開発部 中西智昭 Series 25 どのようにコーティングするの?-3いろいろなコーティング もちろん、粉体塗装の場合も、各塗装後にオーブンに入れ、熱 フッ素樹脂コーティングは一般的に、二つに大別されます。 によって溶融成膜する必要があります。 一つは薄膜コーティングで、他は厚膜コーティングです。 厚膜のコーティング方法 ここで、薄膜コーティングとは言葉通りに膜厚の薄いコーティン 厚膜コーティングには多量のフッ素樹脂が必要なため、必要 グで、一般的には100μm以下のコーティングを指すことが多いよ 成分の濃度の高い粉体塗料が用いられることが薄膜コーティン うです。 薄膜コーティングでは、 フッ素樹脂の表面特性を利用 グよりも多くなります。 する目的で使用されます。 もちろん、絶縁性の高いフッ素樹脂粉体塗料でマイナス帯電 たとえば、PTFE樹脂では低摩擦性、摺動性の特徴が顕著で、 しやすく、静電粉体塗装が一般的です。 FEP樹脂では非粘着性、離型性に優れています。 しかし、比重が高いせいも有るのか、塗装一回分の塗着膜厚は 他方が厚膜コーティングで、 ピンホールレスを目的とした膜厚の 20∼50μm程度です。 厚いコーティングとなります。特に、樹脂ライニングの業界では、 これらより、塗着しやすい塗料の場合でも600μmアップの膜厚 250μm以上の膜厚のピンホールレスのコーティングを「ライニン を得るためには、600÷50=12回(ばらつきを考えると、十数回) グ」 と称し、耐食性に優れた物というイメージを強調しています。 以上の、静電粉体塗装+焼成を繰り返す必要があります。 この厚膜コーティングには、厚膜施工性の良い2フッ化樹脂、 塗装回数を節約し、 より厚膜コーティングを容易とする、 いろい ETFE樹脂、及びFEP、PFA樹脂が使用されます。 ろな検討が行われています。 薄膜のコーティング方法 一つが、予熱塗装方法です。 まず、薄膜コーティングの作り方について述べたいと思いま これは、被塗装物をフッ素樹脂塗料 す。 の融点以上に昇温しておき、 その状態 この時、塗料の形状により大きく二つに大別されます。一つ で塗装しオーブン内に戻すことによっ は、液状の塗料で、 フッ素樹脂の粒子をコロイド状態に液中に浮 て、短時間でフッ素樹脂を溶かし、短 かべた物、他の樹脂溶液にフッ素樹脂粉末を混合した物等が上 時間で何度も塗装することによって、 げられます。 施工期間を短縮する方法です。 これらの一般的な塗装方法はエアスプレ 熱容量が大きな被塗装物に対する外面塗装に適しますが、 ー 法で、加圧エアによって霧吹きの原理によっ 被塗装物には大きな熱ストレスが与えられますため、高精度が求 て塗装する方法です。 められる被塗装物には適しません。 また、塗装性の点でタンク等 他には、静電気印加スプレー法、 エアレス の内面施工には適さない場合が多くあります。 スプレー法、 ディップ (浸漬)、流し込み法があ 対して、 タンク形状の被塗装物内部に塗料を投入し、 オーブン ります。 どれも液状の塗料を被塗装面に 内で二軸回転させながら、 タンク内面に厚膜コーティングを塗着 静電粉体塗装法 6 回転ライニング 付着させ、液体を乾燥させた上で、 フッ素樹 させる回転ライニング (ロトライニング)法が有ります。 これは、 タン 脂を熱によって溶融成膜します。 ク形状内部に短時間で、1∼3mmという厚膜が可能な方法で なお、 エアレススプレーは高い加圧によって霧化させる方法の す。 しかし、回転させるという施工方法から外面への塗装には ため、PTFE樹脂に代表される繊維化しやすい塗料を使用する 向きません。 と、繊維化しチップが詰まる問題があります。 また、粉体塗料を界面活性剤等を利用し、濃厚な液状スラリ 他方は粉体塗料で、静電気を印加して塗着させる、静電粉体 ー塗料とし、静電粉体塗装よりも一度に厚く付ける手法がありま 塗装法が一般的です。 す。 この方法は特に静電印加の出来ない電気導通性のある充 この方法は、粉体塗料が塗着した箇所は電気的に中和され、 填材を含んだ塗料についても厚膜塗装出来るメリットがありま 塗料の塗着が抑制されるため、膜厚の均一性が計れます。 す。 しかし、被塗装物の角部・突起箇所では電気力線の集中によ そして、 どの方法を取っても、塗装後にはオーブン内でフッ素 って厚く塗着し、凹部・穴内は電気力線が入っていかないため 樹脂を溶融させ成膜する必要があり、 これを所定の層構成で、 塗着がほとんど発生しない現象に注意する必要があります。 所定の膜厚仕様まで繰り返して行く必要があります。 E-mail:nakanishi@nipponfusso.co.jp
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