坂本達哉研究会(他学部・可) - 慶應義塾大学 経済学部ゼミナール委員会

坂本達哉研究会(他学部・可)
―社会思想史―
1.
研究分野
私の研究分野は英米を中心とする社会思
想史です。イギリスの 18 世紀思想史が専
門で、なかでもデヴィッド・ヒューム
(David Hume,1711-1776)の思想がその中
心です。興味のある諸君は、『ヒュームの
文明社会――勤労・知識・自由』(創文社
1995 年)、『ヒューム 希望の懐疑主義―
―ある社会科学の誕生』(慶應義塾大学出
版会 2011 年)をご覧下さい。ヒュームは
「イギリスが生んだ最も偉大な哲学者」と
言われていますが、実際には、「哲学」を
超えた大思想家であり、近代社会科学の最
も重要な確立者のひとりでもあります。経
済学の歴史では、親友のアダム・スミスに
先行する最重要の人物であり、市場経済の
思想的諸問題をめぐる先駆的な探求者で
もありました。ヒュームの文章はいま読ん
でも驚くほど新鮮で、とても生誕 300 年を
迎えた人の文章とは思えません。私はこう
いうヒュームと学部時代に出会って以来、
魅了され続けてきました。長年にわたり、
国際的な研究活動を心がけており、いまで
は、海外にもヒューム研究を軸として数多
くの知人・友人ができました。この文章も
大学の特別研究期間を利用して滞在中の
ケンブリッジ大学で書いています。私とし
ては、これまでの成果に満足することなく、
あともう一冊ヒュームの研究書を出版し
て、私なりのヒューム 3 部作を完成させた
いと念じているところです。
同時に、私の学問的関心はヒュームを超
えて幅広く、同時代人のスミスやルソーは
もちろんのこと、19 世紀のミルやマルクス、
現代のケインズやロールズ、日本の福沢諭
吉や丸山真男にまで及んでいます。そのあ
たりに興味のある方は、経済学史学会編
『古典から読み解く経済思想史』(ミネル
ヴァ書房 2012 年)所収の「学問のすすめ
の経済思想――スミス、ミル、福沢」をご
一読下さい。現在、社会思想史の通史を執
筆中で、来年秋に出版の予定です。これも
ぜひご覧下さい。
偉大な思想家の言葉が数百年の時を超
えて人間の知性と精神に訴えると言うこ
との見本を、私はヒュームから教わりまし
たが、それはヒュームに限ったことではあ
りません。歴史の試練を超えて古典として
生き残っている思想家たちの諸作は、みな
同じ力をもっています。諸君には、
「古典」
のもつこの強靱な力を、私の研究会で実際
に学び、感じてほしいと願っています。
2.
学生への要望
私の専門は上に書いたとおりですが、研究
会の学生諸君にそれを押しつけるつもり
はまったくありません。むしろ、学生諸君
の個性や自由を最大限に尊重します。「古
典」の力を実感してほしいという考えには
変わりありませんが、「古典」の範囲は幅
広く、諸君一人一人の選択の余地は無限で
す。私からの要望としては、混迷する人類
社会の現状において、人間と社会にかかわ
る物事を根本から考え直してみたいとい
う意欲があってほしいと言うことです。社
会思想史にかんする予備知識は一切必要
ありません。日吉の「経済思想の歴史」な
どの科目を履修しているに超したことは
ありませんが、そうでなくてもまったく不
利はありません。昨年度に卒業した学生た
ちの卒論のテーマには、カント、ロールズ
といった正統的なものから、
「恋愛と結婚」、
「チャップリンの映画論」などもありまし
た。こうした自由な研究態度の尊重は私の
研究会の長年の伝統でもあります。
3.
選考について
① 募集人員:今回は、新 4 年生がいない
ため、複数回の選考を合わせて、最大
20 名程度を考えています。他学部生の
入会、4 年からの入会も歓迎しており、
昨年度も 2 名の他学部生、3 名の 4 年
入会者がありました。さらに外国人留
学生も「大歓迎」します。
② 選考内容:当日の小論文と面接により
ます。成績表は不要です。
③ 選考基準:志望する動機・理由が明確
であること、これにつきます。
4.
5.
ゼミ員構成
教員が特別研究期間中のため、現役ゼミ生
はいません。したがって以下も坂本が執筆
します。
活動内容
① 本ゼミ(火曜・4・5限)
古典的な書物と定評ある概説書等を中
心とする「輪読」と、学生の発表の 2
本柱によって構成されます。
春学期は、2 週間に 1 冊のペースで
入門書・話題書の輪読を進め、学生相
互の共通の基盤作りを目指します。来
年度は、マイケル・サンデル『これか
らの「正義」の話をしよう』から始め
る予定です。取り上げる書物の選定に
は、学生諸君の意見をできる限り尊重
します。
夏合宿での自由研究発表をふまえ、
秋学期からは卒業論文の作成を視野に
入れた個人研究報告と「古典」の輪読
を行います。「古典」といっても比較
的短い作品を精選して、3-4 冊を読み
ます。何を取り上げるかは、諸君の希
望を聴きながら、春学期の終わりに決
定します。個人研究報告はゼミ生の人
数にもよりますが、基本的に、3 年生
は各 1 回、4 年生は各 2 回行います。
② サブゼミ
私の研究会では、制度としてのサブゼ
ミは行っていません。年度によっては、
一部の学生諸君が自発的に読書会や勉
強会をすることもありますが、これは
義務ではありません。
③ パートゼミ
上と同様です。
④ インゼミ
行っていません。
⑤ 課外活動
教員が指示することはありませんが、
昨年度は、とくにゼミ生相互の仲が良
く、私の知らないところでコンパや合
宿すらも行っていたようです。しかし、
これはすべて学生の自由であり、基本
的には、火曜日の本ゼミに真面目に出
席すること以外の義務はありません。
⑥ 三田祭
学生の自由に任せており、とくにゼミ
活動の一部に組み込むことはありませ
ん。
⑦ 合宿
夏合宿を 9 月の秋学期開始前に行いま
⑧ 夏休み
義務的な活動はありません。
⑨ 授業
私の三田の基本科目講義(毎年月曜の
秋学期 4・5 限)は特別の事情がない限
り履修して下さい。春学期にはゼミ以
外の授業はありません。
⑩ 経費
指定文献の購入費用、コンパ・合宿の
費用以外にゼミ固有の経費はありませ
ん。
6.
ゼミ試験対策で使用した参考書
試験に役立つというより、社会思想史
とはどういうものかを知るには、以下
の書物が参考になります。
水田洋『新稿・社会思想小史』(ミネ
ルヴァ書房)。
山脇直司『社会思想史を学ぶ』(ちく
ま新書)。
藤原保信『自由主義の再検討』(岩波
新書)。
R・ハイルブローナー『入門経済思想
史-世俗の思想家たち』(ちくま学芸
文庫)。
7.
先生が担当している講義
前述の通り。
8.
連絡先
入ゼミ選考に関することや、ゼミ活動に関
することは、どんなことでも私にメールで
連絡して下さい。アドレスは以下の通りで
す。→ saka@econ.keio.ac.jp。