TMI 中国最新法令情報

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TMI 中国最新法令情報
―(2009 年 8 月号)―
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皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。
弊事務所では、お客様の中国ビジネスのご参考までに、本「TMI 中国最新法令情報」を
発行させていただいております。ぜひご活用下さい。記事の内容やテーマについてご要望
やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下さい。
また、バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきます
ので、併せてご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/information/china/index.html)
目次
********************************
一. 特集・中国の時効・除斥期間制度その1
二. 中国最新法規情報
1.主な中央法規
(1)輸入オンラインゲームの審査認可管理の強化に関する新聞出版総署の通知
(2)国際貿易における人民元決済試行管理弁法
(3)製品強制認証管理規定
(4)国境を越えた関連取引の監査及び調査の強化に関する国家税務総局の通知
(5)内資外資奨励プロジェクト免税確認審査認可の関連問題に関する税関総署及び
国家発展改革委員会の通知
(6)国内機構国外直接投資外貨管理規定
(7)国外機構国内外貨口座管理関連問題に関する国家外貨管理局の通知
(8)金融業経営者集中申告営業額計算弁法
(9)来料加工組立工場から法人企業に転換する際の輸入設備税収問題に関する財政
部の通知
(10)消費金融会社試行管理弁法
2.主な司法解釈
(1)現在の情勢における民商事契約紛争事件の審理の若干問題に関する最高人民法
院の指導意見
(2)「現在の情勢において労働紛争事件の審理を適切に行うことに関する指導意見」
の公布に関する最高人民法院の通知
三.上海法務事情
1.上海市不動産登記条例の施行
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一.特集・中国の時効・除斥期間制度その1***************
1.はじめに
(1)中国では、債権は原則として 2 年間で時効にかかる。これは日本1と比べて非常に
短いところから、時効成立により債権回収ができないことがしばしばある。そこ
で本稿では、債権回収の前提として、債権そのものの保全の観点から中国の時効・
除斥期間制度概要と時効の成立阻止のための対応方法について説明する。
なお、中国には、取得時効制度はなく、消滅時効制度に該当する「訴訟時効」
のみが存在する。本稿で「時効」とは「訴訟時効」を指すものとする。以下、時
効及び除斥期間について、民法通則2の原則及び主な特別規定を紹介し、次号で債
権保全のための方法について説明する。
(2)法令名の略称
本稿では引用する法令が多いので、略称を用いる法令については、参照の便宜を
考えて、ここでまとめて記載しておく。
① 労働紛争調停仲裁法3 = 「労働仲裁法」
② 民事案件審理への訴訟時効制度適用に関する若干の問題についての規定4 =
「時効規定」
③ 「民法通則」の全面的執行過程における若干の問題に関する意見(試行)5 =
「意見」
④ 「契約法」適用の若干の問題に関する解釈(1)6 = 「契約解釈」
⑤ 「担保法」適用の若干の問題に関する解釈7 = 「担保解釈」
2.時効・除斥期間制度の基礎知識その 1~時効・除斥期間制度の差異
ここでは、まず時効・除斥期間制度の理解の前提として、「時効」と「除斥期間」の
差異について簡単に説明する。
時効(訴訟時効)とは、民事上の権利の侵害を受けた権利者が、法定の時効期間内に
権利を行使しなかった場合、時効期間満了時に、人民法院に対して義務者に義務の履
行 を強制するよう請求する権利を失う制度をいう。
他方、除斥期間とは、一定の権利について法律の予定する存続期間をいい、当該期間
内に権利行使がなされなければ、当該権利が消滅するものである。
時効が権利者から訴訟上の救済を受ける権利を奪う制度であるのに対し、除斥期間は
実体法上の権利を消滅させる制度である。かかる本質の違いから、以下の通り、差異
が存在する。
1
日本の場合、債権の消滅時効は 10 年(民法第 167 条第 1 項)、商事債権の場合には 5 年(商法第
522 条)。
2
全国人民代表大会 1986 年 4 月 12 日公布、1987 年 1 月 1 日施行
3
全国人民代表大会常務委員会 2007 年 12 月 29 日公布、2008 年 5 月 1 日施行
4
最高人民法院 2008 年 8 月 21 日公布、同年 9 月 1 日施行
5
最高人民法院 1988 年 4 月 2 日公布、同日施行
6
最高人民法院 1999 年 12 月 19 日公布、同年 12 月 29 日施行
7
最高人民法院 2000 年 12 月 8 日公布、同年 12 月 13 日施行
2
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時効
期間(種類) 原則 2 年(民法通則第 135 条)
起算点
期間の延長9
援用10
中断11
停止12
放棄13
除斥期間
原則 20 年間(民法通則第 137 条
但書)8
権利侵害を知った日又は知り得 権利侵害の日から(民法通則第
た日から(民法通則第 137 条本文) 137 条但書)
あり(意見第 175 条)
原則としてあり(意見第 175 条。
なお、例外として契約解釈第 8 条)
必要(時効規定第 3 条)
不要
あり(意見第 175 条)
なし(意見第 175 条、契約解釈第
8 条)
あり(意見第 175 条)
なし(意見第 175 条、契約解釈第
8 条)
あり(時効規定第 22 条)
なし
3.時効・除斥期間制度の基礎知識その 2~時効・除斥期間制度適用の対象
時効制度が適用される対象は債権的請求権に限られ、物権的請求権には適用がないの
が原則である。また、除斥期間が適用される対象は主に形成権(追認権、同意権及び
取消権など)であり、債権の請求権にも適用される。
債権的請求権の例としては、賃貸物返還請求権、売買代金請求権等契約関係から発生
する債権があり、物権的請求権の例としては、所有権に基づく返還請求権、公民又は
法人に経営及び管理を授権していない国の財産が侵害された場合の返還請求権(意見
第 170 条)がある。
但し、債権的請求権でも政策上の理由から、①預金の元本・利息の支払請求権、②国
債・金融債券の償還請求権、③不特定者を対象として発行した社債の元本・利息支払
請求権、④投資関係に基づき発生した出資金等の払込請求権は例外として時効は適用
されない(時効規定第1条)。特に④については、中国において外商投資企業設立・増
資等を行う際に負担する債務であり、日系企業にとっても身近な債務であるから注意
を要する。
8
なお、民法通則第 137 条但書では 20 年の期間も「訴訟時効」という文言が使われているため、
20 年間も「訴訟時効」であるという説もある。本稿では、20 年間が除斥期間であるとの見解
に従っている。但し、法的性質に関する学説に関わらず、本表における 20 年の期間について
の扱いには変わりはない。
9
時効期間の延長とは、特殊事情がある場合に、人民法院の決定により、時効期間満了後に時
効期間を延長するものをいう(民法通則第 137 条)。
10
援用とは、時効にかかった権利の義務者が、権利者からの訴訟において時効の抗弁を提出す
ることをいう。
11
中断とは、それまで進行した時効期間が失効し、そのときから改めて時効期間が進行するこ
とをいう(民法通則第 140 条)。
12
停止とは、権利者の権利行使が阻害される事由があった場合に、時効期間の進行が一時停止
し、阻害事由が解消した際に、残りの時効期間が継続して進行することをいう(民法通則第 139
条)。
13
放棄とは、ある権利についての時効期間満了後、当該権利の義務者が時効による利益を受け
ることを放棄することをいう。
3
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4.時効・除斥期間制度の基礎知識その 3~基本的時効・除斥期間の例
原則的な時効期間は 2 年間であるが、例外として、2 年以上又は 2 年未満の時効・除
斥期間が規定されている場合もある。特に、2 年未満の短期時効は看過されやすいため
注意を要する。また、起算点も各請求権により異なることが多いのでこの点も注意す
べきである。
日常的な時効・除斥期間の管理方法としては、取引等の法律行為により債権等の請求
権が発生した場合に、当該請求権の行使まで暫く期間を置く場合には、是非とも当該
債権の時効・除斥期間を確認すべきである。
基本的な時効・除斥期間は以下の通りである。
分野・対象
期間
起算点
時効の原則
訴訟時効 2 年(民法通則 ① 原則:権利の侵害を知り、又は知
り得た日から(民法通則第 137 条本
民事権利保護
第 135 条)
文)
【参考】時効期間満了後
も自発的な債務履行は有 【参考】売買代金請求権の起算点
=目的物代金の支払日の翌日14
効
② 時効停止後:時効停止の事由が解
消した日から(民法通則第 139 条)
③ 時効中断後:
Ⓐ 中断の時から(民法通則第 140
条)
Ⓑ 調停不調の時から
Ⓒ 調停成立するも義務不履行の
場合は履行期間満了の時から
(以上、民法通則第 140 条、意見第 174
条)
④ 分割履行:最後の履行期限の満了
日から(時効規定第 5 条)
⑤ 期限の約定がない場合:
Ⓐ 期限が確定可能な場合15は、期
限満了日から
Ⓑ 期限が確定不可能な場合は、債
権者が履行請求をする際に定め
た期限満了日から
Ⓒ 債務者が債権者の最初の権利
主張の際に履行拒否した場合は、
拒否の時から
(以上、時効規定第 6 条)
①身体受傷の賠 短期訴訟時効1年(民法 人身損害賠償:
償請求
通則第 136 条)
① 傷害が明らかな場合は受傷の日
14
日、月、年を以て期間を計算する場合には、初日を不算入とするとの原則による(民法通則
第 154 条第 2 項)。
15
契約法(全国人民代表大会 1999 年 3 月 15 日公布、同年 10 月 1 日施行)第 61 条、第 62 条で約
定不明の場合の契約条項確定方法について定めている。
4
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から
② 傷害が後日診断で判明した場合
は診断の日から
(以上、意見第 168 条)
②未告知の品質
不合格商品の販
売
③賃借料の支払
遅延又は支払拒
否
④寄託財物の紛
失又は毀損
除斥期間の原則
20 年(民法通則第 137
条但書、意見第 167 条)
なお、時効の起算点が
除斥期間満了近くのため
に時効期間満了日が権利
侵害の日から 20 年を超え
る場合も、除斥期間の範
囲でのみ権利行使可能
(意見第 167 条)
渉外時効 4 年(契約法第
国際取引
①国際貨物売買 129 条)
契約
②技術輸出入契
約
海上物品運送人 訴訟時効 1 年(海商法第
に対する賠償請 257 条)
求権
未告知の瑕疵の 訴訟時効 1 年(競売法第
ある物品の競売 61 条)
労働仲裁申立
時効 1 年(労働仲裁法第
27 条)
契約取消権
除斥期間 1 年(契約法第
55 条、時効規定第 7 条)
権利が侵害された日から(民法通則第
137 条但書)
権利の侵害を知り、又は知り得た日か
ら(契約法第 129 条)
運送人が運送品を引渡す又は引渡す
べき日から(海商法第 257 条)
権利の侵害を知り、又は知り得た日か
ら(競売法第 61 条)
当事者が権利侵害を知り又は知りう
べき日から(労働仲裁法第 27 条)
取消事由を知った又は知りうべき日
から(契約法第 55 条、時効規定第 7
条)
債権者取消権
除斥期間 1 年、最大 5 年 債権者が取消事由を知り又は知りう
(契約法第 75 条)
べき日から 1 年、但し、債務者のかか
る行為があった日から 5 年以内に取消
権が行使されない場合、当該取消権は
消滅する。
供託物の受領
除斥期間 5 年(契約法第 供託の日から
104 条)
手形・小切手の ① 所持人の手形振出人 ① 所持人の手形振出人又は引受人
に対する権利は手形満期日から
権利
又は引受人に対する権
② 一覧払の為替手形又は約束手形
利の時効 2 年
16
「票據法」。全国人民代表大会 2004 年 8 月 28 日改正公布、同日改正施行
5
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②
一覧払の為替手形又
は約束手形の権利の時
効2年
③ 所持人の小切手振出
人に対する権利の時効
6 か月
④ 所持人の前者への遡
求権時効 6 か月
⑤ 所持人の前者への再
遡求権時効 3 か月
(以上、手形法16第 17 条)
の権利は振出日から
③ 所持人の小切手振出人に対する
権利は振出日から
④
所持人の前者への遡求権は引受
拒絶又は支払拒絶の日から
⑤ 所持人の前者への再遡求権は完
済日又は訴訟提起を受けた日から
(以上、手形法第 17 条)
5.時効・除斥期間制度の基礎知識その 4~時効の援用
時効は、訴訟の審理において、当事者がかかる時効が成立している旨の抗弁、すなわ
ち時効の援用をしないと裁判所は当該時効の適用について判断することはできない
(時効規定第 3 条)。つまり時効の援用がない限り時効の効果は享受できない。
なお、次のような時効の援用が認められない場合もあるので、訴訟における時効援用
の際には注意を要する。
① 訴訟において、第一審で事項を援用せず第二審で援用した場合は原則として時機
に後れた攻撃防御方法としてかかる時効の援用は認められない。但し、例外的に、
新たな証拠により時効期間が経過していたことを証明できる場合には認められる。
② 時効成立を理由とする再審の申立、再審での時効の援用は例外を認めず許されな
い。(以上、時効規定第 4 条)
③ 時効利益の放棄後に時効を援用することは許されない(契約規定第 22 条17)。
(つづく)
(山田美好・弁護士(上海))
二.中国最新法規情報(2009 年 7 月公布分) **************
1. 主な中央法規
(1)輸入オンラインゲームの審査認可管理の強化に関する新聞出版総署の通知
新聞出版総署 2009 年 7 月 1 日公布 同日施行
本通知では、新聞出版総署は、国務院の授権を受けた唯一の「国外著作権者によ
る授権を受けた輸入オンラインゲーム」の審査認可機関であり、中国においてオン
ラインゲームの出版運営に従事する如何なる企業も、その事前審査認可を受けなけ
ればならず、その審査認可を得なかった場合、国外著作権による授権を受けた如何
なる輸入オンラインゲームに関しても、中国において出版運営活動を行ってはなら
ない旨が定められている。
17
時効期間の満了後、義務者が義務の履行に同意する意思表示を行い、又は任意に義務を履行
した場合に、後になって時効の抗弁を提出しても、人民法院はこれを認めない。
6
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(2)国際貿易における人民元決済試行管理弁法
中国人民銀行、財政部、商務部、税関総署、税務総局、中国銀行業監督管理委員
会 2009 年 7 月 1 日公布 同日施行
7 月 1 日から、上海、広州、深圳、珠海又は東莞に所在する、人民元決済の認可
を受けた企業は、国際貿易において、人民元で決済できるようになったが、国内に
おいて、上記五つの都市のごく一部の企業による人民元決済しか認められず、貿易
相手も香港、マカオ及び東南アジア諸国連合(ASEAN)の会員国に所在する企業に
限定され、また、関連規定が整っていないため、現時点では、実際の人民元決済に
よる取引は少ないようである。
但し、国内地域及び相手貿易国の追加が検討されており、税金の還付などの関連
規定も制定される予定であるため、今後、人民元決済の拡大が予想される。
(3)製品強制認証管理規定
国家品質監督検査検疫管理局 2009 年 7 月 3 日公布 同年 9 月 1 日施行
「強制認証製品目録」に定められている製品(以下「強制認証製品」という)に
ついては、品質監督管理部門の認証を得ずに、出荷、販売、輸入又は経営活動にお
ける使用をしてはならない(第 2 条)。
強制認証製品の生産者、販売者又は輸入業者は、その製品の認証を申請しなけれ
ばならず、その他の企業に強制認証製品の生産を委託した場合、委託企業又は受託
企業がその製品の認証を申請することができる(第 10 条)。
中国強制認証(CCC)については、2002 年 5 月 1 日から同名の管理規定が施行さ
れていたが、本規定の施行とともに旧規定は廃止される。旧規定は全 32 条であっ
たが、本規定は全 62 条に増え、規定が詳細化された。
(4)国境を越えた関連取引の監査及び調査の強化に関する国家税務総局の通知
国家税務総局 2009 年 7 月 6 日公布 同日施行
多国籍企業が金融危機を背景に国外の企業の欠損を中国国内の関連企業に移す
ことを防ぐために、税務局は本通知を公布し、これにより、多国籍企業が中国国内
に設立した単一生産、販売又は契約に基づき研究開発などを行う企業に対して、同
期資料(関連企業との取引における価格、計算方法などに関する資料)の準備基準
を満たしているかどうかに関わらず、その企業に欠損があった場合、同期資料及び
その他の資料の提出が求められ、欠損移転に対する監査が強化された。
(5)内資外資奨励プロジェクト免税確認審査認可の関連問題に関する税関総署及び国
家発展改革委員会の通知
税関総署、国家発展改革委員会 2009 年 7 月 7 日公布 同日施行
同通知では、奨励プロジェクトにおける輸入設備に関する免税を申請する際の税
関の監督機能が強化され、特に投資プロジェクトが奨励プロジェクトに該当するか
どうかについて、税関による厳格な審査が求められ、問題があると判断した場合、
省レベルの投資プロジェクト管理部門に通報しなければならない旨が定められて
いる。
7
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(6)国内機構国外直接投資外貨管理規定
国家外貨管理局 2009 年 7 月 13 日公布 同年 8 月 1 日施行
本規定第 4 条では、国内機構は、自己所有の外貨、規定に合致する国内の外貨借
入金、外貨転、現物、無形資産又は国外における直接投資から得た利益などを用い
て国外直接投資を行うことができる旨が定められ、国外直接投資の資金由来の範囲
が拡大された。また、資金由来についての事前審査が届出制に改められた(第 6
条)。
本規定第 13 条及び第 14 条では、国外におけるプロジェクトの展開又は企業の設
立の前に、保証金、マーケティング調査又は人員の雇用などのため、国外直接投資
総額の 15%以内の金額を国外に送金することができ、実情によって、国外直接投
資総額の 15%を上回る金額を送金する必要がある場合、所在地の国家外貨管理局
に申請しなければならない旨が定められている。
(7)国外機構国内外貨口座管理関連問題に関する国家外貨管理局の通知
国家外貨管理局 2009 年 7 月 13 日公布 同年 8 月 1 日施行
本通知第 3 条では、国家外貨管理局の別段の規定がある場合を除き、国外機構が
国内外貨口座を開設する際、国家外貨管理局による審査認可が不要である旨が定め
られている。
本通知第 9 条では、国家外貨管理局の別段の規定がある場合を除き、国外機構の
国内外貨口座にある資金残額は、国内銀行の短期外債として管理されなければなら
ず、国内機構が国内銀行からの借入のための質物とする場合、国内借入項目におけ
る国外担保外貨管理規定に基づく旨が定められている。
(8)金融業経営者集中申告営業額計算弁法
中国人民銀行、商務部、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会、
中国保険監督管理委員会 2009 年 7 月 15 日公布 同年 8 月 15 日施行
本弁法は、銀行業金融機構、証券会社、先物会社、ファンド管理会社及び保険会
社などの金融業経営者による集中申告における営業額の計算に適用される。
また、金融資産管理会社、信託会社、財務会社、金融リース会社、自動車金融会
社、金融ブローカー会社及び銀行業種監督管理委員会による設立認可を得たその他
の金融機構の営業額の計算に関しては、本弁法における銀行業金融機構に関する規
定が適用される(第 2 条)。
(9)来料加工組立工場から法人企業に転換する際の輸入設備税収問題に関する財政部
の通知
財政部 2009 年 7 月 16 日公布 同日施行
2009 年 7 月 1 日から 2011 年 6 月 30 日までの間に、来料加工工場が、外国依頼
者から無料で提供された設備(不作価設備)を出資として、企業法人を設立する場
合、2008 年 12 月 31 日までに加工貿易手帳届出手続きが完了し、かつ、2009 年 6
月 30 日までに輸入申告された、なお税関監督管理期間内の不作価設備に対しては、
輸入関税及び輸入における増値税の追納が免除される(第 1 条)。
また、2009 年 1 月 1 日以降新たに届出がなされた不作価設備及び 2008 年 12 月
31 日までに届出がなされたが、2009 年 7 月 1 日以降に輸入申告された不作価設備
を出資として、企業法人を設立する場合、新たに設立予定の法人企業が従事する業
8
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種が国家奨励類産業項目、又は中西部地区外商投資の優勢産業項目である場合を除
き、現行規定に基づき関税が徴収される(第 2 条)。
(10)消費金融会社試行管理弁法
中国銀行業監督管理委員会 2009 年 7 月 22 日公布 同日施行
消費金融会社とは、公衆の預金を集めずに、小額かつ分散的に、中国国内居住者
個人に消費を目的とする貸付を行う銀行でない金融機関をいう(第 2 条)。
消費金融会社の主要株主(登録資本金の 50%を下回らない持分を保有する株主)
の条件としては、第 6 条では、出資者は、国内外金融機構及び中国銀行業監督管理
委員会が認めたその他の出資者であること以外に以下の条件を満たさなければな
らない旨が定められている。
①消費金融業に 5 年以上従事したこと経験を有すること
②直近一年の年末における総資産が 600 億人民元又は等値の自由に両替できる
貨幣を下回らないこと
③直近 2 会計年度連続で利益を上げたこと
④直近 2 年間に重大な違法行為又は規定に違反した行為がないこと
⑤貸付金又は他人に委託された資金を用いて出資してはならないこと
⑥設立予定の会社の定款において、3 年以内に保有する出資持分を譲渡しないと
定めること
⑦良好な内部制度及びリスク管理制度を完備すること
⑧関連監督管理部門の要求を満たすこと
⑨国外の金融機構の場合、中国に駐在事務所を設けてから 2 年以上であり、又は
分支機構を有することなどの条件
⑩中国銀行業監督管理委員会が定めたその他の慎重な条件
一般出資者の条件としては、上記③から⑨までの条件以外に、金融機構の場合、
登録資本は 3 億人民元又は等値の自由に両替できる貨幣を下回ってはならず、また、
非金融機構の場合、純資産率は 30%を下回ってはならないとの条件がある(第 7
条)。
2.司法解釈
(1)現在の情勢における民商事契約紛争事件の審理の若干問題に関する最高人民法
院の指導意見
最高人民法院 2009 年 7 月 7 日公布 同日施行
本通知第 1 条から第 4 条では、昨今の金融危機により、契約履行に関する紛争が
多発し、一部の当事者が、事情変更の原則を理由に契約の変更又は解除を求めてい
るのに対し、人民法院は、公平原則及び事情変更原則に基づき、厳格に審査しなけ
ればならない旨が定められている。
また、本通知第 5 条から第 8 条では、国内経済環境の変化及び影響により、民商
事契約の履行における違約行為が目立っており、かかる契約に定める違約金が実際
の損失を著しく上回った場合、又は懲罰的な違約金条項があった場合、人民法院は、
公平原則などに基づき、合理的に違約金を調整しなければならない旨が定められて
いる。
9
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(2)「現在の情勢において労働紛争事件の審理を適切に行うことに関する指導意見」
の公布に関する最高人民法院の通知
最高人民法院 2009 年 7 月 6 日公布 同日施行
金融危機によるリストラ及び労働紛争の多発を背景に、本通知では、労働関係の
維持、調停の活用、根拠となる法令の把握などを強調し、経済的補償金、未払い賃
金、リストラ及び競業制限などに関する事件に適切に対応するよう各人民法院に求
めた。
(劉国凡・中国弁護士(東京))
(彭涛・中国弁護士(東京))
三.上海法務事情
**************************
1. 上海市不動産登記条例の施行
2009 年 7 月 1 日に、「上海市不動産登記条例」が施行された。これは、「中華人民共
和国物権法」18の施行に伴い、旧来の条例において物権法と不一致が生じていた点につ
いて修正、補充、改善を行うとともに、実務上生じていた問題についても法的な根拠
を与えた。
なお、昨年 10 月の上海市政府機構改革において、それまでの建物土地資源管理局〔上
海市房屋土地资源管理局〕の権能が、住宅保障及び建物管理局〔上海市住房保障和房
屋管理局〕19並びに、計画及び国土資源管理局〔上海市规划和国土资源管理局〕20によ
り分掌されることになった。但し、物権法第 10 条に基づく統一登記の原則及び土地・
建物の一体的保護のために、従前どおり、統一した業務を行うこととしている(第 5
条、第 6 条)。即ち、①窓口の統一(不動産所在地の区・県の不動産登記処(交易セン
ター)にて手続を行う)、②証書の統一(土地建物の一体化した不動産権利証書)、③
業務基準の統一、④情報システムの統一である。
登記手続の概要・必要書類については上海市住宅保障及び建物管理局のウェブサイト
に詳しい説明がある。21 また、ウェブサイトでは不明な事項については、オンライン
で質問も可能である(ユーザー登録が必要)。22 筆者が、案件の過程でオンライン質
問を行ったところ、数日以内に携帯電話宛に詳細な回答があった。不在でも何度も電
話を掛け直して来ており、責任感のある対応がなされているとの感想を持った。
(山根基宏・弁護士(上海))
監
修:何連明・外国法事務弁護士(東京)
編集協力:李英愛・中国弁護士(東京)
野中信孝・弁護士(東京)
苗暁艶・中国弁護士(東京)
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全国人民代表大会 2007 年 3 月 16 日公布、同年 10 月 1 日施行
http://www.shfg.gov.cn/
http://www.shgtj.gov.cn/
http://www.shfg.gov.cn/jydj/djzn/djzn/
http://www.shfg.gov.cn/user/login.jsp?/zxts/wyzx.jsp
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