INTELLECTUAL PROPERTY May 2008 商標のモニター、管理に関する詐欺にご用心 昨今、多くの登録商標のオーナーが、いかにも公的機関からの通知にみせかけた偽装通知を受け取っている。 一見、公的な通知に見えるが、小さな文字の但し書きを読んでみると、怪しげなサービスの宣伝であることが 多く、最悪の場合、全くの詐欺である。 これらの偽装通知は、曖昧なサービス提供の宣伝から、そのサービスさえ提供せず、払い込みを求める明らか な詐欺まで、いくつかに分類できる。説明不足で誤解を避け難いとはいえ、提供するサービス自体は正常なも のから、支払いを強いるような悪質なものまで様々ある。登録している商標数が少ない商標オーナーは、弁護 士に頻繁に連絡を取ったりしないため、いわば関心の低さにつけこむのである。そこで、いくつかの手口とそ の対処法を紹介したい。 “ウォッチ”サービスの提供 最近発生している偽装通知から、まず最初に紹介するのは、ウォッチサービスと呼ばれるもの。登録商標と近 似の商標を通知し、弁護士への連絡とサービスの申し込みを呼びかけるような通知が多いが、単に登録してい る商標が通知に記載され、サービス申し込みのみを求めるような、情報が更に少ないものもある。 近似の商標等をモニターする正当なサービスは、モニターする日程、その内容の詳細が定まっており、モニタ ーする商標、製品、区分(クラス)の近似の度合いや、地理的範囲を特定できる。これらが過度に広範囲であ ると、不要な近似商標もモニターしてしまうが、製品、業種を熟知した弁護士が調整したモニターを使えば、 有効な結果が得られる。 偽装通知の場合、モニターに重要な要素である区分、製品の近似度合い等を設定できない。また、この手のサ ービスについてよく知らない限り、モニターの方法が信頼性の高いものであるのか、単にインターネットから 流用しただけのものであるのかの判断は難しい。 これらの疑わしいサービスは、会社の正式名ではなく、例えば、United States Trademark Maintenance Service、 United States Trademark Center、Trademark Monitoring and Notification Service 等の紛らわしい名称で提供されるこ とが多い。 Chicago Indiana Michigan Washington D.C. 商標の公示 次に紹介するのは、商標の「公示」サービスを提供するというもの。例えば、「ビジネスと経済の国際商取引 広報へのブランド登録」と称して、$1,890 を請求しているものがある。別のサービスでは、$600 を請求してい る。これらのサービスと、企業自身が公示する場合とを比較すると、自社で公示を管理する場合、それを見る 層や地域、公示される回数などについて詳しく選ぶことができる。これらの偽装「公示」サービスは、その選 択肢もない場合が殆どである。 公示に関し、考慮すべき点は、以下の 2 点に集約される。まず、外国での商標登録に関する弁護士、弁理士か らの通知である。外国には、「公示」の解釈に「広告」を義務付ける国があるが、その連絡は管轄政府や行政 機関等から弁護士、弁理士に連絡が届く。即ち、この手の連絡は「民間サービス」を介して届くことはないの で、もしそれをサービスに謳っているのであれば、疑ってみるべきだろう。次に考慮すべきは、様々なディレ クトリーでの公示である。アメリカには、全業種を網羅する Thomas Directory のような規模の大きなものから、 業界、或いは地域等の小規模なものまで、加盟者を一覧する様々なディレクトリーが存在する。日系企業であ れば、日系企業や日系コミュニティーに関するディレクトリーがこれに含まれるだろう。公示される範囲が狭 くとも、自社の所属する業界、コミュニティーでの公示は宣伝の意味でも効果的だが、会員同士がお互いのモ ニター役を自然に務める効果も見逃せない。言葉を変えれば、公示に関するその他のサービスからの接触は、 単純な広告宣伝の勧誘、或いはそれ以下と考えて、疑ってかかるくらいで良いだろう。 更新の通知 米国商標登録は、通常、登録完了後 10 年間有効で、5~6 年目に延長申請を届け出る。この作業に関する詐称サ ービスは、例えば、登録を維持するには届出が必要であることのみの通知を送り、$75 の支払いを求める。よく 読んでみると、その支払いに対して提供されるサービスについては何も書かれていない。通知が述べているの は、単に、商標オーナーに登録を求めるのみである。即ち、その通知に対して支払ったとしても、何を注文し たわけでもなく、何もなされないのである。 外国語ドメインネームとインターネットキーワード 企業名を含むドメインネーム、又はインターネットキーワードの登録に関する偽装通知の例も増えている。イ ンターネットのキーワード(インターネット・ブランドネームともいう)はインターネットアドレスへのショ ートカット、案内、簡略語であり、アルファベットに慣れない利用者のために考え出されたもの。しかし、実 際の利用率は低く、インターネットのユーザーには必要ないとみなされて、外国商標弁護士には重視されてい ない。 この手の通知は、登録している商標名を用いたドメインネームやキーワードを、他者が登録しようとしており、 今登録しないと登録の資格を失うとして、商標オーナーを脅すことでビジネスをなす手法のものである。多く の場合、そこに載せられているドメインネームやキーワードを登録しようとしている者自体が存在しない。 Chicago Indiana Michigan Washington D.C. しかし、外国で事業、或いは何らかの活動をする企業は、その国での濫用防止の目的で、ドメインネーム、キ ーワードの登録を考えておくべきといえる。 情報の出どころ 商標申請は、届出と同時に公共の情報となる。誰でもがその情報にアクセスできるため、それを見た誰でもが、 サービスを売りつけようと思えば、売りつけることができる。米国商標申請に載っている主な情報は、申請日、 公開日、使用開始日、更新日などだが、上記で紹介したような偽装サービスは、商標オーナーといかなる関係 もなく、単に公共情報から得た情報を用いて、胡散臭いサービスの提供を企てるのである。 正当な商標関連のサービス 商標弁護士は、各商標ごとに期日管理をしており、留意すべき期日をクライアントに知らせ、次に取るべきス テップに備え、必要アクションを起こすべき期日以前にクライアントに通知するようになっているのが普通で ある。弁護士はクライアントとの関係を重視し、倫理規定に従ってクライアントに連絡を取らなければならず、 また、クライアントである商標オーナー側は、弁護士に対して、どのような作業を行うかや、基本的な料金等 を尋ねる権利を有している。 所有する商標を積極的に保護していない場合ほど、ここで紹介したような偽装サービスにつけこまれる可能性 は高いといえる。通知に応えて送金してしまう前に、ダイレクトメールなどの通知で謳われているようなサー ビスが、本当に商標を最も有効に保護する方法であるのかどうか、まず弁護士に尋ねることを勧めたい。 本ニュースレターは、法律の最新情報、動向を御案内するもので、いかなる場合も法務サービス、法務アドバイスの意味を持ちません。本ニュー スレターは、一般的な案内目的でのみ配布されるものですので、個々の問題については、弁護士までご相談下さい。 当 Newsletter に関するご質問は、山本真理(312.214.8335、mregnier@btlaw.com)までお 問い 合わせ下さい。アドレス変更は、tomoe.scanlan@btlaw.com まで、E-mailにてご連絡下 さい。 Chicago Indiana Michigan Washington D.C.
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