報告 - 静岡大学

南米コロンビアの蝶と蛾コレクションと企画展
理学部地球科学
わ だ ひ で き
和田秀樹
1:南米コロンビアの蝶と蛾コレクション
昭和42年(1967)6月から9月にかけて,第1次静岡大学コロンビア・
アンデス学術調査隊は、民間の協力を得て地質,動植物の調査研究班,そして
静岡山岳会によるサンタ・マルタ山群の未踏峰への挑戦を目指した山岳登頂班
の2つから編成された.蝶と蛾を専門とする隊員が参加した.その時の学術調
査で採取された蝶と蛾約 3,000 点がキャンパスミュージアムに保管されている.
2:企画展公開の日々
会場は,静岡大学の理学部の一角にあるキャンパスミュージアムの実習室で
行った(写真1),小さな会場でしたがキャンパスミュージアム収蔵品のほとん
どを展示することができた.
展示標本試料は,蝶の標本43箱,蛾の標本4箱、会場の周囲を取り囲むつ
いたてに説明板とともに23枚のグラビア写真も展示された.学術調査隊員で
あった高橋さんと山岳登頂班の文理学部卒業生太田欣也さんの撮影したフィル
ムから掘り起こした.コロンビア大使館提供の立体地形図やコロンビアを代表
する鳥類,花や植物、そしてコロンビアの大自然やコロンビアコーヒー,街角
の写真のポスターを展示し、CD からは、コロンビアの4つの地域,西海岸地域,
中央高地,東部地区そしてカリブ沿岸地域のフォオルクローレの軽快なリズム
に乗った音楽も流れ,時折,DVD のコロンビアの紹介映像も上映した。
11月17日(土)と18日(日)は,高橋真弓先生によるミュージアムト
ークが開かれ、2回とも展示会場の通路を使って午後1時から1時間開かれ,
聴講者で通路いっぱいになりました(写真2).今回の企画には,高橋さんのほ
か蛾の標本を担当した学術調査班隊員の杉本武さん、山に登った太田さん,訪
問者の中には,当時の展示会を見学をされた方もかなりおりました.
3:ミュージアムトーク
ミュージアムトークでは,アゲハチョウの羽の模様の特徴について話された.
蝶を食べるのは鳥で蝶の中には,鳥の嫌いな物質をもつ蝶がおり,とりはその
ような蝶を食べない.その結果,毒のある蝶に似た羽の模様をもつ蝶のなかに
ぎたい
は模様は似ていても毒をもたない種(擬態)があるとのこと.そうであれば,
蝶は皆毒をもつ模様をもった蝶ばかりになってしまうのではと心配するかもし
れない.しかし,自然はもっともっと複雑で,決してそのようにはならず,更
に多くの多様性をもっている.自然界の不思議な話は次々とわき上がってきて,
新たな研究するテーマに事欠かない.
4:静岡—コロンビア発掘
今回の企画展を開催するにあたって,コロンビア大使館の協力をいただいた.
特に大使館一等書記官のラウル・リンコンさん夫妻は、11月18日には静岡
の会場にも見えていただきました(写真3)
.
公開期間の来場者数は遠く県外からもあわせ学外400人、学内211人の
合計611人であり、アンケートでも満足度が高かった.
アンケートでは,どうしてこのようなすばらしい宝物を出し惜しみしていた
のかという苦情も含め,大学がもっている貴重な標本を公開することを望む声
が沢山あった.40年も前の静岡大学で、紆余曲折はあったもののコロンビア
に学術調査を自力で計画実行されたことは大いに評価される.当時の日本では,
学生が外国に旅行に行けるような暇はあったがお金がなかった.本企画は、標
本公開展示を通して大学のアーカイブとしてのミュージアムの意義が強いもの
でした.
写真1。企画展の蝶と蛾の標本展示会場入り口.
写真2:2007年11月17日(土)に行われた高橋真
弓先生によるミュージアムトーク.今でもよく覚えておら
れるスペイン語を使い,調査時のできごとを話された.
写真3:2007年11月18日(日)展示会場を訪れた
コロンビア大使館の一等書記官リンコンさんご夫妻(両
端)と高橋先生と筆者.
※写真はクリック可能です.(大きい画像にリンクしています.)