1 講義の目的と進め方 2 講義担当者 3 教材

慶應義塾大学矢上キャンパス
授業概要 (シラバス)
2001 年度
秋学期
科目名 : フィナンシャル・エンジニアリング特論
担当者氏名 : 枇々木 規雄
1
講義の目的と進め方
(2) シナリオ・ツリー型多期間確率計画モデル :
(1.5 回) 12/18, 1/8:
個別の株式や債券のポートフォリオ選択問題をは
じめ、資産配分問題 (アセット・アロケーション)、
(3) シミュレーション型多期間確率計画モデル :
(1.5 回) 1/8, 1/15
ALM(資産負債管理) の問題解決のために、数理計
画モデルによる最適化手法が用いられている。本講
この授業では講義だけでなく、金融データベースや
義では、金融工学分野で用いられる最適化手法、特
数理計画法 (最適化) ソフトウェア、統計ソフトを用
に数理計画法によるモデル化の考え方や手法を中心
いた実習を行いながら、理解を深めるととともに、
に講義する。
「実際にできる」ことを目指したい。金融機関では、
金融工学で取り扱う問題に対するモデル化の考
投資信託や年金基金の運用など、金融工学の技術の
え方を理解し、(実際に問題を解くときには) 直感的
一つとして最適化手法を用いた商品設計能力も必要
に分かりやすい数理計画ソフトウェアを使うことに
である。受講者はこの講義を通じて、その基本的な
よって、数理計画モデルの取り扱い方(使い方)を
考え方や技法を学んで欲しい。
学ぶことを第一の目標としたい。もちろん、数理計
画法に対する数学的理解は十分にある方が望ましい
2
が、本講義ではそれを特に要求しない。
3 枇々木 規雄(ひびき のりお)
また、金融工学においても重要な手法であるモン
3 オフィス : 25-610B, 内線 42660
テカルロ・シミュレーションについても簡単に触れ
3 メールアドレス : hibiki@ae.keio.ac.jp
る。具体的には以下の予定で講義を実施する。
※ 11/6, 11/13(火) は、海外学会出張のため、休講
にします。
金融工学のための最適化モデル : (1 回) 10/1
モンテカルロ・シミュレーションと金融工学 講義担当者
3
教材
講義の際には、講義資料を配付する。
教科書
(1.5 回) 10/9, 10/16
最適ポートフォリオ選択問題 (全 4.5 回)
(1) 平均・分散モデル : (1.5 回) 10/16,10/23
(2) 様々なポートフォリオ選択モデル :
(3 回) 10/30, 11/20, 11/27
最適資産配分問題 (全 5 回)
(1) 戦略的資産配分問題に対する数理計画モデル :
(2 回) 12/4, 12/11
[HBK] 枇々木規雄 : 金融工学と最適化, 朝倉書店,
2001.
その他参考文献
(1) モンテカルロ・シミュレーションと金融工学 :
10/9, 10/16
[EG] E.J.Elton and M.J.Gruber : Modern Portfolio Theory and Investment Analysis, (Fifth
Edition), John Wiley & Sons, 1995.
[HK1] 今野浩 : 理財工学 I | 平均・分散モデルと
その拡張 |, 日科技連, 1995.
[HK2] 今野浩 : 理財工学 II | 数理計画法による資
産運用最適化 |, 日科技連, 1998.
[HT] 竹原均 : ポートフォリオの最適化, 朝倉書店,
1997.
[MZ1] J.M. Mulvey and W.T. Ziemba : Asset and
Liability Allocation in a Global Environment,
Chapter 15 in \Handbooks in OR & MS,
Vol.9", edited by R.Jarrow et al., 1995.
(翻訳 : 枇々木規雄 : グローバル環境におけ
る資産負債配分, 第 15 章, 今野浩, 古川浩一編
著, ファイナンスハンドブック, 1997.)
[MZ2] J.M. Mulvey and W.T. Ziemba : Asset and
Liability Management Systems for Long-Term
Investors: Discussion of the Issues, Chapter
1 in \Worldwide Asset and Liability Modeling", edited by W.T. Ziemba and J.M. Mulvey, 1998.
モンテカルロ・シミュレーションは、複雑な派生
証券の価格付けやポートフォリオのリスク評価など、
金融工学における代表的な問題を解決するために利
用されている。ここでは、モンテカルロ・シミュレー
ションの基本的な手法とともに、具体例として、ç
1
株式オプションの価格付け法、ç
2 Value at Risk の
計算法 (リスク評価法)、への適用について説明する。
モンテカルロ・シミュレーションの計算精度を上げ
る方法として、分散削減法についてもオプションの
価格付けを例にして、説明する。
(2-1) 最適ポートフォリオ選択問題 I : 10/16, 10/23
| 平均・分散モデル|
ポートフォリオ分析に関する復習を簡単にする。
投資家がどの投資対象にどれだけ投資したらよい
かという問題であるポートフォリオ選択問題を実際
に解くために最もよく使われている平均・分散モデ
ルについて説明する。離散データを用いた定式化と
して、コンパクト分解表現による定式化を示す。ま
た、空売りを認める場合の最適解の導出方法も説明
する。
è ポートフォリオ分析 (復習)
è 平均・分散モデルとポートフォリオ選択
授業計画
4
枇々木 [HBK] の第 1 章, 第 4 章∼第 8 章を中心に
行う。以下の内容に沿って、授業を進めるつもりで
è 離散データを用いた定式化
è 空売りを認める場合の最適解の導出
(2-2) 最適ポートフォリオ選択問題 II : 10/30, 11/20,
あるが、進行具合によって変更する可能性があり
11/27
得る。
| 様々なポートフォリオ選択モデル|
(0) 金融工学のための最適化モデル : 10/1
最適化手法の概要と数理計画のモデル化の方法、
実際に問題を解くときに使うソフトウェアについて
も簡単に紹介する。
ポートフォリオ選択問題は平均・分散モデルで考
えたように、リターン (期待収益率) とリスクの 2 パ
ラメータ・アプローチにより取り扱うことができる。
ここではまずはじめに、リスク尺度として、(1) 分
散 (標準偏差) だけでなく、(2) 下方半分散、(3) 絶対
偏差、(4) 下方部分積率、(5) オープン L 偏差、(6)
è 最適化問題
不達成確率、(7) 区分線形・2 次リスク、(8) 条件付
è 最適化手法
きバリュー・アット・リスク、を用いるモデルを取
è 数理計画のモデル化とソフトウェア
りあげ、その定式化を示す。さらに、各種モデルの
比較を行う。また、ポートフォリオ選択を行う方法
にはベンチマーク・ポートフォリオの収益率を目標
戦略的資産配分のためのシミュレーション型多期
にする方法 (ポートフォリオ複製アプローチ) も考え
間確率計画モデルについて議論する。はじめに、そ
られる。2 パラメータ・アプローチに用いたリスク
のモデル化に必要な考え方を整理する。投資比率決
尺度の考え方を利用して、ベンチマークリスクを定
定モデル、投資額決定モデル、投資量決定モデルの
義し、それらを用いた定式化も示す。最後に、数値
3 つのモデルを段階的に定式化を行う。最後に簡単
実験例も示す。
な数値実験の結果を示す。
è 2 パラメータ・アプローチによるポートフォリ
è 投資の意思決定とモデル化
オ選択問題
è 各種モデルの比較
è ポートフォリオ複製アプローチ
è 数値実験
è モデルの定式化
è 数値実験
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(3-1) 最適資産配分問題 I : 12/4, 12/11
| 戦略的資産配分問題に対する数理計画モデル|
株式や債券などの資産クラスに対する配分比率を
成績評価の方法
成績は2回のレポートによって評価する。レポー
トの実施時期は以下の通り。詳細は講義の際にお知
らせします。
決定する資産配分問題 (アセット・アロケーション)
ç
1 11 月下旬
の概要を示す。次に、資産配分に対する数理計画モ
ç
2 1 月上旬
デルとして、投資家のビュー (見通し) を考慮したモ
学期末試験は実施しない。
デルと長期的な最適資産配分のためのモデル化の方
法を説明する。最後に、最適な動的資産配分を行う
6
履修上の注意
ための多期間確率計画モデルに必要な考え方や基本
的な定式化などを示す。
è 資産配分問題の概要
è 資産配分に対する数理計画モデル
本講義は、金融 (工学) の基礎的な考え方はある程
度分かっているというもとで、講義を進める予定で
ある。したがって、管理工学科 4 年生科目 (春学期)
「フィナンシャル・エンジニアリング」(枇々木担当)
è 多期間確率計画モデルの概要
を履修している、または講義を聴くための必要な基
(3-2) 最適資産配分問題 II : 12/18, 1/8
礎知識をすでにある程度身につけていること、もし
| シナリオ・ツリー型多期間確率計画モデル|
戦略的資産配分のためのシナリオ・ツリー型多期
間確率計画モデルについて議論する。はじめに、そ
のモデル化に必要な考え方を整理する。投資比率決
定モデル、投資額決定モデル、投資量決定モデルの
3 つのモデルを段階的に定式化を行う。最後に簡単
な数値実験の結果を示す。
è モデル化のための準備
è モデルの定式化
è 数値実験
(3-3) 最適資産配分問題 III : 1/8, 1/15
| シミュレーション型多期間確率計画モデル|
くは講義を聴く際に必要となる知識を自ら勉強して
くれる意欲があることを要求します。