ふくいオープンイノベーション推進機構

ISSN 0915-4264
CENTER NEWS
122
2015-9
-Contentsふくいオープンイノベーション推進機構
~産学官金が連携して県内企業のものづくりを強力にサポート~
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研究紹介
LEDテキスタイルの製品化に向けて
4
パターンニング垂直配向カーボンナノチューブの合成
6
「キッズものづくりラボ」開催報告
福井県工業技術センター
8
Fukui Open Innovation Promotion Agency
ふくいオープンイノベーション推進機構
〜産学官⾦が連携して県内企業のものづくりを強⼒にサポート〜
産業界、学界、⾏政および⾦融の総⼒を結集し、幅広い⼈材・組織・ネットワークを活かして新たな
事業の創出を⾏っていく「ふくいオープンイノベーション推進機構」(Fukui Open Innovation
Promotion Agency:FOIP) を、本年6⽉3⽇に設⽴しました。
【設立のねらい】
我が国の産業は、先端材料の開発など技術⾰新が著しく、企業を取り巻く状況は⼀層激しさを増して
います。
本県においても、イノベーション創出に向け、企業や地域の枠を超えた連携による技術的課題解決の
必要性が⽣じており、これまで以上の産学官連携の強化が急務となっています。
そのため県内の企業や⼤学・⾼専、公設試等の研究機関に⾦融機関を加えた、産・学・官・⾦が組織
の境界を越えて連携し、外部⼈材も活⽤しながら課題解決にあたる開かれたネットワーク体制の構築が
必要です。
そこで、幅広い⼈材・組織・ネットワークを活⽤して研究開発⼒の向上を図る体制を築くとともに、
新たな事業の創出を⾏うため、「ふくいオープンイノベーション推進機構」を設⽴しました。
【連携体制】
海外の研究機構を参考にした組織・⼈材システムを設⽴し、産学官⾦の叡智を結集して、県内企業の
イノベーション(技術開発)を応援し、Hidden Champion(グローバルニッチトップ企業)の創出を
⽬指します。
【事業計画】
企業、⼤学・⾼専、県内外の研究機関および⾦融機関が連携を⾼め、⾰新的な研究、製品開発を
⽀援するとともに、事業化に向けた技術営業を推進します。
【ネットワークの構築】
○⼤学・⾼専、他機関間のネットワーク構築(⼈材データベースの構築)
○登録研究者・技術者の企業への派遣(企業現場・拠点における研究開発)
○研究会や異業種交流会の実施(研究会発のプロジェクト創出)
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【共同研究・受託研究】
○共同研究や受託研究の実施(運営、進捗管理)
○国の競争的資⾦の獲得
○県の技術開発補助制度へのサポート
○⼤型研究プロジェクトの実施
【技術営業】
○シーズ・ニーズ調査および情報提供
○国内外の商談会など、事業化に向けた⽀援
○メーリングリストや機関紙など情報発信、広報事業
○研究開発資⾦計画や事業化に向けた融資など経営相談
【ご利用の流れ】
企業から研究課題について委託を受け、オープンイノベーション推進機構が保有する研究⼈材データ
ベース等を駆使して、最適な研究チームにより研究開発を⾏います。そして、研究の成果を委託企業
様が実⽤化し、製品販売につなげます。
「ふくいオープンイノベーション推進機構」への参加募集
本機構に参加する企業・研究者を募集しています。自社技術だけでは事業化するのが難しいとお困り
の方、研究成果を製品化に結び付けたいとお考えの方、ぜひこの機会にご登録ください。
1 対象(分類)
○会員(機構の設⽴趣旨に賛同する企業または個⼈)
○構成機関(県内外の⼤学、⾼専、研究機関、⾦融機関)
2 会費
無料(但し、各事業実施にともなう経費は負担いただく場合があります)
3 申込⽅法
申込書(HPよりダウンロードできます)にご記⼊の上、FAXでお申し込みください。
インターネットによる申し込み:http://www.fklab.fukui.fukui.jp/kougi/foip/sanka.php
4 問い合わせ・申し込み先
福井県⼯業技術センター 企画⽀援室
Mail:foip@fklab.fukui.fukui.jp
TEL:0776-55-0664/ FAX:0776-55-3430
ホームページ:http://www.fklab.fukui.fukui.jp/kougi/foip/
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研究紹介
LED テキスタイルの製品化に向けて
1.はじめに
今 後 の成 長 分 野 の一 つとしてウェアラブル分 野 があり、眼 鏡 や腕 時 計 に電 子 部 品 を搭 載 した各 種 製
品 開 発 が行 われています。テキスタイルもウェアラブル分 野 では不 可 欠 な素 材 であり、例 えば心 拍 を計
測 するシステムを搭 載 したシャツなど、エレクトロニクス技 術 とテキスタイル技術 を融 合 したe-テキスタイル
の研究開発が活発に行われています。
当 センターでもこれまでに多 層 構 造 織 物 の圧 縮 特 性 を利 用 したテキスタイルセンサー、ICタグを織 り
込 んだICタグテキスタイル、LED基 板 を実 装 したLEDテキスタイル、球 状 太 陽 光 発 電 素 子 を用 いた太 陽
光発電テキスタイルなど、さまざまなe-テキスタイルの研究を行ってきました。
本 稿 では、これらの研 究 の中 でも、最 近 製 品 化 に向 けて開 発 が進 んでいるLEDテキスタイルについて
紹介します。
2.LEDテキスタイルについて
当センターでは、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で、薄型で軽量かつフレキシブルな
特性を有するLEDテキスタイルを開発しました(特開2013-147767)。
LEDテキスタイルは、まず導 電 糸 を織 り込 んだ
細 幅 織 物 にLED基 板 を実 装 したLEDリボンを試
作し、このLEDリボンをよこ糸としてテキスタイルに
織 り込 んで作 製 しています。LEDテキスタイルに
コーティング加 工 を施 すことで、日 常 生 活 レベル
の防水性を付与することもできます(写真1)。
3.LEDテキスタイルの製品化に向けた動き
現 在 は、LEDテキスタイル関 連 の製 造 技 術 を
県 内 企 業 へ技 術 移 転 しLEDリボンの供 給 が可 能
となり、製 品 化に向 けていくつかの分野で具体 的
試作品の開発が進められています。
写真1.シリコンコーティング加工した
LEDテキスタイル
3-1 LEDリボン
2015 年 春 か ら は 、 株 式 会 社 SHINDO( 福 井 県
あわら市 伊 井 )でLEDリボンの生 産 ・販 売 が開 始
されました。
ユーザーの製 品 の仕 様 に合 わせてリボンの幅
やLEDの配置間隔、LED基板(明るさ)を変更でき、
防 水 性 などを目 的 とした樹 脂 加 工 も可 能 です。
また、電 源 もボタン電 池 、乾 電 池 、充 電 型 リチウ
ムイオンに対 応 できるようにしており、さらに太 陽
光 発 電 を利 用 したゼロエミッションシステム(写 真
2)を開 発しました。日 中 の太 陽光で蓄電できるた
め、環境に優しいだけでなく、電源交換や充電の
手間も省け、防水加工も容易となります。
写真2.太陽光発電LEDリボンシステム
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3-2 LED付きのぼり旗
カンボウプラス株 式 会 社 (福 井 県 鯖 江 市 御 幸 町 )では、LEDリボンを
活 用 した宣 伝 用 のぼり旗 (写 真 3)を開 発 しています。ポリエステル製 の
のぼり旗 にLEDリボンを貼 り付 け、LEDを点 灯 ・点 滅 させることで、遠 く
からでものぼり旗 に書 かれた店 舗 名 などの文 字 を目 立 たせることがで
きます。電 源 は乾 電 池 を使 用 し、どこにでも容 易 に設 置 できる構 造 に
しています。
東京ビックサイトで開催されたサイン&ディスプレイショウ(2015.08.27
~29)に出 展し、非 常 に高 い評 価が多 く得られました(写真 4)。2015年
秋 から発 売 を予 定 しており、店 舗 やイベントなどで使 われるのぼり旗 へ
の用途展開を目指しています。
3-3 ポータブル照明シート
太 陽 工 業 株 式 会 社 (東 京 都 世 田 谷 区 池 尻 )では、LEDテキスタイル
を用いて、災 害時の非常 用照明 として使用できるポータブル照明シー
ト(写 真 5)を試 作 しました。テント等 の簡 易 避 難 設 備 の膜 材 の一 部 に
使 用 することで照 明 補 助 や夜 間 の目 印 になる効 果 が期 待 できます。
非 常 時 でも簡 単 に確 保 できる電 源 として、パソコン等 でも駆 動 できる
USBに対応可能な仕様にしています。
写真3.LEDリボンを活用した
のぼり旗の試作品
写真4.サイン&ディスプレイショウの出展写真
写真5.ポータブル照明シートの試作品
4.まとめ
LEDリボン、LEDテキスタイルを応用 することにより、従 来の布 製品にはなかった視 認 性向上 や照 明補
助などの機 能付 与が期 待できます。今後 の製 品 化に向けて、耐久 性などの実 用的 な物性 評価も行って
いきたいと考えています。
担当者
新産業創出研究部 e-テキスタイル研究グループ
主任研究員
増田 敦士
専門分野/繊維(糸・織物物性、糸加工・製織技術)
研 究 員
帰山 千尋
専門分野/繊維(化学分析、樹脂加工)
主
事
辻
尭宏
専門分野/繊維(糸加工、物性評価)
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研究紹介
パターンニング垂直配向カーボンナノチューブの合成
1.はじめに
カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ ( CNT ) は 、 図 1 の よ う に 中 空
円 筒 の 構 造 を し た 炭 素 の 結 晶 で あ り 、 直 径 が 数 nm か
ら 数 10nm で 長 さ が 数 μ m 以 上 と 、 非 常 に 高 い ア ス ペ
クト比(長さと直径の比 率)を持っています。CNTの原
子構造は、炭素原子が蜂の巣状に六角形となった結
合で、その六員環ネットワークが構成するグラフェン
シートが単層または多層の同軸管状に形成されてい
ます 。単層 がシン グル ウォ ールナ ノチ ュ ー ブ( SWNT) 、
図1 カーボンナノチューブ(CNT)の構造
二 層 が ダ ブ ル ウ ォ ー ル ナ ノ チ ュ ー ブ ( DWNT ) 、 多 層
が マ ル チ ウ ォ ー ル ナ ノ チ ュ ー ブ ( MWNT ) と 呼 ば れ ま
す。[1]
CNTは以下の特徴を持っています。[2]
・軽量で引っ張り強度が高い
・熱伝導性がよい(銅の10倍)
・電流密度が高い(銅の1000倍)
・比表面積が大きい
・高い電界電子放出特性を示す
このため、近年では集積回路やリチウムイオン電池
の正極材の添加物など、半導体、エネルギー分野等
への幅広い用途展開が期待されています。
図2 ナノカーボン膜作成装置
当セ ン ター では、図2 の 熱化 学気 相 成長( 熱CVD)
装置(㈱マイクロフェーズ製ナノカーボン膜作成装
置)を導入しました。この装置を用いて、基板上に触
媒をスパッタリングする際にマスクを用いてパターン
ニ ン グす る こ と で 、 図 3 に 示 す よ う に 垂 直 配 向 C N T を
パターンニングすることも可能です。
本 研 究 で は 、 CNT を 有 機 薄 膜 太 陽電 池 の 電 極と し
ての応用を検討するため、光励起電荷分離が起こる
界面の表面積が大きく、発生した電荷を効率的に輸
送することができる電極を開発するため、CNT の微細
パターンニングを試みました。
図3 ステンレス基板上にパターンニングした
垂直配向 CNT
2.実験方法
図 4 に 本 研 究 で 用 い た 微 細 パ タ ー ン ニ ン グ CNT の 合 成 手 法 の 概 要 を 示 し ま す 。 微 細 な パ タ ー ン ニ
ン グ を 行 う 際 に は 、 マ ス ク を 用 い た 触 媒 の パ タ ー ン ニ ン グ は 困 難 な た め 、 CNT を 合 成 す る 前 に 、 触 媒
を基板にスパッタリングにより成膜した後、レーザ照射により触媒を任意形状にパターンニングします
( 図 4 (a)) 。 次 に 、 上 記 基 板 を ナ ノ カ ー ボ ン 膜 作 成 装 置 に 設 置 し 、 原 料 と な る エ タ ノ ー ル ガ ス 雰 囲 気 中
で、基板をヒータにより70 0℃近辺まで加熱することで、基板上に高密度の垂直配向したCNTを合成
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(a)触媒に対するレーザパターンニング
(b)CNT 合成
(C)パターンニング垂直配向 CNT
図4 パターンニング垂直配向 CNT 合成手法の概要
します (図4 (b)) 。触 媒が 炭素 源とな るエタノール ガスに 触れること で、触 媒から CNTが合 成さ れるため、
図4(c)に示すような櫛状のCNT束を形成することが可能となります。
レーザ照射に関して、本研究ではパルス幅が非常に短いため熱影響がほとんどない微細加工が可
能となるフェ ムト秒レ ーザを使用し 、基板表面 の 触媒膜に 集 光照射し ました。より微 細パターン を実現
するため、2倍波の波長を使用し、1μm程度のビーム径としました。加工対象となる基板をステージ
により走査させ、2μmピッチで複数のライン走査を行いました。
3.実験結果
本手法により合成したパターンニング垂直配
向 CNT を斜めから観察した SEM 像を図5に
示します。レーザ照射部は触媒のレーザエッチ
ングにより CNT が存在しないため、幅が約1μ
m の CNT 束が櫛状に並んでいる様子が確認
でき、垂直配向 CNT の側面領域が観察できま
す。また、垂直配向 CNT は隣同士の CNT 同
士が支えあうことで基板に対し垂直に配向する
と考えられていますが、レーザ照射部の側面部
に お い て も CNT が 斜 め に 配 向 す る こ と な く 垂
直に配向することが確認できました。
図5 パターンニングした CNT の SEM 像
4.まとめ
以上のように、パターンニング垂直配向 CNT の合成手法により、CNT の合成箇所を微細制御する
ことができました。
<参考文献>
[1]齋藤弥八、坂東俊治共著「カーボンナノチューブの基礎」コロナ社
[2]遠藤守信、飯島澄男監修「ナノカーボンハンドブック」エヌ・ティー・エス
担当者
新産業創出研究部 レーザ・電子線研究グループ
研究員
竹内 雅則
専門分野/表面加工
研究員
芦原 将彰
専門分野/レーザ加工
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「キッズものづくりラボ」開催報告
⼯業技術センターでは、⼦供たちに科学・産業技術のおもしろさ・すばらしさを体験してもらい、科学
技術や本県産業技術への興味を持ってもらうため、県内の⾼校・企業と共同して「キッズものづくりラボ」
を開催しました。⼩学校4、5、6年⽣の児童とその保護者の⽅に参加いただき、科学技術⼯作を⾏うほ
か、最先端の技術に触れていただくハイテク機器体験を⾏いました。
科学技術⼯作では、村⽥製作所グループ、⽇本電産テクノモータ㈱、jig.jp㈱、科学技術⾼校にご協⼒い
ただき、午前・午後とも7コースに分かれ、親⼦で楽しく⼯作や実験を⾏いました。また、ハイテク機器
体験では、村⽥製作所グループ、春江⼯業⾼校・坂井⾼校にご協⼒いただき、5つの最先端設備や技術を
体験していただきました。ご参加くださいました親⼦のみなさま、本当にお疲れさまでした。
<キッズものづくりラボ>
1.日 時:平成 27 年 7 月 18 日(土)
午前の部 8:30~12:00
午後の部 13:00~16:30
2.場 所:工業技術センター
3.参加者:福井県内の小学校 4・5・6 年生の児童とその保護者
197 組(398 名)
4.内 容
【1】科学技術工作
①3D プリンターでイニシャル入りメダルをつくろう!
(工業技術センター)
②光ファイバーでプラネタリウムをつくろう(工業技術センター)
③オリジナル和紙でうちわをつくろう! (工業技術センター)
④「静電気」で遊ぶ道具をつくろう!(工業技術センター)
⑤-1 ブルブル星人をつくろう(村田製作所グループ)※午前のみ
⑤-2 自分でつくるパソコン、IchigoJam で
ゲームプログラミングに挑戦しよう!(jig.jp㈱)※午後のみ
⑥電気と磁石で手作りモーターに挑戦!
(日本電産テクノモータ㈱)
⑦ハンカチの絞り染めを体験しよう(科学技術高校)
【2】ハイテク機器体験
①音の響かない世界を体験しよう!(工業技術センター)
②昆虫や植物を拡大して見てみよう!(工業技術センター)
③南極の寒さを体験しよう!(工業技術センター)
④からだのカタチを測ってみよう(工業技術センター)
⑤自転車型ロボット「ムラタセイサク君」
(村田製作所グループ)
⑥燃料電池カーのしくみにふれてみよう!
(春江工業高校・坂井高校合同グループ)
【担当】企画⽀援室 技術相談グループ
福井県工業技術センターニュース No.122 平成27年9月発行
編集・発行 福井県工業技術センター 企画支援室
〒910-0102 福井県福井市川合鷲塚町61字北稲田10
Tel:0776-55-0664 Fax:0776-55-0665
E-Mail:kougi@fklab.fukui.fukui.jp URL:http://www.fklab.fukui.fukui.jp/kougi/
(本誌掲載の写真・記事の無断転用を禁じます。)
☆環境への配慮から、ご来場につきましては、できる限り公共交通機関を利用してください。
また、止むを得ず自動車で来られる場合には、アイドリングストップにご協力ください。
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表紙写真:LEDリボンを活用した
のぼり旗
15.09.18570