図 書 館 報 第 194(15-5)(2015.12)別冊 横浜女子短期大学図書館 TEL 045-835-8115 / FAX 045-835-8118 E-mail lib@yokotan.ac.jp 私たちのおすすめ ぜひ読んでください! 11 月 18 日、選書ツアーに参加しました。店頭に並ぶ数え切れない本のなかから、 この学校の図書館にあったらいいかな、という本をさがすのは、結構大変でした。それ でもみんなで相談しながら 160 冊もの本を選びました。皆さんもぜひ読んでくださいね。 『バムとケロのもりのこや』島田ゆか作・絵 早川 麻衣 バムとケロシリーズは、昔から大好きな絵本です。これはまだ見たことがなかった絵 本だったので、思わず手に取ってしまいました。独特な世界観やすみずみまで丁寧に描 かれた絵は、何回見ても飽きません。 今回の「もりのこや」は、森に古い小屋を見つけ て隠れ家にする話。また、新しいキャラクター「ソ レちゃん」も登場します。このシリーズが好きな人 も、まったく手に取ったことのない人も、ぜひ一度 読んで欲しいなと思います。(文渓堂) 『いつもいっしょに』こんのひとみ作・いもとようこ絵 又吉 ひとりぼっちのくまのところにうさぎがやって来まし た。ずっとひとりだったくまは嬉しくなり、料理を作った り、いつも一緒にいました。けれど、うさぎはなかなか話 しをしません。そんなある日くまは、大きな声であること を言ってしまいました。でも本当は一緒にいるだけで幸せ だ と 気づ く く ま。 心が あた た ま る 話で す 。 ぜひ 読ん でみ て ください。(金の星社) -1- 香穂 『ぼくのニセモノをつくるには』ヨシタケシンスケ作 橋本 唯 自分はどんな人間なのか? 「自分らしさとは」「人からどう思われているのか」など 自分について考えるキッカケをくれる絵本です。読み聞かせ ではなく、子どもと一緒に笑いながら話をしながら読むのに 適していると思います。ちなみに作者は神奈川の県茅ヶ崎市 在住だそうです。(ブロンズ新社) 『おんがくたいくまちゃん』 シャーリー・パレント文・デイヴィッド・ウォーカー絵 中澤 実緒 私がこの本を選んだ理由は、絵がとても可愛いからです。小さなくまちゃん達のしぐ さがとても愛らしく、ページをめくるたびに笑顔になれます。 あらすじは、4 匹のくまちゃんが好きな楽器をそれぞ れ選び、指揮者のくまちゃんを迎えて小さな音楽隊にな る、といったものです。 楽器の擬音や「どんな音が出るか な?」などの問いかけが多く出てくる ので、子どもと一緒に楽しんで読める 絵本です。(岩崎書店) 『まよなかのゆきだるま』森洋子作 波木井 これは、クリスマスにちなんだ絵本です。色が黒、白、 赤と 3 色だけで描かれていて、とても見やすいのと、どこ かあたたかさが感じられます。内容も人のあたたかさや、 自然の不思議などが描かれ、子どもはもちろん私たちも読 み入ってしまうストーリーです。みなさんもぜひ読んでみ てください。(福音館書店) -2- 愛 クリスマスには……ティファニーで朝食を トールマン・カポーティ(新潮文庫) H ティファニーというと、かつてオープンハートのネックレスを誰でもほしがった時 代がありましたね。そして、クリスマスが近づくと店内はカップルで大混雑、入場制限 までしてたけれど、今はどうなのかな? ティファニーブルーの小箱やリボンは女性の 憧れですよね。私はこの小説のように、読み終えてまた冒頭に戻って読み返す、そして なるほどと意味がわかったり、謎が解ける本が面白くて好きです。 O この話にも、ティファニーのクリストフォロスのメダルを贈る場面がある。それと 物語の冒頭にホリー・ゴライトリーの消息が「1956 年クリスマス」という 1 枚の写真 によって伝えられる。 H 気まぐれで、奔放、何にもとらわれない主人公ホリー。誰のものにもならないし、 誰もつかまえることができません。それでいて、何かに囚われているような、うら悲し い感じもします。ティファニーの装飾品のようなきらびやかさは身分不相応で、今、手 に入れられるのはイミテーションでしかないことをホリー自身がよくわかっている、そ れが読んでいて伝わってきます。汚れた中にある美しさや、愛さずにはいられない魅力 がホリーにあります。 O 19 歳の彼女は、映画スターを目指し、「いつの日か目覚めて、ティファニーで朝ご はんを」という夢を抱いている。ところが「この自分のままでいたいの」(p.63)とい う。まだ「一本の映画にも出たことのない駆け出し女優」(p.51)がこの物語の主人公。 そんな彼女は、いまは、どこで何をしているのかわからない。語り手の僕は、10 年ぶ りに彼女の消息を耳にする、というところからこの小説がはじまる。 彼女が「この自分のままでいたい」という背景にあるのは、アメリカ社会。政治、マ フィア、スキャンダルなどにまみれた世界のなかに彼女の目指す映画の世界もある。彼 女の周囲の人間がその世界を象徴している。だからこそ「自分といろんなものごとがひ とつになれる場所」がティファニー で、そのようなところが必要だとい う。彼女は、わかっている。いま、 自分を飾るものは、ダイヤモンドな どの宝石ではないこと。だから、せ いぜいティファニーでは名刺を特注 (p.70)することくらいしかしない し、できない。語り手の僕が共感す るところでもある。 H 「なんにも所有したくない」け れど、自分とひとつになれる場所は ティファニーだと思っている。それ でいて「ダイアモンドが似合うのはきっちり年取った女の人だけ」だとよく知っていま -3- す。そしていつか、もしリッチな有名人になったとしても「ティファニーで朝ごはんを 食べるときにも、この自分のままでいたい」と、自分をちゃんと持っているんです。 O マフィアとの関係を疑われ、逮捕されるときにも 「猫にごはんをあげてね」と「僕」に頼むことを忘れ ない。そんな彼女が、旅に出るときに「どっかに行っ ちまえ」(p.166)と車から猫を放り出す。猫とは「お 互い何の約束もしなかった」のではあるが、そう言い かけたところで「急に声を失」う(p.166)。で、映画 は、見ていないけれど、猫を追いかけてさがしだすん だね。でも、小説は追いかけない。その後彼女は、そ のまま、姿を消す。 H ティファニーみたいなところを見つけられたので しょうか。そして幸せになれたのかな。捨ててしまっ たものは二度と戻らないから。 O 「でも、これから私はどうなるの?……いつまで たっても同じことの繰り返し。……何かを捨てちまっ てから、それが自分にとってなくてはならないものだ とわかるんだ」(p.168)、ということばを残している。 そうして「僕」の前を去って行く。少し前に兄を戦死 で失っている(p.124)。彼女が名刺に記した住所は「トラベリング」(旅行中)。い まもあてどない旅をつづけているのか。何かを探しもとめる彼女の姿を、語り手の僕、 そして読者は探し求めることになる。 H カポーティの『あるクリスマス』『クリスマスの思い出』も続けて読みました。作 者の幼少期の思い出だそうです。 一日で読めるのでおすすめです よ。 O 小説と映画とは随分と違うと ころがあるようなんだけど。映画 で見るワンシーン、そして、「ム ーンリバー」のインパクトは強烈 だね。 H いいですよね。うっとりして しまいます。 O=奥泉、H=原 -4-
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