NEWS Japan No.23 春号 2010. 4. 25 Message ●正しい企業経営のみが生き残る時代 ……レントスマネジメント株式会社 2 代表取締役 内田 友壱 ●日本TMA2010 年総会・特別セミナー 6 Awar d ● T ur na r o u n d o f t h e Y e a r 8 Awar d ● 学 生 論 文 表 彰 9 Sem inar ● 日 本 T MA 特 別 セ ミ ナ ー 『 JAL の再生とサービス産業の国際競争力 』 (講師)慶応義塾大学大学院経営管理研究科 教授 許斐義信 10 『日本経済、産業の現状と課題 』 (講師)経済産業省経済産業政策局 産業再生課 課長補佐 金指 壽 11 不況下の日本経済における 日本TMAの役割 出津 平(いでつ たいら) 日本TMA理事 事業再生支援協会(SRC)理事長 出津税務会計事務所 所長 / 税理士 先に開催された日本TMA総会において、経済産業省金指氏か ら、工業先進国のトップランナーであった日本企業の危機について 詳細なデータをもとにした講演を拝聴した。現在、日本の大手製 造企業は中国、ASEANにおいて、猛烈な勢いで製造設備の増 強を急いでいる。追い上げる新興国企業の技術力アップ、低価格 攻勢に対する生存を賭けた戦いと云える。日本経済は製造業と公 共事業をベースに繁栄してきた経緯において、この製造業の海外 THE JOURNAL OF CORPORATE RENEWAL ●政府の仕事が問題になるとき : 米自動車業界と今後の政府救済策 ……Calfee, Halter & Griswold LLP James M. Lawniczak 12 厳しく、一時的な現象である金融危機とは比較にならない程の影 響を受けることは間違いない。 日本の環境技術、特殊な分野における優位性を強調して楽観視 する見解もある。しかしながら成長分野と衰退する分野の経済的 な影響力を比較すると後者が圧倒的に大きく、これを楽観視して SPO NSO RS 日本 T M A スポンサー 流出と、破綻財政による公共事業の待ったなしの縮小は、極めて 15 放置することは重大な事態を招く恐れもある。資源の多くを海外に 依存し、工業立国である我国が、米国のように金融とサービス業 で経済を繁栄させることは誰が考えても難しく、国内製造業を維持 するためにも製造業の再生は、緊急、且つ重要な課題となっている。 この意味で、再生の専門家に与えられた使命は重く、日本TMAの 2010 年 4 月 25 日発行 ● 第 23 号 ● 季刊 果たす役割は本番を迎えると云える。 発行所 一方において、経済のグローバル化が進展する中で、国際組織 特定非営利活動法人 日本ターンアラウンド・マネジメント協会 の一員である日本TMAはアジア地区の中心として活動することが 〒 160-0022 東京都新宿区新宿 1-7-1 新宿 171 ビル 7F 求められ、このことにおいて、日本の中小企業の国際化を支援す TEL: 03-5269-2303 FAX: 03-5269-1482 る体制を構築することにもなる。最初の手掛かりとして、中国TM E-mail: info@tmajapan.org Aの設立を企画している。どうぞ、海外交流を深める活動に対して、 URL: http://www.tmajapan.org 皆様のご協力を賜りたく存じます。 正しい企業経営のみが生き残る時代 レントスマネジメント株式会社 代表取締役 認定事業再生士(CTP) 内田 友壱 私共は、主に九州の中小企業を対象とする、企業再生・事業再生専門のコンサルティング会社で ある。経営、営業、財務の戦略立案、実行支援を主要業務とし、コンサルタント、ターンアラウン ドマネジャー、財務アドバイザーとして、常時 10 ~ 15 社程度に関与している。 若輩ながら、近年の景気後退期における業務を通じて、思い、考えたことを述べさせて頂く。 1. 2009 年という年 2009 年は、私共の顧問先数社が破綻するという、非常に残念な年となった。それ以前にも顧問 先の破綻を経験はしているものの、立て続けに破綻したこと、外部環境の脅威をこれほどまでに感 じたことは過去に無いものであった。 再生コンサルタントが顧問先の破綻を語ると、「縁起でもない」、「貴方に任せて大丈夫か」と言 われることもある。しかし、再生コンサルタントは、本人の意思があれば、失敗の可能性もある手 術でもやらなければならない医者のようなものだと思っているから、結果として不本意ながら失敗 することもある、と覚悟はしている。重要なことは、失敗した原因を分析し、失敗しないための方 策を将来に活かすことだと思っている。よって、破綻した企業関係者のご尽力に最大限の敬意を払 い、守秘義務を厳守した上で、その分析結果、失敗しないための方策を、必要に応じて現在の顧問 先などに対して話すことにしている。 2008 年 9 月、リーマンショックと呼ばれる世界的金融危機が発生。その後しばらくは、景気が 後退するという実感はなかった。リーマンショックから約半年後の 2009 年 2 月、景気後退の津波 が私共の周辺に到来した。正確に言うと、2009 年 3 月に、顧問先の売上状況、受注状況を見て、 津波だとわかった。多くの顧問先の売上が 10 ~ 20%程度ダウンした。製造業においては来期の受 注見通しが立たず、卸売業、小売業、サービス業においては、販売担当者から「いつもと違う」「売 れない」との声が聞かれた。当時それなりに受注が安定していたのは建設業くらいだったと記憶し ている。当初は、2 月は閑散期だから、との楽観的な考えも多少持っていた。しかし、3 月、4 月 も業績低迷が続き、以降、前年比 20 ~ 30%の減収が続いた。 私共の顧問先の場合、売上が 20 ~ 30%も下がれば、殆どの場合が営業赤字に転落する。過去に 蓄積した財産も多くはない。止血策も追いつかず、緊急経済対策資金は恵みの雨とはなったものの、 2 2010.4.25 営業赤字では根本的な解決にならない。2009 年 8 ~ 12 月頃には資金は枯渇。以降、堪え切れなかっ た数社が破綻、実質破綻に陥った。 2009 年が、外部環境の脅威を感じた年であった理由は、破綻した顧問先の中に、「やるべきこと をそれなりにやったが、だめだった」という事例が含まれていたことである。「それなりに」とい うのは、企業がやるべきことは無限にあるのであって、他の再生事例と比較し、必要最低限と思わ れる施策に着手したという意味である。紆余曲折はあったものの、改善の兆しが、数値にも、従業 員のやる気にも現れていた。が、あっと言う間に、景気後退の津波によって、改善効果が打ち消さ れてしまった。「これほどまでに景気後退のスピードが速いものか」と驚愕した年であった。 時折、破綻した企業の経営者、従業員から、再就職が決まった旨の連絡を頂くことがある。こう いった連絡はせめてもの救いであるが、やはり、顧問先の破綻は二度と経験したくはない。だから こそ、この経験は今後に活かさなければならないと強く思っている。 2. 正しい企業経営しか生き残れない 2009 年を回顧し、痛切に思うことは「正しい企業経営しか生き残れない時代になった」という ことである。 「正しい企業経営」とは何か。私は、 「原理、原則を守る経営」であると解釈している。では、 「原 理、原則」とは何か。長年読み続けられ、評価されてきた古典に記述されていることに、その解が あると私は考える。企業経営をはじめ、世にはいつの時代も不変な原理、原則というものが存在し、 それを守らずして、うまくやろうとしても結局は無理なのだ、というのが、2009 年を回顧しての 結論である。 「正しい企業経営」をせずして存続している企業を知っているし、現在もコンサルタントとして 関与している。しかし、2009 年の経験、今後の日本経済の展望からすれば、これらの企業が中長 期的に存続するのは困難ではないかと思っている。 景気は循環するものであり、回復も今後みられるであろう。また、産業構造の変化、技術革新な どにより、目を見張るような急成長する産業、企業が出現するであろう。そういった中で、目新し い企業、経営手法が現れたとしても、原理、原則を守らなければ、遅かれ早かれ消失する、と推測 している。 3. 兵は国の大事 顧問先であった A 社に、私共は 2 年強コンサルタントとして関与していた。関与当初は、拡大 路線をとっている真最中であった。資金繰りの相談から、コンサルティング契約を締結することと なった。 薄利多売の業種であったこと、その他の事情により、拡大路線をとることは A 社の将来を鑑み て確かに一理あった。しかし、計画の中身が、あまりにも粗雑であり、無謀であった。この粗雑さ、 無謀さに危機感を抱き、私は、一度立ち止まって計画を見直す様、強く主張していた。コンサルティ ング契約開始より 1 年ほど経て、拡大路線が失敗だったことが確定した。拡大路線の中での方向転 換を行う余力もなかったため、完全撤退を決意。その後、撤退終結まで約半年の年月と相応の撤退 2010.4.25 3 資金を要すこととなった。 拡大路線以外、粗利益率改善、販売管理費削減においては、A 社と私共との間で歩調は揃っていた。 A 社従業員の努力により、この 2 点においては、成果が出ていた。 撤退終結、利益率改善が交差したのが、2008 年秋頃である。これから収益は間違いなく上向く と確信した矢先に、景気後退の津波が押し寄せた。既存顧客の売上は下がり、撤退コスト、借入負 担が重くのしかかる。瞬く間に資金は底をつき、破綻した。 兵法の書である「孫子」の中に「兵は国の大事にして、生死の地、存亡の道なり。察せざるべからず」 (戦争は国家の重大事であって、民衆の生死を決めるものであり、国家の存亡を左右するものである。 慎重に対応しなければならない)とある。 A 社破綻の一番の原因は、戦術の失敗である。戦略自体は間違っていなかったと今でも思う。慎 重さがあれば、従業員の地道な努力が無駄になることはなかった。大変悔やまれる事例である。 ちなみに、A 社社長は、 「孫子」を読んだことはある、と言っていた。私の意見を聞かなくとも、 先人が残した言葉は心から受け止めてほしかった。 4. 兵法の理に任せて、諸芸諸能の道となす ここ最近、無関連多角化をおこなってきた企業グループの新規案件が、数件舞い込んできた。共 通点は、 ①本業の先行きに不安を感じ、本業とかけ離れた事業を展開した。 ②本業はそれなりの収益を上げてきたが、新規事業が足を引っ張り続けている。 ②景気後退により、グループ全体の収益が悪化。資金調達がままならなくなってきた。 といったところである。これら企業グループの経営者は、困窮の原因として、「新規事業がこれ ほどまで儲からない商売だとは思ってなかった」といった類のコメントをする。しかし、それらの 企業が展開した新規事業を、生業として立派に黒字を出して営んでいる企業も存在する。このコメ ントは言い訳にしか過ぎない。 宮本武蔵が記した「五輪書」に「兵法の理に任せて、諸芸諸能の道となせば、万事においてわれ に師匠なし」 (兵法の道理にしたがってさまざまな芸術、技能の道としてきたので、万事にわたっ て私には師匠はない)との一節がある。 私は、無関連多角化に失敗した企業経営者は、本業の業務には精通しているが、経営というもの については未熟だったのではないか、「兵法の理」を習得せずして、「諸芸諸能の道」に手を出した のではないか、と思っている。 こういった無関連多角化が原因で破綻したケースを、私共は 2009 年に経験した。新規案件につ いては、破綻に至らない様、経験を活かして助言してゆくつもりでいる。 5. 唯一生き残るのは、変化できる者 業歴の永い企業とお付き合いすると、旧態依然とした体質、過去の栄光を捨てきれないケースが 多い。それらを打破するのが私共コンサルタントの役目なのであるが、打破するまでに、相当な時 間、体力を要する。むしろ、債権者など第三者の手によって課題、期限を与えてもらった方が、よっ 4 2010.4.25 ぽど時間短縮効果はある。 進化論のチャールズ・ダーウィンは「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延び るのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」と述べている。これも、世の原理、原則 である。企業を存続させるためには、変化できなければならない。できれば、債権者など第三者の 手によって変化させられるのではなく、企業自ら変化してほしい、と頻繁に思う。 尚、 「企業は変化できなければならない」、と顧問先などで話をすると、現実離れした創造論者、 過去を全否定した破壊論者が現れる。変化するには創造も破壊も必要である。しかし、変化すれば よい、というものではない。原理、原則があるということを理解した上で、変化しなければならな い、と考える。 6. 最後に 以上述べてきたことは、至極当然のことだ、と思われる方もいらっしゃると思う。しかし、原理、 原則をご存じでない、あるいは実践されていない企業経営者が、意外に多い、と思っている。再生 企業の経営者に限ったことではない。 引用させて頂いた古典は、数千年前、数百年前のものである。古典と言われるものがすべからく 正しいとは言わないものの、長く読み続けられ、評価されてきたものについては、熟読、熟考の価 値は十分にあると思っている。 私自身、事業者として、原理、原則を守ることは非常に難しいことである、と実感している。し かし、2009 年の経験から、やらねば私共が破綻する、と自らプレッシャーをかけている。 今後、企業経営者、及び企業経営をサポートするコンサルタント、各専門家にとって、よりその 実力が試される時代になると思っている。私共の拙い経験を、少しでもご参考にしていただけるよ うであれば幸いである。 うち だ とも かず 内田 友壱 プロフィール レントスマネジメント株式会社 代表取締役 認定事業再生士(CTP) 1971 年生まれ。東海銀行(現 三菱東京 UFJ 銀行)、日本テクノロジーベン チャーパートナーズ、オリックスを経て、2006 年 1 月コンサルタントとし て独立開業。 事業再生、企業再生に 7 年間従事。現場主義、実践主義、スピード主義を掲 げ、再生企業の経営戦略、営業戦略、財務戦略の立案、実行支援を行う。 <連絡先> T E L: 092- 734- 5800 e-ma i l : u c h i d a @r e n t o s . j p 2010.4.25 5 日本TMA2010年総会・特別セミナー 平成 22 年 3 月 27 日(土)、日本 TMA2010 年総会・特別セミナーを開催し、約 100 名が参加しました。 許斐理事長 開会の挨拶 6 永野理事が議長となり議事進行 中村監事より監査報告 増田会員より TMA コンベンション(フェニックス)報告 稲村副理事長より TMA の活動報告 2010.4.25 懇親会 池内理事 濵村理事 出津理事 立川理事 2010.4.25 7 Award ● Turnaround of the Year 第 5 回ターンアラウンド・オブ・ザ・イヤー 株式会社池貝 代表取締役社長 中條 進 氏 事業再生分野において功績のあった団体・個人を表彰する「ターンアラウンド・オブ・ザ・イヤー」の 第 5 回受賞者として、株式会社池貝 代表取締役社長 中條 進氏が選出され、表彰式を行ないました。 受賞者・中條氏(中)と許斐理事長(左)、稲村副理事長 西岡表彰委員より選考報告 星野表彰委員長より ターンアラウンド・オブ・ザ・イヤーの発表 受賞者のプレゼンテーション 表彰理由 表彰委員会 委員長 星野広友 推薦者 副理事長 稲村榮典 株式会社池貝は、1989 年(明治 22 年)工作機械の父といわれた池貝庄太郎氏により設立され、国産初の旋盤開発、 ディーゼルエンジン量産、最初のNC加工工作機械開発など名門老舗企業でしたが、2001 年民事再生申請するに至 り、2004 年上海電気集団より資本参加を受けました。 中條氏は再生会社 100 人の残存社員をまとめ社長に就任し、上海電気集団より資本参加を得て財務体質を強化し、 本社工場用地に大型組立機械加工工場を建設しました。また、2006 年池貝 ( 上海 ) 有限公司を設立し、工作機械の 現地生産を開始しました。民事再生開始以来、社員の先頭に立って名門池貝を復活させた鉄の経営者であり、その 功績を認め、第 5 回ターンアラウンド・オブ・ザ・イヤーに選出致しました。 8 2010.4.25 Award ●学生論文表彰 優秀賞・入賞 該当者なし 努力賞 香川大学法学部法学科3年 中平好乃 氏 「中小企業の企業再生~実例に基づく考察」 昨年創設された学生論文表彰制度は、大学生・大学院生を対象に、経営破綻と事業再生に係る論文につい て優秀と認められているものを表彰するものです。第 2 回目は、努力賞として香川大学法学部法学科3年 中平好乃氏が選出されました。 稗田表彰委員より選考報告 中平好乃氏の受賞スピーチ 選考報告 稗田宏 表彰委員(稗田宏税理士事務所) 当協会では、昨年協会創立 5 周年を契機にして「学生論文表彰制度」を創設いたしました。この制度は、企業再 生及び事業再生に係る論文について、優秀と認められるものを表彰するものです。 経営学の中でも、企業再生・事業再生は複雑な、いわゆる総合経営的課題ですが、同時に地域再生や中小企業再 生など社会・経済、あるいは政治的問題です。これらの社会的重要性に鑑み、当協会ではこの制度を通じて、事業 再生への関心を深めることを目標にしております。 本年は 4 名から応募がありましたが、表彰委員会で検討した結果、今回は残念ながら、入賞者は該当なしとしま した。 しかし、いずれも実務家が現在直面する課題に取り組んでおり、事業再生に対する応募者の問題意識の高さを評 価いたします。 そこで、入賞ではありませんが、再生への関心を高めるというこの制度の趣旨を酌んで、かつ、今後のさらなる 研究を期待して、今回は努力賞を設けることとし、実例をあげて再生手法を比較検討した中平好乃さんの論文を選 考しました。 2010.4.25 9 Seminar ●日本 TMA 特別セミナー 特別セミナー① 『JALの再生とサービス産業の国際競争力』 (講師)慶応義塾大学大学院経営管理研究科 教授 許斐義信 氏 ・JAL と ANA の業績比較 ・TF による DD の評価 ・JAL とはどのような企業だったのか? ・民営化で収益構造の変化 ・過当競争の国際線重視の JAL ・厳しい国際競争に直面 ・問題は座席利用率 ・国際競争の状況 ・効率設備の積極投資 ・投資資金調達で財政悪化 ・キャッシュフローによる倒産予測 ・過大過ぎる投資速度 ・JAL の経営をどうすればよかったか ・JAL の再生への中期計画 ・JAL のもひとつの再生策 ・今後の大きな会社の方向性について ・再建計画案の骨子:縮小均衡? ・今後の JAL の経営 ・サービス産業再生への意義 ・サービス貿易の拮抗は困難 ・再生に関する今後の代替案の提案 ・丸亀商店街の成果を生かす ・運営マネジメント法人の統合~所有と経営の分離へ~ ・不動産の流動化 ・競争を制御する各種の共同事業 ※レジュメより抜粋 【講師略歴】 昭和 42 年慶應義塾大学機械工学科卒業、昭和 42 年~昭和 44 年三菱 商事株式会社、昭和 46 年慶應義塾大学大学院工学研究科修士課程修 了、昭和 51 年同研究科博士課程修了、昭和 51 年~平成 11 年経営構 造改革や会社再建、昭和 55 年~昭和 58 年三井物産株式会社、昭和 60 年~平成 3 年株式会社コパル、昭和 63 年~平成 3 年中央クーパースア ンドライブランド・コンサルティング顧問、昭和 47 年~慶應義塾大学 大学院経営管理研究科講師(ビジネスゲーム)、平成 7 年~平成 8 年同 研究科講師(経営革新)、平成 10 年同研究科講師(技術と経営) 、平成 11 年同研究科教授となる。日本ターンアラウンド・マネジメント協会 理事長、日本事業再生士協会理事長。 著書: 『MBA ビジネスシミュレーション』共著(総合法令) 『デファクト・ 、 スタンダードの本質』共著(有斐閣)、 『構造変革-成功の秘訣』共著(日 本放送出版協会)、『ケースブック企業再生』編著(中央経済社)等。 10 2010.4.25 日本企業の生き残りを賭けた 闘いが始まる! 競争力強化の戦略 ◇ PHP 研究所 ◇著者:許斐義信 ◇ 定 価 : 本 体 2 ,0 0 0 円 ( 税 別 ) 特別セミナー② 『日本経済、産業の現状と課題』 (講師)経済産業省経済産業政策局 産業再生課 課長補佐 金指 壽 氏 1. 日本経済の行き詰まり ・世界の中で、日本の経済的な地位は低下している ・市場の中心は新興国にシフト ・所得配分による内需拡大には限界 ・賃金の伸び悩み ・海外進出の進展と国内事業活動の低迷 ・今後、海外シフトが更に進展 ・地方経済は、ますます深刻化 ・雇用については、短期的には「量」、中長期的には「質」が課題 2. 産業構造全体の課題 経産省 金指課長補佐 ・パイ(所得)の拡大はグローバル製造業に依存。特に自動車に大きく依存 ・労働生産性は上昇しているが、雇用者所得は横ばい ・就業者数で、グローバル製造業の比率は低い。先進国はどこも低下傾向。 ・グローバル企業とそれ以外の業種の一人当たり付加価値額が乖離 ・我が国の輸出依存度は低い ・日系企業は低収益体質 ・日系企業は同一産業内にプレイヤーが多数存在 ・日本と韓国の比較 ・韓国におけるビッグディール ・企業の少子高齢化(進まない起業、増える廃業) ・地域のものづくり中小企業群の格差が拡大 3. 企業のビジネスモデルの課題 ・世界市場の伸びに伴い、日本のシェアが急速に縮小 ・世界の付加価値獲得戦略の推移 ・日本産業の行き詰まりの構造問題 ・世界市場が伸びても、日本がシェアを維持している例 ・デジカメのクローズ/オープン成功戦略 ・海外企業は標準戦略の仕掛けで競争優位を構築 4. 企業を取り巻くビジネスインフラの課題(産業の立地競争力) ・外国企業による拠点機能別の評価(日本の立地競争力が低下) ・日本の事業コストが高い①、②、③ ・我が国人材の競争力①、②、③ ・日本の金融市場の国際競争力 5. 諸外国の産業政策の積極化 ・特定戦略分野へのターゲティングポリシー 【講師略歴】 1998 年 通商産業省入省 2008 年 仏EDHECビジネススクールMBA 2007 年 米スタンフォード大学客員研究員 2009 年 経済産業省 経済産業政策局 産業再生課 着任 ・企業立地支援競争 ・大規模インフラプロジェクト獲得のための官民一体となった取組 6. 日本の産業構造の方向性 ・マクロの需要サイドから浮かび上がる産業構造の方向性 ・産業構造の現状 ・目指すべき産業構造の方向性 ・日本の将来を創る、戦略分野の提示 ※レジュメより抜粋 2010.4.25 11 THE JOURNAL OF CORPORATE RENEWAL 2010 年 3 月号より 政府の仕事が問題になるとき : 米自動車業界と今後の政府救済策 When the Business of Government Is Business: The U.S. Auto Industry and the Future of Government Bailouts James M. Lawniczak Partner Calfee, Halter & Griswold LLP 政府は企業ではない。米大統領は大企業の CEO の役割を果たしているわけではなく、また議会が取締役 会の役割を果たしているわけでもない。 それでも米政府は時々、民間企業の大株主となって、事業に大きく首を突っ込んでいる。直近では、ゼネ ラル・モーターズ・コーポレーション、クライスラー・グループ・エルエルシーに対する政府救済策があげ られる。このプロセスを経て、破産法 11 条の適用申請、セクション 363 に従った売却が行われ、政府はこ れらの資産を取得したゼネラル・モーターズ、クライスラーと言う新会社を保有することとなった。 最近の実績はあるが、政府が金融セクター以外の民間企業を救済するのは珍しいことだ。金融セクター については、連邦預金保険公社(FDIC)を通じて預金を保護しているため、政府の関心が高い。FDIC は、 預金者が大恐慌時のように、銀行閉鎖によって財産を失うという不安を持たなくて済むように、1933 年に 議会によって設立された。 政府が金融業界に焦点を当てているのは、米国民全体に与える直接的な影響が大きいことを認識している ためである。実際、政府は最近、銀行以外の金融会社に多額の資金を注入したが、これは金融システムの崩 壊を防ぐには、そのような措置が必要だと考えたためである。 本稿では、 金融システム以外の民間企業を対象とする政府の救済策に焦点を当てる。この 40 年間に政府は、 鉄道、航空機、自動車業界の民間企業を救済するための資金を提供してきた。今後、このようなタイプの政 府による民間企業への金融支援はどうなるだろうか。他に多数の企業が破たんする中、一歩引いた立場を取 る一方で、政府はなぜこれらの企業を救済することにしたのだろうか。米国にとってきわめて重要で、その 破たんは選択肢にはないと思われる利益を守ろうとすることで、これら一部の企業を救済する必要性が生じ たとみられる。 議論を呼ぶ投資 1970 年にペン・セントラル鉄道は、危険な財務状況が原因で崩壊寸前の状態にある中、きわめて重要な 国防輸送サービスの提供を理由に、米国政府に金融支援を求めた。米連邦準備制度理事会(FRB)とニク ソン政権はこのアイデアを支持したが、議会はこれを拒否した。 1970 年 6 月 21 日、同社は 1898 年破産法に基づき、当時、アメリカ史上最大となる企業破たんを申請した。 1971 年、破たんによるペン・セントラルのコマーシャルペーパー返済義務の免除が、金融市場に及ぼす影 12 2010.4.25 響を弱めるために、米国政府は同社に 6 億 7,600 万ドルの債務保証を提供した。 政府資金での民間業界への「投資」 、また鉄道業界の国有化の可能性には政治的反対があったにもかかわ らず、政府には、国家の鉄道網の喪失に対する非難を受ける危険を冒そうとするものはほとんどいなかっ た。それは政治生命が脅かされる行為と考えられたのである。その後、1976 年鉄道再生・規制改革法により、 ペン・セントラルおよび北東部、中西部のその他の鉄道は、統合鉄道公社コンレールに統合された。1987 年、 政府はコンレールの持分を 31 億ドルで売却したが、それまでに配当金 5 億 7,900 万ドルを受け取っていた。 この投資は最終的には利益をあげ、米国の鉄道事業の救済に貢献したようだ。 また 1971 年には、国防・航空機メーカーのロッキード・コーポレーションが、緊急融資保証法に基づき、 14 億ドルの政府支援を受けた。当時ロッキードは米国最大の国防関連企業で、冷戦を戦うチームの重要な メンバーとして幅広く認められていた。 上院では、融資保証について激しい議論が展開され、当時のスピロ・アグニュー副大統領に法案賛成の決 定票を投じるよう求めた。同法ははっきりとロッキードに適用されるものではなく、他の企業の救済にも利 用されてきただろうが、この法律から唯一恩恵を受けたのはロッキードであった。1977 年までにロッキー ドは債務を完済し、政府に融資保証手数料 1 億 1,200 万ドルを支払った。 1979 年 9 月 7 日、クライスラー・コーポレーションは米国政府に、破たん申請を回避するのに必要な融 資保証を求めた。1979 年クライスラー社融資保証法により、クライスラー救済のために 15 億ドルの民間貸 付の支援が認められた。ただし、ここでも民間業界への政府介入を巡って激しい議論があった。 反対派は、救済案は失敗者に利益を、成功者に不利益をもたらすもので、クライスラーの競争相手にとっ て不公平だと主張した。これに対して賛成派は、クライスラーは全米第 10 位の製造業、軍用戦車の最大のメー カー、そして重要な自動車業界のビッグスリーの一角であるため、米国は単にその破たんを受け入れること はできないと反論した。 政府の融資保証により、クライスラーは破たん申請を免れ、1983 年までに融資を完済した。さらに同社は、 救済の一環として付与されていたクライスラー株に対する保証を得るために、政府に 3 億 1,100 万ドルを支 払った。クライスラーの再建が大成功を収めたことから、CEO のリー・アイアコッカは一時、クライスラー の再建を可能にしたのであれば、同様に政府の再建も可能だろうとの前提で、1988 年大統領選の候補とし てもてはやされた。 政府はまた、2001 年 9 月 11 日のニューヨーク、ワシントンでの同時テロ発生後、航空業界の支援に乗り 出した。航空運輸の安全および安定化法により、テロ攻撃を受けた航空会社に対する連邦融資保証に 150 億ドルが提供された。政府支援があったにもかかわらず、結局、ユナイテッド、デルタ、ノースウエスト、 US エアの米大手航空会社 4 社が破産手続きに入った。 次に 2008−2009 年には米自動車業界の救済措置が採られた。金融セクター以外で、最も複雑で広範囲に 及び、コストがかかる救済措置となった。まず 2008 年 9 月に 250 億ドルの刺激策が採られ、その後、さら に 134 億ドルが注入され、クライスラー、ゼネラル・モーターズのアベイラビリティが 40 億ドル追加された。 最終的には 2009 年に、追加支援によって政府は、セクション 363 を活用してクライスラー、ゼネラル・モー ターズを取得した。ゼネラル・モーターズへの注入額は合計 504 億ドル、クライスラーに対しては 125 億ド ルとなった。米国政府の関与については賛否両論があり、最初にクライスラーが経営危機に陥った 30 年前 の状況とよく似ている。 消極的な投資家 これまで米国政府が金融セクター以外の企業の救済で、損失を被ったことはない。米国政府が民間企業の 救済に踏み込むことは滅多にないが、実行にあたっては大きな力や影響を持つ。 2010.4.25 13 米納税者の GM、クライスラーへの巨額の投資による結果は、今後数年で明らかになるが、政府は拠出の 大部分を取り戻すことができるだろう。ただし、クライスラーの案件では組合とフィアットが新会社の持分 の大部分を取得するようになっていたため、急激な回復が実現しなければ、2 回目のクライスラー救済は政 府に損失をもたらすとみられる。景気の底で循環企業を買うのは、良い投資である。 企業再生の専門家にとって、このような政府による金融以外の業界の救済の歴史は、今後政府が救済する 可能性があるのはどのようなタイプの企業であるかということについて、何を示しているのであろうか。 確かに、政府は自動車業界をえこひいきしているようだ。ビッグスリーのいくつかが破たんすれば、外国 の自動車メーカーが入ってきて、米国人の雇用が失われるとの見方もあるだろう。しかし、これが政府が関 与する唯一の要因だとすれば、他の多数の業界の多数の企業も、破たんを認められずに救済されただろう。 ほとんどの企業は時間と共に衰え、政府からの救済なしに消えてしまっている。例えば、かつて米国には 電子機器メーカーがあったが、海外の競争相手が米国市場を支配するようになり、基本的に消滅した。ダウ 工業株平均の 30 社は、市場や各企業の業績の変化を反映して、長い間に入れ替えられている。 確かに米国政府は長い間、自動車用ラジオアンテナや電動タイプライターのメーカーなど、時代遅れと なった企業を救済しなかったし、そうすべきではない。鉄道や自動車業界の救済に乗り出したにもかかわら ず、米国政府はパンナム、TWA、イースタンなど米国の古い航空会社をいずれも救済せずに放置した(一方、 最近日本では、100 億ドルという多大な額で日本航空が救済された)。 以前の救済は、先例として大きな価値をもたらしておらず、今後の救済は米国の利益にとって、特に重要 だと思われる業界のみで実施されるべきである。政府介入は場合によるもので、その時点で明確な欠くこと のできない米国の利益を守る必要性に応じたものであったが、今後もそうだろう。 金融セクター以外では、今後政府の救済は小規模にとどまるとみても、ほとんど問題はないだろう。政府 による救済は常に議論を呼んでおり、熱心な反対派を抑えて実現されている。米国政府が金融セクター以外 の企業を救済したのは、この 40 年間でわずか 4 回であり、クライスラーだけが 2 度恩恵を受けた。 ロッキードの救済策から、政府が重要な国防関連メーカーを破たんさせることはなさそうである。かなり のインフラを有する大手公益企業の清算を阻止するための、政府介入も期待できるだろう。鉄道など国家的 な輸送システムは保護されそうである。自動車業界も同様である。 James M. Lawniczak Partner Calfee, Halter & Griswold LLP jlawniczak@calfee.com James M. Lawniczak 氏は Calfee, Halter & Griswold LLP のパートナーで、複雑な企業再 編、破たん、債権者の権利、商取引、財務などの問題に関して 30 年を超える経験を有する。 Calfee の破産訴訟実務の責任者であり、企業および保険会社の破産や整理の手続きのあらゆ る面で、有担保および無担保の債権者、債務者、無担保の債権者委員会を代表している。実 務では、国内外の顧客と共に、商取引や金融分野での取引に関する問題を扱っている。「コリ アーの米国破産法 第 15 版改訂版・第 16 版」に寄稿しており、またオンラインで提供して いる「レクシスネクシス・エキスパート・コメンタリーズ」シリーズの主要な寄稿者である。 企業破たんおよび商業金融の問題について、多数の記事を発表し、度々講演も行っている。 書籍 紹介 銀行融資 書類 & 交渉 攻略マニュアル ◇すばる舎 ◇著者:佐藤真言、 徳 永 貴 則 、 古 尾 谷 未 央 ◇価格:3,675 円 銀行との交渉に当たり、おさえておくべきポイントを解説。 14 2010.4.25 Sponsors 株式会社銀行研修社 KRB コンサルタンツ株式会社 w ww.tmaja p an .o rg w ww.tu rna rou n d .org 株式会社 TSK プランニング デルタ経営コンサルティング合同会社 いけうち会計事務所 株式会社出津経営プランニング 後藤千恵子税理士事務所 / 有限会社ミズ顧問 株式会社ターンアラウンド京滋 株式会社 TTM 永野税理士事務所 / 有限会社神戸データサプライ 日比公認会計士事務所 株式会社ホロニックコンサルティング Certification 認定事業再生士(CTP)・事業再生士補(ATP)資格に ついては、ウェブサイトをご覧下さい。 w ww.ac tp .jp 試験日程 事業再生士補(ATP)資格試験 日 程 : 平成 22 年 5 月 23 日(日) 東京会場 : ホテルルポール麹町 神戸会場 : 兵庫県学校厚生会館 認定事業再生士(CTP)資格試験 日 程 : 平成 22 年 6 月 20 日(日) 会 場 : エステック情報ビル お問合先 : 一般社団法人 日本事業再生士協会 TE L : 0 3 - 5 2 6 9 - 5 0 5 4 E - ma i l : i n f o @a c t p . j p h t t p : / / w ww . a c t p . j p ※ 詳細につきましてはウェブサイトをご覧 ください。
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