2007.9月号 Contents Technology Center News 特集 東京ゲームショウ 2007 Vol.39 東京工科大学 片柳研究所 クリエイティブ・ラボ >> 今月のニュース >> フレッシュな視点 : 石川智彦 >> 今後のラボの予定 >>DMC スタジオ利用実績 >> トレンドウオッチ! >>ORC 公開講座 >> ラボ&CTC 来訪者 >> 編集後記 >> スタッフの顔:中村太戯留 今月のニュース 〒192-0982 東京都八王子市片倉町1404-1 Tel : 042-637-7813 Fax : 042-637-7814 E-Mail : c-labweb@so.teu.ac.jp URL : http://www.teu.ac.jp/clab/ 今後のラボの予定 1. 9 月 20 日から 23 日にかけて、東京ゲームショウ 2007 が開催 1. 10 月 9 日に恵比寿ガーデンプレイスタワー地下 1 階、日本 された。今回のゲームショウには、現代 GP「インタラクティブ・ SGI ホールにおいて「国際シンポジウム 2007」を開催する。今 ゲーム制作の実践教育」の成果公開を目的として、卒業研究やプ 回のテーマは「キャラクタビジネスを見つめて ~キャラクタ工 ロジェクト演習で制作している学生作品を展示した。また、大学 学のための先端研究とその将来~」で、パネリストによる講演と、 の特色として、研究成果をパネルにまとめ、ゲーム制作技術など パネルディスカッションを開催する。詳細は次号に掲載予定。 を展示した。今回の出展は非常に反響 が大きく、今後の活動にも非常に有益 な成果が得られた。また、今回の出展 は日本工学院専門学校との共同出展で あり、お互いの特長を活かした展示を 行うことができた。 2. 9 月 18 日にオープン・リサーチ・ センター整備事業 平成 19 年度「ORC 公開講座」を開催した。今回は、第 7 回と第 8 回の合同で、ORC のサブプロ ジェクトである「シナリオエンジン」 と「モーションキャプチャエンジン」 に関する報告を行った。ORC は今年度 が最終年度であるため、それぞれのサ ブプロジェクトでの成果をしっかりと まとめて行きたい。 3. aqua プロジェクトで水族館の夜間観 察会を行った。夜の水族館はとても魅 力的で興味深い。 (高橋里奈) CTC CLOSE UP 東京ゲームショウ 2007 を行い受験生や業界へのアピールを行っている。昨年は大学の出 展はなく、今年も本学と大阪電気通信大学の 2 件のみの出展で ■ 現代 GP あった。 東京工科大学は 2004 年に、日本で始めてゲームの実践教育を 本学は専門学校やゲームスクールとの違いを明確にするため 行う体系的なカリキュラムを考案し、文部科学省の現代的ニーズ に、作品だけでなくゲーム制作技術研究の成果をパネルとともに に対する取組支援(現代 GP)に「インタラクティブ・ゲーム制 展示した。これが予想以上に来場者、特に業界関係者から好評で、 作の実践教育」として採択された。メディア学部のカリキュラム 詳細な質問などが多く寄せられた。 に連動して、多くのクリエイティブ・ラボのスタッフが指導に当 たってきた。 今年は、現代 GP による助成の最終年度となり、その成果を「私 学情報教育フォーラム」、 「東京ゲームショウ 2007」(TGS2007)、 「CEDEC」において公開してきた。今回はその中から TGS2007 の 出展の報告をする。 ■ 世界最大のゲームイベント こ れ ま で 米 国 Los Angeles で 開 催 さ れ て き た Electronic Entertainment Expo(E3)は、2007 年から大幅に縮小されたため、 東京ゲームショウは世界最大のゲームイベントとなった。昨年は Nintendo Wii、Sony PS3 の発売が重なり、特に一般デーに熱心な 研究ゾーンの展示 ゲームファンが訪れ、来場者は 20 万人近くに達した。今年は、 ビジネスデーを 1 日延長し、会期を 4 日とした結果、特にビジ ネスデーの来場者が増え、昨年を越える来場者(193、040 人) ■ 何とか間に合ったプロジェクト演習の成果 となった。 TGS2007 での展示のもう一つの目玉は、プロジェクト演習の 成果となるゲーム(のデモ)である。2005 年に始まったプロジェ クト演習の第一期が完結するのが TGS2007 となる。一年次の後 期からオリジナルの企画を考え、実現するために必要な技術を自 ら習得し、最終的にその成果を取り纏めて発表するという息の長 い取組であった。学生は予想以上にその意味を理解して、紆余曲 折をしながら日々たくましくなり、最終的に無事彼らの作品を展 示することができた。品質は、正直言うとまだまだであるが、自 分たちの手で一からゲームを作り上げる経験をすることによっ て、卒業研究のテーマ構築やその後の進路に有益な体験を与えら れたことは間違いないようである。 東京ゲームショウの会場の様子 ゲームデモゾーンの展示 4 日間の展示で、東京工科大学ブースの訪問者は 900 名を越 えた。その中には、これから自分の進路を選択する中高生などの 受験予備軍のほかに、本学の学生の採用を検討している企業や共 東京工科大学のブースの様子 同研究などの取組みを模索している企業、さらにはゲーム教育を これから本格化させたい海外の大学など、多岐にわたる来場者が ■ 予想以上に注目されたゲーム制作技術研究 あった。初めての出展としては予想以上に盛況で、今後もぜひ継 TGS2007 はゲームの見本市であり、これから販売されるゲー 続して出展していきたい。そしてそのための準備はもう始まって ムのショーケースとなるイベントである。その中で、専門学校や いる。 ゲームスクールなどがブースを構えるコーナーでは、作品の展示 (三上浩司) トレンドウオッチ! スタッフの顔 「ポータブルガジェットと WiFi」 H O T な研究紹介- -ラボの 伊藤 彰教が語る Nintendo DS、PSP など、WiFi に対応したポータブルゲームは以 中村 太戯留 : 前からも発売されていた。発売当時は、「設定がめんどう」「面白 クリエイティブ・ラボ アシスタントプ い使い方があるのか?」という声もあり、あまり普及は望めなか ロデューサ ったように記憶している。ところが最近、若年層を中心に、ゲー ムでの無線ネットワーク利用が増加しているようである。ゲーム 私 が 彼 と 出 会 っ た の は 大 学 1 年 生。 機ではあまり広まらなかったネットワークゲームだが、PC を所 語学のクラスが一緒になった…という 有したり、インターネットカフェを利用する機会が増え、PC を 程度のはずが、なぜかその後、様々な 中心としたネットワークゲームが身近にあった現在の 10 代は、 研究プロジェクトなどで忙しい大学時 ネットとコンテンツをいとも簡単に楽しんでいる。 代を共にした盟友。最初に彼が「普通ではない」ことに気づいた さらに、ここにきて電話の他、無線 LAN という選択肢を与え のは、彼の書いたプログラムを見たときだった。当時プログラミ てくれる iPod touch が発売され、スターバックスコーヒーとコラ ング未経験者の私には、プログラムが得意な人の書いたものはさ ボレーションし、同店専用の iTunes Store で、今かかっている曲 っぱりわけのわからない世界…。ところが、彼のプログラムは、 をその場で購入できるなど、20 ~ 30 代のオフシーンでも、無 そんな私ですら、見ただけでプログラムの学習になるほど「美し 線 LAN での利用を促進する魅力的なサービスが始まった。一方、 い」プログラム。頭の構造が違うとはまさにこのこと。理系が苦 ビジネスシーンでは、WiFi を超えた WiMAX が面白い技術として 手な私が、彼に助けてもらったことは数知れず…の恩人でもある。 注目されている。ジェネレーションギャップはありつつも、ケー そんな彼と 「ぷよぷよ」 で対戦した際には、私には全く理解不能な タイという無線電話の他に、無線 IP によるコンテンツ・コミュ 積み上げ方をし、まもなくこちらが勝利…と油断したところで突 ニケーションが新しいフェイズに入りつつある。 然何十連鎖も起こして私を困らせてくれるお茶目な奇才でもある。 こう紹介すると、いかにも「インドア派」のように見えるが、 実は三上に次ぐほどのスポーツマン。水泳で鍛えたがっしりとし た体で様々なスポーツにチャレンジした結果、ウィンド・サーフ ィンに行き着き、今は生涯の趣味となっているようだ。彼のウィ ンド論は、さながら流体力学の講義を聞いているかのよう。やは (伊藤彰教) ラボ&CTC来訪者 り奇才である。 フレッシュな視点 今月は夏季休暇中ということもあり、学生の数も少なく静かな 日々が続いていた。このまま後期開始までは静かな CTC が続く -学生の研究紹介- バイオ・情報メディア研究科 博士課程 石川智彦 「ディジタル映像技術マニュアルの開発」 と思われたが、中旬辺りから多くの学生が CTC に集まり活気に 本研究は、ディジタル化によって大きく変化した映像制作の制 満ちていた。集まっていた学生達は、9 月 20 日から行われる東 作環境やコンテンツの状況を調査分析し、新しい映像メディア環 京ゲームショウ 2007 で、自分達がこれまで制作してきたゲーム 境に適応した映像制作者の育成を目指すマニュアル開発である。 を展示するための準備を行なっていた。準備をしている学生達の この研究は ORC のサブプロジェクトの一つに位置し、ディジ 目は希望と自信に満ちており、今回が初めての試みであることを 感じさせないほどであった。 タル環境に適応した、一貫性のあるマニュアルとして執筆し、 「ディジタル映像制作技術マニュアル」として出版を行っている。 今月は大きな見学が 1 つあり、遠くタイの大学から訪れた 20 また、このマニュアルでは、メーカーの差異や細かな仕様に左右 名がクリエイティブ・ラボの研究成果を興味深く見学していた。 されない、根本的な技術や制作工程・そして新しいディジタル技 ここ最近、海外からの見学者も増えており、日本国内のみならず 術への理解を促進させる事を中心に執筆を行い、本学の映像系の 世界の人々にもクリエイティブ・ラボで行なっている研究や試み 授業でも利用されている。 を理解してもらえるよう努力していきたい。 現在は、このマニュアルをさらに価値のあるものにするために、 Web ストリーミングを用いた、映像補助教材の追加を行っている。 ■見学者一覧 これにより、今まで文字や図だけでは理解しにくかった、映像の 11 日 タイ王国東ラチャーモンコン大学 20 名 時間(尺)による印象の違いや、実際に体験しないと分かりにく い技術の映像化を 試 み て い る。現 在 は、今 ま で に な い ディジタル技術映 像マニュアルにな る よ う 日 夜 執 筆・ 制作に励んでいる。 (松島渉) 素材撮影の風景 DMCスタジオ利用実績 秋深まる 9 月。 こういった活動を見ていると、モーションキャプチャという 東京では、この 1 か月、CoFesta(http://www.cofesta.jp/)と題 テーマに限らず、継続的な産学連携をもっと行っていきたいと思う。 した JAPAN 国際コンテンツフェスティバルが行われている。 その際にこの DMC スタジオをもっと活用して行く必要がある。 9 月から 10 月に集中的に開催されるゲーム、アニメ、マンガ・ キャラクタ、音楽、放送、映画といったコンテンツ産業に関わる 最 新 機 種・ソ フ ト の 展 示 会 の 要 素 が 強 い TGS に 比 べ て、 各種イベントが連携して開催する世界最大規模の統合的コンテン CEDEC では、研究が前面に押し出される。実際の現場の人間が ツフェスティバルである。 自分たちの取り組みを発表する場であるので当然であろう。 9/20 幕張 東京ゲームショウ バンダイナムコのチームは、「エースコンバット」で指のモー 9/26 東大 CEDEC2007 ションキャプチャ、顔のモーションキャプチャをワークフローに 9/26 東大 DIGRA2007 落とし込んでいた。これは、数か月の研究を進めた結果とのこと。 10/2 幕張 CEATEC 当然、DMC スタジオでも同様のことを進めており、企業研究 などなどである。 とも切磋琢磨していく必要があるし、産学連携を深めた形でもっ (東京国際アニメフェアは、開催時期がずれており、3 月なのだが) と良い結果が出てくるようにしないといけない。 (小澤賢侍) 東京ゲームショウでは、東京工科大学としての出展をした。 周りはゲーム制作の専門学校などが並ぶ中、ゲームに関する研 究をしているということで、他とは一線を画していたのは非常に 良かった。 ORC公開講座 2007 年 9 月 18 日(火)16:15 ~ 18:30、恵比寿ガーデンプレ 海外の現状および、発表におけるシナリオの定義について、基本 イスタワー地下 1 階、日本 SGI ホールを会場に、平成 19 年度オー 的な構造と用語の説明を行い、具体的にシナリオ完成までのフ プン・リサーチ・センター整備事業、第 7・8 回合同「ORC 公開講座」 ローについて述べた後、段階的なシナリオ作成(バイステップ手 を開催した。今回は、第 7 回及び、第 8 回の合同開催である。 法)について、5 段階の項目を挙げ報告した。最後に、各種手法 参加者は、企業計 15 社(20 名)と学生 3 名であった。 および、テンプレートついて、今年度終了までに適正な公開方法 第 7 回では、「構造化アニメーションプロジェクト~アニメー を検討すると報告した。 ション資産の活用に向けて~」と題して、川島基展(クリエイティ 次回は、同会場にて 10 月 9 日(火)に「国際シンポジウム ブ・ラボ)が報告した。 2007」を開催の予定である。 構造化アニメーションプロジェクトのこれまでの取り組みで、 アニメーション制作工程の効率化のためさまざまな動作をモー ションキャプチャで取込んできた。今年度の取り組みでは、その データをより使い易くするための検索システムを構築しているこ とを報告した。そして、共同研究をしている小鎚スタジオの下平 和久氏により、データの分類とその構造化について、実際のデー タ例を用いて具体的に報告した。 第 8 回では「シナリオ作成利用技術のソフトウエア化」と題 して、金子満(メディア学部)が報告した。 (下田美由紀) 初めに、近年のシナリオ制作ソフトウエア開発における日本と 編集後記 -金子満が語る- コンテンツ関連のショーやイベントを秋の一定期間に集中し 1年を通じてさみだれ式に発表やビジネスの場があるほうが機 ようとする動きがある。経済産業省がビジネスの効率化を求 会が増えるという意見もあるのだが、聞いてくれないようだ。 めて主導してゆこうとしているのだが、大変な作業になる。「 フェア」や「フェスティバル」 「コンクール」などは古いものほど 来年から新しい ORC に挑戦することになるが、その内容は別 民間主体でやってきているし、世界中からも認知されて、参 として研究環境としてのネットワーク、その成果を示す場とし 加者は年間スケジュールを組んでいるからだ。 てのビジネス化をどのように組み入れるかが重要だ。本学の対 外的なネットワークは弱い。インターネットしかないとビジネ 新しいものでも「東京国際アニメフェア」などは、東京都が スへの対応も難しくなる。今 4K ディジタルシネマのために高 後押ししているので、現行の3月を秋にもってくるのは難し 速大容量ネットワークを本学に引き込む試みが進んでいる。是 いだろう。お役所的にはひと月に集中すると楽だろうが、プ 非恒久的なものにしたいのだが。 ロダクションやアーティストにとっては必ずしもそうではない。 2007.10.10発行 東京工科大学 片柳研究所 クリエイティブ・ラボ Vol.39
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