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コロプラおでかけ研究所レポート#5
2011 年 5 月 13 日
今年の GW の「おでかけ距離」は前年比 7.9%増。西高東低が顕著
おでかけを科学する<コロプラおでかけ研究所(主席研究員:長谷部潤)>は、株式会
社コロプラ(代表取締役:馬場功淳)が運営する位置ゲープラットフォーム「コロプラ+
(プラス)
」における月間 4,000 万回もの位置登録情報を分析。その結果、今年の GW の
ユーザ当たり平均移動距離は前年比 7.9%増であったことが明らかになった。
人出は前年に対し確実に伸びたものの、全体的に「西高東低」の傾向が強く、特に首都
圏の人々は昨年に比べ大幅に「西」へと向かった。東北地方は健闘した地域も目立ったが、
全体としては厳しい結果であった。
※位置登録データは統計処理をしており、ユーザの皆様個人を特定できるものではありません。
+10%以上+20%未満
+20%以上
▲10%以上▲20%未満
▲20%以上
GW おでかけ指数(会員増減分を調整した位置登録回数)前年同期比。西高東低であることが分かる
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■確実に「活発なおでかけ」であった今年の GW
震災の影響がまだ色濃く残るものの、人々の動きが徐々に回復へと向かい始めた今年の
ゴールデンウィーク(GW)
。昨年と比べると「おでかけ」はどのような傾向を示したので
あろうか。下図は、<コロプラ+>のユーザ当たり平均移動距離の日次推移を、2010 年と
2011 年とで比較したグラフである。ユーザ当たり平均移動距離は、特定ユーザの移動距離
が延びた場合でも、また移動するユーザ数が増えた場合でも、ともに伸長するため、おで
かけの活発さを見るのに非常に適している。
昨年に比べ上回る傾向が強かった今年の平均移動距離であるが、震災で大きく落ち込み、
春の三連休も多少の回復にとどまった。しかしながら、GW には総じて昨年を上回る結果と
なった。GW 期間中の比較では、昨年に対し 7.9%もの伸びとなった。震災で冷え込んだ人々
の「おでかけ」であるが、この GW を機に一気に従前の状態にまで戻った可能性がある。
90km
ユーザあたり平均移動距離(km/一日)・去年今年比較
85km
2011年
2010年
80km
春分の日
75km
(春の三連休)
建国記念の日
(2011年は三連休)
70km
65km
60km
55km
50km
45km
GW
震災
5/3
4/26
4/19
4/12
4/5
3/29
3/22
3/15
3/8
3/1
2/22
2/15
2/8
2/1
40km
震災以降、前年に対しビハインドしていた平均移動距離であるが GW を機に一気に前年を上まわった
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■地域的には「西高東低」が顕著だった今年の GW
下図は、地方ごとの会員増減分を調整した位置登録回数を指数化した「おでかけ指数」
の前年同期比である。どのエリアに人が向い、結果、どのエリアが活況だったか、を見る
ための指標である。結論から言うと「西高東低」が色濃く出た今年の GW であった。関東
地方ユーザがこれまで以上に「西」に向かい、一方で関西地方ユーザは「日本最大の観光
地」である東京に向かう比率が昨年に比べて大きく減少した。
東北地方は流石に厳しく、12.5%のマイナス。都道府県別では青森県が最も大きな落ち
込み(▲22.3%)となるなど、東京から遠い県ほど落ち込みが目立った(青森>岩手>宮
城、の順で悪かった)
。東北の落ち込みは、当地での関東地方ユーザによる位置登録回数減
が主因。一方で関西地方から東北へのおでかけ指数は大幅に増加した。被災地訪問という
新たなニーズが双方に生じたものの、もともとの観光需要規模の差異(東北地方の訪問ユ
ーザは圧倒的に関東ユーザが多い)が、こうした違いにつながったと考えている。
東日本以外で落ち込みの目立ったところとして▲11.8%の宮崎県があげられる。新燃岳
噴火の影響かと思われるが、
宮崎県庁ウェブサイトでは、
火口 3km 以内は立入禁止ながら、
県内のほとんどのホテル、旅館、観光施設等は通常通りの営業を行っているとのこと。正
しい情報が伝わることでの観光客数改善を当研究所も願っている。
25.0%
20.2%
18.0%
20.0%
15.0%
15.2%
15.0%
10.0%
5.0%
6.1%
1.2%
6.6%
1.0%
0.0%
-5.0%
-10.0%
-15.0%
-12.5%
地方別のおでかけ指数の前年比伸率。関東以北と中部以西との違いが如実である
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■震災の影響のなかった関西(二府二県)の人々はどこへ向かったか?
おでかけ先としても人気が高く、また、震災の影響を受けておらず、おでかけする人々
も昨年に比べ大いに伸長した関西地方の人々は、この GW どこに向かったのであろうか。
下図は関西二府二県(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)を本拠地とする<コロプラ+>
ユーザおでかけデータである。おでかけ指数が前年比でどれだけ変化したかでランキング
した。
最も伸びたのが青森県。母数がもともと小さいところに震災関連で実家や親戚など訪れ
るユーザが上積みされたことで、大きな伸長率になったと思われる。ちなみに全国では前
述したようにワーストである。4 位の愛媛県は関東からも訪問するユーザが多く、NHK ド
ラマ「坂の上の雲」などで認知が上がったことが要因だろう。テレビはおでかけに大きく
影響していると当研究所は考えている。例えば、二府二県の市町村別でのおでかけランキ
ング 1 位は、広島県尾道市である。尾道は、今年の 4 月まで放送していた NHK 連続テレビ
小説「てっぱん」の舞台であり、かなりの影響があったと考えるべきだろう。(ちなみに 2
位は滋賀県近江八幡市。大河ドラマ「江」の影響だろうか?)。
ワースト 5 位には地元(二府二県)がいくつか含まれているが、これは「地元にいない
ため位置登録回数が減少した」という意味であり、そのエリアの人々はおでかけしている
という証左でもある。目立つ所では 45 位(ワースト 3 位)の東京都があげられる。東京は
我が国最大の観光地であり、例年多くの人が訪れる。しかしながら、二府二県からのおで
かけ指数は前年比 11.3%のマイナスであり、かなりの落ち込みであったことが分かる。関
西の人々も観光ならば「西に向かう」ことが、今年の GW の特徴と言えるであろう。
ベスト5位
ワースト5位
1位
青森県
247.1%
43位
大阪府
93.2%
2位
北海道
204.6%
44位
京都府
89.7%
3位
鹿児島県
203.2%
45位
東京都
88.7%
4位
愛媛県
179.5%
46位
兵庫県
88.5%
5位
熊本県
172.3%
47位
山形県
81.6%
関西二府二県ユーザのおでかけ先位置登録数伸率ランキング(都道府県別)
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■自粛が懸念された関東(一都三県)の人々はどこへ向かったか?
では、最も人口規模が大きく観光業への影響も大きい関東地方の人々は、この GW どこ
に向かったのであろうか。下図は関東一都三県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)を
本拠地とする<コロプラ+>ユーザのおでかけ先ランキングである。やはり上位 5 位までは
全て「西」である。
4 位の滋賀県は全国では 2 位。全国から人を呼んだエリアの一つである。やはり前述した
NHK 大河ドラマ「江」の影響が強いと思われる。滋賀県内では、近世の街並み保存が素晴
らしい近江八幡市(豊臣秀次が築いた)、旧安土町(織田信長が築いた)周辺が 5 割以上の
伸びとなっており、特に顕著な人気を示した。江が生まれたとされる小谷城のある長浜市、
また国宝彦根城のある彦根市も伸び率は高く、ともに 2 割台の伸びであった。
5 位の奈良県は、全国ベースでは 1 位であり、関東のみならず、全国からも多大なる人気
であった。昨年 11 月に終了した平城遷都 1300 年祭で認知度を高めたことで、今年の GW
もそのまま人気を維持した印象である。
ワースト 5 位には東北地方が 3 県含まれている。東北地方は被災関連での訪問数が全国
的に伸びている印象であるが、もともと観光客数として莫大な規模を擁していた関東地方
からの人出が落ち込むと、やはり厳しい数字となってしまう。ただ観光地の中には健闘し
ているエリアも多い。岩手県の遠野、秋田県の大館、宮城県の蔵王、福島県の喜多方、な
どは前年比でプラスとなっている。
ベスト5位
ワースト5位
1位
愛知県
183.8%
43位
岩手県
90.3%
2位
大分県
181.9%
44位
東京都
89.6%
3位
三重県
178.6%
45位
茨城県
88.3%
4位
滋賀県
170.9%
46位
秋田県
84.4%
5位
奈良県
167.8%
47位
青森県
77.5%
関東一都三県ユーザのおでかけ先位置登録数伸率ランキング(都道府県別)
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■関東の「近場」はどうだったか?
関東地方の人々は、震災の影響もあり、もともと「近場」に人出が集中するのではない
か、との観測が強かった。全国の駅を軸に前年に比べ人出が伸びたエリアを見ると、上位 5
駅のうち、3 駅が「近場ニーズ」であったことがうかがえる。やはり関東に関して言えば、
今年の GW は近場に大きなおでかけニーズが向かったと言えるだろう。
路線名
駅名
前年比
1位
JR埼京線
北与野
230%
2位
JR東海道本線
函南
207%
3位
JR武蔵野線
吉川
196%
4位
JR京葉線
舞浜
195%
5位
JR京浜東北線・他
浜松町
186%
<コロプラ+>全ユーザによる駅別位置登録数伸率ランキング
1 位の北与野駅は、GW 期間中に「Mr.Children」のツアーがあったため。いわゆる近場
のコンサートへのおでかけである。3 位の吉川駅は大規模ショッピングモール「イオンレイ
クタウン」のある越谷レイクタウンの隣駅。4 月 29 日にイオン初となるアウトレットモー
ルがグランドオープンし、数十万人規模の人出を集めた。4 位の舞浜駅は言わずと知れた「東
京ディズニーリゾート」の最寄駅。以前のレポートでも記したが、浦安市のおでかけ指数
は、ほぼ震災前の水準に戻っている。
ちなみに 2 位の函南駅は、東海道新幹線下りで新丹那トンネルを抜けた直後の駅。トン
ネル内で位置登録が出来ないユーザが一斉に位置登録をする駅である。従って、この駅の
位置登録回数は、そのまま東海道新幹線の利用状況をきれいに示しており、この GW は大
いに新幹線利用が伸びていることが分かる。5 位の浜松町は、言うまでもなく羽田空港の利
用度合いを示している。遠距離ニーズも相応に伸びたことが分かる。
最後に近場の代表例として継続ウオッチしていた「上野動物園」
、および千円高速の効果
について述べる。
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■更に人気を増した上野動物園。千円高速の効果も確実に!
パンダ人気により震災前の水準を遥かに凌駕した上野動物園であるが、GW はパンダ公開
時の人出を更に上回る結果となった。近場ニーズの代表例として注目できるだろう。
千円高速も効果があった。GW 全期間千円高速適用となった今年の GW であるが、より
遠くのサービスエリア(SA)での位置登録が前年比で伸びた。ただ東北自動車道は岩手以
北になると厳しい印象。東名&名神高速は全線まんべんなく前年に対し高い伸びを示した。
上野動物園内位置登録ユーザ数
1,400
GW
1,200
パンダ一般公開
1,000
800
震災
600
400
200
0
3/1
3/8
3/15
3/22
3/29
4/5
4/12
4/19
4/26
5/3
3 月 1 日の位置登録ユーザ数を 100 とし指数化。パンダ公開直後の人出を更に GW で上回った
一都三県ユーザ東北道SA位置登録状況
100%
2010
60%
70
2011
40%
60
50%
50
40%
40
30%
40
20%
30
0%
30
-20%
20
10
津軽SA
花輪SA
岩手山SA
紫波SA
前沢SA
国見SA
長者原SA
安達太良SA
那須高原SA
佐野SA
上河内SA
-40%
蓮田SA
0
20%
10%
10
0
0%
吹田SA
20
大津SA
50
70%
60%
多賀SA
60
養老SA
2011
80
80%
上郷SA
70
前年比伸率
浜名湖SA
2010
80%
90
牧之原SA
80
100
富士川SA
前年比伸率
足柄SA
90
海老名SA
100
一都三県東名&名神高速SA位置登録状況
最も東京に近い SA での位置登録回数を 100 とした各 SA の位置登録回数指数化グラフ
7/9
■まとめ ~東北は依然厳しいものの、「おでかけ」の回復は顕著~
3 月 31 日に<コロプラおでかけ研究所>の第一回レポートを発行して以来、当研究所で
は一貫して「人々の移動なくして経済の復興はない」とのスタンスで、様々な角度からレ
ポーティングを続けてきた。
第二回レポートでは繁華街の復調と計画停電エリアの戻りの鈍さを記し、第三回レポー
トでは自粛によるお花見客の大幅な減少から、自粛ムードの一日も早い払拭を主張した。
前回、第四回レポートでは、千円高速の効果を我々が持つ位置情報データから立証。今年
の GW が全期間千円高速の対象となることや、お花見の頃にピークであった自粛ムードの
和らぎから、今年の GW は思いのほか、おでかけは活況になるのではないかと記した。
そうした震災以降のおでかけの状況をある意味総括したのが GW を受けての第五回レポ
ートである。結果は予想通り全体としては昨年の GW を大きく上回る「おでかけ」を確認
することが出来た。特にユーザ当たり平均移動距離が前年比で約 8%も伸びたのは当研究所
でもサプライズであった。ただ中身に関しては、想像以上に「西高東低」であったことに
も軽い驚きを覚えた。特に関東地方のユーザが、こぞって「西」に向かったことは、特記
すべきであろう。テレビの効果の大きさも今回目立ったところの一つである。
少なくとも「自粛」がおでかけの阻害要因となっていた状況は、ほぼ払拭されたと言え
る。ただ将来に対する漠然とした不安や、景気動向などを鑑みると、財布の紐はますます
きつくなることが予想される。平城遷都 1300 年祭の奈良や、ドラマ「てっぱん」の尾道の
ように、これまで以上の企画力とメディア連携による露出など工夫が必要となってくるだ
ろう。逆に言えば、それさえ出来れば、おでかけニーズそのものはむしろ前年よりも膨ら
んでおり、より一層の成果が得られる可能性も実は高まっているのである。
―
以 上 ―
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【コロプラおでかけ研究所について】
株式会社コロプラ内に設立された「おでかけ」に関するリサーチセンター。位置情報プラ
ットフォーム<コロプラ+>におけるユーザからの月間 4,000 万回にも及ぶ位置登録情報
データをベースに「人々の移動」を調査・分析し定期レポートを発表している。
主席研究員: 長谷部潤 ※株式会社コロプラ 取締役 CSO(最高戦略責任者)を兼務
【株式会社コロプラ 会社概要】
社名:
株式会社コロプラ
http://colopl.co.jp
所在地:
東京都渋谷区恵比寿南 1-15-1 JT 恵比寿南ビル 3F
設立:
2008 年 10 月 1 日
資本金:
35,885,000 円
代表者:
代表取締役社長 馬場功淳
事業内容:
「コロニーな生活☆PLUS」など位置情報ゲーム、位置情報サービスプラ
ットフォーム「コロプラ+」の開発・運営
【本リリースに関するお問い合わせ】
株式会社コロプラ 経営企画部 天野 press@colopl.co.jp
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