お客様に聞く SAP移行導入事例 — 日本航空株式会社 JALエンジニアリング IT企画部 部長 近藤徹哉 氏、原田和高 氏 「日本航空ではリアルテックにSAPバージョンアップ のデータ移行を依頼しました。ダウンタイム4時間を 絶対条件とし、実績値は3時間16分でした」 JALエンジニアリング IT企画部 部長 近藤徹哉 氏、原田和高 氏に、 SAP移行にリアルテックを起用した経緯とその評価について詳しく聞きました。 CONTENTS Company information 1 航空機整備システム『JAL Mighty』の移行を依頼 2 日本航空の安全安定就航を支える『JAL Mighty』導入の重要ポイント 3 ダウンタイムは4時間以内が絶対条件 4 リアルテックを選択した理由 5 プロジェクト事前準備の概要 6 プロジェクト本番当日の進行 ■ 日本航空について 日本航空は日本を代表する航空会社の一つです。設立 1951年、航空機数224機、従業員数 約32000人(連 結) 、年商1兆3447億円(連結、2014会計年度) ■ JALエンジニアリングについて JALエンジニアリングは、日本航空の航空機整備を主 7 リアルテックへの評価 8 先輩ユーザーからのアドバイス 9 今後の期待 な事業分野とするエンジニアリング企業です。設立 2009年、従業員数約4,000名。 ※ 本事例では『日本航空』と『JALエンジニアリング』を特に区別 せず、 「日本航空」という名称で総称いたします。 お客様に聞く SAP移行導入事例 — 日本航空株式会社 航 空 機 は24時 間 航空機整備システム『JAL Mighty』の バージョンアップ、データ移行を依頼 システムの移行により — 今回、日本航空はリアルテックにどんな業務を依頼したので タイムが発生すること しょうか。 は許されません。社内 365日運航されており、 整備に長時間のダウン 日本航空はリアルテックに、 SAPベースの航空機整備システム『JAL で 協 議した結果、許 Mighty』のバージョンアップにかかわるデータ移行を依頼しまし されるダウンタイムは た。概要は次のとおりです。 「深夜1時から5時まで の4時間」という結論 になりました。 内 容 項 目 備 考 Server SAP 移行内容 SQL Server 2008年 しかし「ダウンタイ ム4時 間 以 内」は 非 常に厳しい条件です。 R/3 4.7 x 110 ERP 6.0 EHP6 (非Unicode) (Unicode) OS、DBMS、SAP のサポート期限切 れに伴い移行 2005 2012 しましたが、 「4時間は DC、社内クラウド への移転 ても3日は必要」など Windows Server スケジュール 2015年 2003 2012 2013年 ~ 2015年6月13日の期間中に 設計、開発、テスト、実装、導入を実施 SI各社にもヒアリング 困難」 「どんなに早め JALエンジニアリング IT企画部 近藤徹哉 氏 という回答でした。中には「できます」と言ってくる会社もありましたが、 検証・テスト4回、 事前リハーサル1回 なぜできるのかの根拠がはっきりせず、結局のところ、その「できる」 は「何とかする」という意味合いと感じました。 一時は社内で、 「4時間は無理なので3日~ 7日程度のダウンタイム を許容する」という案も検討しましたが、お客様に安全・安心をお 日本航空の安全安心な フライトを支える『JAL Mighty』 — 今回のバージョンアップ、データ移行を行った『JAL Mighty』 届けするためにも、整備品質確保の基本となるシステムとしては、 やはり長期ダウンは認められませんでした。また新生JALの基本価値 の一つとして「高い目標をかかげ、最後まであきらめない」ことを掲 げています。その原点に立ち返り、4時間は無理とすぐあきらめるの ではなく、ギリギリまで実現の方法を模索することにしました。 の概要を教えてください。 そんなとき偶然リアルテックのことを知りました。さっそく「ダ 『JAL Mighty』は、日本航空の航空機整備のための基幹情報シス ウンタイム4時間以内のSAP移行」について可否を尋ねたところ、 「可 テムです。 能です」との返答でした。なぜ可能なのか根拠を聞いたところ、大 航空機の安全で品質の高いフライトを支えるためには、機体の確実・ きくは「通常の方法で移行するとシステムコピー、アップグレード、 迅速な整備が不可欠です。現在、日本航空は全世界で月間約2万便 Unicode変換などがシーケンシャルに必要となり時間がかかる。リ を就航させており、それら航空機に対し4000人の整備士が、飛行前 アルテックはT-Boneを使ってダイレクトに移行するので速くなる」 点検や定期整備など機体・エンジン・部品に関する各種整備を実施 という説明でした。 しています。整備対象となる部品の数は、個別に整備履歴の管理が 必要なものだけで50万個を超えます。これら膨大なデータを統合管 理し、整備業務を確実・迅速に実施するために、2008年にSAP R/3 を活用した航空機整備業務システム『JAL Mighty』を構築・稼働開 <参考情報 >:最小ダウンタイムでの移行を実現した『T-Bone』 ※ 以下はリアルテックによる説明です。 始しました。 その『JAL Mighty』が稼働から7年を経て、OSやデータベースのサ 今回、なぜダウンタイム4時間の高速SAP移行が可能になったのか、 ポート期限切れの時期を迎えることになったので、 2015年に新バージョ 根本のところからご説明します。 ンへの移行(システム移行)を実施した次第です。 『JAL Mighty』のシステム移行が2015年に到来することは、最初に システム構築した2008年の時点ですでに分かっていました。またこの 移行に大きな困難が伴うことも、最初から明白でした。 【今回求められたSAP移行の内容】 今回、求められた移行の内容は、❶「OS,DBMS,SAPを最新バージョ ンに上げる」 、❷「ユニコード変換を実施する」という2点です。 【通常の移行方法】 ダウンタイムは4時間以内が絶対条件 — どんな困難が予測されていたのでしょうか。 『JAL Mighty』のシステム移行に伴う整備のダウンタイム、これを可 能な限り最小にする必要がありました。 通常は「現行本番機 ▶︎ 中間機 ▶︎ 新本番機」の順番でシステ ム移行を行います(次ページの図参照) 。 この方法の場合、システムコピー、アップグレード、Uni code変換 の各処理に時間を要する分、移行に要する時間が長くなります。4 時間以内の移行はまず無理です。 【T-Boneによる高速移行方法】 今回の移行ではT-BoneによるNear Zero Downtimeオプションを採用 しました。T-Boneを使えば、事前準備したターゲット環境(ソフト ウェアのバージョンをターゲットバージョンにしたもの)に対し、 直接クライアントデータを投入することが可能です。 この方法ならシステムコピー、アップグレード、Unicode変換の処理 を省略できるので、ダウンタイムを大幅に短縮することができます。 特にNear Zero Downtimeオプションでは、❶「更新が発生しない過 去データを転送」 、❷「差分データを転送」という手順を取ること が可能です。この手法によりダウンタイムをさらに短縮することが 可能です。 なお実際の移行では、システムの状態、業務の状態などにより、移 行手順・時間が異なることを考慮し、本番移行前に入念なテストや リハーサルを実施する必要があります。 移行前の本番機 新本番機 SAP R3 4.7 X110 (Non-Unicode) SAP ERP 6.0 EHP6 (Unicode) SQL Server 2005 Windows Server 2003 T-boneを使ってSAPリリース OS/DB、コードページを 超えたシステム移行を実現 SAP System Data SQL Server 2012 Windows Server 2012 プロジェクト事前準備の概要 — その後はプロジェクトをどう進めたのでしょうか。 まず半年かけてアセスメント、設計を行い、その後、検証・テスト 4回、リハーサル1回を行った後に、移行の本番当日を迎えました。 ダウンタイム4時間以内を実現するための事前準備の内容 本番前に行った事前準備の概要は以下のとおりです。 項 目 回 数 内 容 移行検証 1回 検証環境での問題点の洗い出し 移行テスト 3回 本番環境での問題点の洗い出し・手順の確立 移行リハーサル 1回 最終手順確認、移行時間の確立 テストおよびリハーサルの際は、データ移行処理だけでなく、ベー シス前処理・後処理、アプリ後処理、データ移行後の確認なども行 う必要がありましたが、綿密な移行タイムテーブルを準備して 各 移行対象テーブルや周辺システムごとの課題や問題点を洗い出して 解決策を準備することで、移行時間のいっそうの短縮を図りました。 SAP System Data Customer Data (Non-Unicode) Customer Data (Unicode) T-bone てもアプリベンダーと連携の上、迅速・確実な移行を図りました。 中間機 SAP R3 4.7 X110 (Non-Unicode) またベーシスだけでなく、アプリケーション関連の移行作業につい SAP ERP 6.0 EHP6 (Unicode) SQL Server 2008 プロジェクト本番当日の進行 Windows Server 2008 System Copy SAP System Data Upgrade SAP System Data Unicode Conversion — 本番当日はどのような進行だったのでしょうか。 本番当日の2015年6月12日の夜半より、プロジェクトルームに各 リアルテックを選択した理由 種端末や回線を用意し、私たちとリアルテックのスタッフ十数名を 含む約40名に加え 都内の別ビルにあるシステムセンターの約30 名による移行体制を整えました。 — リアルテックの説明を聞いての印象を教えてください。 深夜1時になった時点でシステム移行の開始を宣言し、その後は 弊社が接した中で、4時間以内の移行が「可能である」といい、 プロジェクトで事前に合意したタイムテーブルに従い 各パートナー かつ「根拠を示した」というSI会社のなかでは、リアルテック提示の 会社の作業を開始、リアルテックのスタッフも、事前に定めた綿密 案は 実現性が高いと感じました。この技術的優位は、ベンダー選 なスケジュールに従い次々とタスクを順調に処理していきました。 定の上で大きなプラスポイントとなりました。 またリアルテックのドイツ本社は「ドイツのSAPエンジニアがスピン システム移行の本番当日の進行 アウトして設立したSAP専門のSI企業」であり、 かつ 「リアルテックジャ パンとしても日本でSAP構築・移行の実績多数」であるなど、会社 新本番機 の成り立ちや実績についても「確からしさ」を感じさせました。 ※2 Delta Migration さらにリアルテックジャパンはT-Boneというツールだけでなく、そ Main Migration ※1 Prep 本番稼働 れを使いこなす「スタッフの技術および人格」も信頼できると思われ ました。今回の移行作業は、SAPのデータ移行に加えて、周辺シス ダウンタイム3時間16分で移行 テムの移行を担当する他のSI企業とも密に連携して実施する必要が 3:16 あるので、作業スタッフの質は重要です。 68:19 2:00 2:02 商談を進める中で接したリアルテックの担当者には、 「高い技術力」 Main Migration この人たちとなら「一緒に仕事ができる」と思いました。 さらに移行費用も、当初の想定費用に見合った価格でした。 社内で良く検討した末に「 『JAL Mighty』の移行をリアルテックに 依頼する」ことを決定しました。2014年4月のことです。 ※2 Delta Migration 「熱意、誠実さ」 、 「プロフェッショナルとしての責任感」を感じました。 本番稼働 移行前の本番機 1:14 ※1 Prep DownTime ※1 最終差分更新と 整合性チェック ※2 後処理 お客様に聞く SAP移行導入事例 — 日本航空株式会社 T-Boneの用途例 当日の本番移行は、 「最終差分更新」 「整合性チェック」 「後処理」 の3工程を、3時間16分で完了することができました。 この高速移行が達成できた理由としては、❶「テスト ▶︎ 問題発見 ▶ 今回、使ったT-Boneは、 「SAPシステムのデータベースを直接データ 移行・変換するツール」です。次のような場合に最適です。 対処策考案 ▶ 再テスト…、というPDCAサイクルを確実に回したこ 項 目 と」 、❷「BASIS/アプリベンダー各社の様々なチューニングにより後 処理工程が高速完了したこと」の2点が挙げられます。 なお、事前転送にあたる「Main Migration」 「Delta Migration」につ いては実際に要した期間は、図中に記してある「68時間」ではなく、 「5日弱」です。これは数回の移行テストを経る中、通常業務による 高負荷が生じる時間帯などで、業務処理のパフォーマンスに影響を 与える懸念が明らかになったことから、データ転送処理を断続的に 実施するという調整を行ったことが、その理由です。 M&A/企業組織再編成 会社組織の統合・分離 データ統合/変換 会計年度の期間変更など財務・管理会計の変更 に伴う統合・調整 システム統合 システムランドスケープやインスタンスの統合 「システム統合」ではこの他、次の用途でT-Boneを活用することが可 能です。 項 目 リアルテックへの評価 — SAP移行プロジェクトを終えてのリアルテックへの評価をお聞 かせください。 まず「ダウンタイム4時間以内」というプロジェクトとして掲げた絶対 要件を、目標40分下回る形で達成したことは期待以上の成果でした。 リアルテックの技術力をあらためて高く評価しています。 また。タスク実行時間や、担当者の手入力の所要時間など、あらゆ る行程を細分化して分単位でスケジュール管理していたことにも驚かさ れました。 スケジュール表はテストの度にブラッシュアップされていきました。こ うした地道な改善を積み重ねたことが、ダウンタイムの予想以上の縮 小につながったものと思われます。 内 容 内 容 DB変更 - SAP HANA への移行 - 他のDBMSへの移行 プラットフォーム変更 - クラウドや仮想化環境への移行 - H/W変更時の移行 SAPアップグレード - SAPシステムアップグレード時の移行 - EHP適用時の移行 Unicode変換 - 単一コードページからの移行 - マルチ言語環境からの移行 T-Boneでは、Near Zero Downtimeオプションと組み合わせることで、 ダウンタイムの短縮と安全なデータ移行を実現します。今後は特に SAP HANAへの移行だけでなく、SAP S/4 HANAへの移行(前提とな るNewGL化も短期間で実現)で積極活用されていくでしょう。 また今回の移行は他ベンダーとの協調が不可欠でしたが、リアル テックは各企業と緊密に連携し、ダウンタイムを極小化できるよう最大 限の努力を払っていただいたものと評価しています。 先輩ユーザーからのアドバイス 今後の期待 — リアルテックへの今後の期待をお聞かせください。 今回、T-Boneとスタッフ各位の献身的努力により、 『JAL Mighty』 をダウンタイム4時間以内で移行するという困難なプロジェクトを無事 — 現在、SAP移行を考えている企業に向けて「先輩ユーザーから 終えることができました。日本航空では引き続き航空機整備のシステ のアドバイス」などあればお聞かせください。 ム基盤の安定運用と活用へ挑戦してまいります。リアルテックにはその アドバイスのような大それたことはありませんが、私見として、まず 取り組みを、優れた製品力、技術力、提案力を通じて後方支援して 技術要件が明確な案件の場合は、企業規模の大小ではなく純粋な いただくことを希望します。今後ともよろしくお願いします。 技術力、すなわち「技術的課題の解決が可能であること」 「なぜ可 能であるのか根拠が明確であること」 「実績があること」を基準に選 ぶのが良いと考えます。 また技術力の他に「価値観を共有できること」 、 「他のベンダーと緊 密に連携が取れること」など「ひと」の部分も劣らず重要な選択基 準になると思います。 リアルテックジャパン株式会社 REALTECH Japan Co.,Ltd. 〒102-0073 東京都千代田区九段北1-8-10 住友不動産九段ビル 6F TEL.03(3238)2066 FAX.03(3238)2067 E-mail info-jp@realtech.jp 本カタログで記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。 本カタログに記載されている内容は、2015年10月現在のものであり、予告なく変更されることがあります。 © Copyright 2015 REALTECH Japan Co.,Ltd.
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