The Medical Letter 8日本語版 On Drugs and Therapeutics ISSN 0910-6316 Published by The Medical Letter,Inc.・1000 Main Street,New Rochelle,N.Y.10801・A Nonprofit Publication 日本語版発行:株式会社 フクミ・メディカルメディア 第18巻第5号(英語版1125号:第44巻) 2002年3月4日発行[隔週刊] 他の本号収録記事 薬物乱用に対する急性反応 ACUTE REACTIONS TO DRUGS OF ABUSE 薬物乱用に対する急性の毒性反応は、依然として重要な問題である。 一部の患者は、いく つもの複雑な症候を伴った、複数の薬物中毒を有することがある。 【日本語版コメント】 今回は「薬物乱用」を採りあげる。 日本でも、薬物乱用問題が深刻化している。1999 年中の覚せい剤押収量が約2トンと史上最高を記録、覚せい剤事犯の検挙 者総数も2万人近い。 更に中・高生など未成年への浸透が懸念されている。 首相を本部長とする薬物乱用対策推進本部は、「薬物乱用防止五カ年戦略」「薬物乱用対策推進計画」を策定、都道府県レ ベルの啓蒙活動を行ったりしているが... →各種関連資料は、<a href="http://www.fukumi.co.jp/mm/add/drugabuse.htm">リソース:薬物乱用</a>に纏めた。 【リソース】 <ahref="http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/substanceabuse.html" > MedlinePlus: SubstanceAbuse< /a > | <ahref="http://www.nlm.nih.gov/med lineplus/drugabuse.html" >MEDLINEplus: DrugAbuse </a > 【主要サイト】 財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターが厚生労働省の委託を受けて運営する<a href="http://www.dapc.or.jp/" >薬物乱用防止 「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ</a >には、豊富な解説資料 DB を提供。 <ahref="http://www.eisei.metro.tokyo.jp/yakuji/kansi/datudora/top.html" >あぶないドラッグ∼脱法ドラッグ対策∼< /a>[東京都衛生局薬務部 薬事指導課] <ahref="http://www.who.int/substance_abuse/"> WHO:SUBSTANCEDEPENDENCE </a> <ahref="http://www.nida.nih.gov/">NIDA NationalInstituteonDrugAbuse< /a> 鎮静催眠剤 − アルコールを含む鎮静催眠剤の主な毒性作用は、呼吸抑制および昏睡で、 これらは気管内挿管および補助呼吸により管理される。 多くの鎮静催眠剤は、特に他剤との併 用により、低血圧を引き起こすこともある。 過度のアルコール摂取は、特に小児において、低血 糖を引き起こすことがあるため、アルコール摂取が考えられる鈍麻した患者には、静注ブドウ糖を 投与すべきである。 経口ベンゾジアゼピンは、単独では死に至ることはまれだが、アルコールま たは他の中枢神経抑制剤を併用すると危険に至る可能性がある。 例えば、ベンゾジアゼピンを 部分的オピオイド作動薬ブプレノルフィン buprenorphine (Buprenex 他;レペタン注、坐剤[大塚]他)と併 用した結果、死亡例が報告されている(M Reynaud et al, Addiction 1998; 93:1385 )。 ベンゾジアゼ ピン拮抗薬フルマゼニル flumazenil (Romazicon ;アネキセート注[山之内]− Medical Letter 1992; 34:66 、通巻 874 号、日本語版 8 (1466,10-Jul-1992 ) )は、ベンゾジアゼピンの作用を改善することから、過量摂取の管 理には有用だが、嘔吐を引き起こしたり、ベンゾジアゼピンに身体的依存のある患者で急性禁断 症状の発現を促進したり、三環系抗うつ薬またはコカインのような発作閾値低下薬(seizure-threshold-l oweringdrugs )も服用している患者で発作の発現を促進することがある。 従ってフルマゼニルは、 (全ての)摂取薬物が同定されていない昏睡状態の患者には、習慣的に投与すべきではない。 「デートレイプ」薬 "Date-Rape" Drugs − いくつかの鎮静催眠剤は「パーティー」ドラッグとして好んで使用され るようになってきた。 これら薬剤の不正使用による鎮静作用は、レイプを助長することが報告されている。 γ- アミノ 酪酸(gamma-aminobutyric acid;GABA )の代謝物γヒロドキシブチレート( gamma-hydroxybutyrate;GHB )は、経口投与 が可能である。 γ-ブ チ ロラクトン(gamma-butyrolactone ;GBL )、または 1,4- ブタンジオール 1,4-butanediol のような GHB EDITOR: MarkAbramowicz,M.D. DEPUTYEDITOR: GiannaZuccotti,M.D.,CornellUniversityCollegeofMedicine CONSULTINGEDITOR: MartinA.Rizack,M.D.,Ph.D. ,Rockefelle rUniversity ASSOCIATEEDITORS: DonnaGoodstein,AmyFaucard ASSISTANTEDITOR: SusieWong CONTRIBUTINGEDITORS: PhilipD.Hansten,Pharm.D. , University ofWashington; NealH.Steigbigel,M.D.,AlbertEinsteinCollegeofMedicine ADVISORYBOARD: WilliamT.Beaver,M.D.,GeorgetownUniv.SchoolofMed.; JulesHirsch,M.D.,RockefellerUniv.; JamesD.Kenney,M.D.,YaleUniv.SchoolofMed.; GerhardLe vy,Pharm.D.,StateUniv.ofN.Y.atBuffalo; GeraldL.Mandell,M.D., Univ.ofVirginiaSchoolofMed.; HansMeinertz,M.D.,UniversityHospital,Copenhagen; DanM.Roden,M.D., V a nderbiltSchoolofMedicine; F.EstelleR.Simons,M.D.,UniversityofManitoba; EDITORIALFELLOWS: ElizabethStephens,M.D .,OregonHealthSciencesUniversitySchoolofMe dicine; ArthurM.F.Yee,M.D.,Ph.D.,CornellUniversityMedicalCenter; EDITORIALADMINISTRATOR: MarianneAschenbrenner PUBLISHER: DorisPeter,Ph.D. Founded1959byArthurKalletandHaroldAaron,M.D. Copyright 9 2002.TheMedicalLetter,Inc.(ISSN0025-732X). URL:http://www.medletter.com 日本語版監修: 佐 々 茂 ,M.D.,Ph.D.,YamanouchiPharmaceuticalCo.,Ltd. 日本語版版権所有 2002 株式会社フクミ 21 前駆体も、同様の作用を有する(DL Zvosec et al, N Engl J Med2001; 344:87;MMWRMorbMortalWklyRep1999; 48:13 7 )。 GHB は急速に吸収され、摂取後 15 分以内に作用が現れ、約 1.5-2 時間持続する(CJ Teter andSKGuthrie,Ph armacotherapy2001;21:1486 )。 他の鎮静催眠剤と同様に、鎮静および呼吸抑制作用を生じるが、嘔吐、せん妄、徐 脈、興奮、ミオクローヌス、低体温、健忘、およびまれに発作を引き起こすこともある。 呼吸抑制による死亡は、故意お よび不注意による過量摂取後、アルコール摂取および他の中毒物質の併用の有無に関わらず、報告がある。 日本語版註) 日本でも国連条約に基づき、昨 2001.11.25 に麻薬指定を受け、違法となった。 GHBは媚薬としてだけではなく、ダイエットや催眠に有効な薬としても使用 フ ル ニ トラゼパム flunitrazepam (Rohypnol ;ロヒプノール[ロシュ]、サイレース[エーザイ]他 ) は、諸外国では市販薬として、 米国ではストリートドラッグ("roofies" )として入手されるベンゾジアゼピン製剤で、レイプの助長剤としても使用されてい る(H Druidet al,ForensicSciInt 2001;122:136 )。 本剤はジ ア ゼ パ ム diazepam (Valium 他;セルシン、ホリゾン他)の 7-10 倍の鎮静作用があり、作用発現が急速(15-20 分)で、4-6 時間持続する。 フルニトラゼパムは前向性健忘症を 引き起こすことが多い。 ヘロインその他のオピオイド − ヘロインは通常静注投与されるが、粉末を「鼻から吸引」(" snorted")または吸煙(smoked )することもできる。 ヘロインの過量摂取は、呼吸抑制、肺浮腫、 昏睡、徐脈、および低血圧を引き起こす (KA Sporer, Ann Intern Med1999; 130:584 )。 その他のオピオイ ドの急性毒性作用は一般にヘロインと同様だが、メタドン methadone (Dolophine 他)または L-アル ファアセチル - メタドール(L-alpha-acetyl-methadol;LAAM − Medical Letter 1994; 36:52 、通巻 924 号、日本語版 1 0( 1 252,10-Jun-94 ) )のような長時間作用型オピオイドは、最大で数日間作用が持続することがある。 オ キシコンチン(OxyContin - Purdue ;日本では S-8117 [塩野義]申請中 )は、オキシコドoxycodone の経口 放出制御型製剤で、全量を素早く使用できるよう錠剤を砕いた後、鼻から吸引、または水に溶か して静注投与されることにより、乱用されている(Medical Letter 2001; 43:80 、通巻 1113 号、日本語版 1 7(1 9 )8 0 , 17-Sep-2001 )。 本剤に忍容できない人がこのような方法で摂取すると、オキシコンチン 1 回 80mg の投与で死に至る可能性がある。 プロポキシフェン(Darvon 他)、メペリジン(Demerol 他)、トラ マドール(Ultram ;クリスピン注[日本新薬] )、またはペンタゾシン pentazocine (Talwin 他;ソセゴン[山之内]、 ペンタジン[三共]他 )と抗ヒスタミン薬トリペレナミンの併用( "T's and blues" )は、発作を引き起こすこと がある。 メペリジンはせん妄を引き起こすこともある。 フェンタニール fentanyl (Sublimaze 他 ;フェ ンタネスト[三共]) のような合成オピオイドは、その力価が高いことを知らずに使用すると、死に至る可 能性がある。 訳註) smoke 「 麻薬・ 覚醒剤乱用防止センター」HP に従い、吸煙と訳した。別頁によると、ガラスパイプ等に入れ加熱して煙を吸うことを「 あぶり」とも言うようです。 治療 − 大部分のオピオイドの毒性は、ナロキソン(Narcan ;塩酸ナロキソン「三共」)初回量 2mg の静注により 改善されるだろう。 必要があれば、2-3 分間隔で総投与量 10mg まで反復投与できるが、プロポキシフェン、ペンタ ゾシン、およびブプレノルフィンに対してはより大用量が必要なことがある。 オピオイド依存症の患者にナロキソンを投 与すると、重症の興奮および嘔吐を伴う急性のオピオイド禁断症状が現れることがある。 オピオイド依存が考えられる 呼吸抑制のない患者には、より低用量(0.4mg 以下)のナロキソンを投与するか、または全く投与しないことが好まし い。 オピオイドを突然中止すると、不安、立毛、あくび、くしゃみ、鼻漏、悪心、嘔吐、下痢を、また不快感はあるものの 生命の危険はほとんどない腹部痙攣または筋痙攣を生じる。 オピアトopiate の禁断症状を抑制するには、メタドン が有効である。 クロニジンも有用なことがあるが、主観的な軽減の程度はメタドンよりも低い(PGO'Connorand D A F i ellin,AnnInternMed2000;133:40 )。 コカイン − 塩酸コカインは嚥下、「鼻から吸引」、または静注投与される。 また、塩基 (フリ ーベイス free base )または固形(クラック crack )に変換した後、吸煙することもできる。 薬物動態 − コカインの最大効果は、通常、経口摂取で約 60-90 分後、鼻からの吸引で 30-60 分後、静注投与 または吸煙では数分以内に現れる。 副作用は数分または数時間遅れて現れる。 コカインは消失半減期が 1 時 間のため一般に作用時間は短いが、密輸や隠蔽目的で袋ごと嚥下する "body packers" では、消化管内で袋が破れ ると、重症で持続性の作用が現れる可能性がある。 コカインをエタノールと併用すると、コカインと同様の活性で中程 度持続性の、エチルコカイン(コカエチレン)が形成される。 毒性 − 全身投与では、コカインは全身性の交感神経様作用を有する。 心血管毒性には、洞性頻脈、上室性 または心室性不整脈、QRS 延長、および脳出血または動脈解離に至ることのある重症の高血圧がある。 コカイン は冠動脈を収縮させるため、基礎に冠動脈疾患の有無にかかわらず、心筋梗塞が報告されている(RA Langeand LD Hillis, N Engl J Med2001;345:351 )。 タバコの喫煙により、コカイン誘導性の心血管収縮は悪化する。 心電図上 22 は心筋虚血の徴候が見られない一定の限られた、経過進行を辿る胸痛が起こりやすく、無症候性の ST 上昇が報告 されている。 最後にコカインを使用してから数時間から数日後に至って、心筋虚血または心筋梗塞を起こしたという報 告もある。 血管収縮による虚血は、手指、足指、腎臓、消化管、および脊髄に現れることがある。 吸煙および静注 のコカインはいずれも肺浮腫または出血を、クラックは間質性肺炎を引き起こす可能性がある。 吸煙コカインの作用 を高めるために良く行われるバルサルバ法(valsalva maneuver )は、気胸または気縦隔症を引き起こすことがある。 コカインの中枢神経系作用は、不安、興奮、妄想、せん妄、発作、脳血管炎、および血栓性または出血性脳卒中な どである(UDMcCann andGARicaurte,CurrOpinPsychiatry2000;13:321 )。 高熱および横紋筋融解症を起こす可能 性がある。 アセトアミノフェンによるものと同様の急性毒性肝炎が報告されている。 妊婦のコカイン使用により、胎盤 剥離(AAddisetal,ReprodToxicol2001; 15:341 )、および新生児ににおける心室性頻脈および脳梗塞が見られている。 治療 − コカインの毒性のほとんどは、短時間なため治療することができない。 不安、興奮、または発作は、ジ アゼパムまたはロラゼパム(Ativan ;ワイパックス[ワイスレダリー]他)のようなベンゾジアゼピンの静注により治療することが できる。 高熱は、迅速な体温の低下により、また興奮または発作を起こした患者には熱の産生を低下させるベンゾジ アゼピンの投与により、管理することができる。 過度の交感神経の緊張は大部分が中枢を介しているため、高血圧ま たは頻拍性不整脈の初期治療には、ベンゾジアゼピンによる鎮静も適している。 難治性高血圧は、静注ニトロプルシ ド(Nipride 他;ニトプロ注[丸石])で治療できる。 QRS 延長による不整脈には、高張性の炭酸水素ナトリウム 1-2mEq/k g が有用なことがある。 コカインによる心筋虚血は、中枢性交感神経刺激を抑制するジアゼパム、血栓形成を低下 するアスピリン、血管収縮を改善するニトログリセリンまたはカルシウムチャネル遮断薬を用いて治療することができる (BMBaumannetal,AcadEmergMed2000;7:878;BAJohnsonetal,AmJPsychiatry2001;158:1191 )。 アンフェタミン系薬剤 − デキストロアンフェタミン(Dexedrine 他)を含むアンフェタミン系薬 剤、および関連物質のメタンフェタミン、プロピルヘキサドリン、またはエフェドリンのような交感神 経作動薬は、通常、嚥下するか静注投与されるが、結晶化製剤の d-メタンフェタミン(アイス " ice" または "クリスタル crystal")は吸煙することができる。 急性のアンフェタミン毒性はコカインと同様 であるが、持続時間は長く、最大数時間まで持続する。 出血性または虚血性脳卒中および腎 不全が生じている。 メタンフェタミンの継続使用は、重症の精神症状を引き起こす可能性があり、 投与中止後も持続することがある(Y Sekine et al, Am J Psychiatry 2001;158:1206 )。 治療はコカ イン毒性の治療と同様。 エクスタシーEcstasy − 現在 "クラブドラッグ clubdrug"として流行している「エクスタシー」"Ecstasy"(3,4-methylenedi oxymethamphetamine;MDMA )、および類似薬物は、大量に摂取すると、知覚および行動への作用に加え、高血圧、高 熱、横紋筋融解症、低ナトリウム血症、脳梗塞、播種性血管内凝固障害、心不整脈、および肝・腎不全のような、アンフ ェタミン様作用を生じることがある(JV Pham andTPuzantian,Pharmacotherapy 2001;21:1561; H Kalant,CMAJ2001;165:9 17 )。 MDMA の最大濃度到達時間は、経口摂取後約 2-3 時間だが、作用は 20 分で現れ始め、約 4-5 時間持続す る(M Shannon, Pediatr EmergCare2000; 16:377 )。 救急医療サービスを受ける理由としては、発作が最も多い。 MD MA はセロトニン作動性神経の損傷を引き起こすことがあるため、典型的な娯楽目的の用量では、長時間持続性の認 知障害および神経精神医学的障害を生じることがある(L Renemanet al, Lancet 2001;358:1864; GA Ricaurte andUD Mc Cann,Lancet2001; 358:1831 )。 パラメトキシメタンフェタミン(PMMA )およびパラメトキシアンフェタミン(PMA )は、PD MA だと言われる製品中に含まれていることが多いが、過量致死を引き起こしており、多くの場合高熱が原因である (RWByardetal,AmJForensicMedPathol1998;19:261 )。 高熱およびその合併症の治療は主に対症療法で、迅速 な体温低下が必須であり、骨格筋弛緩薬ダントロレン(Dantrium ;ダントリウム[山之内])により救命できることがある。 揮発性溶剤VOLATILE INHALANTS − 亜酸化窒素[ nitrous oxide]、あるいはガソリン、プロパン[prop ane]、フレオン[freons ]、トリクロロエチレン[ trichloroethylene ]、またはペルクロロエチレン[perchloroethylene]の ような揮発性化合物は、運動失調、呼吸抑制、および昏睡を引き起こすことがあり、これら薬物の うち一部は肝、腎または心毒性を引き起こす可能性もある(T Brouetteand R Anton, AmJAddict2001;10:7 9 )。 塗料、ラッカー、または接着剤に含まれるトルエン[ toluene ]を吸入すると、低カリウム血症、 低リン酸血症、腎尿細管性アシドーシス、腹痛、呼吸不全を起こすのに十分な虚弱、運動失調の ような永続的な神経欠損、ならびに胎児の成長遅延および周産期死亡を含む妊娠合併症を生じ ることがある。 冷却剤またはスプレー用高圧ガスに含まれるフッ化炭化水素を吸入すると、皮膚 または粘膜に凍傷による損傷を生じることがある(DA Kuspis and EPKrenzelok,ClinToxicol1999; 37:873 )。 炭化水素吸入後の突然死が報告されており、おそらく心不整脈が原因だと思われる。 揮発性溶 剤吸入による中毒の合併症の治療は補助療法である。 可能であれば、エピネフリンのような不 整脈惹起性薬剤は避けるべきである。 訳注)"Volatile inhalants" : 直訳では「揮発性吸入剤」だが、実際にこれに含む物質は有機溶剤であるため、「揮発性吸入麻 酔剤」などと区別するため、「揮発性溶剤」とした。 23 マリファナ − マリファナ[Marijuana]またはハシッシュ[ hashish]は急性の不快気分反応を引き起 こす可能性があり、時に、頻脈および起立性低血圧との関連も見られる。 一般に特定の治療法 は必要ないが、重症反応はベンゾジアゼピンに反応することがある。 フェンシクリジンPHENCYCLIDINE (PCP) − フェンシクリジンの過量摂取は、何日間も持続 することがあり、精神病または暴力行為を引き起こすことがあるため、拘束およびベンゾジアゼピ ン投与が必要な場合がある。 一般的な摂取法は、PCP を溶解したホルムアルデヒドに紙巻きタ バコを浸して吸う方法(アンプ " amps"、シャーム " sherms" )である。 大量投与すると、昏睡、発作、 低または高血圧、および重症の高熱および横紋筋融解症を伴う筋硬直を生じることがある。 治 療は補助療法で、発作をコントロールするジアゼパム投与と、高熱を下げるための体外冷却を行 う。 麻酔薬 ケタミン (Ketalar ;ケタラール[三共])の乱用で同様の症候が現れることがある(CEStewart, EmergMedServ2001; 30:30 )。 幻覚剤 − LSD またはメスカリン[mescaline]のような幻覚剤[ Hallucinogens]は、知覚、認知、および脳 波の異常を引き起こし、これらは投与中止後も持続する可能性がある。 LSD はメスカリンよりもは るかに力価が強く、経口摂取後急速に吸収される。 40-60 分以内に幻覚作用が現れ、2-4 時間 で最大となり、通常は 6-8 時間以上かけて低下するが、精神病反応は 2 日以上持続することがあ る。 ジアゼパムが有用な場合があるが、大部分の患者は穏やかで協力的な環境を作ることによ り管理される。 アナボリックステロイド − スポーツ選手が体力増強のため不正使用するアナボリックステ ロイド[anabolic steroid]またはアンドロゲンステロイドは、攻撃性、短気、判断力低下、衝動性、熱狂 性、および偏執的妄想を引き起こすことがあり、急性の心血管系事故を引き起こす可能性もある (JL Donahueand DT Lowenthal, AmJTher2000;7:365;MParssinenandTSeppala,SportsMed2002;32:83 )。 強迫 観念からの使用、および禁断症状が報告されている。 特定の治療法はない。 汚染物質 − [ Contaminants] 不正薬物[Illicit drugs]には、毒性不純物および混合物が含まれて いる場合がある。 静注薬物が細菌または真菌に汚染されていれば、敗血症または心内膜炎を 起こすことがあり、静注薬物乱用者は注射針を共有するため HIV 感染率が高い。 静注薬物に 含まれる非感染性発熱物質は、短時間の高熱を引き起こすことがある。 溶かして静注投与する 錠剤中に含まれるタルクは、肺肉芽腫を引き起こすことがある。 MPTP( 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydr opyridine )は、ヘロインとして販売されている一部のメペリジン違法製剤に含まれる副産物で、永続 的な振せん麻痺を引き起こしている。 その他の汚染物質には、「カット」"cut"ヘロインに用いられ るキニーネおよびストリキニーネがある。 本号WEB版は< ahref="http://www.fukumi.co.jp/mm/ml/1125.htm"> 1125 号</a> 医 薬 品 の 臨 床 評 価 情 報 誌 T h e M e d i c a l L e t t e r は 1959 年創刊。 米国で市販されるす べ て の 新 薬 に関する医師による公正で厳密かつ最新の医 薬 品 評 価 情 報 と 総 説 を毎号提供。 各テーマ毎にその分野の専門家が執筆し、次いで編 集 者 6 名 及 び 監 修 者 13 名 からなるメンバーが詳細に検討し、更に外 部 コ ン サ ル タ ン トグル ープ約 50 名が検討をする等内容チェックを行って編集。 当該製品の製薬企業にもデータは事前に送付、情報チェックをおこなう。 WHO 推薦 DrugBulletins3 ( 件)の 1つ。[http://www.pharmanet.co.kr/whoggp/ggp/annex2/page01.htm] [日本語版発行日] 表記の発行日は整合性のため英語版の発行日と同一としてあります。 実際の日本語版発行日は1月後です。 日本語版からのお知らせ ●WEB版[TheMedicalLetter 日本語版] は 1995 年 1 月∼以降の号をインターネットで利用可能です。(要I D) ●各号に関する関連調査データをホームページでご覧ください。 Internet 使用環境を持たない購読者への資料提供は、できる限り対応致します。 TheMedicalLetter 日本語版 編集人:小菅博之 発行人:福岡淳治 発行所:株式会社フクミ・メデ ィカルメディア 〒 101-0032 東京 都千代田区岩本町 2-4-10 共同ビル(岩本町2丁目)tel.03-5687-2890fax.03-5687-2918 E-Mail: mm@fukumi.co.jp URL:http://www.fukumi.co.jp/mm/ 年間購読料:¥21,000 (税、〒共) 本誌の全部または一部の無断掲載を禁じます。 24
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