人間を描き出すことに 向かい、やがて美人画、浮世絵 へとつながっていく。表現の可 20 21 View Point 能性を追求する欲求は、江戸時 メディア中のメディアは人間の知恵と創造力 代でもマルチメディア時代の今 作家、経営評論家 江坂 彰さん 日でも変わらないのである。 (彦根市所有、彦根城博物館保管) 世界各国IT事情 シンガポール 行政の動き 22 「国際競争力回復のための企業のIT化戦略研究会」 報告書の概要について 財団法人マルチメディア振興センターではインターネット等のマルチメディア通信に対するネットワーク及び その利用に関する調査研究、技術開発、実用実験、情報の収集及び提供並びに普及啓発等の事業を行っております。 2 MultiMedia Quarterly T O P S T O R Y IPv6はどこまで進展しているか いまや全世界で6億人以上が利用するようにな ったインターネット。日本でも5,000万人以上が利 用しており、2人に1人が利用する時代となった。 なかでも増大しているのがADSLをはじめとするブ ロードバンド・ユーザーで、すでに500万人以上に 達している。こうした高速、大容量化とともにIP 電話など新たなアプリケーションも登場し、さら に次世代インターネットに向けた動きも活発にな ってきた。この次世代インターネットを実現する 上でキーテクノロジーとなるのが、IPv6(アイ・ ピー・ブイ・シックス)である。企業向け実験サ ービスに続いて、個人向けサービスも開始される など注目を集めているIPv6について、その概要や 最新のサービスなどを紹介する。 次世代インターネット・プロトコルで アドレス不足を解消 単純計算でも不足するのに、本格的なブロードバンド 時代を迎えると、インターネットにはパソコンだけでな くテレビやAV機器、ゲーム機、電話機などのほか、エア IPv6(Internet Protocol version 6)とは、その名称が示す コンや電子レンジ、冷蔵庫などの家電製品、さらには自 とおり、インターネットで使用するプロトコル(通信手 動車や自動販売機などまでが接続され、新たなインター 段)の新バージョンのことだ。現在使用されているイン ネット・アプリケーションが続々と登場してくると言わ ターネット・プロトコルはIPv4(アイ・ピー・ブイ・フォ れている。 ー)と呼ばれているが、これに続く次世代インターネッ ト・プロトコルがIPv6なのである。 ちなみにIPv5は次世代用ではなく別の目的で開発された そこで、IPアドレスの不足問題を解消すべく開発された のが、次世代インターネット・プロトコルのIPv6なのであ る。 プロトコルだったので、v4の次期バージョンがv6になった アドレス空間については、IPv6では128ビットで構成す という事情があるが、それはともかく、次世代プロトコ ることになった。これにより、IPアドレスの長さはIPv4に ルに関する研究が始まったのは、インターネットが本格 比べて4倍となり、表記は「106f:23ed:45cb:789a:bc01:d234: 的に普及し出す以前の1990年代初めのことだ。これはIPア e567:fa89」のようになる。 ドレスが将来的に足りなくなることが予想されたからで そして、IPアドレスの数はIPv4に比べ、さらに4乗した かん ある。 IPアドレスとは、インターネットをはじめとする 2の128乗個(約3.4×10の38乗で、340澗)となるが、 「澗」 には、まったくなじみがなく、想像もできない数である。 TCP/IPネットワーク上の各コンピュータに割り当てられ つまりIPv6では、無尽蔵と言えるほど天文学的な数のIPア る住所表示のようなもので、現行のIPv4では32ビットの構 ドレスが使えるようになるわけだ。 成で、 「192.168.136.102」のように表記されている。 このIPアドレスの数がIPv4では、は約43億個(256× 256×256×256)となるが、これに対して全世界の人口は 次世代インターネットに不可欠な さまざまな機能を装備 約60億人である。単純に考えても、将来的に全世界の アドレス空間が天文学的に膨大となれば、世界中の 人々が1個ずつインターネットのIPアドレスを使うように 人々に使い切れないほどの数のIPアドレスを配れるが、そ なるとすると、IPアドレスが不足することは明らかだ。 れだけではない。IPv6では、それ以外にもさまざまな機能 2003 Winter 3 れる仕組みとなっている。したがって、インターネット が追加されている。 例えば、ブロードバンドの普及とともにインターネッ ト・セキュリティが重要となっているが、現行のIPv4では 基本的にはユーザー側でセキュリティ対策を施さなけれ ばならない。とはいえ、誰でもがセキュリティ技術に詳 しいわけではないので、十分な対策が施されていない現 状がある。これでは、世界中の人々の利用を想定したと き、インターネットはセキュリティの不安だらけという に接続するだけでIPアドレスが設定されるので、プラグア ンドプレイが実現できるわけだ。 このように、IPv6は次世代のインターネットに不可欠な さまざまな機能を装備しているのである。 IPv6で真の双方向インターネットを 実現する では、IPv6により何が実現できるのか。その答えは、簡 事態になりかねない。 そこでIPv6では、ユーザー側でセキュリティを意識しな 単に言えば完全な双方向インターネットになるというこ くても適切な対策がとれる仕組みを取り入れた。具体的に とだ。IPv4では、前述したように一般ユーザーのIPアドレ は、IPv4ではオプションだったIPsec(TCP/IPの認証・暗 スは一定ではないので、パソコンからWebサーバにアク 号化機能)が標準装備となり、通信を行うコンピュータ間 セスするといった利用がほとんどで、基本的にはインタ で認証と機密性を保持する機能が付加されているのだ。 ーネット側からパソコンへのアクセスは想定していない。 さらに、家電製品などの接続を考慮してプラグアンド これに対してIPv6では、すべての機器が一定のIPアドレ プレイ(コンピュータに拡張カードを追加する際、ユー スを持つので、インターネットに向かってアクセスする ザが手動で設定作業をしなくても、OSが自動的にカード だけでなく、インターネットからのアクセスも想定した を検出して最適な設定を行うシステム)の機能を搭載し 双方向のスタイルとなる。例えば、外出先からインター たほか、EC(電子商取引)などを想定した品質管理仕様 ネット経由でリモコンを操作してビデオの録画をしたり、 とか、映像配信のためのリアルタイム性確保やマルチキ エアコンの温度調節をしたりすることもできるし、逆に ャスト(ネットワーク内で、複数の相手を指定して同じ 室内の状況をインターネット経由で外出先へ通知するこ データを送信すること)などの機能も標準実装している。 ともできるのだ。 このうち、プラグアンドプレイ機能について簡単に説 ただし、これらを実現するにはIPv6対応の情報家電製品 明すると、現行のIPv4ではインターネット上でコンピュー などが登場してこなければならない。このため、IPv6の普 タを使用できるようにするにはIPアドレスの設定をしなけ 及促進団体であるIPv6普及・高度化推進協議会では、2001 ればならず、プラグアンドプレイは実現できていない。 年12月から情報家電向けのIPv6実証実験を行ってきたほ しかも、設定するIPアドレスは、JPNIC(日本ネットワー か、その成果を体験できるショールームを東京と大阪に クインフォメーションセンター)などIPアドレスの運用管 開設している。ショールームで体験できるのは、IP電話機、 理を行う各国のNICから付与される形なので、事前の手続 IPv6デジカメシステム、IPテレビシステム、冷蔵庫、電子 きが必要となる。 レンジ、情報家電コントローラ、ホームゲートウェイ、 これに対してIPv6では、パソコンや家電製品などの機器 がインターネットに接続すると、ルータから設定に必要 モバイルIPv6、音声チャットノード、Webカメラシステム、 IPv6対応ゲーム機などである。 な情報が機器に伝えられ、その情報と機器が持っている なかでも注目されるのがモバイルIPv6だ。IPv4の無線 IDを組み合わせることで、自動的にIPアドレスが生成さ LANは接続する機器が移動して基地局が変わると、IPアド レスも変わってしまう。これでは真の双方向は実現でき 図1 IPv4のアドレス空間とIPv6のアドレス空間 32bit ないので、基地局が切り替わっても、アプリケーション が切断されずに使い続けられる仕組みが必要だ。そこで、 モバイルIPv6では、機器側に固定の「ホームアドレス」と、 192 168 136 102 基地局ごとに変化する「出力アドレス」を組み合わせる 32 IPv4のアドレス数=2 =約43億個 64bit 128bit ことで、移動しながらアプリケーションを使い続けられ る無線LANを実現している。実証実験では、小田急と京 106f 23ed 45cd 789a 128 bc01 d234 IPv6のアドレス数=2 =約340澗個 4 MultiMedia Quarterly e567 fa89 浜急行の電車内などでサービス実験を行った。 また、IP電話機も有力なIPv6アプリケーションである。 T O P 図2 プラグアンドプレイを実現 S T O R Y 図3 IPv6で実現できる双方向インターネット 情報共有 ①ネットワークに接続 インタフェースIDを 内蔵した 情報家電など ②ネットワークIDを通知 ルータ PC イ ン タ ー ネ ッ ト モバイル端末 エアコン ③ネットワークID+インタフェースIDで 128bitのIPアドレスを生成 AV機器 IP電話は現行のインターネットでもすでに実用化されてい 各種センサ るが、本格普及するには課題も多い。その1つが電話番 イ ン タ ー ネ ッ ト 遠隔操作 リモート コントローラ AV機器 データ交換 監視・通知 携帯電話 号の付与問題だ。これまでインターネット上で利用するIP 電話には電話番号がなかった。このため、インターネッ カギとなっている。 ト上のIP電話機(パソコン)から一般電話を呼び出すこと このほか、Webカメラシステムでは遠隔地に設置され はできても、一般電話からインターネット上のIP電話機 たカメラを情報家電コントローラによりリモコン操作し (パソコン)を呼び出すことはできなかった。そこで、IP て映像が見える。冷蔵庫にはタッチパネルが付いており、 電話にも「050」で始まる電話番号を付与することが決ま Webや静止画、動画の閲覧などができる。また、情報家 ったが、実際に利用するとなると、まだまだ問題が山積 電コントローラを使えば、遠隔地の携帯電話やパソコン みなのだ。 からビデオの予約などが行える。このほか、IPv6対応ゲー 例えばNAT(1つのグローバルなIPアドレスを複数のコ ム機では、仮想空間で自分の分身と会話したりできる。 ンピュータで共有する技術)である。現在、ブロードバ NTTコミュニケーションズの 個人向けIPv6サービス ンドが急速に普及し、一般家庭でも複数台のパソコンが インターネットに常時接続されるようになったが、それ はルータのNAT機能を使うことで、インターネット上の IPv6のネットワークは、国内では2000年9月から企業向 グローバルIPアドレスとLAN上のプライベートIPアドレス けサービスが開始されているが、個人向けのサービスも を変換することにより実現されている。つまり、複数台 NTTコミュニケーションズが、世界に先駆け2002年8月か のパソコンが接続されているといっても、割り当てられ ら開始しており、いよいよIPv6が身近なものとなりつつあ ているグローバルIPアドレスは1つだけである。この場合、 る。 グローバルIPに対応させる形で電話番号を付与しても、 NTTコミュニケーションズが開始したのはIPv6とIPv4が NATを介してはIP電話機を呼び出すことはできないのだ。 同時に使える「OCN ADSLサービス IPv6デュアル(A) 」 しかも、ブロードバンドの場合、多くは動的IPアドレス で、当面は試験サービスとして首都圏のみの提供だが、 のため、決まったIPアドレスが割り当てられているわけで 順次エリア拡大していく予定だ。これにより同社では、 はない。IP電話機に電話番号を付与するには、固定IPアド 外出先からユーザーのネットワーク内の個々の機器に直 レスとする必要があるが、そうなると、そのIPアドレスは 接アクセスできる「パーソナルリモートアクセス(電話 IP電話機専用ということになり、Webなど他のアプリケー 回線などを通じて、ネットワークやコンピュータに外か ションを使うには、別のIPアドレスが必要となってくる。 ら接続すること) 」など新たな利用シーンの開発を、ユー 企業などがIP電話機を本格的に導入すると、IPアドレスが ザやパートナー企業とともに開拓していくことになる。 一気に消費されてしまうのである。 IPv6普及・高度化推進協議会の実証実験は企業サイドか しかし、IPv6ならIPアドレスは無尽蔵に使えるのでIP電 らの実験だったが、個人向けサービスが開始されたこと 話機1台ずつにIPアドレスを付与できるし、同時に他のア により、ユーザー側からの開発も進められるので、こう プリケーションで別のIPアドレスを使うことも可能にな した相乗効果により、今後、さらに使い勝手のいいIPv6ア る。こうした意味で、IP電話機が本格普及するにはIPv6が プリケーションが登場してくるものと期待されている。 2003 Winter 5 テクノ・フォーラム 電磁波と生体環境 新しい科学技術が急激に日常生活に浸透すると き、それに対して警戒心が芽生える。携帯電話の電 磁波に対する市民の健康不安は、その一例かもしれ ない。しかし電波による健康不安の問題は、1950年 代以来幾度となく繰り返し提起されてきた。ここで はその歴史を踏まえつつ、問題の現状と今後の課題 について述べたい。 東京都立大学大学院工学研究科教授 多氣 昌生 防護指針と国際電磁界プロジェクト 1950年代に、米国陸海空軍によって電波の生体作用に関 される状況になったことから、わずかなリスクであって も見過ごすことができないと考えられることである。 する多くの研究が行われた。第2次大戦中から使われる 1996年にスタートした世界保健機関(WHO)による国 ようになった大電力の無線機器からの電波による人体の 際電磁界プロジェクト(http://www.who.int/peh-emf/em/) 安全性を確立する必要があったためである。その結果、 は、各国で行われる研究の優先順位を調整、研究の品質 高周波電磁界の支配的な生体作用は人体に吸収される電 管理を行うとともに、信頼できるデータに基づき科学的 力によって生じる熱の作用であることが明らかになった。 なリスク評価を行うプロジェクトである。現在、わが国 この結果、人体への高周波の入射電力密度を10mW/cm2 を含む54カ国が参加している。商用電力周波数を含む低 以下に制限するという米国規格協会による防護指針(1966 周波電磁界と、携帯電話などの高周波電磁界の健康リス 年)が定められた。 クの再評価を目的としている。当初は2000年に完了の予定 その後、入射する電磁波の偏波面や波長によって人体や 動物での吸収電力が変化することなどの新たな知識が加わ であったが、完了は早くても2006年となる見通しである。 わが国でも、国際電磁界プロジェクトと連携しながら、 り、防護指針は精密化されたが、基本となる考え方は今日 高周波電磁界の生体影響についてのさまざまな研究が総務 に至るまで変わっていない。すなわち、多くの動物実験の 省の生体電磁環境研究推進委員会のもとで行われている。 結果を観察したときに、曝露の条件が異なっても、単位体 健康影響に対する評価 重あたりの吸収電力の全身平均値が数Wを超えると、健康 に悪影響となりそうな何らかの身体上の変化が見られ、そ 高周波電磁界の健康への影響に対する国際電磁界プロ れ以下では健康に悪影響を及ぼす可能性のある変化は観察 ジェクトによるリスク評価は2006年ころを待たねばならな されないという認識である。この結果に基づき、人体組織 い。しかし、これまでにも一部の人々の健康不安に応え で吸収される単位質量当たりの電力(SAR)の全身平均値 るために、いくつかの専門家会議による評価が報告され を、変化の見られる閾値の約10分の1である0.4W/kg以下 ている。英国では2000年5月に衛生大臣の諮問に対する答 とすることを基礎としている。一般の公衆に対しては、さ 申として、W. Stewart卿を座長とする専門家会議が携帯電 らにその5分の1を指針値とすることで安全に余裕を持た 話の安全性についての報告をまとめた。※1 せている。わが国の防護指針を含め、現在のほとんどの防 護指針はこの考え方にしたがっている。なお、携帯電話機 フランスでも保健省の委嘱による専門家委員会が2001年 1月に同様の報告をまとめた。※2 のように人体の近くで使用する機器の場合はSARの全身平 同じころ、日本でも総務省の組織した生体電磁環境研 均値ではなく、頭部などの局所のSARも制限する。局所 究推進委員会(委員長:上野照剛東大医学部教授)が中間 SARの制限は,わが国では任意の10gの組織での平均値が 報告を示した。※3 10W/kg以下であり,一般の公衆に対してはさらにその5 分の1の2W/kg以下である。 防護指針が守られるように規制を行う国が増えている。 これらの報告の骨子は共通で、携帯電話による電磁波 の曝露が健康に悪影響を及ぼすことを示す証拠はない、 としている。しかし、悪影響がありえないことを証明す わが国でも固定無線局から放射される電波の規制が2000年 ることは不可能なので、さらに研究が必要である、とい 10月から、そして携帯電話機による頭部でのSARの規制が う但し書きが付帯する。 2002年6月からスタートした。 大切なことは、前段の結論が、単にこれまでの見解を 防護指針に基づく生体電磁環境の管理がなされる一方 で、防護指針の根拠となる生体作用の研究を見直すため のプロジェクトが行われている。見直しの理由は、これ までに確立された電磁界の生体影響の知識と異なる問題 提起が多数報告され、市民に不安を与えていること、携 帯電話の普及により多くの人々が日常的に電磁界に曝露 6 MultiMedia Quarterly 図1 電磁界ドシメトリーの一例: ループアンテナを用いてマイ クロ波を照射されたラットの 吸収電力の分布(数値解析) TECHNO FORUM Air Ventilation Duct SD Rat in a Tube Stopper 図2 ラットの頭部への電磁波曝露装置 繰り返しているのではなく、最近の研究成果を踏まえて ●グループ1 :発がん性がある (carcinogenic to humans) ●グループ2A :多分発がん性がある (probably carcinogenic to humans) ●グループ2B :発がん性があるかもしれない (possibly carcinogenic to humans) ●グループ3 :発がん性の分類ができない (unclassifiable as to carcinogenisity) ●グループ4 :多分発がん性がない (probably not carcinogenic to humans) 表 IARCによるヒトに対する発がん性の分類 いる点である。最近の研究は、実験動物および試料がど のような条件で電磁界にさらされているかを定量的に明 さらに生物学実験はこのように弱い磁界が健康に影響 らかにした上で行われるようになった。これには、電磁 を及ぼすことを示していない。また、日常環境レベルの 界の数値解析や生体模擬媒質中での電磁界測定技術を用 超低周波磁界が外部から人体の組織内に作用する強さは、 いた「電磁界ドシメトリー」 (図1参照)と呼ばれる技術 生体内の神経や筋の電気的活動にともなう内因性の電磁 分野の発展が寄与している。このような実験条件の改善 界に比べてはるかに弱い。これらを総合的に判断すれば、 の結果、影響を示唆していた実験結果に再現性が見られ 極端に不安視すべきでない。 ないという例が多く見つかっている。このことを踏まえ ての結論である。 これからの課題 例えば、発がんの可能性に結びつく遺伝的影響につい 超低周波磁界に関するIARCの分類を契機として、電磁 ての研究では,マイクロ波を照射された実験動物の脳細 界全般に対する健康不安が高まっている。しかし、悪影 胞でDNA鎖の切断が増加するという報告に対して、数多 響を示す根拠はほとんどない。特に、高周波電磁界に対 くの追試実験が行われたが1つとして再現しなかった する危険論の根拠は非常に曖昧である。高周波で問題に (図2参照) 。また、DNAへの作用の痕跡を示す小核の増加 されがちな、携帯電話基地局からの電波に関しては根拠 の研究報告についても、今までの追試実験の結果はほぼ がさらに乏しい。立入りが制限されるアンテナの間近を 否定的である。動物実験や細胞実験では,仮に変化があ 除き、非常に電波が弱いからである。このため、基地局 ってもその変化が人体の健康影響としても意味を持つか 周辺の住民に対する疫学研究を立案しても、曝露の評価 どうかの判断は難しい。しかしそれ以前に、報告されて そのものが成り立たないので意味のある結果が得られな いる現象の存在自体が確かでない事例が多いのである。 いだろうといわれている。 国際電磁界プロジェクトでは高周波電磁界の健康影響 防護指針は科学的な根拠を積み上げて作られており、 より先行して、静電磁界および超低周波電磁界の健康リ 規制によって遵守されている。一方、電磁界に対する不 スクの評価が行われている。WHOの下部機関である国際 安は、未確立の研究からの示唆か、憶測によるものであ がん研究機関(IARC)は、2001年にこれらの電磁界によ る。これらを区別しなければならない。絶対に安全であ るヒトに対する発がん性の評価をおこなった。IARCの評 るということはできないにしても、ほかのさまざまな要 価ではヒトに対する発がん性に関する証拠の強さに応じ 因とリスクの大きさを相対比較して評価する必要がある。 て、作用因子をグループ1からグループ4までの5段階 といっても、単に防護指針を満たしていればよい、と (表)に分類する。IARCは静電界、静磁界、超低周波電界 いう考えは成り立たなくなっている。不要な電磁界は最 をグループ3に、超低周波磁界をグループ2Bに分類した。 小限にすることが求められている。このことは、安全か、 その根拠は、疫学研究が小児白血病の発症と1日平均で 危険かという問題ではなく、成熟した技術に求められる 0.4μT以上の超低周波磁界曝露の間に一貫した関連性を示 クリーンさへの要求として受け止める必要がある。電磁 していると認めたことによる。 界利用技術と人間生活の共存は、こうした志向のもとで 超低周波磁界の2Bという分類は、さまざまに受け止め られている。一部では、0.4μT以上の磁界を規制すべきと いう声も聞かれる。しかし、2Bというグループにはコー ヒーなども含まれており、これまでの例では規制の対象 となることはない。因果関係が存在する可能性は否定で きないが、疫学研究で避けることの困難な調査対象者を 選ぶ際のバイアス(調査に参加するかどうかを判断する 基準が患者と対象者で異なる)や、何らかの別の要因が 交絡した結果であると解釈したほうが自然であると考え る研究者も多い。 さらに成熟したものになることが期待される。 ※1:http://www.iegmp.org.uk/report/text.htm ※2:http://www.sante.gouv.fr/htm/dossiers/telephon_mobil/conclus_uk.htm ※3:http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/sogo_tsusin/010130_2.html P R O F I L E 多氣昌生 昭和56年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修 了し、東京都立大学工学部電気工学科助手。現在、東京都立大 学大学院工学研究科電気工学専攻教授。平成7年より国際非電離 放射線防護委員会(ICNIRP)委員。平成12年より同第三専門委 員会(物理・工学)委員長。IEC TC106「人体曝露に関する電界, 磁界,電磁界の評価方法」国内委員会委員長などを務める。 2003 Winter 7 TeleManagement World Asia−Pacific 毎年、「OSSセミナ」として継続 し て きたこのセミナは、今年は 「TeleManagement World A-P」と題名 を一新し、8月29日と30日の2日間に わたり、東京・品川のコクヨホールで TeleManagement Forum A-P委員会主 催、 (財)マルチメディア振興センター、 IT基盤連絡会議アプリケーション部会、 TeleManagement Forum、TMF-JMT共 催、NTTグループ、日立、NEC各社の ご後援で開催された。このセミナは情 報通信システムの効率的な運用管理を 実現するためのオペレーション・サポ ート・システム/ビジネス・サポー ト・システム(OSS/BSS)に焦点を当 て、特に日本国内の専門家への情報提 供・知識共有を目的としている。本年 はセミナ講演内容の充実を図ると共に、 ベンダ24社による関連製品も展示され た。1日目には、基調講演、ビジネス セッション、パネル討論会が、2日目 には、TM Forumの紹介のほか、5つ の技術セッションが行われ、OSS/BSS への期待や市場の動向、NGOSSの実現、 IPネットワークの管理など、興味深い 発表が続いた。合計442名のご参加を 頂き、大盛況の内に終了した。 講演の発表資料は http://www.fmmc.or.jp/tmwap/downloa d/index.html をご覧下さい。 8月29日(木) 基調講演1 TM Forum 会長 Keith Willetts氏 過去10年間、ICT(情報通信産業)市 場は下降することなく成長してきまし た。しかし、その中で多くの企業が倒 産していったのも事実であり、今後生 き残るためには、コストを下げ、新規 サービスで収益を上げていかなければ なりません。しかし、現在の市場動向 を分析すると、運用コスト削減が課題 である一方、テレコム業界は一般の製 造業に比べて効率化(コスト削減と品 質向上)で10年遅れていると見ていま す。この理由は、テレコム業界は世界 的に国有会社が多かったためサービス 8 MultiMedia Quarterly 主体で考え、コストは考えてこなかっ たためと判断しています。欧米では、 OSSソフトを事業者が社内で開発するの ではなく、市販のソフトを買うことが、 最近のトレンドです。また、世界中に 約300社のOSSベンダが存在しています が、OSS/BSS実現コストの50%はインテ グレーションに費やされています。 TMFでは、共通のビジネスプロセスな どに取り組むためNGOSS活動を発足し、 業界が主導権をとるプログラムを通じ て、コスト削減等さまざまなメリット を享受していきたいと考えています。 基調講演2 NTT ネットワークサービスシ ステム研究所 須田 宏一氏 ■TeleManagement分野における 研究課題と今後の方向 OSSに影響を与えるNWサービス技 術は、オープンな分散ネットワークコ ンピューティングモデルへと進化して います。特に、これを補完するセキュ リティ、サービス間連携技術の進化が 加速しています。さらには、NGOSS に代表されるOSSアーキテクチャの進 化やXML、JAVA等のAPI、I/Fの標準 化進展、ネットワークサービス実行基 盤とマネージメント基盤の境界線の消 失・融合が考えられます。新世代マネ ージメントサービスはバリューチェー ンからバリューコーディネーションへ と基盤を移し、EVCP(Enterprise Value Coordinating Platform)サービスとして 発展するのではないでしょうか。 ビジネスセッション1 TM Forum 副会長 Tom Forsyth氏 ■欧米キャリアの OSS/BSSへの期待 昨今、消費者は新しいサービスでの セキュリティ上の問題について、よく 話し合っています。つまり、3Gでは、 GMS以上にカバレッジ、ネットワーク 品質が重要視されるということです。 今後のサービス管理では、統合的な 解決法、迅速なデリバリー、素早く効 果的な決断、オーナーシップコストの 抑制がキーになってくるのではないで しょうか。 ビジネスセッション2 NTT西日本 サービス開発部 マルチメディア アクセスサービス部門 森 泰夫氏 ■NTT西日本の ブロードバンド・サービス戦略 日本のブロードバンドアクセスサー ビス加入世帯普及率は、H14年度末には 19.5%まで増加し、米国を追い抜くと予 測されています。料金水準でも、米 国・韓国に比べ、低廉なのが特徴です。 NTT西日本では、フレッツ・ADSL、 B・フレッツ、ならびにフレッツ・スポ ット、フレッツ・スクウェア、フレッ ツ・コミュニケーションなどを展開。 企業通信向けとして、ギガデータリン ク、メガデータネッツ、ワイドLANプ ラス、アーバンイーサなどを提供し、 アクセスメニューの多様化とさらなる 広域化への対応を目指しています。 ビジネスセッション3 NEC ソリューション開発事 業企画部 TM Forum副会長 多田 壽氏 ■通信市場とOSS/BSS市場の動向 近年、通信市場では、規制緩和や新 規参入の増加、競争激化、合従連衡な どが奔流しているのが現状。そんな中、 従来のネットワーク管理業務は、ネッ トワークの障害等へ速やかに対応し正 常な状態を保持することにありました が、新しいネットワークの管理業務は、 QoSを最良の状況に保つことにあると考 えられます。そのためには、通信機器、 通信路、サービス要素を最良の状況に 保ち、OSSを自動化して複雑化した通信 ネットワークを速やかに顧客からの要 求に合わせることがポイントとなって くるでしょう。更に、世界的にも通信 網のライフサイクルを通じた保有コス トに注目が集まっており、キャリア内 での通信網の保有コストを下げる施策 の一つとしてOSS/BSSの充実が進めら れています。この実現のためには、他 の業種で実績のある各種パッケージソ フトウェアの導入と、相互接続のため の標準化が必須となっています。最後 に、今後のOSS/BSS実現には、市場・ 技術・標準化の三位一体となった取り 組みが求められます。 ■パネル討論会 司会:ガートナージャパン・丹羽 正邦氏 パネリスト:KDDI・高橋 昭彦氏 東京通信ネットワーク・星 英夫氏 日本テレコム・前川 貴夫氏 NTT西日本・森 泰夫氏 ■OSS/BSSへの期待 ガートナージャパン丹羽氏の司会進 行により、上記テーマでパネリスト各 社の状況ならびに新たな取組みについ て発表。会場との意見交換も行われま した。 OSS/BSSへの期待は、モジュール化、 汎用品化、インタフェース標準化、開 発スピード、低価格、可用性、柔軟性、 サービス毎の適合性、エンドユーザコ ンピューティング、ソフト部品化、シ ステム間連携等の項目があげられまし た。また、どの様な点が最も問題かと いう質問に対しては、人間系は変更が 困難、ベンダ間で共通インタフェース がない、使うときにはカスタマイズが 必要、時間との勝負との意見が出され ていました。最後に、経営者は OSS/BSSの重要性を理解しているかと の質問に対しては、トップダウンで必 要性は降りてくるがどこまで理解して いるかは疑問であり企画部門を中心に 情報入力に努めている、トップは企業 間統合を視野に入れている、トップは 理解しているが予算面では厳しいし、 レガシー統合の費用は高い、そんなに きれいにできるOSSはないのでトップと しても理解はしているがサービス優先 になるとの意見が出されていました。 最後に、OSS/BSSをより柔軟な構造に するべきであるとの共通の意見が引き 出されました。 8月30日(金) TM Forum紹介 NTTサービスインテグ レーション基盤研究所 TM Forum理事 TMF-JMTリーダー 森 隆彦氏 ます。最近では、ビジネスプロセスフ レームワークeTOMの承認やNGOSSの 詳細仕様検討チームの発足、NGOSSコ ンプライアンスに向けたテスティング 仕様の検討が本格化されたことが主な トピックス。アジア・パシフィック地 域への啓蒙、メンバ獲得に向け、各種 イベントの計画もしています。 技術セッション1 TM Forum 社長 Jim Warner氏 ■NGOSS(part1) NGOSSは、TMFに発信・管理されて いる、業界で合意したビジネスおよび システムソリューションの枠組みです。 企業側にとってのメリットは主に3点。 まず第一に、設計や展開での機敏性を 提供することにより、市場における重 大な要件や機会を見逃さずに済むこと。 2つめは、現在あるレガシー・アプリ ケーションのシステムを段階的に次世 代へと移行できること。そして、一番 重要なのが、運用コストの削減など財 政的な安定性を提供できることです。 パネル討論会の模様 OSSの開発から保守、運用までキャリ ア・ビジネスをフルサポート。競争激 化するキャリアに対して競争力を高め、 IPネットワークに対してもサービス・プ ラットフォームへの接続およびデータ の共用を図ることができ、今後、その 必要性が高まると考えています。 技術セッション4 日本テレコム 前川貴夫氏 技術セッション2 Intelliden John Strassner氏 ■NGOSS(part2) NGOSSについて、当面の問題は、まだ そのシステム自体を理解していない人が 多いこと、ベンダは採用しないだろうと 懸念されている人が多いことなどが上げ られます。TMFでは、カタリストプログ ラムを率いています。NGOSSの情報の基 本が、eTOM。また、環境が複雑になっ てきたことから、SID(共有情報データ) が作られました。このSIDも同様に、今 後は他の業界団体に受け入れていただく べく努力していきたいと思います。 技術セッション3 NTTコムウェア 鈴木裕巳氏 ■TM Forum活動概要 ■NGOSSの実現 TM Forumは、1988年、相互運用ので きる「情報通信システムネットワーク 管理」を達成するため、業界における 中核的役割を担い、国際標準、業界標 準の加速と実製品化を促進することを 目的に設立。世界の主要キャリア、ベ ンダからなる343社をメンバーとしてい 弊社では、TMN準拠の仕様策定から OSSのCOTSを使用したソリューション 開発へシフト。通信キャリアから情報 コミュニケーションSPへと移行し、EAI、 CORBAといった新技術の利用を試みて います。 中でも、OSSソリューションセットは、 ■SLA/QoS 現在、ネットワークは即時型小容量、 即時型大容量、蓄積型小容量、蓄積型 大容量の4つのサービスが基盤となり、 さまざまなサービス展開がされていま す。今後、カスタマが要求する起点か ら終点までのQoS条件を満足するには、 そのれぞれのプロバイダが同一基準の 性能目標を設定する(ITU-T勧告Y.1541) 、 プロバイダ内部の手順を整備する (TMFハンドブックGB917) 、プロバイダ 間の調整手順を整備する(ITU-T勧告M. QoS) 、この3つがキーポイントとなる でしょう。 技術セッション5 Cisco Anil Prasad氏 ■IPネットワーク管理 IP管理システムの課題は、デバイス層 の土台をきちんと作ること。また、技 術やネットワークがさまざまある中で 収れん・融合していくとなると、すべ てを統合的に管理していくという課題 が出てきます。そのためにも、多層型 のアーキテクチャーを新世代のプラ グ&プレイ・アーキテクチャー、すな わちTMFで現在開発中のものを使って いくことが、今後ますます重要になる でしょう。 2003 Winter 9 平成14年 eビジネス異業種交流会 第7回eビジネスサロン 「決済の課題とネット化ビジネス戦略? 「平成14年eビジネス異業種交流 会第7回eビジネス・サロン」が 9月10日、東京・麻布台の財団法 人マルチメディア振興センター会 議室で開催され、ビリングシステ ム㈱取締役チーフマーケティング オフィサーの加藤和吉氏が、上記 のテーマでゲストスピーチを行 い、電子決済の現状と課題につい て紹介。スピーチの概要は次のと おり。 講演 ビリングシステム㈱ 取締役 チーフマーケ ティングオフィサー 加藤和吉氏 ■電子決済の現状と課題 今、企業の経営環境は一段と厳し さを増し、規模の大小を問わず決済 処理に関する事務処理の効率向上が 強く求められています。企業がこの 改善を行うには金融機関や取引先企 業との密な情報交換が必要になりま す。 現在、銀行間のデータの交換基準 として全銀TCP/IP、全銀フォーマ ットが設定されていますが、銀行と 企業間で共通的に利用されるデータ の交換基準の設定がなく、多くの場 合は全銀手順が利用されています。 銀行間であれば、期間、振込人、振 込先、金額等が分かればよいのです が、取引先企業との間ではこれに金 額内訳、取引明細、商品情報、検収 条件、決済条件などの様々な情報が 必要となります。 自社で経理システムを構築してい るような大企業でも、取引銀行ごと 10 MultiMedia Quarterly 決済はインターネットで」 のインタフェースが取れなければ資 金移動の自動化ができません。また、 一つの銀行だけが優れたサービスを 提供できても、主要取引銀行に共通 の機能でなければ企業やグループの 合理化には繋がりません。決済情報 というインフラ機能にもかかわら ず、企業と金融機関との受渡し可能 な情報にギャップがあると同時に、 そのインタフェース基準がなく、個 別対応の現状です。 実際の経理の問題として、現在の 仕組みでは「伝票の手入力」 、 「入力 のチェック」 、 「手形発行の経費・手 間が膨大」 、 「入金が確認できても、 その明細が分からない」などといっ たことがあります。加えて営業から は、 「焦げ付き防止」 、 「集金業務の 簡略化」 、 「消し込みの効率化」など の問題を抱えています。これらをイ ンターネットの活用により解決して いく取組みが始まりました。 ■ビリングシステムの 決済支援サービス ビリングシステムでは、企業と企 業、あるいは企業と個人の間に立っ て、お金の情報とお金の流れをサポ ートするハブのような役割を行って います。 例えば、現行のCtoB(個人→企 業)決済ではすべてのECサイトが、 決済機関ごとに異なるプロトコルを 用意したり、金融機関ごとの個々の 管理画面を見ていく必要がありま す。ビリングシステムが提供するサ ービスでは、金融機関向けに複数の 標準的なインタフェースをご用意し ているので、企業やECサイトはビ リングシステムに接続するだけで、 多くの決済利用が可能です。また、 各金融機関の決済管理画面も統合さ れます。しかも低コストでスピーデ ィにサービスの導入が可能です。日 本航空、マネックス証券、松井証券、 ユニクロ様等にご利用いただいてお ります。 また、BtoB(企業→企業)決済 は、通常、月締め一括支払いのタイ ムラグを伴う信用取引となっており ます。弊社サービスをご利用いただ いている一部上場企業様では支払側 企業の合理化に留まらず、請求側企 業へ支払い予定情報、消し込みデー タ提供等の請求側業務の合理化にも つながる仕組みとしてご評価をいた だいております。 ■従来の現金集金の問題 日本の代金決済システムの中に は、物やサービスの対価としてその 場でお金をいただくという「現金集 金」が根強く残っています。その場 でお金を受け取ったあと、どのよう にそのお金を安全に預かり、迅速か つ確実に消し込みをするのかが問題 なのですが、現状ではそのような仕 組みができていません。 店舗でも、土休日の売り上げを小 さな金庫に現金で入れて、月曜日に 銀行に持っていくという、現金の取 扱いがあまりにも無防備な状況が散 見されます。 このようなリスクを避け、現金集 金の効率化を図る仕組みを昨年に開 発し、運用を開始しています。大手 PC保守、講師派遣会社様にご利用 いただいております。 ■今後にむけて ビリングシステムのスタンスは企 業と金融機関様の間に立って、サー ビスを容易に提供できる環境、便利 な仕組みをご提供していくことで す。既存取引の電子化やネット化を インターネットの活用により解決し ていくビジネスモデルとして、平成 13年度の流通システム大賞のインタ ーネット大賞(日刊工業新聞社)を 受賞しております。 今後はご参加の企業や関連組織の 皆様方と連携して、利用しやすい決 済の仕組みの基盤を早期に形成して いくことを目指しております。 URL:http://www.billingjapan.co.jp 第8回eビジネス・サロン 「ブロードバンド時代のHuman Communication Design―伝えるWebから、通じるWebへ―」 「平成14年eビジネス異業種交流 会第8回eビジネス・サロン」が 10月8日、東京・麻布台の財団法 人マルチメディア振興センター会 議室で開催され、イナゴ㈱代表取 締役社長、ロン・ディカールアン トニオ氏が、上記のテーマでゲス トスピーチを行い、ブロードバン ド時代のHuman Communication Designを紹介。スピーチの概要は 次のとおり。 講演 イナゴ㈱ 代表取締役社長 ロン・ ディカールアントニオ氏 ■人と企業をつないでいるのは 端末という現実 ブロードバンド時代が到来したこ とで、これまでのコンピュータとは 違い、例えばテレビやお店のように、 もっと楽に使用できるビジネスモデ ルを考えなければ、一般のユーザー を取りこんでいくことは難しいと思 います。そこで重要になるのが、ヒ ューマンコミュニケーションデザイ ンという考え方です。 今のマーケットトレンドを見る と、ビジネスでインターネットを使 用する割合が増えています。またイ ンターネットに拘わらず、顧客とビ ジネスをする際には、様々な機械が 顧客と企業との間に入ってくるのが 現状です。パソコンの他、カーナビ やモバイル、ATMなどもみんなそ うです。これまでのビジネスは、顧 客がお店に行き、直接店員と話すこ とで成立していましたが、今ではそ れらの多くはコンピュータを介して 行われます。そのような社会では、 企業はどうすればこうしたディバイ スを通して上手にビジネスができる のかを考える必要があるのです。 ■サポートコストが高い eビジネス eビジネスではこれまで、コンピ ュータを使用することでコストが安 くすみ、さらにマーケットが世界に 広がると思われてきました。つまり 売上げが上がり、逆にコストは下が るという考え方が主流でした。しか し、実際には売上げが低く、サポー トコストが高いという調査結果が出 ています。まだまだ利益が出にくい 体質にあるのです。その理由として、 インタフェースが分かりにくく、ま た不明な点があるときに、質問でき る人がいないため、結局、会社に電 話で問い合わせをする人が多いので す。eビジネスの普及に伴い、コー ルセンタービジネスが急速に伸びて いるのはこのためです。 ■対話型エンジンの ネットピープル え方がありますが、これはユーザー のニーズを事前に理解して、問題に なる前に解決するというものです。 今まではセルフサービスが多かった のですが、これからはフルサービス をオンラインやコンピュータで行う 必要があります。それを実現するの が、イナゴのネットピープルです。 これは対話型のエンジンなので、対 話をしながら、ユーザーのニーズを 理解することが可能です。顧客は知 りたいキーワードを日本語で入力 し、その会話をロギングして裏で分 析できる仕組みになっています。ま た、人間と同じようなインタフェー スでインタラクションするので、人 間に近いサービスを提供することが 可能です。 インターネットの問題としては、 ホームページに記載された情報をす べて読んでからでないと、行動を起 こせないということがあります。し かし、ネットピープルでは要点を言 葉で説明するため、より分かりやす くなるわけです。 イナゴ株式会社ではこのように、 どんなネットワークディバイスを通 してもインテグレートできる、より 人間に近いインタラクションのプラ ットフォーム技術を開発していま す。 クリエイティブサポートという考 2003 Winter 11 平成14年 eビジネス異業種交流会 第9回eビジネス・サロン ベンチャーと知の資本化∼知を創造し、蓄積し、流通するために∼ 「平成14年eビジネス異業種交流 会第9回eビジネス・サロン」が、 11月25日、東京・港区麻布台の財 団法人マルチメディア振興センタ ー会議室で開催され、ブリジーナ 社の代表取締役社長である大隅規 由氏が、上記のテーマでゲストス ピーチを行った。ベンチャー的な 観点からみたビジネス開発アプロ ーチ、知的資本を有効に共有・活 用する社会を実現するためのキー ワードを紹介。アメリカでの経験 などを交え、興味深い講演が行わ れた。スピーチの概要は次のとお り。 講演 ブリジーナ社 代表取締役社長 大隅規由氏 ■ 好ましい企業生育地としての ビジネス環境 「起業家精神が高い国ほど、その国 の経済成長率も高い」というデータ があります。起業家精神の高いアメ リカに対して、現在の日本は、長期 不況の状況下から、失敗することへ の怖れが先立ち、新たなビジネスチ ャレンジを阻んでいるのではないで しょうか。 ただし、これは昔から根付いた風 土的な考えもあるはず。ベンチャー ビジネスを成功させるために重要な のは、高度な専門性と人脈ネットワ ークだと私は考えています。 今日、アメリカのシリコンバレー は、ネットワークをベースとする地 域産業システムであり、関連する複 合技術分野の専門(創造)家に対し 12 MultiMedia Quarterly て、集団協調的学びの機会と柔軟性 のある調整機会を提供。このネット ワークシステムでは、社内・社間・ 社と業界団体や大学との機能的境界 が、多孔性となります。 すなわち、技術およびビジネスの 課題に対してプロダクト開発と会社 間の協調的学びをプロモートする物 理的、法律的、社会的メカニズムが 構築された、好ましい企業生育地と 言えるのです。 ■ ブリジーナ社について グローバル化や技術の進展が急速 に進む昨今。変化のペースが早いが ゆえに、皮肉にも国境または文化間 の「溝」が新たなビジネスを創造す る上での阻害要因としてクローズア ップされています。そこで、弊社は 異文化間の「溝」を埋め、新たな価 値を創造すべく、特に日米間のビジ ネスの「触媒」となることを標榜し 設立しました。 具体的には、IT・eBusiness系ベ ンチャー企業とクロスボーダーに協 業することで、その育成を促進して います。つまり、日本の企業と協業 することで、日本側に戦略的フレー ムワーク、すなわち「田んぼ」を形 成し、戦略コンサルティングサービ スやプロジェクトプロデュース、マ ネージメントサービスなどを行うな ど、ベンチャー企業の日本における ビジネス開発を支援。ベンチャーキ ャピタル(VC)投資を行うことで、 その成長曲線を加速させるのが仕事 です。 ■ 知の創造、蓄積、流通のために これからは知が富の源泉になって いくと考えられます。 それは、公共サービスの向上や産 業の拡大、コミュニティの拡大など といった、知の創造、蓄積、流通の しかけによって、知本(知的資本) を有効に共有・活用する開かれた協 働社会「高度知本社会」に突入する ということ。そこでは、人、社会が 中心となって開発を行い、ITは、ネ ットワークによって、知本を共有・ 活用する技術的手段を提供する役割 を担うでしょう。 創造のためのフレームワークとな るのが、人間の本質である「創造」 と集団の知と力を結集し、創造に導 く「リーダーシップ」です。 また、ゆとりないところに「創造」 は生まれません。時間のゆとりでは なく、頭のゆとりをもち、柔軟な視 点で考えられる協調的学びを行うこ とがポイントになってくるはずで す。 今後、日本社会で協調的学びのカ ギをにぎるのは、自分を信じ、自分 から発する「自己開示力」ならびに、 教科書や文字だけではない目の前で 起こっていることに対する「理解 力」 。これが、現在学んでいる学生 や子どもたちはもちろん、社会に出 た大人にも共通するキーワードとな るでしょう。さらに知を創造、蓄積、 流通するためには、姿勢、知識、技 術(知識を応用するスキル)が重要 です。この中でも、姿勢が一番重要 だと思います。物事に、どのように 向き合うか。この姿勢をどのように 養うかが、今後の課題です。最後に、 ストラットン本MIT学長の言葉をス ライドにて引用して、プレゼンテー ションを終わります。 第10回eビジネス・サロン 「平成14年eビジネス異業種交流 会第10回eビジネス・講演会」が、 12月12日、東京・港区芝公園のメ ルパルク東京・ボタンの間で開催 され、㈱ITサービス情報のサポー ト&サービス事業部ソリューショ ン技術部部長である櫻井俊郎氏 が、 「オープンシステム時代のセ キュリティ」について、また、 NTTコミュニケーションズ㈱顧問 の佐谷宏氏が「中国の電気通信事 情について」 、ゲストスピーチを 行った。スピーチの概要は次のと おり。 講演1 ㈱ITサービス 情報サポート&サービス事 業部 ソリューション技術部部長 櫻井 敏郎氏 ■ オープンビジネス時代の セキュリティ ∼中堅企業におけるセキュリティ対策事例∼ 我々、㈱ITサービスは、2002年 10月1日に発足。東芝ITソリュー ション株式会社のカスタマサポー ト&サービス事業部門からのスタ ッフを中心に、お客さまを総合的 にサポートし、真のニーズを満た すために設立されました。情報シ ステム、通信システム、自動化情 報システムの保守サービスおよび 関連領域におけるトータルなサー ビス事業を行っています。 現在、情報システムを取り巻く 脅威には、大きく分けて、「外部 か ら の 悪 意 」「 内 部 か ら の 悪 意 」 「災害」「事故」の4パターンがあ ります。ただし、表面化している ものはごくわずかですが、水面下 には、まだまだ隠れたコンピュー タ犯罪が眠っていると考えていま す。 しかし、セキュリティの重要性 や複雑度がアップしているにも拘 わらず、セキュリティ技術者の絶 対数が不足しているのが現状。で すから、セキュリティ障害におい ても、単純な設定ミスや無知によ るシステム構築、ずさんな管理体 制といった初歩的なレベルに原因 があったりするのです。 大切なのは、具体的計画・方針 の 策 定 ( P )、 実 行 ・ 運 用 ( D )、 監査(C)、見直し改善(A)を行 うPDCAサイクルにのっとって対 策をとること。管理も外部頼みで はなく自ら行い、セキュリティ技 術の習得・蓄積においても自ら、 あるいは中立な外部で行うこと、 また強固なシステム作りを外部に 委託することが、これからのある べき取り組みなのではないでしょ うか。 講演2 NTTコミュニケーション ズ㈱ 顧問 佐谷 宏氏 ■ 中国の電気通信事情について 中国の郵電(郵便+通信)事業 は、高い伸び率をキープしており、 固定電話ならびに移動電話加入者 も急増。インターネットは、1995 年頃から普及しはじめ、2002年10 月末現在、5,800万人が加入して います。 しかし、これらの数字は、日本 に比べるとまだまだ少ないもの。 中国では、第10次5カ年計画にお いて、2005年までに電話の普及率 を40%に、そのうちの移動電話普 及率を20.7%に伸ばすことを目標 としています。 電気通信事業者の状況について は、94年を境に中国電信の独占か ら競争型に、2004年頃には、4大 プレーヤーに再編成されるだろう と考えられています。 これは、中国電信の独占打破と 市場への競争の導入により、電気 通信サービスのレベル向上、新サ ービス開発の活性化、料金の低廉 化、投資の効率化、また、外資に 対抗しうる中国電気通信事業者の 規模拡大・強化が主なねらい。今 のところ、中国は、①電気通信収 入の減少傾向、②ユーザー別電信 サービス利用金額(ARPU)の低 下傾向、③電信法律体系の整備が 急務といった問題に直面している ことが、その理由にあげられます。 その上、外資が中国において電 気通信サービスを提供するために は、中国の現地企業との合併会社 を設立しなければならないという 「外商投資電信企業管理規定」が 大きな足かせになり、WTO加盟 後も外資の参入は少ないまま。今 後は、電気通信料金とともに、構 造的調整が必要となってくるでし ょう。 2003 Winter 13 EJFシンポジウム2002 ∼ブロードバンドネットワークと ユビキタスコンピューティング∼ 「五感情報通信と バーチャルリアリティ」 基調講演 東京大学 先端科学技術 研究センター教授 廣瀬通孝氏 ■五感情報通信と バーチャルリアリティ 技術のブロードバンド化によってや 信感があり満足感がありません。 っと実現してきたというわけです。 従来、企業は十分に従業員を養え ■ウェアラブルコンピュータと 今後の展望 ていましたが、IT化の進展とともに、 「人・モノ」といったコストのかかる 技術がいくら進歩しても、それが 従来のリソースを極力削減しようと 日常生活とまったく関係ない場所に しています。一方、個人も自分の将 固定されているのでは一般に活用さ 来と本当にやりたいことを考慮して、 れないでしょう。すなわち、計算機 一企業に依存するだけでなく、複数 などの情報処理機器は、モバイル化 の企業に属して仕事をしていくよう し、さらには腕時計や衣服のように になるでしょう。さらに、モノやお 五感とは、われわれが世界を感じ 常に身に付けて利用できるもの(ウ 金の電子化も促進されていきます。 るための感覚のすべてを指します。 ェアラブルコンピュータ)になって 企業はこれらの飛び出したリソース そして、五感情報通信技術とは、こ こそ、真のメリットが生まれると考 の有効活用を目指すようになるでし れまで視覚や聴覚に限定されてきた えています。 ょう。その時、ITを活用した企業間 情報通信を、触覚・味覚・嗅覚など ウェアラブルコンピュータの本質 のリソース流通ネットワークは、増 五感すべてにわたる感覚情報の領域 的な部分は3つ。仮想空間への日常 大する情報量に対してブロードバン にまで拡張した技術のことです。 的アクセスを可能にする恒常性、何 ド化と各種規制の緩和・撤廃、グロ これは、電気通信技術審議会答申 かをしながらインタフェースができ ーバルスタンダード化が重要になり 「情報通信研究開発基本計画」 (2000 る増幅性、情報世界の中でユーザー ます。 年2月)を踏まえたもので、総務省 をカプセル化する介在性です。 以上のような環境が整えば、後は、 では、2000年11月から「五感情報通 モバイル化は、コンピュータと人 個人の創造性と価値有る情報の活用 信技術に関する調査研究会」を発足 間の関係を180度変化させました。こ がビジネスの成功を左右する鍵にな させています。 れまでの、 「コンピュータのあるとこ るでしょう。そこで、一番気がかり ろに人が行く」というのではなく、 なのがセキュリティです。従来は、 アリティ」と呼ばれる言葉が世の中 今後は「人にコンピュータがついて 自分で所有する価値あるものは物理 に登場したのは1989年です。ご存知 くる」という図式になるでしょう。 的なお金かモノでした。万が一盗ま その代表でもある「バーチャルリ れても、損害は自分・自社にしか及 の通り、計算機によって作り出され た環境や空間の中に入り込み、そこ での擬似体験を通じて感じる現実感 覚のことであります。そして、五感 で感じるバーチャルリアリティを利 用すれば、言語を使わずにコンピュ ータと直接やり取りができるように なり、遠隔医療やバリアフリー技術、 「ブロードバンドネット ワークとセキュリティ」 講演1 分野への応用が考えられるでしょう。 値有るものはほとんどが情報という 形に変わっていきます。また、いつ NTTコミュニケーションズ eスマートトラストサービス部 システム部門長 何時他人の情報を預かったり、自分 日高健治氏 りません。そのため、自分が持って の情報を他人に預けたりするかわか いる情報資産のみでなく、他人から 預かった情報資産を明確にし、他人 教育・訓練、安全・危機管理、エン ターテインメントなど、さまざまな びませんでした。しかし今後は、価 ■情報資産管理の必要性 戦後日本のモノ不足は深刻でした。 任せではなく、自らセキュリティ対 策をする必要があります。万が一こ このようなことは、膨大な容量の情 それに対して企業は、大量生産で応 れらの情報が漏れた場合、特に企業 報交換路があって初めて可能であり、 えました。現在はモノが十分行き渡 の場合は自他それぞれからの責任の コンピュータの高性能化と共に伝送 っていますが、先行きの不安感や不 追求、業務の停滞、顧客からの信頼 14 MultiMedia Quarterly 「EJFシンポジウム2002∼ブロードバンドネットワークとユビキタス コンピューティング∼」が、10月29日、東京・港区の虎ノ門パストラ ルで開催された。シンポジウムでは、総務省総合通信基盤局電気通信 事業部データ通信課の阪本課長、および主催者を代表して、Eジャパン 協議会の谷会長代理の挨拶に続いて、基調講演ならびにブロードバン ドに関わる各講演、EJF会員企業のユニークな技術・サービスの紹介 が行われた。http://www.ejf.gr.jpに当日の資料を公開しています。 失墜・企業イメージの低下などの回 会員企業紹介2 復困難な損害が発生します。これら ベンチャー・ユニオン アカウントマネージャー せていただきます。 芦苅裕二氏 ロードバンドは、単なる帯域幅に の状況を防ぐため、社内で情報セキ ュリティ管理業務を設計・構築・運 用していくことが重要です。この業 務は、ITシステム部門やセキュリテ ィ担当部門に任せておけば大丈夫だ ードバンドのポイントを5つ紹介さ まず1つ目が、「常時接続」。ブ しかすぎません。常に接続されて こそ、さまざまなコンテンツを見 ■Tracking serverの魅力 ようと思うはずです。電話・テレ ということにはなりません。業務に ネットワークの世界でトラッキン は必ず人が介在するため、ITシステ グとは、個人を特定した通信内容や インターネット上のニュース ムだけでセキュリティのすべてを行 クリック(情報入力)パターンを集 http://news.google.comも注目されて うことは不可能なのです。自社の社 計・分析し、記録・保存する技術一 います。 員のみならず、アルバイトや業務委 般を指します。 託会社の社員まで含めて、セキュリ 弊社が開発したTracking serverは、メ ラは、視覚を拡張したものと言え、 ティをトータルで管理していくこと ール送信からWeb誘導後のサイトイ 無数の世界チャンネルを構築してく が、企業の繁栄の基盤を支えていく ン・サイトアウトまでの特定個人の れるでしょう。そしてネットラジオ ことになるのです。 行動を完全にトラッキングできます ライブhttp://www.live365.com/のよう ので、どのユーザーがどのような順 な24時間流れるライブカメラが欠か 序でWebページを閲覧したのか認識 せないポイントになるはずです。 <EJF会員企業のユニーク な技術・サービスの紹介> 会員企業紹介1 ナムザック・ジャパン 営業部 米倉正雄氏 ■WebArrowソリューションの ご提案 WebArrowは、世界で初めてデスク トップ共有とVoIPを統合、P2P接続 など、インターネット・コラボレー ションに必要な機能とコールセンタ ー、サポートセンターとしての全体 次に「定点観測」 。 “のぞき”カメ できます。IT書面一括法や電子消費 3つ目が「同時・共有体験」 。世界 者契約法に準拠したソリューション では、個人コンテンツの支援ツール といえます。 としてBLOGGERが話題になってい 「世界を見ればブロードバンド ビジネスが見える!」 ∼世界の最新IT情報から見える 成功するブロードバンド5つの ポイント∼ 講演2 Kanda News Network,Inc. 代表取締役 神田敏晶氏 システム機能を統合したweb/音声コ ラボレーションシステムです。 このシステムを導入すれば、ユー ビ ・ 新 聞 の 次 に くるものとして、 ます。 4つ目が「脱PCとSpot」 。これも大 きなポイントです。例えば、喫茶店 のテーブルや街の公衆電話にウェブ 端末があれば便利になるのではない でしょうか。 最後が「顕在化するlessとzone」。 ネットでは、ボーダレスという言葉 がよく使われていますが、それだけ でなく、言葉、性別、文化、メディ アの区別なく(less) 、時差を活用し て(Time Zone) 、自分の好きなこと ■ブロードバンド5つの ポイント (Sense Zone)を、現地、現場(Live Zone)と言う風に3つのzoneを上手く ザーとオペレーターが画面・画像を 世界で一番小さな放送局、Kanda 活用してこそ、ブロードバンドビジ 共有しながら音声で直接対話を行え News Networkでは、私が一人で取 ネスは成り立つのではないかと考え るようになり、顧客満足度を高めな 材・撮影・編集を行い、ネット上で ます。 がら、低価格で効率の良いサポート 配信しています。そこで得た、世界 センターを構築することができます。 の最新IT情報ならびに成功するブロ 2003 Winter 15 TOP Interview 新しいソリューション・ビジネスユースを創出する Compaq Tablet PC “TC1000”の 優位性を探る 日本ヒューレット・パッカード株式会社から発売されたCompaq Tablet PC “TC1000”は、コンシューマー 市場よりもビジネス市場を主流に展開しているもので、今後のTablet PC市場のあり方や、さらにはPC市場そ のものにも影響を与えるものと注目されている。同社の挽野 元モバイルビジネス本部長に、その実力のほど を伺った。 インタビュアー/伊藤聡子さん(キャスター) 滑らかに書ける 秘密は… は授業を聞いているのか、どこまで やっていた両方の良いところを融合 理解しているのかが分からないとい させた形になります。 伊藤 今回発売されたCompaq Tablet うことでした。このお話を聞いて、 伊藤 では早速、このTablet PCには PC “TC1000”は、どのようなニーズ キーボードを使わない入力方式と、 どういった技術が取り込まれている から生まれたものなのですか。 先生と学生の間に壁を作らないよう のか、主な特長をお聞かせください。 挽野 もともとは大学の先生からニ な方式のコンピュータはないかとい 挽野 先ほどキーボード以外の入力 ーズがあったもので、授業中にノー うのがそもそもの開発の発端なので 方法というお話しをしましたが、最 トPCでノートを取る学生がいて、そ す。 も特筆すべきことは、専用のスタイ の時に先生の方から「心配事が2つあ 伊藤 大学の授業から生まれたもの ラスペンを使ってパネルに直接手書 る」と仰ったのです。1つはノートPC とは、意外でしたね。そうすると、 き入力ができるということです。紙 でノートを取ると、当然キーボード 商品開発のコンセプトとしては、そ のノートを使うのと同じ手書き感覚 をカタカタ叩くわけですから、教室 ういった不都合な点を何とかなくせ で入力できますから、例えば先ほど にその音が鳴り響き、うるさいとい るものということで開発されたわけ の授業中や会議中に、タイピングノ うことです。もう1つはディスプレイ ですね。ところで昨年、ヒューレッ イズを出すことなく、片手だけで操 が人の顔の前にあるので、先生から ト・パッカード(以下HP)とコンパ 作・入力が可能です。また、入力パ 学生の表情が見えにくく、この学生 ックが合併されたわけですが、今回 ネルで手書きの文字をテキスト変換 のTablet PCは、それぞれの技術が融 し、Wordなど既存のアプリケーショ 合されてできたものなのですか? ンに送ることもできます。 挽野 もともとコンパックとHPがそ 伊藤 (パネルを覗きこんで)本当 れぞれ独自でPCの新しい使い方を考 に大学ノートのイメージですよね。 えていました。HPの方はもう少しサ マス目もノートのマス目ですし。手 イズが大きいもので取り外しができ 書きタイプというと、今までは小さ るもの、コンパックはキーボードが いパネルに書く製品がいろいろあっ 外せたりするものなど独自に開発し て、その難点としては「なかなか自 ていたわけですが、今回は合併前に 分が思っているように書けない」と いうことがあったと思うのですが、 日本ヒューレット・パッカード株式会社 パーソナルシステムズ事業統括 モバイルビジネス本部 本部長 挽野 元氏 16 MultiMedia Quarterly その点はどうなのでしょうか? 挽野 例えば従来のポケットPCタイ プですと、入力の仕方が感圧式とい って触れることで書けるようになっ ているのですが、今回のTablet PCは 納できるスペースを確保しました。 電磁誘導式という方式を使っていま 伊藤 こんなに細かい動きができる して、ペンの中に電池が入っていて、 とは驚きです。これなら、グラフな 本体のほうに入力センサーがあり、 んかも描けますね。それに、確かに 入力データは高速(133/秒)にサン 音が出ないし、会議中にもいいです プリングされるため、非常に滑らか よね。 に書くことができるのです。小さな 挽野 キーボード特有の「カタカタ 効果のような形でどんどん精度が上 PDAなどと比べますと、書き心地は カタ」という音がしないので、周り がっていくことになります。 バツグンにいいですよ。伊藤さん、 に迷惑をかけることはないと思いま 伊藤 その他に、これぞというメリ 実際に書いてみてください。 す。例えば5人とか6人とかで「カタ ットは。 1台3役の トランスフォーム型 カタカタ」やられたら、堪りません 挽野 ジョグダイヤルという機能が から。 ありまして、両手を使っていてペン 伊藤 あっ、本当に滑らかに書けま 伊藤 大合唱になってしまいますも が持ちにくいという時に、このジョ すね! 今までのものとは書き味が のね(笑) 。その他には、どんな特長 グダイヤルをスクロールして項目を 全然違いますね。 がありますか。 選択し、Q menuというボタンを起動 挽野 消す時には「消しゴム」を選 挽野 この製品はトランスフォーム していただければ、一発でアプリケ んで、その上を触ると消えます。ま 型といって、ドッキングステーショ ーションを起動させることができま た、消しゴムの横の「一筆」を押す ン(オプション)との組み合わせに す。また、ユーティリティソフトも と、今まで一筆で描いたものを全部 より、ノート、デスクトップ、タブ あり、例えば会議中にメールの着信 消すことができます。 レットの3つのフォームファクタに対 音が鳴ってひんしゅくを買ったりす 伊藤 まさにノート感覚ですね。こ 応しています。つまり、1台3役です る人がいますが(笑) 、その時も着信 れは楽しい! ね。また、ノートブックモードでは、 音をON、OFFにできる機能があるの 挽野 取り外し可能なキーボードとの組み で、安心して使えます。 ラインマーカーを蛍光ペンで引くこ 合わせにより、ディスプレイの向き 伊藤 パネルの表面が傷つくことは ともできます。 をタテ・ヨコ自由に変えることがで ないのですか。 伊藤 (蛍光ペンを使って)すごー きます。例えば営業マンがお客さま 挽野 普通のノートと違って、これ い! 感動ものですね。わたし、蛍 のところへ行ってプレゼンテーショ は手書きを前提にしているため、ハ 光アンダーラインがすごく気に入っ ンをする時にもフレキシブルな使い ードカバーガラスを採用しています てしまいました。 方ができますし、いざ商談が終わり、 し、さらに硬いコーティングが施さ 挽野 もちろん文字だけでなく、図 オフィスに戻ってドッキングステー れていますので、そう滅多に壊れる 形やイラストを手軽に描くこともで ションに接続し、外付けのキーボー ことはありません。 きます。三角形や四角形というのは、 ドをつければデスクトップとして使 マウスだとうまく描けませんが、こ えます。 大好評だった 先行予約 のペンを使えば普通のノートに描く 伊藤 こんなに小さいのに、いろい 伊藤 開発するに当たって、一番大 のと同じ感覚でできます。本来、人 ろな使い方ができるのですね。それ 変だったのはどういう点でしたか? 間が文字を書くという動作は、キー から、音声入力もできると聞いたの 挽野 一番悩んだ点は、本体の大き ボードよりもやはりペンで書くのが ですが、精度といいますか、どのく さと重さです。当然大きいほうが書 自然ですよね。字だけではなく絵も、 らいの分析度なのでしょうか。 きやすかったり、画面も見やすかっ アナログ的に書くのが人間の嗜好と 挽野 結構高いですよ。音声認識の たりしますが、あまり大きくなると 自然にフィットするのではないかと 標準ソフトが入っていますので、同 重くなってしまい、持ち運びが不便 思います。ちなみに、このペンは紛 じ人間が同じ声でずっと喋っている になってしまいます。もう1点は、バ 失することのないように、本体に収 と、声のトーンなどを分析し、学習 ッテリーがどれくらい持つかという 色も豊富に揃っていますし、 文字だけではなく、滑らかな動きでイラストも描ける。 2003 Winter 17 新しいソリューション・ビジネスユースを創出する Compaq Tablet PC “TC1000”の優位性を探る ことです。例えば1時間くらいで終わ と、看護婦さんが患者さんのところ ころで人気を呼んでいます。 ってしまったのでは、新幹線で言え に行って体温や血圧などを測ります 伊藤 どういう人が買われたのです ば東京から大阪どころか、名古屋ま よね。最近、病院では電子カルテが か? で持たないということになりますの 進んでいますが、ノートPCを使うの 挽野 やはり2台目、3台目のビジネ で、バッテリーを長時間持たせるた ではハッキリ言って重いです。そう スユーザーが多かったですね。それ めにはどういう技術を使ったらいい いう時にこのTablet PCを活用し、体 と、使ってみて評価したいという企 のかというところに苦心しました。 温などを測ったものを入力して電子 業系のユーザーや、個人ユーザーも2 伊藤 実際、どのくらい持つのです カルテのような形にすれば、大きな ∼3割いました。ですから、思った以 か。 効率化が図れると思います。もう1つ 上にいろいろな層の方から注目され 挽野 4時間くらいです。 の良い例は、プレゼンテーションの ているようです。 伊藤 そんなに持つんですか! 学校 シーンに営業マンの営業支援端末の 伊藤 実際に店頭でも見られるので の講義なら、2コマはバッチリですね。 ような形で活用できることです。例 すか。 Tablet PCのターゲットというのは、ど えば営業マンが商談をしている最中 挽野 店頭というよりも、渋谷にあ の辺に絞られているのですか? に、このTablet PCの中に製品情報を るYahooのBB shopで展示しています。 挽野 私どもがターゲットにしてい 入れたり、見積なども書けますので、 伊藤 将来的には、街中のPCショッ るのはコンシューマ市場ではなく、 非常に効率良くその場で商談ができ プにも並ぶのですか? ビジネスマーケットで、大きく分け ることになります。 挽野 店頭展開というのはあまり積 て2つあります。1つはITリテラシー 伊藤 そうですね。ペーパーを見せ 極的にやりません。というのは、先 が高いといいますか、いわゆるIT機 る感覚でできますよね。さて、昨年 ほどもご説明したように、製品自体 器に詳しいビジネスユーザーです。 の11月に先行予約を受け付けられた が一般コンシューマ向けというより 例えば今、普通のノートブックを使 そうですが、申し込みの状況はいか はビジネス向けの製品ですので、ど っているが、 「手書き入力をしてみた がでしたか? ちらかと言うと実際にお客さまのと い」 「1台のマシーンをいろいろなシ 挽野 お陰様で非常に好調でござい ころに私どもの営業マンが説明に行 ーンに合わせて使いたい」というよ まして、11月8日から先行予約をスタ って、製品を実際に見ていただくと うなビジネスユーザーですね。もう1 ートしたところ、最初の出荷の部分 いう展開が主流になります。 つはどちらかと言うと特定用途なの はすぐに埋まってしまいました。ス 伊藤 でも、たぶん一般人でも欲し ですが、今までハンディーターミナ マートなデザインもさることながら、 いという人がいっぱいいると思うん ルや専用端末などを使っていたユー 手書きペン入力、キーボード付き、 ですよ。特に学生さんが実際に触っ ザーが対象です。具体的な例で言う またいろいろな形で使えるというと たら、すごく欲しくなるのではない かしら。私も今、新しいノートPCに 変えたいと思っているところなので、 とても心が動かされているんですけ ど、価格のほうはおいくらなのです か? 挽野 21万9,000円です。 次世代型は防水・防塵性の 高いものも 伊藤 普通のノートPCに比べて、そ んなに高いという感じはないですよ ね。 Compaq Tablet PC TC1000シリーズ 挽野 そうでしょう。Windows XPな のでメールソフトやWord、Excelが普 18 MultiMedia Quarterly TOP Interview もあります。それを現場の方は現在、 何百、何千ページのペーパーのマニ ュアルを見ながら作業をやっている わけです。その情報を全部このTablet PCの中に入れてしまえば、飛行機や <挽野 元氏プロフィール> 車のそばに置いて修理や点検ができ ひきの・はじめ 1967年生まれ。武蔵工業大学大学院電気工学修士課程修了。92年、横 河・ヒューレット・パッカード株式会社(YHP)入社(現、日本ヒューレット・パッ カード株式会社) 。デスクトップ製品の製品企画で販売促進などを担当。96年からヒュ ーレット・パッカード・フランスで欧州市場や北米市場でのモニタ製品の拡充に従事。 その後アジア太平洋地域(特に中国、オーストラリア)でのノートブックPCビジネス 立ち上げに従事。2002年11月より現職。 ます。屋内ですと温度や湿度を一定 にすることができますが、屋外の場 合は雨が降ったり、急に寒くなった り、ホコリが舞い立っていたりと、 状況によって作業に支障をきたすこ とがありますよね。実際、 「外でもち 通に使え、プラスアルファで手書き ないですか? ゃんと安定して動くマシーンが欲し ペンの機能などがありますから、本 伊藤 そうなんですよ。このTablet い」というユーザーの声があります 当に通常のノートPCと同じような感 PCなら手書きができるし、持ち運び ので、その辺をもっと強化していき 覚で、ビジネスシーンでの新しい使 にもラクな軽さですし、注目もされ たいと考えています。 い方ができると思います。それに、 ますから、ポイント高いです(笑) 。 伊藤 本日は、私にとってもために 持っているだけでカッコいいんじゃ ぜひ検討させていただきます。つい なるお話をお伺いでき、本当にあり ないかと。 私情が入ってしまいましたが(笑) 、 がとうございました。 伊藤 カッコいいですよね。これを 最後に今後の展開をお聞かせくださ 会社名: 持って人前でパッと出したら、注目 い。 されるのではないかしら。わたしは 挽野 これは第一世代ですので、第 名称:hp directplusコールセンター つい、外見から入ってしまうから 二世代、第三世代という形でどんど 電話:03-5304-6777 ん展開していきます。例えば、先ほ URL: (笑) 。 挽野 伊藤さんがニューヨークの街 ど苦労した点でサイズのお話をしま 中でこのTablet PCを颯爽と持ち歩か したよね。現在のスクリーンサイズ れたら、カッコいいと思いますよ。 は10.4インチなのですが、もう少し大 伊藤 ありがとうございます(笑) 。 きいものが欲しいというお客さまの わたしは今、ニューヨークで英語の 声がありますので、その辺も改良し 専門学校に行っているのですが、授 ていきたいと考えています。それか 業中に使ったら便利ですよね。 ら屋外で使うユーザーの中に、防 挽野 ノートを取るのにちょうどい 水・防塵、つまり水に強く、ホコリ いと思いますよ。今は普通のノート に強いものをというニーズが結構あ PCを持ち歩いているのですか? りまして、その辺の信頼性をもっと 伊藤 半々ですね。重いし面倒だか もっと上げていきたいとも思ってい ら、家に置いていったりして…。授 ます。 業中に紙のノートに書いたものを、 伊藤 屋外で使うというのは、どの 結局家でノートPCに打ち直している ようなケースでしょうか? んです。 挽野 分かりやすい例で言いますと、 挽野 そうすると、二度手間ですよ 飛行機や車を修理する際に「修理マ ね。授業中というのは、だいたいペ ニュアル」のようなものがあります ンで書いたほうが書きやすいんじゃ よね。あるいは「点検マニュアル」 日本ヒューレット・パッカード㈱ http://www.hp.com/jp/directplus/ ●インタビューを終えて 伊藤聡子 プロフィール 1967年、新潟県生まれ。東京女 子大学卒。TBS系「関口 宏のサ ンデーモーニング」公募に合格 してデビュー。その後、テレビ 朝日系「スーパーモーニング」 のキャスターを6年半務める。他 にTBS系「ベストタイム」、TX 「KEYNOTE」などで活躍。現在、 語学の習得を目的に、ニューヨ ークと日本を行き来する生活を 送っている。 強調したいところに思う存分アンダーラ インを入れたり、イメージをすぐ図で表し たり、手書きならではの利点をパソコン画 面上で実現できる、まさに待ってました! という商品。サラサラと書いてパッと相手 に見せられるプレゼンテーションのカッコ よさも魅力…と、すっかり目がハートにな ってしまった私でした。 2003 Winter 19 ーはハードを売るためにソフトをタダ同然 昨年9月に東京駅前の丸ビルがリニュー アルされた。大正時代12年に建てられた ビ ュ ー ポ イ ン ト に扱っている。主客転倒とは、このことだ。 日本でもっとも古いオフィスビルのうちの 人材に関しても同じことがいえる。ソフト 1つが、ほぼ80年振りに近代的なビルへ ウェアを創り出す人材を育てず、いつまで と変身したのである。そこで注目すべきこ も工業化社会の感覚で金太郎飴のごとく、 とは、丸ビルが従来のオフィスワーカーが どこを切っても同じ顔の人間ばかりを養成 働くビルから、人が集まり情報が集まるビ してきた。経済的成長と効率化を達成する ルに生まれ変わったことだ。この丸ビルの 変身は、現代の日本社会にあって象徴的な ことともいえる。 それは、日本が「工業化社会」から「情 報化社会」へ移行したことを如実に物語っ ているからだ。 「工業化社会」ではモノづ くりが最優先されたが、 「情報化社会」で はモノの中に入れるソフトウェア・コンテ ンツが重視される。その点で丸ビルは、情 報が発信され寄り集まる情報化時代に相応 しい基地として再生したのである。 すなわち「情報化社会」とは、丸ビルや コンピュータといった器や箱よりも、その 中に入れるコンテンツの価値が貴ばれる社 会だといえるだろう。もっと端的にいえば、 情報という付加価値が尊重される社会だと いうことだ。その意味でITは単なる便利な 道具に過ぎず、道具自体に目を見張るほど の価値はない。 では、現代の「情報化社会」にとっても っとも重要なものは何か? いうまでもな く、人が発する情報である。情報そのもの は無機質的なものだが、そこに美しい、楽 しい、面白い、心が癒されるといったさま ざまなコンテンツ、つまり人間の知恵と創 メ デ ィ ア 中 の メ デ ィ ア は 人 間 の 知 恵 と 創 造 力 ために、ハードウェアというモノづくり優 先の考えから脱皮できないでいる。 とはいえ、本来、日本はコンテンツに強 い。ゲームソフト、アニメーション、漫画、 どれをとっても世界に誇れるソフトウェ ア・コンテンツに優れている。この日本人 の知恵と感性を大いに生かすことが、これ からの情報化社会に生き残る道だ。その意 味で今、日本は情報化社会に向けて人材を 総入れ換えするときがきたといえる。 また、企業経営の観点からいうと、経営 作家、経営評論家 江坂 彰さん 【プロフィール】 1936年京都市生まれ。京都大学文学 部卒業。広告代理店「東急エージェン シー」本社マーケティング局長、関西 支社長、名古屋支社長を経て独立。 「冬の花」で作家デビュー。以後、作 家活動とともに、企業経営の方向性や 時代に生きる企業のあり方などの観点 から経営戦略、マーケティング戦略、 人材と組織論といった分野で経営評 論、マーケティング・コンサルティン グに携わる。著書として『冬の時代の 管理職』 、 『人材殺しの時代』 、 『エリー ト冬の時代』 、 『企業は変わる人が変わ る』 、 『人材格差の時代』 、 『良い上司・ 悪い上司』 、 『三年後に笑う会社』など がある。 のトップならびにミドルは、より一層、先 見性、判断力、決断力を持つ必要がある。 なぜならば、ITによってもたらされる情報 は押し並べて横並びの共通情報が多く、他 社と差別化する独自の経営が展開できない からだ。ITは必要条件だが、十分条件では ないことを改めて知るべきである。 それよりもITを活用して、人と人とのネ ットワークをどうつくっていくか? との 視点が大切だ。企業社会において従来のネ ットワークは、ともすると縦形オンリーだ ったが、情報化社会においてもっとも必要 とされるのは横形に展開するネットワーク である。その意味で情報化社会では、 「金 造力が盛り込まれてはじめて、情報が情報 ッグは布製だが、皮製そのほか高価な素材 持ち」よりも知恵を持った人間とのネット としての価値を持つ。 でつくられた製品よりも、世界一級のブラ ワークがある「人持ち」が勝利を生むこと ンド品として孤高の光を放っている。 だろう。さらに、横形ネットワーク社会で そしてまた情報は、発信されてはじめて 価値が出る。逆をいえば、価値ある情報は なぜならば、デザインが素晴らしいから 相互情報をやり取するには「ギブアンドテ 人間の知恵と創造力で生まれ、発信される。 だ。遊び心を持っている。だから消費者は、 イク」が原則である。情報を一方的に受け 世はマルチメディアの時代というが、その PRADAというブランドを買うし、そのブ 取るのではなく、自ら情報を発信していく マルチメディア中の真のメディアは、知恵 ランド品を所有していることに満足感を覚 ことが重要だ。イタリアのミラノ市は世界 を持った人間以外の何者でもない。 える。価値とは、そういうものである。素 のファッションの情報発信基地だからこ ところで、コットンとシルクはどちらが 材や加工品ではなく、人間の知恵やアイデ そ、逆に世界中から情報が集まる。ニュー 価値があるか? 答えは明らかである。し アによって創り出され、ソフト情報として ヨークのウォール街も世界の証券情報を刻 かし、安物のコットンにファッションとい 付加されたものをいう。 一刻、送信しているからこそ、世界の情報 うデザインを付加してみたらどうだろう。 このソフトウェア・コンテンツが情報化 も集約されるのである。このように情報は、 場合によってはシルクと同等、あるいはシ 社会を築くうえでもっとも大切であること メディア中のメディアたる人間が生み創り ルクよりも高い値段がつくかもしれない。 を、今までの日本社会は気づかなかった。 出し、相互に送受信され、社会を築く原動 このことを実践しているのが、人気沸騰中 日本は情報化社会への対応を読み間違えた 力となっていく。情報化社会の意味を根底 のイタリアPRADA社のバッグである。バ ともいえる。今もってコンピュータメーカ から考え直す時がきたのである。 20 MultiMedia Quarterly 世界各国IT事情 シンガポール The Republic of Singapore Orchard Road Little India Chinatown アジアにおいて、まさに「IT国家」のお手本といえるシンガポール。 そのIT事情を探る。 “ガーデンシティ” “クリーン&グリー ただ、省庁によるサービス水準のばら ンシティ”と呼ばれ、観光地としても人 つきがあり、公団住宅の申請はすべてネ 気の高いシンガポール。その国土面積は ットで済むが、会社登記の届け出は、申 狭く、天然資源に乏しい。そこでシンガ 請書類をダウンロードして紙に印刷、記 ポールでは、競争力を保つために情報通 入して郵送しなければならないなど課題 信(IT)など高付加価値産業の育成に力 は残る。 を入れている。身近なサービスの電子化 Marina Bay 行政機関としては、電気通信、郵便、 を通して国民のIT水準を高め、知識経済 運輸、情報技術にかかわる行政を担当す に適した労働力育成につなげると同時 る情報技術通信省(MCIT)があり、通 に、民間企業の電子化も促している。 信分野と情報技術分野全般の統括調整機 関として情報通信開発庁(IDA)がある。 政府のIT政策 国際的な金融・サービスの拠点となっ アジアの情報・通信技術の国際展示会「CommunicAsia 2002」 が開催された、シンガポールエクスポ会場。 (写真提供:シンガポール政府観光局) 学校や図書館のネットワーク化も進ん 通信の自由化政策では、1992年に政府 でいる。小学校は全校でネットワーク化 機関だったシンガポールテレコムを民営 され、パソコン、インターネットを利用 化し、2000年には通信自由化政策を発表。 した授業は当たり前になっている。 ているシンガポールでは、政府がリード すべての電気通信事業を同年4月から完 する形で情報化政策を進めており、その 全自由化、外国企業の参入も自由とした。 をした公衆ネットボックスがあり、無料 歴史は20年以上に及ぶ。行政情報システ これにより、2001年10月現在で自ら通信 でインターネットにアクセスできる。こ ムの構築により行政サービスをオンライ 設備を設置してサービスを提供するFBO れには200近いサービスが提供されてい ン化し、地方自治体では行政情報の提供、 免許(日本の第1種電気通信事業免許に て、オンラインショッピング、バンキン ワンストップサービスの実施、物品調達 相当)の事業者は30社、通信設備を借り グ、行政サービス、各種情報の入手がで の電子化、行政文書のデジタル管理など てサービスを提供するSBO免許(日本の きる。 も導入されている。 第2種電気通信事業免許に相当)の事業 ●ビジネスチャンス 納税もインターネットにより行える。 者は約600社にのぼる。 ネット申告者数は導入4年目で、納税人 繁華街では、電話ボックスのような形 電子政府をはじめとする政府部門がIT 企業の上顧客だ。政府全体のIT新規投資 ITの現状 口の4割に達するスピードぶり。事務処 理も大幅に軽減され、税務局の投資約 は過去5年間、年平均で約4億シンガポー ルドルに達するが、 「電子政府行動計画」 ●IT革命の中核 500万シンガポールドル(1シンガポール ドル=約67円)は6年でカバーできると 注目すべきは、国家ITプロジェクト として2000年10月に打ち出した、ITの利 便性向上や国民教育の5年計画には15億 見込んでいる。また、行政サービスをま 「シンガポール・ワン」 (1996∼2004年) シンガポールドルの予算がついた。これ とめたホームページ「e市民センター」 だ。2004年までの家庭への光ファイバ接 を受けて、IT関連地場企業も活気づいて では、公営住宅入居や入学の申し込み、 続、オフィスから家庭までより多くのマ いる。また、 「市場で最高の技術を調達 会社設立の登録などのサービスができ ルチメディア・アプリケーションの実現 するためならメード・イン・シンガポー る。省庁ごとの縦割りサービスではなく、 を図る計画だ。 ルにはこだわらない」 (IDA)という政府 「住宅」 「学校」と目的別にアクセスでき インフラ整備では、すでに99パーセン る。ITコンサルティングのアクセンチュ トの世帯でブロードバンドの利用がで アは2001年の電子政府調査で同国をカナ き、一般家庭ではADSLやCATVを中心に、 ダに次ぐ2位にランク付けている。 企業間では光ケーブルで結ばれている。 の徹底的な実力主義もあり、外資企業の 受注も拒まないスタンスだ。 課題はIT技術者の不足。需要は年間で 4,000人あるのに対して、新卒のIT技術者 は2,250人に過ぎない。また、シンガポー 総人口 320万人 携帯電話加入数 27万3,000台(1997年、シンガポール情報通信開発局) パソコン保有率 61%(2001年12月、シンガポール情報通信開発局) インターネット契約者数 191万8,000人(2001年8月現在) インターネットの普及率 50%(2002年2月、シンガポール情報通信開発局) インターネット利用世帯 5万世帯(1999年1月) ブローバンド利用者 99%(現在) ブローバンド通信種類別利用者(推定) DSL 3万2,000人 CATV 1万3,500人 ネット納税者 70万人(2001年、納税義務者の4割) 小学校でのインターネット普及率 100%(現在) ル人技術者の海外への流出もある。この ため、政府はインドや中国など外国人の IT技術者の確保に積極的だ。 (経済ジャーナリスト 草野達雄) 参考資料・データ シンガポール情報通信開発局(IDA)のIT調査 日本経済研究センター2001年の情報技術(IT)化ランキング 「情報通信白書」 (総務省、平成13年版) ニールセン・ネットレーティング調査(2000年11月) 2003 Winter 21 行政の動き 「国際競争力回復のための企業の IT化戦略研究会」報告書の概要について 業のIT化の現状は閉塞状況に陥っていると考えざるを得な い。 この閉塞状態を打破するためには、高度なネットワーク インフラが有線系・無線系ともバランスよく整備されつつ ある我が国の特長を最大限に活かして、欧米諸国に例をみ 総務省では、平成14年7月より「国際競争力回復のため ない「新たな企業のIT化推進方策」について検討し、早急 の企業のIT化戦略研究会」 (座長:伊丹敬之、一橋大学商 に国際競争力回復のための取り組みに着手することが必要 学部教授)を開催し、企業のIT化推進方策について検討を である。 行ってきたが、同年12月報告書がとりまとめられたので、 【我が国企業のIT利用の将来像】 その概要を紹介する。 我が国の企業のIT化は、欧米や他のアジア諸国とはかな り状況が異なった独自の発展を遂げてきた。すなわち、我 検討の背景と目的 が国の情報システムは、精微に作り込んだビジネスモデル 情報通信分野においては、急速な技術革新と利用者ニー を個別仕様によるスクラッチ開発によって開発・導入され ズの高度化・多様化に対応して、ネットワークインフラの てきた。また、メッセージ・コードにおいても、企業別・ 高度化が進展している。しかし、ネットワークインフラの 業界別に体系が定められ、それらの相互接続性はあまり考 整備ほどには国内企業の企業内情報システムやB to B市場 慮されなかった。 におけるIT化が進んでいない。そのため、経営効率化や高 世界水準の業務オペレーション改革は、通信インフラ層、 付加価値創造が進まず、国際競争力上問題であるとの指摘 ビジネスプロトコル層、業務アプリケーション層、業務プ がなされている。 ロセス層が密接に連携して初めて可能になるものと考えら そこで、今後のネットワークインフラの整備状況や情報 れる。しかし現在の状況を考えると、一足飛びに目指すべ 通信に関わる新しいビジネスの誕生等を踏まえつつ、ネッ き将来像(目標)に到達することは容易ではない。そこで トワークの視点から、真に有効な企業のIT化推進方策につ まず、 「当面目指すべき姿」を設定し、それに向かって産学 いて検討を行ってきたものである。 官が連携して環境の整備に努めることが求められる(図1) 。 【政策的対応の基本的考え方】 報告書の概要 我が国企業のIT利用が、欧米諸国の後塵を拝しているこ 【問題提起】 とは認めざるを得ない。そこで国際競争力を回復するため 我が国では、政府において平成13年1月、 「e-Japan戦略」 に、2つの政策目標と3つの政策の基本方向を提案する。 を策定し、5年以内に世界の最先端のIT国家となるため、 ◎2つの政策目標 「3,000万世帯が高速インターネットアクセス網に、また、 まず、ユーザー企業の情報化投資効果を拡大するため 1,000万世帯が超高速インターネットアクセス網に常時接続 の各種環境整備に対する政策が重要である。さらに、効 可能な環境を整備する」ことを目標に取り組んできた。 果的なITソリューションを提供するIT産業を真に競争力 その結果、高速・超高速インターネットサービスの実加 のあるものへと脱皮させることが必要である。 入者数はまだ少ないとはいえ、ADSL料金は世界で最も低 ① ユーザー企業がITを最大限に活用して生産性を向上さ 廉な水準になるなど、ネットワークインフラの高度化は概 せ国際競争力を獲得すること。 ね順調に進展している。しかしながら、グローバル化の動 ② IT産業が国際競争力を獲得し、ハードウェアのみなら き、企業形態の再編、標準化・モジュール化の進展など我 ずアプリケーションソフトウェア産業や、ソリューシ が国の企業を取り巻く環境の変化を踏まえると、我が国企 ョンビジネスの分野においても、世界のIT市場に対す る輸出産業の地位を確立する 図1 我が国企業のIT利用の将来像 こと。 ◎3つの政策の基本方向 ビジネスモデルの発展軸 アプリケーション層の メッセージ・コード層の発展軸 後発の利を活かし、既に標 発展軸 あるべき姿 準化・モジュール化されたソ グローバル標準としての日本発の優れた ビジネスモデルの提案 リューションについては、こ 国際標準メッセージ・コード等の高度利用 グローバル標準として日本発の優れた業務 れを批判的かつ効果的に受け (Webアプリケーション等) アプリケーション産業の世界への展開 入れることが有効である。次 に、我が国が誇る優れた業務 当面目指すべき姿 海外における形式知化されたビジネスモデルの研究と 日本の優れたビジネスモデルの形式知化 プロセスノウハウを形式知化 海外業務アプリケーションの して、ITソリューションの標 グローバル標準への対応 批判的導入とアドオン開発 準化・モジュール化を行い、 世界への展開を図る仕組みを 自社固有の業務プロセス 現状 構築することが重要である。 国内産業別標準 個別スクラッチ開発 ① 後発の利(レイトカマーア 22 MultiMedia Quarterly 図2 目指すべき姿を達成するためのタイムスケジュール 企業のIT化施策 【トリガー施策】 Ⅰ.国内産業別標準からグローバル標準へのジャンプ ① EDIのグローバル標準への準拠期限の設定 ② 国際標準の対応 ③ 中小企業支援策 ④ コード管理センター(仮称)の設立 ⑤ XML標準ライブラリ参照環境の整備 Ⅱ.個別スクラッチ開発から海外業務アプリケーションの批 判的導入の戦略的なアドオン開発へのジャンプ ⑥ 海外業務アプリケーションの批判的導入 ⑦ 標準業務モデルに付加する日本型業務モデルモジュー ルの戦略的なアドオン開発 ⑧ 企業のソリューション選定に資するガイド情報の収 集・提供 ⑨ アプリケーションソフトウェアを含むIT投資促進税制 ⑩ 政府調達の一層の見直し 【基盤施策】 Ⅲ.日本発グローバル標準を実現する先行的・戦略的な取り 組み ⑪ 新たなコード体系の確立 ⑫ 新たなXMLベースの日本型ビジネスモデルの開発と普及 Ⅳ.イノベーションを持続するためのメカニズムの内在化 ⑬ ユーザー企業とITソリューションベンダーの協働推進 ⑭ 業務プロセスの形式知化の推進 ⑮ 達成状況のモニタリングとベストプラクティスの共有 Ⅴ.ITを最大限に活用するための業務・オペレーションプロ セス設計についての教育の充実 ⑯ ITを活用する業務プロセス設計能力の育成 ⑰ ITを活用する業務オペレーションに関わる人材育成 ⑱経営者の情報戦略能力の育成 ドバンテージ)を最大限に活用すること。 ② 我が国の産業が保有する優れた特性、業務ノウハウを 形式知化し、世界のITソリューション市場への展開を 図る仕組みを構築すること。 ③ 我が国の情報通信環境(ブロードバンド環境の整備) や優れた技術力を活用し、IT革命にふさわしい新しい ビジネスモデルの世界標準として具体化を目指し、そ れを支える各種コード等のインフラ開発に先行着手す ること。 明けましておめでとうございま す。早いもので、21世紀も3年目を迎 えました。みなさんが幼いころに思 い描いた未来の予想図に、現実社会 はどれだけ近づけているでしょう か。インターネットで家電を遠隔操作する…、そんな 夢の世界が、今月の「トップストーリー」のテーマで あるインターネットプロトコル「IPv6」によって、現 実となりつつあります。今年も、マルチメディアクォ ータリーをどうぞよろしくお願いいたします。 編 集 後 記 2002年度 2003年度 2004年度 トリガー施策の動き 国内産業別標準からグローバル標準へのジャンプ 個別スクラッチ開発から海外業務アプリケーションの 批判的導入と戦略的なアドオン開発へのジャンプ 基盤施策の動き 2005年度∼ 当 面 目 指 す べ き 姿 の 達 成 目 指 す べ き 姿 へ の 展 開 日本発グローバル標準を実現する 先行的・戦略的な取り組み 日本発の優れた ビジネスモデル提案 日本発の優れた業務 アプリケーションの展開 イノベーションを持続する ためのメカニズムの内在化 国際標準メッセージ・ コード等の高度活用 ITを最大限に活用するための業務・オペレー ションプロセス設計についての教育の充実 政策の主な動き 国際標準の動き 2005年e-Japan戦略目標「世界最先端の国家となる」 ▲ 2005. 1. GTINサポート開始期限 【企業のIT化施策のあり方】 我が国企業のIT利用の将来像を実現するための施策を、 「トリガー施策」 「基盤施策」に大別して提言する。 「トリガー施策」は、現在の閉塞状況から「当面目指すべ き姿」に引き上げるため、我が国の優れたビジネスモデル をソリューションとして具現化するノウハウの蓄積を行う、 引き金となる施策群である。 「基盤施策」は、 「当面目指す べき姿」が達成された後、日本企業の持つ強みを活用した 「あるべき姿」になるため、日本企業に関わる風土を変革す るための施策であり、その多くは教育・人づくりなどとい った戦略的かつ中長期的視野が必要な施策で構成される。 【目指すべき姿を達成するためのスケジュール】 諸外国において、UCCネットの商品コードとEANコード が14桁のGTNIに統合される2005年1月を目途としてトリガ ー施策を展開し、諸外国へのキャッチアップを図る。 また、その約1年後の2005年度中までに、基盤施策を展 開して「目指すべき姿」の入り口に立つことを目標とする。 この時点は、 「e-Japan」戦略において「世界最先端のIT国 家となる」目標年次でもある(図2) 。 マルチメディアクォータリー 2003年 冬季号[vol.11] 発 行 日 2003年1月20日 発 行 財団法人マルチメディア振興センター 編集協力 NTT出版株式会社 〒106-0041 東京都港区麻布台1-11-10 日総22ビル TEL(03) 3583-5811 FAX(03) 3583-5813 E-mail fmmcb@fmmc.or.jp URL http://www.fmmc.or.jp 2003 Winter 23 財 団 法 人 マルチメディア振興センター この冊子は環境保護のため再生紙を使用しております。
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