平成19年度に係る業務実績報告書 平成20年6月 独立行政法人農業生物資源研究所 国民の皆さんへ 日本は、食料の6割を海外の生産に依存しているため、その安定供給を図るには世界の農業 技術の発展に貢献することが大事です。また、環境・エネルギー問題の解決にも、バイオマス としての農産物の可能性が注目されています。 独立行政法人農業生物資源研究所は、日本の食料の安定確保、地球規模の食料・環境問題の 解決等に貢献することを目的に策定された「農林水産研究基本計画」(平成17年3月30日農林水 産技術会議決定)に基づき、バイオテクノロジーを活用した次世代の革新的技術の開発や新生 物資源の創出、健康や安全に寄与できる新技術の開発等、基盤的な研究を担う我が国最大の農 業分野の基礎生命科学研究所です。このため、農業生物資源研究所が中心となった10カ国・地 域からなる国際コンソーシアムで進めてきたイネゲノム研究等の成果を活かして、遺伝子情報 を含む生物遺伝資源の体系的な整備を行う「遺伝資源及びゲノムリソースの高度化と活用」、 「農業生物に飛躍的な機能向上をもたらすための生命現象の解明」、植物、昆虫、動物等に新 形質を付与する技術を開発し、次世代型のバイオ産業の創出を支援する「新たな生物産業の創 出に向けた生物機能利用技術の開発」について、重点的に実施しています。 第2期5カ年計画の2年目となる平成19年度は、減農薬栽培や収量の増大につながる、作物 の病気に対する抵抗性遺伝子の発見や、目的とする遺伝子をピンポイントで改変する精度の高 い遺伝子組換え技術の開発、カイコのゲノム解析に必要なゲノム統合地図の作成、豚肉の生産 性を上げる椎骨数を決める遺伝子の特定等の主要な研究成果を生み出しました。これらの基礎 的な研究成果は、バイオマス植物の収量増大や害虫防除等、より実用化に近い研究に貢献する ことが期待されます。 一方、研究の質を維持・向上させつつ効率的かつ効果的な運営を行うため、業務効率化推進 基本計画を策定し、契約事務の簡素化やデータ共有による業務の迅速化などを進めています。 また、放射線取り扱い業務等、研究推進上関係法令の遵守が必要な業務を統括する部署を設け、 職員の教育訓練を行う等、組織の社会的責任を明確にし、効率的な組織運営の改善を図ってい ます。 バイオテクノロジーをはじめとした先端科学研究は進展が著しく、国際的な競争も熾烈に なってきています。一方、研究にはある程度の年月が必要なことも事実です。このため、次年 度以降も、将来を見通しつつ、研究の重点化、新分野の開拓を進め、農業生物資源研究所が今 後とも農業生物資源の基礎研究の分野で世界をリードして行くよう、努めます。 目 第Ⅰ章 Ⅰ Ⅱ 第Ⅱ章 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ 次 独立行政法人農業生物資源研究所の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 基本情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1 業務内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 事務所の所在地・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 3 資本金の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 4 役員の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 5 常勤職員の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 6 設立根拠法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 7 主務大臣・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 8 沿革・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 9 組織図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 経営方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 平成19年度の業務の実施状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置・・・・・・・・・・5 1 評価・点検の実施と反映・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 2 研究資源の効率的利用及び充実・高度化・・・・・・・・・・・・・・・・15 3 研究支援部門の効率化及び充実・高度化・・・・・・・・・・・・・・・・26 4 産学官連携、協力の促進・強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 5 海外機関及び国際機関等との連携の促進・強化・・・・・・・・・・・・・32 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を 達成するためとるべき処置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 1 試験及び研究並びに調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 A アグリバイオリソースの高度化と活用研究・・・・・・・・・・・・・38 B ゲノム情報と生体情報に基づく革新的農業生産技術の研究開発・・・・56 C バイオテクノロジーを活用した新たな生物産業の創出を目指し た研究開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88 2 研究成果の公表、普及の促進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105 3 専門研究分野を活かしたその他の社会貢献・・・・・・・・・・・・・・119 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画・・・・・・・・・・125 1 予算配分方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125 2 外部資金の獲得・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126 3 自己収入増加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 4 予算、収支計画及び資金計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128 5 簡潔に要約された財務諸表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 6 財務情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139 7 事業の説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・145 8 経営管理体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・147 短期借入金の限度額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・153 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画・・・・・153 剰余金の使途・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・153 その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項等・・・・・・・・・・・153 1 施設及び設備に関する計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・153 2 人事に関する計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154 3 情報の公開と保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156 4 環境対策・安全管理の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・157 (付録)用語の解説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・161 資 資料1 資料2 資料3 資料4 資料5 資料6 資料7 付表 料 農業生物資源研究所がリーダーとして推進しているプロジェクト研究概要 遺伝資源の配布及び依頼照射実績一覧 研究業績一覧(原著論文) 特許等取得・品種登録一覧 主要な研究成果 農業生物資源研究所が公開しているホームページと主な知的基盤データ ベース一覧 業務効率化推進基本計画 農林水産省独立行政法人評価委員会による農業生物資源研究所の平成18年 度に係る業務実績評価結果の対応状況 【本文中に掲載している計画は、平成19年度計画ではなく、5年間で達成すべき「中期計画」 であり、平成19年度実績の中期計画における到達点を判断する指標として掲載した】 第Ⅰ章 Ⅰ 独立行政法人農業生物資源研究所の概要 基本情報 1 業務内容 (1)目的 生物資源の農業上の開発及び利用に関する技術上の基礎的な調査及び研究、昆虫その他の 無脊椎動物の農業上の利用に関する技術上の試験及び研究等を行うことにより、生物の農業 上の利用に関する技術の向上に寄与する。 (2)業務の範囲 ①生物資源の農業上の開発及び利用に関する技術上の基礎的な調査及び研究並びにこれに関 連する分析、鑑定及び講習を行う。 ②昆虫その他の無脊椎動物(みつばちを除く)の農業上の利用に関する技術上の試験及び研 究、調査、分析、鑑定並びに講習を行う。 ③蚕糸に関する技術上の試験及び研究、調査、分析、鑑定並びに講習を行う。 ④原蚕種並びに桑の接穂及び苗木の生産及び配布を行う。 ⑤農作物の品種改良のための放射線の利用に関する試験及び研究を行う。 2 事務所の所在地 本部 〒305-8602 茨城県つくば市観音台2丁目1番地の2 代表電話番号 029-838-7406 (大わし) (放射線育種場) (生活資材開発ユニット (生活資材開発ユニット (ジーンバンク 北杜) 3 松本) 岡谷) 〒305-8634 〒319-2293 〒390-0812 〒394-0021 〒408-0044 茨城県つくば市大わし1番2 茨城県常陸大宮市上村田2425番 長野県松本市県1丁目10番1号 長野県岡谷市郷田1丁目4番8号 山梨県北杜市小淵沢町6585番地 資本金の状況 区分 政府出資金 資本金合計 期首残高 40,319 当期増加額 40,319 - 1 - 当期減少額 0 0 0 0 (単位:百万円) 期末残高 40,319 40,319 4 役員の状況 役職 氏名 任期 担当 理事長 石 毛 光 雄 自 至 平成17年 4月 1日 平成21年 3月31日 理事 佐々木 卓治 自 至 平成19年 4月 1日 平成21年 3月31日 基盤・植物領域 国際交流担当 経歴 昭和52年 4月 平成15年 7月 農林省採用 農林水産省農林 水産技術会議事 務局研究総務官 昭和49年 4月 平成10年 4月 文部省採用 農業生物資源研 究所分子遺伝部 上席研究官 独立行政法人 農業生物資源研 究所ゲノム研究 グループ長 独立行政法人 農業生物資源研 究所理事 平成13年 4月 平成17年 4月 理事 新 保 博 自 至 平成19年 4月 1日 平成21年 3月31日 監事 一 川 邦 彦 自 至 平成19年 4月 1日 平成21年 3月31日 昆虫・動物領域 産学官交流担当 昭和48年 4月 平成18年 4月 農林省採用 独立行政法人 農業生物資源研 究所統括研究主 幹 昭和45年 4月 三菱化成工業株 式会社採用 川崎化成工業株 式会社常勤監査 役 平成16年 7月 監事 堀 尾 義 矩 自 至 平成19年 4月 1日 平成21年 3月31日 非常勤 昭和37年 4月 平成14年 7月 平成17年 4月 5 日清製油株式会 社採用 日清オイリオグ ループ株式会社 常勤監査役 独立行政法人 農業生物資源研 究所常勤監事 常勤職員の状況 常勤職員は平成20年1月1日現在において388名(前期比6人減少、1.6%減)であり、平均年 齢は44.1歳(前期末43.4歳)となっている。このうち、国等(国、他法人及び地方公共団体) からの出向者は69人、民間からの出向者は0人です。 6 設立根拠法 独立行政法人農業生物資源研究所法(平成11年12月22日法律第193号) 最終改正:平成18年3月31日(法律第26号) 7 主務大臣 農林水産大臣 8 沿革 昭和58年12月1日 農業技術研究所の一部と植物ウイルス研究所を統合して農業生物資源研 究所が設立された。 平成13年4月1日 農業生物資源研究所と蚕糸・昆虫農業技術研究所、畜産試験場の一部、 家畜衛生試験場の一部を統合して独立行政法人農業生物資源研究所とし て発足した。 - 2 - 9 組織図 理事長 理事 顧問 監事 統括研究主幹 研究主幹 副研究主幹 研究企画調整室 評価室 情報管理室 図書資料館 広報室 遺伝子組換え研究推進室 安全管理室 産学官連携推進室 生物遺伝資源管理室 技術支援室 常陸大宮統括 統括業務主幹 業務主幹 庶務室 経理室 管理室 監査室 特別研究室 QTLゲノム育種研究センター 遺伝子組換え作物開発センター 遺伝子組換えカイコ研究センター 遺伝子組換え家畜研究センター 基盤研究領域 植物ゲノム研究ユニット ゲノム情報研究ユニット ゲノムリソースセンター ジーンバンク 放射線育種場 ダイズゲノム研究チーム 植物科学研究領域 耐環境ストレス研究ユニット 光環境応答研究ユニット 耐病性研究ユニット タンパク質機能研究ユニット 植物・微生物間相互作用研究ユニット 遺伝子組換え技術研究ユニット 昆虫科学研究領域 昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット 制御剤標的遺伝子研究ユニット 乾燥耐性研究ユニット 生体防御研究ユニット 昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット 昆虫・微生物間相互作用研究ユニット 絹タンパク素材開発ユニット 生活資材開発ユニット 動物科学研究領域 家畜ゲノム研究ユニット 生殖機構研究ユニット 脳神経機能研究ユニット - 3 - 研 究 管 理 支 援 部 門 研 究 開 発 部 門 Ⅱ 経営方針 農業生物資源研究所は、農業の生産性の飛躍的向上や農産物の新たな需要の創出及び農林水 産業の新たな展開を可能とする新産業の創出を目指して、進歩の著しいバイオテクノロジー分 野の研究動向に対応して研究開発を実施している。第2期中期目標期間においては、国内外の 社会経済動向、農政上の課題などを踏まえ、農業生物資源研究所の社会的使命とこれを達成す るための業務の重要性は一層高まっているとの認識の下、人材、研究施設・設備等の研究資源、 農業生物資源研究所が蓄積してきた研究成果、遺伝資源、ゲノムリソースなどの知的基盤を最 大限に利用して、バイオテクノロジーを中心とする基礎的・先導的な研究及び技術開発のさら なる飛躍を目指す。すなわち、ゲノム研究をバックボーンとし、そこからQTLゲノム育種や遺 伝子組換え研究へ枝葉を伸ばしつつ、さらに農業生物のゲノム研究における世界的な中核機関 として認められ続けるため、今後とも世界をリードする研究開発を続けるとともに、国際シン ポジウムの開催やゲノム等データベースの充実・公開など情報発信を積極的に進める。このた め、研究領域を重点化し、中期計画の小課題に対応する研究単位を設定し、役割と責任を明確 化するとともに、研究部門を支える研究企画管理部門の機能を強化した。 第2期中期目標期間の2年目にあたる平成19年度は、上記の方針のもと、具体的には以下の 措置を講じた。 (1)国内外の状況から、ダイズにおいてゲノム育種技術の基盤となるゲノム解析研究の推進が 急務となったため、平成19年度より、中期計画に「ダイズのゲノムリソースの開発と利用」 を追加し、研究推進の中心となるチーム長に、優れた研究業績と指導能力を有する研究者 を招へい型任期付研究員として採用した。 (2)ポスト・イネゲノムシーケンス研究の国際的な交流の場である「イネ機能ゲノミクス国際 シンポジウム」を国内で初めて開催し、過去最多の340名の参加を得て、農業生物資源研 究所をはじめとする、我が国のイネゲノム、ポストゲノム研究の最先端研究を世界に示し た。 (3)従来からイネゲノム研究プロジェクトの中核機関として行っている、大学等のプロジェク ト参画研究者へのサポートを一般に広げ、マイクロアレイ解析室をオープンラボとして運 用を開始した。これにより、本施設を利用して得られたデータを蓄積、保管、公開して、 生命科学研究・ゲノム研究のさらなる発展と研究成果の社会還元が進むことを期待してい る。 (4)一般の人が除草作業を体験する「市民参加型展示ほ場」を、国民との双方向コミュニケー ションの一環として開催し、農作物における遺伝子組換え技術への理解を深める活動を強 化した。 (5)平成18年度から本格運用を開始し、コミュニケーション・ツールとして定着したグループ ウェアの次の段階として、企業情報ポータルとしての機能も併せ持たせることにより、迅 速な意思決定を支援するシステムへのステップアップを図った。 (6)職員各々が自覚を持って業務効率化に取り組むよう、業務効率化推進基本計画を策定し、 業務効率化推進委員会を中心に活動を開始した。 (7)研究者の卵である大学院博士課程の学生のフレッシュな発想等を活かして研究推進を図る ことを目的に、博士課程の学生を研究勢力として雇用するジュニアリサーチャー制度を発 足させた。 - 4 - 第Ⅱ章 Ⅰ 平成19年度の業務の実施状況 業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置 中期目標及び中期計画 運営費交付金を充当して行う事業については、業務の見直し及び効率化を進め、一般管 理費については、中期目標期間中、毎年度平均で少なくとも前年度比3%の削減を行うほ か、業務経費については、中期目標期間中、毎年度平均で少なくとも前年度比1%の削減 を行う。 また、人件費については、行政改革の重要方針(平成17年12月24日閣議決定)を踏まえ、 今後5年間において、5%以上の削減(退職金及び福利厚生費(法定福利費及び法定外福 利費)を除く。また、人事院勧告を踏まえた給与改定部分を除く。)の取組を行うととも に、国家公務員の給与構造改革を踏まえた給与体系の見直しを進める。 (実績) 運営費交付金を充当して行う事業については、業務の見直し及び効率化を進め、平成19年度 において、中期計画に定めた一般管理費については前年度比3%、業務経費については前年度 比1%の削減目標を達成した。 区分 一般管理費 業務経費 合計 前中期目標期間終了年度 金額 比率 (千円) (%) 487,021 100 2,990,821 100 3,477,842 100 当中期目標期間 平成18年度 平成19年度 金額 比率 金額 比率 458,843 94.2 443,951 91.2 2,895,970 96.8 2,864,143 95.8 3,354,813 96.5 3,308,094 95.1 人件費については、本中期目標期間中に5%以上の削減、効率的・効果的な業務の推進が図 れるよう考慮しつつ、新たな中課題の研究推進のために必要な人材を招へい型任期付研究員と して採用し、当該分野の農業生物資源研究所の研究能力の向上を図った。また、国家公務員の 給与構造改革を踏まえ、地域手当の支給割合の改正、広域異動手当の新設及び俸給の特別調整 額を定率制から定額制へ移行するなど給与体系の見直しを実施した。 第2期中期計画においては、第1期に比べて非常に厳しい経費削減等が求められていること から、効率的かつ効果的な運営を推進し、効果的に成果を上げるため、全所員が一体となって 取り組むことが必要である。そのため新組織の運営が軌道に乗った2年目に入り、理事を委員 長とした全所的な業務効率化推進委員会を設置して検討を進め、第2期中期計画期間中におけ る取り組みを推進するための「業務効率化推進基本計画」を策定した(資料7)。基本計画で は、組織運営の効率化、施設・設備の効率的な維持及び有効活用、情報システムを活用した情 報共有・業務効率化の促進、研究支援部門の効率化、調達手続きの効率化について進めること としている。これを受けて、「平成19年度業務効率化実施計画」を策定し、取り組みを進めて いる。この間、随意契約の限度額引き下げに対応した入札事務の簡素化や単価契約適用範囲の 拡大、会計システムの改訂、振込みや外国送金及び入金手続きの電子化など事務手続きの効率 化を図った。また、大わし地区のRI施設の老朽化により大規模改修工事はせずに、現中期計画 期間終了後、本部地区への集約を図る方針の策定、電力使用量削減の指標となる電力メーター の設置と電力量推移調査、所用車の効率的な配置体制の見直し、旅費業務の外部委託の可能性 検討、省エネルギーの啓蒙活動、他法人や大学、民間における効率化の先行事例の調査を行っ た。さらに、法人の経営情報を統合したシステムの構築を進め、データの共有化による業務の 迅速化や課題評価の効率化が進んでいる。 1 評価・点検の実施と反映 中期目標 業務の質の向上と業務運営の効率化を図るため、運営状況、研究内容について、自ら適 - 5 - 切に評価・点検を行う。 研究内容の評価・点検については、農業その他の関連産業、国民生活への社会的貢献を 図る観点から、できるだけ具体的な指標を設定して取り組む。また、研究成果の普及・利 用状況の把握、研究資源の投入と得られた成果の分析を行う。 評価・点検結果については、独立行政法人評価委員会の評価結果と併せて、業務運営へ の反映方針を明確化した上で、的確に業務運営に反映させる。 職員の業績評価を行い、その結果を適切に研究資源の配分や処遇等に反映する。 中期計画 ①業務の質の向上と、より一層の効率的な運営を図るため、毎年度、業務の運営状況、研 究内容について、自ら評価・点検を行う。その実施に当たっては、外部専門家・有識者 の活用等により客観性、信頼性を確保する。 ②研究開発の加速・深化を図るという観点から、評価・点検制度を整備・充実させる。ま た、情報基盤の整備、評価資料の効率的活用により、評価・点検システム全体の効率化 を図る。 ③研究内容の評価・点検においては、農業その他の関連産業、国民生活等への社会的貢献 を図る観点から、できるだけ具体的な指標を設定して取り組む。また、研究の質と量や 達成度に加えて、研究成果の普及・利用状況の把握、投入した研究資源の有効性を判断 するための費用対効果の視点や研究成果の波及効果を加味した評価・点検方法への見直 しを行い、評価基準を明確に示す。 ④評価・点検結果は、独立行政法人評価委員会の評価結果と併せて、業務運営に反映させ る。基本的考え方や具体的方法を明確にし、業務運営に的確に反映させる。 ⑤研究成果や業務の質の向上に、職員の能力を最大限に活かすため、職員の評価は明確に 示した基準に基づき行う。 ⑥研究職員の評価については不断の見直しを行い、評価者と被評価者のコミュニケーショ ンツールとして有効に活用するとともに、評価結果を研究資源の配分や処遇等へ適切に 反映させる。また、一般職員等については、組織の活性化と実績の向上を図る等の観点 から、新たな評価制度を導入する。 (実績) 中期計画における研究開発の加速・深化を図るため、「課題評価」を自らが毎年度主体的に 実施する自己点検評価と位置づけ、平成19年度には、平成18年度策定した第2期中期目標期間 における評価・点検体制を見直した。具体的には、研究評価検討委員会(委員長:評価担当理 事)で課題評価実施方針の見直しを図り、平成19年度以降は1次評価検討会、2次評価検討会 に加えて、新たに課題評価判定会を設置し、評価結果の分析や重点化課題の選定を行うことと した。 情報基盤の整備、評価資料の効率的活用により、評価システム全体の効率化を図るとともに、 できるだけ具体的な指標を設定して課題評価に取り組んだ。研究の質と量や達成度に加えて、 研究成果の普及・利用状況の把握、投入した研究資源の有効性を判断するための費用対効果の 視点や研究成果の波及効果を加味した評価方法への見直しを行い、評価基準を明確に示した (p13)。この基準に従い、課題評価検討会を開催し、評価結果は課題評価判定会で検討した結 果、7頁に示すように、3課題(12%)が「計画を大幅に上回る業務が挙がっている」Sに、22 課題(85%)が「計画に対して業務が順調に進捗している」A、1課題(3%)が「計画に対し て業務の進捗がやや遅れている」Bと評価された。この評価結果は、農業生物資源研究所の自 己評価・点検の最終結果として、業務実績報告書の中課題ごとに設けた自己評価枠に記載した。 なお、課題評価の中で明確にされた問題点や改善点は、適時、被評価者へ周知し、業務運営に 向けて活用されるよう指導した。さらに研究推進戦略会議において、今後の方針や対応策につ いて検討し、課題担当者に適切な指導、助言を行い、平成20年度予算の重点配分に反映させる。 ①自己評価・点検に係わる諸会議の開催 平成19年度業務の運営状況及び研究内容について自己評価・点検を行い、あわせて平成20年 - 6 - 度計画について検討を行うための一連の会議を下記のとおり開催した(図1)。課題評価検討 会では中課題単位に農業生物資源研究所の自己評価・点検を行った。研究推進戦略会議は、所 内会議と外部機関との意見交換会に分けて二回開催した。所内会議では、一年間の研究活動及 び研究マネージメントの総括を中心に、次年度の計画について深く議論した。一方、外部機関 との意見交換では、会議をオープン形式にして、各専門領域の外部参加者から農業生物資源研 究所への要望を幅広く伺った。そして、評価助言会議では8人の外部評価委員による自己点検 を実施した。課題評価検討会の結果と評価助言会議での結果が異なる中課題が1例あったため、 理事会において審議し、外部評価はAであったが中期計画に比した達成状況から判断し、上方 修正することなく、B評価とした。一方、外部評価委員の半数がSと評価した中課題について は、研究内容はSと認められるが、実用化という観点から上方修正はせずにAと判定した。こ のように、一連の評価会議での結果、指摘事項及び意見を総合的に考慮して、農業生物資源研 究所の自己評価の最終結果へと導いた。 〔指標1-1-ア〕 図1 農業生物資源研究所の評価の流れ図 課題評価検討会 中期計画の達成に向けては、課題の最小区分である中課題レベルでの運営が基本となるこ とから、課題評価は中課題単位で実施した。課題評価検討会は、1次・2次の2段階に分け て、それぞれ平成19年12月17日~12月21日の5日間及び平成20年1月28日~1月30日の3日間 開催した(図2、図3)。このように平成19年度は、両検討会の開催時期を1ヶ月以上空け た。これは、平成18年度では1次・2次課題評価検討会の開催時期が近接していたため、1 次評価者からの指摘事項や被評価者からの反論・修正要望が、2次評価検討会に向けて十分 反映されなかった反省点に対する改善策である。この改善については、平成19年度、課題評 価実施方針に明記した。 1次評価検討会は、当該研究領域長、領域ごとの研究分野に関連する研究主幹数名、研究 領域長が課題ごとに指名した数名のユニット長やセンター長等を1次評価者として、ヒアリ ング形式で行った。検討会では、ユニット長あるいは領域長が指名した研究者が発表した。 1次評価では、評点は付けず、助言に重点をおき、1次評価者は、当該研究領域の研究内容、 成果、次年度計画、予算要求等についての検討と評価を実施した。被評価者は、1次評価で の指摘や助言を考慮して、研究成果報告書、次年度計画書を修正した。さらに1次評価者か らの指摘事項に対する反論や修正要望を領域長に提出し、1次評価取りまとめ責任者である 領域長は評価資料を見直し、2次評価検討会に提出した。 2次評価検討会は、理事長、理事、統括研究主幹、研究領域長、研究主幹の計12名を評価 者として、ヒアリング形式で行った。評価は、1)計画の妥当性(研究課題の難易度、新規 性も考慮する)、2)進捗・達成状況(研究課題の難易度、新規性も考慮する)、3)予算、 人員と役割分担(エフォート)、4)前年度の評価結果に対するフォローアップ、5)その 他特記事項(地方自治体や企業等との共同研究による実用化研究の著しい進展など)の5つの 項目について重み付けをした上で、それぞれの項目毎に5段階評価を行った。その際、「評 - 7 - 価者は中課題間の相対的評価にならないよう留意する」ことを、平成19年度は課題評価実施 方針に明記した。さらに、平成19年度は、重み付けの高低について、平成18年度評価結果を 踏まえて検討し、中課題の進捗・達成状況により重きを置くことにした。その結果、平成19 年度課題評価では、評価項目の「進捗・達成状況」のウェイトは、平成18年度の0.5から0.7 に引き上げた。一方、「計画の妥当性」、「予算、人員と役割分担(エフォート)」のウェイト は、平成18年度の0.2から0.1に引き下げた。よって、平成19年度の課題評価実施方針の該当 するウェイト値を修正した。 評価結果の集計については、各項目毎の評点を合計し、各評価者の総合評点とし、さらに、 評価者全員の平均値をもって各中課題の最終評価結果とし、S、A、B、C、Dの5段階で 示した。その結果、24課題(全体の92%)が計画に対して業務が順調に進捗しているという A評価を受け、計画を大幅に上回る業績が挙がっているというS評価を受けた課題が1(全 体の4.0%)、計画に対して業務の進捗がやや遅れているというB評価を受けた課題が1(全 体の4.0%)であった。計画に対して業務の進捗が遅れている(C)、あるいは計画に対して 業務の進捗が大幅に遅れている(D)評価は付かなかった。この評価結果を受けて、2月14 日の課題評価判定会では、26ある中課題の最終的な評価判定を行った。〔指標1-1-ア〕 図3 図2 1次評価検討会は大わし・池ノ台・農環研・ 2次評価検討会では課題の進捗・達成 本部地区の4会場で4領域ごとに開催した。 状況を中心に活発な議論が展開された。 (19年12月17日~21日:写真は農環研地区) (20年1月28日~30日) 課題評価判定会 平成19年度の課題評価システムでは、2次評価検討会の終了後に課題評価判定会を開催す るように、課題評価実施方針を改正した(19年7月20日)。 課題評価判定会では下記の事項について検討するよう実施方針で定めた。 ①評価結果の妥当性や評価結果の予算配分等への反映措置を検討するため、課題評価判 定会を開催する。 ②評価判定会は、理事長、理事、統括研究主幹、領域長、研究主幹をもって構成し、委 員長は評価担当理事とする。 ③評価判定会では、課題評価検討会の評価結果に基づき、総合的な見地から各課題の最 終的な評価判定を行う。また、評価判定結果の予算等への反映、農業生物資源研究所 の研究戦略上の視点から重点化すべき課題への傾斜配分や課題継続の是非等について 協議する。 ④評価判定会における決定事項の実行は、理事会の承認を必要とする。 平成19年度は、課題評価判定会を平成20年2月14日に開催した(図4)。2次評価検討会 終了後も、2次評価結果は被評価者に通知し、1次評価の時と同様、被評価者からの反論や 修正要望を取りまとめて、課題評価判定会資料とした。 判定会では評価者による評点を基に議論を行い、総合的に評価判定した結果、平成19年度 農業生物資源研究所課題評価の最終結果は、Sが3課題、Aが22課題、Bが1課題になった。 なお、評価判定結果及び農業生物資源研究所としての強化方針の議論に基づいて、平成20年 度に戦略上重点的に支援すべき7課題を選定し、予算の重点配分を行うこととした。 - 8 - この結果は、平成20年2月19日の理事会で承認された。その後、評価判定結果は各領域長 から中課題の担当者に通知された。なお、この評価判定結果を受け、後述の研究推進戦略会 議(所内会議)において今後の対応策について検討し、中課題担当者には適切な助言を伝え て指導した。このように評価判定会は、評価結果の妥当性を分析し、予算配分への反映措置 を検討する場としての機能を発揮した。 〔指標1-1-ア〕 図4 課題評価判定会では各中課題の評価結果の 妥当性や予算配分への反映措置が検討され た(20年2月14日)。 農業生物資源研究所研究推進戦略会議 平成19年度の研究推進戦略会議(所内会議)は、平成20年3月3日の午前と午後にかけて、 農業生物資源研究所内で開催した。農業生物資源研究所の運営会議メンバー31名の他に、中 課題担当者であるユニット長、センター長、チーム長ら19名が出席した。平成18年度は、研 究推進戦略会議の外部機関との意見交換会と一体化した形で開催したが、所内会議として十 分な検討ができなかったとの反省点を踏まえて、平成19年度は一日かけての会議となるよう 企画した。 同会議では、課題評価検討会・課題評価判定会の総括、研究管理支援部門業務実績の総括、 主要な研究成果の選定、プロジェクト研究の推進会議・評価委員会等の報告、業務効率化推 進委員会報告が行われた(図5)。 主要な研究成果は、各研究領域から提出された候補課題18件について、理事、統括研究主 幹、研究領域長、研究主幹による事前審査を経て、本会議において最終的に10件が選定され た。そのうち、「生物産業」に分類される1件を普及に移しうる成果(直ちに利活用できる 成果)とした(表14、p113)。 〔指標1-1-イ〕 研究推進戦略会議(外部機関との意見交換会)は、平成20年3月14日、三菱コンファレン ススクェア(東京・丸の内)の会議場を借りて開催した。農業生物資源研究所運営会議メン バー等34名の他に、農林水産技術会議事務局からは、小栗研究総務官ら6名、他の独立行政 法人12名、社団法人2名、公立試験研究機関3名、民間企業10名が出席した。平成19年度業 務報告と今後の研究推進方向について検討を行った。 「連携協力の推進状況」のテーマでは、 農業生物資源研究所のオープンラボを紹介し、さらに株式会社ネオシルクからは遺伝子組換 えカイコを用いたビジネスモデルが紹介された。業務運営の他、基盤、植物、昆虫、動物の 各領域から発信した研究成果に対して、外部から参加された方々からは、研究成果の実用化 に対する要望や運営上の問題点を指摘する意見が出された。 平成19年度も平成18年度に引き続き東京駅近くの会場で開催して、交通アクセスの利便性 を高めた効果もあり、農業生物資源研究所以外からも多くの方々に参加していただき、例年 以上に活発な意見交換ができた。外部の参加者からいただいた意見、要望等は以下のとおり である。これらの意見については、今後の業務運営に反映するよう、各領域長、研究支援部 門の室長を通じて、周知した。 - 9 - [業務運営] ・特許出願の戦略を明らかにし、その評価方法を明確にする必要がある。 [基盤研究領域] ・実用化が期待できる研究成果は、知財戦略を立てて進める必要がある。 ・農業生物資源研究所以外のジーンバンクとの連携について説明が聞きたかった。 [植物科学研究領域] ・組換え作物の研究では、消費者の受入体制をさらに促進する活動を期待する。 ・イネゲノム研究での成果の利用が少ない。産学官ともっと交流する必要がある。 [昆虫科学研究領域] ・組換えカイコを利用した有用物質生産では、大量飼育法によるコストの削減を期待する。 ・組換えカイコを利用して作られる有用物質の用途の開拓に全勢力を注ぐべきである。 [動物科学研究領域] ・実験動物の開発では、もっと基礎研究を実施するべきである。 [農業生物資源研究所への要望] ・研究成果を利用するため、技術指導に加えて事業化に必要なパテントプールの整備を期 待する。 ・研究推進戦略会議では、農林水産省との意見調整の場、外部との意見交換の場、研究発 表の場など、会議開催の趣旨が多様である。徐々に分化させてはどうか。 ・理化学研究所のバイオリソースセンター(つくば)、ゲノムセンター(横浜)、植物センター との意見交換も有意義ではないか。 〔指標1-1-ア、指標2-2-カ〕 図5 研究推進戦略会議(所内会議)は 図6 研究推進戦略会議の外部機関との意見 農業生物資源研究所内で開催した 交換は東京丸の内の三菱コンファレン (20年3月3日)。 ススクェアで開催した(20年3月14日)。 農業生物資源研究所評価助言会議 平成19年度の評価助言会議は、平成18年4月1日に新たに策定された設置規程に従って8名 の委員(表1)の内6名の委員の他、農林水産技術会議事務局関係者4名が出席し、3月24日、 三菱コンファレンススクェア(東京・丸の内)の会議室で開催した。出席された委員からは、 平成19年度の業務実績に対する評価と助言を受けた。当日の会議に出席できなかった2名の 委員には、事前に評価資料を配布し、評価助言会議終了後会議報告を行い、書面による審査 をお願いした。 なお、平成20年2月29日をもって、8人の外部評価委員の任期が満了になることから、新 - 10 - たに外部評価委員の選任を行った。その結果、2人の委員が再任され、新しく6人の専門家、 有識者が外部評価委員として、農業生物資源研究所から委嘱した。任期は平成20年3月1日か らの3年間である。新しく委嘱した8人の評価委員は、何れも農業生物資源研究所との間で 共同研究契約をはじめ委託研究契約等利害関係は発生しておらず、各専門分野及び外部有識 者としての信頼性が高いことから、客観的に評価をいただけると判断し委嘱した。 外部委員による評価は、業務運営部分は中項目毎、研究部分は大課題と中課題毎に行い、 評価ランクはs、a、b、c、dの5段階とした。取りまとめた評価結果及び評価委員の意 見は、平成20年4月22日、評価助言会議に諮問した理事長に報告した。なお、評価結果及び 評価委員から指摘された事項については、所内の運営会議を通じて全職員に周知した。さら に、評価結果を平成20年度の業務運営に反映させるため、指摘された事項への対応方針は、 中課題の目標達成に権限と責任を持つ研究ユニット長や研究センター長等が取りまとめ、全 職員に周知徹底することとした。なお、評価助言会議における評価結果及び評価委員のコメ ントを考慮して、農業生物資源研究所の自己評価・点検の最終結果として取りまとめた。自 己評価ランクと評価コメントの要約は、業務実績報告書の該当する中課題ごとに設けた自己 評価の枠内に記載した。 〔指標1-1-ア〕 表1 氏 名 農業生物資源研究所評価助言会議委員名簿 所 属 専 門 分 野 河野 友宏 東京農業大学教授 昆虫・動物 久保 健雄 東京大学大学院教授 昆虫・動物 小林 迪弘 名古屋大学大学院教授 昆虫・動物 西村 いくこ 京都大学大学院教授 植物 篠崎 理化学研究所植物科学研究センター長 植物 植物 一雄 遠 藤 隆 京都大学大学院教授 五條堀 孝 国立遺伝学研究所教授 外部有識者 NPO産学連携推進機構理事長 外部有識者 妹尾 堅一郎 図7 評価助言会議は6人の外部評価委員が出席 し、業務実績に対する活発な質疑応答が交 わされた(20年3月24日)。 - 11 - ②評価・点検制度の見直し 第2期中期計画期間における評価システムについては、被評価者も含む評価検討委員会を組 織し、議論を重ねて策定した経緯があるが、評価・点検制度の見直しについては、広く職員の 意見を求めた上で、評価検討委員会を中心に検討を進め、より良い評価システムの構築を目指 した。平成19年度は研究開発の加速・深化を図るという観点から、評価・点検制度を整備・充 実させる目的で、平成18年度に実施した課題評価の総括を行った。そのため、平成18年度に引 き続き、評価担当理事を委員長とする研究評価検討委員会を開催し、評価・点検制度の見直し について検討した。平成18年度に実施した課題評価における問題点とりわけBランクだった「評 価・点検の実施と反映」に対しては、農林水産省独立行政法人評価委員会から受けた下記の指 摘について、その対策を協議した。 [指摘事項] 「業務運営の自己評価については、外部評価委員を活用した客観性の高い評価システムを構 築したが、自身が有する問題点の明確化、対応策の検討が不十分であり、次年度の業務実績報 告書の作成、自己評価実施にあたっては改善の必要がある。」 この指摘に対しては、課題評価の仕組みの中に課題評価判定会(平成20年2月14日開催)を設 け、評価結果の分析を進めるとともに、所内研究推進戦略会議(平成20年3月3日開催)において 研究管理支援部門の参加の下、議論を進めた。また、平成18年度農業技術分科会評価における 指摘事項への対応状況は、平成19年度業務実績報告書に記述した。さらに、自己点検評価結果 のコメント欄においてもその対応状況について言及した。 このように、研究評価検討委員会では、平成18年度に実施した課題評価検討会における問題 点や改善点を踏まえて、「独立行政法人農業生物資源研究所における課題評価実施方針」(19 年7月20日改正版)を取りまとめた。 改正後の農業生物資源研究所における課題評価の仕組みを図8に示した。この流れに従って、 平成19年度の業務実績の評価と評価結果の予算配分への反映を行った。 予算はユニット長、センター長の裁量により再配分 評価判定結果の通知 予算配分等決定措置の報告 ユニット長、センター長 (小課題責任者) 課題評価資料(研究 成果報告書、課題評 価表、次年度計画 書)の提出 1次評価レ ポート(助言・ 修正要求) 1次評価検討会 理事会 最終判定の承認 (助言に重点) ユニットメンバー 1次評価レポート (回答・反論) 研究成果報告書、 次年度計画書の 提出(修正版) 領域長 領域長 1次評価レポート 課 (1次評価者:当該領域の領域長、研究 2次評価 (修正版) レポート 題 主幹、領域長が指名するユニット長) 研究成果報告書、 評 次年度計画書の 価 提出(修正版) 検 2次評価検討会 討 (絶対評価の実施) 会 (2次評価者:理事長、理事、統括研究主幹、領域長、研究主幹) 2次評価 レポート (回答・反 論) 評価結果の取りまとめ・報告 課題評価判定会 評価結果の最終判定 評価結果を基に次年度予算・課題継続の是非に関する 措置案の策定 (委員:理事長、理事、統括研究主幹、領域長、研究主幹) 図8 農業生物資源研究所における課題評価の仕組み 一方、評価・点検システム全体の効率化を図るため、「研究課題マネジメントシステム」の 開発を並行して進め、「研究推進戦略会議」及び「評価助言会議」に向けて、課題評価検討会 の過程で作成されたすべてのデータはオンラインで閲覧できるシステムに入力され、諸会議に 提出される資料作成の基盤とした。各種評価指標の作成や取りまとめなど、資料作成工程の労 力が軽減された。 〔指標1-1-ア〕 - 12 - ③評価基準の明確化 平成19年度の課題評価実施方針の改正に伴い、評価の視点は以下のとおり策定し、5つの評 価項目と観点(指標)を示した。下線部分が平成19年度に改正し、追記された箇所である。 [評価の視点] 評価の視点は1次評価、2次評価ともに以下の5項目とし、被評価者は項目毎に自己評価 し、コメントを課題評価表に記載する。評価者も同様の観点から評価する。 ①計画の妥当性(研究課題の難度、新規性等も考慮) →目標とするアウトカム *1(社会・経済等への効果)に対して計画は適切であるか。 →用いた手法、技術は適切であるか。 →当該年度の問題点(1次評価検討会での指摘事項)に対する改善策が次年度計画に 示されているか。 ②進捗・達成状況(研究課題の難度、新規性等も考慮) →予定通り計画は進捗しているか。 →計画通り目的が達成されているか。 →アウトカムに寄与するアウトプット *2 (直接の成果)が得られているか。 →成果(業績)は(世界水準と比較して)科学的に価値あるものか。 →成果(業績)は農業技術の開発にとって価値あるものか。 →成果(業績)は普及に移しうる成果として価値あるものか。 ③予算、人員と役割分担(エフォート) →費用対効果の観点から、予算運営に工夫・努力が適切になされているか。 →課題分担に対して人材配置の工夫・努力が適切になされているか。 →その他ユニット運営の工夫・努力が適切になされているか。 →成果の活用に向けた工夫・努力が適切になされているか。 ④評価結果に対するフォローアップ →前年度の課題評価検討会からの評価指摘事項に対して、今年度の対応は適切にされ ているか。 ⑤その他特記事項 →地方自治体や企業等との共同研究による実用化研究の著しい進展など特記する事項 があれば記載する。 *1 *2 アウトカム:アウトプットを基にしてあるいは活用してもたらされる社会・経済的 な効果。例えば、製品開発・普及、新しい研究分野の創出、産業振興への貢献等。 アウトプット:研究開発によって生み出された成果。例えば、論文、特許、データ ベース、報告書の数等。 なお、「研究成果の普及・利用活用状況」と「研究資源の投入の有効性」を加味した研究の 内容の評価・点検について、平成19年度は次のように対応した。 1次評価検討会資料の作成を依頼する際に、上記③「予算、人員と役割分担(エフォート)」 の評価項目に対して、下記の4項目を踏まえて、自己評価コメントを記入するよう、中課題の 責任者であるユニット長、センター長、チーム長に依頼した。 1)費用対効果の観点から、予算運営に工夫・努力が適切になされているか。 2)課題分担に対して人材配置の工夫・努力が適切になされているか。 3)ユニット運営の工夫・努力が適切になされているか。 4)成果の活用に向けた工夫・努力が適切になされているか。 「研究資源の投入の有効性の点検」に必要な予算現額や予算項目は、会計システムから抽出 した。また、人員・役割分担を示すエフォートは、データベース「研究課題マネジメントシス テム」(前述②評価点検制度の見直し)から、確定した数字を抽出して利用した。自己評価コメ ントは、1次評価レポートとして提出を求め、1次評価者が助言やコメントを与える時の根拠 とした。 〔指標1-1-イ、指標1-1-ウ〕 - 13 - ④評価・点検結果の反映 図8に示したように、課題評価判定会において決定された事項は理事会の承認を経て実行に 移す仕組みとなっている。自己評価・点検の結果は、独立行政法人評価委員会による評価結果 と併せて、職員に周知し、問題点や改善点を踏まえて業務運営の見直しに活用されるよう指導 した。さらに平成19年度は課題評価検討会における評価結果に基づいて、特に高い評価を得た 課題及び研究戦略的視点から特に重点的に支援すべきと評価された課題に対して重点課題配分 研究費を配分した(全26課題の内6課題に対して総額2,300万円の上乗せ配分)(表4、p18)。 〔指標1-1-エ〕 ⑤及び⑥職員の業績評価制度の見直し 平成18年度、「評価検討委員会」において、研究職員の業績評価制度については、評価の基 準と評価結果の処遇への反映を盛り込んだ、研究職員の業績評価制度の骨子案を取りまとめた。 その後、業績評価の処遇への反映を円滑に進めるため、さらに検討を進めたが、骨子案を成 案化させるには困難な情勢に変わりはなく、新たな業績評価制度の実施には至っていない。処 遇反映を視野に入れた研究職員の業績評価の試行を平成20年度から進めるよう、引き続き協議 を行っている。 理事長の諮問を受けた業績評価委員会(委員長:佐々木理事)では、「研究職員業績評価実施 規程」に従い、平成18年度研究実施職員及び研究管理職員の業績評価を実施した。2回の業績 評価委員会での審議を経て、各研究実施職員の業績評価結果を集計し、業績評価結果報告書を 作成した。さらに、研究実施職員の業績評価における評価の公正性を期するため、平成18年度 の業績評価の中で議論された事例については、「研究業績評価マニュアル事例集」として取り まとめた。なお、研究管理職員の評価結果は、平成19年度勤勉手当の成績率に反映させた。 〔指標1-1-エ、指標1-1-オ〕 一般職員等の評価については、国の国家公務員制度改革の取り組みや民間企業の成果重視の 人事管理体系の浸透状況を踏まえ、一般職員を対象として、個々の職員の能力や実績等を重視 した新たな人事評価制度の導入について、一般職員等評価制度検討会を設置して検討を行った。 これを受けて、平成20年4月1日から6月30日までの期間、一般職員のうち室長及び参事を被評 価者として制度の試行を実施した。 〔指標1-1-エ、指標1-1-オ、指標1-1-カ〕 自己評価 評価ランク A コメント 課題評価の仕組みの中に、評価結果の分析と運営への反映を検討 する場として課題評価判定会を設け、さらに所内研究推進戦略会議 において研究管理支援部門の参加の下で議論するなど、自己評価・ 点検制度を見直し、改善したことは高く評価できる。また、外部評 価委員の意見を業務運営の効率化、最適化のために利用することと しており、その効果は最近の優れた研究成果として現れている。 研究管理職員の業績評価結果は平成19年度の処遇に反映してい る。研究管理職員以外の研究職員(企画管理部門の研究職は除く)に ついては、農林水産省研究独法6法人とともに、「研究業績評価結 果の取り扱いにかかる検討会」において、評価結果の処遇への反映 方法について検討を進めた。平成20年度から、処遇反映を視野に入 れた業績評価の試行を進める必要がある。 一方、一般職員等評価制度の検討会を設置し、一般職員個々の能 力や実績等を重視した新たな人事評価制度の導入について、平成20 年度に試行が実施できるよう検討した。その結果、平成20年4月1日 から6月30日までの期間、一般職員のうち室長及び参事を被評価者 として制度の試行を実施しており、平成19年度における一般職員等 業績評価制度の導入に向けた取り組みは評価できる。 - 14 - 前年度の 分科会 評価 2 B 研究評価検討委員会を設置して研究課題の評価・点検システムの見 直しを図った。これにより、研究資源の投入と得られた成果を把握 しつつ研究課題の自己評価を行い、その結果を平成19年度予算の配 分へ反映させたことは評価できる。業務運営の自己評価については、 外部評価委員を活用した客観性の高い評価システムを構築したが、 自身が有する問題点の明確化、対応策の検討が不十分であり、次年 度の業務実績報告書の作成、自己評価実施にあたっては改善の必要 がある。研究職員の業績評価については、時期的には19年度に入っ たが、既に実施された。研究管理職員については処遇への反映も行っ ている。今後、その処遇への反映を早期に研究職員へ拡大すること を期待する。また、一般職員の業績評価についても取り組むことを 期待する。 研究資源の効率的利用及び充実・高度化 中期目標 生物資源の農業上の開発及び利用等に係る行政ニーズの把握、国内外の技術開発動向や 学会の動向の調査・分析等、研究の企画・立案に必要な情報収集・分析機能を強化する。 (1)研究資金 中期目標 研究所は、中期目標の達成のため、運営費交付金を効率的に活用して研究を推進する。 さらに、研究開発の一層の推進を図るため、委託プロジェクト研究費、競争的研究資金等 の外部資金の獲得に積極的に取り組み、研究資金の効率的活用に努める。 中期計画 ①研究所に求められる、革新的な農業生産技術の開発や新たな生物産業の創出に関する基 礎的研究等の分野のニーズを的確に把握することにより、研究課題の重点化を図り、研 究資金の重点的な配分を行う。 ②農政上及び科学技術政策上の重要課題として国から受託するプロジェクト研究等につい て重点的に実施する。 ③研究の推進を加速するため、競争的研究資金等の外部資金への積極的な応募を奨励、支 援し、研究資金の充実を図る。 ④研究課題の評価結果の研究資金配分への効果的な反映等、研究資金の配分・活用を効率 的に行うことにより、研究活動を活性化させ研究成果の向上を図る。 (実績) 農業生物資源研究所が担う、バイオテクノロジーを中心とする基礎的・先導的な研究及びそ の成果を活かした応用技術開発についてさらなる飛躍を目指すため、研究企画調整室において、 研究資源の効率的活用や外部資金の積極的獲得のための各種施策を立案し、実行した。その内 容は以下のとおりである。 ①研究資金の重点配分 一般研究費については、平成18年度から人当の概念を廃している。平成19年度はこの考え方 をより明確にするために、中期計画課題遂行のため各研究センター・ユニット等の規模(構成 員数)に応じて配分する「基本研究費」(267百万円)、研究領域長が領域内で特に重点的支援 が必要と考える研究者または研究グループに対して柔軟に再配分可能な「研究領域長裁量研究 費」(56百万円)、課題評価の結果に基づき、「費用対効果」の観点から特に高い成果を挙げた - 15 - 課題及び重点支援が必要と認められた課題に配分する「重点配分研究費」(23百万円)の3種 目に分けて配分した。なお、基本研究費については、研究ユニット長等に一括配分することに より、ユニット長等の裁量による効率的かつ柔軟な予算執行が可能となるようにしている。 革新的な農業生産技術の開発や新たな生物産業の創出に寄与する基礎研究に対するニーズに 応えて研究費を重点配分するために、平成18年度から開始している運営費交付金特別研究「バ イオテクノロジーによる農業生物の産業実用化研究」については、所内の審査委員会の審査結 果に基づいて、実用化を目指した重点配分課題に48百万円(5課題;課題名は表2のとおり)、 形質転換植物作成などの技術支援を行う技術支援業務に19百万円(1課題)、シーズ研究を支 援するための競争的配分課題に34百万円(6課題)を配分した。なお、重点配分課題は、農業 生物資源研究所の研究重点化方針に従って実用化研究を担うために第2期から設置された4つ の研究センターと、革新的な遺伝子組換え技術を研究する遺伝子組換え技術研究ユニットが担 当している。 〔指標1-2-ア〕 表2 運営費交付金特別研究「バイオテクノロジーによる農業生物 の産業実用化研究」重点配分課題 ・ゲノム情報を活用した新規イネ育種素材の開発 ・機能性有効成分のイネ種子への高度集積法の確立 ・遺伝子組換えカイコによる有用物質の大量生産システムの高度化 ・動物を用いた有用物質生産技術の開発とモデル家畜の作出 ・ジーンターゲッティングの効率化とジーンサイレンシングの制御を支える基盤技術の開発 ②受託プロジェクトの重点的実施 農政及び科学技術政策上重要な研究課題として、国から受託するプロジェクト等については、 公募に対して積極的に応募するとともに、研究担当者が可能な限り研究に専念できるように、 所内の支援体制を整えた。具体的には、平成19年度に開始された委託プロジェクト「アグリ・ ゲノム研究の総合的な推進」において、農業生物資源研究所が中核研究機関となったイネゲノ ム関連研究プロジェクトの連絡調整を円滑に行うために、研究企画調整室内に「アグリ・ゲノ ム事務局」を設置して、各種支援業務を行った。また、 「アグリ・ゲノム研究の総合的な推進」 の他のプロジェクト(「動物ゲノム情報を活用した新需要創造のための研究」、「昆虫ゲノム情 報を活用した新需要創造のための研究」、「イネ科から他作物へのゲノム研究展開のためのDNA マーカーの開発」)についても、中核研究機関としての責務を果たすために個別のプロジェク ト毎に課題取りまとめ責任者を置き、研究企画調整室が支援業務を行った。 〔指標1-2-ア〕 ③研究資金の充実 中期目標達成の加速化や将来の研究シーズの培養のために、これまでに引き続き科学研究費 補助金、科学技術振興調整費等の競争的資金制度へ所内の研究者が積極的に応募することを奨 励するとともに、研究領域長、研究主幹等による応募書類の事前チェックと修正指導を徹底し、 二次審査(ヒアリング)のある競争的資金については予行演習と指導を行った。その結果、ほ ぼ従来どおり科学研究費補助金については、88件の応募(18年度:81件)に対し23件が採択 (18年度:16件)され、採択率は26%(18年度:20%)であった。平成19年度の科学研究費補 助金の獲得金額は173百万円で、平成18年度より増加した(18年度:143百万円)。また、生研 センターが募集した新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業については、一般型に21件 及び若手型に4件の応募(18年度:一般型16件、若手型3件)があり、それぞれ6件及び1件 (18年度:1件及び2件)が採択され、異分野融合研究開発型においては、5件の応募(18年 度:1件)があり、2件(18年度:0件)が採択された。その結果、平成19年度の獲得金額は 453百万円(18年度:498百万円)であった。これら2つの制度を含む競争的資金制度等の資金 を獲得して平成19年度に新規に実施した研究は38件(18年度:31件)、総額は797百万円(18 年度:790百万円)であり、全研究資金(一般研究費、運営費交付金特別研究費、ジーンバン ク事業費、農水省委託プロジェクト、競争的資金を合計したもの)に占める割合は20.5%(18 - 16 - 年度:22.5%)であった(表3、図9)。なお、競争的資金制度への積極的な応募を促すため、 平成18年度より競争的資金を獲得した研究代表者に対して予算的支援を行う措置を平成19年度 も継続して行っている。 研究の重点化を進める一方で、企画競争に移行した国からの受託プロジェクトに対して積極 的に応募し、研究勢力と研究資源を集中しているため、科学研究費補助金等競争的資金の獲得 については、採択率、獲得金額ともに前年度比で安定化する傾向が見られる。今後も総獲得金 額の維持・増額に努めるとともに、投入資源に見合った成果を挙げられるよう研究支援体制の 充実化を図ることとする。 〔指標1-2-イ〕 表3 所 管 平成19年度競争的資金制度への応募と採択実績 制 度 科学研究費補助金 応募数 採択数 53 6 22 6 1 2 1 1 1 14 0 7 2 0 1 0 1 0 文部科学省 基盤研究 萌芽研究 若手研究 特定領域研究 データベース 科学技術振興調整費 科学技術連携施策群の効果的・効率的な推進 キーテクノロジー研究開発の推進 ターゲットタンパク研究 中核的拠点整備 ゲノム情報等整備 農林水産省 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業(理研再委託含) 3 1 内閣府 食品健康影響評価技術研究 1 0 環境省 地球環境研究総合推進費 1 0 生研センター 新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業 生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業 25 5 7 2 1 0 13 5 142 40 地球環境問題対応型研究領域 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業(さきがけタイプ) 民間助成団体等 合計 (外部資 金)再委託 分 2,308 18% 施設整備費 補助金 217 2% (運営費交 付金)人件 費 4,218 32% その他 213 5.5% 競争的資金 797 20.5% 一般研究費 364 9.4% 運営費交付金特 別研究費 324 8.3% 外部資金, 5,200, 40% ジーンバンク事 業費 310 8.0% 運営費交付 金 7,526 58% (運営費交 付金)事業 費 3,308 26% (外部資 金)所内分 2,892 22% 農水省委託プロ 1,882 48.4% 平成19年度予算額内訳 総額12,943百万円 研究資金の予算額内訳 総額3,890百万円 ※金額は外部機関への再委託額を除いたもの 図9 平成19年度予算額と研究資金の内訳 - 17 - (単位:百万円) ④課題評価の研究資金配分への反映 平成19年度については、平成18年度課題評価検討会の結果を踏まえて、研究企画調整室が重 点課題配分研究費の配分案を作成し、理事会において配分を決定した。その内容は、課題評価 で特に評価が高かった1課題(S評価)に対して5百万円、Sに近いA評価を得た2課題に対 してそれぞれ3百万円、次に高い評価を得た3課題に対してそれぞれ2百万円、課題評価とは 別に研究戦略的視点から特に支援が必要であると認められた2課題に対してそれぞれ3百万円 を配分するもので、配分総額は23百万円(平成18年度25.5百万円)であった(表4)。 これらの課題のうちA01、C13は平成19年度課題評価結果がSとなり研究費の重点配分が有効 に機能していると思われる。 〔指標1-2-ア〕 表4 課題評価の結果に基づいた研究費の重点配分 中期課題名 (1)評価の高い課題に対する配分 A01 多様性研究によるイネ遺伝資源の 高度化と利用 A06 種間比較解析に向けたバイオイン フォマティクス研究基盤の確立 A04 ブタゲノムリソースの開発と利用 C13 遺伝子組換え昆虫を利用した有用物 質生産技術の開発 A02 イネ及びイネ科作物のゲノムリソー スの開発と利用 A03 カイコ等昆虫のゲノムリソースの開 発と利用 総合評価 重点配分額 配分先研究センター・ユニット S 5百万円 QTLゲノム育種研究センター A 3百万円 ゲノム情報研究ユニット A A 3百万円 2百万円 家畜ゲノム研究ユニット 遺伝子組換えカイコ研究センター A 2百万円 A 2百万円 ゲノムリソースセンター/ 植物ゲノム研究ユニット 昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット (2)研究戦略的視点からの配分 A03 カイコ等昆虫のゲノムリソースの開発と利用 3百万円 昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット (配分理由:昆虫機能研究の基盤となる完全長cDNA解析への重点的支援が必要であり、目標を明確 にした上で一気呵成にやるべきである。) A04 ブタゲノムリソースの開発と利用 3百万円 家畜ゲノム研究ユニット (配分理由:発現遺伝子の充実等基盤の整備への重点的支援が必要である。) (2)研究施設・設備 中期目標 研究施設・設備については、老朽化の現状や研究の重点化方向を考慮の上、効率的な維 持管理等が行われるよう計画的に整備し、その有効活用に努める。 中期計画 ①老朽化の現状や研究の重点化に即した研究施設・設備の計画的な整備を行う。 ②施設利用の基準を策定し施設の有効利用を促進するとともに、光熱水料等の施設運転経 費の効率化に努める。 ③個々の施設・機械の機能について広く周知し共同利用に努めるとともに、 「利用委員会」 を設け、コスト意識の醸成を図りつつ、適切な管理・運営により施設・機械の有効かつ 効率的な利用を促進する。また、開放型研究施設(オープンラボ)等に関する情報の公 開に努める。 - 18 - (実績) 施設の老朽化と中期計画期間全体の研究計画を見通した、計画的な修繕・改修計画を策定す るため、関係各室及び研究領域から研究施設改修・修繕案件を募集し、施設利用委員会におい て中期的な施設整備計画を策定した。また、平成18年度中に終わらなかった、研究センター・ ユニットが使用する研究室・実験室等の移転と電源設備等インフラ整備を完了し、集中して研 究に取り組める環境を整備した。 ①研究施設・設備の計画的整備 研究施設・設備の改修・修繕等については、老朽化の現状や研究の重点化を踏まえて計画的 に行うことが必要であり、併せて、施設修繕維持経費の効率的・計画的な執行を行うことが求 められる。このため、平成19年度は、施設利用委員会において各研究ユニット等からの改修要 望を取りまとめ、中長期的な視点に立って、第2期の中期目標期間に改修・修繕が必要となる すべての施設・設備をリストアップし、必要性、緊急性等の視点から順位付けを行い、第2期 中期目標期間における施設等整備計画を策定した。この施設整備計画は固定したものとはせず、 研究の重点化方向や施設の利用状況の変化に合わせて見直しを行うこととしており、平成19年 度においても年度末に、平成20年度以降の計画の見直しを行った。 〔指標1-2-ウ〕 ②施設の有効利用と運転経費の効率化 つくば地区に所在するすべての研究施設を基本スペースと共通スペースに区分し、基本ス ペースは居室プラス標準実験室として、研究センター・ユニット等の構成員数に応じて配分し た。また、共通スペースの利用については、ユニット単位での利用申請を施設利用委員会で審 査して、必要性を認めた場合にのみ配分することとしているが、研究センター・ユニット等の 集中配置のための移転が完了しなかったため、平成19年度の利用申請と審査手続きについては 凍結した。施設を公平かつ効率的に利用するために、平成17年度にスペース課金制度(施設の 利用に際して基準スペース以上の面積を使用する場合には面積に応じて課金する制度)を導入 した。平成19年度中に研究室・実験室等の移転が完了したため、施設利用実態調査を実施し、 共通スペースの利用申請・審査システムとスペース課金制度の再開に向けた検討を実施した。 〔指標1-2-エ〕 ③有効かつ効率的な施設の管理・運営 利用者の意見を反映した研究施設の有効利用を図るため、施設利用委員会の下部組織として 地区別の利用委員会、圃場委員会、温室利用委員会を設置している。地区別利用委員会では、 各地区における研究スペースの配分や日常的修繕、共用機器の利用に係る情報提供等を行った。 また温室利用委員会では、各温室の性能や面積等のデータベースを作成し、Web上で各温室の 使用状態確認と利用申請を行える仕組みを整備して効率的な利用に努めた。共用機器類につい ては、農業生物資源研究所として維持・管理を行うべき共用性の高い高額機器類の整理と管理 体制の見直しを行い、利用者が少なく研究上の重要性が低下した機器を共用機器登録からはず すとともに、年間保守契約から故障時のスポット契約への変更等により経費節減を図った。 これまでゲノムリソースセンター内で主にプロジェクト研究の共同研究者向けに利用を開放 していたマイクロアレイ解析の利用環境を、平成20年2月1日にオープンラボ「マイクロアレイ 解析室」として正式に開設した。この施設では、イネ44Kマイクロアレイなど、イネとトウモ ロコシのアレイ解析が可能である。解析データはマイクロアレイ解析室のデータ保管システム の中に蓄積し、研究者間で共有するために一定期間後に公開する。利用者はこの利用条件の承 諾と引き換えに、実費のみで利用することが可能である。平成19年度にはオープンラボとして の開設前(19年4月1日~20年1月31日)に117回、開設後(20年2月1日~3月31日)に16回のア レイ解析利用があった。 〔指標1-2-オ〕 (3)組織 中期目標 生物資源の農業上の開発及び利用等に係る政策や社会的ニーズに迅速に対応し、研究成 果を効率的に創出するため、研究資金、人材、施設等の研究資源を有効に活用し得るよう、 - 19 - 具体的な研究分野、研究課題の重要性や進捗状況も踏まえ、研究組織を、再編・改廃を含 めて機動的に見直す。 なかでも、茨城県つくば市の研究所本部とは別に庁舎や研究施設・設備等を設置・運営 している長野県松本市、岡谷市及び山梨県小淵沢町にそれぞれ所在する3研究チームにお ける事務及び事業については、再編統合を図る。 中期計画 ①権限と責任を明確にした運営を行い、意思決定の迅速化を図る。 ②中期目標を着実に達成するため、集中的・重点的に取り組む研究テーマを担う研究単位 を機動的に配置する。 ③研究組織に対する評価を行い、その結果を踏まえて、政策的要請や社会的ニーズに適切 に対応するため、機動的かつ柔軟に組織の見直しを行う。 ④つくば市本部とは別に研究施設・設備等を設置・運営している長野県松本市、岡谷市及 び山梨県小淵沢町にそれぞれ所在する3研究チームにおける事務及び事業については、 再編統合を図る。 (実績) 国産ダイズ自給率向上を目指したゲノム育種技術への期待や、米国におけるダイズゲノム塩 基配列解読の単独開始等、ダイズゲノム研究に関する国内外の情勢を踏まえ、平成19年3月末 に、農業生物資源研究所の中期計画に「ダイズのゲノムリソースの開発と利用」を加え、研究 の位置づけを明確にした。これに伴い、平成18年6月1日に特命研究チームとして発足したダイ ズゲノム研究チームを、平成19年4月1日より基盤研究領域に位置づけ、新たにチーム長を採用 し、研究強化を図った。 ①権限と責任の明確化 各部署における権限と責任を明確にするため、平成18年度に整備した組織体制(p3法人組織 図参照)のもと、各研究ユニットの長には研究ユニットが担当する中期計画の課題の目標達成 のための権限と責任、それに伴う予算配分についての責任と権限を与え、研究の推進を図った。 また、各室の長の権限と責任を明確にするため、各室が所掌する事項についてその長が運営会 議等において責任をもって説明するなど、運営方法の改善を図った。さらに、研究管理支援部 門については、年度末の研究推進戦略会議(所内会議)において、本年度の総括と次年度計画 を各室の長自らが報告し、意識の向上を図った。 〔指標1-2-カ〕 ②研究単位の機動的配置 中期目標・中期計画を着実に達成するために平成18年度に配置した、集中的・重点的に取り 組む研究テーマを担う研究ユニット・センターが、その目的を効果的に果たせるよう、同一ユ ニット所属研究員の居室・実験室を極力集中配置し、移動を完了した。また、研究管理支援部 門によるサポートに努め、特に遺伝子組換え研究センターに対する遺伝子組換え研究推進室の サポートを充実し、研究の推進を図った。中期計画の最小単位である中課題を担う研究ユニッ ト・センターにおいて、定期的に報告会を行うなど、推進に全責任を持つユニット長・センター 長が日常的にユニット構成員と意思伝達を図り、研究者への効果的な指導を進めた。 〔指標1-2-カ〕 ③組織の見直し 平成18年度からの研究部門の組織体制は、原則として、一つの中課題を一つの研究ユニット ・センターが責任を持って担う形になっており、課題の評価を通して組織の評価が行えるよう な仕組みである。平成19年度の課題の評価・点検においては、組織自体の大きな問題点の指摘 はなく、研究資金の面で、研究課題の重点化を推進することとした。一方、産学官の連携をさ らに促進するとともに、複数の企業が資金を提供する特別研究室プログラムを着実に進めるた め、特別顧問を置いた。 〔指標1-2-カ〕 - 20 - ④松本・岡谷・北杜地区の再編統合 第1期中期目標期間の終了にあたって出された「勧告の方向性」を受け、第2期中期計画に おいて松本・岡谷・北杜地区の再編統合を盛り込んだこの中期計画を実行するため、平成19年 1月の理事会において、①松本地区は平成20年度末、岡谷地区は平成22年度末に移転すること、 ②移転に当たっては受入施設の整備及び建物等の撤去費用が必要であり、松本地区の土地売却 収入を充てることを決定した。この組織の見直しについては、平成19年8月の独立行政法人の 整理合理化案にも記載し、独立行政法人整理合理化計画(平成19年12月24日閣議決定)で決定 されている。 平成19年度は、松本・岡谷地区(生活資材開発ユニット)で進めているシルクテクノロジー研 究の一層の重点化(特に新機能シルクを用いた人工血管の開発やカイコのゲノム育種への展開 等)と両地区の再編統合計画を円滑に実施するため、「松本・岡谷再編統合対策チーム」にお いて、以下のとおり具体的な対応を進めた。 つくば地区への集約化は、当初計画どおり松本地区を先行し、平成20年度末に移転を完了さ せることを基本に、受入れ施設等の整備計画を立て、移転物品等の調査を行った。また、松本 地区の桑園整地、建物解体等の作業計画を立てた。 これらの計画を円滑に実行するためには、資産の売却収入を充てる必要があることから、土 地売却についても検討を進めた。松本地区(県地区、中山地区、惣社地区)のうち、惣社地区 については松本市から防災公園整備等のための譲渡要望があったことから、平成20年度中の売 却を予定している。 今後、当該財産の処分等について農林水産大臣の認可を経て、売却手続きを進め、その売却 収入により、つくば地区に受入施設の整備(既存施設の改修等)を図り、シルクテクノロジー 研究の一層の発展を図る予定である。 なお、岡谷地区については、平成22年度末に岡谷市への借地返還を予定しているが、原状回 復(更地)については、岡谷市の要望を踏まえながら、引き続き検討を行うこととしている。 〔指標1-2-キ〕 (4)職員の資質の向上 中期目標 研究者、研究管理者及び研究支援者の資質向上を図り、研究所の業務を的確に推進でき る人材を計画的に育成する。そのため、具体的な人材育成プログラムを策定するとともに、 競争的・協調的な研究環境の醸成、多様な雇用制度を活用した研究者のキャリアパスの開 拓、研究支援の高度化を図る研修等により、職員の資質向上に資する条件整備に努める。 中期計画 ①人材育成プログラムを策定し、計画的な人材育成を図る。 ②研究職員に対し競争的・協調的環境を醸成し、インセンティブを効果的に付与する。ま た、他の独立行政法人を含む研究機関等の円滑な人材交流を行う。 ③業務の遂行に必要な能力をかん養し、優れた人材を養成するため、業務上必要な各種研 修に職員を積極的に参加させるとともに、資質向上に必要な制度の充実を図る。また、 業務上必要な資格取得を支援する。 ④農林水産省等との人材交流を通して、研究管理能力やプロジェクトマネージメント能力 を有する人材の養成を図る。 ⑤若手職員の養成プログラムを策定し、計画的な人材養成を図る。また、各種制度を積極 的に活用して研究職員の在外研究を計画的に実施する。 (実績) ①人材育成プログラム 平成18年度に作成した人材育成プログラム(案)を、運営委員会を通じて所員に諮り、一部 修正をした上で6月に理事会で決定した。その後、研究企画管理部門において試行を行い、実 行上の問題点の洗い出しを進めた。その結果を踏まえ、今後農業生物資源研究所全体でのプロ - 21 - グラム実施を行う。なお、プログラムの一部である外部研修への自発的な参加については、プ ログラム実施に先行して予算枠を確保して所員へ公募し、審査を経て承認する体制とした。平 成19年度には3件の応募があり、3件の研修が認められた。 〔指標1-2-ク〕 ②研究職員へのインセンティブ付与 予算配分において、研究成果発表(学術雑誌への論文掲載)に対する支援、外部資金獲得に 対する支援、技術移転活動に対する支援等の支援策を講じることにより、競争的環境の中で研 究職員へインセンティブを付与する取り組みを行った。一方、機械整備費などの募集において は対象を個人ではなく、研究ユニット・センター単位とすることにより、メンバーが協調して 課題を遂行する環境を醸成するための努力を行った。また、研究材料供給管理費の申請募集を 進めるなど、一部交付金についても自ら獲得に努力する姿勢を促した。職員のインセンティブ を高め、農業生物資源研究所の活性化を図ることを目的に、所独自の表彰制度としてNIAS研究 奨励賞とNIAS創意工夫賞を設けており、本年度はNIAS研究奨励賞として4件(4名)の表彰を 行った(表5、図10)。 〔指標1-2-ケ〕 表5 NIAS賞受賞一覧 受 賞 者 所 属 受 賞 名 授 与 者 受賞年月日 平成19年度NIAS研究奨励賞 (独)農業生物資源研究所 H19.12.25 ゲノム情報研究ユニット 伊藤 剛 平成19年度NIAS研究奨励賞 (独)農業生物資源研究所 H19.12.25 遺伝子組換え作物開発セン ター 高木 英典 平成19年度NIAS研究奨励賞 (独)農業生物資源研究所 H19.12.25 乾燥耐性研究ユニット 黄川田隆洋 平成19年度NIAS研究奨励賞 (独)農業生物資源研究所 H19.12.25 昆虫-昆虫・植物間相互作 用研究ユニット 安居 拓恵 図10 NIAS研究奨励賞の表彰式は平成19年12月25日に行った。 - 22 - 氏 名 ③研修の実施、資格取得の支援 職員の資質の向上と資格取得を目的として、業務上必要な各種研修会及び講習会に参加させ た(表6、表7)。研修によって習得した高度な知識や手法は、各業務の効果的遂行に役立っ ている。さらに資格を必要とする業務を効率的に推進できるようになった。 〔指標1-2-コ〕 表6 研修・講習会への参加 研修・講習会名 主 催 者 日 程 開始 終了 参加者 (人) 職長等安全衛生教育講習 (社)土浦労働基準協会 H19.4.9 H19.4.10 2 職長等教育講習 (社)水戸労働基準協会 H19.4.11 H19.4.12 2 MAFFINスタートセミナー 農林水産省農林水産技術会議事務局 H19.4.25 H19.4.25 3 任用実務研修会 (財)日本人事行政研究所 H19.5.18 H19.5.18 1 平成19年度チーム長等研修(4日間) (独)農業・食品産業技術総合研究機構と共催 H19.5.22 H19.5.25 1 連続セミナー「情報セキュリティ2.0」(6回) (社)情報処理学会 H19.6.6 H19.12.14 1 勤務時間・休暇関係実務研修会 (財)日本人事行政研究所 H19.6.8 H19.6.8 1 平成19年度危険物取扱者保安講習会 (社)茨城県危険物安全協会連合会 H19.6.20 H19.6.20 1 平成19年度関東地区コーチング実践研修(6日間) 人事院関東事務局 H19.7.6 H19.11.2 1 平成19年管理者等研修 (独)農業・食品産業技術総合研究機構等と共催 H19.7.10 H19.7.11 1 平成19年度係員研修 (独)農業・食品産業技術総合研究機構等と共催 H19.8.2 H19.8.3 2 甲種防火管理者資格取得講習会 つくば市消防本部 H19.8.23 H19.8.24 1 平成19年度評価・監査中央セミナー 総務省行政評価局 H19.8.30 H19.8.31 2 平成19年度知的財産権研修(第3回) (3日間) (独)工業所有権情報・研修館 H19.9.11 H19.9.14 1 第45回政府関係法人会計事務職員研修(45日間) 財務省会計センター H19.10.3 H19.11.16 1 平成19年度農林水産関係若手研究者研修(3日間) 農林水産省農林水産技術会議事務局 H19.10.3 H19.10.5 2 給与実務研修会(俸給関係) (財)日本人事行政研究所 H19.10.12 H19.10.12 1 H19.10.17 H19.10.17 1 H19.10.30 H19.10.30 1 日経コンピュターフォーラム2007秋「開発マネジメント」トラッ 日経BP社 ク 経営フォーラム「独立行政法人の人事制度のあり方と目標管 (学)産業能率大学総合研究所 理のすすめ方」 印刷費積算講習会 (財)経済調査会 H19.11.1 H19.11.2 2 平成19年度主査研修(3日間) (独)農業・食品産業技術総合研究機構と共催 H19.11.7 H19.11.9 1 平成19年度(独)農業・食品産業技術総合研究機構短期集 合研修「数理統計」(5日間) (独)農業・食品産業技術総合研究機構 H19.11.12 H19.11.16 1 第38回関東地区係長研修(3泊4日) 人事院関東事務局 H19.11.13 H19.11.16 1 平成19年度障害者職業生活相談員資格認定講習 (社)茨城県雇用開発協会 H19.11.20 H19.11.21 1 平成19年度チーム長研修(3日間) (独)農業・食品産業技術総合研究機構と共催 H19.12.12 H19.12.14 1 平成19年度農林水産関係中堅研究者研修(3日間) 農林水産省農林水産技術会議事務局 H19.12.12 H19.12.14 2 平成19年度危険物取扱者保安講習会 (社)茨城県危険物安全協会連合会 H19.12.13 H19.12.13 1 平成19年度関東地区行政管理・評価セミナー 総務省関東管区行政評価局 母性保護・育児休業研修会 (財)日本人事行政研究所 平成19年度関東地区メンター養成研修 「給与法及び関係規則等の改正・給与実務の実例」研修会 H20.1.11 H20.1.11 2 H20.2.1 H20.2.1 1 人事院関東事務局 H20.2.22 H20.2.22 1 (財)日本人事行政研究所 H20.2.22 H20.2.22 1 - 23 - 表7 資格取得者 取 得 資 格 認 定 者 取得者数 (人) 特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会修了 (財)日本産業廃棄物処理振興センター 1 甲種防火管理者資格取得講習会修了 つくば市消防本部 1 平成19年度障害者職業生活相談員資格認定講習修了 (独)高齢・障害者雇用支援機構 1 [英語論文作成セミナー] 職員の英語論文作成能力の向上を図るため、元ミネソタ大学農学部長のDr.Gengenbach 氏を農業生物資源研究所の公式英文校閲者として任命している。また、平成18年度に単独 で開催した「科学英語論文作成セミナー」を拡充し、英語論文添削専門家を講師に招いて 「科学英語論文作成講習会」として前期計10回、追加講義として計6回を開催し、優れた 科学英語論文を作成するための技術習得の機会を設けた。講習内容は表8に示したとおり である。この講習会は研究職員の要望を聞きながら今後も開催する予定である。 表8 科学英語論文作成講習会(前期)の内容と参加人数 開催日 第1回 5月30日(水) 講習内容 (Topics) 参加者数 Research & research writing 113 第2回 6月7日(木) Materials and Methods 103 第3回 6月14日(木) References & Citations 90 第4回 6月20日(水) Results 86 第5回 6月28日(木) Figures, tables, photographs 82 第6回 7月5日(木) Discussion & Voice, Person, Tense 74 第7回 7月12日(木) Title, Keywords, Authorship, Acknowledgements & Abbreviations 74 第8回 7月19日(木) Introduction, Abstract, and Presubmission Editing 67 第9回 7月26日(木) Preparation for Submission, copyright, permissions, peer review, 65 editorial process, and printing 第10回 8月2日(木) Système International d'Unités (SI Units) and Common writing 64 mistakes ※17:00~18:10 (1回70分:計10回) ④農林水産省等との人材交流を通した人材の養成 研究管理能力やプロジェクトマネージメント能力を有する人材の養成を図るため、平成19年 度において、専任、併任及び研修員の身分で、農林水産省に2名、内閣府に2名、文部科学省 に1名派遣した。 〔指標1-2-ク〕 ⑤若手職員の人材養成 平成18年度以降、若手任期付研究員採用者については、次代の農業生物資源研究所を担う研 究戦力として位置づけ、農林水産技術会議が定めた「農林水産研究における人材育成プログラ ム」及び「農業生物資源研究所における人材育成プログラム」等に従って、農業生物資源研究 所の特性と個人の適性を考慮した人材養成計画「若手研究者育成プログラム」を展開してきた。 「若手研究者育成プログラム」の特徴は、高い研究実績を持つ指導担当者のもとで5カ年一貫 の研究計画に基づいて、若手任期付研究員採用者を自立した高い能力を持つ研究者として育成 することにある。平成19年度も前年度に引き続き、若手任期付研究員採用者に対して、以下の 項目についての研修プログラムを実施した。1)若手任期付研究員採用者は、指導担当者の助 言と監督の下に「研究計画」を作成し、役員・研究管理職の評価・助言を受けたのち、研究を 実施する。2)研究計画の進捗状況については、指導担当者との日常の意見交換はもとより、 役員・研究管理職とも必要に応じて意見交換を行う。3)年度末には、研究成果発表を行うと - 24 - ともに、年次報告書をとりまとめる。また、研究者として必要な資質を向上させるために、農 業生物資源研究所主催の「科学英語論文作成講習会」及び「知的財産権に関する講習会」へ参 加させた。さらに、「若手研究者育成プログラム」の独自の取り組みとして、「科学研究費補 助金等競争的資金応募書類の書き方講習会」を実施し、競争的資金を確保できる自立した研究 者への育成支援を行った。 在外研究については、「OECD国際共同研究プログラム(生物資源管理に関するOECD国際共同 研究プログラム)」の「短期在外研究」によりスイス(ローザンヌ大学)へ1名、ギャランティ 制度により3名の研究者をドイツ(ミュンヘン大学)、米国(ノースカロライナ大学)、フラ ンス(国立農業研究所)へ派遣中である。また、在外研究制度による派遣候補者1名を決定し、 平成20年5月から米国(ワシントン大学)に派遣予定である。さらに、在外研究制度は随時申 請可能な制度であるが、研究職員の在外研究意識を啓発するため、平成20年度からは定期的に 募集することとした。 〔指標1-2-ク〕 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A 研究の着実な発展を推進するため、平成19年度は組織の改編は行 わず、招へい型任期付研究員として第一線のダイズ研究者をチーム 長に採用し、中期計画を変更して課題の位置づけを明確化し、国内 外に農業生物資源研究所のダイズゲノム研究をアピールした。また、 イネ、ダイズ、カイコ、ブタゲノム研究を推進するため重点的に予 算配分を行い、農業生物資源研究所としての重点化の方向性を明確 にして取り組んだことは評価できる。 研究資金の多様化を図るためにも、競争的資金の獲得を増やすこ とが必要である。平成19年度外部資金はほぼ従来通り獲得できた。 また、科学研究費補助金については19年度173百万円(18年度143百 万円)を獲得し、採択率も26%(18年度20%)に上昇している。さら に、任期付若手研究員に対して、科学研究費補助金の申請セミナー を開催し、提案能力の向上を目指したことも評価できる。他の制度 についても引き続き外部資金獲得に向けて取り組むことが必要であ る。 A 松本・岡谷・北杜地区の再編統合に向けた取り組みについては評価 できる。本件が中期目標期間内に着実に実行されるよう取り組みを 続けるとともに、研究資源の効率的利用に向けた組織の見直しを継 続することを期待する。研究資金配分に多くの制度を導入するなど 努力は認められるが、重点化による効率化を実現するため、重点化 の方向性を明確にして取り組むことを期待する。競争的研究資金の 獲得に向けた制度整備努力は認められるが、獲得件数、金額ともに 前年に比べて減少した。今後はこうした新制度を外部資金の獲得増 加につなげることを期待する。組織については、農水省独法初の寄 付研究室の開設、フラット化、研究企画調整室の設置などの実績が あり評価できる。ゲノムリソースセンター内のマイクロアレイ解析 のためのオープンラボは、利用実績が高く、評価できる。職員の英 語論文作成能力の向上を目指し、公式英文校閲者を任命し、また、 セミナーを開催したことは、今後の論文の質と数の向上につながる 有効な取り組みである。 - 25 - 3 研究支援部門の効率化及び充実・高度化 中期目標 効率的かつ効果的な運営を確保するため、隔地研究チームの事務・事業の再編を含めて、 以下のような研究支援部門の合理化に努める。 総務部門の業務については、業務内容等の見直しを行い、効率的な実施体制を確保する とともに、事務処理の迅速化、簡素化、文書資料の電子媒体化等による業務の効率化に努 める。 現業業務部門の業務については、調査及び研究業務の高度化に対応した高度な専門技術 ・知識を要する分野に重点化を図るために業務を見直し、研究支援業務の効率化、充実・ 強化を図るよう努める。 研究支援業務全体を見直し、極力アウトソーシングを推進する等により、研究支援部門 の要員の合理化に努める。 中期計画 ①農林水産省研究ネットワーク等を活用して、研究情報の収集・提供業務の効率化、充実 ・強化を図るとともに、情報共有システムの運用により研究所全体の情報共有の促進及 び業務の効率化を図る。 ②総務部門の業務については、隔地研究チームの再編統合に合わせ総務分室の整理・統合 を行う。また、所内ネットワーク、会計システム等の積極的活用により、管理事務業務 を効率化し、一元的に管理できるように努める。 ③現業業務部門の業務については、高度な専門技術・知識を要する分野に重点化するとと もに、業務科体制の見直しを行うことにより、研究支援業務の効率化、充実・強化を図 る。 ④研究支援業務全体を見直し、極力アウトソーシングを推進する等により、研究支援部門 の要員の合理化に努める。 ⑤研究所及び個人の研究活動を適正に評価し、研究の活性化を促進する評価機能、研究成 果を効率的に社会に発信、還元させる社会連携機能、情報発信と双方向コミュニケーショ ンを通じ国民の理解を促進する広報機能等、新たな社会要請に対応した研究支援部門の 充実・強化を図るため、対応する組織を設置する。 (実績) ①情報共有促進の取り組み 研究情報の収集・提供においては、さらなるオンライン化と購読対象誌の拡張を進めた。具 体的には、アンケートや利用実績、引用調査結果等を参考に見直しを行い、新たな電子ジャー ナルパッケージを追加し、提供形態が変更可能なタイトルについては冊子体から電子ジャーナ ル(表9-1)へ移行した。また、電子ブックや電子版辞書類、電子版実験手順書も新たに導 入した(表9-2)。契約電子ジャーナルの有効な活用を目的として、年度前半にセミナーを 計4回実施した。 また、評価方法のひとつとして現在利用されているインパクト・ファクターの正しい理解と 新たな評価方法を模索するために、外部から講師を招き「研究評価における論文データ活用法 勉強会」を主催した。 平成18年度から本格運用を開始した情報共有システム(グループウェア)については、コミュ ニケーション・ツール(所内メール、電子掲示板、文書ファイル共有等)として定着した。一 方、企業情報ポータル(EIP: Enterprise Information Portal)としての機能も併せ持たせるこ とにより、迅速な意思決定を支援するシステムにステップアップした。具体的には、人員情報 の一部、組織情報、課題情報(評価システムを含む)、会計情報の一部、共同研究情報等をデー タベース化し、農業生物資源研究所の構成員がその権限に応じて、最新のデータにアクセスで きるようにした。さらに、所内手続きにおいて、承認を必要としない手続きについては、本グ ループウェアから申請を行えるようにしつつある。これは、所内決裁の電子化が認められれば、 ワークフローに取って代わることにより、電子決済システムへと進化することを目指している。 〔指標1-3-ア〕 - 26 - 表9-1 契約電子ジャーナル一覧(2007-2008年) パッケージ名等 利用可能地区 ACS(American Chemical Society) 薬図協コンソーシアム(オプション1誌含む) 2007タイトル数 2008タイトル数 マルチサイト 25 34 ASM(American Society for Microbiology)11誌EJパッケージ つくば地区 11 11 Annual Reviews 10タイトルマルチサイトライセンス マルチサイト 10 10 Blackwell 電子オンリーモデル 薬図協コンソーシアム マルチサイト 750 737 Cambridge University Press 薬図協コンソーシアム マルチサイト Cell Press Online(2008年契約からはSD契約に含む) マルチサイト 7 EMBO+Nature+Nature姉妹誌 薬図協コンソーシアム マルチサイト 14 16 Oxford U.P.(バイオメディカルパッケージ) 薬図協コンソーシアム マルチサイト 69 74 Rockefeller3誌 薬図協コンソーシアム マルチサイト 3 3 Science Direct(Book Series、CellPress を含む) マルチサイト 63 71 Science Online(Premium Package) マルチサイト 2 3 SpringerLINK 薬図協コンソーシアム マルチサイト 565 588 UniBio Press(生物系電子ジャーナルパッケージ) マルチサイト 6 WileyInterScience 薬図協コンソーシアム マルチサイト 236 226 個別(タイトルごと)契約 マルチサイト・地区限定 13 14 1774 1834 47 計 表9-2 契約電子ブック一覧(2008年新規) パッケージ名等 利用可能地区 2007タイトル数 2008タイトル数 Elsevier 2007年パッケージ・サブジェクトコレクション(Biochemistry, Ge マルチサイト 12 netics and Molecular Biology)12タイトルパッケージ Elsevier e-Book マルチサイト 3 Wiley OnlineBooks マルチサイト 60 Wiley Current Protocols (実験手順書) マルチサイト 1 Wiley Reference Works (辞書類) マルチサイト 3 計 79 【2008年】主な変更点 「Cambridge University Press 薬図協コンソーシアム」追加 「Cell Press」は「Science Direct(SD)」に含め契約 「UniBio Press(生物系電子ジャーナル)パッケージ」中止(2008年情報センター契約により引き続き利用可) Elsevierの「e-Book(パッケージ・個別タイトル)」、Wileyの「OnlineBooks」等、電子ブックを新たに契約 ②管理事務業務の効率化 松本地区を平成20年度末に、岡谷地区を平成22年度末に本部へ移転することとしており、こ れに併せて庶務室甲信庶務チームの要員についても減員していくこととしている。 職員データの共有化を図るため、各システム間相互の連動が可能な、新たな人事・給与・共 済システムを導入した。 競争入札促進のため、平成19年10月に契約実施規則を改正し、随意契約基準額を国と同水準 に引き下げた。それに伴い、日常的に繰り返し大量に必要となる試薬等を迅速に調達するため、 一定期間の所要量を取りまとめて単価契約を行うこととした。この調達依頼から発注、納品ま でを簡便で迅速に行えるよう会計システムに新たな設定を行い、契約の競争性を確保しつつ契 約業務を効率化し、研究業務への影響が生じないよう対策した。 また、取引銀行におけるセキュリティ対策が講じられていることを確認した上で、振込(支 払)手続きを従来のファーム・バンキング方式からWeb方式へ移行するとともに、外国送金・ 収納手続きについても電子手続きが可能な方式を導入した。これらにより、全ての手続きがネッ トシステムにより処理可能となり、銀行窓口へ出向いての手続きや、ペーパーによるやりとり - 27 - を要しない上、支払・入金情報が即日に確認できるようになり、会計業務の効率化と迅速化を 図ることができた。 〔指標1-3-イ〕 ③現業業務部門の見直し 平成18年度に技術支援室は7班体制に再編されたが、平成19年度にはつくば地区で圃場管理 関係を担当している4つの班の間で、季節的な業務量の変動のために生じる一時的労働力不足 を補うために、必要に応じて他の班へ職員を派遣する等、労働力の流動化を図った。その結果、 各班の業務量の多寡に関わらず、年間を通じて充実した研究支援が可能となり、業務効率の向 上に繋がったことから、中期計画の見直し等で研究内容に変更があった等の場合でも、現業部 門は対応できることが見込まれる。 〔指標1-3-ウ〕 ④研究支援業務の見直し 平成18年度までに分類されたアウトソーシングする方が効率的とされる業務のうち、時期的 に他の業務と競合することが多い桑園の株間除草、使用済み樹脂製ポットの洗浄などに関して は、平成19年度から業者委託により実施した。その結果、職員の労力を実験用植物の特性調査 などに、これまでより多く振り向けることが可能となり、アウトソーシングの実効があがった。 技術の高度化に関しては、平成18年度から取り組んでいる遺伝子組換え蚕の作出について、平 成19年度に技術支援室職員が初めて成功するなど、専門技術の習得も順調に進んでいる。以上 のように、研究支援業務が量、質ともに向上しつつあり、充実したサポート体制の後押しによ り、優れた研究成果を得られることが今後期待される。 〔指標1-3-ウ〕 ⑤研究管理支援部門の充実・強化 研究開発部門をバックアップしつつ、新たな社会要請に対応した研究管理支援部門の充実・ 強化のため、平成18年度から「研究企画調整室」、「評価室」、「情報管理室」、「広報室」、「遺 伝子組換え研究推進室」、「安全管理室」、「産学官連携推進室」、「生物遺伝資源管理室」、「技 術支援室」、「庶務室」、「経理室」、「管理室」、「監査室」の13室体制で進めている。平成19年 度は、組織体制の変更は行わず、特に安全管理に関する国民の関心の高まりを受けて、情報管 理室による所内情報の整理・統合推進、遺伝子組換え研究推進室による花粉症緩和米等遺伝子 組換え作物開発研究の統括的な推進、安全管理室による化学物質管理システムの導入、が図ら れ、効果的な運営が進んでいる。 〔指標1-3-エ〕 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A 前年度の農林水産省独法評価委員会の指摘を踏まえ、平成19年度 から研究推進戦略会議の所内会議において、研究管理支援部門の室 長自らが事業年度の報告を行い、主体的に研究支援部門の業務の効 率化・高度化を進めるための議論を深め、研究支援業務の効率化、 充実・強化が着実に図られたことは評価できる。また、研究管理支 援部門の効率化は法人全体についての重要事項なので、引き続き着 実に実行するとともに効果を上げる必要がある。なお、外部評価委 員の一部からは、研究成果の社会還元に資する部門の充実をさらに 進めることも今後大事であるとの指摘もあり、さらに努力すること も必要である。 A 研究支援部門の効率化のため、その業務を見直し、体制を再編成し ていることは評価できる。今後、その効果を明らかにしつつ、研究 支援業務の全体像を明らかにして、効率化・高度化を実現すること を期待する。 - 28 - 4 産学官連携、協力の促進・強化 中期目標 生物資源の農業上の開発及び利用等に関する基礎的・基盤的研究水準の向上並びに研究 の効率的実施及び活性化のために、国、他の独立行政法人、公立試験研究機関、大学、民 間等との共同研究等の連携・協力及び研究者の交流を積極的に行う。その際、他の独立行 政法人との役割分担に留意するとともに、円滑な交流システムの構築を図る。 中期計画 ①バイオテクノロジー研究の中核機関として、独創的で質の高い農業技術シーズの創出と 研究成果の民間企業等への迅速かつ確実な移転を図るため、共同研究を推進し、人材交 流等による産学官の連携及び協力を強力に実施する。 ②社会ニーズに対応した研究開発を図るため、研究開発の初期の段階から民間企業等との 共同研究を行う。 ③ジーンバンク事業等の他の独立行政法人との連携・協力を必要とする業務については、 そのための連絡調整を緊密に行う。 ④独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構が行う多様な専門知識を融合した総合的 な研究に必要に応じて協力する。 ⑤独立行政法人国際農林水産業研究センターが実施する国際共同研究に必要に応じて協力 する。 ⑥公立機関、民間企業等からの放射線照射依頼については、積極的に対応する。 ⑦関係機関の参加を求めて、相互の連携・協力のあり方等につき意見交換を行う。 (実績) ①及び②共同研究の実施 大学院生の資質向上を図るとともに、相互の研究交流を促進し農業に関する学術及び技術の 発展に寄与するため、新たに横浜市立大学大学院及び千葉大学大学院園芸学研究科と連携大学 院協定を締結し、教育研究指導を行っている。 農業生物資源研究所のもつ研究資源と、外部機関の知識・技能を融合して研究を推進するた め共同研究契約を締結して、研究を実施した。平成18年度に締結した17件の共同研究を推進す るとともに、平成19年度には、質の高い農業技術シーズを創出し研究成果の民間移転を図るた め、東京大学・宇都宮大学とカイコの培養細胞に関する研究、高度な研究能力を持つ農業研究 機関と共同するため、福島県農業総合センターとイネ低温出芽性マーカーの開発に関する研究、 非農業研究機関と共同し技術移転を行うため、(株)つくば遺伝子研究所と家畜の病態・形質 における遺伝子発現解析に関する研究、迅速確実な技術移転のため初期段階から民間と共同す るため、カシロ産業(株)とシルクフィブロインスポンジに関する研究等、新たに18件の共同 研究契約を締結し、連携協力及び研究推進を図っている。共同研究の成果のひとつとして、特 許の共同出願を実施し、平成19年度は30件の国内特許出願中、6件が共同研究の成果であり、 連携、協力の効果が認められる(表10)。 国際的な共同研究については、昨年度から継続して、英国サンガー研究所、チェコ科学アカ デミー昆虫学研究所、フランス国立農業研究所等との共同研究を推進するとともに、新たにマ ラウィ国マラウィ大学とネムリユスリカの乾燥耐性に関する研究覚書(MOU)を締結した。 〔指標1-4-ア〕 - 29 - 表10 共同研究件数 平成18年から継続する共同研究件数(研究領域別) 研究領域 QTLゲノム育種研究センター 遺伝子組換え作物開発センター 遺伝子組換えカイコ研究センター 基盤研究領域 植物科学研究領域 昆虫科学研究領域 動物科学研究領域 公的機関(大学含む) 民間 6 1 2 1 1 1 2 1 1 1(1) *( )内は外国との共同研究件数 平成19年度新規共同研究件数(研究領域別) 研究領域 QTLゲノム育種研究センター 遺伝子組換え作物開発センター 遺伝子組換え家畜研究センター 基盤研究領域 昆虫科学研究領域 動物科学研究領域 公的機関(大学含む) 2 3(2) 2(2) 1 民間 1 1 7 1 *( )内は外国との共同研究件数 ③ジーンバンク事業 農業生物資源研究所をセンターバンクとし、農業・食品産業技術総合研究機構(中央農業総 合研究センターほか11機関)及び他の4独法機関をサブバンクとする連携協力のもと、ジーン バンク事業を実施した。また、効果的なジーンバンク事業を進めるために大学等国公立研究機 関28機関に遺伝資源の増殖及び特性評価等を委託により実施した(資料1、p8)。 実施に当たっては、参画機関との情報交換を円滑にするため、植物9名、微生物2名、動物 1名の種類別責任者(キュレータ)を依頼し、事業推進の効率化と密接な意思疎通を図ってい る。関係機関の担当者の参加の下、ジーンバンク連絡協議会を開催し、事業実績、次年度計画 を討議した。次年度計画は、事業評価委員会を開催し、最終決定した。 海外における遺伝資源共同調査は、複数年にわたる研究協定(MOU)に基づいて、ブータン、 中国(新疆ウイグル自治区)、ラオス、インド(タミールナドゥ農業大学)で実施した。 〔指標1-4-ア〕 ④農業・食品産業技術総合研究機構との連携 農業・食品産業技術総合研究機構との連携協力については、独法間の協定に基づく研究協力 などを通じて共同研究を実施している。また、同企画調整室と連絡を取り各種事業の推進方向 などについて打ち合わせを行うとともに、知的財産センターとは特許等の知財の取得・管理に ついて、産学連携センターとは大学・民間との共同研究の実施について等の打ち合わせを実施 した。さらに、平成19年度には中央農業総合研究センター、作物研究所、畜産草地研究所、動 物衛生研究所の4箇所の研究機関と協定を結び研究協力を行った。 〔指標1-4-イ〕 ⑤国際農林水産業研究センターとの連携 国際農林水産業研究センター(JIRCAS)との連携については、昨年度に引き続きJIRCASが主 導し、IRRIや東アジア諸国が参加するイモチ病の国際共同研究プロジェクト「イネ安定生産」 (平成18~23年度)に参画し、研究を進めている。 〔指標1-4-イ〕 ⑥放射線照射依頼 平成19年度における独立行政法人・国立大学法人・公立試験研究機関・民間企業からの依頼 照射の総件数は、155件となり前年より増加した。その内、公立試験研究機関と民間企業及び - 30 - 個人からは41件、照射料275,600円の収入を得た。依頼者への対応は、照射依頼を受けた植物 の試料(種子、苗、培養体、穂木等)に関して、放射線育種場の研究員の協力と助言の下、線 量等の照射条件について依頼者と事前の打ち合わせを行って、可能な限り要望に沿うように積 極的に取り組んでいる。さらに、依頼照射に関する問い合わせや相談についても適切な対応・ 回答になるように努めた。 放射線育種場共同利用研究 放射線育種場共同利用運営委員会による照射施設を利用する大学との共同研究を実施して いる。平成19年度は国立、私立の13大学が参画し、16研究課題の研究を進めており、共同研 究者である放射線育種場の研究員及び東京大学放射線育種場共同利用施設職員により91件の 照射が行われた。 〔指標1-4-ウ〕 ⑦県その他、外部研究機関等との連携 平成20年3月14日、研究推進戦略会議(外部機関との意見交換)を開催した。「連携協力の推 進状況」のテーマで、農業生物資源研究所のオープンラボ及び民間企業における遺伝子組換え カイコを用いたビジネスモデル等を紹介し、連携・協力のあり方について意見交換を行った。 また、茨城県他外部機関との連携については、筑波研究学園都市交流協議会に参加し、つく ば市内の研究機関等との交流を図るとともに12月に茨城県との意見交換会を行った。さらに、 理化学研究所、産業技術総合研究所の知財、連携担当部門等とは必要に応じて、管理・運営方 法について情報交換を行っている。 〔指標1-4-ア〕 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A プロジェクト等を通じて、他機関との連携を進めるとともに、カ イコの遺伝子組換え技術等を中心に、民間企業、大学等との共同研 究を積極的に進めていることは評価できる。新たに平成19年度に契 約した共同研究18件のうち10件が民間企業であり、積極的に連携・ 協力が実施されている。但し、農業生物資源研究所の性格を考える と、ここはもっと活性化する必要がある。一方、遺伝子組換え体の 実用化にあたっては、民間企業等との連携・共同研究だけで解決で きない問題が多く、行政の強力なバックアップが必要であり、農業 生物資源研究所として積極的に行政に働きかけてゆく。また、実用 化を目指すには、基本技術の評価をしっかり行い、実用化に臨むか を決定する。そして評価の結果を基礎研究にフィードバックするこ とが重要である。 A 従来からの共同研究の延長のみならず、新規の共同研究も数多く開 始されており、外部の研究勢力と連携した事業実施は評価できる。 今後、他機関、特に農業生産関係の機関との連携を拡大・深化させ、 研究水準の向上や研究の効率的実施を進めるとともに、生物関連産 業の活性化や農業問題の解決につながる研究を実施するよう期待す る。 - 31 - 5 海外機関及び国際機関等との連携の促進・強化 中期目標 世界の食料・環境問題の効率的な解決に資するための国際的な研究への取組を強化す る。特に、穀類として初めてイネゲノム全塩基配列を解読した成果を、他の植物の生命現 象の解明及びそれを応用した農林水産業の飛躍的な発展に広く活用していくため、生命科 学分野での国際的イニシアチブの確保、海外研究機関及び国際研究機関との連携を積極的 に推進する。 中期計画 ①イネゲノム研究等の成果を基に、国際機関等との包括的研究協定や国際機関が実施する 国際的プロジェクト研究への参画等を通して、国際的な課題の解決への取組を強化する。 ②ポスト・イネゲノムシーケンス研究等において国際的優位性を確保するため、ゲノムリ ソース等の研究開発資源を有効に活用し、中核となって関連国際研究機関や研究者との 連携を強化する。 (実績) ①及び②国際協力、連携 イネゲノム及びポスト・イネゲノムシーケンス研究等における国際協力、連携 農業生物資源研究所は、佐々木理事を大会委員長として、2007年(平成19年)10月15日から 17日までつくばエポカル国際会議場においてイネ機能ゲノミクス国際シンポジウムを開催した (図11)。今回は第5回目にあたり、初めて我が国での開催であり、国内外から過去最多の 340名の研究者が参加し、84題の講演、144題のポスター発表が行われた。 本シンポジウムの開催は、農業生物資源研究所、我が国のイネゲノム、ポストゲノム研究の 最先端研究を世界に示し、国際的イニシアチブを確保する上で、非常に有益であった。農業生 物資源研究所は、平成16年度から国際共同プロジェクトの中核機関としてイネアノテーション 計画(Rice Annotation Project、RAP)を組織してきており、2007年(平成19年)10月15日には つくば国際会議場にて第4回イネアノテーション計画会議(RAP4)を開催した。 本会議は、第5回イネ機能ゲノミクス国際シンポジウムの中でワークショップ形式で開催し、 ストレス応答遺伝子の機能アノテーションや、転写開始点の多様性など、RAPのアノテーショ ン情報を利用したイネゲノム研究を進めている研究者に加え、MPSSによる発現解析や、飼料作 物のゲノム研究を行っている研究者、Swiss-protのプロジェクトに関わる研究者など国内外か ら7名の研究者を招へいした。 会議では、研究発表に加え、イネゲノム研究の将来的な研究展開の可能性や、今後も増え続 けるゲノム情報の効率的な活用方法など、幅広く活発な議論が行われた。また、各国で独自に 開発されているイネゲノム関連の各種データ(デラウェア大学のMPSSデータや、フランスの Perpignan大学、カナダのMcGill大学、アメリカのArizona大学のトランスポゾンのアノテーショ ンデータなど)を取得して、農業生物資源研究所が中心となって開発し、イネゲノム解析デー タベースの中核となっているアノテーションデータベース(RAP-DB)から公開した。これらの 成果については、Nucleic Acids Researchにおいて国際共同プロジェクト名で論文を発表した。 コムギゲノムの全塩基配列決定のための国際連携機関として国際コムギゲノム配列決定コン ソーシアム(International Wheat Genome Sequencing Consortium、IWGSC)が組織されてお り、この主要メンバーであるフランス国立農学研究所(INRA)はゲノムアノテーションのため のプログラムであるTriAnnot pipelineを作成している。 INRAとの間で取り交わされている共同研究に関する包括的覚書(MOU)に基づき、農業生物 資源研究所はイネアノテーション計画で培ったアノテーションシステム開発技術を利用して TriAnnot pipeline開発に全面的に協力している。 今年度は、完全長cDNAやEST配列をコムギBAC配列にマッピングしたり、相同性検索や遺伝子 予測結果を用いてORF情報を予測するプログラム開発を行い、TriAnnot pipelineに導入した。 その際に、農業生物資源研究所とINRA双方から担当者が互いに訪問して短期滞在することで、 - 32 - アノテーションシステムの効率的開発を図っている。 オオムギにおいても全塩基配列決定は国際共同計画(International Barley Genome Sequencing Consortium、IBGSC)として行われている。農業生物資源研究所は、平成17年度からオオムギ の完全長cDNAの大規模解析を開始しており、これまでに2万種類の完全長cDNAの解読をほぼ終 了している。その成果をもとに、全塩基配列決定とその後のアノテーションに貢献する目的で IBGSCに参加しており、国際学会においては IBGSCの会合に日本代表として参加し、ムギ類の ゲノム計画推進に積極的に取り組んでいる。 これら以外のゲノム関連国際共同研究では国際農業研究協議グループ(CGIAR)のチャレンジ プログラム「貧しい人々のための遺伝資源の多様性の解明」の参画研究機関となり、農業生物 資源研究所で収集・開発した完全長cDNAクローンやイネマイクロアレイシステムをベースとし て、国際イネ研究所(IRRI)やフランス農業開発研究国際協力センター(CIRAD)と共同で、 出穂期の乾燥ストレス応答やカビの宿主非依存的感染応答について共同研究を推進している。 図11 第5回イネ機能ゲノミクス国際シンポジウム (つくば市、2007年(19年)10月15日~17日) カイコゲノム研究等における国際協力、連携 カイコゲノム研究においては、平成18年3月に日本、中国がそれぞれ2004年(平成16年)に解 読したWGS法による解読データを統合することで合意している。その後、統合データは日中合 作共同論文として纏め、平成20年2月にScience誌に投稿した。論文が掲載され次第、高精度の カイコゲノムシーケンス情報として公表することとなっている。また、アノテーションについ ても、日中で協議しつつ進めることになっている。 平成18年12月にMOUを提携したフランス国立農業研究所(INRA)との連携において、鱗翅目 ゲノム研究の推進を図るため、平成18年度から平成19年度にかけ1年間、農業生物資源研究所 研究者を派遣した。 - 33 - 図12 カイコゲノムシーケンス情報、地図情報、EST情報を統合した カイコゲノム統合データベースKAIKObase ブタゲノム研究等における国際協力、連携 英国サンガー研究所を中心とした国際ブタゲノムシーケンシングコンソーシアムに農業生物 資源研究所も参画し、平成18年1月から全ゲノム解読が本格的に始まった。国際コンソーシア ムによってブタゲノムの概要配列の一般に公開は、平成20年6月までに完了する予定であった が、平成21年6月まで延びる見通しとなっている。 農業生物資源研究所は、全ゲノム解読において応分の国際的貢献を行うこととし、ブタゲノ ム解読研究で合意書を締結したサンガー研究所より、ブタ全ゲノムをカバーするBACクローン の中から担当するゲノム領域を含むBACクローンの提供を受け、農林水産先端技術研究所と共 同で解読を行っている。 昨年度と本年度において、有用遺伝子が集中する第7と第6染色体上の合計126個のBACク ローン受け入れ、解読を行った。さらに、平成19年度の1月に100個の第6染色体上のBACクロー ン受け入れ、平成20年度の6月をめどに解読を行う予定である。日本が優位に立っている遺伝 子発現情報を充実させるため、ゲノム解読に用いているブタのクローン個体由来組織から完全 長cDNAライブラリーを作成するため、イリノイ大よりサンプル提供を受ける手配を進めている。 今後順次公開されるゲノム塩基配列について、アノテーションをコンソーシアムの中で行うこ とになっており、農業生物資源研究所としても参画することを検討している。 サンガー研究所より配布されているBACクローンは、 デュロック種の雌(名前:T.J. Tabasco)から調製され ている。このクローン個体由来の組織から完全長cDNAラ イブラリーを作成するため、イリノイ大よりサンプル提 供を受ける手配を進めている。 〔指標1-5〕 - 34 - 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A 国際シンポジウムの開催、最先端のゲノム情報データベースの構 築、ゲノムリソースの開発、各種ゲノム研究の国際コンソーシアム への積極的な参加等により、国際的なイニシアチブを発揮するとと もに、海外の機関等との連携を強化している。イネゲノム研究にお いては、引き続きリーダーシップを発揮するとともに、海外の機関 との連携を図っている。また、平成18年1月から全ゲノム解読を本 格的に始めた国際ブタゲノムシーケンシングコンソーシアムに、農 業生物資源研究所も参画し、平成18年度同様に平成19年度も担当す るブタゲノムを解読することにより、国際的貢献を行なっているこ とは評価できる。 カイコゲノムに関しても、日中双方がもつデータを統合し、より 精緻なゲノム情報とすることで連携強化が図られている。さらに、 フランス国立農業研究センターとは鱗翅目ゲノム研究の推進に関し て共同研究を実施している。 このように、イネ、ダイズ、カイコ、ブタゲノム研究において各 国と協力しつつ、データベースを構築して世界に発信することで、 我が国の地位を確保していることは評価できる。 A ゲノム研究における国際的な活動は評価できる。今後も国際的なイ ニシアチブを確保し続けるための長期的な戦略を構築することを期 待する。 国際共同研究については、新規の共同研究覚書も締結するなど、海 外の研究能力と連携した事業実施が意識されていることは評価でき る。今後、その波及効果を把握し、一層の連携の強化につなげるこ とを期待する。 - 35 - - 36 - Ⅱ 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとる べき措置 1 試験及び研究並びに調査 中期目標 (1)重点研究領域 新たな中期目標を定めるに当たり、食料・農業・農村基本計画に対応して策定した 「農林水産研究基本計画」に示された研究開発を推進するため、研究所においては、 イネゲノム研究等の成果を活かして、遺伝子情報を含む生物遺伝資源の体系的な整備 を行う「遺伝資源及びゲノムリソースの高度化と活用」、「農林水産生物に飛躍的な 機能向上をもたらすための生命現象の解明」、植物、昆虫、動物等に新形質を付与す る技術を開発し、次世代型のバイオ産業の創出を支援する「新たな生物産業の創出に 向けた生物機能利用技術の開発」について、研究所として独自性を発揮できる研究を 重点的に実施する。 蚕糸関係の調査及び研究については、養蚕農家戸数及び製糸工場数が減少している こと、また、絹が従来の繊維利用のみならず、様々な機能性を持つ生体適合性タンパ ク質素材としての多方面での利用が産業界及び一般消費者から期待されており、その 生産・加工技術としての新蚕糸技術(シルクテクノロジー)に関する研究が重要となっ ていること等を踏まえ、重点化して実施する。 (2)研究の推進方向 研究に係る目標の作成に当たって、次のように定義した用語を主に使用して段階的 な達成目標を示す。また、研究対象等を明示することにより、達成すべき目標を具体 的に示す。 技術の開発 解明する:原理、現象を科学的に明らかにすること。 開発する:利用可能な技術を作り上げること。 確立する:技術を組み合わせて技術体系を作り上げること。 育 種 開発する:育種に必要な系統又は素材を作出すること。 育成する:品種又は中間母本を作出すること。 - 37 - A アグリバイオリソースの高度化と活用研究 中期目標 我が国はイネゲノムの完全解読を中心となって行い、解読情報や遺伝子解析用実験系統 を整備するとともに、その提供を進めてきた。また、農林水産ジーンバンク事業において も種子・種苗、標本等の収集を進めてきた。これらの基礎的な蓄積を研究の加速につなげ ることが課題となっている。 このため、遺伝資源とゲノム情報を組み合わせたアグリバイオリソースについ少数の系 統で種内の変異を代表するコアコレクションの作出や塩基配列情報の機能付け等により特 色のある研究を展開するとともに、我が国の中核機関としてその提供体制を確立する。 中期計画 研究所がこれまで蓄積してきた生物遺伝資源、ゲノムリソース、ゲノム情報及びゲノム 解析技術を基礎に、新たなバイオリソースの開発と高度化のための研究を加速化する。こ れにより、生物科学研究から作物育種に至る多岐の研究分野で利用できる特色のあるバイ オリソースを整備するとともに、国内外の研究者に広く提供する体制を確立する。また、 イネゲノム研究の成果を近縁・類縁生物種に応用して比較ゲノム解析を進め、ゲノム情報 解析システムの開発等の支援を得ることにより新規の有用遺伝子の発見と機能利用につな げる。さらに、有用な対立遺伝子群を保持する実験系統群や突然変異系統等については、 国内外の研究機関とも連携して実用的視点から評価を行うとともに、それらを用いたゲノ ム育種による効率的な新育種システムを開発する。 (大課題実績) 植物・遺伝資源分野では、1)第1期の成果であるイネゲノム情報を基盤とし遺伝子単離・ 機能解析から作物育種に至る幅広い分野で利用可能なバイオリソース(情報解析ツール、デー タベース、遺伝解析材料等)の開発と利用研究の加速化、2)イネゲノム研究の蓄積を活用し た、ムギ類とダイズのゲノム研究の基盤整備と利用研究の推進、3)これまでの遺伝資源研究 の蓄積を基盤とし、新たなバイオリソースの開発と高度化のための研究の推進、4)開発され たバイオリソースを国内外の研究者に広く提供する体制の確立を、目標としている。 1)のうち情報解析ツール、データベースの開発については、A)第2回イネアノテーション 計画会議の成果を取り入れるとともに、各種新規ツールを追加して、最新のイネゲノムアノテー ションデータベースの公開、B)イネ遺伝子発現を調節するシス因子を検出するためのツール RiCEsの開発・公開、C)昨年度開発したSALADデータベースを利用した、ペプチドをコードする と推定される新規遺伝子群の同定と、その一部ペプチドにおける生理活性の証明、D)cDNAに基 づく遺伝子構造同定のためのシステムの再構築と汎用性・利便性の向上、等の成果が得られた。 D)については、INRAとの共同研究の一環として、開発されたシステムをINRAで開発されたアノ テーションパイプラインに組み込み、コムギゲノムアノテーションに利用する等の波及効果も 得られている。遺伝解析材料の開発と利用研究については、イネ染色体断片置換系統群の作出 は計画通りに進捗し、これらの材料を用いて遺伝解析を進め、新たな出穂期関連遺伝子Hd16、 Hd17や、いもち病ほ場抵抗性遺伝子Pi35の候補遺伝子を特定するとともに、深根性遺伝子の候 補領域を650 kbに絞り込む、等の成果が得られた。また、アソシエーション解析においては、 イネ品種群に存在する集団構造に起因するノイズが問題となることが明らかとなり、今後は品 種群の再構成を含めて検討を行う。ゲノムシャッフリングによるイネ新育種法開発については、 材料の育成と評価は順調に進捗したが、評価初年度である今年は顕著な選抜効果は認められな かったので、世代を進めて評価を継続する。出口につながる成果として、DNAマーカー選抜に より育成した晩成コシヒカリ「関東HD2号」の種苗登録出願があげられる。ミュータントパ ネルのシステムを補完する、逆遺伝学的スクリーニングシステムの開発については、加速が必 要である。 2)については、A)オオムギ完全長cDNAの解読を加速し、今年度中に目標の20,000クローン の解読を終了する予定、B)オオムギ閉花性遺伝子の候補遺伝子を特定、C)本年度から開始した ダイズゲノム解析では、エンレイxPekingF2集団について210個のマーカーからなる遺伝地 図を作成するとともに、エンレイのBACライブラリー5万クローンについて末端配列の解読、 等の成果が得られている。 3)については、アズキの栽培化関連形質のQTLマッピング、Histone H3領域に基づくFusarium 遺伝資源の分類再検討を行うとともに、実用性の高いイグサの超低温保存法を開発、等の成果 - 38 - が得られた。ジーンバンク事業で推進している遺伝資源の収集・保存は概ね計画通りに進捗し た。 4)については、オープンラボの運営によるアレイ解析支援が順調に行われ、成果を挙げて いる。 昆虫分野では、カイコ完全長cDNAライブラリーの作成と配列解読、解読塩基配列のデータベー スへの登録と公開、カイコゲノムの構造解析とアノテーションが中課題の主要テーマである。 重点事項の一つである完全長cDNAライブラリーの作製は着実に進展した。今年度は精巣につ いてライブラリーを作製し、これまでのものと合わせて13個の異なる組織の完全長cDNAライブ ライリーとなった。平成19年度末までに、7,000個以上の完全長cDNAクローンの全配列を決定 し、来年度にはさらに加速化することにしている。また、日中のWGSデータの統合とその論文 化については進展が遅れがちだったが、今年度末には一流科学誌に投稿する運びになった。ゲ ノム解析の成果を利用し、農業生物資源研究所内外との研究協力を行い、19遺伝子のポジショ ナルクローニングを進めている。 動物分野においては、ブタゲノム研究の主要アウトカムを、ゲノム情報を用いた豚改良技術 の開発に置いている。そのため、1)特に発現遺伝子情報に重点を置き、国際コンソーシアム のブタゲノム解読プロジェクトにも参画しつつゲノムリソースの整備を進め、得られたゲノム 情報・リソースの利活用を促進するためのシステム開発を行う。2)抗病性・肉質を中心に、 経済形質関連QTLの特定、形質関連マーカーの開発、責任遺伝子の単離及びそれらの豚改良技 術への応用、さらに品種・個体識別への応用を図る。 1)において、ブタゲノム解読は予定通りに進捗している。昨年度に公開した世界最大のブ タ完全長遺伝子情報の総合データベースは、さらに発現情報を充実させるため、ゲノム解読に 用いているブタのクローン個体由来組織から完全長cDNAライブラリーを作成するため、イリノ イ大よりサンプル提供を受ける手配を進めるなど、国際的に協調しながら推進している。 2)は県の研究機関との共同研究により実施しており、従来から取り組んできたブタ椎骨数 関連遺伝子について、効果の大きい二つの遺伝子のうち一つを特定し、今年度Genome Research 誌に発表できた。もう一つは商用品種で固定されていないため、育種上より有用であるであり、 これについても、今年度、物理的にはほぼ特定することができるなど順調に進捗している。今 後は、研究成果の波及効果の大きさと得られたSNP情報の利用を考え、民間との共同研究によ り、ゲノム情報を利用した豚商用品種の改良のための研究にも着手する。2年目までに研究テー マの改編整理を行ったので、ユニット全体で中期計画を達成するための推進体制が整備できた。 自己評価 大課題 A 評価ランク コメント A イネゲノム情報を基盤として、アノテーション計画会議の成果な どを取り入れつつ、遺伝子単離・機能解析から作物育種に至る幅広い分 野で利用可能なバイオリソースの開発と利用研究を進めている。その結 果、イネではゲノムの情報と各種遺伝資源を利用してQTL解析から遺伝子 単離、マーカー育種までの手法が確立し、この手法が、ムギ類、ダイズ などの作物、ブタ、カイコにも普及し始めている。また、各種データベー スの充実・公開や、研究用リソースの供給、アレイ解析支援などが順調 に行われ、世界をリードする研究成果を発信し続けていることは、まさに トップランナーと評価できる。今後は、一段と将来に向けた戦略的かつ チャレンジングな研究への展開を図りたい。 前年度の 分科会 評価 A イネ研究においては、ゲノムプロジェクトの成果が実用育種に結び ついており、評価できる。著名な国際学術誌に論文が多く掲載され るなど、世界のトップレベルの成果を生み出している。イネゲノム 情報はオオムギの栽培化関連遺伝子単離でも活用され、優れた成果 に結びついている。カイコゲノムリソースも着実に充実しているが、 今後はこの優位性を産業にどのように活かすのかが課題である。国 際コンソーシアム参加によるブタゲノム解読開始、生産関連形質遺 伝子の同定などの成果もあがっている。ゲノム情報のアノテーショ ンでは、イネにおいて国際アノテーション会議を推進したことは評 価できる。ジーンバンク事業は着実に進展しているが、国外からの 生物資源の入手が困難となる国際環境の中、着実な実施に向けた戦 略的な取り組みを期待する。突然変異による育種素材開発は重要で あるが、研究の重点化や対象の絞り込みも求められる。イネ、ダイ ズ、カイコ及びブタのゲノムを中心に引き続き世界をリードするこ とを期待する。 - 39 - (1)多様性研究によるイネ遺伝資源の高度化と利用 中期計画 イネ栽培種のコアコレクションの集団構造をSNP解析により明らかにし、連鎖不平衡 を利用してSNPと有用形質との関連を解明する。多様な遺伝資源を活用し、日本型優良 品種を遺伝背景にもつ染色体断片置換系統群等の遺伝解析用実験系統群を作出する。遺伝 解析用集団を利用して、出穂の早晩生、多収性、高品質・良食味、いもち病抵抗性、ウン カ・ヨコバイ抵抗性、穂発芽耐性等の有用形質に関与するQTLを見いだす。有用なQT L遺伝子をコシヒカリ等の優良品種にマーカー選抜によって導入した育種素材を開発する とともに、それらのピラミディングを行う。ゲノムシャッフリングによる、多収でかつ食 味・品質が良い品種開発に向けた新育種法を開発する。 【研 究 資 源】研究員数:11.20人、ポスドク数:3.00人、研究資金:262.8百万円 【論文・特許等】原著論文:14、IF合計値:52.390、IF平均:3.74、 特許:11(出願:3、登録:8)、品種登録(出願):2 (中課題実績) 1.近縁野生種を含む150種類の多様なイネ品種・系統について、1,548箇所の塩基配列データ を得た。また検出されたSNP情報の公開用データベースのプロトタイプを作成した。 2.コシヒカリ/NonaBokraのCSSLs及び日本晴/コシヒカリのBILsについて、イネゲノムリソー スセンターを通じて分譲を開始した。日本晴とコシヒカリの染色体断片置換系統群の最終候 補個体を選抜した。その他の組み合わせでは、戻し交雑ならびに個体選抜を行った。 3.高能率SNP解析システムの構築を開始し、アジア栽培種のSNP解析アレイver2.0を作成した。 4.日本晴とコシヒカリの出穂期の差を決定している2種類のQTL( Hd16 及びHd17)の候補遺 伝子を特定した。 5.第9染色体の根維管束(中心柱)の大きさに関与するQTLを単一遺伝子座としてマッピン グした。さらに、深根性に関与するQTL、Dro1を単一遺伝子座としてマッピングした(図1)。 6.いもち病ほ場抵抗性遺伝子Pi35(t)の候補遺伝子を特定した。Pi38(t) 及びPi39(t)につい ては、候補ゲノム領域をそれぞれ110kb 及び120kb に限定した。Bridze由来の第9染色体上 のいもち病罹病性関連QTLをマッピングした。 7.NonaBokraの穂発芽耐性に関与するQTLを第6及び第8染色体上に検出した(図2)。コシ ヒカリの穂発芽耐性に関与するQTLを第3及び第8染色体上に検出した。 8.日本晴/コシヒカリの組み合わせにおいて、第1染色体の稈長に関与するQTLの存在を確認 し、その詳細なマッピングを開始した。 9.コシヒカリの良食味に関与する第3染色体短腕上のQTLの候補ゲノム領域の絞り込みのた めの、組換え個体を選抜した。 10.pi21座近傍の遺伝子型情報から、不良形質に関与するゲノム領域を特定した。 11.3種類の耐冷性関連QTL、Ctb1/Ctb2, qFLT-6及びqCTB-8について、それぞれひとめぼれ背 景のNIL候補となる組換え個体を選抜し、その後代を確保した。 12.SPAD値(葉色)及び穂重をターゲットにした、ゲノムシャッフリングについては、それぞ れ世代を進め、任意交配を行うとともに、選抜系統のSPAD値及び穂重を調査した。 13.有用遺伝子探索ならびに品種育成のために、外部10研究機関ならびに1コンソーシアムと の連携を継続した。稲2品種の種苗登録出願を行った(関東HD2号:作物研究所と共同)、 コシヒカリ富山BL7号:富山県農業技術センターと共同)。 自己評価 評価ランク 中課題 A S (1) コメント 基盤整備、遺伝子機能解析、育種法の開発のいずれの課題におい ても計画が綿密に練られており、中期計画の目標達成に向けて優れ た成果を上げている。また、外部機関との連携も強化され、品種の 育成に結びつく成果を上げるなど、平成18年度に引き続き、順調に 中期計画通りに進捗している。このように価値の高い材料育成と研 究が両論としてうまく機能しているのでS評価とした。収量性につ いては、農研機構とは違う戦略でモデル的に最高収量を目指す必要 がある。 - 40 - - 41 - (2)イネ及びイネ科作物のゲノムリソースの開発と利用 中期計画 イネの完全長cDNAライブラリーの内、新規で未解読のものについて、全構造を解読 する。解読された配列をデータベース化して遺伝子発現解析を行う。オオムギの完全長c DNAライブラリーを作成し、20,000クローンの配列解読を行う。栽培イネ・野生イネの BACライブラリー等を利用してイネ(栽培イネ・野生イネ)やイネ科作物における比較 ゲノム解析を行い、新規有用遺伝子の発見と機能利用につなげる。また、突然変異系統、 イネ完全長cDNA過剰発現系統(FOX系統)等を作出し、これらの解析によって得ら れる情報を形質と統合したデータベースを構築し、遺伝子の機能解析を効率化する。作成 したデータベースは公開して情報発信を行う。有用なライブラリー及び系統は適切に保存 ・管理するとともに、提供体制を整備する。塩基配列については公的データベースに登録 して積極的に公開する。 【研 究 資 源】研究員数:10.40人、ポスドク数:6.50人、研究資金:957.3百万円 【論文・特許等】原著論文:31、IF合計値:101.631、IF平均:3.28、 特許:5(出願:3、登録:2) (中課題実績) 1.イネ完全長 cDNAのうち新規な 1,849クローンの配列解読を行って公開した。また遺伝子 発現におけるシス因子の検出のツールを開発し、RiCESと名付けて公開した(図1http://hpc. irri.cgiar.org/tool/nias/ces)。RiCESは、ユーザが定義した遺伝子群において保存的に見 られるモチーフを表示したり、研究者自身の実験によって得られた新規シス因子候補、なら びにそれらの組み合わせパターンについても表示できる。 2.新規なオオムギ完全長クローンの全長解読を進め、このうち20,000配列について解読が終 了した。 3.栽培・野生から作製した BACライブラリーを用いて12種類の遺伝子の配列決定を行った。 また昨年度単離した脱粒性遺伝子 qSH1以外に新しい脱粒性遺伝子を同定した。 4.植物タンパクをドメインの類似度を指標に分類した SALADデータベースを改良して試用公 開にまで行っている。 5.イネのテロメア領域には染色体特異的な塩基置換が主にテロメアリピートの Tに多く起こ り、染色体特異的な塩基置換がテロメア複製時に急速に増幅されていった様子が明らかに なった (図2)。 6.オオムギの閉花性遺伝子の座乗領域を 0.06cMまで狭めることができた。 7.昨年度作製したコムギ FT遺伝子のオーソログをコムギ植物内で発現した個体を利用して、 コムギの vernalization関連の遺伝子が相互に制御しあっており、イネには見られない遺伝 子制御が明らかになった。 8.Tos17挿入部位の18,578件のシークエンスデータを取得し、データベースに入力した。Tos 17データベースで公開しているTos17挿入部位数は、33,772箇所となった。 9.FOX(過剰発現)イネ系統の作製を継続して実施した。本年度までに配布対象のFOX系統数 は、RIKEN由来が8,220系統、FAIS由来が515系統、計8,735系統となった。 10.新規なイネ完全長cDNA、4,902クローンのグリセロールストック作成、配布用DNA調製及び 品質チェックを実施した。分譲業務においては、イネ完全長cDNAクローン:534件、3,357ク ローン、Tos17変異系統:176件、936系統、遺伝解析材料:34件、集団(BIL, CSSL等)19セッ ト、個別53系統、親品種17系統を提供した (図3)。また、遺伝解析材料として、 コシヒカ リ/Nona Bokura(CSSL44系統)を含む新たな3集団を公開した。 11.マイクロアレイ研究支援は、5年間のイネゲノムプロジェクト関係者の支援経験を元に、 平成20年2月農業生物資源研究所の開放型研究施設(オープンラボ)として公開した(図4)。 平成19年度の利用実績は、133回であった。 自己評価 評価ランク 中課題 A A (2) コメント イネゲノム情報を用いた比較ゲノム解析により、個々の研究は計 画通りに進捗している。オオムギ遺伝子については栽培化に関わる 成果が上がっている。マイクロアレイ解析の利用ができるオープン ラボを開設し、リソースの配布と有効利用を図っており、その結果、 リソースセンターの役割の大きさを外部評価委員にも認められるな ど、リソースの整備・配布は順調に進捗していると評価できる。な お、ゲノム解析の分野は進展が速いので、ゲノム構造のダイナミク ス研究と栽培化のどちらかに絞り込むことが必要である。また、イ ンフォマティクスの強化を図ることが望まれる。 - 42 - 図1 遺伝子発現におけるシス因子の検出のツール RiCES のトップページ 図2 図3 イネのテロメア領域の染色体特異的なリピート分布 研究リソースの平成19年度配布実績 図4 農業生物資源研究所が公開した オープンラボWebページ URL: http://www.nias.affrc.go.jp/nias-openlab/ - 43 - (3)カイコ等昆虫のゲノムリソースの開発と利用 中期計画 カイコや害虫の各組織・器官より完全長cDNAライブラリーを作成し、配列解読を行 う。解読した塩基配列について公的データベースに登録して積極的に公開する。またカイ コゲノムの構造解析とアノテーションを行う。さらにカイコを中心として突然変異系統、 エンハンサートラップ系統、破壊遺伝子(挿入突然変異)系統等3,000系統を作出し、こ れらを利用した遺伝子(機能)解析によって得られる情報を既知の遺伝地図・形質地図等 と統合したデータベースを作成し、遺伝子の機能解析を行う。作成したデータベースは公 開して情報発信を行う。 【研 究 資 源】研究員数:9.80人、ポスドク数:6.00人、研究資金:194.6百万円 【論文・特許等】原著論文:20、IF合計値:63.323、IF平均:3.17、 特許:1(出願:1、登録:0) (中課題実績) 1.本年度は新たに精巣のcDNAライブラリーを作成・解析し、これまでのと合わせて13個の異 なる組織のcDNAライブラリーを解析した。この中から完全長cDNAクローン候補をリストアッ プし、primer-walking法でクローンの完全解読を進めている。3月末までに7,158個の完全長 cDNAクローン配列を決めた。解読した完全長cDNA情報はカイコ完全長cDNAデータベースにま とめ、研究者が利用できる体制を整備した(図1)。 2.形質突然変異体の原因遺伝子のポジショナルクローニングのための重要な基盤となるBAC ミニマムタイリングパス作成のため、カイコゲノムシーケンス情報から28本染色体をカバー するBAC候補クローン3,581個を選抜した。 3.ゲノム解析成果を活用し、農業生物資源研究所他研究ユニットや外部の大学等と研究協力 を行い、19個の重要形質突然変異体原因遺伝子のポジショナルクローニングを進めている(表 1)。3遺伝子については目的遺伝子を含むゲノム領域を100kb以内に絞り込んだ。 4.カイコ2型膿核病ウイルス抵抗性遺伝子のうちの nsd-1 について候補遺伝子を特定するこ とに成功した(図2)。 5.ゲノムシーケンス情報、地図情報、完全長cDNA情報、遺伝子機能解析情報を統合した高度 なカイコゲノムデータベースKAIKObase (Silkworm Genome Database)を整備し、研究者が機 能解析研究に効率的に利用できる体制を築いた。 6.トランスポゾンを転移させたエンハンサートラップ系統において、カイコゲノム情報を用 いてミューテーターの挿入近傍配列を決定し、解析する方法を確立した。ゲノム情報を利用 したミュータント作出を効率的に進め、その利用を図るため遺伝子強制発現形質データベー スを整備し、KAIKObaseとのリンクを整備した。 自己評価 評価ランク 中課題 A A (3) コメント カイコゲノムでは完全長cDNAの整備、ゲノム情報の充実、日中で 解読したゲノムデータの統合など、中期計画通り順調に進んでいる。 今後、遺伝子の解析以外に実用的な分野での利用を検討する必要が ある。カイコゲノムでは、他の昆虫への発展も視野に入れ、他の鱗 翅目昆虫へ情報を活用していくことが必要である。また、ゲノム情 報を利用したポジショナルクローニングに対する要望が、今後見込 まれるので、その対策を整備しておく必要がある。 - 44 - 図1 カイコ完全長 cDNA データベース http://kaikocdna.dna.affrc.go.jp/pro/full_cDNA/index.html 表1 共同研究で進めているポジショナルクローニング gene ID p BT抵抗性 L bdf w-2 K pph re pe sch Ze phenotype plain 劣性Bacillus thuringiensis resistance Multilunar dilute-black fertile white egg 2 Knobbed polyphagous red egg pink-eyed white egg sex-linked chocolate Zebra lem cot ap l-li C カビ抵抗性 新規油蚕 Ac-NPV感受性 図2 形質 姫蚕 褐円 f薄墨 第2白卵 こぶ 広食性 赤卵 淡赤眼白卵 伴性赤蟻 虎蚕 LG 2 15 4 9 10 11 3 5 5 1 3 研究協力先 解析BF1数 東京大学 2617 生物研 1988 東京大学 692 九州大学 3463 生物研 410 東京大学 692 生物研 1175 生物研 694 生物研 694 中国西南大学 67 生物研/東京大学 1175 lemon contracticle apodal lethal last instar larva 黄体色 縮み蚕 無脚 終齢致死 3 15 3 24 生物研 生物研 東京大学 九州大学 outer-layer yellow cocoon 優性Beauveria brongniarti抵抗性 外層黄繭 12 ? ? ? 感染研 生物研 九州大学 九州大学 Ac-NPV感受性 ゲノム領域絞込進捗 20kb 82kb 100kb 300kb 389kb 440kb 640kb 750kb 940kb 3.5Mb 8.8Mb 1175 42 F2 F2 F2 20cM 概要マップ中 BF1選抜中 BF1集団DNA抽出 BF1集団DNA抽出 連関群決定 BF1集団DNA抽出 BF1集団DNA抽出 nsd-1 の絞り込み (Ch.21)(左)および nsd-1 の抵抗性—感受性の塩基配列比較(右) - 45 - (4)ブタゲノムリソースの開発と利用 中期計画 ブタの発現遺伝子情報を充実させるために、各種臓器由来の完全長cDNAを収集し、 その全長の塩基配列10,000個以上を解読するとともに、それらのマッピング、ゲノム構造 の解析及び配列情報を利用した発現解析システムを構築する。また、5,000個以上の遺伝 子多型情報を収集し、品種・個体識別技術への応用を図るとともに、それらの多型情報と 抗病性、生産形質との関連を明らかにして家畜改良技術への応用に資する。さらに研究所 で得られた家畜ゲノム情報と外部情報とを統合してデータベースを構築し、それらの情報 を公開する。 【研 究 資 源】研究員数:9.80人、ポスドク数:0.00人、研究資金:63.0百万円 【論文・特許等】原著論文:19、IF合計値:57.238、IF平均:3.01、 特許:1(出願:1、登録:0) (中課題実績) 1.ブタゲノムシーケンシング国際コンソーシアムに参画し、前年度受け入れたBACクローン 105個についてシーケンシングのカバー率を平均7.10倍以上に向上させた。新たに第6染色 体上のBACクローン52個を受け入れ、平均6倍のカバー率での解読を行った。 2.完全長cDNAについては、これまでに解読した約10,000個のcDNAクローンに加えて、約2,000 クローンの全長解読を追加した。少なくとも1,000個以上のヒト遺伝子に対応する1,300以上 のSNPによるブタ発現遺伝子連鎖地図の構築を行った。 3.病原体認識に関わる TLR遺伝子群の中に、病原体認識能をほとんど消失させる変異、機能 を低減、あるいは昂進させる変異の存在を確認した。実用豚集団においてSLAハプロタイプ と疾病罹患状況との相関を認めた。 4.体長に影響するブタ椎骨数関連QTLのうち、効果が大きく商用品種で固定されていない第 7染色体上のQTLにおいて、最も椎骨数と相関の高いハプロタイプブロックは前年度マーカー で絞り込んだ約40kbの領域と一致した。 5.食肉購買に影響する肉色に関与する第6染色体上のQTL候補遺伝子NUDT7は、発現解析より、 胸最長筋においてイノシシ由来の対立遺伝子は大ヨークシャー由来に対して1/2から1/3の発 現量であり、イノシシの方が大ヨークシャーよりヘムが多く、肉色が赤いことと一致した(表 1)。 6.梅山豚において薬物代謝酵素遺伝子CYP1A1及びCYP1A2遺伝子の発現量は、成熟5ヶ月齢 では雄は雌に比較して著しく低く、去勢することによりそれらの発現は雌レベルまで上昇し た(図1a)。一方、未成熟 1ヶ月齢では肝臓におけるそれらの発現に性差は認められないが、 テストステロン投与により雌雄ともにCYP1A1/CYP1A2の顕著な発現低下が認められ(図1b)、 梅山豚の肝臓におけるCYP1Aサブファミリー酵素の構成的発現の性差はテストステロンによ る抑制作用に起因することが示された。 自己評価 評価ランク 中課題 A A (4) コメント ゲノムリソース及びゲノム情報データベースの開発、生産関連遺 伝子の特定、発現制御機構の解析では、中期計画通り達成されてい る。ブタの体長に影響する椎骨数のゲノム解析では、産肉性の向上 が期待できる大きな成果が上がっていることは評価できる。なお、 ブタの椎骨数の改変が産肉性に貢献できるよう、ブリーダーの協力 を得るなどして研究を進める必要がある。 ブタゲノム解析は順調に進捗しているが、今後の発展性を検討す ることが重要である。また、外部資金の獲得に向けては、課題設定 を工夫し、外部研究機関も視野に入れた大きな枠組みが必要である。 - 46 - - 47 - (5)ダイズのゲノムリソースの開発と利用 中期計画 国産ダイズのゲノム育種を可能にする精密連鎖地図を構築する。また、国産ダイズのB ACライブラリーを作成し、これをもとに物理地図を作成するとともに、重要な形質を制 御する遺伝子領域については塩基配列解読を行う。これらの研究によって得られるDNA マーカー、連鎖地図、物理地図、塩基配列情報等を統合したデータベースを構築し、それ らの情報を公開する。 【研 究 資 源】研究員数:2.70人、ポスドク数:3.00人、研究資金:66.5百万円 【論文・特許等】原著論文:3 、IF合計値:6.132、IF平均:2.04、特許:0 (中課題実績) 1.エンレイ×Peking及びエンレイ×Williams 82のF2集団、エンレイ×(エンレイ×Peking) の戻し交雑集団を育成し、耐湿性等の農業上重要な形質の解析や育種母本として活用可能な 組換え自殖系統及び染色体部分置換系統作出のための世代促進を行った。 2.分子マーカーの蛍光ラベル化及びMultiplex化により効率的なマーカー解析システムを確 立し、エンレイ×PekingのF2集団について439個の分子マーカーから成るこれまでにない正 確な連鎖地図を作成した(図1)。今後高精度選抜マーカーの開発に活用できるように、本 地図には国内のマーカー選抜育種に利用されている分子マーカーを可能な限り配備した。 3.二つの高品質BACライブラリーGMJENa (HindⅢ断片 平均インサート長140kb、80,640クロー ン)、GMJENb( MboⅠ断片 平均インサート長 101kb 、115,200クローン)(図2)から二次 元スクリーニングのシステムを確立した。 4.BACライブラリーGMJENaのうち、53,760クローンの両末端塩基配列解読が完了した。平均 解読長はphred score 30では650塩基で非常に高精度の解読であった(図2)。 5.花期関連遺伝子FT2 (E2)の存在領域を100kbに絞り込み、候補遺伝子を特定した。FT3( E3) 候補遺伝子の特定と共に世界に先んじた成果である。 6.最も効果の大きい開花期関連遺伝子FT1 (E1)の存在領域を300kbに絞り込んだ(図3)。 7.EMS突然変異ライブラリーからFT3 の第1エキソンに30bpの欠失のある突然変異系統を見出 し、ミスズダイズのFT3遺伝子を導入したJackの形質転換体を確認した。これらは、FT3候補 遺伝子の確認、機能の解析に利用できる。 自己評価 評価ランク 中課題 A A (5) コメント 中課題A5は平成19年度から始まった課題であるが、ダイズの連 鎖地図の構築、BACライブラリーの作成、一部BACクローンの解読な どスタートの年としては計画通りに進捗している。ダイズゲノム研 究の先駆者として、農業生物資源研究所が研究をリードし、他研究 機関にも指導的役割を発揮することが必要である。 - 48 - - 49 - (6)種間比較解析に向けたバイオインフォマティクス研究基盤の確立 中期計画 完全長ゲノムや大規模決定されたcDNA配列、タンパク質立体構造等の生物情報を総 合的に解析し、かつ、これらを複数種に渡って比較しながら効率よくデータ処理を行うシ ステムを開発する。ゲノム全長が決定されており、また遺伝子の大部分を網羅するような cDNAのある種が、近縁で10種程度入手可能な場合でも、現実的な時間の範囲で一括し てデータを処理できるようにする。分子進化解析、系統樹解析、機能ドメイン抽出、発現 パターン比較等の大量情報処理を通じて重要な機能を持つ遺伝子を推定する。これらの情 報をデータベース化し、研究者が必要な情報を即座に入手できるようなWWWインター フェースを備えた検索システムを開発する。 【研 究 資 源】研究員数:4.00人、ポスドク数:0.00人、研究資金:27.6百万円 【論文・特許等】原著論文:3、IF合計値:18.951、IF平均:6.32、 特許:1(出願:1、登録:0) (中課題実績) 我々は、2004年にイネの全ゲノム塩基配列が決定されて以降、国際協調下のアノテーション推 進を主導しており、今年度も第4回イネアノテーション計画会議(RAP4)を開催した。この会 議では、実際にRAPのアノテーション情報を利用した研究発表を行い、またイネゲノム研究の 将来的な研究展開を方向付けた。加えて、引き続きアノテーションデータの作成及びデータベー ス公開も行っており(図)、国際プロジェクトとしての論文も出版した。RAPの活動に関して はその実績が農林水産研究成果10大トピックスに選定されるなど外部でも評価を得ており、今 後の情報解析の中核として期待される。我々は特に、汎用性が高く利便性の高いアノテーショ ンパイプラインの開発を行っており、農業生物資源研究所がMOUを締結しているフランス国立 農学研究所(INRA)とも共同研究を行っている。INRAでは国際コムギゲノム配列決定共同体 (IWGSC)の主要機関としてアノテーションシステム(TriAnnot Pipeline)を構築しており、 我々が作成したモジュールをこれに組み込むべく、相互に研究者が短期訪問しながら作業を進 めている。これらの配列情報を利用した比較解析の一環として、植物ゲノム研究ユニットを中 心に決められたオオムギ完全長cDNAも利用しながら、主要穀類のオルソログ(種間で対応する 遺伝子)のデータセット及びブラウザを作成した。例えばイネとオオムギの間では系統樹の証 拠をもってオルソログと判定されるものが2,301あり(表)、このうち農業生物資源研究所で 決定された完全長cDNAに由来する新規配列は実に2,182本であった。今後はこのオオムギ配列 を農業生物資源研究所の重要な資産として活用していく必要がある。代謝に関するテキストマ イニングと代謝マップへの新規対応付けも行っており、イネに関してはKEGGのイネやシロイヌ ナズナでカバーできていない400の酵素候補を発見できた。タンパク質立体構造に関してはサ ブユニット間会合体積計算サーバーを構築し、また、タンパク質とリガンドの複合体のドッキ ング構造予測のための条件検討を行っている。 自己評価 評価ランク 中課題 A A (6) コメント 農業生物資源研究所は国際共同プロジェクト(RAP)の中核機関と してイネアノテーション事業を主導している。処理システムの開発 やデータベースを構築し公開するなど成果を上げており、中期計画 通りに進んでいる。さらに、RAPでの実績が「2007年農林水産研究 成果10大トピックス」の一つに選ばれたことは評価できる。なお、 増大するゲノム情報の中から意味のあるデータ解析をするため、今 後独創性のある解析システムを考える必要がある。 - 50 - 図 表 RAPデータベースのウェブサイト イネとの間のオルソログの数 BLASTによる候補と系統樹により確定したものを示す。 - 51 - (7)遺伝資源の収集・評価・増殖・保存・配布 中期計画 中期目標期間終了時の遺伝資源の保存点数は、概ね植物25万点、微生物2.5万点を目標 とする。遺伝資源の調査(収集)は、国内外の情勢を踏まえ、地域や対象種をより重点化 する。特性評価を充実するとともに、再増殖、品質確認等によりアクティブコレクション を拡充し、特に動物では、カイコとニワトリを中心に保存遺伝資源の50%をアクティブ化 する。植物では、野生イネAゲノム種、アズキ亜属等のコアコレクションを作成する。微 生物では、DNA塩基配列情報を基にフザリウム属菌等の主要コレクションを再分類する。 また、保存の効率化を図るために、植物、微生物、動物それぞれについて、超低温保存法 を開発し、優先度に応じて遺伝資源の超低温保存を開始する。さらに、遺伝資源の来歴及 び特性情報の蓄積と発信、ホームページ上での情報提供等により利用者拡大を図り、配布 を促進する。 【研 究 資 源】研究員数:24.60人、ポスドク数:3.00人、研究資金:164.1百万円 【論文・特許等】原著論文:29、IF合計値:35.258、IF平均:1.22 特許:1(出願:0、登録:1) (中課題実績) 1.7隊の植物遺伝資源国内探索調査、1件の海外探索調査、4課題の海外共同調査を実施し た。微生物は、3隊の国内探索、2件の海外探索調査を実施した。インドのタミール・ナドゥ 農業大学と3ヶ年の共同調査研究のMOUを締結した。 2.サブバンクの協力のもと、植物遺伝資源の1~3次特性、合計17万4千点の特性評価を実 施し、公募による13課題を委託で実施した。アジアで栽培化された Vigna属4種と近縁野生 種、計23分類群の多様性解析を進め、アズキに続きツルアズキの連鎖地図(図1)を完成し、 栽培化に関与した遺伝子座のQTL解析を行った。アズキのSSRマーカー情報と連鎖地図情報は、 ジーンバンクのホームページで公開した。微生物遺伝資源では計8,186点の特性評価を実施 し、公募による1課題の委託課題を実施した。植物病原性フザリウム属菌(図2)、アグロバ クテリウム属菌等の分子分類学的解析を進めた。動物遺伝資源に関しては計1,225点の特性 調査を実施した。とくにカイコ遺伝資源の特性評価が順調に進み、繭色の波長スキャン調査 や繭糸断面画像も得ることができ、配付可能(アクティブ)な遺伝資源が増加した。 3.育種素材化において、公募による13課題を委託で実施した。コア・コレクションの整備の ため、日本産カンキツ、Aゲノム野生イネ、ツルアズキ、ソルガム栽培種の4課題を実施した。 4.平成19年度の遺伝資源の保存点数は、植物243,463点、微生物24,982点、動物が953点となっ た。クワ冬芽200点を超低温保存するとともに、イグサ42系統を供試し、培養茎頂を同一手 法(ガラス化法)によって超低温保存できること(平均生存率63%)を実証した。 5.遺伝資源管理のためのプログラムの開発・改良を進めてきめ細かい管理を図り、とくに、 植物防疫法などの各種規制に対応して管理するためのスキーマを開発した。また、遺伝資源 の情報をユーザである研究者が使いやすくするため、植物収集地点検索システムを開発・公 開した。 自己評価 評価ランク 中課題 A A (7) コメント 遺伝資源の収集、評価、増殖、保存、配布については中期計画通 り進められている。今後、リソースを活用したジーンバンクにふさ わしい仕事を進めることを期待する。また、新しい分野への取り組 みについて、ジーンバンクの中でサイエンスとして進める領域を発 掘する必要がある。 - 52 - 図1.アズキおよびケツルアズキの連鎖地図と用いた SSR マーカーの情報はジーンバ ンクのホームページから公開した. (https://www.gene.affrc.go.jp/databeses-marker_information_en.php) 図2.日本産フザリウム属菌の代表的 32 菌種について、保存菌株の再同定や分類学 的評価に資するためヒストン H3 領域を解析し基礎データのセットを作成し,さらに 最も配布実績のある F. oxysporum に関して生物研センターバンクが管理する(全 株)151 株ついてヒストン H3 領域を解析し、分類学的位置づけを点検。 - 53 - (8)放射線利用による新形質突然変異素材の開発 中期計画 ガンマ線及びイオンビーム照射等を利用して健康増進型の機能性成分や耐病性等の新用 途形質を有する突然変異体の効率的創出技術の開発と育種素材の育成を行う。また、イネ においては有用遺伝子の単離とその機能解明に向けたポストゲノム研究において、遺伝学 的及び育種的解析が可能な放射線突然変異体リソースの拡充整備を図るとともに、逆遺伝 学的スクリーニング法を開発する。 【研 究 資 源】研究員数:7.30人、ポスドク数:0.00人、研究資金:40.1百万円 【論文・特許等】原著論文:8、IF合計値:21.653、IF平均:2.71、特許:0、品種登録:2 (中課題実績) 1. glu1突然変異が、近傍に重複する遺伝子 GluB4/B5に生じた129.7kbの塩基欠失であること を明らかにした。 Lgc1突然変異体も同一領域に生じた3.5kbの欠失が原因であるが(Kusaba et al. 2003)、両突然変異体は全く異なる表現型と優劣性を示し、誘発される欠失サイズ と位置の違いが、突然変異の表現型に大きく影響することを示した(図1)。イネ遺伝子の 14%は重複し、タンデムに存在することから、このような遺伝子の変異誘発や機能解析のた めのノックアウト個体作成にガンマ線照射が有効であることを立証した。 2.「コシヒカリ」へのガンマ線照射で作出したグロブリン欠損突然変異体「GbN-1」は低蛋 白米品種「エルジーシー潤」と「エルジーシー活」の親系統となり、その有用性が証明さ れているが、この突然変異体はαグロブリン遺伝子を含む領域に約63kbの欠失が生じてい ることを明らかにした。さらに、判別可能なPCRマーカーを作成し、F2 個体において、遺伝 子型と表現型が完全に一致することを確認した。また、Lgc1突然変異についても同様にPCR マーカーを作成し、「GbN-1」と「LGC1」を同時に交配親に用いた新たな低グルテリン・α グロブリン欠失品種の育成に有効な共優性マーカーが作成され、今後、品種育成や品種鑑 定において実用性の高い技術が構築できた。 3.「コシヒカリ」アミロース突然変異系統/「コシヒカリ」の交配後代F3からアミロースラ イブラリー(NILs)を育成した。また、「コシヒカリ」、「ひとめぼれ」、「ヒノヒカリ」及 び「あきたこまち」の突然変異集団から低アミロース突然変異体候補の一次選抜を行った (表1)。 4.サイレントミューテーションの探索について、昨年度に検出した「日本晴」由来のGluA3 遺伝子のサイレントミューテーションを「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」に導入するため に交配を行い、F1種子を得た。 5.イネ植物体へのガンマ線緩照射M3系統における葉緑素変異の突然変異率は9.2%であり、 種子にガンマ線250Gyを急照射した突然変異率(6.4%)よりも変異率が高いことを明らかに した。 6.ソバにおいて、高ルチン成分で選抜した「06E-1」のルチン含量は原品種の「牡丹そば」 の約3倍となり、さらに抗酸化能も向上した(表2)。また、抗酸化能で選抜した「06-E2」 の抗酸化能は「牡丹そば」の約1.5倍で「06E-1」よりも抗酸化能が高かった。さらなる選 抜によってより有望な個体も得られた。 7.チャにおいて、選抜系統「E2-03」の抗酸化能のあるメチルエピガロカテキン含量が「お くみどり」の約2倍、「E2-07」が同1.6倍であり、有望と考えられた。また、低カフェイン 有望系統「D6-05」が「やぶきた」よりも40%低くなっていることが確認された。 8.ソルガムにおいて、供試4品種でガンマ線感受性の差を明らかにした。また、ガンマ線照 射M2集団から bm (無ワックス)の個体や多数の早生系統が得られ、バイオマス原料用の育 種においてもガンマ線照射が有効であることが示唆された。 9.ばら(ひたちスマイル;第15714号)と(ひたちスマイル;第15714号)の登録 が完了した。 10.メンデルが遺伝解析に用いた緑色エンドウの遺伝子をイネのガンマ線突然変異体の中から 発見した成果をプレスリリースした。 自己評価 評価ランク 中課題 A A (8) コメント 突然変異の遺伝学から育種素材の育成まで幅広く取り組み、品種 を登録するなど、概ね中期目標計画通りに進捗している。また、メ ンデルが遺伝解析に用いた緑色エンドウ遺伝子をイネのガンマ線突 然変異体から発見した成果はPNASに掲載され、平成18年度に比べ成 果の公表に向けて改善がみられる。なお、放射線による突然変異の 作出については、放射線利用によって起こる変異をサイエンスとし て解明し、事前に放射線によって作り出せる変異体のスペクトラム を評価することが重要である。目的に沿った突然変異体の作出と選 抜法の開発といった放射線育種場の利点を活かした研究の推進が必 要である。 - 54 - glu1 GluB4 Lgc1 大 (129.8 kb) 表現型 glu1 Lgc1 GluB4 GluB5 小 (3.5 kb) 遺伝性の優劣 グルテリン酸性サブユニット GluB5 メカニズム 劣性 2つの遺伝子のノックアウト の1つが欠失する グルテリン量が全体的に低下する RNAiによるグルテリン遺伝子族 優性 の転写抑制 図 1 新たに遺伝解析を行った glu1突然変異と Lgc1 突然変異の比較:glu1と Lgc1 はどちらも GluB4/B5 に生 じた突然変異であるが、glu1 突然変異は 129.8kb、Lgc1 突然変異は 3.5kb の欠失である。glu1 突然変異は劣 性であり2つの遺伝子のノックアウトが原因である。Lgc1 突然変異は優性であり、RNA 干渉によりグルテリン 遺伝子族の転写抑制を誘発することでグルテリン量が全体的に低下する。図中の赤い部分は塩基欠失の位 置と大きさを示す。 表 1 コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリおよびあきたこまちへのガンマ線処理あるいは EMS 処理における選抜 個体数と得られたアミロース変異 原品種 ガンマ線線量 線量率 選抜個体数 選抜 du 数1 コシヒカリ 500Gy 250Gy/h×2hr コシヒカリ 500Gy 500Gy/h×1hr 4,558 7 コシヒカリ 250Gy 12.5Gy×20hr 1,924 2 コシヒカリ (EMS 処理) 0.1M(濃度) 2,880 5 ひとめぼれ 250Gy 12.5Gy×20hr 588 1 ひとめぼれ 250Gy 125Gy/h×2hr 4 ヒノヒカリ 250Gy 12.5Gy×20hr 1 あきたこまち 250Gy 12.5Gy×20hr 選抜 wx 数2 5 1,782 1 1 1 2 注 1:ダル変異;2:モチ性変異 表 2 選抜した普通ソバ有望系統の抗酸化能および機能性成分の含有量と元品種「牡丹そば」との比較 品種・系統 抗酸化能 (μ エピカテキン エピカテキンガレート ルチン mol-Trolox/gDW) (mg/100gDW) (mg/100gDW) (mg/100gDW) 06E-1 29.1 89.3 5.3 48.1 06E-2 30.3 100.4 6.7 21.5 牡丹そば 19.4 30.5 2.4 16.3 - 55 - B ゲノム情報と生体情報に基づく革新的農業生産技術の研究開発 中期目標 飛躍的に生産性を向上させる革新的農業技術の開発と生物機能を利用した新産業の創出 を支えるとともに、国内外における研究のイニシアチブを確保するためには基礎的・基盤 的研究の推進が重要である。 このため、これまでに蓄積してきたイネ等のゲノム情報解読の成果を活かして、植物、 昆虫、動物等各種生物の有する農業生産と密接に関連した機能を解明し、生物機能の高度 発揮に向けた基盤技術を開発する。 1)イネの環境適応機構の解明と利用技術の開発 中期目標 作物の生産性の飛躍的な向上を図るため、イネゲノムの各種リソースを活用し、作物の 環境適応機構や光合成等の基本反応の制御機構等を解明する。さらに、地球規模での温暖 化対策に貢献するため、作物の乾燥耐性の遺伝変異を解析する。 中期計画 作物の生産性の飛躍的な向上を図るためには、作物の環境適応機構を解明し、環境スト レスや病害に起因する作物の被害回避や光合成効率の改善等が必要である。そのため、こ れまで研究所が開発してきたイネゲノムの各種リソースを活用し、耐冷性や塩ストレス耐 性、耐病性に関与する遺伝子を単離・解析することにより、耐環境ストレスと耐病性の分 子機構を解明するとともに利用技術を開発する。また、光環境をより効率的に利用する技 術の開発を目指して、光合成等の基本反応の制御機構並びに光環境応答機構を解明する。 (大課題実績) 環境ストレスや病害に起因する作物の被害の回避、光合成効率の改善、光環境の有効利用等 により、最終的に作物の生産性を向上させることを目的とする。まずは、この目的を達成する ために必要な基礎知見の集積を図る。 ストレスと病害に関する研究は、主として、着目する形質に関わる遺伝子の単離と機能解析 から始め、その遺伝子の機能制御に関わるシグナル伝達を含めたシステムの全体像を明らかに していくという流れで進めており、その過程で得られる成果を利用し、着目する形質に対して 耐性のイネを開発するためのストラテジーを構築する。病害抵抗性に関しては、植物活性化剤 BTHの作用に主要な役割を果たすWRKY45が、複数の病害に対して極めて強い耐病性効果を発揮 したことから(2007年農林水産研究成果10大トピックス第1位)、本年度、実用利用へ 向けた研究に本格的に踏み出した。また、WRKY45の下流でサイトカイニンを介するシグナル伝 達が作用し抵抗性を発現するとともに、ABAを介するシグナル伝達がその上流に作用し、防御 応答を抑制することを明らかにした。さらに、いもち病ほ場抵抗性遺伝子 Pb1を単離し、その 抵抗性と発現特性を関連づけた。一方、環境ストレス耐性に関する研究では、耐塩性に寄与す る遺伝子が生育時期により大きく異なることを見出した。また、耐冷性に関与する過冷却安定 化物質を発見・同定するなどの成果が得られた。 光合成効率の向上を図るには、光合成の代謝ネットワークの中での律速を明らかにし、かつ 相互に連携する炭酸固定、転流、シンクでの蓄積を包括的に理解することが必要である。本年 度は、イネ科C3植物の維管束鞘細胞が、光合成能の高いC4植物に類似して、光合成・光呼吸活 性を保有していることを明らかにするとともに、千粒重を高めるQTL遺伝子を同定する等、研 究が進んだ。光は植物のもつ機能のすべてに影響を及ぼすことから、基礎知見としての重要性 が大きい。本年度は、複数の光受容体のそれぞれの機能及びイネの開花ネットワークを明らか にする中で、phyCの機能発現にはphyBとのヘテロ二量体形成が伴うことなどが明らかとなった。 今後は、バイオマスとの関連をより強く意識して研究を進める必要がある。 - 56 - 自己評価 大課題 B・1) 評価ランク コメント A どの課題も複雑な系を対象としているが、それぞれでの進展が見 られ、その成果を積極的に論文として公表していることは評価でき る。特に、2007年農水10大成果トピックスの1位に選ばれた 耐病性に関する遺伝子WRKY45を中心に、実用化に向けた研究と、そ の基盤をなす基礎的解析を進めたことは、特筆に値する。また、圃 場抵抗性を付与する遺伝子の同定を達成し、その解析から、WRKY45 との関係も見えてきた。今後とも農業形質に重要な遺伝子の解析を 進めていく。 前年度の 分科会 評価 A 穂発芽耐性遺伝子の単離などはイネおよびイネ科作物の育種に大き な波及効果のある成果である。また、イネの花芽形成関連遺伝子ネッ トワークを明らかにしていることは評価できる。圃場抵抗性Pb1遺 伝子の同定や、転写因子OsWRKY45のイネにおける発現により、高い いもち病抵抗性および白葉枯病抵抗性を付与したことも重要な知見 である。新規の植物の開発に向けて着実に成果をあげており、順調 に進んでいる。引き続き、重要な遺伝子の機能解析を推進すること が重要である。 - 57 - (1)イネの耐環境ストレス機構の解明と利用技術の開発 中期計画 これまでに見いだされてきた複数の穂ばらみ期耐冷性QTLの候補遺伝子をマップベー スクローニング法により同定し、準同質遺伝子系統との比較や発現解析等により、遺伝子 の単離と機能解明を行い、穂ばらみ期耐冷性の分子機構を解明する。酵母発現系やイネ完 全長cDNA過剰発現系統(FOX系統、ミュータントパネルを用いて) イオン輸送体 遺伝子や浸透圧調節機能を有する適合物質の合成に関与する遺伝子を単離し、塩ストレス 耐性の分子機構を解明するとともに、利用技術の開発を行う。これまでに見いだされてき た穂発芽性関連QTLのうち、作用力の大きい穂発芽耐性遺伝子を単離・機能解析すると ともに、易穂発芽変異系統の解析による種子休眠関連遺伝子の単離・機能解析を行い、穂 発芽耐性(種子休眠)に係わるネットワークを解明する。また、作物の乾燥に対する耐性 の遺伝変異を探索し、染色体領域を特定する。 【研 究 資 源】研究員数:3.80人、ポスドク数:0.50人、研究資金:28.3百万円 【論文・特許等】原著論文:8、IF合計値:20.356、IF平均:2.54、 特許:9(出願:0、登録:9) (中課題実績) 1.酵母において塩感受性を相補したイネK +チャネル遺伝子及びABCトランスポーター遺伝子 に関して形質転換イネを作製し解析した結果、これらの遺伝子はイネでは耐塩性機構の律速 段階を担ってはいないと考えられた。FOX系統の耐塩性調査を進めた結果、生育初期段階で の選抜により転写調節因子や糖輸送体をコードする遺伝子など20種以上を、生長期における 選抜によりタンパク質リン酸化酵素や酸化還元酵素をコードする遺伝子7種を候補遺伝子と して得た。クロライドチャンネル遺伝子 OsCLC-1、 -2の変異体を用いた形態観察から、カス パリー線形成への関与が示唆された。また、イネ CLC遺伝子を新たに3種見出し、それらが チャンネルとして機能することを確認した。 2.昨年度同定した穂発芽耐性遺伝子Sdr4の機能解析の一環として組織特異的発現について解 析し、胚と胚乳で強く発現すること、さらに in situ hybridizationにより登熟7日目の種 子の根と葉の原基での発現を確認した(図1A、B)。また、遺伝学的解析から、 Sdr4 はABA シグナルの下流で、発芽抑制的に機能すると考えられた(図1C)。 Sdr1 については、表現 形質を温室内で再現する条件を見出すことに成功し、相補試験を開始した。 3.IR64とKinandang Patongの交雑後代を用いて全長1,237cM、マーカー間の平均距離16.7cM の連鎖地図を作製した。耐乾性の指標である葉巻抵抗性について幼苗期に検定を行い、第2 染色体と第9染色体にQTLを検出した(図2)。両QTLともに既報の葉巻抵抗性QTLの近傍に存 在しており、ほ場レベルでも利用できる可能性がえられた。 4.バラ科果樹花芽の凍結挙動を可視化解析した結果、小花の凍結挙動が種により著しく異な ること、小花の氷核活性が重要な支配要因であることが分かった。氷晶制御物質については、 低温誘導性分泌型不凍活性及び抗氷核活性の精製を進め、後者については、氷核活性物質に 対して濃度依存的に強い抑制効果を示す画分の低分子物質2種の同定に成功した。また、植 物内生の氷核活性の存在を示す強い証拠を得るとともに、この活性がタンパク質濃度及び糖 質濃度依存的であることを明らかにした(図3)。 自己評価 評価ランク 中課題 B・1) B (1) コメント 穂発芽耐性遺伝子の機能解析を行い種子休眠の機構が解明されて きた点など、外部評価委員による評価は「順調に進んでいる」との 意見が多かったが、環境ストレス耐性に直接関わる顕著な成果がな く、目標の達成は中期計画を下回っていることから、全体として進 捗がやや遅れていると判断しB評価とした。耐環境ストレス研究ユ ニットの柱となるテーマ及び材料の検討が不十分であり、戦略の見 直しを視野に入れた検討が必要である。所内外における適任者不在 で空席が続いたが、20年3月に着任したユニット長の指導力の下、 今後の取り組みに期待する。 - 58 - 図1.Sdr4 の発現部位と発現制御 (A) 組織特異的発現解析、(B) in situ hybridization、(C) Sdr4 の発現制御に関するモデル。 OSR9A(8.1%) Chr. 1 2 RM242(12.1%) 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 図2. 幼苗期の葉巻抵抗性に関与する QTL 図の下の数字は染色体番号。上図の赤線は LOD カーブを、下図の赤線は相加効 果を表す。 図3. 可溶化した氷核活性画分の活性のタンパク質濃度依存性 (A) タンパク質濃度依存性、(B) 糖濃度依存性。 - 59 - (2)イネの光環境応答の解明と利用技術の開発 中期計画 ソース能向上に向けて、光合成を含む基本代謝ネットワークの制御機構を明らかにする。 シンク能関連の遺伝子群を同定し、収量性改良の方策を示す。光受容関連突然変異体の単 離・解析並びに構造生物学的解析を通じて光受容体の機能を明らかにする。植物ホルモン 代謝・信号伝達の調節機構の解析を進め、光形態形成との関連を解明する。光周性花芽形 成においては、重要遺伝子の機能解析を中心に進め、光信号の作用点を同定し、長日植物 の分子機構との相違点を解明する。これらを踏まえながら、基本農業形質に光環境が及ぼ す影響を精査し、その利用技術の開発を図る。 【研 究 資 源】研究員数:13.50人、ポスドク数:8.50人、研究資金:106.6百万円 【論文・特許等】原著論文:15、IF合計値:37.582、IF平均:2.51、 特許:4(出願:2、登録:2) (中課題実績) 1.イネを高CO 2濃度で育てると生長後期に光合成能が低下するが、その時期の遺伝子発現パ ターンを網羅的に調べるとカルビン回路のRuBP再生系、デンプン合成系、アミノ酸合成系に 関与する酵素遺伝子の発現が誘導されることが確認された。 2.イネ属植物全体としては、光合成速度と葉内へのCO2取り込みの指標である気孔拡散伝導 度との間には、正の相関があることが明らかとなった。 3.イネ科C3植物の維管束鞘細胞は、かなりの量の葉緑体やミトコンドリアを含んでおり、予 想以上に光合成・光呼吸活性を保有していることが分かった。 4.コシヒカリの第5染色体の一部にカサラスの染色体断片が導入されたS1系統では、登熟後 もデンプンが第1節間に蓄積して茎の強度が増すために耐倒伏性が向上すると推測された (図1)。 5.カサラスに由来しコシヒカリの千粒重を高めるQTL(tgw6)の原因遺伝子を一つに絞り込ん だ。 6.イネゲノムに2コピー存在する青色光受容体フォトトロピン1遺伝子(PHOT1a, PHOT1b) の二重変異体を単離・解析して、フォトトロピン1が幼葉鞘の光屈性に関与していることを 証明した(図2)。 7.イネのphyB変異体を用いた解析によって、phyBからの光シグナルがMgキラターゼ遺伝子な どの発現制御を介してクロロフィル合成を制御している可能性が示された。 8.イネのphyCは、phyBと複合体を形成して機能を発現することを証明した。 9.転写因子OsGLK1を過剰発現させて緑化したカルスは、光合成能を有する葉緑体を持ち独立 栄養的に増殖できることを明らかにした(図3)。 10.光照射後短時間で発現が誘導される遺伝子として同定したFR29遺伝子は、ジャスモン酸シ グナル伝達系で中心的な役割を果たしている因子と推定された。FR29遺伝子を過剰発現させ たイネは稈・根の伸長促進や種子胚乳の肥大を示し、それは細胞分裂の促進に起因している ことを証明した。 11.OsGIは、概日時計因子であると同時にHd1を介さずにHd3aに作用して開花を促進する機能 も持つことを明らかにした。 12.シロイヌナズナの概日時計因子、CK2αのオーソログと考えられるHd6がイネの概日時計の 機能に関与しないのは、シロイヌナズナでは概日時計を構成するCCA1の活性がCK2αによる リン酸化によって制御されているのに対して、イネではCCA1のオーソログOsLHYがアミノ酸 置換によってリン酸化されなくなっているためであることを明らかにした。 自己評価 評価ランク 中課題 B・1) A (2) コメント 全体としては中期計画に対して概ね順調に進んでいる。イネの光 合成能力や光シグナルに関する成果、光合成活性の維持及び過剰な 炭水化物の蓄積が耐倒伏性に関与するなど、研究成果が上がってい る。イネの生産性において光受容体をどう調節すれば、実用化につ ながるかについて戦略を立てる必要がある。 - 60 - 図1 S1 では第 1 葉の光合成活性 が収穫時期にも維持され、生 産された過剰な炭水化物が 蓄積することにより、茎の強 度が高まる。その結果、倒伏 の原因となる茎の折れ曲が りが発生せず、耐倒伏性が向 上すると考えられた。 図2 フォトトロピン1の機能を 失った phot1a phot1b 二重 変異体は、幼葉鞘の光屈性を 示さなかった。 図3 左:GLK1 遺伝子の過剰発現 体カルス(AQ109)は、光の 下ではスクロース無添加の 培地でも増殖した(独立栄養 性) 。 右:GLK1 カルス(AQ109, #1, #5)は、クロロフィルを持ち、 光合成能を示した。 - 61 - (3)イネの耐病性機構の解明と利用技術の開発 中期計画 実用的ないもち病抵抗性の例として注目されているほ場抵抗性の原因遺伝子を単離し、 抵抗性の分子機構解明を目指す。また、ミュータントパネルやFOX系統から耐病性変異 体を選抜し、その原因遺伝子を単離・解析して耐病性発現の遺伝子ネットワークを解明す る。抵抗性誘導剤によって植物の耐病性機構が活性化される誘導抵抗性に関して、遺伝子 機能の利用によりさらに有効な病害防除法を開発するため、シグナル伝達経路と遺伝子発 現調節機構を解明する。 【研 究 資 源】研究員数:7.95人、ポスドク数:6.00人、研究資金:135.7百万円 【論文・特許等】原著論文:14、IF合計値:73.473、IF平均:5.25、 特許:12(出願:7、登録:5) (中課題実績) 1.いもち病ほ場抵抗性遺伝子 Pb1 の相補実験により遺伝子単離を完了し、真性抵抗性遺伝子 と同様の構造の原因遺伝子を決定するとともに、その発現特性を抵抗性の特性と関連づけた。 これにより、マーカー育種によるPb1の利用が効率化されるとともに、Pb1によるいもち病抵 抗性の分子機構解明が可能になった。 2.ミュータント・パネルからの非親和性いもち病抵抗性に関する変異系統の選抜を終了し、 病害応答シグナル伝達に関わる新規因子と推測される原因遺伝子の単離へと進めた。 3.ミュータント・パネルから、非常に強い抵抗性を示す新規劣性抵抗性系統を2系統選抜し、 遺伝子単離及び実用利用へ向けて交配を進めた。 4.イネ-ナズナFOX系統から病害抵抗性及びサリチル酸高感受性による選抜をほぼ終了して 多数の原因遺伝子を特定し、遺伝子発現解析やイネへの導入による機能解析を進めた。単離 した遺伝子の一部は、WRKY45が関わる抵抗性(下記8)との関連が推測された。 5.ミュータント・パネル等に由来するいもち病抵抗性を示す2系統の疑似病班変異系統の原 因遺伝子候補を特定した。 6.ミュータント・パネルから選抜した遺伝子の解析から、抵抗性シグナル伝達を負に制御す るPDK1-Pip1−Ospti1aからなるリン酸化カスケードを明らかにした。病害防御応答の負の 制御の生物学的意義の解明が期待される。 7.ミュータント・パネルから選抜した遺伝子の解析から、防御応答シグナル伝達において、 MAPキナーゼカスケードの下流でファイトアレキシン等の遺伝子が制御されていることを明 らかにした。 8.抵抗性誘導剤の作用に必須の転写因子WRKY45及びOsNPR1にそれぞれ制御されている各数百 種の遺伝子を同定し、それらが実行する抵抗性反応を推定した。WRKY45によるプライミング 効果にWRKY45の下流に作用するサイトカイニンを介するシグナル伝達が重要であることが示 唆された(図1)。ABAシグナル伝達がWRKY45の上流に作用して防御応答を抑制することが 見出された(図1)。これらは強力な複合抵抗性を与えるWRKY45の実用利用研究を進める上 で考慮すべき重要な知見である。 自己評価 評価ランク 中課題 B・1) S (3) コメント イネでいもち病など複数の病害に強い防御機能を発揮する遺伝子 (WRKY45)の世界で初めてとなる発見に引き続く、実用化も視野に 入れた研究成果は高く評価できる。WRKY45遺伝子による病害抵抗性 は、従来の高度抵抗性品種に見られたように、病原菌の突然変異に よって抵抗性が失われる可能性は低く、安定した病害抵抗性品種育 成への利用が期待される。また、WRKY45遺伝子の機能は、コムギの ようなイネ以外のイネ科作物にも広く利用が期待され、食料、飼料、 バイオマス用等の様々な作物の農薬依存度を大幅に減少させること が可能になり、これら作物の安定生産と環境負荷の少ない栽培に病 害防除の面から大きく貢献できると期待される。実用化に向けては WRKY45の働きについてさらに調べる必要がある。この成果は、2007 年農林水産研究成果10大トピックスの第1位にも選ばれた。 このように、中期計画を上回る成果が上がっていることからSと 評価とした。 - 62 - 図1 イネの誘導抵抗性に関わるシグナル伝達の相互作用のモデル イネの誘導抵抗性に関わるサリチル酸(SA)シグナル伝達経路において、 WRKY45及びOsNPR1が主要な役割を果たしている。WRKY45による抵抗性の プライミングにおけるサイトカニン・シグナルの役割が示唆された。 また、ABAシグナルがSAシグナル伝達を抑制することが見出された。 - 63 - 2)昆虫の環境適応機構の解明と制御技術の開発 中期目標 カイコのゲノム情報や生体情報を利用し、昆虫の発生分化・行動や生体防御機構を解明 する。 中期計画 昆虫のゲノム情報や生体情報を活用して昆虫の発育や発生分化・行動等の支配遺伝子、 乾燥耐性と生体防御関連遺伝子・タンパク質等を特定し、それらの機能を解明する。新た に得られた遺伝子・タンパク質情報を活用することにより、昆虫制御剤標的分子を探索し、 薬剤スクリーニング技術を開発する。また細胞の乾燥保存技術や抗微生物タンパク質の利 用技術を開発する。 (大課題実績) 昆虫のゲノム情報や生体情報を活用して昆虫の発育や発生分化・行動等を支配する遺伝子、 乾燥耐性や生体防御関連遺伝子・タンパク質の特定と機能解析が目標で、カイコゲノム情報の 有効利用がこの課題における推進のキーになっている。 今年度、進展が著しかったのは、幼若ホルモン(JH)の活性の発現に関わる遺伝子の網羅的な 単離と発現動態、機能の解析であった。その結果、未同定の後期JH合成酵素の候補である短鎖 デヒロゲナーゼ遺伝子の配列を抽出し、アラタ体で強く発現する遺伝子数個を得た。また、チャ バネアオカメムシのアラタ体生産物からこれまでまったく報告がない新規のJHを同定した。乾 燥耐性機構の解明に関しては、クリプトビオシス関連遺伝子、乾燥耐性関連因子LEAタンパク 質などについて発現誘導特性や局在性を明らかにするなど着実に進展した。昆虫の生体防御物 質、特に、カイコ抗ウイルスタンパク質(BmAVP)については、阻害特性を明らかにするなど、 研究が順調に進展した。また、昆虫由来抗菌性ペプチドを改変した改変D型ペプチドBの抗ガン 作用について新たな知見が得られた。 - 64 - 自己評価 大課題 B・2) 評価ランク コメント A 幼若ホルモン(JH)合成酵素の同定等、昆虫の特性に関与する物 質のゲノム解析や機能解析の研究で進展がある。今後、昆虫制御剤 の開発という目標に向かって発育制御剤特に幼若ホルモン代謝系の 解明における成果を積極的に発信し、企業との連携構築を進める。 前年度の 分科会 評価 A ゲノム情報を利用した、幼若ホルモン生合成酵素遺伝子のクローニ ングなどに成果があがっている。乾燥耐性関連遺伝子の研究はユ ニークであり、拡張型トレハローストランスポーターの単離に成功 したことは評価できる。また、抗微生物ペプチドの殺菌活性を増強 するペプチドNP4Pを発見した。カイコを材料にした研究を中心に 様々な昆虫の興味深い研究が展開されており、個別には順調に進ん でいると評価できるものの、環境適応機構の解明と昆虫の制御技術 の開発という研究目標の達成に向けた成果を多くあげることを期待 する。 - 65 - (1)昆虫制御剤標的遺伝子の探索と利用技術の開発 中期計画 昆虫等のゲノム情報を活用し、幼若ホルモン、エクダイソン等の昆虫ホルモンの生合成 や受容・シグナル伝達、生殖・発生及び行動制御、相変異に係わる遺伝子を探索・単離し、 その機能を解明する。単離した遺伝子を標的とした昆虫制御剤の合理的開発に必要な分子 情報を取得しスクリーニング技術を開発する。 【研 究 資 源】研究員数:16.00人、ポスドク数:5.00人、研究資金:108.2百万円 【論文・特許等】原著論文:26、IF合計値:74.306、IF平均:2.86、 特許:2(出願:0、登録:2) (中課題実績) 1.カイコの幼若ホルモン(JH)合成器官であるアラタ体から完全長cDNAライブラリを作製し、 完全長ESTデータベースを作成するとともに、カイコゲノム塩基配列情報から、未同定後期 JH合成酵素の候補である短鎖デヒドロゲナーゼ(SDR: short chain dehydrogenase) 遺伝子 の配列を抽出し、その中からアラタ体で強く発現する遺伝子を半定量PCRにより探索し、数 個のSDR遺伝子を得た。また、ゲノム情報をもとにカイコのシトクロームP450 の網羅的解析 を行って87個のP450を同定し、32個の完全長cDNA配列をデータベースに登録した(図B21_ P450)。さらに、これまで未知だったカメムシ類のJHについて、チャバネアオカメムシのア ラタ体生産物の質量分析と、その結果から予想される構造を持つ化合物を合成・比較するこ とにより、新規JHを同定した。 2.カイコ幼虫の味覚器官である小腮粒状体のESTからクローニングした5種類の匂い物質結 合タンパク質(OBP)類似遺伝子は、これまで報告された鱗翅目昆虫のOBPとは異なる分子系 統関係にあり、他の味覚器官である上唇でも発現することを明らかにした。また、カイコの 新規ドーパミン受容体であるD2-like(cAMP抑制型)受容体BmDopR3を同定した。さらに、す でにD1-like(cAMP促進型)受容体と同定したBmDopR1、BmDopR2と合わせて種々の薬剤に対 する応答を調べたところ、哺乳類の受容体とは薬理学的性質が異なり、昆虫特異的な制御剤 標的となりうることがわかった。 3.発生に関わる遺伝子の探索・単離では、カブラハバチの卵減数分裂後の核分裂において、 Mosタンパク質がMEK-MAPK経路の上流で通常細胞分裂抑制因子として機能し、分裂を中期で 停止させることを明らかにした。また、ヤマトヒメミミズのグルタミン合成酵素は、再生(特 に神経系の形成)、神経機能、細胞増殖、窒素老廃物の排出、高分子合成、及び生殖細胞形 成に関与していることが示唆された(図B21_ヤマトヒメミミズ)。 自己評価 評価ランク 中課題 B・2) A (1) コメント カイコのゲノム情報を活用することにより、カイコの幼若ホルモ ン合成酵素遺伝子の同定、匂い物質結合タンパク質類似遺伝子の同 定など成果が上がっている。また、カメムシ類の幼若ホルモンを世 界で初めて同定した成果も評価できる。このようにカイコ幼若ホル モンの研究は相当深まってきたので、次期中期計画に向けてどう発 展させるか検討する必要がある。 - 66 - 図B21_P450.カイコのシトクロームP450の網羅的解析:種を超えて保存 されているP450の一群 図B21_ヤマトヒメミミズ.ヤマトヒメミミズのグルタミン合成酵素遺伝子の 正常期及び再生期における発現パターン - 67 - (2)昆虫の乾燥耐性機構の解明と利用技術の開発 中期計画 ネムリユスリカの乾燥耐性の分子機構を解明するため、乾燥耐性関連遺伝子の単離と機 能解明、乾燥ストレス応答機構、乾燥休眠誘導及び覚醒に伴うトレハロース代謝の調節機 構の解明を行う。これらの分子機構を応用し他種生物の細胞に乾燥耐性を付加する技術を 開発する。 【研 究 資 源】研究員数:3.00人、ポスドク数:6.00人、研究資金:64.5百万円 【論文・特許等】原著論文:5、IF合計値:27.829、IF平均:5.57、特許:0 (中課題実績) 1.昨年度ネムリユスリカから単離した PvTret1(トレハローストランスポーター遺伝子)を 哺乳類細胞に導入し、浸透圧及び凍結耐性を付与することができた。 PvTret1の論文が米国 科学アカデミー紀要に掲載されたことと、その論文がScience 誌でも紹介されたことにより PvTret1プラスミッドの請求依頼が国内外から多数あった。その結果、臓器の乾燥及び冷凍 保存を研究するチーム(ハーバード大学医学部、ジョージア大学医学部)、乾燥及び寒冷耐 性作物(北海道農業研究センター、コーネル大学)や花き(花き研究所)の作出をしている 研究グループとの共同研究関係が構築できた。 2.クリプトビオシス誘導因子として、塩や高浸透圧ストレスに加えて活性酸素の重要性を明 らかにした。 3.これまでに同定した4種類のLEAタンパク質の抗体を用いたパラフィン切片による免疫組 織学的解析により、各LEAタンパク質の組織特異的な局在性を観察することができた。 4.クリプトビオシス誘導過程でDNAの一本鎖切断が生じていること、そして再水和後の蘇生 過程で損傷したDNAを修正していることが明らかとなった。この成果は新規性が高く早急に まとめて論文化する必要がある。 5.乾燥過程のネムリユスリカ幼虫及びネムリユスリカ胚子由来細胞で発現しているタンパク 質の網羅的解析を行い、それらをデータベース化した。 6.新規のLEA様タンパク質(PvLEA5)の同定に成功した。 7.マラウィ大学と共同研究協定(MOU)を結び、ネムリユスリカのマラウィとナイジェリア 個体群とを比較しながら系統進化の解析を行った。その結果、ミトコンドリアDNAに進化の 過程で乾燥ストレスによってもたらされたと思われるクリプトビオシス特異的な配列が確認 されるなど興味深い結果を得た。 8.東京工業大学との共同研究によりクリプトビオシスにおけるガラス化の重要性を動物で初 めて証明し、その論文は米国科学アカデミー紀要に受理された。データの一部を紹介する (図)。 自己評価 評価ランク 中課題 B・2) A (2) コメント ネムリユスリカの乾燥耐性獲得に働くトレハロースの機能解明に 取り組むユニークな研究であり、トレハローストランスポーター遺 伝子を同定するなど成果を上げている。中期計画通り順調に進捗し ている。トレハローストランスポーターの他分野での利用について 積極的に進める必要がある。 - 68 - 図 ネムリユスリカ幼虫を異なる乾燥速度で乾燥させた時の生体成分(トレハロース、 タンパク質、脂質)の体内蓄積とそれらの分布の違い A:トレハロース、タンパク質、TG(中性脂質)の体内蓄積、 B:顕微FT-IR解析によるトレハロースとタンパク質の幼虫体内分布、 Slow:48時間かけてゆっくり乾燥させた幼虫、 Quick:数時間で急速乾燥させた幼虫。 ゆっくりと乾燥させた幼虫は、再水和後、皆蘇生した。その背景には充分な量のトレハロース を合成蓄積とその均一な体内分布が確認された。一方、急速に乾燥させた幼虫にトレハ ロースの蓄積はなく、再水和後にすべてが死亡した。顕微FT-IRにより、クリプトビオシス生 物の体内のトレハロース局在を動物で初めて視覚化に成功した。 - 69 - (3)昆虫の生体防御機構の解明と利用技術の開発 中期計画 昆虫の抗菌性タンパク質を基に改変した合成オリゴペプチドの薬剤耐性病原細菌及び病 原原虫に対する生理作用や感染増殖阻止効果を解明する。昆虫の抗ウイルスタンパク質を 分離・同定し、その生理機能を明らかにするとともに、生体防御における役割を解明する。 昆虫抗微生物タンパク質遺伝子の微生物感染による発現誘導についてシグナル伝達に関与 する因子を中心にその機能を調べ、遺伝子活性化機構を解明する。 【研 究 資 源】研究員数:4.00人、ポスドク数:3.00人、研究資金:54.9百万円 【論文・特許等】原著論文:4、IF合計値:5.568、IF平均:1.39、 特許:3(出願:2、登録:1) (中課題実績) 1.昆虫抗微生物ペプチドであるディフェンシンの活性中心を改変し、D型アミノ酸を材料に 合成した4種のペプチド(9アミノ酸残基から成り、それぞれD型ペプチドA、B、C、Dと命 名)の各種ガン細胞に対する増殖抑制効果を調べた。用いた7種のガン細胞のうち、D型ペ プチドBがマウス骨髄腫細胞の増殖を強く抑制することが分かった(表1)。 2.D型ペプチドBはマウス骨髄腫細胞にどのように作用するのかを調べる目的で、LDH酵素の 漏出を指標として細胞膜への影響を検討した結果、ペプチド濃度が増すにつれ漏出度が高く なった。一方、それと反比例的に細胞の生存率が低下した(図1)。その結果はD型ペプチ ドBの作用点が細胞膜であることを示唆している。 3.D型ペプチドBの骨髄腫細胞への作用点が細胞膜にあることを直接証明するために、走査型 電子顕微鏡を用い、形態学的に検証した。その結果、D型ペプチドBは明らかな膜破壊を引き 起こすことが分かった(図2)。一方、マウス正常白血球はD型ペプチドBにより何ら影響を 受けないことが分かった。また、4種のD型ペプチドは赤血球に対し、高濃度の条件下でも 溶血活性をほとんど起こさないことから(表1)、D型ペプチドBはガン細胞に特異的に作用 することを示唆している。 4.一般的に臨床で用いられているガン治療薬は、ガン細胞と共に正常細胞にも作用するもの が多い。そのため、作用機構の異なる2腫の抗ガン剤を組み合わせて用い、相乗効果をねら う治療方法が一般的である。そこでD型ペプチドと臨床で使用されている抗ガン剤4腫のマ ウス骨髄腫細胞の増殖抑制に対する併用効果を調べた結果、副腎皮質ホルモン剤のデキサメ タゾンと強い相乗効果を示すことが明らかとなった。 自己評価 評価ランク 中課題 B・2) A (3) コメント 昆虫のディフェンシン改変D型ペプチドのガン細胞に対する増殖 抑制効果及び骨髄腫細胞を破壊する機能の発見など成果を上げてお り、中期計画通り順調に進展している。なお、成果の実用化に向け ては、企業との戦略的な共同研究や連携を図る必要がある。 - 70 - 表1.改変ペプチド のガン細胞に対する増殖抑制効果 IC50 (µM) NIH-3T3 繊維芽細胞 HeLa Cos-1 子宮頸癌 P3-X63RERF- ペプチド濃度 VA-13 Ag8.653 U-251 LC-AI 320 µM での 肺癌 腎臓癌 骨髄腫 神経膠腫 扁平 上皮癌 溶血活性 (%) D型ペプチド A 290 216 >640 >640 96 589 590 4 D型ペプチド B 159 181 541 >640 35 439 401 3 D型ペプチド C 514 432 >640 >640 132 >640 >640 3 D型ペプチド D 170 137 382 >640 50 458 437 3 IC50 = 50%抑制濃度 ( 細 胞 系 : マ ウ ス 骨 髄 腫 P3-X63-Ag8.653) 60 120 100 50 80 40 60 30 40 20 20 10 0 LD H 放 出 (対 照 比% ) 細 胞 生 存 率(対 照 比% ) 対 照 ペプ チ ド (細 胞 生 存 率 ) 対 照 ペプ チ ド (LDH 放 出 ) D型 ペプ チド B (細 胞 生 存 率 ) D型 ペプ チド B (LDH 放 出 ) 0 0 10 20 40 80 160 320 640 ペ プ チ ド濃 度 (µ M) 図 1.D型 ペ プ チ ドB の 抗 骨 髄 腫 活 性 マウス 骨髄腫 P3-X63-Ag8.653 無処理 D-pepB 80µM 対照 80µM マウス 骨髄 由来白血球 マウス ひ臓 由来白血球 無処理 無処理 D-pepB 80µM 対照 80µM D-pepB 80µM 対照 80µM 図2.D型ペプチドB の骨髄腫細胞膜構造に対する影響 - 71 - 3)家畜の発生分化・行動の生体制御機構の解明 中期目標 ブタ等のゲノム情報と生体情報を用い、生殖細胞の分化機構や着床制御機構を解明し、 生殖制御技術の高度化を図る。また、摂食・繁殖等、家畜の本能行動制御機構を解明する。 中期計画 家畜のゲノムリソースやゲノム情報を活用して、生殖細胞の分化、成熟や減数分裂の制 御機構及び幹細胞の増殖・分化制御機構を解明し、新たな家畜生殖技術等の開発につなげ る。また、胎盤機能、母胎間相互作用の制御技術を開発して受胎率向上に貢献する。家畜 の生産性に影響を及ぼす摂食、生殖行動等の本能行動における脳内生理機能に対するフェ ロモン等の外的環境要因の作用機構を解析し、本能行動制御機構を解明する。 (大課題実績) 生殖・繁殖制御技術の高度化を目的に、主に基礎的な研究を実施している。特に、発生分化 に関する因子と機構の解明系においては、近年の畜産現場における牛の受胎率の低下への対応 や体細胞クローン作出技術のブレークスルーのためには、生殖機構に関わる基礎的知見が不十 分であり、基礎的な研究が重要であることが再認識されている。そこで、幹細胞の生殖細胞等 への分化、生殖細胞の減数分裂や成熟及び着床胎盤の一連の発生分化制御機構の解明を、ユニッ ト内のグループで分担して実施することにより、雄生殖細胞の減数分裂関連遺伝子(Hap-2) の調節機構の解明、ブタ原始卵胞卵母細胞への胚発生能の付与、着床に向けた栄養膜細胞の分 化誘導などほぼ順調に成果を上げている。さらに、上記の中期計画の内容に加え、家畜幹細胞 の樹立・培養技術及び家畜幹細胞からの配偶子生産等に関する生殖工学技術を確立することに より、生殖系列を個体から切り離した全く新しい家畜改良・繁殖技術の開発を、グループ横断 的に実施することとし、今年度にウシES(様)細胞株を2株樹立するとともに、精原幹細胞樹立 のため精原細胞の濃縮法の確立などに成功した。 本能行動の制御要因の解明系においては、本能行動を司る視床下部-大脳辺縁系の機能とそ の発現に関与する因子の作用機構を解析し、家畜の本能行動に基づく新たな管理技術の開発に 資する。少ない研究勢力を効率的に活かすため、各研究テーマとも、複数の研究機関との共同 研究により推進している。例えば、今年度に、繁殖機能制御を司る最上位の中枢神経がメタス チンニューロンであることを示すデータが得られた研究テーマでは、武田薬品との共同研究や 生研センタープロジェクトにより実施し、基礎から応用に向けた研究に取り組み成果をあげて いる。ウシの大きな損耗要因となるストレスについて反応抑制機構の解明や、成長ホルモン(日 本では体外からの投与は不認可)によるウシの増体や泌乳量増加などの生産性向上を目指した 光環境による成長ホルモン分泌制御の研究も、成長ホルモンの分泌動態と明暗環境の変化との 関係が初めて明らかにされ、順調に進捗している。 - 72 - 自己評価 大課題 B・3) 評価ランク コメント A ES細胞の分化制御機構の研究が進展し、また胚発生能の付与技術 の開発など家畜の繁殖に係わる研究が着実に行われている。また、 本能行動の制御要因の解明分野おいては、メタスチンニューロンが 繁殖機能制御を司る最上位の中枢神経と予想され、研究を重点化し て進めていることが評価できる。一方、やや研究目標が整理されて いない課題も見受けられるので、最終ゴールの明確化をさらに進め ることを期待する。 前年度の 分科会 評価 A ほ乳動物の生殖細胞における遺伝子発現に関する研究、家畜の環境 反応を制御する因子の解明などに着実に成果があがっている。基礎 的研究として優れており、順調に進展していると評価する。課題に よってはテーマの重点化や成果の活用場面の検討なども考慮するこ とを期待する。 - 73 - (1)発生分化に関する因子と機構の解明 中期計画 ほ乳動物の配偶子を形成する生殖細胞や多分化能を維持した幹細胞の分化・増殖のダイ ナミクス、ゲノム情報等を用いた生殖細胞の分化・成熟・減数分裂の分子機構、並びに幹 細胞の分化制御機構を解明し、分化誘導技術を確立する。また、ウシ受胎産物のトランス クリプトーム解析により着床・胎盤形成機序とその機能を解明し、胎子生存率を向上させ る技術を開発する。 【 研 究 資 源 】研究員数:10.75人、ポスドク数:2.00人、研究資金:76.4百万円 【論文・特許等】原著論文:23、IF合計値:41.119、IF平均:1.79、 特許:1(出願:1、登録:0) (中課題実績) 1.雄生殖細胞で特異的発現するHspa2 (Hsp70-2) 遺伝子の発現調節機構の解析及び精子形成 異常を示す突然変異(FKBP6遺伝子欠損)ラットの解析により、減数分裂制御機構の解明を進 めている。 2.異種間移植及び発生工学技術を駆使し、ブタの未成熟な原始卵胞卵母細胞に受精能、初期 発生能付与する技術の開発に取り組んでいる。本年度は、成熟卵母細胞由来細胞質片の融合 させることにより、異種移植卵巣から得た原始卵胞卵母細胞の単為発生率及び胚の細胞数が 著しく改善することを明らかにし、本手法の応用性を示した(図1)。 3.ガラス化法により超低温で保存したブタ体外成熟・体外受精卵子(1細胞期)から子ブタ を生産することに成功した。本手法は、実用技術としての応用が期待される(図2)。 4.胎盤由来細胞におけるアレイ解析等により、胎盤形成、機能制御に関わる遺伝子を探索し、 その遺伝子機能を解析して、受胎率向上を目指した技術開発を進めている。本年度は、骨形 成タンパク質ファミリーのBMP4(組換え)を栄養膜細胞に作用させると、インターフェロン タウ等の遺伝子発現が誘導され、着床に向けた分化が進行することを明らかにした。 5.ES細胞等の多分化能維持機構を解明では、ES細胞の分化に関連するPpet21遺伝子 (Bspry) についてノックアウトマウスを作製したところ、発生異常は生じなかった。また、免疫組織 化学に利用できるモノクローナル抗体を作製した。さらに、Ppet21は、スプライスバリアン トのうち、βタイプがES細胞の未分化性に関連すること等が明らかとなった。 6.ウシ等の家畜由来幹細胞の樹立及びその分化誘導技術の開発に取り組み、ウシES細胞を樹 立した。また、幼弱ウシ精巣から精原細胞と見られるVasa陽性細胞をFACSにより単離・濃縮 する技術を確立し、家畜分野における幹細胞技術の開発を一歩進めることができた。 自己評価 中課題 B・3) (1) 評価ランク A コメント 生殖細胞、着床胎盤、幹細胞の3つの分野に分かれて研究を進め ているが、いずれも中期計画通り順調に進展しており、成果も着実 に上がっている。今後、研究の重点化を図り、3つの研究勢力を貫 く統合的な研究に発展することを期待する。また、組換え技術に依 存しない幹細胞技術の開発が望まれる。ブタ卵子の凍結保存技術に ついては、ジーンバンク動物部門と協力して安定性の高い技術への 展開が望まれる。 - 74 - - 75 - (2)家畜における本能行動の制御要因の解明 中期計画 ストレス反応軽減技術や匂い等による行動制御技術の開発に資するため、家畜の海馬、 視床下部等の大脳辺縁系におけるアミン作動性神経活動等の調節機構とストレスや匂いに よる行動変化との関連、ストレス反応軽減技術や匂いによる行動変化の神経機構を解明す る。また、家畜の生殖活動制御技術の開発に資するため、体内の栄養状態を反映する代謝 関連物質やフェロモン等の嗅覚物質の性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌調節中枢に対す る作用機構を解明する。 【研 究 資 源】研究員数:4.00人、ポスドク数:0.00人、研究資金:26.9百万円 【論文・特許等】原著論文:9、IF合計値:20.198、IF平均:2.24、特許:0 (中課題実績) 1.ブタにおける匂いとスイッチ押しを組み合わせた匂い連合学習の研究では、匂いの種類に より、正解率や学習時における海馬の神経活動の変化に違いが観察され、適切な匂いを組み 合わせた連合学習がブタの行動制御に有効なツールとなる可能性が示唆された。 2.ウシにおけるストレス軽減の研究では、隔離ストレスは血漿中コルチゾル濃度と葛藤行動 を有意に増加させること、このうち血漿中コルチゾル濃度の上昇はオキシトシンの中枢作用 により抑制されることを明らかにし、ウシおいても脳内のオキシトシンがストレス内分泌反 応のブレーキとして機能していることを示した。 3.ウシにおける成長ホルモン分泌調節機構の研究では、明暗条件を厳密に制御した環境下で は、夜間に明瞭な成長ホルモン分泌の亢進が起こること(図1A)、また、この亢進は夜間 の1時間の光暴露により強く抑制されること(図1B)を明らかにし、メラトニン分泌や覚 醒・睡眠リズムなどの光環境により変動する内因性要因が成長ホルモン分泌の調節に深く関 わっていることを示した。この結果は、光環境の制御によるウシの成長促進技術の開発に結 びつく重要な基礎的知見である。 4.ヤギにおける繁殖調節中枢機構の研究では、新規ペプチド、メタスチンを産生する神経細 胞は、ヤギ脳内では視床下部前部の内側視索前野及び後部の弓状核の二つの神経核にほぼ限 局して存在すること、メタスチン神経細胞は卵巣ホルモンであるエストロジェンにより直接 制御されていることを明らかにした(図2)。さらに、弓状核メタスチン神経細胞群では、 末梢血中の黄体形成ホルモンのパルス状分泌と一対一に対応する神経活動の上昇が起きてい ることを発見した(図3)。これらのことから、メタスチン神経系は卵巣からのフィードバッ ク作用を仲介して黄体形成ホルモン分泌を統御する重要な繁殖調節中枢である可能性が提唱 された。 5.ウシにおいても、ヤギ同様のメタスチン神経系が存在することを、形態学的及び内分泌学 的に明らかにした。 自己評価 評価ランク 中課題 B・3) A (2) コメント ストレス、学習、成長、繁殖の研究は着実に成果を上げており、 さらに競争的資金の獲得によって研究支援体制を強化するなど順調 に進んでいると評価できる。脳神経の研究は世界的に競争が激しい 分野である。成果の積極的な活用に向けて、他の研究グループとの 連携や新たな分野への展開が重要である。 - 76 - 図 1 ウシ成長ホルモン分泌に及ぼす光の影響 12L:12D の条件下におかれたウシにおいて、日中(明期)に比べ夜間(暗期)に成長ホルモン分泌の 亢進がみられる(A)。この分泌亢進は、暗期の中間時点(0:00 h)から 1 時間ウシを光に暴露すること で完全に消失する(B)。 図 2 雌ヤギ視索前野におけるメタスチン陽性細胞の分布を示す模式図と組織像 卵巣摘出群(OVX、血中エストロジェン濃度=約 0 pg/ml)ではメタスチン陽性細胞は全く観察されないが、 OVX にエストロジェンを投与した群(OVX+E2 群、血中エストロジェン濃度=約 2 pg/ml)では、内側視索 前野に散在性にメタスチン陽性細胞(赤丸)が出現する。右端はその組織像で、陽性細胞を矢印で示す。 図 3 雄ヤギ弓状核メタスチンニューロン近傍での神経活動と血中黄体形成ホルモン(LH) 濃度との相関を示す模式図 A:下段に神経活動(多ニューロン発射活動)、上段に神経活動の記録と同時に採血を行ったサンプル中 のLH濃度を示す。神経活動のピークの間隔はほぼ一定である(3 頭の平均値、27.6 ± 0.6 分)。B:測定 終了後、組織標本を作製し、メタスチンの免疫染色を行った結果を示す模式図。記録電極の中心は、 弓状核後部のメタスチン神経細胞群の近傍にあることが確認された。 - 77 - 4)生物間相互作用の解明と制御技術の開発 中期目標 植物-微生物、昆虫-昆虫・植物・微生物等の相互作用に着目して、植物共生菌の共生 機構、植物病原微生物の感染機構、昆虫行動制御機構、昆虫ウイルス・微生物の感染機構 等を生化学的・分子生物学的に解明する。 中期計画 自然界ではさまざまな生物が相互作用を保ちながら棲息し、自然環境や農業生産に大き な影響を及ぼしている。そこで、非マメ科植物への窒素固定能力付与の基盤として、マメ 科共生菌による共生窒素固定の成立機構を解明する。また、植物と微生物、昆虫と昆虫・ 植物・微生物との相互作用を取り上げ、植物病原微生物の感染機構、昆虫行動制御物質・ 植物由来耐虫性物質等による昆虫制御機構、昆虫ウイルス・微生物の感染機構等を解明す ることにより植物保護のための基盤技術を開発する。 (大課題実績) 自然界ではさまざまな生物が密接に関連しながら生息しており、それらは農業生産・自然環 境にも大きな影響を及ぼしている。 植物-微生物間の相互作用は、複数の生物の多数の遺伝子が関与する複雑な生物現象であり、 また微生物毎に生活環が異なるため、これまではそれぞれが別個に研究されてきていたが、ウ イルス、細菌、糸状菌による感染(片利共生)ばかりでなく、根粒菌、菌根菌による感染(相 利共生)の解析を、全体を俯瞰しつつ進めることにより、その本質にある相互作用の共通性を 理解し、農業生物資源研究所独自の新規の展開を図るための基盤が構築できると考えている。 研究は、感染の成否を規定する初期段階、すなわち、植物と微生物の特異的な相互認識機構、 感染・増殖や抵抗性発動に関わるシグナル伝達機構、根粒菌・菌根菌の共生成立機構の解明を 中心に進めている。 本年度は、根粒菌感染初期過程の遺伝学的解析に基づき、シグナル伝達経路を根粒菌感染経 路と器官形成経路に分けた新たなモデルを構築した。また、イネ菌根菌共生系の解明に向けた 研究を進めた。ウイルス(ToMV)の増殖を直接阻害する新規のタイプのウイルス抵抗性遺伝子 Tm-1について、その作用機作を解明するとともに、いもち菌感染における補助因子に関しては、 熱安定性因子の同定や補助因子候補である分泌型カタラーゼ遺伝子の同定などの成果が上がる など、研究は着実に進んだ。 昆虫と植物、昆虫と昆虫との相互作用の解明に関して、昆虫あるいは植物が産生する物質の 機能解明を基本に、個々の課題は着実に進展した。新知見として、(1)ツマグロヨコバイ唾液 腺から純度の高いβ-グルコシダーゼの精製、(2)クワ乳液中から得られた耐虫性タンパク質の ヨトウガ幼虫に対する高い殺虫効果の検証、(3)ゴマダラカミキリの定位反応を引き起こすポ ンカン由来物質としてモノテルペンアルコールの1種を同定するなどが得られた。 昆虫と微生物との相互作用では、カイコゲノム情報を利用した微生物抵抗性遺伝子の単離に 関する研究が進んだ。特に、Bt菌Cry1Ab毒素抵抗性遺伝子のクローニングが大きく進展し、物 理距離約82kbpの染色体領域まで狭め、候補遺伝子を一つに絞り込まれた。また、SNPマーカー を利用した連関検索により、カイコの糸状菌Beaveria bronginiartiiに対する抵抗性遺伝子が 第14番染色体に座乗していることが明らかにされた。 - 78 - 自己評価 大課題 B・4) 評価ランク コメント A 生物間相互作用は、現代生物学で最も新しい研究課題の一つであ るとともに、制御技術としても期待される課題である。植物では、 共生・感染応答に係わる初期シグナル伝達経路を根粒菌感染経路と 器官形成経路の分けた新たなモデルを構築し、昆虫では食害を受け た植物の出す3または4成分の揮発性化学物質を天敵昆虫が識別、 学習することを明らかにするなど、優れた成果を上げている。競争 的資金の新規獲得や表彰・受賞(3件)にも見られるように、全体 としてオリジナリティーのある質の高い研究である。大課題の中で の連携はとりにくいがゲノム研究との連携を進めることを期待した い。 前年度の 分科会 評価 A 分子生物学的手法を取り入れて着実に実施しており、順調に進捗し ていると評価できる。特に、生物間相互作用の解明においては、植 物根粒菌相互作用などに関して種々の新しい知見が得られている。 また、Bt菌抵抗性遺伝子のマッピングも進展している。生物間相互 作用の制御技術の開発においては、生物的防除技術の新たな素材開 発などに関して成果があがっているが、今後は研究分担を整理し、 利用技術につなげる方策を検討することを期待する。 - 79 - (1)植物・微生物間相互作用の解明 中期計画 根粒菌・菌根菌共生に共通する初期シグナル伝達系と、それに続く根粒菌感染・根粒形 成に必須な宿主因子の解析を進め、窒素固定共生に係わる植物側の遺伝子ネットワークを 解明する。また、これら遺伝子のイネオルソログの解析を通じて、非マメ科植物への窒素 固定共生能の付与を目指す。植物RNAウイルスの増殖及び増殖抑制に係わる宿主因子の 単離・同定を進め、それらの機能解析を通じてウイルスの増殖及び病徴発現抑制の分子機 構を解明する。イネいもち病菌、白葉枯病菌の感染・発病の初期過程において病原性ある いは宿主の抵抗性誘導に係わる病原菌遺伝子と、それに応答するイネの遺伝子の同定・機 能解明を通じて、感染初期における相互作用を解明する。 【研 究 資 源】研究員数:16.65人、ポスドク数:21.50人、研究資金:254.6百万円 【論文・特許等】原著論文:44、IF合計値:147.347、IF平均:3.35、 特許:3(出願:2、登録:1) (中課題実績) 1.ミヤコグサCSPの構成因子であるCCaMKはCYCLOPSとの相互作用を通じて根粒器官形成と感 染糸形成の両方を制御するキー因子であると考えられた。またその恒常的活性型タンパク質 をコードする遺伝子の導入実験により、CASTOR/POLLUXをはじめCCaMK上流のCSP遺伝子が共 生菌感染シグナルをCaシグナルに変換することのみに関与し、根粒菌感染経路の構築には必 須でないことが強く示唆された。これらの結果に基づき、共生初期のシグナル伝達経路につ いてモデルを提起した(図1)。CSPイネオルソログのひとつOsCCaMKの変異体では菌根共生 がほとんど見られないことを示した。ミヤコグサから感染糸構築に関わるAlb1遺伝子を単離 し、さらに新規Fix-変異体2種類の原因遺伝子候補を特定した。ダイズの根粒菌に対する親 和性因子Rj4のマッピング及びダイズFix-変異体のスクリーニングを開始した。 2.トマトモザイクウイルス (ToMV) の複製複合体前駆複合体に含まれる宿主因子候補を同定 するとともに、ウイルスの増殖そのものを抑制する新規の宿主抵抗性遺伝子Tm-1を単離しそ の作用機作を解明した。ToMVの可溶性複製タンパク質が、二本鎖small interfering RNA (siRNA) に結合してsiRNAの2'-O-メチル化とRNA-induced silencing complex形成を抑制す る可能性を示唆する結果を得た。タバコN遺伝子によるタバコモザイクウイルス(TMV)抵抗性 でサリチル酸系の自己防御活性化はMAPキナーゼ経路とは独立していることを温度シフト実 験により明らかにした(図2)。 3.イネいもち病菌の感染補助因子候補である分泌型カタラーゼ遺伝子を同定しその破壊株を 作成した。また熱安定性感染補助因子は日本晴に非親和性の菌系にも存在し菌の成長に影響 がなくイネに作用すると考えられることを明らかにした。イネいもち病菌遺伝子破壊とその 発現モニターを同時に行えるベクターを開発した(図3)。イネのキチンエリシター受容体 CEBiPを改変し、キチン応答性を操作することに成功した。白葉枯病菌のエフェクターの同 定を進め、総計34種類のエフェクター候補遺伝子を同定した。 自己評価 評価ランク 中課題 B・4) A (1) コメント ミヤコグサをモデルとした根粒菌との共生系の解明、トマトモザ イクウイルスの増殖に関わる宿主因子の同定など成果が上がってお り、着実に進展している。また、平成19年度、若手農林水産研究 者表彰、植物学会奨励賞、国際微生物ゲノム学会ポスター賞を研究 ユニット内の若手研究者が受賞したことに見られるように、研究が 活発に進められていると評価できる。 一方、共生系の研究では国際的な競争が激しい状況を鑑み、さら に研究を加速する必要がある。 - 80 - - 81 - (2)昆虫・昆虫間、昆虫・植物間相互作用の解明と利用技術の開発 中期計画 害虫の生物的防除技術の新素材を開発するため、昆虫に対し顕著な耐虫性を有するイネ 等栽培植物や野生植物における耐虫性に係わる物質や遺伝子の特定と生理作用機構の解明 を行うとともに、昆虫が耐虫性を打破する機構を解明する。天敵と寄主昆虫の遺伝的マー カーを開発し、天敵の寄主選好性及び生態系の中での役割を解明する。フェロモン等の行 動制御物質を同定し、それらの解析を通して難防除害虫や天敵類の行動制御機構を解明す る。 【研 究 資 源】研究員数:14.50人、ポスドク数:3.00人、研究資金:79.3百万円 【論文・特許等】原著論文:17、IF合計値:16.536、IF平均:0.97、 特許:5(出願:4、登録:1) (中課題実績) 1.ツマグロヨコバイラッカーゼの遺伝子配列を個体群間で比較したところ、アミノ酸配列に 変異は確認されたが、抵抗性イネの加害系統と非加害系統間で一貫した結果が得られなかっ た。 2.ツマグロヨコバイ頭部を約18,000頭から、各種クロマトグラフィーを駆使した精製により、 45 μgのβ-グルコシダーゼ標品を得た。活性の回収率10-14%、 精製度は約800倍となり、 SDS-PAGEにより単一バンドを示した(図1)。 3.イネのツマグロヨコバイに対する抵抗性候補遺伝子を導入した形質転換系統の芽出し個体 が孵化幼虫に高い死亡率をもたらすことを後代検定で確認した。また、トビイロウンカ抵抗 性では、候補領域を約500 kbに絞り込んだ。 4.エリサン幼虫に成長阻害活性を示すクワ乳液に含まれる耐虫性タンパク質の全長塩基配 列を得た。また、このタンパク質は、害虫のヨトウガ幼虫には強い成長阻害効果を発揮した がカイコ幼虫にはまったく毒性を示さなかった。 5.クワからカイコ幼虫体内に取り込まれるケルセチン配糖体を投与することによってカイコ 幼虫の組織中の抗酸化度が向上することが明らかになった。 6.5種ハナカメムシのmtDNAについて、15kbp〜16kbpの塩基配列を確定し解析した結果、い ずれの種でもマイクロサテライトDNA様の単純な反復配列が存在し、その反復数には著しい 個体変異があることが明かとなった。 7.ナミハダニ加害によってインゲンから4成分、茶からは3成分の化学物質が放出され、イン ゲン及びチャ上のナミハダニで飼育したケナガカブリダニは、それぞれの植物から放出され る成分すべて(インゲンでは4成分、茶では3成分)の混合物にのみに選好性を示し、学習効 果もあることがわかった(図2、3)。 8.ゴマダラカミキリに対する誘引効果を温州ミカン以外のカンキツで調べたところ、ポンカ ンに対する反応が高い傾向が認められ、ポンカン切枝からモノテルペンアルコール成分を検 出した。 9.ミヤコケブカアカチャコガネの休眠成虫の性成熟の誘起に幼若ホルモン投与が有効である ことがわかった。 自己評価 評価ランク 中課題 B・4) A (2) コメント 害虫の生物的防除技術の開発を目指した研究で成果が上がってお り、課題は中期計画通りに進展していると評価できる。今後一つ一 つの解析を深化することで、より質の高い成果が得られると思う。 また、トビイロウンカ抵抗性ではQTLゲノム育種研究センターと連 携・協力することで研究の進展が図られていることも評価できる。 ツマグロヨコバイの研究においては、昆虫・微生物間相互作用研究 ユニットとの情報交換、連携・協力を一層密にして研究の進展を期 待したい。なお、計画どおり順調に成果が出ている研究については、 実用的利用に向けた推進が必要である。 - 82 - 図1 カラムクロマトグラフィーの各分画の SDS-PAGE 像 矢印は β ーグルコシダーゼのバンドを示す。 図2 インゲンの揮発性化学物質に対するカブリダニの反応 ナミハダニ加害インゲンが生産する(E)-4,8-dimethyl-1,3,7-nonatriene(DMNT), β-caryophyllene ( β-Ca), Methyl salicylate(MeSA), (E,E)-4,8,12-trimethyl-1,3,7,11 -tridecatetraene(TMTT)の混合物に対するカブリダニの選好性を Y 字型オルファクトメ ータを用いて調べ、葉の抽出物に対する選好性と比較した。 図3 チャの揮発性化学物質に対するカブリダニの反応 カンザワハダニ加害チャが生産する(E)-4,8-dimethyl-1,3,7-nonatriene(DMNT), (E,E)-α-farnesene(α-Fa), (E)-β-ocimene(β-Oci)の混合物に対するカブリダニの選好性を、 Y 字型オルファクトメータを用いて調べ、葉の抽出物に対する選好性と比較した。 - 83 - (3)昆虫・微生物間相互作用の解明と利用技術の開発 中期計画 昆虫に寄生する微生物の感染・増殖において促進あるいは抑制に係る分子機構を解明し 利用を図る。病原微生物の初期感染部位である皮膚と消化管を主な対象に、感染・増殖を 制御する因子の探索、媒介微生物・共生微生物の宿主間伝播に係わる因子の解明、共生微 生物による宿主昆虫の生殖制御に係わる因子の同定を行う。それらの因子の機能解明によ り有用昆虫、家畜、作物における関連微生物の制御、微生物を利用した有害生物の制御技 術を開発する。 【研 究 資 源】研究員数:11.00人、ポスドク数:3.00人、研究資金:93.7百万円 【論文・特許等】原著論文:22、IF合計値:35.352、IF平均:1.61、特許:0 (中課題実績) 1.Bt菌は害虫防除剤として利用されているが、抵抗性害虫の発達が問題である。抵抗性の機 構解明の一環としてカイコのBt菌抵抗性遺伝子の単離をポジショナルクローニングにより進 めた。抵抗性遺伝子を染色体上の遺伝子領域100 kb以下に特定し(第1図)、その中から候 補遺伝子を選定した。また、糸状菌抵抗性遺伝子が、カイコの第14番染色体に座乗している ことを明らかにした。 2.昆虫のエントモポックスウイルスが作るスピンドルタンパク質は、昆虫中腸からのウイル ス感染を増進する。このタンパク質のウイルス感染増進部位を特定し、糖鎖の関与なども明 らかにした(第2図)。 3.イネ黄委病ファイトプラズマの増殖を、その媒介虫であるツマグロヨコバイにおいて、PCR 定量により調査した。ファイトプラズマが唾液で増殖し、媒介されるのに2週間程度の潜伏 期間があることが明らかとなった。 4.ウシに病原を媒介するヌカカ類の種の識別を容易にするために、遺伝子塩基配列を利用し た。ミトコンドリア遺伝子の特徴ある配列と遺伝子の並び順を示し、これを利用して、国内 の主要なヌカカにおいて、種の識別が可能にした。 5.ウォルバキア細菌は宿主昆虫の性や生殖を制御する。メス化を起こすキチョウのウォルバ キアをカイコ細胞で培養し(第3図)、さらにカイコに接種した。カイコ体内でのウォルバ キアの増殖はみられたが、安定的な次世代伝播は起こらず、卵巣における感染阻止がみられ た。 6.微生物や媒介昆虫の機能を明らかにするために、数種の昆虫ウイルス・細菌のゲノム解析 及びトビイロウンカ・ツマグロヨコバイのEST解析を進めた。 自己評価 評価ランク 中課題 B・4) A (3) コメント カイコBt菌抵抗性遺伝子の単離では特定領域を絞り込むことがで きた。来年度には遺伝子が同定されると期待している。また、糸状 菌抵抗性遺伝子の単離についても進展を期待している。世界的に競 争の激しいウォルバキア細菌の研究では、宿主昆虫の性や生殖を制 御する機構の解明が望まれる。トビイロウンカのゲノム解析を進め る際には、農業生物資源研究所内のゲノム研究勢力と連携し、国内 的、国際的にも、リーダーシップをとれる形で進める必要がある。 - 84 - 第1図 ポジショナルクローニングの最終的なマッピング結果 抵抗性遺伝子は染色体上のある領域(水色)に特定した。 第2図 ポックスウイルスのスピンドルタンパク質のウイルス感染増進部位 各種変異体などを作り解析した結果から、ウイルス感染増進活性に必 要な領域が判明した 第3図 カイコ培養細胞で培養したウォルバキア細菌(小さな米粒状) 細胞質内で増殖している - 85 - 5)ゲノム情報に基づくタンパク質の構造と機能の解明 中期目標 各種生物のゲノム研究の成果を利用し、各々の生物に固有な機能に関わるタンパク質の 同定、立体構造の解析、タンパク質間相互作用を解明する。 中期計画 ゲノム機能解析研究の進展により環境適応性や生物種固有の代謝に関連した遺伝子が単 離・同定されてきているが、遺伝子産物であるタンパク質の立体構造や分子認識に基づく 分子設計等により、これら遺伝子の高機能化による画期的な新品種の開発や機能の分子制 御システムの開発に繋がる可能性がある。X線結晶解析やNMR解析などによりタンパク 質の立体構造とタンパク質-リガンド間相互作用を解析し、環境適応性遺伝子ネットワー クの作用機作、生物制御物質の生合成・代謝機構を、外部環境変化の感知やリガンド認識 を介したタンパク質の立体構造変化の集積として明らかにし、タンパク質の立体構造に基 づいた生物制御に向けた分子生物学的基盤を構築する。 (大課題実績) 農業生物に重要なタンパク質の機能とその発現機構を立体構造に基づいて理解することは、 遺伝子の機能を利用するバイオテクノロジー戦略に理論的根拠を提供することとなる。そのた めに、農業生物資源研究所での研究対象となっている、あるいは今後対象となると予想される タンパク質を中心に、まずその構造及び相互作用するリガンドとの複合体の構造を解読し、次 にその結果を基に予測に基づく点変異の導入と生化学的な実証を行い、さらにin vivoでの機 能解析へと進め(当該タンパクの解析をしているユニットとの共同研究)、元となる遺伝子の 戦略的利用に道筋を付けるという手順で研究を展開している。また、生体内におけるタンパク 質の生合成・分解機構のプロテオーム解析を行い、あわせて、分子認識機構に立脚した生物の 制御に向けた分子生物学的基盤を構築することを目指している。 本年度は、広範な細胞機能の制御にかかわるSUMO化翻訳後修飾において重要な役割を担う SUMOリガーゼSiz1のSAPドメインとPHDフィンガーの構造を解読し、さらに、それぞれのドメイ ンとDNA及びメチル化ヒストンとの結合様式を明らかにした。また、カイコの幼若ホルモン結 合タンパク質JHBPとレチノイン酸結合タンパク質RABP( 昆虫領域との共同研究)については近々 構造決定が完了する段階に至っている。なお、構造解析を行うにあたり避けがたい最大の問題 は、結晶の調製など解析の試料調製にあり、これにより解析に困難を極めているものもある。 自己評価 大課題 B・5) 評価ランク コメント A 植物分野のみならず、昆虫分野との連携により、着実に成果が上 げられている。特にSUMOリガーゼの構造解析は興味深い。結晶など 解析上の技術的な問題があるのかもしれないが、文部科学省の「ター ゲットタンパク」プロジェクトなどの情報も取り入れながら進める とさらによいと思われる。今後とも、タンパク質の構造と機能が関 係している主要な遺伝子の解明を他のユニットと連携して進めるこ とが必要。 前年度の 分科会 評価 A ポストゲノムにおける基盤的研究分野の構築を目指しており、タン パク質の構造解明や結晶化条件を見つけるなどの成果をあげてい る。順調に進展していると評価できる。今後、他の研究ユニットと の連携を一層深めるとともに、研究成果の取りまとめを急ぐことが 求められる。 - 86 - 【研 究 資 源】研究員数:7.20人、ポスドク数:1.00人、研究資金:26.4百万円 【論文・特許等】原著論文:6、IF合計値:3.755、IF平均:0.63、特許:0 (中課題実績) 1.広範な細胞機能の制御にかかわるSUMO化翻訳後修飾において重要な役割を担うSP-RING型 SUMOリガーゼの作用機構を構造生物学的見地から解明することを目指して、酵母Siz1とイネ Siz1のSAPドメインの立体構造とDNA認識機構を解析し、SAPの構造と機能について類似性と 特異性を明らかにした(図1)。さらに、植物のSP-RING型SUMOリガーゼに固有のPHDフィンガー がメチル化ヒストンと特異的に結合することを見出し、立体構造を決定してメチル化ヒスト ンの認識様式を明らかにした(図1)。SUMO化翻訳後修飾の研究は極めてホットで様々な研究 が盛んに行われているが、作用機構の詳細を明らかにするために立体構造や分子認識に関す る構造生物学的知見の集積が待たれており、本研究の成果はSUMO化研究に新たな展開を生む ものと期待される。 2.オーキシン(Aux)は植物の発生、分化及び成長の制御を司る重要な生体内物質であり、植 物の成長制御技術を開発するためにはAuxの作用機構の解明が必要不可欠である。Auxシグナ ル伝達には、Aux依存性遺伝子の発現制御にかかわる細胞質受容体TIR1を介する伝達系と細 胞の伸長にかかわる原形質膜受容体を介する伝達系の2種類の独立した伝達機構が存在す る。原形質膜シグナル伝達においては、小胞体に局在する可溶性タンパク質ABP1が受容体と して機能することが示唆されているが、その作用機構は不明である。本年度は、ABP1、及び、 ABP1関連ペプチドとCBP1の相互作用を定量的に解析し、原形質膜におけるAuxシグナル伝達 にはCBP1とABP1のC末領域の結合が必須であることを明らかにした。さらに、原形質膜には ABP1以外にも複数のCBP1結合因子が存在することを見出した。本研究の成果は、Aux原形質 膜シグナル伝達機構の全貌解明に大きく寄与するものと期待される。 図 1 SP-RING 型 SUMO リガーゼのドメイン構造と分子認識機構 - 87 - C バイオテクノロジーを活用した新たな生物産業の創出を目指した研究開発 中期目標 バイオテクノロジーの研究成果を活用して植物、昆虫、動物等に新形質を付与する技術 を開発し、次世代型のバイオ産業を創出することが重要な課題である。 このため、植物、昆虫、動物等の遺伝子組換え技術及び遺伝子発現制御技術を高度化・ 効率化するとともに、実用化に向けた組換え体の研究を行う。また、絹タンパク質等生体 高分子の新たな加工・利用技術を開発する。 1)バイオテクノロジーによる有用物質生産技術の開発 中期目標 作物の遺伝子組換え技術の高度化・効率化と安全性確保技術を開発する基盤研究を行 う。また作物・家畜・カイコでの有用物質生産技術を開発する。 中期計画 研究所でこれまでに得られた研究基盤を活用して遺伝子組換え技術の高度化・効率化と 安全性確保技術を開発するための基盤研究を行う。植物では、生活習慣病やアレルギー疾 患の予防・緩和効果を有する成分等の有用物質を生産する組換え作物を開発する。カイコ では絹タンパク質中に有用物質を生産するための技術開発を進める。家畜・家きんでは、 遺伝子組換え技術の高度化・効率化を図るとともに、乳汁あるいは卵白中に医薬等の原料 となる有用物質を安定的に分泌させる組換え体の作出法を開発する。モデル家畜の開発で は、解剖学的にも生理学的にもヒトに近いブタを生活習慣病、移植及び再生医療用モデル として開発する。 (大課題実績) 消費者が受け入れやすい遺伝子組換え作物の開発に向け、遺伝子組換え技術自体の高度化・ 効率化と安全性確保技術を開発するとともに、その基礎(理論的根拠)を与える研究を進めた。 また、作物・家畜・カイコでの有用物質生産技術を開発することを目的に研究を進めた。 組換え技術の高度化では、(1)内在性の遺伝子を正確に改変するジーンターゲッティング (GT)系を、相同組換え機構を制御・応用することにより、より効率を高めること、(2)外来 遺伝子がサイレンシングを受けるメカニズムを解析し、その成果を外来遺伝子の安定的発現系 の構築に役立てることを大きな柱とした。その結果、GTにより除草剤耐性イネを作出すること に成功し(2007年農林水産研究成果10大トピックス)、目下、より効率を上げ、任意の 遺伝子を標的とできるように系を洗練させていく段階に入っている。 組換え作物の開発では、GMO開発の突破口のみならず商品化も視野に入れつつマーカーフリー の花粉症緩和米の開発を進めてきた。また、高血圧対応や低アレルゲン米など、種々の機能性 米の開発も着実に進めている。コレラ毒素に対するワクチン米に関しても今年度にその成果が PNASに掲載された。しかし、花粉症緩和米は厚生労働省の指導により医薬品として開発す ることになり、他の開発中のものも含めて、大きく研究内容や進め方を変更する必要が出てき た。機能性食品としての可能性のあるものについては、今後も組換え作物の開発を継続するが、 医薬品に該当するものについては、本年度行った前臨床試験に加えて、種子を用いたワクチン が通常の試薬より腸管免疫細胞へのデリバリーとして優れていることを証明するなど、基礎的 レベルの研究をより充実させていく予定である。 カイコを用いた有用物質生産技術に関しては、「有用物質生産システムの高度化」について の研究が今年度も順調に進展した。すなわち、カイコの中部絹糸腺における組換えタンパク質 の生産系を改良することによって、従来法より最大で5倍量のタンパク質を生産する方法が構 築された。同時に、組換えタンパク質の生産効率の高い系統として、セリシン蚕系統の改良を 進めた。アウトプットにつながる研究としても外部との共同研究を通じて順調に進んだ。その 例として、東レと共同で活性の高いネコインターフェロンを生産する組換えカイコの作出や、 農工大との共同による細胞親和性の高い絹タンパク質の大量生産法の確立があげられる。また、 - 88 - 遺伝子組換えカイコを用いた遺伝子機能解析についても、所外共同研究において黄繭遺伝子が カロチノイド結合タンパク質であることを明らかにした。 組換えブタ系では、生活習慣病、発癌や免疫不全等の医療用研究モデル動物となる遺伝子組 換えブタの開発とその利用を目指し、すべての組換えブタについて医学系の研究者と共同し研 究を実施している。また、モデル動物の実用化に向けては、食の安全性や薬事法などの障害が 少ないことから、実用化に向けた体制の構築も同時に検討している。研究上は、遺伝子ノック アウト・クローン産子が得られるなど予定以上の組換えブタが作出できているが、ブタの維持 増殖体制に問題が生じている。組換えヤギ系では、有用物質を乳汁へ産生する遺伝子組換えヤ ギ作出技術の実用化を目指し、作出効率の向上、導入遺伝子の発現量や組織特異性の改善をは かるため、医学部や民間との共同研究を実施し、順調に成果があがっている。組換えニワトリ 系では、卵白中へ有用物質を生産する遺伝子組換えニワトリの作出を目指し、安全性を考慮し て非ウィルス法によるニワトリ細胞への外来遺伝子導入法を開発することを目標とし、始原生 殖細胞の初代培養技術の改選を行った。細胞培養・マウスモデル系では、ミクログリア細胞株 の作出や細胞内抗体を発現する遺伝子組換えマウス作製に成功し、これらを用いプリオン病の 発症機構の解明等の研究を進めている。また、研究成果を積極的に発表し、細胞株や研究材料 の提供、共同研究の実施などを行っている。前中期目標期間中に開発されたコラーゲンビトリ ゲルについて、生理活性物質の徐放性などの機能を追加するとともに、実用化に向け積極的に 再生医療関連等の研究者と共同研究を実施している。 自己評価 大課題 C・1) 評価ランク コメント A イネ、カイコ、ブタ等、農業生物の遺伝子組換えを実用化させよ うというチャレンジ性のある研究である。イネのジーンターゲティ ングにおいてミスマッチ修復が関与することを明らかにし、また、 生殖細胞でトランスポゾンの転移酵素を発現するカイコを作出し、 高頻度で組換えカイコを作出する方法を確立するなど、組換え技術 の高度化に向けた研究が進んでいる。実用化に向けては、アレルゲ ン低下イネの作出や、ウイルスではなくカイコそのものの遺伝子組 換えによりネコインターフェロンを生産する系の作出、さらに医療 用モデルブタの開発を目的とした遺伝子ノックアウトブタの作出に 成功するなど、着実に進んでいる。応用展開に関しては、行政との タイアップも進み始めているが、出口となる企業等との共同研究も さらに進めて行きたい。 前年度の 分科会 評価 A ジーンターゲティングにより除草剤耐性イネを開発した。スギ花粉 症緩和米では動物への経口摂取試験を行い、安全性確認を行った。 カイコ遺伝子組換え体の作出については、作出効率の向上に成功し た。また、体細胞の核移植による遺伝子組換えブタの作出とヒヒへ の腎臓移植試験を実施した。基盤研究の成果の出口として必須の研 究分野であり、全体として順調に進展していると評価する。社会受 容の観点から開発には困難を伴うこともあると予測されるが、今後 も、研究開発の推進とともに国民理解の促進に引き続き努力を重ね ていくことが求められる。なお、花粉症緩和米は、今後、医薬品と して開発することとなったが、今回の経験を今後の研究開発に生か し、研究の初期段階から関係者との緊密な連携のもとに推進するこ とを期待する。 - 89 - (1)安全性確保や有用物質生産に向けた組換え基盤技術の開発 中期計画 高等植物の相同組換えの制御機構の解析を進め、内在性の遺伝子を正確に改変し、外来 遺伝子をゲノム上の特定位置に導入する技術を構築するとともに、イネにおいて部位特異 的組換えシステムを適用した外来遺伝子導入・除去技術を確立することにより、遺伝子組 換え植物の安全性に係わる基盤技術を開発する。遺伝子組換え植物における外来性導入遺 伝子の不活性化(ジーンサイレンシング)に係わる因子の機能解明を進め、サイレンシン グの分子機構の解明と、それを利用した導入遺伝子の安定発現技術の開発を推進する。 【研 究 資 源】研究員数:7.75人、ポスドク数:6.00人、研究資金:104.4百万円 【論文・特許等】原著論文:12、IF合計値:43.600、IF平均:3.63、 特許:9(出願:6、登録:3) (中課題実績) ジーンターゲッティング 1.イネカルス細胞から染色体標本を作製する手法を開発した。 2.イネのジーンターゲッティング(GT)において、点変異導入型、プロモーター置換型、 レポーター挿入型のベクター系を構築した。イネのGTにミスマッチ修復が関与することを 示した。GT効率化に向け、姉妹染色分体交換の抑制に働くヘリカーゼを明らかにし、ジン クフィンガーヌクレアーゼのin vivoアッセイ系を確立した。 3.非接触型超音波遺伝子導入装置を作成し、イネ種子への一過的な遺伝子導入を検出した。 部位特異的組換え酵素の利用 1.イネにおいて部位特異的に遺伝子を導入することに成功した。また部位特異的組換え酵素 の時期・組織特異的発現により、マーカーの効率的除去を示唆する結果を得た。 ジーンサイレンシングの制御 1.サイレンシングを受ける内在性遺伝子がトランススプライシングを受けたRNAを産生して いることを示した。 2.OsSIRT4,OsMOM1b1の変異体のアレイ解析を行い、イネにおいて多数の内在性サイレンシン グマーカー遺伝子候補を見出した。 オルガネラ工学 1.加工特性に優れたイネ変異体を玄米1粒で判別する方法、及びその変異体の米粉の利用法 を開発した(図1)。 安全性 1.イネ葉緑体へ導入した遺伝子が次世代に遺伝することを示した。プロテアーゼ等の利用に より、雄性不稔ブロッコリーを作成した。セイヨウナタネと在来ナタネの雑種の環境適応度 は両親より低下していることが確認された。 自己評価 評価ランク 中課題 C・1) A (1) コメント イネが元々持っている遺伝子を意図したとおりにピンポイントで 改変し、特定の除草剤に耐性を示すイネを作出することに世界で初 めて成功している(2007年農林水産研究成果10大トピックスに選ば れた)。このジーンターゲッティング技術の効率化に向けた研究を 着実に進めており評価できる。今後も、この技術を生かして有用な 形質変換体を作出することが重要である。 ジーンサイレンシング、導入遺伝子の安定発現技術(安全性)、オ ルガネラの研究の一層の進展を期待している。 - 90 - 図 1 種子貯蔵タンパク質が米粉の加工特性に及ぼす影響の解析 突然変異体 esp2 の特性解析。 (A)等量の米粉と小麦強力粉を混ぜ、グルテン形成の前後で全タン パク質を抽出し SDS-PAGE 解析。esp2 のグルテリン前駆体はグルテンに取り込まれる。矢印:グ ルテンに取り込まれ濃縮された小麦タンパク質。αとβ: 成熟型グルテリン。 (B)イースト発酵試験 (米粉7割+強力粉3割)。野生型は膨らんだ後の凹みが大きいのに対し、esp2 は可塑性が高い。 (C) esp2 タイプの米粉の判別法の概略。完熟種子1粒を微粉砕し、タンパク質を非還元条件で抽出し(S) 次に還元条件で抽出する(U)。SDS-PAGE 法で S とUに含まれるグルテリン前駆体のタンパク質量 を比較する。 (D)esp2 のグルテリン前駆体はUの画分に多く、野生型ではSの画分に多く抽出さ れる。 - 91 - (2)健康機能性作物や有用物質高度生産技術の開発 中期計画 遺伝子組換えにより、生活習慣病やアレルギー疾患の予防・緩和効果を有する成分や抗 体、ワクチン等の有用物質を植物で生産することにより、医療費の削減や新産業創出に結 びつく新たな価値をもつ実用的作物を開発する。そのため、有用物質の評価システムの構 築を行うとともに、有用物質を植物細胞中に高度に蓄積させる技術や、これら植物細胞中 で産生した医療用等の有用物質の抽出・精製システムを開発する。 【研 究 資 源】研究員数:4.80人、ポスドク数:6.00人、研究資金:133.0百万円 【論文・特許等】原著論文:7、IF合計値:23.954、IF平均:3.42、 特許:13(出願:7、登録:6) (中課題実績) 1.生活習慣病の予防や緩和に役立つ組換え米の開発では、卵白アルブミン由来のオボキニン を高機能化した血圧降下作用のあるノボキニンを18連結し、グルテリンのシグナルペプチド に繋ぎ発現させることで従来のものに比較して、約2倍量蓄積させた組換えイネを作出でき た。 2.自然発症高血圧ラットにこの組換え米を経口投与し、すでに開発しているグルテリンとの 融合型の米(1g米粉/kg体重)と比較して、より低容量(0.3g~0.5g米粉/kg体重)での血圧降 下作用を確認した(図1)。 3.CoQ10の高蓄積化や選抜マーカーに配慮した血清コレステロール値低下機能を有するIIAEK ペプチド蓄積米の開発も進めた。 4.アレルギー緩和米として主要なダニ抗原Derp1の一部を導入した組換え米を開発し、この 米を経口投与することでスギ花粉症緩和米と同様に、抗原特異的IgEやIgG産生の抑制や抗原 特異的T細胞増殖性の低下など経口免疫寛容を誘導できることを確認した。 5.特に臨床症状の改善として、組換え米の投与により抗原チャレンジによって気道内に浸潤 してくる好酸球の減少や気道過敏性の亢進、肺気道での炎症症状の改善を確認した。これら の知見より、アレルギーの原因となる抗原を米に蓄積させ、これを経口から摂取することで 多くのアレルギーを治療できる可能性が高まった。 6.スギ花粉症緩和米の開発ではマーカーフリーの7Crpペプチド含有イネを用いて生物多様性 影響評価試験を進めると共にGLP準拠の前臨床試験を行い、非組換えイネを実質的な差異が ないことを確かめた。一方、抗原の立体構造を変えることでIgEとの結合性を低下させた、 全てのCry j1を含む汎用性の高い組換えイネの作出に成功した。 7.当センターで見出したRNAサイレンシング誘導配列を用いて、米の主要なアレルゲンの1 つである33kDアレルゲンを低下させたイネの作出に成功した。グルテリンを低下させると低 システイン含量のプロラミンの発現が高まること、多くのグルテリンと発現が異なり、内胚 乳で発現し、転写因子RPBFによってのみ制御される新規グルテリン遺伝子を見出した。 自己評価 評価ランク 中課題 C・1) A (2) コメント スギ花粉症緩和米はじめ機能性米の開発では、着実に成果が得ら れており、外部評価委員の半数近くがSとの評価をするなど、研究 成果に対する評価は高い。しかし、実用化という観点でやや足踏み 状態のため、A評価とした。 スギ花粉症緩和米では、医薬品としたことで、却って国民のGMO への抵抗が少なくなるかもしれないが、実用化を目指している医療 品のハードルは高いので、農業生物資源研究所が協力して進めるこ とが必要である。また、次の社会的なニーズの高い実用的な遺伝子 組換えイネを開発する必要がある。なお、アレルギー緩和米では、 経口免疫寛容のメカニズムを科学的に明らかにすることが重要であ る。 - 92 - 図 1.ノボキニン蓄積イネ種子の高血圧ラットへの効果 - 93 - (3)遺伝子組換え昆虫を利用した有用物質生産技術の開発 中期計画 遺伝子組換え昆虫の作出効率を向上させるため、新しいベクタ-の開発、遺伝子導入手 法の改良、昆虫系統の育種、新しいマーカー遺伝子の開発研究を推進する。各種のプロモー ターを解析するとともに、導入遺伝子の安定的な発現制御法を確立し、有用物質を大量に 生産する宿主ベクター系を構築する。構築したベクター系を利用して、サイトカイン、抗 体等の医療用タンパク質遺伝子を導入した昆虫を作出し、医薬品等の有用物質の生産を実 現するとともに、クモ・野蚕等のフィブロイン遺伝子を利用して高機能で汎用性のある新 繊維の生産を実現する。 【研 究 資 源】研究員数:3.90人、ポスドク数:0.00人、研究資金:66.5百万円 【論文・特許等】原著論文:11、IF合計値:21.981、IF平均:2.00、 特許:3(出願:0、登録:3) (中課題実績) 1.遺 伝 子 組 換 え カ イ コ を 作 出 す る 効 率 を 向 上 さ せ る た め 、 生 殖 細 胞 で ト ラ ン ス ポ ゾ ン piggyBacの転移酵素遺伝子を発現する系統を作出した。この系統を用いて遺伝子組換えカイ コの作出実験を行った結果、高頻度で組換えカイコが得られることが分かった(表1)。 2.カイコのキヌレニン酸化酵素遺伝子を利用した組換えタンパク質の生産に適するベクター が構築された(図1)。 3.黄繭の原因遺伝子である黄血遺伝子がカイコのカロチノイド結合タンパク質であるかを確 かめるため、国立感染症研究所、東京大学との共同研究でこの遺伝子を導入した遺伝子組換 え個体を作出した。次いで、GAL4/UAS系を利用して白血・白繭の系統でこの遺伝子を発現さ せた。その結果、遺伝子を導入した個体は黄血になり、黄繭を作ることが明らかになった(図 2)。 4.遺伝子組換えカイコによる有用物質の生産システムを高度化するため、中部絹糸腺におけ る組換えタンパク質の生産系の改良を行った。その結果、プロモーター領域の配列やシグナ ル配列を変更することにより、従来の方法より最大で5倍量のタンパク質を生産するシステ ムの構築に成功した。 5.組換えタンパク質の生産効率の高いセリシン蚕系統について、交配と選抜を繰り返し、営 繭率や化蛹歩合が大幅に向上した系統を作出した。 6.東レと共同で、フィブロインH鎖遺伝子を利用したベクターを作出した。このベクターを 利用して、ネコインターフェロンを生産する組換えカイコを作出した。このカイコでは大量 の組換えタンパク質が生産され、活性の高いインターフェロンを回収することが可能である ことが分かった。 7.東京農工大学と共同でフィブロインL鎖にフィブロネクチンやコラーゲン由来のペプチド をコードする塩基配列を融合した遺伝子を作成し、この配列を導入した組換えカイコを作出 した。カイコの作る絹は従来のものより著しく細胞親和性が高く、組織や細胞を再生させる 足場材料として利用できることが明らかになった。 自己評価 評価ランク 中課題 C・1) S (3) コメント ベクターの改良、形質転換効率の向上、遺伝子機能解析のための カイコ変異系統の作出は順調に進んでおり、遺伝子組換え作出効率 と遺伝子組換えカイコによる有用物資生産量は飛躍的に向上するな ど優れた成果が得られている。さらに民間企業との共同研究により 実用化を目指した技術開発にも取り組んでおり、既に実用化してい る企業もある。このように想定以上に研究は進捗しており、期待以 上の成果が得られていることからSと評価した。 なお、遺伝子組換えカイコを用いた商業ベースでの薬の作出は、 民間企業でも実施しているので、農業生物資源研究所の特徴を出す ことが重要である。 - 94 - 表1 生殖細胞で転移酵素を発現する系統を用いた場合の組換えカイコの 作出効率 NotI AscI ApaI XmaI L arm 400 SacII R arm A3KMO 800 1200 1600 2000 2400 2800 3200 pUC18 3600 4000 4400 4800 5200 5600 6000 6400 SmaI 図1 カイコのキヌレニン酸化酵素遺伝子を利用したベクターの構造 A3KMO、マーカー遺伝子;矢印、トランスポゾンpiggyBacの逆位末端 反復配列. 図2 GAL4/UAS系によってUAS-CBP遺伝子を中腸と中部絹糸腺で 発現させた系統のカイコと繭(左図、右図とも、それぞれ左側がUASCBP遺伝子を発現した幼虫と繭) - 95 - (4)動物を用いた有用物質生産技術の開発とモデル家畜の作出 中期計画 有用物質生産技術の開発においては、遺伝子組換え技術の高度化・効率化を図り、生理 活性物質等を乳汁あるいは卵白中に安定して分泌させる組換え家畜・家きんの作出法を構 築するとともに、生活習慣病、移植及び再生医療用モデルブタを開発する。各種臓器に由 来する機能性動物細胞株を樹立し、機能性物質生産における細胞機能を解明するとともに、 それらの制御技術を開発する。新しい培養基材・担体を開発し、高次組織構造や細胞応答 能を有する培養モデル系を開発する。 【研 究 資 源】研究員数:13.00人、ポスドク数:3.00人、研究資金:113.1百万円 【論文・特許等】原著論文:17、IF合計値:42.952、IF平均:2.53、特許:0 (中課題実績) 1.医療用モデルブタの開発を目的として、ブタ胎子線維芽細胞にノックアウトベクターを導 入し、G418による薬剤選択を行った。目的遺伝子がノックアウトされた細胞を選び、核移植 を行ったところ、計31頭の遺伝子ノックアウト・クローン産子が得られ、うち4頭は生存中 である(図1)。 2.ヒトセレノプロテイン(hSP)遺伝子導入雄ヤギを交配に用い、雄3頭、雌1頭の後代を 得た。PCR解析により、雄1頭を除いてhSP遺伝子の伝達を確認した。得られた後代組換えヤ ギの体重、体温、血液性状は正常であった。また、乳腺特異的BACベクターを導入したG418 耐性細胞を分離し、これらの細胞を用いたクローンヤギ作出を開始した。 3.初期胚血液より採取した始原生殖細胞をイン・ビトロ培養下で1か月間維持できた。これ らの始原生殖細胞をレシピエント胚の血液中へ移植した結果、生殖隆起への移住能が確認さ れた。孵卵20日目胚の生殖巣に存在する生殖細胞は抗CVH抗体染色により同定でき、雄由来 の生殖細胞ではイン・ビトロ培養下で増殖が認められた。 4.スクレイピー感染マウス脳において、PrPSc蓄積が著明になる感染後期にかけてミクログ リアの活性化とP2X7受容体mRNA発現量の増加が認められた。プリオン感染とミクログリアに おけるP2X7受容体亢進との関連性が示唆された(図2)。 5.P2X7受容体の細胞内ドメインに特異的なモノクローナル抗体遺伝子からintrabodyを構築 し、マウスの受精卵に顕微注入した。作出された7系統の遺伝子組換えマウスのうち、少な くとも2系統において抗P2X7- intrabodyタンパク質の発現が確認され、残りも調査中であ る。 6.血管内皮増殖因子(VEGF)を含むコラーゲンビトリゲル薄膜は、生理食塩水中にVEGFを継 続的に徐放した。ラット皮下へ移植して14日後の観察では、コントロールに比べVEGF含有の コラーゲンビトリゲル薄膜を移植した周囲で多くの毛細血管網が観察され、血管新生の誘導 活性が確認された(図3)。 自己評価 評価ランク 中課題 C・1) A (4) コメント 医療用モデルブタの開発、乳汁中に目的タンパク質を発現するク ローンヤギの作出など成果が着実に得られており、家畜における遺 伝子改変技術の応用に向けた研究は順調に進捗している。このよう な研究は、極めて社会性の高い研究開発につながると期待できる。 なお、組換えブタとヤギの維持・供給体制の確保など実用化に至 る課題について検討する必要がある。 - 96 - - 97 - 2)シルクテクノロジーによる生活・医療素材の開発 中期目標 昆虫生体高分子の構造と機能を解明し、遺伝子組換え技術や、化学的な改変によるタン パク質への機能付加によって医療用素材の開発を行う。また、絹タンパク質等の特性を活 かし、生活・衣料素材や医療用の新素材を開発する。 中期計画 天然素材である絹は、生体親和性の良さや、構成するタンパク質が持つ保湿性や細胞増 殖活性等の優れた特性を持つ。繭糸タンパク質の改変や繊維加工技術開発によってこの特 性を活かした繭糸の新たな利用が可能となるため、絹繊維及びフィブロイン、セリシン等 の昆虫生体高分子の構造と機能を解明し、遺伝子組換え技術や、化学的な改変によるタン パク質への機能付加によって医療用素材を開発する。シルクの特性を活かした安全・安心 な生活・衣料素材や医療用素材作出に適した品種を開発するとともに、生産された素材の 有効利用技術を開発する。 (大課題実績) 絹タンパク質であるフィブロイン、セリシン等の構造と機構を解明するとともに、遺伝子組 換えや化学的改変による機能付加・改変から医療用素材を開発すること、また、シルクの特性 を活かした生活・衣料素材、さらには医療素材を作出するための品種を開発し利用を図ること を目的に研究を進めた。 医療用素材としての利用では、主要テーマであるシルクスポンジの特性解明が今年度も順調 に進んだ。凍結プロセスとスポンジ多孔質構造との関係を詳細に調べ、多孔質構造、孔径が制 御できることを見いだした。また、遺伝子組換えカイコを用いたフィブロイン機能改変につい ても研究が進んだ。カイコフィブロインH鎖の繰り返し領域をオニグモ牽引糸タンパク質の一 部に置き換えた組換えタンパク質を発現する組換えカイコの作出に成功した。 繭糸を医療用素材への利用として人工血管用繭糸チューブの作製がさらに進展した。昨年ま でのチューブに比べさらに内径が細い、1.5mm以下のタイトな構造の繭糸チューブの作製に成 功した。このチューブはラットへの埋め込み実験により、生体適合性を持っていることが示さ れた。特殊蚕品種を用いた、生活用資材開発の実現例として、太繊度蚕品種 "ありあけ"繭に よる真綿布団が西川産業株式会社と共同開発され、商品化が図られた。 - 98 - 自己評価 大課題 C・2) 評価ランク コメント A カイコのみならず、クモやスズメバチが作り出すシルクタンパク 質の多面的な利用を目指すユニークな課題である。絹糸を用いた細 い人工血管の開発やシルクタンパク質ゲルフィルムの開発におい て、ラットやモルモットを用いた移植実験、皮膚感作評価を進める など、効果の検証に加えて安全性についても研究を進めている。出 口となる医療企業等との連携を進め、将来の発展を期待する。 前年度の 分科会 評価 A シルクスポンジを利用した研究で着実に成果があがっているなど、 順調に進展していると評価する。一方で民間との共同研究の充実、 素材の安全性点検にも取り組むことを期待する。 - 99 - (1)絹タンパク質を利用した医療用素材の開発 中期計画 絹タンパク質等の昆虫生体高分子を用い、軟骨再生医療素材等の再生医療素材、肝細胞 等の細胞培養担体素材等、医療用途を指向した素材を開発する。そのため、絹タンパク質、 フィブロインセリシンホーネットシルク、クモ糸等の素材について、高次構造の解析、表 面構造の評価、生体組織・分子との相互作用等を解析するとともに、トランスジェニック 技術や化学修飾技術を利用したタンパク質の機能性や物性の改変を通じ、医療用素材とし ての最適化を図る。 【研 究 資 源】研究員数:11.50人、ポスドク数:0.0人、研究資金:34.3百万円 【論文・特許等】原著論文:14、IF合計値:35.933、IF平均:2.57、 特許:9(出願:8、登録:1) (中課題実績) 1.冷却速度・時間を変化させることにより、フィブロイン-有機溶媒混合水溶液の凍結プロ セスを制御することが可能であることを見出し、フィブロイン多孔質構造体の多孔質構造や 孔径をコントロールする技術を開発した。 2.フィブロインH鎖タンパク質の繰り返し領域の代わりにオニグモ牽引糸タンパク質の一部 を挿入した組換えタンパク質の組換えカイコによる発現に成功した(図1)。 3.バージンセリシンを利用してゲルフィルム化プロセスにより、高含水でありながら優れた 力学的物性を持つセリシンフィルム材料の開発に成功した(図2)。 4.ゲルフィルム化は、βシート構造(セリシン)やcoiled coil構造(ホーネットシルク) による架橋点の形成とその後の分子ネットワーク形成によるプロセスであることを確認し た。 5.セリシンAタンパク質の分子性状を調査し、糖鎖付加や酵素的二量体化が生じていないこ とを確認した。 6.キイロスズメバチのホーネットシルクタンパク質のcDNA配列を決定し、またアミノ酸繰り 返し構造が豊富な新たなホーネットシルクタンパク質を見出した。 7.ゲルフィルム化手法で作製したフィブロイン、バージンセリシン、及びホーネットシルク のモルモット皮膚感作性評価を実施し、いずれの材料も陰性であることを確認した(図3)。 8.オニグモ牽引糸タンパク質の繊維化には、脱水プロセスによる2次構造変化とともに物理 的延伸プロセスが重要であることを確認した。 自己評価 評価ランク 中課題 C・2) A (1) コメント 実用化を視野に民間企業との共同研究を積極的に進めており、目 標は概ね達成されている。中期計画通り順調に進捗している。 今後は、開発した素材の実用化に向けた解析、評価の段階に入る ので、これまで以上に医学領域、民間企業等との連携・協力を強化 し、研究がより一層進展することを期待する。そのため、実用化の 可能性が高い素材について、実用化を妨げている問題点を明らかに し、実用化に向けて検討する必要がある。 - 100 - 図1 オニグモ牽引糸タンパク質を発現する遺伝子組換えカイ コの解析と組換えタンパク質の分析 A : Southern hybridization B : 繭タンパク質の SDS-PAGE KH29 : 組換えカイコ、W1-pnd : コントロールカイコ HC-SpA : 組換えタンパク質 図2 湿潤状態におけるバージンセリシンゲルフィルム(写真) と応力—伸長曲線 図3 各種シルクタンパク質ゲルフィルムの感作評価結果。モルモット 皮 膚 、 2 4 時 間 後 。 ポ ジ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル は 、 2,4-Dinitrochlorobenzen(DNCB) ワセリン混合物 - 101 - (2)新機能シルクを利用した多様な生活用資材の開発 中期計画 シルクによる安心・安全な生活用資材の開発を目的に、保存蚕品種繭や育成品種繭の新 たな機能性を明らかにするとともに、強度・伸度等繭糸質を高めた蚕品種を作出し、その 繭糸特性を活かした衣料用素材を開発する。また、高強度繭糸の特性を活かした上記医療 用素材開発のための基材提供として、超薄織り構造の人工皮膚用基材、人工血管等の基材 を開発する。形質転換技術を用い、セリシン蚕品種に抗菌性等新たな機能を導入した品種 の開発や、セリシンに化学的処理を施すことにより新たな機能性を付与した乳幼児・高齢 者・被介護者用衣料製品等、シルクによる多様な生活用資材を開発する。 【研 究 資 源】研究員数:4.0人、ポスドク数:0.0人、研究資金:16.6百万円 【論文・特許等】原著論文:5、IF合計値:0.898、IF平均:0.18、 特許:1(出願:0、登録:1)、実用新案:2(出願:1、登録:1) (中課題実績) 1.遺伝資源や育種素材から比較的繭糸強度の高い系統を日本種及び中国種それぞれ選び、交 雑後分離世代において生繰りによる繭糸強度による個体選抜を行った。その結果、中国種系 において選抜6世代目において突然強度の向上が認められた(図1)。また、繭糸の強度は 繭糸上の脆弱部位が影響していることが示唆された。 2.広食性セリシンホープの育成に関しては、選抜により低コスト人工飼料に対する摂食性を 高めることができたが、営繭率、化蛹歩合は低かった。この欠点は4齢から桑葉が含まれる 人工飼料を与えることによって改善された。 3.染色体置換系統の作出に関しては、遺伝的均一性が高い熱帯系中国種の大造と、広食性実 用素材系統を用い染色体置換系統の作出に着手し、現在までに戻し交雑第3世代を得た。 4.高強度繭糸の蚕品種として選抜した繭を用い、21d生糸を繰製し手術用縫合糸を作成した ところ、その強度は他品種繭に比べ高い傾向を示した。 5.繭糸による人工血管用基材として、内径1.5mmm以下のタイトな構造の繭糸チューブの作製 に成功し、ラットにおいて既存の血管と接続したところ、血管内部に内皮細胞、平滑筋細胞 が形成された(写真1)。 6.生糸及び繭糸繊度と光沢との関係を検討したところ、繭糸繊度の小さい品種の方が光沢値 が高くなることが明らかとなった。 7.太繊度繭「ありあけ」による真綿布団を大手布団メーカーと共同開発し、商品化を図った (写真2)。 8.前年度までに開発した太繊度多目的繰糸機へ任意に太細状態とすることのできるThick and Thin 機構を装着し、繊度に特徴のあるシルク素材を開発した。 自己評価 評価ランク 中課題 C・2) A (2) コメント 人工血管用基材として細い筒状シルク素材を開発し、ラットの試験 では良い結果が出るなど、研究は着実に実施され成果を上げている。 今後は、企業との連携も進める必要がある。 民間企業と共同開発した真綿布団を商品化に結びつけたことは高く 評価できる。なお、高強度繭糸はじめ機能性シルクの実用化に向けた 開発では、マーケットの規模やインパクトを想定して進める必要があ る。 - 102 - 5 4.8 4.6 強度 (g/d) 4.4 4.2 4 3.8 3.6 3.4 3.2 3 C A CxA S (CxA)xS 2 3 4 5 6 7 8 世代 図1 内径1.5mmφ 1.0mmφ 写真1 高強度繭糸系統(中国系)の選抜経過 1.5mmφによる移植試験 移植後12月経過 繭糸による人工血管(左)、それを用いたラットへの移植試験(中)及び移植後の断面 写真2 太繊度繭「ありあけ」による真綿布団の商品化 - 103 - 表11 運営費交付金 中 課 題 平成19年度 研究資源の投入状況・成果 その他外部資金 競争的資金 合 計 予算額 研究員数 ポスドク数 予算額 研究員数 ポスドク数 予算額 研究員数 ポスドク数 予算額 研究員数 ポスドク数 原著論文 (百万円) (人) (人) (百万円) (人) (人) (百万円) (人) (人) (百万円) (人) (人) IF値 合計 成果等 IF値 平均 特許 実用 品種 新案 登録 A01 A02 A03 A04 A05 A06 A07 A08 A 計 B11 B12 B13 B1計 B21 B22 B23 B2計 B31 B32 B3計 B41 B42 B43 B4計 B51 B5計 B 計 C11 C12 C13 C14 C1計 C21 C22 C2計 C 計 27.0 24.7 42.8 25.8 7.1 10.0 137.0 11.0 285.4 15.6 39.5 18.0 73.1 49.1 15.9 9.8 74.8 56.6 10.3 66.9 59.2 43.3 38.2 140.7 15.5 15.5 371.0 20.2 19.4 22.0 56.0 117.6 15.0 10.9 25.9 143.5 3.1 2.0 5.0 4.9 0.5 1.8 21.9 2.4 41.4 2.0 8.7 2.0 12.7 11.1 0.6 2.6 14.3 7.6 2.6 10.2 9.5 9.3 7.5 26.3 5.2 5.2 68.7 4.7 2.1 2.3 7.7 16.7 8.3 2.2 10.5 27.2 0.0 0.0 0.5 0.0 0.0 0.0 1.9 0.0 2.4 0.5 2.5 1.0 4.0 2.9 0.9 0.0 3.8 0.9 0.0 0.9 4.0 2.0 2.0 8.0 0.0 0.0 16.7 0.0 0.5 0.0 2.0 2.5 0.0 0.0 0.0 2.5 0.0 35.0 53.9 0.7 14.0 1.6 9.8 3.5 118.5 3.5 13.5 59.7 76.7 55.1 41.9 42.5 139.5 13.1 14.2 27.3 146.3 27.5 24.4 198.2 2.7 2.7 444.4 43.9 3.0 5.0 9.5 61.4 7.4 0.0 7.4 68.8 0.0 1.2 1.6 0.3 0.3 0.8 1.1 0.4 5.7 0.5 1.4 2.2 4.1 4.3 1.9 1.1 7.3 2.5 1.1 3.6 6.1 3.3 3.1 12.5 1.0 1.0 28.5 2.6 0.7 0.3 0.9 4.5 1.7 0.0 1.7 6.1 0.0 0.5 4.0 0.0 2.0 0.0 0.5 0.0 7.0 0.0 1.5 1.0 2.5 2.1 5.1 3.0 10.2 1.1 0.0 1.1 10.0 1.0 0.0 11.0 1.0 1.0 25.8 4.0 0.0 0.0 0.0 4.0 0.0 0.0 0.0 4.0 235.8 897.6 97.9 36.5 45.4 16.0 17.3 25.6 1,372.1 9.2 53.6 58.0 120.8 4.0 6.7 2.6 13.3 6.7 2.4 9.1 49.1 8.5 31.1 88.7 8.2 8.2 240.1 40.3 110.6 39.5 47.6 238.0 11.9 5.7 17.6 255.6 8.1 7.3 3.3 4.7 1.9 1.4 1.7 4.5 32.7 1.3 3.4 3.7 8.4 0.6 0.5 0.3 1.4 0.7 0.3 1.0 1.1 1.9 0.4 3.4 1.0 1.0 15.2 0.5 2.0 1.4 4.5 8.3 1.6 1.8 3.4 11.7 3.0 6.0 1.5 0.0 1.0 0.0 0.6 0.0 12.1 0.0 4.5 4.0 8.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 7.5 0.0 1.0 8.5 0.0 0.0 17.0 2.0 5.5 0.0 1.0 8.5 0.0 0.0 0.0 8.5 262.8 957.3 194.6 63.0 66.5 27.6 164.1 40.1 1,776.0 28.3 106.6 135.7 270.6 108.2 64.5 54.9 227.6 76.4 26.9 103.3 254.6 79.3 93.7 427.6 26.4 26.4 1,055.5 104.4 133.0 66.5 113.1 417.0 34.3 16.6 50.9 467.9 11.2 10.4 9.8 9.8 2.7 4.0 24.6 7.3 79.8 3.8 13.5 8.0 25.3 16.0 3.0 4.0 23.0 10.8 4.0 14.8 16.7 14.5 11.0 42.2 7.2 7.2 112.4 7.8 4.8 3.9 13.0 29.5 11.5 4.0 15.5 45.0 3.0 14 6.5 31 6.0 20 0.0 19 3.0 3 0.0 3 3.0 29 0.0 8 21.5 127 0.5 8 8.5 15 6.0 14 15.0 37 5.0 26 6.0 5 3.0 4 14.0 35 2.0 23 0.0 9 2.0 32 21.5 44 3.0 17 3.0 22 27.5 83 1.0 6 1.0 6 59.5 193 6.0 12 6.0 7 0.0 11 3.0 17 15.0 47 0.0 14 0.0 5 0.0 19 15.0 63 52.390 101.631 63.323 57.238 6.132 18.951 35.258 21.653 356.576 20.356 37.582 73.473 131.411 74.306 27.829 5.568 107.703 41.119 20.198 61.317 147.347 16.536 35.352 199.235 3.755 3.755 503.421 43.600 23.954 21.981 42.952 132.487 35.933 0.898 36.831 161.687 3.74 3.28 3.17 3.01 2.04 6.32 1.22 2.71 2.81 2.54 2.51 5.25 3.55 2.86 5.57 1.39 3.08 1.79 2.24 1.92 3.35 0.97 1.61 2.40 0.63 0.63 2.61 3.63 3.42 2.00 2.53 2.82 2.57 0.18 1.94 2.57 11 5 1 1 0 1 1 0 20 9 4 12 25 2 0 3 5 1 0 1 3 5 0 8 0 0 39 9 13 3 0 25 9 1 10 35 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 2 2 0 0 0 0 0 0 2 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 合計 799.9 137.3 21.6 631.7 40.3 36.8 1,867.8 59.5 37.6 3,299.4 237.1 96.0 388 1,029.148 2.65 94 2 4 237.1 96.0 388 1,029.148 2.65 94 2 4 共通費等 4,217.9 438.3 2,313.6 総計 7,769.7 人件費 委託費 9.1 165.5 137.3 21.6 806.3 4,217.9 2,746.0 2,701.7 2,298.6 222.6 40.3 36.8 4,389.0 59.5 37.6 12,965.0 なお、各中課題について、運営費交付金、競争的資金、その他外部資金別に予算額、研究員数、ポスドク数(19年度 中の雇用が6ヶ月未満は0.5人、それ以上は1.0人とした)、成果等の一覧を示した。 ※人数は、課題毎に小数点第2位を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 ※原著論文数及びIF合計は、課題間重複を含まず、かつ課題に帰属しないものを含む、研究所としてネットの数値である。 ※特許件数は、出願数及び登録数を合計した数値である。 - 104 - 2 研究成果の公表、普及の促進 (1)国民との双方向コミュニケーションの確保 中期目標 研究開発の推進に際しては、科学技術の進歩と国民意識とのかい離から、一般国民にとっ て研究開発が目指す方向が分かりにくい状況となっていることを踏まえ、研究所及び研究 者がそれぞれ国民に対する説明責任を明確化し、多様な情報媒体を効果的に活用して、国 民との継続的な双方向コミュニケーションの確保を図る。特に、遺伝子組換え技術等の先 端技術に関し、科学的かつ客観的な情報の継続的な提供と、研究の計画段階から消費者等 の理解を得る取組、情報発信等の活動を推進する。 中期計画 国民に対する説明責任を認識し、下記の双方向コミュニケーションを図る。 ①情報発信のための組織体制を整備し、ホームページ、パンフレット、マスメディア等を 活用して効果的な情報発信を行う。 ②効果的なコミュニケーションを行うためのスキルアップマニュアルを作成し、活用する。 ③遺伝子組換え技術等を活用した先端的な研究活動については、その情報の発信の中核と なる組織を設置し、国民との双方向コミュニケーションを図る。また、農業分野のバイ オテクノロジー研究、特にパブリックアクセプタンス等に関する調査を行う。 ④一般市民向けの説明会や成果発表会等市民参加型イベントを開催して、消費者の理解促 進に取り組む。 ⑤一般消費者、農業生産現場からの研究に関するニーズを把握するためのシステムを構築 する。 (実績) ①効果的な情報の発信 組織的な情報発信を行うために、広報室、遺伝子組換え研究推進室及び産学官連携推進室の 連携を強化し、積極的に農業生物資源研究所の成果を国民に周知する活動を行った。 〈ホームページ〉 ホームページは、毎月約22万アクセスがあり、その内約12万アクセスがMaffin外からのも のである。現在、ホームページのトップページをユーザーフレンドリーで、わかりやすい情 報発信ができるよう企画・改修作業を進めている。 〈刊行物〉 農業生物資源研究所の要覧は日本語版、英語版の完全版以外に、よりページ数の少ない簡 易版を作り、一般公開やフェア等を中心に一般に対して配布を行った。また、「農業生物資 源ジーンバンク」と「グリーンテクノ計画」の日本語版、英語版のパンフレットについても、 要覧同様、各種フェア等において配布を行った。農業生物資源研究所の成果の普及、利活用 の促進のためには、「平成18年度の主要な成果」、「研究資料(第7号)」、「農業生物資源研究 所ニュース」(5回)を冊子として発行した。また、「年報」、「Annual Report(2007)」につ いては、効率的な情報の発信のために昨年度からPDF化し、いずれもホームページ上で公開 している。さらに、「NIASアグリバイオサイエンスシリーズNo.4、動物・昆虫の行動メカニ ズムを解明する」、「食と農の未来を提案するバイオテクノロジー」の改訂版、「昆虫生命科 学研究の現状と将来の方向性について」、「バイオマス植物研究のビジョン」、「カイコって すごい虫」の発行も行った。ジーンバンクから「植物遺伝資源探索導入調査報告書(Vol.23)」、 「微生物遺伝資源探索収集調査報告書(Vol.20)」、「微生物遺伝資源利用マニュアル(21)と (22)」を、放射線育種場からGamma Field Symposia(45)を発行した。上記の発行されたすべ ての冊子については、PDFファイルとしてHP上に公開している。今後は、農業生物資源研究 所ニュースのWeb化を図るとともに、ホームページの改修を完成させる。 〈イベント〉 一般向けの公開シンポジウム・研究会では「バイオマスクロップとしてソルガム研究にど う取り組むか」、「ガンマフィールドシンポジウム」、「記念製糸夏期大学」、「シルクサミッ - 105 - ト2007 in 蚕都上田」、「イネ機能ゲノミクス国際シンポジウム」、「動物遺伝育種シンポジ ウム」、「フィブロイン・セリシンの利用研究会」、「遺伝資源研究会」等を15回開催し、積 極的に成果の伝達と理解を図った。また、異分野研究者との交流としては「国際バイオフォー ラム」、「TXテクノロジー」、「国際ナノテクノロジー総合展」、「消費者の部屋」等に10回 参加し(表12)、また、科学技術館、日本科学未来館の特別展示への協力を行った。 〔指標2-2-ア〕 表12 平成19年度効果的情報発信のための活動一覧 平成19 年度開催イベントおよび主催会議一覧 (15 件) フェア名 開催日 2007 一般公開(つくば地区) 19.4.20 来場者数 2,103 名 第1回国際ダイズゲノムプロジェクト会議 19.4.20 22 名(日米中韓) 2007 シルクフェア in おかや 19.4.29 360 名 バイオマスクロップとしてソルガム研究にどう取り組むか 19.6.4 50 名 賢材研究会(民間企業や工学系大学の研究者で構成)との交流会 19.6.15 32 名 第46回ガンマフィールドシンポジウム 19.7.11-12 99 名 第60回記念製糸夏期大学 19.7.26-27 250 名 北杜地区一般公開 19.7.29 126 名 シルク・サミット 2007 in 蚕都上田 19.10.11-13 280 名 2007 まつもと広域工業まつり 19.10.13-14 約 400 名 第 5 回イネ機能ゲノミクス国際シンポジウム 19.10.15-17 第13回動物遺伝育種シンポジウム 19.11.25 100 名 植物科学シンポジウム「植物科学の発展」 19.12.3 300 名 第 2 回「フィブロイン・セリシンの利用」研究会 20.2.22 101 名 20.2.28 85 名 平成 19 年度遺伝資源研究会「遺伝資源の長期保存をめざした新技術 開発」 355 名 (内 160 名海外) 主な外部行事への参加実績 (10 件) フェア名 開催日 来場者数 第6回産学官連携推進会議 19.6.16-17 - 第6回国際バイオ EXPO・国際バイオフォーラム(東京ビックサイト) 19.6.20-22 18,692 名 19.8.27-31 1,228 名 消費者の部屋特別展示「バイオテクノロジーがつくる未来」(農林水産 省本省) アグリビジネス創出フェア(ウィルあいち、名古屋) 19.11.9 150 名 アグリビジネス創出フェア 2007(東京国際フォーラム展示ホール) 19.11.27-28 東北アグリビジネス創出フェア 2007(仙台市情報・産業プラザ) 19.12.5 アグリビジネス創出フェア in Hokkaido(サッポロファクトリー) 19.12.7-8 近畿地域アグリビジネス創出フェア(大阪マーチャンダイズ・マート) 19.12.12 第 7 回つくばテクノロジー・ショーケース(産業技術総合研究所) 20.1.25 国際ナノテク 2008(東京ビッグサイト) 20.2.13-15 522 社、49,365 名 特別展「昆虫力-昆虫から学ぶ科学技術の最先端」(科学技術館) 19.8.11-26 昆虫研究領域協力 科学地下展(日本科学未来館) 19.9.22-20.1.28 ジーンバンク協力 - 106 - 9,409 名 240 名 1,550 名 120 名 約 1,000 名 ②効果的なコミュニケーションを行うためのスキルアップマニュアルの作成と活用 遺伝子組換え研究をはじめ様々な 研 究 成 果 を 適 切に 情 報 提供 す る こ メディア及び一般見学者等との と が 求 め ら れ てい る 。 現在 で は 、 コミュニケーションマニュアルの構築 単 に 情 報 提 供 する だ け でな く 研 究 平成19年度 平成18年度 内 容 が 適 切 に 理解 さ れ るか が 重 要 1)暫定コミュニケーションモ 基礎データの収集 で あ る 。 農 林 水産 先 端 技術 産 業 振 デルの作成 1)新聞論調の分析 興 セ ン タ ー な どの ア ン ケー ト 調 査 2)質問パターンによる回答例 ・GMOに対するメディアの見方 の作成 2)文献調査 等 の 結 果 か ら 、遺 伝 子 組換 え 研 究 3)想定問答集の作成 ・リスクコミュニケーション ・リスコミ・マニュアル に つ い て は 、 その 重 要 性に つ い て FAO、原子力、農薬、etc は 国 民 的 理 解 がな さ れ てい る と 判 ・メディア・スタディーズ 平成20年度~ ・科学技術社会論 断 さ れ る も の の、 遺 伝 子組 換 え 農 1)コミュニケーションマニュア 作 物 の 栽 培 や 遺伝 子 組 換え 食 品 の ルの使用 3)コミュニケーションマニュア 2)問題点等の抽出と改良 利 用 に 関 し て は、 国 民 的理 解 が 十 ル目次の作成 3)想定問答集の追加・改訂 4)質問パターンによる回答の 分 に な さ れ て いる と は 言い 難 い 状 留意点 況である。 一般市民との双方向コミュニケーションは次項で述べるとおり進めているが、農業生物資源 研究所等で開催する説明会に来るほどの関心のない大多数の国民に対して、どのように適切な 情報を提供するかが重要となる。大多数の国民はメディアを通して、多くの情報を得ているこ とから、今後は、マスメディアに対して誤解のない、正確な情報を提供するためのコミュニケー ション技術の向上が必要となる。 平成19年度はコミュニケーションマニュアルの作成を行うため、フリーのジャーナリスト、 一般紙科学部報道記者、テレビ報道記者など多様な属性を持つメディアへのヒヤリングを実施 し、コミュニケーション戦略の諸要素を明らかにした。その結果、マスメディアに正確に伝わ らない諸要因として、①生物学、農学などGMOを理解する上で必要な知識が欠如、②科学部の 不在、③記者クラブ以外の情報源としては個人のネットワークに依存した情報収集、④他社と の競争、⑤時間的な制約、などがあげられた。それをふまえたコミュニケーション戦略として、 ①記者が書きやすいプレスリリース、②日常的な情報提供、③定期的な勉強会、④メディア・ リタラシーの必要性などの対策としてあげられる。これらを盛り込んだマニュアル作成原案を 作成した。原案作成により当初目標の80%が進行したと考えている。しかし、本マニュアルは 原案の段階であり、さらに改善を進めて平成20年度においてコミュニケーションマニュアルと して一旦完成をさせる予定である。また、このようなマニュアルは適時改訂する必要があり、 本中期目標期間の終了年においては、その時点におけるベストのマニュアルを整備する。 〔指標2-2-イ〕 ③遺伝子組換え技術等を活用した先端的な研究活動に関する国民との双方向コミュニケーション 遺伝子組換え研究推進室を設置し、遺伝子組換え農作物の実用化及び「遺伝子組換え生物等 の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく第1種使用等や、「第1種 使用規程承認組換え作物栽培実験指針」に則った情報発信等を主たる業務にあたっている。 お茶の水女子大学に開設された社会人再教育講座において1講座「農業と生物学の接点」 (15回)を担当し、多くの研究者の協力を得つつ品種改良と遺伝子組換え技術について講義を 行い(http://www.lwwc.ocha.ac.jp/saikyouiku/2007/kamoku/kamoku_203.pdf)、平成20年度 も継続することとなっている。前述したコミュニケーション戦略をふまえた日常的かつ定期的 な情報提供として、新たに農業生物資源研究所主催、お茶の水女子大学共催により「分子生物 学に支えられた農業生物資源の利用と将来」(別名NIASオープンカレッジ)を開催する。これ により、生物資源の重要性やバイオテクノロジーを用いた研究と農業生物資源研究所の研究活 動の情報発信を進める(http://www.lwwc.ocha.ac.jp/saikyouiku/2008/kamoku/kamoku_207. pdf)。また、大学や行政、地方農政局、地方自治体、他法人、NPO法人、消費者団体等の - 107 - 要請により、遺伝子組換え農作物の利用の現状や規制の仕組み、 利用における問題点等について、20回以上の講演等を行うこと で、国民との双方向コミュニケーションを進めた。さらに、茨 城県の要請により県民大学における講義等を行った。遺伝子組 換え技術の理解促進のためのテレビやビデオの撮影等にも協力 を行った。平成19年度は、年度当初に想定された以上に、外部 からの協力要請もあり、多様な方法をとることで情報発信がで きた。 遺伝子組換え農作物の理解には種々の資料が必要となる。遺 伝子組換え農作物に関する資料として、すでに「食と農の未来 を提案するバイオテクノロジー -農業生物資源研究所の研究活 動- 」を作成して配布している。今後、遺伝子組換えカイコを 利用した実用化が想定されることから、まずカイコに興味を持っ てもらい、さらにカイコの有用性及び遺伝子組換えカイコの可 図13 カイコってすごい虫! 能性を紹介する小冊子「カイコってすごい虫」(図13)を作成した。 〔指標2-2-ウ、指標2-2-エ〕 ④一般市民向けの説明会や成果発表会等市民参加型イベントの開催と消費者の理解促進 遺伝子組換え農作物の第1種使用等については、「第1種使用規程承認組換え作物栽培実験 指針」に則った情報発信として、栽培開始前の一般説明会や田植え等の見学会を開催した。平 成19年度は、2系統のスギ花粉症緩和米の栽培を行い、田植え時にはメディアへの公開を行い、 ホームページにおける情報提供は継続した。 遺伝子組換え技術によって作出され、世界的に利用されている除草剤耐性ダイズや害虫抵抗 性トウモロコシの展示栽培を行っている。一般市民に見てもらい、遺伝子組換え農作物の効果 等を実感してもらうことにより、改めて遺伝子組換え農作物の利用等について考えるきっかけ を与えている活動は継続した。平成19年度は、双方向コミュニケーションの新たな取組みとし て、市民参加型展示ほ場を行った(図14)。一般参加者を募って、小面積ではあるが実際のダ イズ畑の除草を行ってもらい、一方で慣行除草剤使用区や除草剤耐性ダイズに非選択性除草剤 を散布した区を設定し、農作業における除草がどのようなものかを実体験しつつ、慣行除草剤 の使用や除草剤耐性作物の雑草防除効果を見るというものである。これにより、除草剤等の開 発の意味がよく理解されるものと考える。ただし、いずれの活動も、決して農薬や遺伝子組換 え農作物を強要することが目的ではなく、除草の大変さを体験し、除草剤や除草剤耐性ダイズ が開発された意味を十分に理解した上で様々な議論を展開してほしいと願っている。(見学会 の詳細については以下を参照)。 市民参加型展示ほ場の参加者の多くからは、遺伝子組換え技術に対する理解が深まったなど、 イベントに対して好意的な意見が多かった。さらに、コミュニケーションのあり方として、農 業生物資源研究所側が体験を通じて市民が学ぶ機会を今後も用意すべきであることや、ホーム ページや電子メールなどメディアを媒介しない情報発信が必要であること、学校などを経由し た広報活動を行い中高生に正しい知識を持ってもらうように努力すべきこと、などが指摘され ており、今後のコミュニケーションの在り方やコミュニケーションマニュアルへ反映していき たい。このような市民参加型コミュニケーション手法は、日本では新しい試みとして、日経バ イオ年鑑2008にも紹介され、広く関心を持たれている。 〔指標2-2-オ〕 - 108 - 図14 市民参加型展示ほ場 除草前のダイズ畑(左)、除草作業(中)、除草剤耐性ダイズと非選択性除草剤使用区(右) 1)一般説明会(平成19年5月9日~5月12日開催) 目的:農業生物資源研究所で行う花粉症緩和米(7Crp#10)のほ場栽培や展示ほ場で栽培する 除草剤耐性ダイズや害虫抵抗性トウモロコシ及び市民参加型展示ほ場について、栽培 の目的(生物多様性への影響評価及び様々な安全性試験のための試料の確保、遺伝子 組換え農作物に対する理解促進)や、遺伝子拡散防止措置等の栽培方法について広く 情報を提供するため。 参加人数:12名 内訳:メディア(4)、一般(8) 2)花粉症緩和米田植え見学会(平成19年6月28日開催) 目的:花粉症緩和米(7Crp#10)の栽培目的(様々な安全性試験のための試料の確保)や遺伝 子拡散防止措置等の栽培方法、研究の進捗状況等について情報を提供するため。 参加人数:37名 内訳:メディア(5)、研究所関係(21)、農業生物資源研究所(11) 3)一般説明会(平成19年7月3日開催) 目的:農業生物資源研究所で行う花粉症緩和米(7Crp#242-95-7:注 5月の説明会や6月28日 に田植えを行った系統とは別系統)の隔離ほ場栽培試験について、栽培の目的(生物 多様性への影響評価及び様々な安全性試験のための試料の確保、遺伝子組換え農作物 に対する理解促進)や、遺伝子拡散防止措置等の栽培方法、研究の進捗状況について 広く情報を提供するため。 参加人数:17名 内訳:メディア(1)、一般(4)、研究所関係(6)、農業生物資源研究所(6) 4)花粉症緩和米田植え見学会(平成19年7月23日開催) 目的:花粉症緩和米(7Crp#242-95-7)の栽培目的(生物多様性への影響評価及び様々な安全 性試験のための試料の確保)や遺伝子拡散防止措置等の栽培方法について情報を提供 するため。 参加人数:1名 内訳:一般(1) 5)市民参加型展示ほ場(平成19年7月14日、8月4日開催) 目的:世界的に作付けされている遺伝子組換え農作物を見てもらうとともに農作業(除草作 業)を実際に体験することにより、農作業の大変さ、除草剤の効果などを見てもらい、 新たな議論を行うきっかけにする。また、花粉飛散による遺伝子拡散等、一般の方の 遺伝子組換え技術に関する疑問に答えるための質疑応答を行い、遺伝子組換え農作物 に対する議論を行う。 参加人数:23名(一般) 6)花粉症緩和米収穫見学会(平成19年9月19日開催) 目的:花粉症緩和米の試験の進捗状況を広く知らせるため。 参加人数:10名 内訳:メディア(5)、一般(1)、研究所関係(4) 7)花粉症緩和米収穫見学会(平成19年10月11日開催) 目的:花粉症緩和米の試験の進捗状況を広く知らせるため。 参加人数:5名 内訳:メディア(2)、農業生物資源研究所(3) - 109 - 農業生物資源研究所の研究成果の公表の一環として所内で行う一般公開については、つくば 地区(放射線育種場含む)では科学技術週間に合わせて平成19年4月20日に開催し、「生命科学 の不思議 きて!みて!ふれる!」のテーマで2,103名(昨年は2,076名)の参加を得た。岡谷 地区(長野県岡谷市)では平成19年4月29日に「2007シルクフェアinおかや」を開催し、360名の 参加を得るとともに「シルク・サミット2007in蚕都上田」を平成19年10月11~13日に開催し、 280名の参加を得た。さらに北杜地区(山梨県北杜市)では、一般公開を夏休み(7月29日)に 行い昨年の4倍の126名の参加を、松本地区(長野県松本市)では平成19年10月14~15日に開催 した「2007まつもと広域工業まつり」の中で研究成果の紹介を行い、約400名の参加を得た(図 16)。年々、生物科学への関心が高まっていると感じられ、来年度も積極的に公開をしていく。 図15 つくば地区における一般公開 図16 松本地区における研究紹介 青少年の理科、科学への関心の醸成のためには、農業生物資源研究所における研究者の役割 が大きく、特に体験型の学習をし、研究者と接した生徒が自然科学分野に進路を決める場合も 多い。農業生物資源研究所では、科学技術振興機構の「サイエンスキャンプ」、つくば市教育 委員会主催の「つくばちびっ子博士」、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH) 等に積極的に協力し、実験・講義を組込んだ見学プログラムを実施している(図17、図18、表 13)。 来年度についても、一般公開については、つくば地区では1日開催の他、子供向けのイベン トを2日目に行うこととしている。また、引き続き実験を含んだ見学プログラムを実施すると ともに、平成20年10月21日には農業生物資源研究所成果発表会を企画し、講演会、ポスター発 表で成果を公表することとしている。 〔指標2-2-オ〕 図17 サイエンスキャンプでの説明風景 - 110 - 図18 つくばちびっ子博士の探検 表 13 小中高生に対する体験型学習プログラム(見学含む)等一覧 平成 19 年 4 月 27 日 茨城高等学校 32 名 講義及び DNA 抽出実験 5 月 11 日 茨城県立友部高等学校1年生 41 名 GB見学 5 月 21 日 横浜市立港南中学校 32 名 見学・実習 5 月 23 日 犬山市立南部中学校2年生 5名 見学・実習 5 月 29 日 大阪市立東高等学校 8名 DNA 抽出実験 5 月 31 日 東京都立科学技術高等学校 42 名 電気泳動実験 6月1日 東京都立科学技術高等学校 40 名 電気泳動実験 横浜市立浅間台小学校 10 名 見学・実習 77 名(小学生) 見学・実習 7 月 10 日 7 月 25 日~8 月 29 日 (毎週水曜日、8 月 15 日除く) つくばちびっ子博士(つくば市教育員 会生涯学習課) 7 月 27 日 尾道北高等学校 4名 DNA 抽出実験 7 月 31 日 武庫川女子大学付属中学校・高等学校 34 名 見学・実習 8月1日 新潟県立新潟南高等学校 17 名 DNA 抽出実験 8月2日 福岡県立筑紫丘高等学校 12 名 見学 9 名(高校生) 実験・講義 8 月 8-10 日 サイエンスキャンプ(科学技術振興機 構) 10 月 4 日 島根県立出雲高校理数科2年生 20 名 DNA 抽出実験 10 月 9 日 高知学芸高校 21 名 電気泳動実験 見学 生物化学コース 10 月 10 日 兵庫県立姫路東高等学校 31 名 10 月 11 日 島根県立大田高校理数科 12 名 DNA 抽出実験 10 月 11 日 島根県立大田高校理数科 12 名 昆虫実験、見学 10 月 12 日 茨城県取手生活学校 40 名 講義・見学 10 月 17 日 島根県立浜田高校 20 名 DNA 抽出実験 10 月 17 日 和光高校 9名 講義・見学 10 月 23 日 栃木県立石橋高等学校 10 名 見学 10 月 24 日 岐阜県立岐山高等学校 42 名 見学 11 月 8 日 群馬県立桐生高校 22 名 DNA 抽出実験 11 月 15 日 長野県山形小学校 33 名 見学 11 月 16 日 宮崎県立宮崎北高等学校 6名 講義・見学 11 月 21 日 共栄学園高等学校 38 名 講義・見学 平成 20 年 1 月 31 日 石岡第 2 高等学校 45 名 講義・見学 ⑤研究に関するニーズを把握するシステムの構築 一般消費者、農業生産現場からの研究に関するニーズを把握するため、研究者がイベントや 見学対応に積極的に参加できる仕組みを作るとともに、農業生物資源研究所に寄せられた技術 相談にも相談に乗ってもらい、それらのQ&Aを蓄積している。 見学、視察、技術相談等の来訪者数(一般公開除く)は、日本国内から330件、計2,816名、海 外から39件、計260名であった。この内、143件、309名は技術相談であった。また、メールで の広報室への技術相談は少なくても100件以上あり、この種の問い合わせが多くなっている。 このため、平成20年度においてはホームページ上に相談窓口を開設する。 生産者・消費者等との意見交換が直接できる「アグリビジネス創出フェア(東京)」、「近畿、 東海、東北、北海道の各地域のアグリビジネスフェア」、「消費者の部屋」等の催しには、積 極的に参加し、一般からのニーズの把握に努めた。これらのフェアには、広報室、遺伝子組換 え研究推進室、産学官連携推進室等の担当者及び研究者が出席し、それぞれの立場で研究ニー ズの把握、研究、知的財産権の情報提供を行った。 〔指標2-2-カ〕 - 111 - 図19 アグリビジネス創出フェア(東京) 図20 消費者の部屋での展示(本省一階) (2)成果の利活用の促進 中期目標 新たな知見・技術のPRや普及に向けた活動、行政施策への反映を重要な研究活動と位 置付け、研究者及び関連部門によるこれらの活動が促進されるように努める。 研究成果は、第1期中期目標期間で得られたものを含めて、データベース化やマニュア ル作成等により積極的に利活用の促進を図る。さらに、先端研究成果の実用化に向けた環 境を整備するとともに、作物研究、畜産研究等の応用研究との連携により利活用の促進を 図る。普及に移しうる成果の件数については、数値目標を設定して創出に取り組む。 中期計画 ①農林水産業における生産活動を通した社会への貢献(農業生産への貢献)及び社会に直 接の利便をもたらすことができる産業技術開発への貢献(生物産業への貢献)につなが る成果(普及に移しうる成果)を、外部評価に基づき中期目標の期間内に10件以上創出 する。 ②成果の受容者には、多様な媒体を通じて成果情報を伝えるように努める。 ③各種研究成果を分かりやすい知的基盤データベースとして構築し、公開データとして ホームページ上で発信するとともに、バイオテクノロジー研究の中核機関として利活用 のセンター機能を発揮する。 ④これまで研究所に蓄積してきた遺伝資源やゲノムリソースを国内外に積極的に提供す る。 ⑤研究所の成果を活用したベンチャー育成促進に向けた環境の一層の整備を図る。 (実績) ①普及に移しうる成果 各研究領域から提出された研究成果候補課題について、研究領域長、研究主幹等による審査 を実施し、農業生物資源研究所研究推進戦略会議における検討を経て、主要研究成果10件を選 定した。これらは「平成19年度の主要な研究成果」(資料5「平成19年度の主要な研究成果」) として印刷・配布するとともに、農業生物資源研究所ホームページ上で公開した。これら10件 の内2件は、農林水産省農林水産技術会議事務局が選ぶ、2007年の農林水産研究成果10大トピッ クスの第1位と10位にランク付けされた。また、農業生産・生物産業への貢献に分類された1 件を普及に移しうる成果(直ちに利活用できる成果)として選定した(表14)。普及に移しう る成果は、その後の普及度が問われるので、利用可能性の点から厳しい審査を行っている。農 業生物資源研究所が担う先端的・基盤的研究からは、直ちに利活用できる成果は簡単には生み 出されないが、中期計画が進むにつれて、企業との共同研究や研究成果の技術移転を通じて普 及に移しうる成果が増えると期待される。 〔指標2-2-キ〕 - 112 - 表14 分野 センター・ユニット 平成19年度の主要な研究成果 成果名 成果の要約 分類 1 植物 日本型品種「ササニシキ」の遺伝的背景に多収性インド型品種「ハバタキ」の染色体断片 QTLゲノム育種研究セ イネ染色体断片置換系統群の作出 を置換した系統群を作出し、一穂籾数などシンクサイズに関わる穂形態関連QTLを多数 知的貢献 ンター と穂形態形質の遺伝解析 検出した。各QTLの効果は小さく、一穂籾数に対して独立かつ相加的に作用することが明 技術開発 らかとなった。 2 植物 遺伝子組換え作物開 発センター イネ種子を基盤とする経口コレラワ クチンの開発 3 植物 耐病性研究ユニット イネの誘導抵抗性に関わる転写因 子WRKY45の発見とその利用 4 植物 5 植物 コレラワクチンを種子に蓄積する遺伝子組換えイネを開発した。このイネの種子をマウス へ経口投与した結果、コレラ毒素に対する防御抗体が産生され、下痢の症状が抑えられ たことから、経口コレラワクチンとしてのイネ種子の有効性が明らかになった。 イネにおいて抵抗性誘導剤ベンゾチアジアゾールの作用に必須の役割を担う転写因子 WRKY45を見出し、この転写因子を過剰発現させたイネが、プライミング効果によりいもち 病および白葉枯病に極めて強い抵抗性を示すことを明らかにした。 知的貢献 技術開発 技術開発 知的貢献 ToMV抵抗性遺伝子Tm-1 をもつトマトの細胞抽出液に、試験管内ToMV RNA複製阻害 植物・微生物間相互作 トマトモザイクウイルス (ToMV) のゲ 活性を検出し、これを精製することによりTm-1 遺伝子産物を同定した。さらにこのタンパ 知的貢献 用研究ユニット ノム複製を阻害する遺伝子を同定 ク質が、ToMVのRNA複製を司るタンパク質に結合して、その働きを阻害することを明らか にした。 遺伝子組換え技術研 イネ遺伝子のピンポイント改変によ 標的遺伝子をピンポイントで改変することにより、除草剤に耐性のイネを育成することに 技術開発 究ユニット る除草剤耐性の付与 成功した。 6 昆虫 遺伝子組換えカイコ研 遺伝子組換えカイコを利用したネコ 究センター インターフェロンの生産 7 昆虫 昆虫ゲノム研究・情報 カイコゲノム統合地図 解析ユニット 8 昆虫 9 昆虫 10 動物 遺伝子組換えカイコを用いてタンパク質生産をより効率的にするため、フィブロインH鎖遺 伝子を利用した発現ベクターを作成し。ネコインターフェロンの生産を試みた。このベク ターはフィブロインH鎖遺伝子のN末とC末の配列の間に目的とするタンパク質をコードす る塩基配列を挿入するという特徴を持ち、目的遺伝子をカイコに導入しところ、大量のタン パク質を生産できることが分かった。また、プロテアーゼの切断部位を利用することによ り、活性の高いネコインターフェロンを調製できることが示された。 1755個のBACマーカーをマップした高密度BACマーカー連鎖地図を作成した。BACクロー ン約8万個のフィンガープリントからBACコンティグを作成し、BACマーカーを用いて連鎖地 図に貼付け、染色体の76%をBACクローンでカバーするカイコゲノム統合地図を作成した。 カイコゲノム情報を利用して幼若ホルモン(JH)生合成前期経路の遺伝子を全て同定し、 制御剤標的遺伝子研 カイコの幼若ホルモン前期生合成酵 ファルネシルピロリン酸シンターゼが3種存在することを見出した。前期遺伝子の大多数 究ユニット 素遺伝子群の同定と発現解析 がアラタ体で強く発現しており、またアラタ体での発現レベルとJH合成活性の間に一定の 相関が認められた。 トレハローストランスポーター遺伝子 トレハロースを細胞に大量に蓄積するネムリユスリカという昆虫において、トレハロースを 乾燥耐性研究ユニット の単離と機能解析 特異的に細胞膜の内外に輸送する遺伝子の単離に世界で初めて成功した。 ブタの椎骨数に関与する量的形質遺伝子座(QTL)に位置する遺伝子が核内受容体 Germ Cell Nuclear Factor (NR6A1)であることを明らかにした。NR6A1にはQTLタイプに対 家畜ゲノム研究ユニッ ブタの椎骨数を決める責任遺伝子の 応するアミノ酸置換があり、その原因となるSNPによりDNAマーカー選抜が可能となった。 ト 同定 また体節形成期のマウス胚において、椎骨のもととなる体節内にNR6A1の発現が認めら れた。 ②多様な媒体を通じて成果情報を 伝える 研究成果については農業生物資 源研究所のホームページを始め、 イネゲノム、ジーンバンク等のホー ムページで随時更新しながら、最 新の情報を提供している。また、 重要な成果についてはプレスリ リースを行うとともに各種フェア にてポスター発表、口頭発表を行っ ている。知的所有権情報等も同様 にホームページ上から公開してい る。 一方、効率的な成果の伝達を行 うため、紙媒体での公表をなるべ く減らす方向での体制作りを行っ ている。 〔指標2-2-ク〕 知的貢献 知的貢献 知的貢献 知的貢献 技術開発 表15 ホームページに公開している知的基盤データベース 遺伝資源 農業生物資源ジーンバンク 農林水産DNAバンク イネゲノムリソースセンター 蚕糸関係遺伝資源データベース アズキ及びケツルアズキのSSR イネゲノム RAP-DB(イネアノテーションデータベース) イネ完全長cDNAデータベース イネ遺伝子発現データベース イネゲノム地図統合データベース ミュータントパネルデータベース シスエレメントモチーフ検索データベース イネゲノムアノテーションデータベース イネプロテオームデータベース イネミトコンドリアゲノム情報 インディカ品種カサラスのBACライブラリーBLAST検索サイト ③知的基盤データベースの公開 現在ホームページ上にある知的 基盤データベースは遺伝資源、イ ネゲノム、昆虫ゲノム、家畜ゲノ ム、その他に区分されて表15に示 した26が公開されている。利用者 は基本的にこれらのデータベース に自由にアクセスでき、利用でき る。平成 20年 2月にはアズキ及び ケツルア ズキの SSRマーカー情報 とトビイ ロウン カEST情報を公開 生物産業 イネタンパク構造データベース 昆虫ゲノム カイコプロテオームデータベース カイコcDNA(EST)情報 カイコゲノムデータBLAST検索 カイコゲノムアノテーションデータベース トビイロウンカEST情報 家畜ゲノム ブタcDNA(EST)情報 ブタのDNAマーカー情報 その他 作物学データベース 生体内分子の三次元構造データベース イネ白葉枯病菌ゲノムデータベース http://www.nias.affrc.go.jp/database/index.html - 113 - した。 〔指標2-2-ク〕 ④遺伝資源の提供 ジーンバンクが保存する遺伝資源に対する配布要請に応じ、植物遺伝資源6,150点、微生物 遺伝資源1,084点、動物遺伝資源211点、ブタDNA23点、のほか原蚕種、交雑原蚕種、交雑蚕品 種及び保存蚕品種の配布を行った。また、収集した遺伝資源の中から代表的な品種・系統を選 定し、遺伝的変異をできるだけ少ない系統で幅広く包括する多様性研究用セット(コアコレク ション)として開発した、世界のイネコアコレクション22セット及び日本在来イネのコアコレ クション14セットを配布した。配布した遺伝資源の利用目的としては、ストレス耐性品種開発 等のための育種素材、ゲノム研究や遺伝子解析の素材、作物病害研究の基準菌株及び品種識別 技術開発のためのデータ収集材料等が挙げられる。 イネゲノムリソースセンターを中心として農業生物資源研究所独自の研究リソースの整備を 進め、国内外の研究コミュニティーに配布を実施した。配布可能なリソースは、約37,000クロー ンのイネ完全長cDNA、レトロトランスポゾンTos17を用いた約5万系統の遺伝子破壊系統、遺伝 解析材料10集団であった(表16)。平成19年度の各材料の配布実績は表17のとおりであり、 リクエスト件数及び配布数量は、イネ完全長cDNAが534件、3,357クローン、Tos17変異系統が 176件、936系統、遺伝解析材料が34件、1,349系統であった。DNAバンクでは、ブタ由来の研究 材料申し込みが1件あり、ブタ完全長cDNAクローンを1クローン配布した。 配布件数は、毎年度一定ではなく増減するので、数字だけで即断はできないが、総じて昨年 同期間に比べ点数が減少しており、農業生物資源研究所の中期計画に挙げたように「遺伝資源 の来歴及び特性情報の蓄積と発信、ホームページ上での情報提供等により利用者拡大を図り、 配布を促進する。」ことをめざす上で充分とは言えない。特に、植物遺伝資源の配布に関して は、農業生物資源研究所内や農業・食品産業技術総合研究機構他の独法への配布が多いのに対 し、大学や民間への配布が増加せず、むしろ減少している。作物遺伝資源のナショナル・ジー ンバンクとして、国内の育種家・研究者にリソースを提供するという本来の役割を考えて、今 後、価格(手数料)の検討が必要である。それによって一度に多数の遺伝資源を利用して有用 な形質をスクリーニングすることが可能になる。 遺伝資源の利用の促進には、信頼できる情報が備わっているかどうかが重要である。イネの コアコレクションは、総計約4万点あるイネ遺伝資源からその遺伝的多様性を最大限カバーす るような69系統を選んでセットにしたものであるが、ゲノム研究や遺伝子機能研究などの需要 に応えたものとして、多数利用されている。このように、研究者が必要とするリソースをタイ ムリーにかつ適価にて提供することが重要と認識している。 なお、配布申請があってからの事務処理や遺伝資源の発送は、スムーズに行われている。今 後、インターネットなどを利用して、提供に掛かる時間の短縮を図る。 データベースとして公開しているゲノム情報やゲノム解析ツールを広く利用してもらうため に、平成19年度にイネゲノムリソースセンターでイネオリゴマイクロアレイ研修1回とゲノム インフォマティクス初級編研修1回行い、合計38名の参加があった。 また、マイクロアレイ解析の利用環境を整備した開放型施設(オープンラボ)を平成20年2月 から開設し、マイクロアレイ解析が広く普及するよう研究コミュニティーに開放した。 〔指標2-2-ク〕 - 114 - 表16 イネゲノム研究におけるリソースの整備状況 リソースの整備状況 リソース名/区分 塩基配列 国際コンソーシアム全体では、370.7MB (95.3%)を完全解読 (残りの部分は繰り返し配列が多く解読が困難) 日本は全体の55%を完全解読 完全長cDNA 37,029クローンの配布可能 遺伝地図 染色体部分置換系統群 4種類176系統 戻し交雑自殖系統群 5種類571系統 半数隊倍加系統群 1種類210系統 ミュータントパネル ミュータントパネル 約5万系統 表現型データベース 約4万系統 破壊遺伝子データベース 約6千系統(約2万件) プロテオーム 2次元電気泳動ゲルデータ 25件 データベース登録タンパク質 15,980件 (アミノ酸配列情報5,890) マイクロアレイ 完全長cDNA情報を利用した4×44KRice Oligo-microarray RAP-DB作成 アレイ解析室のオープンラボ形式による一般利用促進 DNAバンク EST 48,562クローン RFLPマーカー 1,713クローン YACフィルター 7,606クローンをスポット 表17 平成19年度の研究材料配布実績 研究材料の種類 イネ完全長cDNA Tos17変異系統 交配親系統 個別系統 日本晴/カサラス BIL98系統 日本晴/カサラス CSSL54系統 コシヒカリ/カサラス BIL182系統 コシヒカリ/カサラス CSSL39系統 遺伝解析材料 コシヒカリ/NonaBokura CSSL44系統 集団セット ササニシキ/ハバタキ BIL85系統 ササニシキ/ハバタキ CSSL39系統 アキヒカリ/コシヒカリDHL212系統 日本晴/コシヒカリ//コシヒカリ BIL127系統 日本晴/コシヒカリ//日本晴 BIL79系統 計 配布件数 クローン(系統)数 534 3,357 176 936 8 17 7 53 1 98 3 162 2 364 3 117 4 176 0 0 4 156 0 0 1 127 1 79 744 5,642 ⑤ベンチャー企業支援 ベンチャー企業の支援については、平成16年に認定した「(有)プロライフ」(絹タンパク を原料としたスキンケア素材の開発と製造、販売事業)及び平成18年に認定した「(株)プリ ベンテック」(抗体製剤の開発と抗体の新規利用法の開発に係る事業)の2社に対し、特許の 実施許諾、大わし地区の別棟施設を企業の活動拠点として利用するため、居室・実験室及び実 験装置の利用許可を与えるなどの支援を行った。 〔指標2-2-ケ〕 (3)成果の公表と広報 中期目標 研究成果は、積極的に学術雑誌等への論文掲載、学会での発表等により公表するととも に、主要な成果については各種手段を活用し、積極的に広報を行う。査読論文の数及びそ のインパクトファクター(IF)については、数値目標を設定して成果の公表に取り組む。 - 115 - 中期計画 ①研究成果は国内外の学会、シンポジウム等で発表するとともに、中期目標の期間内に1, 460報以上の査読論文の発信を目指す。また、論文の量と併せて質の向上を図り、その 成果を国際的に注目度の高い学術雑誌等に積極的に発表する。中期目標期間内の全発表 論文のインパクトファクター(IF)総合計値3,300以上を目指す。 ②研究成果が専門家のみならず、広く一般の国民にも理解されるよう、中期目標期間中に 100回以上のプレスリリースを行う等、プレス発表によるマスメディアを通じた広報や ホームページ、具体的な展示等を通じた一般公開等の様々な広報手段を活用し、分かり やすい広報活動を推進する。 (実績) ①学術論文等 平成19年度における研究成果の発表は、査読のある原著論文で388報であり、インパクトファ クター(IF)の合計値は1,029.148であった。目標数(292報/年)、インパクトファクター 総合計値の目標値(660/年)ともに大幅に上回っており、発表実績が加速しているとともに、 昨年同様 Nature(IF:26.681)、PLoS Biology(IF:14.101)、Frontiers in Neuroendocrinology (IF:11.526)など注目度の高い学術雑誌への投稿がみられる(表18、資料3「研究業績一覧(原 著論文)」)。 〔指標2-2-コ〕 表18 インパクトファクター 10以上 原著論文のインパクトファクター別公表状況 掲載論文数 7 (10) 5以上10未満 43 (36) 2以上5未満 146 (139) 2未満 173 (152) 和文誌 19 (20) 388 (357) 合 ( 計 主な学術雑誌名 Nature, PLoS Biology, Frontiers in Neuroendocrinology, Genome Research, The EMBO Journal, The Plant Cell, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, Cancer Research, Genome Biology, Molecular and Cellular Biology, Molecular Biology and Evolution, The Plant Journal, Nucleic Acids Research, Plant Physiology, Journal of Biological Chemistry など )内の数値は18年度の実績 ②研究成果の情報提供と公開 記者発表は、記者レクチャー4回、資料配付11回、お知らせ11回の計26回と積極的に行い、 報道に対応するとともに、新聞、テレビ、雑誌等のマスコミ関連の取材にも対応し、情報提供 を行った。その結果、農業生物資源研究所が関係する記事が新聞に161回掲載された他、ラジ オ、テレビ、雑誌等で70件公表された(表19)。昨年の傾向として、オンライン記事がプレス 直後に出る場合が多く、新聞記事と同様、これらの情報収集も必要と思われた。 プレスにしないホームページ上でのお知らせ(11回)、記者懇談会での話題提供(21回)、農林 水産技術会議「食と農の研究メールマガジン」への掲載についても効果的な広報手段と考えら れた。今後、ホームページ上でのお知らせについてはさらに強化していく予定である。 〔指標2-2-サ〕 - 116 - 表19 平成19年度主な報道記事等一覧 月日 新聞記事タイトル 機関名 19.4.4 動物実験成功したけれど… 花粉症緩和米 商品化お預け 4.20 豚の背骨の長さ調節遺伝子発見 新聞社 生物研 朝 日 生物研等 日経産業 4.29 絹→人工血管 織物の技法活用 血栓を抑制 東京農工大学・生物研 毎 日 5.8 たんぱく質で黄色い繭に カイコの腸内で発見 国立感染症研・生物研 毎 日 6.22 葉いもち抵抗性 穂いもち抵抗性 遺伝子集積で耐病性アップ 岩手県・生物研 岩手日報 6.27 イネ遺伝子網羅解析 DNAチップ 生物研 化学工業 6.27 遺伝子組み換え 農作業を通して学習 生物研 毎 日 6.29 クモ糸成分カイコで製造 遺伝子組み換え成功 生物研 日経産業 生物研 日本経済 7.12 ケイ素吸収 遺伝子をイネで発見 岡山大学・生物研 日経産業 7.16 トレハロース輸送遺伝子を発見 生物研 東 京 7.18 稲の病害 抵抗遺伝子を発見 生物研 日本農業 7.18 イネの複数病害 防除機能遺伝子 生物研 日経産業 7.9 乾燥に耐える遺伝子を発見 8.3 超低温受精卵でブタ出産に成功 生物研・麻布大学 日本経済 8.8 病原体攻撃物質を合成 トマトから遺伝子発見 生物研等 日本経済 8.22 ”ロースたっぷり豚”へ前進 生物研 産 経 8.22 遺伝子解析事業始動へ 新手法のツール取り揃え つくば遺伝子研究所・生物研 化学工業 8.31 RNAサイレンシング機構関与する遺伝子 イネで発見 9.13Y イネ遺伝子”ピンポイント”組み換え 9.14 品種改良 思い通りに 9.19Y 低温でも発芽イネの遺伝子 10.4 「コシ関東HD1号」「関東HD2号」 食味同じで昨期分散 10.5 メンデルの「遺伝の法則」発見に使用 緑色マメ遺伝子を特定 国立遺伝研・生物研 科 学 生物研・クミアイ化学工業 毎 日 生物研・クミアイ化学工業 日本農業 ホクレン・生物研 日本経済 農研機構・生物研 日本農業 東京大学・生物研 日刊工業 11.14 統合失調症 新たな原因遺伝子 不飽和脂肪酸と関連 理研・生物研等 日経産業 11.16 農林水産研究で功績 40歳未満若手表彰 生物研等 科 学 12.20 10大農水産研究成果「WRKY45」発見が1位に 生物研等 日本農業 生物研等 化学工業 20.1.07 TGカイコ用い有用タンパク、ネオシルク 1.27 ひと紀行、いばらきの女、幅広い分野で日々探求 生物研等 読 売 2.13 ヒト1型コラーゲン生産 ネオシルク・生物研 化学工業 2.14 オープンカレッジ開講 生物研 化学工業 2.18 昆虫のフェロモン研究 生物研 東京新聞 2.22 米から薬品製造 東大・生物研他 日経新聞 3.17 イネFOXシロイヌナズナの表現系 理研・生物研等 化学工業 3.21 品種復活新ビール 生物研 茨 城 3.28 乾いても再生の秘密 東工大・生物研 朝日新聞 Yは夕刊 その他 月日 記事タイトル 機関名 報道機関 生物研 研究ジャーナル 6.16 クリプトビオシスから覚醒するネムリユスリカ 生物研 日本テレビ(20-21) 6.24 そこが知りたい放射線、放射線農業利用研究施設レポート 生物研(放育) エネ情報誌「夢」 6.8 ダイズゲノム研究の開始に向けて 6.30 ネムリユスリカ 生物研 日本テレビ 7.17 病気に強くなる稲の遺伝子 生物研 NHK水戸20:55-56 7.22 研究所はいま 生物研 NHKFMpm18 8.24 不思議の国!つくば潜入大作戦 生物研 NHKデジタルpm20 生物研 TBSデイキャッチpm5 10.6 昆虫の生体防御機構、タイワンカブトムシ体液中の抗菌活性測定 生物研 NHK科学大好土曜塾 9.5 ジーンバンク紹介 11.15 花粉症緩和米開発最前線 生物研 子供の科学12 11.21 遺伝子組換え農作物の研究開発 生物研 東海ラジオam8 12.10 ゲノム研究の紹介 生物研 2.23 林原生物化学、トレハロース(今夜世界が選ぶ感動の日本老舗編) 生物研(奥田) テレビ東京速報 TBS 2.25 花粉症2008 生物研ほか 週刊現代 2.27 液体窒素保存、種子保存 生物研 テレビ朝日報道ステーション 3.04 スギ花粉緩衝米 生物研(田部井) 日本TVズームインスーパー - 117 - (4)知的財産権等の取得と利活用の促進 中期目標 重要な研究成果については、我が国の農業の振興に配慮しつつ、国際出願も含めた特許 権等の迅速な取得により権利の確保を図るとともに、民間等における利活用を促進する。 また、先端技術により得られた育種素材等については、優良品種の育成・普及を図る。 特許出願件数、特許許諾率及び品種登録出願数については、数値目標を設定して取り組 む。 中期計画 ①研究成果の実用化のために不可欠な特許の戦略的取得を目指し、中期目標期間内に200 件以上の国内特許を出願するとともに、取得した特許については許諾状況等を踏まえ定 期的な見直しを行う。 ②出願した特許等は、自ら積極的に公開し技術移転に努めるとともに、農林水産大臣が認 定した技術移転機関(TLO)を通じた技術移転を図り、中期目標期間を通して6%以 上の許諾率を目指す。 ③先端技術により得られた育種素材等については、MTA(材料等移転合意書)等を交わ すことによって権利を確保しつつ、優良品種の育成のために積極的に提供する。また、 育種研究の成果については、利用促進を図るため、中期目標の期間内に10件以上の新品 種及び中間母本の登録出願を行う。 (実績) ①知的財産権の取得 平成18年度に引き続き、平成19年度の国内特許出願数は目標値に達しなかったが、これは、 平成18年度から主として特許出願経費の削減を目的として費用対効果の点から特に海外への遺 伝子特許出願を中心に特許出願申請を精査したことが原因と考えられる。その対策として、出 願の方針を見直し、研究成果の社会還元を目的に特に国内特許出願は積極的に行い、実施許諾 を目指すとした特許取得方針を策定した。この方針は職員に周知徹底するとともに、特許出願 の啓蒙を図るため、特許出願マニュアルを作成した。マニュアルはイントラネットに掲載して、 特許出願の利便を図った。さらに、特許情報活用支援アドバイザーによる知的財産権に関する 講習会を開催し、研究領域毎に特許相談会を開くなど、積極的な支援を行った。 その結果、本年度は国内特許出願30件と微増ではあるが目標値に近づきつつある。外国出願 は16件、PCT出願4件を行った。また、出願中の特許の内、国内特許15件、外国特許42件が平 成19年度中に特許登録された。 〔指標2-2-シ〕 ②知的財産の技術移転 知的財産については、実施許諾可能な特許を、産学官連携推進会議、アグリビジネスフェア 等の展示会場において、民間企業等へ情報提供を行い、技術移転を図った。さらに、国内保有 特許220件、外国保有特許130件の内、農林水産省認定TLO(技術移転機関)のAFFTIS(社団法 人農林水産技術情報協会)アイピーを通じるなどして特許権等の実施許諾を図った。本年度は、 これらの許諾からの実施料収入は、農業関係の製品については製品単価が低いものが多いこと や、実施許諾案件でも製品販売に至らないものがあることなどが影響したと考えられ、特許許 諾が56件で115万円、登録品種については48件で6万円の収入を得た。特許の実施許諾率は国 内外併せて、8%であった。また、当所が知的財産化する細胞株と蚕品種の実施許諾を新たに 2件行った。 〔指標2-2-シ、指標2-2-ス〕 ③育種素材等の品種登録 品種登録出願及び品種登録については、平成19年度は品種登録出願を2件行い、中期計画目 標数値のほぼ2/5となった。また平成19年度にあらたに品種登録されたものが2件であった。 〔指標2-2-セ〕 - 118 - 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A 農業生物資源研究所の性格上、研究成果の発表形態として最も重 要な原著論文の数とインパクトファクター値は中期計画目標値の 2/5を大きく超えており、研究成果の公表がしっかり行われている ことは高く評価できる。また、組換え作物の市民参加型展示ほ場の 開催、県民大学やお茶の水女子大学公開講座での講義など、農業生 物資源研究所ならではの特色を生かした双方向コミュニケーション に努め、国民の理解を促進している。 普及に移しうる成果については、より活発に利用されるよう、第 1期中期計画期間に比して所内審査を厳しくしているため件数が少 ないが、研究が進展する中期計画期間後半には達成できると期待さ れる。 一方、特許出願については、費用対効果の点から特に海外への遺 伝子特許出願の見直しを図る必要性が出てきた。むしろ特許実施許 諾率の向上が重要であり、特許出願にあたっては内容に重点を置い て所内審査を進めた。これに伴い、所内での職務発明審査会への提 案件数の減少が危惧されたため、同時に、特許出願講習会、特許情 報検索講習会等を開催し、職員の特許等出願意識の向上を図った。 その結果、平成19年度は国内特許出願30件となり、まだまだ少ない ものの、平成18年度の実績値に比べ、やや増加した。このように費 用対効果を考慮しつつ数値目標の達成に向けて改善を図ったことは 評価できる。 なお、これだけの成果があるのに、まだまだ研究成果の公表、普 及の促進が不十分に見えるとの指摘が外部評価委員からあった。一 般を対象とした「不特定多数」ではなく、また研究仲間だけの「特 定少数」でもなく、産学連携や技術の事業化等へつながる展開を期 待されている。アグリビジネスフェア等外部のイベント参加に加え て、新たに、農業生物資源研究所主催の研究成果発表会を開催する など、工夫が必要である。 A 著名な国際学術誌に多くの論文が掲載されるなど実績は着実にあ がっており評価できる。遺伝子組換え農作物についての情報提供が 国民の理解にどのようにつながっているのかを検証しながら国民と の双方向コミュニケーションの確保、その拡大・深化を進めること を大いに期待する。普及に移しうる成果、新品種・中間母本登録出 願、国内特許出願については、数値目標の達成に向けた進捗が遅れ ており、一層の努力を期待する。 3 専門研究分野を活かしたその他の社会貢献 (1)分析、鑑定 中期目標 行政、民間、各種団体、大学等の依頼に応じ、研究所の有する高い専門知識が必要とさ れる分析、鑑定を実施する。 - 119 - 中期計画 ①行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、研究所の所有する高い専門知識が必要とされ、 他の機関では実施が困難な分析、鑑定を実施する。 (実績) ①分析・鑑定 平成19年度は、民間企業からの分析・鑑定依頼が1件、他に広報室を通じて問い合わせがあっ た昆虫及び植物の種類についての相談対応や、宮内庁の御養蚕所で飼育したカイコ蛾の母蛾検 査を実施した。今後も農業生物資源研究所が持つ、分析・鑑定能力を活かして社会貢献を果た していく。 平成20年2月1日より、農業生物資源研究所初の開放型研究施設として、得られたデータを蓄 積、保管、公開して、生命科学研究・ゲノム研究のさらなる発展と研究成果の社会還元に資す ることを目的とし、構造生物学研究棟附属施設内のマイクロアレイ解析室をオープンラボとし て運用を開始した。まだ2ヶ月間ではあるがすでに16回の利用があった。 本オープンラボは、マイクロアレイ手法を用いてイネやトウモロコシ等のゲノム解析を目的 とする共同研究企業、大学、研究機関の研究者が農業生物資源研究所の機器を利用し、精度の 高いデータを短期間に得られるように整備された施設である。得られたデータは、マイクロア レイ解析室のデータ保管システムの中に蓄積して、 研究者間で共有し、貴重なデータを最大 限に有効活用するシステムを構築するとともに一定期間後に公開する予定である。本開放型研 究施設の運用により農業生物資源研究所と産学の連携をより緊密に行うことが可能となるとと もに、研究の推進、データベースの構築に貢献できる。 〔指標2-3-ア〕 (2)講習、研修等の開催 中期目標 講習会の開催、国公立機関、民間、大学、海外機関等外部機関からの研修生の受入れ等 を行う。 中期計画 ①講習会、講演会等を積極的に開催するとともに、国や団体等が主催する講習会等に積極 的に協力する。 ②国公立機関、大学、海外機関等外部機関からの研修生を積極的に受け入れ、人材育成、 技術水準の向上、技術情報の移転を図る。 (実績) ①研修・講習の実施 JICA(独立行政法人国際協力機構)主催の植物遺伝資源の持続的利用コースに講師を派遣す るとともに、農林交流センター主催のワークショップでは「イネオリゴマイクロアレイ解析」 「ゲノムインフォマティクス」をテーマにした講習など計5回を開催し、都道府県、民間の研 究者等に指導、普及を行った。また、高等学校への授業協力として、茗渓学園高校生1名を受 け入れ指導を行った。 今後、社会貢献として、小中学校からの授業協力等の依頼があった場合にも対応していく。 〔指標2-3-イ〕 ②人材育成のための研究者等受け入れ 人材育成、技術水準の向上、技術情報の移転を図るため、外来研究員56名、講習生84名、連 携大学院11名、インターンシップ12名を受け入れ、研修、指導を行った。また海外からは、 JSPS(独立行政法人日本学術振興会)関係12名、JICA関係21名を受け入れた。これらの講習等 により、農業生物資源研究所が有する先端的な研究成果情報の発信、大学院学生等への教育指 - 120 - 導を行うことができた。 研究の更なる進捗と学生教育を目的として大学院博士課程の学生を研究勢力として雇用す る、ジュニアリサーチャー制度を発足させ、次年度3名の学生を雇用することとした。 〔指標2-3-イ〕 (3)行政との連携 中期目標 他の独立行政法人との役割分担に留意しつつ、緊急対応を含め、行政部局や各種委員会 等への技術情報の提供や専門家の派遣を行う。 中期計画 ①農業分野のバイオテクノロジー研究の中核機関として、政府の委員会、会議等に職員を 派遣するとともに、政府の行う科学技術に関する国際協力、交流に中期目標期間中に50 人以上の専門家を派遣する等の協力を行う。また、行政等の要請に応じて技術情報を適 切に提供する。 (実績) ①行政との連携 政府、地方公共団体、社団法人、財団法人等の委員会から委嘱を受け、延べ30人の職員を各 委員会に派遣した(表20)。 さらに、農林水産省、文部科学省等、政府の行う科学技術に関する国際協力と交流に、延べ 14人の職員を派遣した(表21)。 なお、行政からの要請・調査等に対応するため、農林水産技術会議事務局、先端産業技術研 究課、国際研究課等と緊密な連絡を取り、連携を深めた。行政ニーズを把握して研究へ的確に 反映させるとともに、研究成果の内容に関する行政担当者の理解を深めるために、「行政部局 との意見交換会」を分野別に2回開催した。さらに平成19年度において、専任、併任、及び研 修員の身分で、農林水産省へ2名、文部科学省1名、内閣府に2名の職員を派遣した。 行政機関その他への職員の派遣等により、双方の情報交換、意思疎通の迅速化が図られ、研 究推進、行政運営への貢献ができた。次年度以降も、行政機関その他の要請に基づき、可能な 限り職員の派遣を行い、連携協力を深めていく。 〔指標2-3-ウ〕 - 121 - 表20 依 頼 元 政府、地方公共団体等の委員会からの委嘱 委 嘱 期 間 始 期 終 期 備考(委員会等名称) 委嘱件数 【政府の委員】 日本学術会議(内閣総理大臣所轄) H18.8.20 H23.9.30 日本学術会議連携会員 2 厚生労働省医薬食品局 H19.1.24 H21.1.22 薬事・食品衛生審議会専門委員 1 文部科学省研究振興局 H19.1.25 H19.12.6 ナショナルバイオリソースプロジェクト課題選考委員会委員 1 文部科学省研究振興局 H19.2.1 H21.1.31 科学技術・学術審議会臨時委員 1 文部科学省科学技術政策研究所 科学技術動向センター H19.4.2 H20.3.31 科学技術専門家ネットワーク専門調査員 1 農林水産省生産局 H19.4.23 H20.3.31 経済産業省地域経済産業局 H19.5.14 H20.5.13 地域技術開発事業に係る事前評価委員 1 内閣府食品安全委員会事務局 (内閣総理大臣所轄) H19.10.1 H21.9.30 食品安全委員会専門委員 1 文部科学省研究振興局 H19.11.19 H20.3.31 ナショナルバイオリソースプロジェクト評価委員会委員 1 文部科学省研究振興局 H20.1.8 H20.3.31 ナショナルバイオリソースプロジェクト課題選考委員会委員 1 茨城県工業技術センター H18.5.22 H20.3.31 つくばバイオフォーラム運営委員 1 千葉県農業総合センター H19.4.1 H20.3.31 遺伝子組換え実験安全委員会委員 1 平成19年度農林水産物等輸出促進支援事業のうち品種保 護に向けた環境整備に係る事業選定審査委員会委員 1 【地方公共団体の委員】 千葉県 H19.11.27 H20.11.26 「遺伝子組換え作物の栽培に関する指針」検討委員会委員 1 H19.1.1 H21.3.31 「遺伝子組換え作物栽培連絡会」委員 1 (財)動物繁殖研究所 H17.7.1 H20.6.30 動物繁殖研究所評議員 1 (社)家畜改良事業団 家畜改良技術研究所 H19.4.1 H20.3.31 遺伝子組換え実験に係る安全委員会専門委員 1 (社)日本植物防疫協会 H19.4.23 H20.3.31 雑誌「植物防疫」編集常任委員 1 (社)畜産技術協会 H19.5.28 H20.3.31 平成19年度和牛知的財産取得・活用推進協議会委員 1 (社)におい・かおり環境協会 H19.6.1 H21.3.31 臭気判定士試験委員会委員 1 (社)農業技術協会 H19.6.1 H21.5.31 「農業技術」誌の編集委員 1 (財)原子力安全研究協会 H19.6.11 H20.3.31 (社)日本植物防疫協会 H19.7.9 H20.3.31 試験研究委員 4 (財)日本原子力文化振興財団 H19.8.16 H20.3.31 「放射線のはなし2007」作成に関する編集委員会委員 1 (財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 H19.10.1 H20.3.31 (社)畜産技術協会 H19.11.13 H21.3.31 家畜の快適性に関する研究・評価法委員会委員 つくば市 【社団法人・財団法人の委員】 平成19年度アジア原子力協力フォーラム(FNCA)プロジェク ト放射線育種運営グループ委員 東京都神経科学総合研究所・神経発達再生研究分野 客員研究員 2 1 1 合計 30名 - 122 - 表21 政府が行う国際協力、交流による海外派遣一覧 機関名 派遣先 用 務 派遣人数 農林水産省農林水産技術会議事務局 スイス 第1回動物遺伝資源に関する国際技術会合への出席のため 1 農林水産省農林水産技術会議事務局 イタリア 食料及び農業に用いられる植物遺伝資源に関する国際条約 (ITPGR)締約国理事会及びアジア地域会合への出席 1 農林水産省 タイ タイ国・カセサート大学で開催する「絹タンパク質の利用実習と 応用に関するシンポジウム」の講師として講義を行った 1 農林水産省 インド セミナー「イネ育種-進歩と将来への戦略」出席 1 農林水産省 韓国 昆虫バイオテクノロジー・工業国際会議出席 1 農林水産省 韓国 韓国植物科学シンポジウム参加 1 農林水産省 タイ バイオアジア2007国際会議(招待講演) 1 農林水産省 韓国 動物遺伝資源管理に関する日韓共同シンポジウムならびに ワークショップ参加 2 農林水産省 フランス ホロセントリックゲノム日仏会議参加 2 文部科学省 イタリア 第13回分子植物微生物相互作用国際会議出席 1 国際農林水産業研究センター(JIRCAS) 中国 イネ安定生産プロジェクト研究ワークショップ参加 1 日本学術振興会(JSPS) ベトナム ベトナム科学工業アカデミー(VAST)との共同研究、ならびに 「Biodiva(生物多様性)国際集会」出席 1 計 14名 (4)国際機関、学会等への協力 中期目標 国際機関、学会等への専門家の派遣、技術情報の提供等を行う。 中期計画 ①研究所に蓄積された知的資産を社会に還元するため、学会等への委員の派遣等を積極的 に行い、社会への知的貢献を果たす。また、OECD等の国際機関の要請に応じて専門 家を派遣することにより、国際的貢献を果たす。 (実績) ①外部委員等の派遣 社会貢献の一環として、日本育種学会、日本農薬学会、日本応用動物昆虫学会、日本蚕糸学 会、日本微生物資源学会、日本獣医学会等、日本学術会議に登録されている学術団体の理事、 監事、評議員、常任幹事、論文審査委員及び編集委員等として、延べ58名の職員を派遣した。 さらに、国際連合食糧農業機関(FAO)、アジア原子力協力フォーラム(FNCA)、国際養蚕委員 会(ISC)等、国際機関の要請に応じて、10名の職員を専門家として派遣した(表22)。 〔指標2-3-エ〕 - 123 - 表22 国際機関の要請による海外派遣一覧 機関名 派遣先 用 務 派遣人数 国際連合食糧農業機関(FAO) イタリア FAO第11回食糧農業遺伝資源委員会、食糧農業遺伝資源 委員会地域会合及び複数年業務計画へ向けての食糧農業 用遺伝資源管理における新興問題特別報告会出席のため 1 国際熱帯農業センター(CIAT) コロンビア イネ形質転換法の技術移転 1 国際養蚕委員会(ISC) フランス 国際養蚕委員会(ISC)執行委員会への出席 1 アジア原子力協力フォーラム(FNCA) タイ FNCA2007放射線育種ラン耐虫性専門家会議 1 アジア原子力協力フォーラム(FNCA) 韓国 原子力科学技術に関するワークショップ出席 2 農学研究所(INRA) フランス コムギゲノム配列アノテーションシステムに関する打合わせ 1 農学研究所(INRA) フランス コムギゲノム配列アノテーションシステムに関する打合わせ 1 2007年チャレンジプログラム運営委員会 中国 2007年チャレンジプログラム運営委員会出席 1 ベトナム原子力委員会 ベトナム ベトナム原子力委員会との放射線育種研究打合せ 1 計 10名 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A 平成20年2月1日から農業生物資源研究所初の開放型研究施設とし て、マイクロアレイ解析室の運用を開始した。得られたデータを蓄 積、保管、公開して、生命科学研究・ゲノム研究のさらなる発展と 研究成果の社会還元に資することを目的としたオープンラボを開設 し、運用を開始したことは評価できる。 外来研究員や講習生を多く受け入れて人材養成に貢献している。 さらに、連携大学院協定を積極的に結び、専門分野教授として学生 の指導も行い、将来の科学の発展に貢献していることは評価できる。 また、平成19年度から、研究の一層の進展と学生教育を目的とした ジュニアリサーチャー制度を発足させ、社会貢献を実施したことは 評価できる。研修や行政との連携も適切に対応している。 引き続き、我が国最大の農業分野における基礎生命科学研究所と して、さらなる社会貢献を進める。 A 人材の育成、技術水準の向上、技術情報の移転を図るため、多くの 研究員、講習生を受け入れ、研修・指導を行っていることは評価で きる。今後、専門家集団としての知識と情報を利用したさらなる社 会貢献を行うことを期待する。 - 124 - Ⅲ 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画 農業生物資源研究所が担う、バイオテクノロジーを中心とする基礎的・先導的な研究及びそ の成果を活かした応用技術開発についてさらなる飛躍を目指すため、平成18年度から研究企画 調整室を中心に研究資源の効率的活用や外部資金の積極的獲得のための戦略を企画・立案し、 予算配分方針に反映させた。また、研究の遂行に支障が生じないように、年度当初からの計画 的な予算執行を可能とするため、前年12月に予算配分方針を策定した上で各種経費の募集、審 査や重点配分の審査時期を早め、4月初めに予算配分を行った。 1 予算配分方針 平成18年度から開始された第2期中期目標期間においては、第1期中期目標期間の研究成果 を踏まえて、革新的な農業生産技術の開発や新たな生物産業の創出に資する研究を効率的に実 施するため、研究組織のフラット化と研究課題の重点化を行った。これら重点化されたすべて の中期課題の早期の達成を図るため、研究遂行に十分な一般研究費として、研究組織の規模(構 成員数)に応じた基本研究費を各研究センター、研究ユニットに一括配分した。また、各研究 領域内で、特に支援が必要と認められる研究に対して、研究領域長の裁量で個人又はグループ 単位で再配分可能な、研究領域長裁量研究費を創設し、総額56百万円を配分した。さらに、課 題評価の結果に基づいた重点課題配分研究費を計8課題に対して23百万円配分した。 以上の一般研究費に加えて、研究を活性化するために共通経費から種々の予算的支援措置を 実施した。これらの予算配分の基本方針については、前年度末までに策定し、年度当初から執 行できるようにしている。 〔指標3-ア、指標3-イ〕 (1)評価に応じた予算配分 一般研究費については研究ユニット等に一括配分することにより、ユニット長等の裁量によ る効率的かつ柔軟な予算執行を可能とした。またユニット内での再配分はユニット長の裁量と し、配分結果は「費用対効果」の視点も導入して評価の際の資料とすることとした。また評価 に応じた予算配分を行うため、平成18年度課題評価検討会の結果を踏まえて、研究企画調整室 が重点課題配分研究費の配分案を作成し、理事会において配分を決定した。その内容は、課題 評価で特に評価が高かった1課題(S評価)に対して5百万円、Sに近いA評価を得た2課題 に対してそれぞれ3百万円、次に高い評価を得た3課題に対してそれぞれ2百万円、課題評価 とは別に研究戦略的視点から特に支援が必要であると認められた2課題に対してそれぞれ3百 万円を配分するもので、配分総額は23百万円(平成18年度25.5百万円)であった。 〔指標3-イ〕 (2)重点配分事項 研究を活性化し、中期計画を円滑に遂行するための経費として、以下の事項について共通経 費から支援を行った(表23)。 ①組織再編に伴う居室・実験室等移動のための運搬等経費を計上(18年度から継続)、②積 極的に学術雑誌等の論文掲載を奨励していることから、研究成果発表に対する支援として論文 投稿料と別刷代(100部)に要する経費を配分、③競争的研究資金等の外部資金への積極的な 応募を奨励、支援し、研究資金の充実を図るための支援策として、新規に科学研究費補助金等 外部資金(300万円未満)を獲得した研究代表者を対象に、1件につき100万円を配分、④出願 した特許等の積極的な公開・技術移転と許諾率の向上を目指す方策として、実施許諾された特 許のうち許諾料のあった特許につき1件100万円を配分、⑤農業生物資源研究所で得られた研 究成果の普及や最新情報の収集等を促進するため、シンポジウム開催に要する経費を支援、 ⑥新規に採用された研究員のスタートアップに必要な経費として、各研究員の指導担当者に 100万円を配分、⑦職員が資質向上を図るために外部で受講する研修等に係る経費を支援、⑧ 中期計画を推進する上で必要な共用性の高い高額機器を所内で募集し、審査で採択したものに ついて整備、⑨研究材料の維持管理・供給に係る経費及び円形温室維持費について、所内で募 集・審査を実施し、採択された案件について支援した。 バイオテクノロジー、特に遺伝子組換え技術や遺伝子組換え生物及びイネゲノム研究成果の 実用化を進めるにあたって直面する様々な問題を解決することを目的として、平成18年度から - 125 - 開始した運営費交付金特別研究「バイオテクノロジーによる農業生物の産業実用化研究」につ いては所内の審査委員会の審査結果に基づいて、実用化を目指した重点配分課題に48百万円(5 課題)、形質転換植物作成などの技術支援を行う技術支援業務に19百万円(1課題)、シーズ 研究を支援するための競争的配分課題に34百万円(6課題)を配分した。 〔指標3-イ〕 表23 平成19年度に研究を活性化させるために行った支援措置 ・組織再編に伴う居室・実験室等移動のための運搬等経費 配分額 24百万円 ・学術雑誌等への論文投稿料と別刷代に要する経費 配分額 14百万円 ・新規に科学研究費補助金等外部資金を獲得した研究代表者に対する支援 配分額 19百万円 ・実施許諾された特許のうち許諾料のあった特許の出願者への支援 配分額 13百万円 ・シンポジウム開催に要する経費 配分額 5百万円 ・新規採用研究員のスタートアップに必要な経費 配分額 3百万円 ・職員が資質向上のために受講する研修等に必要な経費 配分額 2百万円 ・機械整備費 配分額85.2百万円 ・研究材料供給管理費 配分額40.4百万円 ・円形温室維持費 配分額 1.4百万円 配分額合計 207百万円 2 外部資金の獲得 中期目標達成の加速化や将来の研究シーズの培養のために、科学研究費補助金、科学技術振 興調整費等の競争的資金制度へ所内の研究者が積極的に応募することを奨励するとともに、研 究領域長、研究主幹等による応募書類の事前チェックと修正指導を徹底し、二次審査(ヒアリ ング)のある競争的資金については予行演習と指導を行った。また、政府等プロジェクトへ積 極的に提案・参画することにより外部資金の獲得に努めた。その結果、平成19年度は4,991百 万円(内訳:表24)の受託研究費が確保され、平成18年度(3,964百万円)と比べて10億円以 上の増額となった。また、科学研究費補助金等の競争的資金についても平成19年度は806百万 円を獲得し平成18年度(798百万円)を上回った。この結果、外部資金獲得総額は5,200百万円 (平成18年度4,114百万円)と大幅に増加した。 研究の重点化を進める一方で、企画競争に移行した国からの受託プロジェクトに対して積極 的に応募し、研究勢力と研究資源を集中しているため、科学研究費補助金等競争的資金の獲得 については、採択率、獲得金額ともに前年度比で安定化する傾向が見られる。今後も総獲得金 額の維持・増額に努めるとともに、投入資源に見合った成果を挙げられるよう研究支援体制の 充実化を図ることとする。 〔指標3-ウ〔指標1-2-イ〕〕 表24 平成19年度に獲得した外部資金(括弧内は18年度) 受託研究費 科学研究費補助金・寄付金等 農林水産省 4,175 (3,174) 文部科学省 150 ( 171) 200 (142) 独立行政法人 608 ( 542) その他 58 ( 77) 9 ( 8) (単位:百万円) 計 4,175 (3,174) 350 ( 313) 608 ( 542) 67 ( 85) 総 額 4,991 (3,964) 209 (150) 5,200 (4,114) 内、競争的資金 606 ( 655) 200 (143) 806 ( 798) ※金額は外部機関への再委託額を含むため、Ⅰ-2-(1)-③記載の金額とは異なっている。 - 126 - 3 自己収入増加 ①知的財産権収益 研究開発の初期から、研究開発テーマに関連する国内外の特許についての調査を徹底的に 行っている。確保した知的財産権の技術移転は職員の責務と位置付け、そのための体制整備を 進めるとともに、研修、特許検索講習会、特許相談会を積極的に開催した。 職員への特許出願の啓蒙と周知を図るため、特許出願マニュアルを作成し、所内グループウェ アに掲載した。さらに、特許情報活用支援アドバイザーによる知的財産権に関する講習会、研 究領域ごとの特許相談会を開催し、特許取得に向けて支援した。一方、実施許諾可能な特許に ついては、産学官連携推進会議、アグリビジネスフェアを初めとする各種展示会場において、 民間企業への情報提供を積極的に行って、技術移転を図った。また、国内保有特許220件、外 国保有特許130件を農林水産省認定TLOのAFFTISアイピーを通じるなどして特許権の実施許諾を 図った。 〔指標3-エ〕 ②遺伝資源配布事業収入(ゲノムリソースを含む) 収入の目標数値は特に定めていないが、配布可能な遺伝資源の情報(データベース)や配布 申請手続きについてホームページで公開し、遺伝資源の利用促進を図っている。 〔指標3-エ〕 ③原蚕種等配布事業収入 収入の目標数値は特に定めていないが、配付についてはホームページ等でPRに努めている。 〔指標3-エ〕 ④依頼照射事業収入 生産者及び消費者と直接意見交換ができる「アグリビジネス創出フェア(東京)」や「消費者 の部屋」(農林水産省)の催しには積極的に参加した。展示会場には放射線による突然変異を利 用して改良された新品種を展示し、研究成果の普及を図り、放射線照射利用の拡大に務めた。 〔指標3-エ〕 ⑤生産物売払収入 試験研究用に栽培した米等の売払収入であり、栽培は試験研究に基づいており、売払を目的 とするものではないため、収入増加の取り組みは特に行っていない。 〔指標3-エ〕 ⑥その他収入 依頼分析・鑑定事業収入として2件、59千円、外来研究員受入れ経費として1名、189千円 の収入があった。 〔指標3-エ〕 表25 主な自己収入の実績 項 目 知的財産権収益 遺伝資源配布事業収入 (ゲノムリソース含む) 原蚕種等配布事業収入 依頼照射事業収入 生産物売払収入 その他収入 合 計 平成18年度 3,517 6,264 112 360 136 0 10,389 - 127 - (単位:千円) 平成19年度 19-18年度 1,320 ▲2,197 8,784 20 265 120 248 10,757 2,520 ▲92 ▲95 ▲16 248 368 4 予算、収支計画及び資金計画 (1)予算 平成19年度予算及び決算 区 収入 前年度からの繰越金 運営費交付金 施設整備費補助金 受託収入 諸収入 寄附金収入 分 予 算 額 計 支出 業務経費 業務経費(寄附金) 施設整備費 受託経費 一般管理費 人件費 計 (単位:百万円) 決 算 額 0 7,526 217 3,690 14 0 469 7,526 217 5,003 34 5 11,447 13,254 2,864 0 217 3,690 458 4,218 2,850 5 217 4,998 458 4,021 11,447 12,549 〔表記に関する注記〕 金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 〔決算額の注記〕 1.本表には、科学研究費補助金等の受入研究費(203百万円)は、含まれていない。 なお、受入研究費を含めた場合、収入の決算額計は13,457百万円、支出の決算額計は 12,750百万円となる。 2.収入の「前年度からの繰越金」469百万円は、人事管理計画に基づく採用抑制した18年 度人件費225百万円、平成18、19年度の2カ年計画で実行予定の施設等整備に係る業務に 充当するための事業費244百万円である。 3.収入の「受託収入」は、受託研究契約が増加したため、予算額より1,313百万円増加し ている。それに伴い、支出の「受託経費」が予算額より1,308百万円増加している。 4.収入の「諸収入」は、予算額より20百万円増加している。決算額34百万円の主な内訳は 次のとおりであるが、「資産売却収入」には、公共事業の道路(圏央道)新設に伴い、農 林水産省の認可を受け事業に支障のない土地の一部売却等に係る収入14百万円を含んでい る。 ① 遺伝資源配布事業収入 6百万円 ② ゲノムリソース配布等収入 3百万円 ③ 特許権等実施許諾収入 1百万円 ④ 資産売却収入 15百万円 ⑤ 資産貸付収入 3百万円 ⑥ 還付消費税収入 5百万円 ⑦ その他の収入 1百万円 5.収入の「寄附金収入」5百万円は、寄附者が使途を研究目的に特定した寄附金収入であ る。 6.支出の「業務経費」は、平成18、19年度の2カ年計画で実行した施設等の整備に係る事 業費の繰越金のうち234百万円を含む。また、平成19、20年度の2カ年計画で実行予定の 施設等整備に係る業務に充当するため、予算額より14百万円減少している。 7.支出の「一般管理費」は、平成18、19年度の2カ年計画で実行した施設等の整備に係る 事業費の繰越金のうち10百万円を含む。 - 128 - 8.支出の「人件費」は、中期目標期間を通じた人事管理計画に基づき、当年度における採 用を抑制したため、予算額より197百万円減少している。 9.収入決算額計と支出決算額計との差額705百万円の内訳は次のとおり。 ① 運営費交付金 679百万円 人件費:平成18年度225百万円及び平成19年度197百万円は、 翌事業年度以降に執行予定。 事業費:平成19年度257百万円は、翌事業年度に執行予定。 ② 受託収入 6百万円 ③ 諸収入 20百万円 - 129 - (2)収支計画 平成19年度収支計画及び決算 区 費用の部 経常費用 人件費 業務経費 受託経費 一般管理費 減価償却費 財務費用 臨時損失 分 計 画 額 11,032 10,995 4,218 2,434 3,470 426 446 38 0 収益の部 運営費交付金収益 施設費収益 諸収入 受託収入 寄附金収入 資産見返運営費交付金戻入 資産見返物品受贈額戻入 資産見返寄附金戻入 臨時利益 11,067 7,066 0 14 3,690 0 297 0 0 0 (単位:百万円) 決 算 額 12,366 12,292 4,023 2,413 4,538 485 833 41 32 12,349 6,876 1 21 4,996 85 297 1 40 33 純利益又は純損失(▲) 35 ▲17 前中期目標期間繰越積立金取崩額 0 86 総利益又は総損失(▲) 35 69 〔表記に関する注記〕 金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 〔決算額の注記〕 1.本表は、「損益計算書」を基に作成した。 2.費用の部の「財務費用」41百万円は、リース債務返済に係る支払利息である。 3.費用の部の「臨時損失」32百万円は、経年劣化等の理由から発生した固定資産除売却損 である。 4.収益の部の「施設費収益」1百万円は、施設整備費補助金を財源に施工した本部地区精 密温室ほか改修工事に係る費用相当額の収益額である。 5.収益の部の「諸収入」21百万円の内訳は次のとおり。 ① 遺伝資源配布事業収入 6百万円 ② ゲノムリソース配布等収入 3百万円 ③ 特許権等実施許諾収入 1百万円 ④ 資産貸付収入 3百万円 ⑤ 還付消費税収入 5百万円 ⑥ その他の収入 3百万円 6.収益の部の「受託収入」4,996百万円には、当年度受託収入を財源に取得した資産の額 90百万円を含む。 7.収益の部の「寄附金収入」85百万円の内訳は次のとおり。 ① 使途を特定された寄附金収入 5百万円 ② 受託研究期間終了に伴い無償譲与された物品等に係る受贈益 80百万円 8.収益の部の「臨時利益」のうち32百万円は、「臨時損失」に対応する額である。 9.「前中期目標期間繰越積立金取崩額」86百万円は、前中期目標期間中に自己財源で取得 した固定資産に係る減価償却相当額である。 - 130 - 10.「総利益」69百万円の主な内訳は次のとおり。 ① 当年度受託収入を財源に取得した資産の額90百万円から、当中期目標期間中に受託収 入を財源に取得した固定資産に係る減価償却費22百万円を控除した額 68百万円 ② 諸収入の未使用額 14百万円 ③ ファイナンス・リース取引が損益に与える影響額 ▲13百万円 - 131 - (3)資金計画 平成19年度資金計画及び決算 区 資金支出 業務活動による支出 投資活動による支出 財務活動による支出 翌年度への繰越金 分 計 画 額 11,447 10,042 861 544 0 (単位:百万円) 決 算 額 14,001 11,264 883 394 1,460 資金収入 11,447 14,001 前年度からの繰越金 0 1,100 業務活動による収入 11,231 12,504 運営費交付金による収入 7,526 7,526 受託収入 3,690 4,953 寄附金収入 0 5 その他の収入 14 20 投資活動による収入 217 397 施設整備費補助金による収入 217 388 有形固定資産の売却による収入 0 9 財務活動による収入 0 0 〔表記に関する注記〕 金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 〔決算額の注記〕 1.本表は、「キャッシュ・フロー計算書」を基に作成した。 2.資金支出の「翌年度への繰越金」1,460百万円の内訳は次のとおり。 ① 運営費交付金の未使用額 679百万円 ② 未払金、未払費用、預り金等 773百万円 ③ その他の収入の未使用額 2百万円 ④ 前中期目標期間より繰り越したリース損益 6百万円 3.資金収入の「投資活動による収入-有形固定資産の売却による収入」9百万円には、公 共事業の道路(圏央道)新設に伴い、農林水産省の認可を受け事業に支障のない土地の一 部売却等に係る収入を含んでいる。 - 132 - (4)予算・決算の概況 平成19年度以前5年間の推移 区分 (単位:百万円) 前中期目標期間 当中期目標期間 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 予算 決算 予算 決算 予算 決算 予算 決算 予算 決算 収入 前年度からの繰越金 153 153 0 23 運営費交付金 7,872 7,872 7,876 7,876 7,629 7,629 7,467 7,467 施設整備費補助金 104 104 508 508 104 104 451 439 施設整備費資金貸付金償還時補助金 4,096 4,096 0 0 0 0 無利子借入金 0 2,859 0 0 0 0 0 0 受託収入 5,596 4,709 5,548 4,362 3,929 4,290 3,691 3,964 諸収入 8 13 8 22 8 19 14 18 寄附金収入 0 0 0 0 0 0 0 7 計 支出 業務経費 業務経費(寄附金) 施設整備費 受託経費 借入償還金 一般管理費 人件費 0 7,526 217 0 0 3,690 14 0 469 7,526 217 0 0 5,003 34 5 13,580 15,557 18,036 16,864 11,823 12,195 11,623 11,918 11,447 13,254 3,077 3,082 3,027 0 0 0 104 104 508 5,596 4,709 5,548 4,096 509 514 501 4,294 4,241 4,356 2,994 2,991 3,064 2,896 2,662 0 0 0 0 7 508 104 104 451 443 4,359 3,929 4,265 3,691 3,981 4,096 0 0 0 0 526 495 437 473 459 4,296 4,304 4,091 4,112 3,888 2,864 0 217 3,690 0 458 4,218 2,850 5 217 4,998 0 458 4,021 計 13,580 12,650 18,036 16,779 11,823 11,961 11,623 11,440 11,447 12,549 〔表記に関する注記〕 1.前中期目標期間とは、平成13年度~平成17年度までの間、当中期目標期間とは、平成18 年度~平成22年度の間のいずれも5年間である。 2.金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 〔平成19年度における収入の注記〕 1.「前年度からの繰越金」の差額は、平成19年度で実行予定の運営費交付金等の繰越金が 発生したため。 2.「受託収入」の差額は、受託研究契約が増加したため。 3.「諸収入」の差額は、資産売却等に係わる収入が発生したため。 4.「寄附金収入」の差額は、寄附者が使途を特定した寄附金収入が発生したため。 〔平成19年度における支出の注記〕 1.「業務経費」の差額は、平成19、20年度の2カ年計画で実行予算の業務に充当するため。 2.「業務経費(寄附金)」の差額は、寄附金収入が発生したため。 3.「受託経費」の差額は、受託研究契約が増加したため。 4.「人件費」の差額は、人事管理計画から当年度における採用を抑制したため。 - 133 - (5)外部委託費の内訳と委託に係る成果、外部委託に係る考え方 研究の外部委託は、その内容が当所で実施することができないもの、年度毎の業務量の変動 が大きいもの、あるいは、特定の能力・実績を有する他の機関等でなければ実施することがで きないものについて行うこととしている。 また、管理運営部門における外部委託は、施設・機械等の保守管理等、特別な資格や技能を 必要とする業務、庁舎・構内の管理等、外部委託した方が効率的な業務について行うこととし ている。 何れの業務についても、外部委託を行うに当たっては、当所職員が行うことの可否、及び職 員が行った場合との人件費等のコスト比較等を検討した上で判断している。 〔指標3-オ〕 ①受託収入の支出内訳 経常費用 研究業務費 法定福利費 その他人件費 研究委託費 外部委託費 研究材料消耗品費 支払リース料 賃借料 旅費交通費 減価償却費 保守・修繕費 水道光熱費 備品費 諸謝金 国等返却予定機器費 図書印刷費 その他経費 計 54,011,532円 509,456,147円 2,307,706,000円 261,868,301円 592,120,948円 3,421,593円 1,201,950円 35,062,263円 451,692,857円 405,543,687円 239,574,313円 35,532,833円 953,577円 46,609,184円 3,593,903円 41,811,388円 4,990,160,476円 注)上記以外に資産が89,735,939円ある。 ②外部委託費の内訳 外部委託費計 うち研究委託費 うち調査委託費 うちその他委託費 運営費交付金 561百万円 受託収入 2,570百万円 424百万円 28百万円 109百万円 2,308百万円 141百万円 121百万円 注)その他委託費の主な委託内容 研究支援関連業務:シンポジウム等開催運営、研究支援者派遣、英文校閲、 実験動物処分、実験廃棄物処理、圃場管理 ③研究委託の成果 平成19年度は、農水省受託プロジェクト226件、農業生物資源研究所交付金プロジェクト2 件について、外部委託研究を実施した。委託研究の成果は下記のとおりであった。 原著論文 155件( 71件) 知的財産権出願 11件( 5件) - 134 - 新品種及び中間母本 6件( 1件) 普及に移しうる成果 0件( 0件) 注)カッコ内は、当法人の職員が論文著者等に含まれており、中期計画の数値目標としてカウ ントした件数(内数) 〔指標3-オ〕 5 簡潔に要約された財務諸表 ① 貸借対照表 (http://www.nias.affrc.go.jp/koukai/h19/h19zaimu.html) (単位:百万円) 資産の部 金額 負債の部 金額 流動資産 流動負債 現金預金 1,460 運営費交付金債務 707 棚卸資産 20 未払金 521 未収金 156 未払費用 332 その他流動資産 20 短期リース債務 446 固定資産 その他 52 有形固定資産 40,978 固定負債 特許権 113 長期リース債務 909 ソフトウェア 19 資産見返負債 2,332 知的財産権仮勘定 240 負債合計 5,299 その他 3 純資産の部 資本金 政府出資金 40,319 資本剰余金 ▲2,984 利益剰余金 375 純資産合計 37,711 資産合計 43,009 負債純資産合計 43,009 〔表記に関する注記〕 金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 - 135 - ② 損益計算書 (http://www.nias.affrc.go.jp/koukai/h19/h19zaimu.html) (単位:百万円) 金額 経常費用(A) 12,334 研究業務費 人件費 4,454 研究委託費 2,732 外部委託費 399 研究材料消耗品費 1,009 減価償却費 802 保守・修繕費 729 水道光熱費 565 その他 612 一般管理費 人件費 512 減価償却費 30 保守・修繕費 298 水道光熱費 36 その他 113 財務費用 41 経常収益(B) 12,317 運営費交付金収益 6,876 施設費収益 1 資産見返負債戻入 338 受託収入 4,996 事業収入 11 事業外収入等 95 臨時損失(C) 32 臨時利益(D) 33 前中期目標期間繰越積立金取崩額(E) 86 当期総利益(B-A-C+D-E) 69 〔表記に関する注記〕 金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 ③ キャッシュ・フロー計算書 (http://www.nias.affrc.go.jp/koukai/h19/h19zaimu.html) (単位:百万円) 金額 Ⅰ 業務活動によるキャッシュ・フロー(A) 1,240 研究業務による支出 ▲5,971 人件費支出 ▲4,806 一般管理業務による支出 ▲445 運営費交付金収入 7,526 自己収入等 4,973 その他収入・支出 ▲37 Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー(B) ▲485 Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー(C) ▲394 Ⅳ 資金に係る換算差額(D) 0 Ⅴ 資金増加額(E=A+B+C+D) 360 Ⅵ 資金期首残高(F) 1,100 Ⅶ 資金期末残高(G=F+E) 1,460 〔表記に関する注記〕 金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 - 136 - ④ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ 行政サービス実施コスト計算書 (http://www.nias.affrc.go.jp/koukai/h19/h19zaimu.html) (単位:百万円) 金額 業務費用 7,224 損益計算書上の費用 12,366 (控除)自己収入等 ▲5,142 損益外減価償却相当額 763 損益外減損損失相当額 2 引当外賞与見積額 ▲3 引当外退職給付増加見積額 324 機会費用 479 Ⅶ 行政サービス実施コスト 8,788 〔表記に関する注記〕 金額は、科目毎に百万円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 ■ 財務諸表の科目(主なもの) ①貸借対照表 現金預金 :現金、預金 棚卸資産 :貯蔵品(燃料類・切手類・試薬等)及び未成受託研究支出金 未収金 :独立行政法人の業務で発生した未収債権 有形固定資産 :土地、建物、構築物、機械及び装置、車両運搬具、工具器具備品等 独立行政法人が長期にわたって使用または利用する有形の固定資産 特許権 :特許法に基づき登録を受けた発明に係る独占的・排他的実施の権利 ソフトウエア :将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められるソフトウエア 知的財産権仮勘定:知的財産の取得に際し発生した原価を、権利取得まで一時的に整 理する仮勘定 運営費交付金債務:独立行政法人の業務を実施するために国から交付された運営費交 付金のうち、未実施の部分に該当する債務 未払金 :独立行政法人の業務で発生した未払債務 未払費用 :独立行政法人の業務で発生した人件費、賃借料、水道光熱費等継 続的な経過費用 短期リース債務:ファイナンスリース契約に基づく未払リース料のうち、1年以内に 支払予定の債務 長期リース債務:ファイナンスリース契約に基づく未払リース料のうち、1年を超え て支払予定の債務 資産見返負債 :固定資産取得額のうち、未償却残高に相当する債務 政府出資金 :国からの出資金で、独立行政法人の財産的基礎を構成するもの 資本剰余金 :国から交付された施設費等を財源として資産を取得した場合に発生 した剰余金で、独立行政法人の財産的基礎を構成するもの 利益剰余金 :独立行政法人の業務で発生した剰余金 ②損益計算書 研究業務費 人件費 研究委託費 外部委託費 :研究業務に要した費用 :役員報酬、給与、賞与、法定福利費等役職員に要した経費 :研究業務の一部を外部機関に委託した経費 :研究業務に必要な各種分析・調査業務の一部及び研究支援関連業務 を外部機関に委託した経費 研究材料消耗品費:研究業務に使用する試薬や理化学用品等消耗品の取得に要した経 費 - 137 - 減価償却費 :業務に使用する固定資産の取得原価をその耐用年数にわたって費用 として配分した経費 保守・修繕費 :業務に使用する資産の修繕、保守管理、維持等に要した経費 水道光熱費 :上下水道料、電気料、ガス料、燃料費 一般管理費 :管理事務等業務に要した費用 財務費用 :ファイナンスリース取引に伴う支払利息、海外取引における為替差 損 運営費交付金収益:業務を実施するために国から交付された運営費交付金のうち、業 務の進行に対応し収益化した額 施設費収益 :業務を実施するため国から交付された施設費補助金のうち、固定資 産の取得原価を構成しない経費に対応し収益化した額 資産見返負債戻入:運営費交付金や寄附金等を財源に取得した固定資産の減価償却額 に対応し、資産見返負債を取崩した額 受託収入 :政府受託研究収入、政府外受託研究収入、受託出張収入等 事業収入 :遺伝資源配布事業収入、ゲノムリソース配布等収入等 事業外収入 :資産売却収入、資産貸付収入、還付消費税収入等 臨時損失 :固定資産の除売却損 臨時利益 :固定資産の売却益及び臨時損失に対応した資産見返負債戻入 中期目標期間繰越積立金取崩額:前中期目標期間から繰り越した積立金の取り崩し額 ③キャッシュ・フロー計算書 業務活動によるキャッシュ・フロー:独立行政法人の通常の業務の実施に係る資金の 状態を表し、運営費交付金収入、受託収入、事業収入等、研究業務 による支出、人件費支出等を含む。 投資活動によるキャッシュ・フロー:将来に向けた運営基盤の確立のために行われる 投資活動に係る資金の状態を表し、施設費による収入、固定資産の 取得・売却等による収入・支出を含む。 財務活動によるキャッシュ・フロー:リース債務の返済による支出 資金に係る換算差額:外貨建て取引を円換算した場合の差額 ④行政サービス実施コスト計算書 業務費用 :独立行政法人が実施する行政サービスのコストのうち、独立行政法 人の損益計算書に計上される費用 損益外減価償却相当額:償却資産のうち、その減価に対応すべき収益の獲得が予定さ れないものとして特定された資産の減価償却費相当額(損益計算書 には計上していないが、累計額は貸借対照表に記載されている。) 損益外減損損失相当額:独立行政法人が中期計画等で想定した業務を行ったにもかか わらず生じた減損損失相当額(損益計算書には計上していないが、 累計額は貸借対照表に記載されている。) 引当外賞与見積額:財源措置が運営費交付金により行われることが明らかな場合の賞 与引当金見積額(損益計算書には計上していないが、当年度末に在 職する役職員について、当期末の引当外賞与見積額から前期末の引 当外賞与見積額を控除して計算した額) 引当外退職給付増加見積額:財源措置が運営費交付金により行われることが明らかな 場合の退職給付引当金増加見積額(損益計算書には計上していない が、当年度末に在職する役職員について、当期末の退職給付見積額 から前期末の退職給付見積額を控除した額から、退職者に係る前期 末退職給付見積額を控除して計算した額) 機会費用 :国の財産を無償又は減額された使用料により賃貸した場合の本来負 担すべき額 - 138 - 6 財務情報 (1)財務諸表の概況 ① 経常費用、経常収益、当期総損益、資産、負債、キャッシュフローなどの主要な財務 データの経年比較・分析 (経常費用) 平成19年度の経常費用は12,333,789千円と、前年度比1,107,947千円増(9.9%増) となっている。これは、政府等受託収入が増加したことに対応し、受託研究業務費が 前年度比892,729千円増(21.8%増)となったこと及び定年退職者の増加により退職一時 金が前年度比117,076千円増(62.1%増)となったことが主な要因である。 (経常収益) 平成19年度の経常収益は12,316,624千円と、前年度比1,230,333千円増(11.1%増) となっている。これは、外部資金の獲得に努めた結果、政府等受託収入が1,020,090 千円増(25.7%増)となったことが主な要因である。 (当期総利益) 上記経常損益の状況と臨時損失として固定資産除却損等32,207千円及び臨時利益と して資産見返運営費交付金戻入等32,580千円を計上した結果、当期純損失は、16,792 千円となるが、前中期目標期間繰越積立金の取崩額86,101千円を計上することによっ て、平成19年度の当期総利益は69,309千円と、前年度比15,237千円増(28.2%増)となっ ている。 (資産) 平成19年度末現在の資産合計は43,009,172千円と、前年度比393,736千円減(0.9%減) となっている。これは、固定資産のうち有形固定資産の当期増加額が976,466千円と なったものの、当期減少額が89,195千円となり、更に当期減価償却額が1,506,131千 円となったことが主な要因である。なお、流動資産のうち現金預金が運営費交付金の 未使用額及び退職一時金に係る未払債務の増加により前年比360,133千円増(32.7% 増)、未収金が施設整備費補助金未収額の減少により前年比173,044千円減(52.7%減) となっている。 (負債) 平成19年度末現在の負債合計は5,298,647千円と、前年度比162,032千円増(3.2%増) となっている。これは、流動負債のうち未払金・未払費用が前年比63,544円減(6.9% 減)、リース債務が172,577千円減(11.3%減)となったものの、流動負債のうち運営費 交付金債務が前年比225,250千円増(46.8%増)、固定負債のうち資産見返負債が前年度 比155,544千円増(7.1%増)となったことが主な要因である。 (業務活動によるキャッシュフロー) 業務活動によるキャッシュ・フローは、平成19年度が1,239,510千円の増加、前年 度が258,424千円減少となっている。これは、前年度が前中期目標期間終了の翌年度 であったことから積立金1,089,772千円の国庫返納を行ったことが主な要因である。 (投資活動によるキャッシュフロー) 投資活動によるキャッシュ・フローは、平成19年度が485,442千円減少、前年度が 361,539千円減少となっている。これは、前年度に比べ当年度が有形固定資産の取得 による支出の増加が主な要因である。 (財務活動によるキャッシュフロー) 財務活動によるキャッシュ・フローは、平成19年度が393,935千円減少、前年度が 186,413千円減少となっている。これは、前年度に比べ当年度がリース債務の返済に よる支出が増加したことが要因である。 - 139 - 表 主要な財務データの経年比較 (単位:千円) 区 分 前中期目標期間 当中期目標期間 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 経常費用 12,777,542 12,375,712 11,800,327 11,225,842 12,333,789 経常収益 12,680,334 12,385,684 11,932,455 11,086,291 12,316,624 当期総利益 ▲95,981 ▲94,633 132,370 54,072 69,309 資産 45,189,130 44,721,561 43,716,492 43,402,908 43,009,172 負債 7,415,359 3,583,062 3,432,098 5,136,615 5,298,647 利益剰余金(又は繰越欠損金) 1,583,581 1,488,947 1,621,317 391,994 375,202 業務活動によるキャッシュフロー 1,053,147 1,042,195 803,463 ▲258,424 1,239,510 投資活動によるキャッシュフロー ▲3,924,834 ▲709,633 ▲670,296 ▲361,539 ▲485,442 財務活動によるキャッシュフロー 2,554,005 ▲140,600 ▲104,218 ▲186,413 ▲393,935 資金期末残高 1,685,231 1,877,194 1,906,143 1,099,766 1,459,899 〔表記に関する注記〕 1.前中期目標期間とは、平成13年度~平成17年度までの間、当中期目標期間とは、平成18 年度~平成22年度の間のいずれも5年間である。 2.金額は、科目毎に千円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 〔経年比較において著しい変動が生じている場合の注記〕 1.「当期総利益」の平成17年度は、前年度に比べ227,003千円増加している。これは、当 年度が前中期目標期間の最終年度であったことにより、運営費交付金債務の全額を収益化 したことが主な要因である。 2.「当期総利益」の平成18年度は、前年度に比べ78,298千円減少している。これは、当年 度が当中期目標期間の初年度であったことにより、運営費交付金収益の減少が主な要因で ある。なお、「当期総利益」には、前中期目標期間繰越積立金取崩額193,623千円を含む。 3.「負債」の平成16年度は、前年度に比べ3,832,297千円減少している。これは、施設整 備事業無利子貸付金による長期借入金を完済したことが主な要因である。 4.「負債」の平成18年度は、前年度に比べ1,704,517千円増加している。これは、当中期 目標期間が初年度であったことにより、運営費交付金債務及びリース債務の増加が主な要 因である。 5.「利益剰余金」の平成18年度は、前年度に比べ1,229,323千円減少している。これは、 当年度において、前中期目標期間終了に伴う積立金の国庫返納を行ったことが主な要因で ある。 6.「業務活動によるキャッシュ・フロー」の平成17年度は、前年度に比べ238,732千円減 少している。これは、前年度からの繰越金が生じたことにより、運営費交付金収入の減少 が主な要因である。 7.「業務活動によるキャッシュ・フロー」の平成18年度は、前年度に比べ1,061,887千円 減少している。これは、当年度において、前中期目標期間終了に伴う積立金の国庫返納を 行ったことが主な要因である。 8.「投資活動によるキャッシュ・フロー」の平成16年度は、前年度に比べ3,215,201千円 減少している。これは、有形固定資産による支出が減少したことが主な要因である。 9.「投資活動によるキャッシュ・フロー」の平成18年度は、前年度に比べ308,757千円減 少している。これは、有形固定資産による支出が減少したことが主な要因である。 10.「財務活動によるキャッシュ・フロー」の平成16年度は、前年度に比べ2,694,605千円 減少している。これは、長期借入による収入及びリース債務の返済による支出の減少が要 因である。 11.「財務活動によるキャッシュ・フロー」の平成17年度は、前年度に比べ36,382千円減少 している。これは、リース債務の返済による支出の減少が要因である。 12.「財務活動によるキャッシュ・フロー」の平成18年度は、前年度に比べ82,195千円増加 している。これは、リース債務の返済による支出の増加が要因である。 13.「資金期末残高」の平成16年度は、前年度に比べ191,963千円増加している。これは、 運営費交付金の未使用額及び未払債務の増加が主な要因である。 - 140 - 14.「資金期末残高」の平成18年度は、前年度に比べ806,377千円減少している。これは、 当年度において、前中期目標期間終了に伴う積立金の国庫返納を行ったことが主な要因で ある。 ② セグメント事業損益の経年比較・分析 研究課題別3セグメントのうち、「バイオリソース * 」の事業損益は、▲15,757千円 となり、前年度比52,709千円減少し、「ゲノム生体情報 * 」の事業損益は、▲12,678千 円となり、前年度比14,137千円減少し、また、「バイテク活用 *」の事業損益は、5,766 千円となり、前年度比48,328千円増加し、全セグメントにおいて損益が改善されている。 これは、前年度までに受託収入を財源に取得した固定資産に係る減価償却費の減少が主 な要因である。 なお、「法人共通」の事業損益は、5,503千円と、前年度比7,211千円増加している。 これは、リース資産の取得に伴う還付消費税収入4,547千円が発生したことが主な要因 である。 *バイオリソース:アグリバイオリソースの高度化と活用研究 ゲノム生体情報:ゲノム情報と生体情報に基づく革新的農業生産技術の研究開発 バイテク活用:バイオテクノロジーを活用した新たな生物産業の創出を目指した研究開発 表 事業損益の経年比較(区分経理によるセグメント情報) 区 分 前中期目標期間 15年度 16年度 区 17年度 分 (単位:千円) 当中期目標期間 18年度 19年度 ▲103,790 ▲197,728 ▲124,159 バイオリソース ▲68,466 ▲15,757 昆虫部門 31,857 7,277 19,261 ゲノム生体情報 ▲26,815 ▲12,678 動物部門 ▲14,530 ▲1,654 ▲18,864 バイテク活用 ▲42,562 5,766 法人共通 ▲10,746 202,077 255,889 法人共通 ▲1,708 5,503 合 計 ▲97,209 9,972 132,127 合 計 ▲139,551 ▲17,165 〔表記に関する注記〕 1.前中期目標期間とは、平成13年度~平成17年度までの間、当中期目標期間とは、平成18 年度~平成22年度の間のいずれも5年間である。 2.金額は、科目毎に千円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 3.セグメント区分の変更について、前中期目標期間は研究分野別に「植物部門」、「昆虫 部門」、「動物部門」及び「法人共通」の4区分としていたが、当中期目標期間において は、中期計画において実施する研究課題別に「バイオリソース」、 「ゲノム生体情報」、 「バ イテク活用」及び「法人共通」に変更した。この変更は、第2期中期計画で掲げている 研究課題に対応して、組織体制を中期計画に掲げた研究課題単位別に変更した実態を考 慮し、研究成果をより明確に把握する観点から、セグメント情報の有用性を高めるため に行ったものである。 植物部門 〔経年比較において著しい変動が生じている場合の注記〕 1.「植物部門」の平成16年度におけるセグメントは、前年度に比べ損失が93,938千円増加 している。これは、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度に おける減価償却費が上回ったことが主な要因である。 2.「植物部門」の平成17年度におけるセグメントは、前年度に比べ損失が73,569千円減少 している。これは、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度に おける減価償却費が下回ったことが主な要因である。 3.「昆虫部門」の平成16年度におけるセグメントは、前年度に比べ利益が24,580千円減少 している。これは、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度に おける減価償却費が上回ったことが主な要因である。 4.「昆虫部門」の平成17年度におけるセグメントは、前年度に比べ利益が11,984千円増加 している。これは、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度に - 141 - おける減価償却費が下回ったことが主な要因である。 5.「動物部門」の平成16年度におけるセグメントは、前年度に比べ損失が12,876千円減少 している。これは、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度に おける減価償却費が下回ったことが主な要因である。 6.「動物部門」の平成17年度におけるセグメントは、前年度に比べ損失が17,210千円増加 している。これは、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度に おける減価償却費が上回ったことが主な要因である。 7.「法人共通」の平成16年度におけるセグメントは、前年度に比べ利益が212,823千円増 加している。これは、施設整備事業無利子貸付金等を財源に施設等整備を行った工事で、 当該支出のうち固定資産の取得原価を構成しない費用相当額を施設費収益としたことが主 な要因である。 8.「法人共通」の平成17年度におけるセグメントは、前年度に比べ53,812千円増加してい る。これは、当年度が前中期目標期間の最終年度であったことにより、運営費交付金債務 の全額を収益化したことが主な要因である。 9.平成18年度は、セグメント区分の変更を行ったことにより、前年度比較を行わない。 ③ セグメント総資産の経年比較・分析 研究課題別3セグメントのうち、「バイオリソース」の総資産は、研究用の機械整備 により、当年度332,833千円増加し11,817,366千円となったが、経年による資産額の減 少(減価償却額等)に伴い、前年度比72,955千円減少している。「ゲノム生体情報」の 総資産は、研究用の機械整備により、当年度471,268千円増加し16,826,835千円となり、 経年による資産額の減少はあったものの前年度比148,878千円増加している。「バイテ ク活用」の総資産は、研究棟改修工事等により、当年度159,878千円増加し11,416,110 千円となったが、経年による資産額の減少(減価償却額等)に伴い、前年度比470,163 千円減少している。 表 総資産の経年比較(区分経理によるセグメント情報) 区 分 前中期目標期間 15年度 16年度 区 17年度 分 (単位:千円) 当中期目標期間 18年度 19年度 18,542,761 17,878,862 17,141,226 バイオリソース 11,890,321 11,817,366 24,512,818 24,027,410 23,720,507 ゲノム生体情報 16,677,957 16,826,835 動物部門 327,936 791,514 719,559 バイテク活用 11,886,273 11,416,110 法人共通 1,805,614 2,023,774 2,135,201 法人共通 2,948,357 2,948,861 合 計 45,189,130 44,721,561 43,716,492 合 計 43,402,908 43,009,172 〔表記に関する注記〕 1.前中期目標期間とは、平成13年度~平成17年度までの間、当中期目標期間とは、平成18 年度~平成22年度の間のいずれも5年間である。 2.金額は、科目毎に千円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 3.セグメント区分の変更について、上記②の注2)を参照。 植物部門 昆虫部門 〔経年比較において著しい変動が生じている場合の注記〕 1.「動物部門」の平成16年度におけるセグメントは、前年度に比べ463,578千円増加して いる。これは、施設整備費補助金を財源に実験棟改修工事を行ったことが主な要因である。 2.「法人共通」の平成16年度におけるセグメントは、前年度に比べ218,160千円増加して いる。これは、運営費交付金の未使用額及び未払債務の増加により、現金預金の増加が主 な要因である。 ④ 目的積立金の申請、取崩内容等 当期総利益の主な発生要因は、当年度受託収入を財源として取得した資産の額から、当 中期目標期間中に受託収入を財源として取得した固定資産に係る減価償却費を控除した額 67,739千円及び諸収入の未使用額14,444千円である。 諸収入の未使用額には、公共事業の道路(圏央道)新設に伴い、農林水産省の認可を受 - 142 - け事業遂行に支障のない土地の一部売却に伴う補償金の収入2,397千円及びリース資産の 取得に伴う還付消費税収入4,547千円が含まれている。そのため、諸収入の決算額は、年 度計画における予算額を上回るもののその収入の性質から目的積立金として申請はしな い。 前中期目標期間繰越積立金取崩額86,101千円は、前中期目標期間に取得した資産相当額 であり、当中期目標期間において費用計上されることに伴い、損益均衡を図るため、取り 崩すべき積立金として平成18年6月30日付けにて農林水産大臣から承認を受けた531,545千 円から取り崩したものである。 〔指標3-カ〕 ⑤ 行政サービス実施コスト計算書の経年比較・分析 平成19年度の行政サービス実施コストは8,788,293千円と、前年度比590,916千円減 (6.3%減)となっている。これは、償却資産に関わる損益外減価償却相当額が経年によ り189,674千円減(21.4%減)、損益外固定資産除売却相当額が194,174円減(75.0%減)、 機会費用が、市場金利の低下等により151,972千円減(24.1%減)となったことが主な要因 である。また、引当外退職給付増加見積額は、計算根拠となる給与の昇給等による増額 及び勤続年数の増加等により前年度比78,214千円増(31.8%増)となっている。 なお、機会費用の算出に用いた市場金利とは、決算日における10年国債の利回りであ るが、前年度の年利1.650%から平成19年度は年利1.275%となり、0.375%低下した。 表 行政サービス実施コストの経年比較 区 分 業務費用 うち損益計算書上の費用 うち自己収入 損益外減価償却相当額 損益外減損損失相当額 引当外賞与見積額 引当外退職給付増加見積額 機会費用 (単位:千円) 前中期目標期間 当中期目標期間 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 8,055,420 8,097,595 7,541,085 7,348,614 7,223,515 12,780,901 12,486,591 11,832,602 11,366,128 12,365,997 ▲4,725,481 ▲4,388,996 ▲ 4,291,517 ▲4,017,514 ▲5,142,482 1,415,115 1,021,288 1,081,334 1,146,883 763,035 6,483 1,603 ▲3,331 ▲182,138 ▲211,116 ▲125,013 245,795 324,009 567,042 554,319 693,067 631,433 479,461 (控除)法人税等及び国庫納付金 行政サービス実施コスト 9,855,438 9,462,085 9,190,473 9,379,209 8,788,293 〔表記に関する注記〕 1.前中期目標期間とは、平成13年度~平成17年度までの間、当中期目標期間とは、平成18 年度~平成22年度の間のいずれも5年間である。 2.金額は、科目毎に千円未満を四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある。 3.平成18年度より、「固定資産の減損に係る独立行政法人会計基準」の新設に伴い、損益 外減損損失相当額を行政サービス実施コストとして追加した。 4.平成19年度より、「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」の改訂 に伴い、損益外賞与見積額を行政サービス実施コストとして追加した。また、「独立行政 法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A(平成20年2月改訂) 改訂があり、計算方法を変更した。 〔経年比較において著しい変動が生じている場合の注記〕 1.「損益外減価償却相当額」の平成16年度は、前年度に比べ393,827千円減少している。 これは、政府出資財産における減価償却額の減少が主な要因である。 2.「引当外退職給付増加見積額」の平成16年度は、前年度に比べ28,978千円減少し、平成 17年度は、前年度に比べ86,103千円増加し、また、平成18年度は、前年度に比べ370,808 千円増加している。これらは、「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注 解」に関するQ&A(平成15年3月改訂)を参考に増加見積額を計算していたため、当該 年度における退職一時金の増減が主な要因である。 - 143 - (2)経費節減及び効率化目標との関係 1)人件費の削減に向けた取り組み 農業生物資源研究所の給与は、国家公務員の職員給与を規定している「一般職の職員の給与 に関する法律」に準拠して策定した職員給与規程に基づき支給しており、国家公務員とほぼ同 水準となっている。(HP:http://www.nias.affrc.go.jp/にて公表) 研究職員の対国家公務員指数が100を若干越える原因については、人事院における算出の詳 細が不明なため法人毎に判断できるものではないが、当研究所の特徴を踏まえれば、地域手当 及び研究職員調整手当が支給されているつくば地区勤務者の割合が高いことによるものではな いかと推察される。 対国家公務員指数(19年度) 対前年度比 事務・技術職員 95.9 98.7 研究職員 100.6 99.7 ※対国家公務員指数(ラスパイレス指数)とは、法人の職員の給与を国家公務員の給与と 比較し、法人の年齢階層別人員構成をウエイトとして用いて人事院にて算出された指数。 〔指標3-キ、ク〕 2)業務経費、一般管理費の削減に向けた取り組み 経費節減に向けた対応については、「業務効率化推進基本計画」及び「平成19年度業務効率 化実施計画」に基づき全所的な取り組みを行い、管理経費の抑制に努めた。 ア.共用機器類の保守管理 共用機器類については、農業生物資源研究所として維持・管理を行うべき共用性の高い 高額機器類の整理と管理体制の見直しを行い、利用者が少なく研究上の重要性が低下した 機器を共用機器登録からはずすとともに、年間保守契約から故障時のスポット契約への変 更等により経費節減(▲10,595千円)を図った。 イ.光熱水料 電力量の節減対策として、特殊空調機器を個別空調に一部変更、外気温を考慮した冷暖 房の一時停止、電力使用量削減の指標となる電力メーターの設置と電力量推移調査などの 取り組みを行った。 ただし、平成19年度は、ゲノム研究成果の急速な利用増加に対応するため、本部地区で 農林水産生物ゲノム情報統合データベースシステムの更新(5年後の塩基配列情報処理量 を見据えたシステムの更新)に伴う空調機器の増設及びゲノム情報センターとジーンバン クのサーバフル稼働に伴い契約電力の引き上げを行ったことから、前年度より増加してい る。 ガスは、平成18年度に施設改修を行ったガスボイラーの増設により増加となったが、通 信運搬費については、電子通信手段の活用により節減を図った。上下水道は、大わし地区 で平成18年度に漏水対策を講じたことにより前年度より減少している。 〔指標3-ケ〕 表26 主な項目の節減状況 項 目 平成18年度 電 力 393,226 ガ ス 34,133 上下水道 69,625 通信運搬費 16,254 平成19年度 416,773 39,088 64,108 15,215 (金額:千円) 19-18年度 23,547 4,955 ▲5,517 ▲1,039 3)保有資産の見直しに伴う減損会計 減損対象資産ごとに実査を行った結果、北杜地区の機械室(2件)の冷暖房装置について、 経年による老朽化が著しく今後使用が想定されないため、減損処理を行った。 また、松本・岡谷地区再編統合に伴い、同地区に現存する減価対象資産について、「減損の 兆候」として財務諸表に注記処理した。 〔指標3-コ〕 - 144 - 北杜地区 (金額:円) 資 産 名 用 途 種 冷暖房 装置 研 究用 類 帳簿価額 回収可能 減損額 備 考 サービス価額 温風暖房 設備 1,602,794 2 1,602,792 第 1 機 械 室 及 び 2 機 械 室内設置 松本及び岡谷地区 資 産 名 用 (金額:円) 途 場 所 取 得 帳 簿価額 年月日 松本地区全資産 研究施設 松本地区 H13.4.1 岡谷地 区全資 産 研 究施 設 岡谷 地区 H13.4.1 合 計 回収 可能 減損額 サ ービス価額 5,714,521,057 3,463,813,655 2,250,707,402 66,153,611 127 66,153,484 5,780,674,668 3,463,813,782 2,316,860,886 松本地区:庁舎等主要施設、岡谷地区:共同実験室等主要施設 4)官民競争入札等の活用について 官民競争入札等の活用について、「独立行政法人の整理合理化計画」の策定に当たり検討を 行った結果、施設の清掃、保守、警備等の施設管理に係る一連の業務を包括的に官民競争入札 等とすることについては、①一部の特殊な業務を一括契約に含めることが難しいこと ②一括 契約では、相手先が限定され、競争入札の機能が低下し、経費節減につながらないことから、 民間の専門業者等との間で個別に請負契約を締結することが最も効果的であると判断した。 〔指標3-サ〕 7 事業の説明 (1)財源構造 当法人の経常収益は12,317百万円で、その主な内訳は、運営費交付金収益6,876百万円 (55.8%)、受託収入4,996百万円(40.6%)、資産見返負債戻入338百万円(2.7%)、事業収 入10百万円(0.1%)、寄附金収益85百万円(0.7%)となっている。 (2)財務データ及び業務実績報告書と関連づけた事業説明 ① アグリバイオリソースの高度化と活用研究 当大課題では、農業生物資源研究所がこれまで蓄積してきた生物遺伝資源、ゲノムリソース、 ゲノム情報及びゲノム解析技術を基礎に、新たなバイオリソースの開発と高度化のための研究 を進める。同時に、我が国の中核機関としてこれらアグリバイオリソースを国内外の研究機関 等に提供する体制を確立し、国際的な農業分野のバイオテクノロジー研究を推進することを目 的としている。 (単位:円) 区 分 金 額 事業費用 5,344,140,101 研究業務費 5,304,642,788 一般管理費 0 財務費用 39,497,313 事業収益 5,328,383,015 運営費交付金収益・施設費収益 1,995,838,305 受託収入 3,197,122,896 固定資産見返負債戻入 119,222,559 その他収入 16,199,255 〔セグメントにおいて損失が生じている場合の注記〕 損失の主な要因は、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度 における減価償却費が上回ったことによる。 なお、各研究課題毎の成果と投入資源(研究員数、研究資金)については、「第Ⅱ章-Ⅱ- 1 試験及び研究並びに調査」の項に詳述し、当該項の最終頁に「研究資源の投入状況・成果」 - 145 - の集計表を掲載している。当大課題では、ゲノム解析をはじめとする多額の研究資金を必要と する基盤的な研究を進めているため、論文数や研究員数あたりに投入する研究費が大きくなっ ている。一方、集計表において、論文の引用の多寡を示すIF値が高いことや、この研究から作 成された各種データベースへの全世界からのアクセスが多いことから(資料6参照)、基盤的 な研究として、その成果であるリソース(材料、情報)を提供することで国際的な研究の発展に 貢献していると言える。 ② ゲノム情報と生体情報に基づく革新的農業生産技術の研究開発 当大課題では、これまでに蓄積してきたイネなどのゲノム情報解読の成果や、①から生み出 される研究リソースを活かして、植物、昆虫、動物等各種生物の有する農業生産と密接に関連 した機能を解明し、生物機能の高度発揮に向けた基盤技術を開発することを目的としている。 (単位:円) 区 分 金 額 事業費用 2,666,922,862 研究業務費 2,665,534,813 一般管理費 0 財務費用 1,388,049 事業収益 2,654,245,332 運営費交付金収益・施設費収益 1,754,828,634 受託収入 710,498,749 固定資産見返負債戻入 131,274,496 その他収入 57,643,453 〔セグメントにおいて損失が生じている場合の注記〕 損失の主な要因は、当年度に受託収入を財源に取得した固定資産簿価額よりも、当年度 における減価償却費が上回ったことによる。 当大課題では、①や③の研究開発と比較すると、比較的少ない予算にもかかわらず、研究員 あたりの論文数が多くIF値も高いことから、効率的に基礎的な研究を進めており、着実に成果 を上げていると言える。 ③ バイオテクノロジーを活用した新たな生物産業の創出を目指した研究開発 当大課題では、①、②等のバイオテクノロジーの研究成果を活用して、次世代型のバイオ産 業を創出することを目指している。このため、植物、昆虫、動物等の遺伝子組換え技術及び遺 伝子発現制御技術を高度化、効率化するとともに、実用化に向けた組換え体の研究を進めてい る。また、絹タンパク質等生体高分子の医療用素材への利用等、新たな加工・利用技術の開発 を進めている。 (単位:円) 区 分 金 額 事業費用 1,494,825,538 研究業務費 1,494,825,538 一般管理費 0 財務費用 0 事業収益 1,500,591,931 運営費交付金収益・施設費収益 734,894,125 受託収入 716,696,885 固定資産見返負債戻入 33,320,713 その他収入 15,680,208 当大課題では、研究員数あたりの論文数が少ない反面、比較的少ない予算で多くの特許出願 を進めており、着実に研究成果を特許化しつつ、新たな生物産業創出を目指した研究が進んで いると言える。 - 146 - 8 経営管理体制 (1)適正な事務処理の推進について 1)契約の改善に向けた取組み状況 ①随意契約の見直し 独立行政法人の随意契約の限度額が政令で定められた国の基準額(工事・製造250万円、物 品購入160万円、役務100万円以下)より高いため、国と同額に引き下げるよう、総務省から各 府省に対し、平成19年2月16日付け事務連絡「独立行政法人における随意契約の適正化につい て(依頼)」により要請があり、平成19年9月27日に関係規程の改正を行い、同年10月1日から 実施した。 規程改正に伴って、一般競争入札の件数が、平成16年度~平成18年度3カ年平均を見た場合、 56件から359件と300件以上の増大が確実となることから、契約手続きの見直し、事務の簡素化 ・効率化等を図るとともに、事務がスムーズに運ぶよう、以下の対応を行った。 ①入札事務の簡素化(事後審査型一般競争入札の導入) ②単価契約の範囲拡大(試薬・理化学機器へ導入)及び発注手続きの簡素化 ③消耗品一括購入の推進(環境物品等-グリーン購入法-の調達の推進) ④ユニット等への協力要請 ⑤ホームページの調達情報の改善 ⑥契約チーム専用メールアドレスの開設 特に、事後審査型一般競争入札については、入札契約手続きの透明性・公平性・競争性の一 層の確保及び入札事務日数の簡素化と入札参加者の事前の申請手続きの簡略化を図るため、予 定価格が500万円を超えない一般競争入札に導入し、競争参加者の資格審査は、予定価格の範 囲内の価格をもって申込みをした者のうち、最低価格入札者から競争参加資格を満たしている 者一人が確認できるまで行うものとした。 さらに、平成18年度分からの契約に係わる情報の公表を、平成19年9月よりホームページに 掲載するとともに、一般競争契約の調達情報の伝達・公開を推進し、入札参加者の拡大を図っ た。 また、電気設備及び機械設備等に係る運転保守管理業務(メンテ業務)について、平成20年 度からの一般競争入札の実施に向け、筑波農林研究6号団地一括契約に向けた仕様書等の検討 を行った。 〔指標3-シ〕 ②契約に関する情報公開 平成19年12月、行政改革推進本部事務局及び総務省行政管理局から、独立行政法人における 随意契約の見直しについて、各法人のホームページにて公表するよう要請があり、掲載してい る。 URL:http://www.nias.affrc.go.jp/supply/index.html 2)入札監視委員会 平成18年度施工分について、平成19年12月10日、当所研究本館特別会議室において、委員2 名の出席のもと、入札監視委員会を開催した。審査工事6件のうち、主要3件の工事について、 入札から落札までの一連の事務手続き等について説明し、質疑応答を行った。 [入札監視委員] ○ 山口 俊明(山口俊明公認会計士事務所) ○ 久米五郎太〔日揮(株)常勤監査役〕 3)平成19年度に締結した契約の状況 工事・製造 総 件 数 競争入札 総 金 額 総件数 計 13 (100) 総金額 金額(千円) 376,856 (100) 一般競争 11 11 (84.6) (84.6) 364,991 364,991 (96.9) (96.9) 随意契約 指名競争 0 (0) 0 (0) - 147 - 計 企画競争・公募 不落随契 2 (15.4) 11,865 (3.1) 0 (0) 0 (0) 0 その他 2 (0) (15.4) 0 (0) 11,865 (3.1) 財産の買い入れ 金額(千円) 総 件 数 競争入札 総 金 額 計 総件数 125 総金額 716,295 一般競争 67 (100) (100) 随意契約 指名競争 67 計 (53.6) (53.6) 532,947 532,947 (74.4) (74.4) 企画競争・公募 不落随契 58 0 (0) 0 (46.4) 0 (0) 183,348 (0) (25.6) 0 (0) 競争入札 総 金 額 計 総金額 260,221 (2.9) (22.7) (100) 随意契約 一般競争 6 (100) 指名競争 6 計 0 (66.7) (66.7) 240,956 240,956 (92.6) (92.6) 企画競争・公募 不落随契 3 (0) 0 (0) 0 (33.3) (0) 19,265 0 (7.4) (0) (33.3) 0 (0) 3 19,265 (0) (7.4) 金額(千円) 総 件 数 競争入札 総 金 額 計 120 (100) (100) 随意契約 一般競争 48 総金額1,016,695 指名競争 48 計 0 (40.0) (40.0) 655,002 655,002 (64.4) (64.4) 企画競争・公募 不落随契 72 (0) 0 (60.0) 0 (0) 361,693 (0) (35.6) その他 3 0 (0) 69 (2.5) (57.5) 47,092 314,601 (4.6) (31.0) 委託費 金額(千円) 総 件 数 総 金 額 254 総件数 その他 0 役務提供 総件数 162,688 金額(千円) 総 件 数 9 54 (3.2) (43.2) 20,660 物件の借り入れ 総件数 その他 4 競争入札 計 0 (100) (0) 総金額2,745,104 0 (100) (0) 一般競争 随意契約 計 指名競争 0 0 (0) (0) 0 0 (0) (0) 企画競争・公募 競争的研究資金 18 2 254 (100) 2,745,104 (100) (7.1) (0.8) 不落随契 その他 0 234 (0) 25,499 9,064 0 (0.9) (0.4) (0) (92.1) 2,710,541 (98.7) 注1:対象とする契約及び契約金額は、工事・製造(250万円以上)、財産の買い入れ(160万円以上)、物 件の借り入れ(予定年額賃借料または総額が80万円以上)、役務提供(100万円以上)。 注2:( )内の数字は、総件数・総金額に占める割合。(少数点第2位を四捨五入し、第1位まで記載。) 注3:研究委託費及び調査委託費を含む。 注4:「随意契約(企画競争・公募)」は、独立行政法人が自ら公募を行った契約をいう。 注5:「随意契約(競争的研究資金)」は、総合科学技術会議(内閣府)に登録されている競争的研究資金 による契約をいう。(但し、注4に該当する契約を除く。) - 148 - 4)随意契約から競争入札に移行した事務 契約金額 役 務 等 の 名 称 予定価格 (千円) 落札率 (千円) % ・農林水産生物ゲノム情報統合データベ ースシステム運用支援業務 ・情報管理システム運用サポート業務 ・ソフトウエア保守管理業務 ・庁舎清掃等業務 118,566 120,378 99 4,032 10,262 39 10,122 11,053 92 5,019 7,093 71 注:対象とする契約は、工事・製造、財産の購入、賃借料、役務に係るもの全て。 5)随意契約によることとした理由 事 随意契約によることとした理由 件数 ・契約の性質又は目的が競争を許 さない。 械設備運転保守管理 ほか 227,655 ・機械棟吸収式冷凍機伝 1 ・競争に付しても入札者がいない 又は再度の入札をしても落札者 例 契約金額 (千円) 見積合わせ参加業者数 ・研究実験施設等電気/機 14 ・競争に付することを不利と認め る。 役務等の名称 熱管修繕工事 8,925 ・本部地区研究本館外4 4 棟総合耐震診断業務 ほか 56,057 がいない。 19 ※ - - 随意契約によることとした理由を分類して記載。事例には主なものを記載。 (2)特定関連会社、関連公益法人に対する委託の妥当性 農業生物資源研究所は、社団法人農林水産先端技術産業センターに研究委託を行っている。 社団法人農林水産先端技術産業センターへの委託のうち、農林水産省農林水産技術会議事務 局の公募型委託プロジェクト研究に係る委託は、農業生物資源研究所が中核機関として共同研 究機関(大学、独立行政法人、地方公共団体、民間、公益法人等)との研究実施体制及び研究 課題を含めて提案し、採択されたプロジェクト研究であり、農林水産省農林水産技術会議事務 局と農業生物資源研究所の委託契約に基づいた再委託契約である。 一方、ジーンバンク事業については、配布用DNAの品質管理についての知識と経験を有する 専門家を要することに加え、DNAバンクの設立当初から品質管理手法についても共同で開発し てきており、DNAの品質信頼性においてこれに並ぶものがないため、社団法人農林水産先端技 術産業センターへ委託により実施している。 〔指標3-ス〕 (3)内部統制について 主務大臣より指示された第2期中期目標を達成するため、平成18年度から、農業生物資源研 究所の業務運営及び会計処理について合法性と合理性の観点から監査を行う「監査室」及び、 放射線取り扱い業務等、研究推進上関係法令の遵守が必要な業務を統括し、管理・指導を行う 「安全管理室」を設置して、内部統制を進めている。 また、規制強化に対応するために「微生物実験安全管理規程」の見直し整備を図り、郵送に よる実験植物の海外からの導入手続きの支援を始めた。 さらには、農業生物資源研究所として社会的信頼の確保を目指すため「農業生物資源研究所 憲章」、「行動規範」、「行動規範の推進に関する規程」、「研究倫理規程」によるコンプライア ンスの周知に加え、文部科学省、農林水産省の「研究機関における公的研究費の管理・監査の - 149 - ガイドライン」に基づき、下記の「競争的資金等の適正な運営・管理について」として、管理 責任者や通報・相談窓口をホームページ上に公開して、内部統制の強化を図った。 一方、監事による定期的な業務監査及び会計監査が行われ、年度初めの4月に示された計画 に沿って、書面及び対面監査を受けた。さらに、業務効率化推進委員会へのオブザーバー出席 など、農業生物資源研究所の活動全般について日常から監事による監査、指導を受け、農業生 物資源研究所の運営改善を進めた。なお、監事より指名を受け、職員3名を監事補佐職員に任 命し、独立性を持って監事の活動を補佐した。 〔指標3-セ〕 競争的資金等の適正な運営・管理について 独立行政法人農業生物資源研究所は、農業分野の先端的生命科学研究を担う研究所として、社会から高い信頼性 を得てその責任を果たすために、憲章及び行動規範を定め、適正な業務運営に努めているところです。その一環 として、このたび「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」に基づき、次のとおり公表しま す。 1 競争的資金等の運営・管理に係る責任体系 (1)最高管理責任者 理事長 (研究所全体を統括し、競争的資金等の運営及び管理について最終責任を負う。) (2)統括管理責任者 理事 (最高管理責任者を補佐し、競争的資金等の運営及び管理について研究所全体を統括する実質的な責任と権 限を持つ。) 2 通報窓口 独立行政法人農業生物資源研究所行動規範の推進に関する規程に定める通報窓口 〒305-8602 茨城県つくば市観音台2-1-2 独立行政法人 農業生物資源研究所 理事 直通電話:029(838)7097、電子メール:tsuho@nias.affrc.go.jp 【通報に関する留意事項】 通報は、電話、メール、郵送、面談など適宜の方法によることができますが、通報を受け付ける際には、通報者 の氏名・連絡先、不正を行ったとする研究者・研究者グループ、不正行為及び不正使用の態様、不正とする根拠、 使用された競争的資金等について確認させていただくとともに、調査にあたっては通報者に協力を求める場合が あります。 なお、調査の結果、悪意に基づく告発であったことが判明した場合には、規程等に基づき必要な措置を執ること を申し添えます。 ※ 個人情報について 農業生物資源研究所では、規程等に基づき個人情報の適切な保護・管理を行っております。 3 相談窓口 競争的資金等の事務処理手続き及び使用に関するルール等についての相談窓口 〒305-8602 茨城県つくば市観音台2-1-2 独立行政法人 農業生物資源研究所 研究企画調整室 研究調整チーム 直通電話:029(838)7143、電子メール:nias-chosei@nias.affrc.go.jp 【参 考】 独立行政法人 農業生物資源研究所 憲章 独立行政法人 農業生物資源研究所 行動規範 独立行政法人農業生物資源研究所行動規範の推進に関する規程 [PDF] 「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」(文部科学省) 「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」(農林水産省) - 150 - (4)監査体制について 監査室については、平成19年度監査実施計画に従い、8部門(庶務室、経理室、管理室、研 究企画調整室(研究調整チーム)、遺伝資源管理室、放射線育種場(常陸大宮庶務チーム)、 産学官連携推進室、安全管理室)の監査を実施した。具体的には、所内規程の遵守状況、会計 処理状況、資産の保全状況及び業務の執行状況等について監査を行い、実態を把握するととも に改善に向けて被監査部門に対して提案等を行った。 監査では、旅費(航空賃)の不正受給を発見し、再発防止のための処置を旅費業務の担当部 署である経理室に要求した。経理室から旅費の不正額の返納手続きを行うとともに、旅費業務 の手続きを検討し、チェック機能を高めるとともに、全所員に対して、旅費請求手続きに当たっ ての注意点を改めて周知し、旅費の適切な執行を行った。 また、平成20年3月26日に理事長及び監事に対して、平成19年度の内部監査の結果をまとめ た「内部監査総括報告書」を提出し、庶務室はじめ担当部署から是正処置を講じた。 〔指標3-セ〕 [会計検査院の指摘事項] (18年度検査での指摘(処置済事項)) 1.公共研究機関等と「生物遺伝資源交換に関する研究協定」を締結し、所有する遺伝資源を 交換する場合は無償配布することとしていることに関して①協定締結後、遺伝資源の受入がな いまま、一方的に配布していた。②協定締結後、遺伝資源の受入を行っているが、受け入れる まで無償で配布していた。 配布収入の増加が見込まれた金額6,008万円(平成14~18事業年度) (対応内容) 「生物遺伝資源交換に関する協定の取り扱いについて」を9月25日付けで規定し同日以降施 行することとした。内容は、①交換は同時期に行う。②協定期間は原則3年とする。 2.サブバンクの実地検査の結果、非常勤職員の勤務実態を正確に把握せずジーンバンク委託 費から賃金を支払っていた。 (対応内容) サブバンクに対し、非常勤職員の業務内容を日誌等を付ける。また、他の予算との共通業務 等については、予算規模に応じ業務量を按分するなどして、実績報告書に反映させるよう依頼 文書を発した。 (19年度検査での確認(処置済事項)) 会計検査院の平成19年度実地検査で前年度に指摘のあった「農業生物資源ジーンバンク事業」 については、内規を改正し、関係機関に指導徹底する処置を講ずるとともに自己収入の増加を 図ることとした。 また、ジーンバンク事業に関する委託事業の契約に係る非常勤職員の賃金の支払いについて は、契約の相手方の関係法人に対して適切な事務処理の徹底を図ることとした。 〔指標3-ソ〕 自己評価 評価ランク A コメント 可能性のある外部資金については、これまで同様、所内ネットワー クを通じて周知するとともに、研究領域長を通して直接研究者に応 募を奨励するなど対策を講じた。 競争入札促進のため、平成19年9月に会計実施規則、契約事務実 施規則等の規程を改正し、10月1日から施行した。随意契約の限度 額を超えるもの並びに一般競争契約によるものは国の基準に準じて 公表している。また、随意契約見直し計画に基づき、平成20年度契 - 151 - 約については、原則として随意契約限度額を超える案件については 一般競争契約へ移行することとし、経費節減に努めた。このように、 一般競争入札への移行を加速させ、競争性、透明性、公平性を高め、 経費節減に務めたことは評価できる。 平成18年度施工分入札監視委員会を平成19年12月10日に開催し、 審議概要等についてはホームページで公表した。契約審査委員会に おいて、会計規程第37条第1項を適用する随意契約理由について、 第1号適用(契約の性質又は目的が競争を許さないとき)5件、第 3号適用(競争に付することが、不利と認められるとき)1件につ いてそれぞれ審査を行い、随意契約により契約することが真にやむ を得ないものとして承認した。 平成19年度の内部監査は8部門(庶務室、経理室、管理室、生物 遺伝資源管理室、常陸大宮庶務チーム、研究企画調整室、産学官連 携推進室、安全管理室)を対象に実施した。監査結果については所 内ネットワークを介して公表した。 このように入札監視委員会や内部監査を通じて、透明性及び公平 性を検証していることは評価できる。 前年度の 分科会 評価 A 人件費については、5年間で5%以上の削減目標に向けた取り組み が行われている。また、給与水準は、国の水準とほぼ同等である。 受託収入が予算額を上回っていることは評価できるが、競争的研究 資金の獲得件数と金額は前年に比べて減少した。今後、可能性のあ る制度に幅広く積極的に応募し、外部資金の獲得に向けた努力を強 化することを期待する。 一般競争入札の拡大を図り、競争性の確保に努めていることは評価 できるが、今後、規則の改正を行うなど、さらに一般競争入札への 移行を加速させ、競争性、透明性、公平性が高められ、経費節減効 果が現れることを期待する。また、入札監視委員会、契約審査委員 会及び内部監査により透明性、公平性等が常に検証されていること を期待する。 - 152 - Ⅳ 短期借入金の限度額 中期計画 中期目標の期間中の各年度の短期借入金は、7億円を限度とする。 想定される理由:運営費交付金の受入れの遅延 (実績) 該当なし Ⅴ 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画 中期計画 なし (実績) 該当なし Ⅵ 剰余金の使途 中期計画 ゲノム情報と生体情報に基づく革新的農業生産技術の研究開発等に関する試験研究の充 実・加速及びそのために必要な研究用機器の更新・購入等に使用する。 (実績) 該当なし Ⅶ 1 その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項等 施設及び設備に関する計画 中期計画 業務の適切かつ効率的な実施の確保のため、業務実施上の必要性及び既存の施設、設備 の老朽化等に伴う施設及び設備の整備改修等を計画的に行う。 (実績) 研究施設・設備の改修・修繕等については、老朽化の現状や研究の重点化を踏まえて計画的 に行うことが必要であり、併せて、施設修繕維持経費の効率的・計画的な執行を行うことが求 められる。このため、平成19年度は、施設利用委員会において各研究ユニット等からの改修要 望を取りまとめ、中長期的な視点に立って、第2期の中期目標期間に改修・修繕が必要となる すべての施設・設備をリストアップし、必要性、緊急性等の視点から順位付けを行い、第2期 中期目標期間における施設等整備計画を策定した。この施設整備計画は固定したものとはせず、 研究の重点化方向や施設の利用状況の変化に合わせて見直しを行うこととしており、平成19年 度においても年度末に、平成20年度以降の計画の見直しを行った。 〔指標7-1〔指標1-2-ウ〕〕 ①当事業年度中に完成した主要施設等 ・本部地区精密温室改修(取得原価 181百万円) ・農環研地区組織培養接種検定温室(取得原価 35百万円) 施設整備費補助金により、本部地区精密温室及び農環研地区組織培養接種検定温室の閉鎖系 温室への改修を行った。組換え植物の栽培には、花粉の飛散や排水等の管理が法的に義務づけ られている。現在は、隔離温室等で組換え植物の栽培を行っているが、組換え植物の形質調査 等の解析を行うに当たって必要とされる面積が十分に確保されていないのが現状である。 - 153 - また、有用遺伝子の導入による、従来の育種法では得られない高度な機能をもつ遺伝子組換 え作物の開発も進めており、これらの植物の温室栽培は、カルタヘナ法の規制を受けており、 遺伝子の拡散防止にかかわる一定の要件を備えたP1P施設(閉鎖系温室)で行う必要がある。 今後、組換え体を用いた研究はますます増加することが見込まれるため、現在の慢性的な温 室の不足状態を緩和するため、本工事により、それぞれの温室が改修された。 ②当事業年度において継続中の主要施設等の新設・拡充 該当なし ③当事業年度中に処分した主要施設等 ・大わし地区土地の売却(取得価格 5.5百万円、減価償却累計額 0円、売却額 5百万円、 売却損 0.5百万円) ・大宮地区ポンプ室の除却(取得価格 0.2百万円、減価償却累計額 0円) 〔指標7-1〔指標1-2-ウ〕〕 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A 平成19年度は、施設利用委員会において施設整備の改修方針及び 実施計画を策定し、それに基づいて中期計画通り順調に実施した。 さらに、施設整備計画は固定したものとはせず、研究の重点化方向 や施設の利用状況の変化に合わせて見直しを行うとしており、柔軟 に状況の変化に対応している点等評価できる。 また、農業生物資源研究所として重点的に推進している組換え植 物の増加に対応するため、閉鎖系温室への改修が行われたことも評 価できる。 A 計画通りの施設整備を行うとともに、電力設備の改修により研究業 務へ与える不安を解消したことなどは評価できる。施設が今後有効 に活用され、研究の効率的な推進、快適な執務環境が維持されるよ う、計画的な施設整備が継続することを期待する。 2 人事に関する計画 (1)人員計画 中期目標 期間中の人事に関する計画(人員及び人件費の効率化に関する目標を含む。)を定め、 業務に支障を来すことなく、その実現を図る。 中期計画 ①方針 効率的・効果的な業務の推進が図られるように研究管理支援部門の組織体制を見直 し、適切な職員の配置を行う。また、研究分野の重点化や研究課題を着実に推進するた めの組織体制を整備し、職員を重点的に配置する。 ②人員に係る指標 期末の常勤職員数は、期初職員相当数を上回らないものとする。 (実績) ①職員の配置 - 154 - 平成18年度に行った研究管理支援部門の見直しにより、従来の企画調整部と総務部を廃止し、 13の室を並列に配置することにより、各部署における独立性の確保による権限付与と責任の明 確化、重複業務の整理が進んだ。特に、研究職職員と一般職職員とを混在して配置した室にお いては、業務の効率的な運営が図られるとともに、研究管理支援部門として13室の連携がスムー ズになってきている。 平成19年4月に改定した中期計画に基づき、基盤研究領域に発足させたダイズゲノム研究チー ムのチーム長に、招へい型任期付研究員を採用し、研究推進体制を強化した。また、第2期中 期計画開始後空席だった植物科学研究領域の耐環境ストレス研究ユニット長についても、国内 外から適任者を募集・採用し、研究の推進を図っている。 〔指標7-2-ア〕 ②常勤職員数 平成20年3月31日現在、常勤職員数は計388名(うち研究職264名)であった。なお、期初常勤 職員相当数は計424名である。 〔指標7-2-イ〕 (2)人材の確保 中期目標 研究職員の採用に当たっては、任期制の一層の活用等、雇用形態の多様化及び女性研究 者の積極的な採用を図りつつ、中期目標達成に必要な人材を確保する。研究担当幹部職員 については公募方式等を積極的に活用する。 中期計画 ①研究職員の採用に当たっては、任期制の活用、公募等により、研究所の研究推進に必要 な優れた人材を確保するとともに、適切な人材養成を行う。 ②研究リーダーについては、広く研究所内外から優れた人材を確保するため、公募方式を 積極的に活用する。 ③女性研究者の採用に関しては、応募者に占める女性割合と、採用者に占める女性割合と でかい離が生じないよう努める。 ④次世代育成支援行動計画に基づき、仕事と子育てを両立しやすい雇用環境の整備に努め る。 (実績) ①及び②研究職員の採用と適切な人材養成 研究職員の人材確保は、当該分野の特質、求める人材の具備すべき資質等を考慮しながら、 人事交流、試験採用、選考採用、任期付任用など、多様な採用制度を活用して進めている。農 業生物資源研究所が担う研究分野は研究の進展が速く、競争も激しいため、優れた若手の人材 を確保する必要性が高く、公募による若手任期付研究員の採用を中心に進めた。 平成19年4月1日付けで、1)バイオインフォマティクス研究基盤の確立(1名)、2)作物 の光環境応答の解明と利用技術の開発(1名)、3)家畜ゲノムリソースの開発と利用(1名) の、3つの研究領域を担う3名の任期付研究員を採用した。また、平成19年10月1日付けで、 昆虫の乾燥耐性機構の解明と利用技術の開発を担う任期付研究員1名を採用した。これら4名 には優秀な指導者をつけ、人材育成プログラムの中の新規採用研究員に対する特別な養成プロ グラムにより育成を図っているところである((4)職員の資質の向上の⑤若手職員の人材養成 参照、p24)。 平成19年4月1日付けでは、上記の他、昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット研究員(任 期を定めない)(1名)を公募により採用し、ダイズゲノム研究チーム長に優れた研究業績と 指導能力を有する研究者を招へい型任期付研究員として採用した。 また、公募により、平成19年7月1日付けで、ジーンバンク長を採用し、平成20年3月1日付け で耐環境ストレスユニット長を採用した。 〔指標7-2-ウ〕 - 155 - ③女性研究者の採用 研究者の採用にあたっては、性別を考慮せずに研究能力に重点を置いて選考を行った。 平成19年度中に平成20年4月1日に採用する研究員(任期付研究員(若手育成型);3ポスト、 任期を定めない研究員;1ポスト、研究ユニット長;1ポスト)の選考審査を行った。候補者 の募集は公募によって行い、任期付研究員の3つのポストにはそれぞれ12名(うち女性4名)、 8名(うち女性1名)、3名(うち女性1名)、また、任期を定めない研究員のポストには2 名(うち女性なし)、ユニット長のポストには5名(うち女性2名)の合計30名(うち女性8 名)応募があった。理事長等役員及び研究領域長等管理職員全員を審査委員とする審査委員会 で書類及び面接による審査を行った結果、募集した各ポストに1名ずつ合計5名(内女性1名 (ユニット長))の研究員の採用を内定した。この結果、応募者における女性の割合から大き くかい離することはなかった。 〔指標7-2-ウ、指標7-2-エ〕 ④次世代育成支援対策 次世代育成支援対策行動計画推進委員会を開催し、行動計画の達成状況の評価・点検と問題 点等の整理を行い、行動計画の着実な実行に努めた。また、育児短時間勤務制度の導入及び育 児時間取得対象となる子の年齢を3歳未満から小学校就学前までに引き上げを行った。 さらに、夏季休暇や祝日等と年次有給休暇の効果的活用による長期休暇の取得の推進をグ ループウェアでアナウンスするなど、仕事と子育てを両立しやすい雇用環境の整備に努めた。 〔指標7-2-オ〕 自己評価 前年度の 分科会 評価 3 評価ランク コメント A 業務の実態に応じた人員配置を行うとともに、研究支援部門13室 の連携と意思疎通を図り、円滑な業務運営に努めていることは評価 できる。さらに、研究の重点化を進めるための研究職員の採用・配 置が適切に行われ、次世代育成支援も適切に対応するなど、人員計 画・人材確保とも中期計画通り順調に進捗している。 平成20年4月採用の5ポストの内、選考審査の結果1ポストのユ ニット長は女性を採用することとなり、20年4月1日に昆虫科学研究 領域に女性ユニット長が誕生したことは評価できる。今後とも、女 性研究者の能力活用や、次世代育成のための仕組みを整えていくこ とが必要である。 また、育児短時間勤務の導入、育児時間取得対象者の範囲の拡大 など、次世代育成支援対策行動計画を着実に実行したことも評価で きる。 A 22ユニット、4センターに研究者を集約した取り組みは評価でき る。採用を計画的に行うとともに、任期付雇用を活用し、多様な人 材の確保に努めている。研究リーダーについても招聘型任期付雇用 を行った。採用した若手任期付研究員の養成を強化したことも評価 できる。女性研究者の積極的な採用など、女性の能力活用について も、引き続き努力することを期待する。 情報の公開と保護 中期目標 公正で民主的な法人運営を実現し、研究所に対する国民の信頼を確保するという観点か ら、情報の公開及び個人情報保護に適正に対応する。 - 156 - 中期計画 ①研究所の諸活動の社会への説明責任を果たすため、開示請求への適正かつ迅速な対応を 行う。 ②個人の権利、利益を保護するため、研究所における個人情報の適正な取扱いを推進する とともに、個人情報の本人からの開示等請求や苦情処理に適切かつ迅速に対応する。 (実績) ①情報提供の充実 独立行政法人通則法及び情報公開法に基づく情報をはじめ、農業生物資源研究所の諸活動に 関する各種情報については、契約の公開やGMOの一般向け説明等をホームページにより正確 かつ迅速な公開を行った。 また、法人文書ファイル管理簿等の整理、法人文書分類基準表の見直しを行った。 法人文書の開示については、情報公開窓口を明示し、日常より開示請求者に対し、正確かつ 迅速な情報提供を行うよう努めている。なお、平成19年度における開示請求はなかった。 〔指標7-3-ア〕 ②個人情報の取扱い 農業生物資源研究所が保有する個人情報について、データファイル等の点検を行い、重複す るデータについては廃棄を行うなど、適正な保管に努めた。 また、情報の漏洩防止について職員への周知を行い、適正な取扱いに努めた。なお、平成19 年度における個人情報の漏洩や本人からの開示請求等はなかった。 さらに、個人情報の取扱等に関する研修会に担当者を参加させ、資質向上に努めている。 〔指標7-3-イ〕 自己評価 前年度の 分科会 評価 4 評価ランク コメント A 農業生物資源研究所の諸活動に関する各種情報については、ホー ムページにより正確かつ迅速に公開を行った。法人文書の開示につ いては、情報公開窓口を明示し、日常より開示請求者に対し、正確 かつ迅速な情報提供を行った。情報は適切に公開されており、個人 情報も適切に管理されていることは評価できる。 A 生物研の諸活動に関する情報をホームページにおいて適切に公開す るとともに、情報公開請求にも迅速に対応しており評価できる。引 き続き、情報の適切な公開と保護に努めることを期待する。 環境対策・安全管理の推進 中期目標 研究活動に伴う環境への影響に十分な配慮を行うとともに、エネルギーの有効利用やリ サイクルの促進に積極的に取り組む。さらに、事故及び災害を未然に防止する安全確保体 制の整備を行う。 中期計画 ①職員全員が安全衛生に関する責任と意識を持つよう、事故及び災害を未然に防止するた めの安全教育を実施する。 - 157 - ②研究所の研究活動に伴うリスクを把握し、それに対応できる安全管理体制を整備すると ともに、職員への教育・指導等により放射性同位元素や遺伝子組換え生物等の適正な管 理に努める。 ③既存設備の運転状況等を把握し、省エネルギー機器及び設備の導入を検討し、省エネル ギーにつながる改修計画を作成する。 ④物品の購入契約等に当たっては、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平 成12年法律第100号)や資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号) に基づく環境物品等の調達・工事の推進を図る。 (実績) ①安全教育の実施 安全衛生委員会が策定する年間計画に基づき、事務所内及び居室並びに実験室等の定期的な 職場巡視を行い、安全衛生委員会で巡視結果を取りまとめ、運営会議やグループウェアに掲載 し、職員に対する職場の安全に関する個々の意識の向上に努めた。 また、所内での健康相談及び健康づくりセミナーを実施し、職員に心身の健康づくりの意識 を定着させ、事故の未然防止に努めた。 さらに、労働災害を防止するために必要な事項の教育として、労働安全衛生法第60条に基づ き労働基準協会が実施する「職長等安全衛生教育研修会」に技術専門職員を、職場の安全管理 に関する各種講習会等に担当職員及び技術専門職員を参加させるなど安全管理に対する知見を 高めた。 〔指標7-4-ア〕 ②放射性同位元素や遺伝子組換え生物等の管理 1.放射性同位元素の安全管理 (1)放射線障害予防規程 放射線同位元素使用施設の変更許可に合わせて、観音台地区施設及び大わし地区施設の放 射線障害予防規程を変更し、文部科学大臣に届け出た。 (2)教育・指導等 放射線障害予防規程の周知や放射線障害の防止のため、放射線同位元素取扱経験者を対象 とする教育及び訓練を実施し、116名(観音台地区施設70名、大わし地区施設46名)が受講 した。年度途中からの利用を希望する取扱経験者に対しては、教育及び訓練を随時実施した。 新規の放射線同位元素取扱希望者7名は、筑波農林研究交流センター(農林水産技術会議事 務局筑波事務所)により実施された管理区域立入前教育訓練を受講した。 また、放射線育種場においても放射線業務従事者に対して教育訓練を本年度は5回実施し、 新規登録16名、継続登録28名となった。 放射線障害防止法に基づく放射線取扱主任者の定期講習は、新たに選任された主任者1名 が受講した。 本年度の放射線業務従事者(他機関の放射性同位元素使用施設利用者を含む)は、202名 (つくば地区158名、放射線育種場44名)であった。 観音台地区施設について、7月に文部科学省水戸原子力事務所の係官による立入検査が実 施された。検査の結果、施設に問題となる部分は特にないとの講評を受けたが、帳簿の記載 内容等に関する口頭での指摘事項については、後日文書で対応を回答した。 (3)委員会の開催と管理の適正化 つくば地区ではアイソトープ委員会が7月に開催された。2つの放射性同位元素等使用施 設について老朽化対策や統廃合等に関する検討を行った結果、今中期計画期間中(平成22年 度まで)に放射性同位元素の使用を観音台地区施設へ集約することとし、同施設の長期的な 修繕計画を策定することとなった。 放射線育種場では、定例の放射線安全委員会を2回開催するとともに、放射線施設等の適 正な管理に努めている。 〔指標7-4-イ〕 2.遺伝子組換え実験の安全管理 (1)規程等の改正 7月に「第1種使用規程承認遺伝子組換え作物の使用に関する業務安全規程」を8月に「遺 - 158 - 伝子組換え実験の使用等に係る安全規程」をそれぞれ改正した。また、「動物小委員会が定 めた事項」及び「植物小委員会が定めた事項」を、それぞれ10月と1月に改正した。 (2)教育・指導等 遺伝子組換え実験に関する定例の教育訓練及び新人向けの講習を開催し、323名が受講し た。関係法令の遵守及びそのために必要な手続等の周知徹底を図るなど、遺伝子組換え生物 の適正な管理に努めた。 本年度の遺伝子組換え実験従事者は、458名である。 (3)遺伝子組換え実験の審査、実施状況 遺伝子組換え実験安全委員会及び動物・植物小委員会で、遺伝子組換え実験計画書の検討 ・審議が行われた(動物小委員会4回、植物小委員会5回開催)。299件の実験計画書が受 理又は承認された。 また遺伝子組換え生物等の搬出・搬入について、152件(搬入届73件、搬出届79件)が承 認された。 (4)遺伝子組換え植物種子輸入時の検疫 遺伝子組換え生物等の搬入で、国外から輸入された植物種子を包有する郵便物のうち、通 関郵便局での輸入検疫が行われずに配達されたもの8件については、生物遺伝資源管理室の 協力のもとで、横浜植物防疫所成田支所に届け出て、植物防疫官による検査を受けた。 〔指標7-4-イ〕 3.動物実験の管理 (1)教育・指導等 本年度の動物実験従事者は、62名である。独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 の畜産草地研究所及び中央農業総合研究センターとの共催で、動物実験に関する講習会を2 月に開催し、49名が受講した。 (2)動物実験の審査、実施状況 動物実験委員会では、今年度提出された動物実験計画書の検討・審議を行い、7件(新規 4件、変更3件)の計画書が承認された。本年度は36件の動物実験が実施された。 〔指標7-4-イ〕 4.微生物実験の管理 (1)規程の改正 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、「微生物実験安 全管理規程」を9月に改正した。 (2)微生物実験計画書及び使用・保管場所の審査、実施状況 微生物実験安全委員会では、今年度提出された微生物実験計画書の検討・審議を行い、2 件の計画書が承認された。この計画書で、バイオセーフティレベル2の微生物を新たに保管 又は使用することとなった場所について、微生物実験の安全設備基準を満たしているかなど の調査が実施された。バイオハザード標識の表示等に関する指導が行われ、当該場所は承認 された。 本年度は4件の微生物実験(バイオセーフティレベル2)が実施された。 〔指標7-4-イ〕 ③省エネルギー改修計画 当所は、省エネルギー法による第一種エネルギー管理指定工場に指定され、エネルギー消費 原単位を中長期的にみて年平均1%以上低減する必要があることから、「省エネルギー中長期 計画」(平成19年度から3カ年計画を策定)に基づき、省エネルギー型の照明装置や研究用冷 凍設備の採用、高温水・蒸気配管用バルブの保温整備、冷暖房設備の省エネ基準による運転調 整、エレベーターの一部制限運転等を行った。 また、施設修繕に伴う機器類の更新については、省エネ型タイプ用機器導入により後年度負 担の節減を図るとともに、昼休みの不要箇所の消灯やOA機器類のこまめな停止等の所内放送 の実施、エネルギー使用実績のグループウェアへの掲載などを行い、省エネの取り組みについ て周知徹底を図った。 - 159 - なお、19年度において本部地区では、農林水産生物ゲノム情報統合データベースシステム更 新に伴う空調機器の増設等で前年度より増加している(表27)。 〔指標7-4-ウ〕 表27 エネルギー使用量(原油換算)の推移 (単位:KL/年) 17年度 18年度 19年度 本 部地区 4,313 4,285 4,501 対前年比 % 99.4 105.0 大わし地区 3,916 対前年比 % ※ 3,813 97.4 3,794 99.5 省エネ法に基づく定期報告から抜粋 ④環境物品等の調達・工事の推進状況 物品の購入契約等に当たっては、グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に 関する法律)等に基づく環境物品等の調達の推進を図った。さらに、平成18年度分からの契約 に係わる情報の公表を平成19年9月よりホームページに掲載するとともに、一般競争契約の調 達情報の伝達・公開を推進し、入札参加者の拡大を図った。 〔指標7-4-エ〕 自己評価 前年度の 分科会 評価 評価ランク コメント A 安全管理室を設置し、安全教育の実施や放射性同位元素・遺伝子 組換え生物等の管理に堅実に取り組んでいることは評価できる。 労働災害を防止するために、職員の安全管理に関する各種講習会 に担当職員を参加させ、安全管理に対する知見を高めた。 また、業務効率化推進委員会を立ち上げ、省エネルギー活動を展 開していることも評価できる。なお、光熱水量の削減に向けて引き 続き努力していくことが必要。 A 安全管理室を設置して、安全に対する研究員の意識向上に努めてい る。また、安全教育を実施し、RI、GMO、動物実験の管理その 他の環境対策、安全管理に必要な措置を講じており評価できる。今 後とも、関係する法令の変更に対応しつつ、適切な管理を継続する ことを期待する。 - 160 - 付 用語の解説 - 161 - 録 (付録)用語の解説 ※「用語の解説」では、独立行政法人農業生物資源研究所の「平成19年度に係る業務実績報告書」 に記載されている専門用語を説明しています。このため、「用語の解説」の説明は、業務実績 報告書の研究課題実績及び業務運営に関係する内容に限られます。同じ用語でも研究領域別に 使い分けている場合には併記し、用語の後にカッコ書きでイネゲノム、遺伝資源、昆虫、動物 を表示しました。 用語 解説 【あ行】 アクティブコレクション 収集保存され,基本的な特性情報が付され,育種・研究のため配布され る遺伝資源を指す。 アノテーション ゲノムのDNA配列のような一次情報から、遺伝子の機能といった高度な 生物学的情報を抽出する行為をアノテーションと呼ぶ。 アミン作動性神経活動 脳内のノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質を含む神経系 の活動。この神経系の活動は、運動や情動(快・不快、不安、興奮)と深 く結びついている。 遺伝資源 農業の歴史の中で,ヒトは多様な生物を利用し品種改良などを行ってき た.ヒトが利用する生物の多様性を遺伝資源と呼ぶ。近年では,遺伝子 工学などの発展もあり,すべての生物は「遺伝資源」として活用できると 考えられている。 遺伝子多型 同じ生物種の集団内においても、遺伝子を構成しているDNAの配列に は各種の突然変異によって個体差があり、このばらつきを遺伝子多型と いう。遺伝子多型はその個体の遺伝的背景を表すマーカーとして形質と の関連を調べるのに有用である。 医療用モデルブタ マウスやラットなどの実験動物に比べて、ブタは臓器のサイズや生理学 的な性質が人に近く、医学研究用モデル動物として注目されている。特 に、病気に関係する特定の遺伝子を改変したブタの利用価値は極めて 高い。 インターフェロンタウ 栄養膜細胞が産生するタンパク質因子で、妊娠認識に重要な役割を持 つ。 ウォルバキア 昆虫に寄生する細菌の一種。昆虫に病気を引き起こすことはないので、 共生微生物のカテゴリーに入れられている。非常に多くの昆虫種に寄生 しており、宿主昆虫の性や生殖に影響を与える。その例として、両親の 組み合わせによって、卵が発育しない細胞質不和合性をはじめ、単為 生殖、オス殺し、メス化などがある 栄養膜細胞 胚の外側の膜を構成する細胞で、子宮の壁と接して胚に栄養を送る働 きをする。 エストロジェン 卵巣から分泌されるホルモン。一般には女性ホルモンと呼ばれることも ある。血流を介して体の様々な部位に作用し、雌らしい体の形成を促す とともに、刻一刻と変化する卵巣の状態を脳の視床下部に伝える作用を 持つ。 エンハンサートラップ 未知のエンハンサーを同定する方法の一つ。弱いプロモーターに連結し たレポーター遺伝子をトランスポゾンなどを介してゲノムDNAに無作為に 挿入すると、挿入部位の近傍にエンハンサーが存在すれば、レポーター 遺伝子の発現特異性が変化する。このことに基づいて未知のエンハン サーや本来そのエンハンサーの支配下にある遺伝子を同定できる。 付録-1 用語 解説 黄繭と黄血遺伝子 カイコの繭は通常は白色であるが、品種によっては黄色の繭を作る。こ の繭を黄繭と呼ぶ。黄繭はカイコの幼虫の血液が濃黄色で、脚も黄色を 呈するようになる形質と密接な関係があり、黄血遺伝子はカロチノイドが 消化管から消化管細胞へ透過するのを支配している。 黄体形成ホルモン 下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンの一つ。性腺(卵巣、精巣)に 作用し、その活動を活性化させる。その分泌は、視床下部で産生され下 垂体に作用する性腺刺激ホルモン放出ホルモンにより、一義的に制御 されている。 オキシトシン 生体内ペプチド。末梢の作用として子宮筋の収縮や射乳の作用がよく知 られているが、視床下部にも存在し、ストレス反応の抑制に関わってい ることが明らかになってきている。 オボキニン 卵白アルブミンの消化物から単離された血圧を調整する生理活性ペプ チド。6個のアミノ酸からできている。アンジオテンシンAT2レセプターを 介して血管を広げる作用で効果を示すことが明らかにされている。 オルソログ 異なる種間で進化的に対応する遺伝子。多くの場合、同一もしくは類似 の機能を持つ。 カイコ濃核病ウイルス パルボウイルス科に属し、約5 kbの1本鎖DNA をゲノムとして持つ小型 ウイルス。このウイルスに対するカイコの感染性は、抵抗性遺伝子の有 無によって明瞭に区別され、その原因遺伝子の一つが、中腸の膜タン パク質遺伝子として最近単離された。 概日時計 生物の持つ約24時間周期の時計機構(生物時計)。 植物では、1日の 明暗周期と組み合わせることにより、季節を認識して開花時期を調節し ているものがある(長日植物、短日植物)。日本では、イネは日が短くな ると開花する短日植物である。 海馬 学習や記憶の形成などに重要な役割を担う古い脳の一部。海馬は自律 神経系や行動を起こす神経系と結びついており、行動調節にも関与す ることが知られている。 核移植 核を取り除いた卵子に、体細胞の核を移植すること。クローン動物をつく るために用いられる手法。 カスパリー線 植物の内皮や表皮の細胞を1周するように存在する疎水性の高い部 分。細胞壁に存在し、細胞壁を通る水やイオンなどの輸送を制限してい る。 ガラス化 結晶とは異なり、分子や原子が不規則な空間配置を維持したまま固形 になった状態をいう。ガラス化では、共存する細胞膜やタンパク質の生 体物質がカプセル状に包み込まれ、様々なストレスから保護される。 ガラス化法(遺伝資源) ガラス化法とは、超低温保存法のひとつで,細胞や組織に含まれる水分 にガラス化を起こさせて氷晶形成による傷害を避ける保存法である。 ガラス化法(動物) 特殊な凍結保護剤に浸した卵子や胚を超急速に冷却し、氷の結晶を作 らずに凍結状態にする方法。 感染糸 根粒菌が植物組織に侵入するにあたって、植物が用意する管状の構 造。感染糸を経由することで、根粒菌は根組織表層から根粒原基まで 運ばれ、最終的に植物細胞に放出される。これは宿主が受入を許した 根粒菌のみを細胞内に導入するために必要なプロセスと考えられる。 【か行】 付録-2 用語 解説 完全長cDNAライブラリ 遺伝子(DNA)は、実際に機能を発揮するためRNA(メッセンジャーRNA)に 変換される。このRNAを人為的にDNAに再転換して人間が解析しやすく したもの(cは complemetory)。なおRNAは分解しやすいため、完全な RNAだけを特殊な方法で選択してcDNAに変換後、大腸菌にクローニン グしてライブラリー化したものを完全長cDNAライブラリと称する。 稈長 イネでは収穫期の地際から穂首までの植物体の高さ(長さ)を指す。イネ 科作物の近代品種は、倒伏抵抗性を強化するために稈長を短くする短 稈化の方向に改良されてきている。イネ品種のIR8やレイメイ、コムギ品 種の小麦農林10号などは代表的な短稈品種である。 疑似病斑 病原体感染時に出現する斑点に類似した葉の外見的症状が恒常的に 出現したもので、遺伝的な場合が多い。疑似病斑形質を示す植物に病 害抵抗性形質が伴っている場合がある。 機能性動物細胞株 特定の生物機能を維持したまま、培養下で無限増殖できるようになった 細胞株のこと。例えば、肝臓の代謝機能を維持した肝細胞株や免疫応 答能を保持したマクロファージ細胞株などがこれにあたる。生物機能を 細胞あるいは分子レベルで研究する上で有用な材料となる。 機能ドメイン タンパク質において、観測する機能に直接関与するアミノ酸は限られた 領域に集中していることが多い。そのような(機能的に重要な)領域を機 能ドメインと呼ぶ。 弓状核 視床下部の底部に存在する神経細胞の集団。繁殖や摂食など様々な 本能行動の調節を担っていると考えられている。 胸最長筋 筋肉の部位の一つ。食肉ではロースと呼ばれる。 組換え自殖系統 F2などの分離世代の個体別に自殖で増殖を続けて得られる系統群のこ と。 クリプトビオシス 無代謝状態の休眠のことをクリプトビオシスと呼ぶ。一旦この休眠に入 ると、水を与えるなど好適環境にしない限り非常に長期間でも眠りを続 ける。 グルテリン 種子貯蔵蛋白質の1種で、塩溶液や70%アルコール溶液に溶けず、酸や アルカリ溶液によってのみ可溶になる貯蔵タンパク質成分。イネ種子で はグルテリンが種子蛋白質の7割程度占め、主要な貯蔵タンパク質に なっている。イネのブルテリンは分子量35kDの酸性サブユニットと22kD の塩基性サブユニットからできている。 系統樹 着目する要素の関係を樹状に表現したもの。生物種間の進化的関係を 視覚化する場合などに使う。 ゲノムシャッフリング 品種改良は、ゲノム上の無数の遺伝子の交換による新規な遺伝子組み 合わせの作出と、その中にある有望な組み合わせの選抜の繰り返しで ある。しかしイネのような自殖性作物では異質な遺伝子同士が混ざりあ うことで引き起こされる弊害(劣悪形質の連鎖など)が問題となり、特に 関与するQTL遺伝子の数が多いほど、作物特性の維持と有用形質の付 与を両立することが困難になる。ゲノムシャッフリングとは、DNAマー カー情報や染色体断片置換系統群を活用して、このような弊害を抑えた 上で遺伝子の交換を効率的に起こすための新しい育種法の概念であ る。 クワに存在するフラボノイドで、摂食にともなってカイコ体内に取り込まれ る。 ケルセチン 原始卵胞 生まれた時から雌動物の卵巣に含まれる休眠中の卵子を含んだ胞状 の細胞の集まり。 付録-3 用語 解説 減数分裂 精子や卵子が形成されるとき、染色体数が分裂前の半分(n)になる細胞 分裂。これによって、精子と卵子が受精した時に、元の染色体数(2n)に 戻ることができる。 コアコレクション 数多くの遺伝資源の中から、全体の遺伝的な変異をカバーできるように 選んだ、少数の品種から構成される代表品種セットのこと。農業生物資 源研究所で選定したイネのコアコレクションは研究用に配布されており、 さまざまな形質についてイネの変異を調べるために利用されている。 抗CVH抗体 生殖細胞に特異的に発現する蛋白質に対する抗体。これに染まれば生 殖細胞であると同定できる。 高次組織構造 生体内の組織は、複数の細胞タイプが組み合わさった3次元構造を持 ち、それぞれの細胞間の相互作用により、固有の機能が維持されてい る。培養条件下でも、複数の細胞を組み合わせて、3次元的に培養する ことで、より生体内に近い「高次組織構造」を再現することができる。 広食性セリシンホープ 実用カイコ品種「セリシンホープ」をもとに、桑粉末を含まない人工飼料 によっても飼育・繭生産できるよう開発を目指している品種。 コラーゲンビトリゲル薄膜 コラーゲンのゲルを乾燥させて薄い膜状とした後、再び水に戻して作製 した透明で強い膜。膜上で細胞を培養することができるほか、再生医療 への応用も期待されている。 コルチゾル ストレスによって副腎皮質から分泌されるホルモンの一種。ストレスに対 抗するために心機能の上昇や血糖上昇を起こすが、過度の亢進によっ て免疫抑制などの障害の誘因となる。 細胞応答能 細胞の外からの刺激に対して、細胞表面にある受容体を介して細胞内 部へその情報が伝えられ、特定の遺伝子が発現するなどの応答が見ら れること。マクロファージが細菌の膜成分を特定の受容体で感知し、生 体防御物質を合成して、放出するなどの能力をさす。 細胞内ドメイン 細胞膜にある受容体分子の立体構造のうち、細胞内に伸びた部分。受 容体が受け取ったシグナルを細胞内へ伝達するために重要な役割を 担っている。 サイレントミューテーション DNAの塩基配列には変異が起こっているにもかかわらず、性質が全く変 化しない突然変異を指し、この塩基配列の解析によってイネなどの農作 物の産地識別に利用する試みがある。 サリチル酸 植物の病害応答の細胞内情報伝達を担う物質の1種。 ジーンターゲッティング 染色体のDNA鎖上に切断が生じ、切断されたDNA鎖と細胞外から導入 されたDNA鎖との間で相同性を利用した組換えを起こすことをジーン ターゲッティングと呼ぶ。またこのことを積極的に利用することにより、特 定の遺伝子の改良が可能になる。 シグナル伝達 細菌などが昆虫に感染した際、その情報に基づき抗菌性ペプチド遺伝 子などが活性化される。その情報の伝わり方をシグナル伝達という。 始原生殖細胞 将来、卵子や精子などの生殖細胞へと分化することが決められている 細胞で、発生初期の胚に限り存在する。 視床下部 摂食行動、繁殖活動、成長、ストレス反応など、動物の根源的な本能行 動を統御する脳の部位。家畜の場合、これらの本能行動は直接生産性 に結びつくため、その調節機構の解明が望まれる。 【さ行】 付録-4 用語 解説 シトクロームP450 分子内に鉄分子を含み、基質に酸素原子を付加して酸化する酵素の一 群で、多くの種類があり、解毒や薬物の代謝など様々な機能を持つ。ホ ルモン合成や代謝に関与するものもある。 ジャスモン酸 植物ホルモンの一種。傷害などのストレスに対応して合成される。 イネ では、ジャスモン酸の生合成がフィトクロムによる制御も受けている。 受胎産物 将来、胎子になる組織と胎盤や胎膜など胎児以外の組織の総称。 出穂期 主にイネ・ムギ類の穂が茎から抽出する時期を示し、品種の地域適応 性や生産性、品質を左右する重要な農業形質。イネの出穂期は、感光 性(日の長さに対す る感受性の違い)、基本栄養成長性(定常条件で成 熟するまでの期間の違い)、感温性(温度による生育速度の違い)によっ て左右され、日本の自然日長下で はこの順に影響力が大きい。短日植 物であるイネの感光性遺伝子はいくつか単離されており、長日植物シロ イヌナズナの開花制御遺伝子との共通性が見出されている。 受容体ホモログ 受容体とは細胞膜や細胞質、核に存在し、特定の刺激を受けたり物質 が結合することにより情報を伝える役割をするタンパク質。異種の生物 種間で同じ働きをするよく似た遺伝子、ホモログがあることが知られてい る。 白葉枯病菌のエフェクター 白葉枯病菌が感染時に生産し、タイプIII分泌装置を介して宿主植物細 胞に送り込むタンパク質の総称で、その多くは宿主の抵抗性反応の抑 制に関わると考えられている。 ジンクファインガーヌクレアーゼ ジンクファインガーヌクレアーゼは18-24塩基の塩基配列を認識し切 断する制限酵素である。認識はジンクフィンガーと呼ばれるDNA結合モ ティーフをタンデムに結合させることにより行い、またヌクレアーゼモチー フにより切断する。 スキーマ データベースの構造をさす。リレーショナルデータベースでは、テーブル を設計する際の各項目のデータ型やデータの大きさ、主キーの選択、他 のテーブルとの関連付けなどの仕様や、ネットワーク型データベースの レコードの設計もスキーマという。 スクレイピー プリオンと呼ばれる異常蛋白質によって引き起こされる羊の神経変性 症。羊では古くから知られていた病気であるが、病気の羊に由来する肉 骨粉を子牛に与えたことによって、 牛海綿状脳症(BSE)が引き起こされ たと考えられている。 ストレス応答 生物は外部環境の様々な変化(ストレス)に対応して生きており、分子レ ベルでのこのような反応をストレス応答と呼ぶ。 ストレス内分泌反応 集団からの隔離などのストレスにより、生体に引き起こされる一連の内 分泌応答。本来、生体の適応反応であるが、ストレス状態が続くと内分 泌応答が過度に亢進し、摂食抑制や免疫抑制などの障害の誘因とな る。 スプライスバリアント 一つの遺伝子から作り出された、構造の異なる複数のタンパク質。 精原細胞 精子の元になる細胞。 生殖隆起 将来、卵巣や精巣へと発生していく胚の特定部分。始原生殖細胞はこ の部分に移動して、生殖細胞へと分化する。 成長ホルモン 下垂体前葉ホルモンの一種。その名が示すように成長を促進させる作 用の他、乳量を増加させる作用もあることから、視床下部を中心とした 分泌調節機構の解明は畜産分野でも重要な課題と考えられている。 付録-5 用語 解説 セリシン蚕 カイコが生産するフィブロイン、セリシンという2種のタンパク質のうち、 フィブロインが合成・分泌されなくなり、セリシンのみによる繭(セリシン 繭)を作り出す自然突然変異系統。これをもとに実用カイコ品種「セリシ ンホープ」が育成され、これを含め広く「セリシン蚕」と呼んでいる。 線維芽細胞 主に胎児の組織に由来する代表的な培養細胞の一種。増殖性が高く、 遺伝子導入などの操作が容易に行える。 染色体断片置換系統群(CSSL) あるイネ品種(例えばコシヒカリ)の染色体の一部分(染色体断片)を注 目する別の品種(例えばNona Bokra)に置き換えた系統のシリーズ。互 いに異なる部分が注目する品種(Nona Bokra)の染色体に置換されてお り、系統間の特性の違いは置換された染色体断片の違いを反映してい る。背景が均質であることから、約50系統程度の少数の系統で、有用特 性に関わる染色体領域を高い感度で検出できる。 染色体置換系統 カイコの28本染色体のうち一種類のみが別の系統のものに置き換 わった系統で、特性の異なる2種類の系統を繰り返し戻し交配すること によって作成する。 染色体部分置換系統 ある品種が持つ染色体の特定の領域をほかの品種のもので置き換えた 系統。 センターバンクとサブバンク 農業生物資源ジーンバンク事業では農業生物資源研究所をセンターバ ンク,他の農業研究等独立行政法人をサブバンクとして,専門家の連携 協力により全国規模で遺伝資源の管理を行っている. 代謝マップ 代謝にかかわる一連の生化学反応をまとめた図。基質、酵素、反応名と その方向から構成される。 大ヨークシャー 一般的な豚肉生産に用いられる西洋品種の一つ。成長、増体にすぐれ る。 脱粒性 イネ等の穀物のタネの穂からの落ちやすさ。野生イネは子孫を広い範 囲に分布させるために脱粒性が強いが、近代品種の育種にあたって脱 粒性の弱い品種が選抜されてきた。 多分化能 一つの細胞が体を構成する様々な細胞に分化できる能力。 単為発生 受精によらず、化学物質に暴露したり電気刺激を与えて卵子を発生させ ること。 タンデム タンデムリピート(tandemly repeated sequence)、すなわち、同じまたはよ く似た配列が、他の配列を挟んで2回以上繰り返されるものをいう。 超低温保存 液体窒素などを用いて得られる超低温条件を利用した生体保存. 低蛋白質米 人間が消化しやすい蛋白質であるグルテリンやグロブリンの含量が低 下した米。人間にとっての低蛋白質米と言えるが、同時に、消化しにくい プロラミンの含量が相補的に増加するため、実際には総蛋白質含量に は大きな差がない。 テキストマイニング 文献(文字)情報をコンピューターで解析し、人間に有用と思われる情報 を自動的に抽出する技術。 テストステロン 男性ホルモン(雄性ホルモン)の一種。生殖器の発達、精子形成、筋肉 増大などの作用をもつ。 【た行】 付録-6 用語 解説 テロメア 酵母から高等動植物まで真核生物の線状染色体末端に存在する。特徴 的な繰り返し配列を持つ。染色体の安定化、相同染色体の対合に関与 するとされる。 転写開始点 遺伝子の領域は多くの場合、機能するに当たっていったんRNAに読み 取られる。これを転写と呼ぶ。転写はDNAの中でも決まった位置から開 始されるように制御されており、この位置が転写開始点である。 糖輸送体 糖を輸送するタンパク質の総称。グルコースなどの単糖類、ショ糖など のオリゴ糖類などの輸送に関与するものが知られている。 ドーパミン受容体 神経伝達物質の一種ドーパミンが結合することにより情報を伝達するタ ンパク質。 特性情報 各遺伝資源がもつ形態、生理生態、品質的特徴、ストレス耐性などの特 性情報を指す。 トランスクリプトーム 特定の性質を持つ一様な細胞の中に存在する全ての種類のmRNAの総 体。 トランススプライシング 同一RNA分子上のスプライシング供与部位と受容部位を連結する通常 のスプライシングに対して、異なるRNA分子上のスプライシング部位が 連結される場合をトランススプライシングと呼ぶ。 トランスポゾン(イネゲノム) 染色体DNAの中で自律的に増殖する因子。ほとんどの場合、生物の機 能と関係がなく、生存にとって有利でも不利でもないと考えられる。 トランスポゾン(昆虫) DNA上のある部位から他の部位に転移するDNAの単位で、転移因子と も呼ばれる。その一種であるPiggybacは形質転換ベクターとして昆虫で 広く用いられている。 トレハローストランスポーター トレハロースが細胞膜を透過する役割を担っているのがトレハローストラ ンスポーターで、ネムリユスリカのトレハロース取り込み形態は、エネル ギーを必要としない「受動輸送」である。 匂い連合学習 特定の匂いと本来その匂いと全く関係ない事柄を結び付けさせる学習 (例えば、バラの花の匂いとスイッチ押し)。トリ、ラット・マウス等では匂 い連合学習が成立することがわかっているが、家畜ではまだほとんどわ かっていない。 ノックアウト個体 遺伝子の機能や発現を破壊された突然変異体。 ノックアウトベクター 遺伝子配列に手を加えて機能を無くした遺伝子を組み込んだベクター (遺伝子の運び手)。これを細胞へ導入すると、極めて低い頻度ではあ るが、染色体上の標的遺伝子と置き換わり、その遺伝子機能が破壊(= ノックアウト)される。 ノックアウトマウス 染色体上にある遺伝子の特定の部位に余分な塩基を挿入するなどし て、目的の遺伝子が働かないように操作したマウス。 ノボキニン オボキニンペプチドのアミノ酸を置換した誘導体の中から約100倍ほど 活性を高めた血圧調整機能を有するペプチド。 バージンセリシン 「セリシンホープ」が生産する繭から得るセリシンのことで、未変性の高 分子セリシンを分解させることなく、効率的に抽出・精製できる。 配偶子 接合して新しい個体を作る細胞のことで、哺乳動物では、精子と卵子を 総称していう。 【な行】 【は行】 付録-7 用語 解説 培養基材・担体 一般的な細胞培養にはプラスチックのディッシュが用いられることが多 い。目的の細胞を高い密度で培養したい、あるいはより高度な細胞機能 を再現したい場合に、様々な材質でできた微小ビーズ、あるいはスポン ジ状や膜状などに加工した特殊素材を用いることがある。これらの培養 に用いる素材の総称。 発現パターン 染色体DNAにおいて、遺伝子の領域がRNAに転写され、機能することを 発現と呼ぶ。発現は遺伝子間で一様ではなく、機能する時間や組織に よって異なるので、遺伝子や条件によって異なる発現のパターンを示 す。 ハプロタイプ ほ乳類のような二倍体生物では、一方の染色体上の各遺伝子座位にあ る対立遺伝子(アリル)の並び、つまり片親由来の遺伝子の並びをハプ ロタイプという。また、ここに示すように、ひとつの染色体上で遺伝的に 連鎖している多型(SNPなど)の組合せについてもハプロタイプという用 語が用いられる。 ハプロタイプブロック 染色体上には遺伝子座間にあまり組換えがなく連鎖の程度が強い領域 が存在する。この領域をハプロタイプブロックと呼び、そこではいくつか の共通するハプロタイプのみが観察される。 葉巻抵抗性 育種の現場において耐乾性の一つの指標として使われる形質。乾燥ス トレス下において乾燥に強い品種は葉が巻きにくい現象を利用して、葉 の巻程度をスコア値として表す。 ヒストンH3 領域 ヒストンはDNAに結合するタンパク質で、ヒストンH3 領域とは特定のヒス トンの構造遺伝子領域である。その配列は微生物の分類・同定のメルク マールとして利用される。 ヒトセレノプロテイン 血清中に含まれるセレンを含む蛋白質。抗酸化や解毒など幅広い生理 活性作用を持つ。 ピラミディング DNAマーカー選抜を用いた交配によるQTL遺伝子の導入作業の中で も、ひとつの遺伝子の導入に留まることなく、それらを掛け合わせて更な る集積を図る作業のことをいう。複数のQTL遺伝子間の相互作用を解析 するための基本的な実験手法であると同時に、品種育成の場面では複 数の有用QTL遺伝子を集積することで、より高度な機能を付与させる試 みが進んでいる。 ファイトアレキシン 植物が生産する抗菌性物質の総称。 フィブロインH鎖 鱗翅目昆虫で合成されるシルクとなるフィブロインは分子量の異なる3種 類のタンパク質からできている。このうち、最も大きな分子量を持ち、シ ルクの繊維としての性質に関与しているフィブロインがH鎖で、カイコで は分子量約35万からなっている。 フィブロネクチン 細胞膜や血漿中に存在している糖タンパク質で、細胞外マトリックスへ の細胞の接着、細胞ー細胞間の接着などに関わっている。 フェロモン 動物体内で産生され、同種動物間での情報伝達に用いられる化学物 質。異性の誘引、我が子の認識、繁殖活動の亢進などのフェロモン作用 が知られているが、家畜では、物質として同定されているフェロモンはま だ極僅かである。 フザリウム属 さまざまな作物に萎凋病、つる割病、立枯病、乾腐病などを引き起こす 糸状菌(カビの仲間)の分類群(属)。 プライミング効果 呼び水のような効果。この場合、薬剤処理や遺伝子導入などの予防的 処理により、病原体感染時における植物の防御応答能が高まる効果。 付録-8 用語 解説 プリオン 伝達性海綿状脳症を引き起こす病原体に対して、米国のプルシナー教 授により提唱された名称。「タンパク質でできた感染性因子」の意味が込 められている。 プロラミン 有機溶媒によってのみ可溶となる種子貯蔵タンパク質の成分。プロリン やグルタミンといったアミノ酸に富んでおり、イネ種子では20%程度占め ている。10~16kDの分子量を持つ。 分子進化 生物は多様な分子で構成されているので、このような分子レベル(特に DNAやアミノ酸)の進化に着目する場合に分子進化と呼ぶ。 ベースコレクション 配布可能か可能でないかにかかわらず,保存されている遺伝資源をい う。 ペプチド アミノ酸数個〜数十個からなる分子。生体内には多数のペプチドが存在 し、繁殖機能やストレス反応の調節など、多岐にわたる生理機能に関与 している。 ヘム 赤血球中の酸素を運ぶヘモグロビンや肉色に関わるミオグロビンを構成 する色素。 ホーネットシルク スズメバチの幼虫が巣内で作る繭のことをいう。カイコのシルクとはアミ ノ酸組成や物理的特性も異なっている。 ポジショナルクローニング 分子マーカーを用いた連鎖地図をベースに、目的形質のゲノム領域を 絞り込んでいく手法。原因遺伝子の機能などが推定できない場合でも、 絞り込まれたゲノム領域を解析することで候補遺伝子を得ることができ る。 穂発芽とは収穫前の穂に実った種子が高温多湿な条件により発芽して しまう現象を指し、発芽によるでんぷんの分解など著しく種子の品質を 低下させるものである。種子ではある程度胚が発達した段階で休止し、 適切な環境が整うまで眠る。この現象は種子休眠と呼ばれ、穂発芽に 対する抵抗性は種子の休眠、特に一次休眠とよばれる未熟種子の休眠 の深さと密接な関係がある。イネにおいては台風などで倒伏した際に起 こるほか、コムギでは低温の雨で穂発芽が引き起こされることから、穂 発芽耐性は農業上重要な形質となっている。 穂発芽耐性 【ま行】 マーカーフリー 組換え体と非組換え体を選別するために抗生物質耐性や除草剤耐性 の選抜マーカー遺伝子と目的遺伝子を一緒に導入するが、選抜マー カー遺伝子除去システムを用いて目的遺伝子のみ導入させた組換え体 のことをマーカーフリーの組換え体と称している。 マイクロサテライトDNA ゲノム上に存在するDNA反復配列で、数塩基程の小さな単位配列の繰 り返しからなる。PCRで増幅することで、遺伝子多型を調べることにも用 いられる。 マッピング QTLや遺伝子を染色体またはゲノム配列上に位置づけること。あらかじ め位置のわかっているDNAマーカーを用いて、QTLや遺伝子がどのマー カーの近傍にある(連鎖している)のかを明らかにする。より多くの系統 やDNAマーカーを使用することにより、マッピング精度を高めることがで きる。 ミクログリア 脳の中で免疫応答に関わる細胞。末梢組織のマクロファージ(体内に 入ってきた異物を取り込み、消化するとともに、その情報をリンパ球に伝 えて抗体を作らせるなど、より高度な免疫応答を制御する)によく似た性 質と機能を持つ。 ミスマッチ修復 ミスマッチ修復機構は、DNA複製で生じた誤った塩基対合(ミスマッチ)を 見つけ出し、新生鎖側の誤って取り込まれた塩基を除去する修復機構 である。 付録-9 用語 解説 無ワックス 通常、茎の表面に生成する白いワックスが形成されない突然変異で、家 畜の胃内でのソルガム茎葉の消化性が高まるという報告がある。 梅山豚(メイシャントン) 中国の代表的な豚品種の一つ。西洋品種に比べて脂肪が多く、また多 産性という特徴がある。 メタスチン 生体内ペプチド。当初、癌の転移抑制作用があることからこのように命 名されたが、近年、視床下部のメタスチン細胞が繁殖機能の調節に重 要な役割を果たしていることが明らかにされ、世界的な注目を集めつつ ある。 メチルエピガロカテキン 緑茶に含まれるカテキンの一種で、機能性が高いエピガロカテキンガレ -ト(EGCG)の一部がメチル化されているもの。EGCGよりも、抗アレル ギ-性などの機能性が高いが、「べにふうき」のような紅茶系品種など 特定の品種以外は含有量が著しく低い。 メラトニン 環境の明暗周期に応答して脳内の松果体で産生されるホルモン。光情 報を体内に伝達することで、覚醒・睡眠リズムや季節による繁殖機能を 調節する。近年、成長ホルモン分泌調節への関与も明らかとされつつあ る。 戻し交雑自殖系統群(BILs) 品種間交雑の後、戻し交雑を行い、繰り返して交配した一方の親に由来 するゲノムの割合を上げた後に、自殖を繰り返して作成する。一方の親 のゲノムの割合を上げることで、解析の際にノイズとなる遺伝背景の影 響を減らすことができるので、(戻し交雑を行わず自殖を繰り返した集団 に比べて、)作用力の小さい遺伝子を高い感度で検出することができ る。 単一の抗体産生細胞から得られる抗体のこと。複数の抗体産生細胞に 由来する通常のポリクローナル抗体と比べ、モノクローナル抗体は認識 する抗原が全く同一の抗体のみで構成されるので、特異性が高い。 モノクローナル抗体 【や行】 幼若ホルモン(JH) 昆虫特有のホルモンで、脳の後ろにある小器官アラタ体から分泌され る。変態の抑制をはじめとして性成熟の促進、相変異の誘導など様々な 作用を持つ。 来歴情報 パスポート情報とも呼ぶ。個々の遺伝資源の名称、収集地点あるいは 育成場所、育成の来歴など、各遺伝資源の基本的な情報を指す。 卵母細胞 卵子の元になる細胞が増殖して、減数分裂前に肥大化したもの。 リガンド 受容体などに特異的に結合する物質。 リン酸化カスケード 細胞内情報伝達において、タンパク質キナーゼ(リン酸化酵素)が別の タンパク質キナーゼをリレー式に順次リン酸化することにより情報を受け 渡す仕組み。 レシピエント胚 細胞や組織の移植を受ける側の胚のこと。 【ら行】 付録-10 用語 解説 連鎖地図 二つの遺伝子座(染色体上の遺伝子のある位置)が別の染色体上に存 在する場合、それらにある対立遺伝子(アリル)はメンデルの独立の法 則に従って遺伝するが、同じ染色体上に存在する場合は一緒に遺伝し やすい。このときそれらは連鎖しているという。遺伝子座間が離れている ほど減数分裂(生殖細胞を作るときに起こる細胞分裂。一方の親から子 に遺伝情報を伝える分として、染色体は半分に分配される)の時に起こ る組換えによって連鎖の程度は保たれにくくなり、逆に近接しているほど 組換えは起こりにくい。連鎖の程度を組換えの頻度をもとに、相対的な 距離で直線上に表したものを連鎖地図という。 連鎖不平衡 複数の品種や系統を調べたときに、ある遺伝子と別の遺伝子の特定の 組み合わせが頻度高く検出される場合に、「連鎖不平衡状態にある」と いう。高い連鎖不平衡が注目する遺伝子間に見られる場合、それらの 遺伝子同士の距離が近いと考えられる。 ABCトランスポーター ABCとは、ATP結合領域(ATP-binding Cassette)の略であり、トランス ポーターとは輸送体のことで、ATP結合領域をもつ輸送体タンパク質の 総称。ATPは、生体内のエネルギーの貯蔵・供給・運搬を仲介している 物質で、それによって駆動・制御される。薬物の輸送などに関与するも のが知られている。 ABP1 小胞体中に局在しているタンパク質で、植物の成長や生理を多面的に 制御しているオーキシン(植物ホルモン)の受容体候補の一つである。 Aゲノム野生イネ 栽培されるイネにきわめて近縁な、一群の野生イネの分類群で、比較的 容易に栽培イネと雑種をつくる。 BAC Bacterial Artificial Chromosomeの略。バクテリアの染色体を人工的に加 工したもので、他生物種の大きなDNA断片を保持し増殖する(クローン 化する)ために利用される。 BACベクター 細菌に由来するDNAを用いて人工的に合成した染色体。ベクター内に 様々な遺伝子を挿入することができ、それらを大腸菌で大量に複製し、 動物細胞へ導入する際に用いる。 BACミニマムタイリングパス 最小数で染色体を網羅するよう、ゲノムDNA断片を組み込んだBACク ローンを並べたもの。アセンブルデータの検証に必須となる。 BLAST DNAやアミノ酸の配列を高速に検索し、類似性を発見するプログラムを いう。 BmNPV カイコ核多角体病ウイルス。カイコにのみ感染するウイルスの一種で、 組換えウイルスをカイコに感染させ、有用物質生産に利用する系が確立 されている。 BMP4 骨形成を促す増殖因子の一つで、発生では形態形成や様々な細胞の 分化に関わる。 BT菌 昆虫病原細菌であるバチルス菌(Bacillus thuringiensis)のこと。頭文字 をとってBT菌と呼ぶ。昆虫に感染し、死に至らせることから、生物農薬と して使用されている。また、この菌が産生する毒素の遺伝子(Cry遺伝 子)を導入したトウモロコシは遺伝子組換え作物として有名である。近 年、この毒素に対して抵抗性を示す害虫の対策が問題となっている。 β-シート構造 タンパク質やポリペプチド鎖がとる二次構造の一つで、分子鎖間が水素 結合により結合し、シート状の伸びた構造。この構造が分子鎖間の結合 点となり、繊維性タンパク質では、得られた繊維の強度に寄与している。 【A】 【B】 付録-11 用語 解説 【C】 CBP1 オーキシン様活性をもつABP1のC末端ペプチドを利用した親和架橋法 により同定された原形質膜に局在するタンパク質。ABP1と相互作用す ることで、原形質膜におけるオーキシンシグナル伝達を調節しているも のと考えられる。 cDNA 多くの場合、DNAは生体内で直接機能せず、いったんRNAに写し取られ る(転写)。RNAは分解しやすく実験場の扱いが難しいので、人工的に DNAに写し取って利用される。これを相補的DNA(complementary DNA、 cDNA)と呼ぶ。 coild-coil構造 タンパク質の超二次構造の一つで、ポリペプチド鎖がヘリックス構造を 形成し、それら同士がらせん状に絡み合った構造。この構造の形成によ り、物理的な架橋点となり、分子あるいは分子集合体の安定性に寄与す る。 呼吸鎖の脂溶性成分として広く生物界に存在するユビキノンの一つ。細 胞を活性化させ、エネルギー生産に不可欠な成分。エネルギー活性化 作用、抗酸化作用を有する。イネ種子にはCoQ10はわずかで、大部分 がCoQ9として蓄積されている。 CoQ10 Cry j 1 スギ花粉症を引き起こす主要抗原の一つ。スギ花粉の細胞壁に局在し ておりペクテートリアーゼ活性を有している。 CSP 根粒菌と菌根菌の共生に必要とされる共通シグナル伝達経路Common Signaling Pathwayの略。菌からのシグナルは受容体に認識された後、イ オンチャネルCASTOR/POLLUXを通じて細胞内の周期的カルシウム濃 度変動であるカルシウムスパイキングを発生させる。カルシウムスパイ キングはカルシウム・カルモジュリン依存型キナーゼCCaMKによってリン 酸化シグナルに変換され、最終的には核タンパクCYCLOPSを介して共 生に必要な遺伝子の発現を誘導すると考えられている。 CYP1Aサブファミリー酵素 シトクロムP450(CYP)は薬物代謝やコレステロール合成を含む多くの機 能を持ち、その機能に対応した多くの種類が存在する。CYPは構成する アミノ酸配列の似通いの程度によってファミリー(CYP1)、さらにその中 のサブファミリー(CYP1A)に分類されている。 FACS 蛍光抗体で染色した細胞を液流に乗せて流し、レーザー光をあてて 個々の細胞が発する蛍光を測定する機器。 Fix- 根粒菌が根粒内で共生しているにもかかわらず、窒素固定を行わない 植物の変異系統。植物側のなんらかの因子の欠損により、根粒菌の機 能に阻害効果を与えている、あるいは細胞内根粒菌の植物による認識 に影響を与えていると考えられる。 FKBP6遺伝子欠損ラット Fk506という免疫抑制剤に結合するタンパク質の遺伝子が働かないラッ トでは、精子が形成されないという異常が見られる。 G418 抗生物質の一種。G418耐性遺伝子が導入された細胞はこの薬剤を含 む培地でも増殖するため、遺伝子導入細胞だけを効率よく選択できる。 GLP Good Laboratory Practice (優良試験所基準)の略。新規化学物質に 対する各種安全性試験を行うにあたり成績の信頼性を確保するため、 試験を行う試験所の基準および新規化学物質の審査等に際して、判定 の資料とする試験成績の取扱いについて定めた制度。 Hspa遺伝子 精子の元になる細胞が減数分裂するときに特異的に発現する遺伝子。 【F】 【G】 【H】 付録-12 用語 解説 【I】 INRA フランス国立農学研究所(L'Institut National de la Recherche Agronomique)。 intrabody 細胞内で発現させるよう改変した抗体分子。標的分子に結合してその機 能を阻害する。基礎的研究に使われるほか、癌の治療など臨床応用に 向けた研究も進んでいる。 IR64とKinandang Patong IR64は、国際稲研究所が育成した高収量の半矮性品種。浅根性で耐乾 性は小さい。Kinandang Patongは、フィリピン原産の陸稲。深根性で耐乾 性が大きい。 IWGSC 国際コムギゲノム配列決定共同体(International Wheat Genome Sequencing Consortium)。コムギのゲノムの全塩基配列決定を推進す るための国際共同計画。イネのIRGSPにあたる。 KEGG Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes。京都大学で運営されてい るゲノム情報の総合的なデータベースであり、その中でも代謝に関する 情報が充実していることで知られる。 MEK-MAPK経路 MEK、MAPKはタンパク質リン酸化酵素で、MEK-MAPK経路においてそ れぞれ下流のタンパク質をリン酸化して細胞分裂の停止情報を伝達す る。 Mgキラターゼ クロロフィル生合成経路の鍵酵素。プロトポルフィリンIXのポケットにMg イオンを配位(キレート)させる。 MPSS Massively Pararell Signature Sequencingの略。転写された産物の一部 分を大量に決定する技術。 Multiplex化 複数のDNAマーカーに対するプライマーセットを用いて、ひとつのチュー ブ内で同時にPCRで増幅して、同じ電気泳動のレーンで複数のマーカー 遺伝子型を解析できるようにすること。 NIL 準同質遺伝子系統(Near Isogenic Line)の略。QTL遺伝子周辺以外の 染色体領域が全て同一なイネ系統のこと。解析対象となるQTL遺伝子を 持つイネ品種に、導入したいイネ品種(反復親)を数回連続して交配し、 DNAマーカー選抜を併用することで作成する。NILとその反復親を栽培 して、QTL遺伝子に関連する表現型や遺伝子発現の違いを比較解析す ることで、QTL遺伝子の機能に関する詳細な情報が得られる。また、反 復親が栽培品種で、QTL遺伝子が病虫害抵抗性のような有用遺伝子の 場合、作出されたNILはそのまま品種(従属品種)として利用されること もある。 ORF Open Reading Frameの略。DNAの中で、タンパク質の配列をコードして いる可能性のある領域。 OsMOM1b シロイヌナズナの遺伝子MOM1の変異体では、転写レベルで不活性化し ている外来導入遺伝子の発現が復活する。イネには、MOM1に相当する 遺伝子が2つあり、その一つがOsMOM1bである。 OsSIRT4 SIR2は、遺伝子発現の抑制に働く遺伝子として、パン酵母で発見され た。この相同遺伝子はイネに2つあり、OsSIRT4は、その一つである。 【K】 【M】 2+ 【N】 【O】 付録-13 用語 解説 【P】 P2X7受容体 細胞膜にあるATP受容体のひとつ。主に免疫系細胞で発現し、炎症反 応や細胞死に重要な役割を担っている。 PCR解析 特定の配列を持ったプライマー(核酸の重合反応を開始するために最初 に必要とされる短いDNA断片)とDNA合成酵素を利用して、目的とする 遺伝子配列のみを増幅して、それらを検出する方法。目的遺伝子が染 色体に導入されているか、あるいは発現しているかどうかなどを極めて 効率よく解析できる技術。 PHDフィンガー Plant Homeobox Domainの略で、ヌクレオソームリモデリング因子NURF や癌抑制タンパク質ING2など幾つかのタンパク質では、クロマチン上の メチル化ヒストンの「目印」を読み取るエフェクターとして機能することが 報告されている。 phred score ある塩基の解読が誤りである確率をPeとすると、Q=-10log10(Pe)を phred scoreという。Peが0.001ではphred scoreが30である。 phyB、phyC フィトクロムは、主に赤色光と遠赤色光を感知する植物の光受容体で、 イネには3種類(phyA, phyB, phyC)ある。通常、赤色光を受容すると活 性型になる。 Ppet21遺伝子 PECAM1とうい遺伝子発現量に差があるES細胞を比較して見出された ES細胞の分化に関わる遺伝子の一つ。 PrPSc 正常プリオン蛋白質の構造が変化して、蛋白質分解酵素による分解を 受けにくくなったもの。プリオン病の病原体と考えられている。 QTL Quantitative trait locusの略。量的形質遺伝子座という。品種や系統間 の形質の違いは、比較的小さな作用をもった複数の遺伝子によって決 定されている。この一連の遺伝子座を指す。従来は、品種間のQTLの遺 伝子作用が小さいために遺伝学的解析が困難であったが、近年のゲノ ム解析の進展により、DNAマーカーが充実し、ゲノム中に存在するQTL の位置決定や単離が可能になっている。 RAP イネアノテーション計画(Rice Annotation Project)。イネゲノム全塩基配 列の完成を受けて、国際計画として生物研を中心に組織された。 RAP-DB イネアノテーション計画(Rice Annotation Project)によって作成された データベース。 RNA-induced silencing complex small interfering RNAを含む核タンパク質複合体で、配列特異的な遺伝 子発現抑制に関わる。この複合体は、ウイルスRNAなどの外来性RNA に対しても誘起され、宿主が示す抵抗性反応の一端を担っている。 SAPドメイン Siz/PIAS型SUMOリガーゼE3に保存される構造機能ドメインの一つで、 DNA結合や基質結合に関与すると考えられている。 Siz1 SUMO化翻訳後修飾は、3種類の酵素(SUMO活性化酵素E1、SUMO結 合酵素E2、SUMOリガーゼE3)による3段階の反応を経て、標的タンパク 質のリシン残基とイソペプチド結合を生ずる。E3は標的タンパク質の識 別、すなわち特異性を発揮する過程において中心的役割を果たす。Siz1 はSiz/PIASファミリーに属するSUMOリガーゼの1つで、ファミリーに特有 の構造機能ドメインSP-RINGをもつ。SP-RINGはSUMO結合酵素E2の認 識ドメインと想定されている。 【Q】 【R】 【S】 付録-14 用語 解説 SLA ほとんどのせきつい動物は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と呼ば れる大きな遺伝子領域を持ち、ブタのMHCをSLA(swine leucocyte antigen; ブタ白血球抗原)と呼ぶ。MHCは異物の排除や臓器移植の拒 絶反応など免疫反応に必要な情報を含んでおり、遺伝子の構成や配置 がきわめて多様である。 small interfering RNA 21-24ヌクレオチドの低分子量RNAで、2本鎖RNA切断酵素の働きで生 成する。 RNA-induced silencing complexにとりこまれ、相補的配列をも つメッセンジャーRNAを分解に導いたり、それがタンパク質に翻訳される 反応を阻害する。また、染色体DNAのメチル化を介した転写抑制にも関 与する。siRNAと略される。 SNP Single nucleotide Polymorphismの略称で、日本語では一塩基多型とも いう。複数の品種や系統の同じ領域のDNAを調べたときに、塩基配列が ほとんど同じで一塩基だけ異なる場合、その異なる箇所をSNPと呼ぶ。 DNA変異の中では最も頻度が高く、近年、多数のSNPを迅速かつ正確 に決定する手法が開発されたため、DNAマーカーとしての利用も進んで いる。 SUMO Small Ubiquitin-like Modifierの略。ユビキチンに類似したタンパク質の一 つで、細胞内の他のタンパク質に一時的に共有結合してその機能を調 節する(SUMO化翻訳後修飾)。SUMO化は、タンパク質の細胞核-細胞 質輸送、クロマチンなどの核内構造、転写制御、アポトーシス、DNA修 復、ストレス応答、細胞周期の進行、タンパク質の安定化など様々な細 胞内のプロセスに関係する。 Swiss-prot 最もよく利用されているタンパク質データベースの一つ。質の高い記載 内容で知られる。 TLR Toll様受容体(トルようじゅようたい、Toll-like receptor)の略。TLRは動 物の細胞表面にある受容体タンパク質で、さまざまな病原体を感知し て、「自然免疫」と呼ばれる、一般病原体を排除する非特異的な免疫シ ステムを働かせる機能がある。TLRやTLR類似の遺伝子は、せきつい動 物だけでなく昆虫などにもあり、進化的起源は非常に古いと考えられて いる。 TriAnnot INRA(フランス国立農学研究所)によって構築されている、コムギのゲノ ムをアノテーションするためのコンピューターシステム。 vasa 生殖細胞を識別するマーカー遺伝子の一つ。 VEGF 血管の内面を裏打ちする内皮細胞の増殖を促進する因子。組織の修復 過程において血管が新しく作られる際に必要とされる。 vernalization ある種の植物の花芽形成が寒さによって誘導されるとき、植物内で起こ る変化を春化(vernalization)という。また人為的に低温にさらして開花を 早める処理をさす場合もある。 Vigna 属 アズキ,リョクトウ,ケツルアズキ,ツルアズキ(タケアズキ),ササゲなど の栽培マメ類とその近縁野生種を含むマメ科の分類群(属)。 WRKY45 WRKY型転写因子の一種。WRKY型転写因子は、遺伝子の発現(mRNA への転写)を制御するタンパク質(転写因子)の一群で、保存された4ア ミノ酸の並び(WRKY)にその名前が由来し、イネには約100種存在す る。 【T】 【V】 【W】 付録-15 平成 19 年度に係る業務実績報告書 資料 1 農業生物資源研究所がリーダーとして 推進しているプロジェクト研究概要 ≪農林水産省プロジェクト≫ 「アグリ・ゲノム(イネ) 」 (平成17-19年度) ■研究目標 1. 2. 3. 4. 5. 6. イネ・ゲノムの重要形質関連遺伝子の機能解明 イネの重要形質に関連する遺伝子やタンパク質を探索しその機能を明らかにし、重要形 質発現のメカニズムを解明する。 重要形質の発現機構に関する理解をもとに、人為的に機能を改変した遺伝子をイネ内に 形質転換することにより、より付加価値の高いイネを作出する。 遺伝地図とミュータントパネル利用型 第 1 期で得られた遺伝地図等を利用して、効率的な遺伝子単離技術を開発し、農業上重 要な形質を支配する遺伝子の単離を図る。 発現遺伝子(cDNA)の生物概能解析技術及び発現制御技術を開発するとともに、その利用 技術の開発を図る。 イネ・ゲノムリソースセンターの整備 研究材料及び情報の一括管理による利便性の向上を図り、研究機関等への円滑な供給体制 の確立を図る。 研究材料情報の整理・解析等により、高度かつ高精度の情報をもつ研究材料及び情報の管 理・提供を図る。 QTL 遺伝子解析の推進 遺伝資源のカタログ化、遺伝解析用実験系統群の作出、完全長 cDNA の拡充など、遺伝 子機能解明のための研究基盤を整備・提供する。 開発される研究基盤を活用し、病害抵抗性、環境ストレス耐性あるいは生理形態形質などの 農業上有用な遺伝子(QTL)の単離・同定を行ない、それらの遺伝的制御機構解明にならび に育種選抜の基盤づくりに資する。 多様性ゲノム解析研究 イネゲノムプロジェクトの成果を利用してムギ類の農業形質にかかわる遺伝子の新規な 機能や遺伝子間のネットワークを解明する。 イネの種分化・生殖的隔離について解明し、イネ野生種の未利用な情報を利用してイネ のジーンプールを拡大する。 ゲノム育種技術の開発と実証 ゲノム情報の活用を推進するために、QTL 遺伝子の集積や、多数の DNA マーカーの同時利 用、遺伝子組換えにより、多数の形質の発現を制御する効率的な育種法(ゲノム育種技術) を開発・実証するとともに、農業上有用な形質において先導的モデル系統を作出する。 ■研究推進体制 農林水産省 農林水産技術会議事務局 運営委員会 プロジェクトリーダー 生物研 理事 評価委員会 大学・民間等 事務局 ゲ有 ノ用 ム遺 育伝 種子 に活 よ用 るの 効た 率め 的の 品イ 種ネ 育ゲ 成ノ 技ム 術研 の究 開・ 発 QTL 生 物 研 7 独 法 7 大 学 12 民 間 2 公 立 2 理 研 1課 題 総 括 リ ー ダ ー : 生 物 研 QTLゲ ノ ム 育 種 開 発 セ ン タ ー 長 多様性ゲノム 生 物 研 7 大 学 10 民 間 1課 題 総括リーダー:生物研 植物ゲノムユニット長 ゲノム育種 生 物 研 3 独 法 17 大 学 2 民 間 3 公 立 10課 題 総括リーダー:作物研 研究管理監 重要形質 生 物 研 8 大 学 17 理 研 1課 題 総括リーダー:名古屋大学 教授 ミュータントパネル 生 物 研 4 独 法 1 大 学 6 公 立 1課 題 総括リーダー:生物研 基盤研究領域長 リソースセンター 生 物 研 4課 題 総括リーダー:生物研 ゲノムリソースセンター長 1 ≪委託プロジェクト研究≫ ゲノム育種による効率的品種育成技術の開発 「QTL 遺伝子解析の推進」 (平成17-21年度) ■研究目標 (1)遺伝資源のカタログ化、遺伝解析用実験系統群の作出、完全長 cDNA の拡充など、遺 伝子機能解明のための研究基盤を整備・提供する。 (2) 開発される研究基盤を活用し、病害抵抗性、環境ストレス耐性あるいは生理形態形質 などの農業上有用な遺伝子(QTL)の単離・同定を行ない、それらの遺伝的制御機構解 明にならびに育種選抜の基盤づくりに資する。 ■研究推進体制 農林水産技術会議事務局 主査(統括責任者) 生物研・理事長 事務局 副主査 生物研・理事 QTL遺伝子解析のための基盤整備 生物研 4 大学 1課題 チームリーダー:生物研・QTLゲノム育種センター長 生理形態形質に関与する遺伝子の解析 生物研 1 独法 2 大学 7課題 チームリーダー:生物研・QTLゲノム育種センター長 総括リーダー 生物研・QTLゲノム育種センター長 環境ストレス耐性に関与する遺伝子の解析 生物研 1 独法 2 大学 2 民間 2 公立 2課題 チームリーダー:生物研・QTLゲノム育種センター 病害虫抵抗性に関与する遺伝子の解析 生物研 3 独法 3 大学 2 公立 1課題 チームリーダー:生物研・QTLゲノム育種センター 評価委員会 大学等 3名 ■主な研究成果 1. イネの根組織形態に関与する遺伝子座の同定(農業生物資源研究所 QTL ゲノム育種 研究センター) 2. コシヒカリの良食味に関与する遺伝子の解析(作物研究所・農業生物資源研究所・食 品総合研究所) 3. QTL 遺伝子解析手法の体系化ならびに研究支援(農業生物資源研究所 QTL ゲノム育 種研究センター) ■平成 19 年度の予算総額 480 百万円 うち 生物研 480 百万円 (生物研 262; 再委託 218) 2 ≪委託プロジェクト研究≫ 有用遺伝子活用のためのイネゲノム研究 ゲノム育種による効率的品種育成技術の開発 「多様性ゲノム解析研究」 (平成17-21年度) ■研究目標 (1) イネゲノムプロジェクトの成果を利用してムギ類の農業形質にかかわる遺伝子の 新規な機能や遺伝子間のネットワークを解明する。 (2) イネの種分化・生殖的隔離について解明し、イネ野生種の未利用な情報を利用して イネのジーンプールを拡大する。 ■研究推進体制 農林水産技術会議事務局 プロジェクトリーダー 生物研 理事 事務局 遺伝子配列情報比較を利用したイネ 科作物の新規機能遺伝子の探索 生物研 2 民間 1課題 チームリーダー:生物研 光環境応答研究ユニット 総括リーダー イネ種分化・生殖的隔離機構の解明 生物研 植物ゲノムユニット長 生物研 2 大学 6課題 生物研 3 大学 4課題 チームリーダー:国立遺伝学研究所 イネ科作物の重要形質の比較遺伝学 的解明 チームリーダー:生物研 植物ゲノム研究ユニット 評価委員会 大学等 3名 ■主な研究成果 1.イネ生殖細胞の初期発生過程で働く MEL 遺伝子(small RNA による遺伝子発現制御系 で働く Argonaute ファミリータンパク)の存在を明らかにし、植物の生殖過程において RNA のサイレンシングが関与することを初めて明らかにした。また実際に MEL1 遺伝子 の機能として転位因子(トランスポゾン)の転移活性の抑制が観察された。 2.オオムギ種子の「皮性」「裸性」を支配する遺伝子 Nud 遺伝子の単離に成功した。 nud 遺伝子は単因子劣性遺伝子であり、今回イネゲノムの情報を利用してポジショナ ルクローニングに成功したものである。この遺伝子は AP2/ERF(ethylene response factor)様のタンパクをコードしており、裸麦ではこの領域を含む塩基置換・欠失があ ること、Arabidopsis の類似の遺伝子が脂質 (ワックス)合成系に関与しており、皮性 系統のみにおいて果皮表面に脂質が検出されたことから、目的遺伝子と同定した。 ■平成 19 年度の予算総額 622 百万円 うち 生物研 622 百万円 (生物研 166; 再委託 456) 3 ≪委託プロジェクト研究≫ 植物(イネ)ゲノム研究 ゲノム研究基盤の整備 「イネ・ゲノムリソースセンターの整備」 (平成15-19年度) ■研究目標 (1) 研究材料及び情報の一括管理による利便性の向上を図り、研究機関等への円滑な供給体制 の確立を図る。 (2) 研究材料情報の整理・解析等により、高度かつ高精度の情報をもつ研究材料及び情報の管 理・提供を図る。 ■研究推進体制 農林水産技術会議事務局 プロジェクトリーダー 生物研 理事 事務局 提供体制整備事業 生物研 3課題 管理・提供手法の開発 生物研 1課題 総括リーダー 生物研 ゲノムリソースセンター長 評価委員会 大学等 3名 ■主な研究成果 ・ 新規イネ完全長 cDNA4,902 クローンの DNA 調整及び配布準備を整えた。これまでの配布対象ク ローンと合わせ、計 37,029 クローンが分譲可能である。 ・ 国内外からの研究リソース(完全長 cDNA、Tos17 変異体、遺伝解析材料)分譲依頼440件全 てに対応し、3,538 クローン(または系統)を配布した。 ・ マイクロアレイ解析については、解析技術の向上(アレイ CGH)及び1色法と2色法の比較等 関連情報の充実化を図った。 ・ マイクロアレイ技術を用いた変異体の解析・評価方法を確立した。 ■平成 19 年度の予算総額 43 百万円 うち 生物研 43 百万円 (生物研 43; 再委託 0) 4 ≪委託プロジェクト研究≫ 有用遺伝子活用のためのイネゲノム研究・ ゲノム育種による効率的品種育成技術の開発 「イネ・ゲノムの重要形質関連遺伝子の機能解明」 (平成15-19年度) ■研究目標 (1) イネの重要形質に関連する遺伝子やタンパク質を探索しその機能を明らかにし、重要形質 発現のメカニズムを解明する。 (2) 重要形質の発現機構に関する理解をもとに、人為的に機能を改変した遺伝子をイネ内に形 質転換することにより、より付加価値の高いイネを作出する。 ■研究推進体制 農林水産技術会議事務局 プロジェクトリーダー 1系(高品質) 生物研 2 大学 9課題 2系(機能性) 生物研 1 大学 2課題 3系(光合成) 生物研 1 理研 1課題 4系(病虫害) 生物研 3 大学 1課題 5系(不良環境) 大学 5課題 6系(研究支援) 生物研 1課題 生物研 理事 事務局 総括リーダー 名古屋大学 教授 評価委員会 大学等 4名 ■主な研究成果 1. ジベレリン受容体のジベレリン結合と抑制因子結合に必要な残基の決定(名古屋大学・ 生物機能開発利用研究センター) 2. イネ耐病性において中心的役割を果たすデェフェンソゾームの機能解析(奈良先端大) 3. カドミウム吸収に関与する QTL の発見と解析(岡山大学・資源生物科学研究所) ■平成 19 年度の予算総額 536 百万円 うち 生物研 536 百万円 (生物研 178; 再委託 357) 5 ≪委託プロジェクト研究≫ 有用遺伝子活用のためのイネゲノム研究・ ゲノム育種による効率的品種育成技術の開発 「遺伝地図とミュータントパネル利用型」 (遺伝地図とミュータントパネルを利用した単離及び機能解明) (平成10-19年度) ■研究目標 (1)第 1 期で得られた遺伝地図等を利用して、効率的な遺伝子単離技術を開発し、農業 上重要な形質を支配する遺伝子の単離を図る。 (2)発現遺伝子(cDNA)の生物概能解析技術及び発現制御技術を開発するとともに、その 利用技術の開発を図る。 ■研究推進体制 農林水産技術会議事務局 プロジェクトリーダー 生物研 理事 事務局 総括リーダー 機能解明チーム 生物研 4 独法 1 大学 6 公立 1課題 生物研 基盤研究領域長 評価委員会 大学等 3名 ■主な研究成果 1. イネの病害応答に関与する低分子 G タンパク質 Rac 遺伝子の機能解析(三 重大学・生命科学研究支援センター) 2. イネのカルシウムシグナル伝達系制御遺伝子の単離と機能解明(東京理科 大学・応用生物学科) ■平成 19 年度の予算総額 137 百万円 うち 生物研 137 百万円 (生物研 33; 再委託 104 ) 6 ≪委託プロジェクト研究≫ アグリ・ゲノム研究の総合的な推進 食料生産技術の革新に向けた研究推進のうち 「イネ科から他作物へのゲノム研究展開のための DNA マーカーの開発」 (平成19-23年度) ■研究目標 大課題1(ダイズゲノムの連鎖地図、物理地図の作成ならびに塩基配列の解読) :ダイズゲノム の高密度連鎖地図の作成と組換え自植系統ならびに部分染色体置換系統の作成。BAC 末端塩基配 列の解読ならびに高速塩基配列解読装置を用いたゲノム塩基配列解読を行なう。 大課題2(ダイズの重要形質に関わる遺伝子の解明) :耐湿性などダイズの重要形質に関連する 有用遺伝子または領域の同定を行なう。 大課題3(ダイズの重要形質に関するDNAマーカーの開発と優良系統の育成) :ダイズ育種に 関して、DNA マーカーによるゲノム育種法の効果を検証し、育種年限の短縮を目指し、有用形質 に関連する高精度 DNA マーカーを開発する。 大課題4(園芸作物のDNAマーカーの開発と優良品種の育成):園芸作物においては、高精度 DNA マーカーの開発、高密度連鎖地図や解析系統作成等のゲノム解析基盤を構築・整備するとと もに、DNA マーカーを利用した育種技術開発を行なう。 ■研究推進体制 ■主な検討事項 1. 研究が進むにつれて膨大な量のゲノム情報が生み出されてくる。この情報を有効に活用す るためには、バイオインフォマティックスの整備等、体制を整えることが重要である 2. ダイズの耐湿性に関する取り組みについて、遺伝子単離、育種グループとで協力し.耐湿 性に関する問題点を洗い出し、課題の修正を行なう。 ■平成 19年度の予算総額 450 百万円 うち 生物研 450 百万円(生物研 63; 再委託 387) 7 《交付金プロジェクト研究》 「農業生物資源ジーンバンク事業」 (平成18~22年度) ■研究目標 遺伝資源の収集・評価・増殖・保存・配布 ■研究推進体制 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 10研究所 植物部門 サブバンク 国際農林水産業研究センター 種苗管理センター 家畜改良センター 実施主体:ジーンバンク 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 8研究所 微生物部門 ジーンバンク事業連絡協議会 センターバンク10名、サブバンク18名 サブバンク 農業環境技術研究所 国際農林水産業研究センター 実施主体:ジーンバンク 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研 動物部門 サブバンク 究所 農業環境技術研究所 家畜改良センター 実施主体:ジーンバンク 評価委員会 外部評価委員6名 (大学関係5名、法 人1名) DNA部門 実施主体:ゲノムリソースセンター センターバンク(農業生物資源研究所) 総括:ジーンバンク長 ■主要な研究成果 平成 19 年度は,サブバンク等の協力により,引き続き遺伝資源の探索,収集,分類,同 定,特性評価,保存,増殖及び遺伝資源とその情報の提供を行った. 主要な研究成果は以下のとおりである. 1. 7 隊の植物遺伝資源国内探索調査, 1 件の海外探索調査, 4 課題の海外共同調査を実施 した.微生物は, 3 隊の国内探索, 2 件の海外探索調査を実施した.インドのタミール・ナドゥ 農業大学と 3 ヶ年の共同調査研究の MOU を締結した. DNA 部門では,引き続きイネの EST , RFLP , YAC クローン,ブタの BAC ,完全長 cDNA ,カイコの BAC , cDNA クローン 等を保存・整備した. 2.サブバンクの協力のもと,植物遺伝資源の 1 ~ 3 次特性,合計 17 万 4 千点の特性評価を実 施し,公募による 13 課題を委託で実施した.微生物遺伝資源では計 8,186 点の特性評価を 実施し,公募による 1 課題の委託課題を実施した.動物遺伝資源に関しては計 1,225 点の特 性調査を実施した. 3.育種素材化において,公募による 13 課題を委託で実施した.コア・コレクションの整備のた め,日本産カンキツ, A ゲノム野生イネ,ツルアズキ,ソルガム栽培種の 4 課題を実施した. 4.平成 19 年度の遺伝資源の保存点数は,植物 243,463 点,微生物 24,982 点,動物が 953 点 となった.昨年に引き続きクワ冬芽( 200 点)を超低温保存するとともに,イグサ 42 系統の培養 茎頂の超低温保存法の開発を行った. 5.ジーンバンクが保存する遺伝資源に対する配布要請に応じ,植物遺伝資源 5,247 点, 微生物遺伝資源 759 点,動物遺伝資源 189 点の配布を行った.世界のイネコアコレクシ ョン 18 セット及び日本在来イネのコアコレクション 8 セットを配布した.遺伝資源管 理のためのプログラムの開発・改良を進めた.また,遺伝資源の情報の公開を進め,植物収集 地点検索システム,アズキの SSR マーカー情報と連鎖地図情報を,ジーンバンクのホームペ ージで公開した. ■平成 19 年度の予算総額 824 百万円 うち 生物研 824 百万円(生物研 390;委託 435) 8 ≪委託プロジェクト研究≫ 「農林水産生物ゲノム情報統合データベースの構築」 (平成18-22年度) ■研究目標 (1)農林水産生物ゲノム情報統合データベースの整備 イネ、カイコ、ブタ等農林水産生物のゲノムや遺伝子の情報等を統合したデータベースを構 築するため、データベース専用のコンピュータシステムを新規に導入するとともに、これまで に行われた農林水産省のゲノム関連プロジェクト研究や現在実施中のプロジェクト研究等で 得られた農林水産生物のゲノムや遺伝子の情報等の研究データを大学や民間企業等の研究者 が研究に利用しやすい形で統合し、提供する。 (2)多生物ゲノム情報等とのリンクによる高精度情報検索システムの構築 農林水産生物ゲノム研究の基盤を強化するため、国内の全生物のゲノム情報等との高精度情 報検索システムの他、国際的にゲノム情報等を持つデータベース機関である GenBank(米国) 、 EMBL(欧州)等とリンクし、高精度に遺伝子情報の類似性検索等を行うことができるシステム を構築する。 ■研究推進体制 農林水産技術会議事務局 農業生物資源研究所 (中核機関) 作物研究所 ■主な研究成果 ・ 新コンピュータシステムに、イネ、カイコゲノム情報等の移植を実施した。 ・ 統合化に向けたデータベースや情報量の調査及び統合データベースアクセス解析システムの開 発を行った。 ・ 統合 DB 構築のための基盤情報整備として、遺伝子情報のファミリー分類を膜トランスポーター 関連蛋白質遺伝子について実施した。 ・ データ統合ブラウザのプロトタイプ開発を実施した。 ■平成 19 年度の予算総額 699 百万円 うち 生物研 695 百万円 (コンピュータリース経費含む) 9 《交付金プロジェクト研究》 共生系の解明による生物制御基盤技術の開発 (平成17-21年度) ■研究目標 自然界ではさまざまな生物が密接に関連しながら生息している。これらの共生関係は農業生産・自 然環境に大きな影響を及ぼしており、『共生系』プロジェクトでは、その生物の機能や生物間相互作用 を分子レベル、生化学レベルで解明することにより、環境調和型の新たな病虫害制御技術・植物生 産向上技術の開発を目指す。 ■研究推進体制 昆虫関係 生物 研7 生 物研・昆虫 科学研 究領 域長 主 査 チ ームリー ダー: 生物 研・昆 虫- 昆虫・ 植物 間相 互研 究ユニ ット 上級 研究 員 研究推進 リーダー チ ームリー ダー: 生物 研・昆 虫- 微生物 間相 互作 用研 究ユニ ット 上級 研究 員 生 物研 ・理 事 植物関係 生物 研 5 生 物研・植物 科学研 究領 域長 チ ームリーダー:生物 研・植物・微 生物相 互作用 研究U 評価委員 大学 4名 ■今年度の主な成果 1.クワ乳液中に含まれる耐虫性に関わるタンパク質 MLX56 の完全長遺伝子配列を明ら かにし、その作用機構と解明が進んだ(昆虫-昆・植物ユニット) 2.カイコの Cry1Ab 毒素抵抗性遺伝子が座乗する領域を約 82kbp まで狭め、候補遺伝子 を一つに絞った(昆虫-微生物ユニット) 3.マメ科植物-根粒菌共生において、CCaMK(キナーゼ)とCYCLOPS(転写因子)複合体が、 感染受容と根粒形成の鍵を握る植物側因子であることを明らかにした(植物・微生物 U)。 4.トマトの抵抗性遺伝子Tm-1によるウイルスRNA複製阻害において、相互認識に重要な アミノ酸残基を特定し、さらにウイルス複製タンパクとの相互作用の構造生物学的解析 のために、Tm-1タンパク質の活性フラグメントの精製に成功した(植物・微生物U)。 5.ウイルスに対する過敏感反応において、ジャスモン酸系を介した細胞死に至る反応に 先立ちサリチル酸系による自己防御応答が起こることを明らかにした(植物・微生物 U)。 6.イネイモチ病菌が生産する熱安定性の感染補助因子が2-デオキシウリジンであること を突き止め、この因子による感染促進効果は、親和性菌においてのみ発揮されることを 明らかにした(植物・微生物U)。 ■平成 19 年度の予算総額 98.5 百万円 うち生物研 98.5 百万円(生物研 98.5;委託 0) 10 ≪委託プロジェクト研究≫ アグリ・ゲノム研究の総合的な推進 新需要の創造に向けた研究推進のうち昆虫ゲノム (平成19-23年度) ■研究目標 大課題(1)カイコゲノム研究基盤の整備と重要遺伝子の機能解明 カイコを用いた物質生産の高度化や昆虫の特異的な遺伝子の探索・機能解明による産 業利用を加速するために、その基礎となるゲノム情報の整備と解析ツールの開発を行 う。カイコ完全長 cDNA の解読、カイコゲノムの遺伝子アノテーションの推進、BAC ク ローンの整備と連鎖地図の高密度化、効率的な遺伝子発現制御技術開発などを含む。 大課題(2)カイコを利用した有用物質の生産技術の高度化による新需要の創出 遺伝子組換えカイコを利用して、有用タンパク質の生産を実用的なレベルにまで高め る。そのために、タンパク質の発現量を飛躍的に増加させること、哺乳類特にヒトへ の適用が可能なヒト型糖鎖付加技術の開発を目指す。さらに医薬や抗体などを選定し、 実用化への技術開発を行う。 大課題(3)遺伝子組換えカイコの大量飼育システムの構築と普及 カイコが生産するタンパク質の品質保持や安定的供給を可能にするための技術開発 を行う。そのために、遺伝子組換えカイコ系統の長期安定保存技術の開発、農家普及 のための大量飼育技術開発、タンパク質生産のための効率的な飼育の確立を行う。 ■研究推進体制 ■平成 19 年度の予算総額 308 百万円 うち生物研 308 百万円(生物研 184 ; 再委託 124) 11 《交付金プロジェクト研究》 「増殖・分化機構の解明による動物細胞機能制御技術の開発」 (平成17-21年度) ■研究目標 1)生殖系列・幹細胞等の増殖・分化制御機構の解明(生殖系列・幹細胞系) 動物個体の生産に直接関連する精子や卵子を形成する生殖細胞等の増殖・分化機構および生殖細胞や体細胞の元になる多様な 幹細胞の多能性維持機構、脱分化や分化転換機構を解明し、新しい生殖制御・個体生産技術および生殖細胞や機能性体細胞を形 成・再生する基盤技術の開発に資する。 2)体細胞の増殖・分化制御機構の解明(体細胞系) 動物の生産性に関与する胎盤細胞等の多様な体細胞の増殖・分化制御機構を解明するとともに、細胞相互作用等の調節機構のモ デル化を図り、生殖細胞や幹細胞を起点にした個体生産や組織構築を飛躍的に向上させる技術の開発に資する。 ■研究推進体制 生殖系列・幹細胞の増殖・分化制 御機構の解明 生物研 5課題 チームリーダー:生物研・動物科学研究領域 生殖機構研究ユニット長 農林水産技術 会議事務局 推進リーダー 主 査 生物研・新保理事 生物研・動物科学研究領域長 体細胞の増殖・分化制御機構の解 生物研 5課題 明 大学 2 課題 評価委員会 大学・独法2名 チームリーダー:生物研・遺伝子組換え家畜研究センター 上級研究員 ■ 3 年間の主な研究成果 (1)マイクロアレイ解析による ES 細胞亜集団の遺伝子発現プロファイルを作製し、ES 細胞の多能性維持機構に関わる 23 個の新規分子(Ppet 遺伝子群)を同定し、このうち Ppet2 について詳細な機能解析を行った。ES 細胞亜集団のエピジェネティックな違いを 明らかにするとともに、β-グロビン遺伝子発現制御領域に EGFP 遺伝子を連結したレ ポーターベクターを ES 細胞株に導入し、エピジェネティックな変動を生細胞で可視化 する系を構築した。本研究より派生した ES 細胞関連の課題で、20年度の生研センタ ーの競争的資金へ応募する。 (2)ウシ受胎産物と栄養膜由来細胞株おいて発現する遺伝子を網羅的に解析し、約 1 万種 類の遺伝子発現プロファイルを明らかにした。栄養膜細胞の 2 核化に伴って発現する各 種遺伝子をクローニングし、発現の時期特異性と細胞局在を明らかにした。ウシの他に もヤギやヒツジを対象として遺伝子クローニングを行い、オルソログ遺伝子を同定した。 ウシ胚の伸長培養系を確立し、胚を効率的に伸長させるために必要な培養条件を明らか にした。本課題の一部が、平成 19 年度の科学研究費補助金(若手)に採択された。 (3)本来胎盤が形成されない領域に発達した胎盤様組織を用い、組織学的およびマイクロ アレイにより発現する遺伝子群を検索した。着床領域で生じる著しい細胞増殖を in vitro で検証するモデルを作成するため、増殖性の異なる細胞系の選択を行うと共にそれらの 増殖並びに発現遺伝子特性についてマイクロアレイおよび定量的 RT-PCR により検証し た。また、選択した細胞系を用いて、着床時期に生じる細胞増殖誘導要因を用い細胞増 殖性を確認した(岩手大学委託) (4)新規培養担体であるⅠ型コラーゲンビトリゲル薄膜を利用した培養技術を発展させ て、ビトリゲル薄膜構成成分の効果あるいは異種細胞のパラクライン作用を活用した技 術を確立することで、標的細胞の増殖や分化を制御する培養モデルを構築基盤技術が確 立できた。この間、コラーゲンビトリゲル薄膜を他の目的に応用する研究で各種の競争 的資金を獲得している。 ■平成 1 9年度の予算総額 76.6 百万円うち生物研 67.6 百万円 (生物研 67.6;再委託 9.0) 12 交付金プロジェクト 「形態・生理機能の改変による新農林水産生物の創出に関する総合研究 (バイオデザイン計画)」 ■研究期間:平成10~19年度 (第Ⅰ期、平成10~12年度;第Ⅱ期、平成13~15年度;第Ⅲ期、平成16~19年度) ■生物研課題数:11 (光合成・環境チーム ■生物研予算額:77.0百万 6課題、昆虫チーム 5課題) ) (内研究費:70.0百万) ■研究の概要 研究目標 (1)光合成機能の改変、葉や養分貯蔵器官の形態改変などにより作物の収量を飛躍的に向上さ せる技術を開発する。また、環境ストレス耐性の付与などにより栽培可能地の大幅拡大を可 能とする作物の創出を行う。 (2)乳腺機能の改変により乳量を飛躍的に向上させる技術を開発する。また、生殖細胞の分化・ 増殖技術の開発により体外培養系での卵子の大量生産技術を開発する。 (3)発生・成長機構の改変により優良種苗・親魚の大量生産技術を開発する。また、形態の改 変により魚の肉量を飛躍的に向上させる技術を開発する。 (4)生物の形態形成過程及び代謝生理過程を組織、細胞、細胞内組織、分子の各レベルでリア ルタイムに計測する技術を開発する。 研究推進体制 13 ≪委託プロジェクト研究≫ アグリ・ゲノム研究の総合的な推進 「新需要の創造に向けた研究推進のうち動物ゲノム」 (平成19-23年度) ■研究目標 1) 家畜の遺伝研究を支えるゲノム情報基盤の構築 国際コンソーシアムへの参画によるブタゲノム解読、ブタの発現遺伝子の網羅的解析と、 それを利用した高密度のマーカー開発、マイクロアレイ等発現解析システムの構築等を行い、 抗病性や肉質向上のための育種に資するゲノム情報基盤を整備する。 2) ブタ抗病性、肉質等経済形質向上のための育種技術の開発 1)で得られたゲノム情報を活用して、高品質で「安心かつ安全な」畜産物生産に貢献す る、抗病性や豚肉の経済形質に優れるブタ系統の作出を目標とした、家畜免疫系遺伝子解析 研究、脂肪関連形質等の品質に関与する遺伝子の解明を行う。 3) 医学研究用モデル家畜の開発 ヒトの医療に貢献できる、再生医療用モデルブタ、疾患モデルブタ、移植用モデルブタ等 の 医学研究用モデル家畜の開発を目指した組換えモデルブタを開発する。 4)国産鶏の品質向上のための育種技術の開発 ゲノム情報の解読されている鶏について、 そのゲノム情報を活用し、我が国養鶏産業の基 盤強化のため、消費者ニーズに合致したもも肉比率の高い鶏や、卵の生産流通過程で経済損 失改善に対応した卵殻強度の改良された鶏等の実用系統を作出する。 5) 遺伝子組換え家畜による有用物質生産技術の開発 遺伝子組換え技術や体細胞クローン技術を用いて、抗ピロリ菌機能を持つ乳汁を生産する ヤギを作出し、さらに生産物の抗菌活性の有効性を明らかにして、有効な機能性食品等の素 材開発等に繋げることができる動物工場の実用化を目指す。 ■研究推進体制 農林水産技術会議事務局 運営委員会 家畜の遺伝研究を支えるゲノム情報基盤の構築 チームリーダー:生物研・家畜ゲノム研究ユニット ブタ抗病性、肉質等経済形質向上のための育種技術の開発 チームリーダー:生物研・家畜ゲノム研究ユニット長 プロジェクトリーダー 医学研究用モデル家畜の開発 チームリーダー:生物研・遺伝子組換え家畜研究センター 生物研・家畜ゲノム研究ユニット長 国産鶏の品質向上のための育種技術の開発 チームリーダー:機構・畜草研・家畜育種増殖研究チーム 遺伝子組換え家畜による有用物質生産技術の開発 チームリーダー:生物研・遺伝子組換え家畜研究センター (4独法、6大学、9県、民間4) ■平成 19 年度の予算総額 280,000 千万円 うち 生物研 270,000 千円 (生物研 67,500; 再委託 202,500) 14 《交付金プロジェクト研究》 「バイオテクノロジーによる農業生物の産業実用化研究」 (平成18-20年度) ■研究目標 本プロジェクトでは、バイオテクノロジー、特に遺伝子組換え技術や遺伝子組換え生物(植物、昆虫および 動物)およびイネゲノム研究成果の実用化を進めるにあたって直面する様々な問題を解決することを目的とす る。このため、直面する産業実用化研究および実用化を目指したシーズ発掘・培養研究を推進するとともに、 産業実用化研究の技術支援を行う。 ■研究実施体制 農業生物資源研究所 理事会 農業生物資源研究所 課題評価委員会 課題担当研究領域、 センター、ユニット 研究企画調整室(事務局) ■研究実施課題 1)重点配分課題 ・ゲノム情報を活用した新規イネ育種素材の開発(QTL ゲノム育種研究センター) ・機能性有効成分のイネ種子への高度集積法の確立(遺伝子組換え作物研究開発センター) ・遺伝子組換えカイコによる有用物質の大量生産システムの高度化(遺伝子組換えカイコ研究センター) ・動物を用いた有用物質生産技術の開発とモデル家畜の作出(遺伝子組換え家畜研究センター) ・ジーンターゲッティングの効率化とジーンサイレンシングの制御を支える基盤技術の開発(遺伝子組換え技 術研究ユニット) 2)競争的配分課題 ・実用的で安定したコムギ形質転換法の開発(植物ゲノム研究ユニット) ・昆虫の抗ウイルスタンパク質の分離・同定及び生理機能の解明(生体防御研究ユニット) ・カイコ遺伝子機能解析のための RNAi 法の開発(昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット・遺伝子組換えカイコ 研究センター) ・ゲノム情報を利用したカイコ染色体置換系統の作出(生活資材開発ユニット) ・ブタゲノム塩基配列の解読に係る BAC ショットガンシーケンシング(家畜ゲノム研究ユニット) ・家畜幹細胞株の樹立とその利用に関する研究(生殖機構研究ユニット) 3)技術支援業務 ・形質転換イネの作出と in situ hybridization による遺伝子発現解析(植物科学研究領域) ■主な研究成果 ・高ソース能関連形質の遺伝解析に適した評価法を確立するため、超多収系統を含む 7 系統で個葉光合成速度、 気孔コンダクタンス、葉面温度を調査し、3 形質間の比較を行なったところ、葉面温度は気孔コンダクタン スと高い相関を示し、個葉光合成速度を反映する多検体解析可能な評価指標として有望であることが明らか となった。 ・遺伝子組換えカイコを用いたタンパク質生産の際には、組換えタンパク質が本来持っているシグナルペプチ ドをセリシン1のシグナルペプチドに置換すると発現量が上昇する可能性が示唆された。 ・ヒトセレノプロテイン遺伝子を導入した雄ヤギ 2 頭を交配に用いて後代を得、PCR で遺伝子発現を確認する ことにより、導入遺伝子が後代に伝播することを明らかにした。 ・カイコの染色体置換系統を作出するために、各染色体を簡便に識別できる AFLP マーカーを作出した。この AFLP マーカーは、第 9 連関群を除く 27 連関群に少なくとも1つは得られており、これによって置換系統の 選抜を行うことが容易になった。 ■平成 19年度の予算総額 101百万円 15 平成 19 年度に係る業務実績報告書 資料 2 遺伝資源の配布及び依頼照射実績一覧 1.遺伝資源の配布 (1) 植物遺伝資源 区分 稲類 麦類 豆類 いも類 雑穀・特用作物 牧草・飼料作物 果樹類 野菜類 花き・緑化植物 茶 桑 熱帯・亜熱帯植物 コアコレクション 合計 (平成19年4月1日~平成20年3月31日) 民 間 国・独法機関 都道府県 外 国 合 計 大 学 その他 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 44 27 6 6 14 8 2 2 5 10 6 11 0 0 2 7 1 2 0 0 0 0 1 0 9 1 90 74 1,380 1,133 2,567 2,421 783 669 5 47 33 1,798 58 446 0 0 7 26 13 13 0 0 0 0 1 0 12 1 4,859 6,554 5 10 0 0 2 3 1 1 2 3 0 0 1 2 4 11 3 5 0 0 1 0 0 0 3 0 22 35 18 90 0 0 13 20 1 1 22 31 0 0 8 8 32 20 12 12 0 0 8 0 0 0 4 0 118 182 15 14 7 4 10 7 1 1 6 1 8 2 1 1 6 9 1 0 0 0 1 0 0 0 13 2 69 41 104 491 30 178 402 258 43 2 124 665 55 16 1 1 15 117 8 0 0 0 6 0 0 0 17 4 805 1,732 16 14 2 1 8 6 0 0 4 2 1 0 5 2 12 14 0 1 0 0 1 1 0 0 3 1 52 42 84 66 7 2 58 34 0 0 22 3 1 0 12 17 63 38 0 3 0 0 1 10 0 0 3 2 251 175 2 2 2 3 0 3 2 1 2 2 0 0 0 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 9 14 5 2 7 12 0 17 6 4 83 14 0 0 0 4 16 4 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 117 58 82 67 17 14 34 27 6 5 19 18 15 13 7 6 25 42 5 8 0 0 3 1 1 1 28 4 242 206 1,591 1,782 2,611 2,613 1,256 998 55 54 284 2,511 114 462 21 30 133 205 33 28 0 0 15 10 1 1 36 7 6,150 8,701 * 下段は前年度実績 (2) 微生物遺伝資源 (平成19年4月1日~平成20年3月31日) 区分 国・独法機関 都道府県 件数 数量 細菌 糸状菌 植物ウィルス 動物ウィルス 原線虫 放線菌 酵母 バクテリオファージ ウイロイド 合計 9 17 28 34 6 7 0 2 1 0 0 0 1 0 0 3 1 0 46 63 103 146 207 256 18 20 0 2 1 0 0 0 1 0 0 4 1 0 331 428 大 学 民 間 外 国 合 計 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 7 10 31 21 0 3 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 38 35 35 31 114 75 0 7 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 149 116 14 25 32 44 2 0 0 0 3 2 1 2 0 1 0 0 0 0 52 74 1 93 44 153 273 3 0 0 0 5 3 4 7 0 1 0 0 0 0 258 328 12 12 31 30 8 6 0 0 4 1 0 0 0 0 0 0 0 0 55 49 28 21 103 83 14 8 0 0 4 1 0 0 0 0 0 0 0 0 149 113 10 9 13 9 0 2 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 25 20 129 26 63 67 0 2 0 0 1 0 0 0 0 0 4 0 0 0 197 95 52 73 135 138 16 18 0 2 9 3 1 3 1 1 1 3 1 0 216 241 388 268 640 754 35 37 0 2 11 4 4 10 1 1 4 4 1 0 1,084 1,080 * 下段は前年度実績 (3) 動物遺伝資源 (平成19年4月1日~平成20年3月31日) 区分 国・独法機関 都道府県 件数 数量 17 17 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 3 2 20 20 蚕 馬(血液) 馬(生体) 天敵昆虫 検定用昆虫 ウズラ 牛(凍結精液) 培養細胞 合計 150 171 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 8 9 158 181 大 学 民 間 外 国 合 計 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 4 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 3 4 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 5 8 6 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 0 2 9 10 24 11 0 0 0 0 0 0 0 0 4 4 0 4 0 2 28 21 13 17 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 14 18 20 37 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 21 38 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 42 43 0 0 1 1 0 1 0 0 1 1 0 1 3 4 47 51 198 224 0 0 1 1 0 1 0 0 4 4 0 4 8 11 211 245 * 下段は前年度実績 (4) DNA等(イネ) (平成19年4月1日~平成20年3月31日) 区分 国・独法機関 都道府県 件数 数量 cDNAクローン (チューブ) RFLPマーカー (チューブ) RFLPマーカー (プレート) YACクローン (フィルター) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 合計 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大 学 民 間 外 国 合 計 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 3 0 15 0 0 0 0 0 0 0 15 0 3 0 0 0 0 0 0 0 3 0 15 0 0 0 0 0 0 0 15 * 下段は前年度実績 (5) DNA等(ブタ) (平成19年4月1日~平成20年3月31日) 区分 国・独法機関 都道府県 件数 数量 cDNAクローン (チューブ) BACクローン (チューブ) BACクローン (スーパープール) BACクローン (4Dプール) 完全長cDNAクロー ン (チューブ) 合計 0 0 0 2 0 0 0 0 1 0 1 2 0 0 0 129 0 0 0 0 1 0 1 129 大 学 民 間 外 国 合 計 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 件数 数量 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 21 0 21 0 0 0 0 2 0 0 0 0 5 0 5 2 0 0 0 129 0 0 0 0 23 0 23 129 * 下段は前年度実績 2 2.遺伝資源の受入保存 (1) 植物遺伝資源 増減 区分 保存形態内訳 保存総数 種子 栄養体 保存区分内訳 その他 W C B C 198 44,224 44,215 9 0 823 43,401 稲類 178 62,333 62,260 73 0 1,455 60,878 麦類 1,175 18,956 18,955 1 0 1,002 17,954 豆類 72 8,889 424 8,464 1 666 8,223 いも類 190 19,058 14,991 4,065 2 1,665 17,393 雑穀・特用作物 217 33,099 28,208 4,891 0 6,285 26,814 牧草・飼料作物 -77 10,300 87 10,213 0 3,025 7,275 果樹 745 27,224 25,715 1,509 0 7,795 19,429 野菜 115 5,873 101 5,772 0 3,341 2,532 花き・緑化植物 64 7,547 1 7,546 0 1,460 6,087 茶 0 2,178 0 1,423 755 495 1,683 桑 1 418 38 380 0 67 351 熱帯・亜熱帯植物 その他の植物 28 3,364 1,895 1,469 0 1,795 1,569 合 計 2,906 243,463 196,890 45,815 758 29,874 213,589 注 増減は探索・収集、受入、移管、廃棄による WC:ワーキングコレクション(BCの候補材料)、BC:ベースコレクション(長期保存対象材料) AC:アクティブコレクション(BCのうち、配布対象材料) A C 33,432 38,309 13,246 4,280 11,144 16,140 4,817 11,215 494 1,352 1,386 18 349 136,182 (2) 微生物遺伝資源 保存場所 区分 増減 保存総数 センター バンク サブ バンク 公開区分 アクティブ率 アクティブ 細菌 639 9,555 5289 4,266 6031 放線菌 0 312 312 0 153 動物マイコプラズマ 20 118 0 118 0 ファイトプラズマ 2 59 0 59 59 リケッチア 0 0 0 0 0 酵母 1 620 596 24 217 糸状菌 310 13,302 11790 1,512 10358 昆虫・動物ウイルス 45 437 3 434 35 植物ウイルス -18 279 236 43 240 バクテリオファージ 0 73 48 25 73 ウイロイド 4 11 0 11 11 原虫 1 54 0 54 2 線虫 1 152 0 152 150 細胞融合微生物 0 10 10 0 5 合 計 1,005 24,982 18,284 6,698 17,334 アクティブ株: 非アクティブ株のほかすべて。MAFF登録後,非公開期間が5年以内の株。 非アクティブ株: 無期限に非公開の株。 ※保存総数 = アクティブ株 +非アクティブ株 ※アクティブ株で,「MAFF登録後5年を越える一定の期間,非公開」 3 非アクティブ 3524 159 118 0 0 403 2944 402 39 0 0 52 2 5 7,648 63.1% 49.0% 0.0% 100.0% - 35.0% 77.9% 8.0% 86.0% 100.0% 100.0% 3.7% 98.7% 50.0% 69.4% (3) 動物遺伝資源 保存形態 保存区分 受精卵 生殖細胞 その他 WC BC 牛 0 58 9 21 42 2 1 57 水牛 0 1 0 0 1 0 0 1 馬 0 5 5 0 5 0 0 5 羊 5 11 1 0 10 0 7 4 山羊 3 19 3 0 17 0 0 19 豚 0 39 6 0 35 0 5 34 ウサギ -1 4 4 0 0 0 0 4 家きん 1 85 27 0 64 5 11 74 ミツバチ 0 2 0 0 0 2 0 2 ハリナシミツバチ 0 1 0 0 0 1 0 1 蚕 5 662 0 662 0 0 45 617 -1 52 0 0 0 52 0 52 昆虫培養細胞 天敵昆虫 -1 5 5 0 0 0 1 4 天敵餌用昆虫 0 2 2 0 0 0 0 2 検定用昆虫 0 7 7 0 0 0 1 6 合 計 11 953 69 683 174 62 71 882 注 増減は、探索、受入、移管、廃棄による。保存形態内訳の合計は、保存総数と必ずしも一致しない。 WC:ワーキングコレクション(BCの候補材料) BC:ベースコレクション(長期保存対象材料) AC:アクティブコレクション(BCのうち、配布対象材料) 区分 増減 保存数 個体 (4) DNA等(イネ) cDNAクローン RFLPマーカー RFLPマーカーセッ YACクローン YACフィルター PACクローン クローン数 セット数 ベースコレクション アクティブコレク (菌体) ション(菌体) 65,313 65,313 1,713 1,713 7,606 7,606 1,176 75,808 1,176 75,808 増殖 15 15 0 配布用DNA 配布 廃棄 15 15 0 保存総数 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 (5) DNA等(ブタ) ベースコレクション アクティブコレク (菌体) ション(菌体) 23,011 1,000 cDNAクローン 1,800 1,800 コスミドクローン 153,488 153,488 BACクローン 〃 (Super Pool) 0 0 〃(4D Super Pool) 0 0 178,299 156,288 クローン数 配布用DNA 配布 廃棄 増殖 セット数 129 129 129 0 129 0 保存総数 0 0 0 0 0 0 0 0 0 (6) DNA等(カイコ) ベースコレクション アクティブコレク (菌体) ション(菌体) 0 0 cDNAクローン 23,040 0 BACクローン クローン数 23,040 0 配布用DNA 配布 廃棄 増殖 0 4 0 保存総数 0 0 0 0 AC 1 0 5 0 18 0 4 0 0 0 136 40 2 0 5 211 3.原蚕種及び桑の接穂・苗木の配布等 区分 国立機関等 件数 数量 原蚕種 5 185 交雑原蚕種 2 84 交雑蚕品種 17 790 都道府県 大 学 件数 数量 件数 民間等 数量 1 16 117 1 1 保存蚕品種 蚕種計 24 1,059 件数 16 117 1 桑計 注 配布単位は蚕が蛾、桑は本 5 1 外 国 数量 計 件数 数量 件数 2 数量 6 187 2 84 2 7 36 915 1 14 1 14 4 23 45 1,200 1 1,000 1 1,000 0 0 4.平成19年度 放射線育種場における依頼照射 2008年3月31日現在 【 独 法 試 験 研 究 機 関 】 依頼者名 作物名 照射形状 種子 種子 培養体 種子 種子 培養体 種子 種子 つる 種子 苗 苗 苗木 培養体 種苗 種子 種子 イネ ソルガム 農業生物資源研究所 トレニア 花き研究所 アラビドプシス カンショ ソバ ダイズ サツマイモ イネ ソラマメ スギ 九州沖縄農業研究センター都城研究拠点 九州沖縄農業研究センタ- 作物研究所 放射線医学総合研究所 森林総合研究所 ポプラ シバ ギニアグラス ダッタンソバ 畜産草地研究所那須研究拠点 北海道農業研究センター芽室研究拠点 小 計 照射方法 一般件数 協力件数 急照射 1 0 急照射 10 0 急照射 3 0 急照射 4 1 急照射 3 1 急照射 2 0 急照射 3 0 急照射 11 0 急照射 3 0 急照射 12 0 緩照射 3 0 緩照射 3 0 急照射 8 0 急照射 8 0 緩照射 4 4 急照射 12 0 急照射 1 0 91 6 【 公 立 試 験 研 究 機 関 】 依頼者名 作物名 三重県科学技術振興センター(農業研究部) カンキツ ソバ 千葉県農業総合研究センター サトイモ 愛媛県農業試験場 サトイモ 福岡県農業総合試験場 カキ 山梨県果樹試験場 モモ 照射形状 穂木 種子 植物体 植物体 穂木 穂木 小 計 【 国 立 大 14 学 法 人 作物名 ミヤコグサ 宮崎大学フロンテイア科学実験総合センター Physic Nut 信州大学大学院農学研究科 ダッタンソバ 岩手大学農学部 リンドウ 照射形状 照射方法 一般件数 協力件数 種子 急照射 10 0 種子 急照射 2 0 種子 急照射 1 0 種子 急照射 4 0 小 計 民 間 ・ 17 個 人 0 】 依頼者名 【 照射方法 一般件数 協力件数 急照射 4 0 急照射 1 0 緩照射 2 0 緩照射 1 0 急照射 2 0 急照射 4 0 0 】 依頼者名 農事組合法人 三河温室園芸組合 野口 文弘 作物名 ツマギク クリスマスローズ 杉本 健康 シマオオタニワタリ 横浜植木(株)菊川研究農場 岡本 康宏 村上 雄樹 村澤 光明 落合 由香 秦 圭吾 柳橋 透 ペチュニア ポインセチア イネ キツネノカミソリ ペリカリス シーマニア ヤマイモ 照射形状 照射方法 一般件数 協力件数 苗 急照射 2 0 種子 急照射 1 0 株 緩照射 3 0 胞子 急照射 3 0 苗 急照射 6 0 成木 急照射 3 0 種子 急照射 1 0 球根 急照射 1 0 種子 急照射 1 0 挿苗 急照射 3 0 ムカゴ(肉芽)急照射 3 0 小 計 27 件数および照射料合計 149 6 0 6 平成 19 年度に係る業務実績報告書 資料 3 研 究 業 績 一 覧 ( 原 著 論 文 ) Ⅰ.欧文論文 a. インパクトファクター10以上の学術雑誌に掲載された論文 1. Ma J.F, Yamaji N, Mitani N, Tamai K, Konishi S, Fujiwara T, Katsuhara M, Yano M (2007) An efflux transporter of silicon in rice Nature 448(7150):209-212 2. Watanabe A, Toyota T, Owada Y, Hayashi T, Iwayama Y, Matsumata M, Ishitsuka Y, Nakaya A, Maekawa M, Ohnishi T, Arai R, Sakurai K, Yamada K, Kondo H, Hashimoto K, Osumi N, Yoshikawa T (2007) Fabp7 maps to a quantitative trait locus for a schizophrenia endophenotype PLoS Biology 5(11):e297 3. Hauser F, Cazzamali G, Williamson M, Park Y, Li B, Tanaka Y, Predel R, Neupert S, Schachtner J, Verleyen P, Grimmelikhuijzen C.J.P (2008) A genome-wide inventory of neurohormone GPCRs in the red flour beetle Tribolium castaneum Frontiers in Neuroendocrinology 29(1):142-165 4. Li B, Predel R, Neupert S, Hauser F, Tanaka Y, Cazzamali G, Williamson M, Arakane Y, Verleyen P, Schoofs L, Schachtner J, Grimmelikhuijzen C.J.P, Park Y (2008) Genomics, transcriptomics, and peptidomics of neuropeptides and protein hormones in the red flour beetle Tribolium castaneum Genome Research 18(1):113-122 5. Mikawa S, Morozumi T, Shimanuki S-I, Hayashi T, Uenishi H, Domukai M, Okumura N, Awata T (2007) Fine mapping of a swine quantitative trait locus for number of vertebrae and analysis of an orphan nuclear receptor, germ cell nuclear factor (NR6A1) Genome Research 17(5):586-593 6. Horie T, Costa A, Kim T.H, Han M.J, Horie R, Leung H-Y, Miyao A, Hirochika H, An G, Schroeder J.I (2007) Rice OsHKT2;1 transporter mediates large Na+ influx component into K+-starved roots for growth The EMBO Journal 26(12):3003–3014 7. Radutoiu S, Madsen L.H, Madsen E.B, Jurkiewicz A, Fukai E, Quistgaard E.M.H, Albrektsen A.S, James E.K, Thirup S, Stougaard J (2007) LysM domains mediate lipochitin–oligosaccharide recognition and Nfr genes extend the symbiotic host range The EMBO Journal 26(17):3923–3935 b. インパクトファクター5以上の学術雑誌に掲載された論文 1. Hirano K, Nakajima M, Asano K, Nishiyama T, Sakakibara H, Kojima M, Katoh E, Xiang H, Tanahashi T, Hasebe M, Banks J.A, Ashikari M, Kitano H, Ueguchi-Tanaka M, Matsuoka M (2007) The GID1-mediated gibberellin perception mechanism is conserved in the lycophyte Selaginella moellendorffii but not in the bryophyte Physcomitrella patens The Plant Cell 19(10):3058-3079 2. Kusaba M, Ito H, Morita R, Iida S, Sato Y, Fujimoto M, Kawasaki S, Tanaka R, Hirochika H, Nishimura M, Tanaka A (2007) Rice NON-YELLOW COLORING1 is involved in light-harvesting complex II and grana degradation during leaf senescence The Plant Cell 19(4):1362-1375 3. Nonomura K, Morohoshi A, Nakano M, Eiguchi M, Miyao A, Hirochika H, Kurata N (2007) A Germ cell–specific gene of the ARGONAUTE family is essential for the progression of premeiotic mitosis and meiosis during sporogenesis in rice The Plant Cell 19(8):2583-2594 1 4. Saito K, Yoshikawa M, Yano K, Miwa H, Uchida H, Asamizu E, Sato S, Tabata S, Imaizumi-Anraku H, Umehara Y, Kouchi H, Murooka Y, Szczyglowski K, Downie J. A, Parniske M, Hayashi M, Kawaguchi M (2007) NUCLEOPORIN85 is required for calcium spiking, fungal and bacterial symbioses, and seed production in Lotus japonicus The Plant Cell 19(2):610-624 5. Shimono M, Sugano S, Nakayama A, Jiang C-J, Ono K, Toki S, Takatsuji H (2007) Rice WRKY45 plays a crucial role in benzothiadiazole-inducible blast resistance The Plant Cell 19(6):2064-2076 6. Takahashi A, Agrawal G.K, Yamazaki M, Onosato K, Miyao A, Kawasaki T, Shimamoto K, Hirochika H (2007) Rice Pti1a negatively regulates RAR1-dependent defense responses The Plant Cell 19(9):2940-2951 7. Takahashi F, Yoshida R, Ichimura K, Mizoguchi T, Seo S, Yonezawa M, Maruyama K, Yamaguchi-Shinozaki K, Shinozaki K (2007) The mitogen-activated protein kinase cascade MKK3-MPK6 is an important part of the jasmonate signal transduction pathway in Arabidopsis The Plant Cell 19(3):805-818 8. Thao N.P, Chen L, Nakashima A, Hara S, Umemura K, Takahashi A, Shirasu K, Kawasaki T, Shimamoto K (2007) RAR1 and HSP90 form a complex with Rac/Rop GTPase and function in innate-immune responses in rice The Plant Cell 19(12):4035-4045 9. Ueguchi-Tanaka M, Nakajima M, Katoh E, Ohmiya H, Asano K, Saji S, Xiang H, Ashikari M, Kitano H, Yamaguchi I, Matsuoka M (2007) Molecular interactions of a soluble gibberellin receptor, GID1, with a rice DELLA protein, SLR1, and gibberellin The Plant Cell 19(7):2140-2155 10. Ishibashi K, Masuda K, Naito S, Meshi T, Ishikawa M (2007) An inhibitor of viral RNA replication is encoded by a plant resistance gene Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(34):13833-13838 11. Kikawada T, Saito A, Kanamori Y, Nakahara Y, Iwata K, Tanaka D, Watanabe M, Okuda T (2007) Trehalose transporter 1, a facilitated and high-capacity trehalose transporter, allows exogenous trehalose uptake into cells Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(28):11585-11590 12. Nochi T, Takagi H, Yuki Y, Yang L, Masumura T, Mejima M, Nakanishi U, Matsumura A, Uozumi A, Hiroi T, Morita S, Tanaka K, Takaiwa F, Kiyono H (2007) Rice-based mucosal vaccine as a global strategy for cold-chain- and needle-free vaccination Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(26):10986-10991 13. Sakudoh T, Sezutsu H, Nakashima T, Kobayashi I, Fujimoto H, Uchino K, Banno Y, Iwano H, Maekawa H, Tamura T, Kataoka H, Tsuchida K (2007) Carotenoid silk coloration is controlled by a carotenoid-binding protein, a product of the Yellow blood gene Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(21):8941-8946 14. Sakurai M, Furuki T, Akao K, Tanaka D, Nakahara Y, Kikawada T, Watanabe M, Okuda T (2008) Vitrification is essential for anhydrobiosis in an African chironomid, Polypedilum vanderplanki Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of 2 America 105(13):5093-5098 15. Sato Y, Morita R, Nishimura M, Yamaguchi H, Kusaba M (2007) Mendel's green cotyledon gene encodes a positive regulator of the chlorophyll-degrading pathway Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(35):14169-1417 16. Taketa S, Amano S, Tsujino Y, Sato T, Saisho D, Kakeda K, Nomura M, Suzuki T, Matsumoto T, Sato K, Kanamori H, Kawasaki S, Takeda K (2008) Barley grain with adhering hulls is controlled by an ERF family transcription factor gene regulating a lipid biosynthesis pathway Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 105(10):4062-4067 17. Molle W.V, Roy M.V, Bogaert T.V, Dejager L, Lint P.V, Vanlaere I, Sekikawa K, Kollias G, Libert C (2007) Protection of zinc against tumor necrosis factor–induced lethal inflammation depends on heat shock protein 70 and allows safe antitumor therapy Cancer Research 67(15):7301-7307 18. 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Mizuno S, Osakabe Y, Maruyama K, Ito T, Osakabe K, Sato T, Shinozaki K, Yamaguchi-Shinozaki K (2007) Receptor-like protein kinase 2 (RPK 2) is a novel factor controlling anther development in Arabidopsis thaliana The Plant Journal 50(5):751-766 27. Nakashima K, Tran L-S.P, Nguyen D.V, Fujita M, Maruyama K, Todaka D, Ito Y, Hayashi N, Shinozaki 3 K, Yamaguchi-Shinozaki K (2007) Functional analysis of a NAC-type transcription factor OsNAC6 involved in abiotic and biotic stress-responsive gene expression in rice The Plant Journal 51(4):617–630 28. Sasaki K, Mitsuhara I, Seo S, Ito H, Matsui H, Ohashi Y (2007) Two novel AP2/ERF domain proteins interact with cis-element VWRE for wound-induced expression of the Tobacco tpoxN1 gene The Plant Journal 50(6):1079–1092 29. 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Matsuya A, Sakate R, Kawahara Y, Koyanagi O.K, Sato Y, Fujii Y, Yamasaki C, Habara T, Nakaoka H, Todokoro F, Yamaguchi K, Endo T, OOta S, Makalowski W, Ikeo K, Suzuki Y, Hanada K, Hashimoto K, Hirai M, Iwama H, Saitou N, Hiraki T.A, Jin L, Kaneko Y, Kanno M, Murakami K, Ogura Noda A, Saichi N, Sanbonmatsu R, Suzuki M, Takeda J, Tanaka M, Gojobori T, Imanishi T, Itoh T (2008) Evola: Ortholog database of all human genes in H-InvDB with manual curation of phylogenetic trees Nucleic Acids Research 36(Database issue):D787-D792 33. Rice Annotation Project (2008) The rice annotation project database (RAP-DB): 2008 update Nucleic Acids Research 36(Database issue):D1028-D1033 34. 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Ushizawa K, Takahashi T, Hosoe M, Ishiwata H, Kaneyama K, Kizaki K, Hashizume K (2007) Global gene expression analysis and regulation of the principal genes expressed in bovine placenta in relation to the transcription factor AP-2 family Reproductive Biology and Endocrinology 5(17):1-17 Ⅱ.和文論文 1. 浅野昌司, 宮本和久 (2007) Bacillus thuringiensis 製剤に対する紫外線保護剤の室内評価法について 日本応用動物昆虫学会誌 51(2):121-127 2. 浅野昌司, 宮本和久, 和田早苗, 村上理都子, 三橋渡 (2008) Bacillus thuringiensis 製剤の紫外線による 生物活性低下を抑制する保護物質の探索 日本応用動物昆虫学会誌 52(1):31-33 3. 江口良橘, 永易健一, 蜷木理, 原和二郎 (2007) カイコ濃核病 1 型に対する優性非感受性の遺伝分析 蚕糸・昆虫バイオテック 76(2):159-163 4. 福井邦明 (2007) クワ枝条伸長生長予測モデルの広域適用性と予測精度の検証 日本作物学会紀事 76(2):295-300 5. 廣瀬咲子, 高木英典, 川勝泰二, 若佐雄也, 土門英司, 遠藤雄士, 村岡賢一, 平井一夫, 渡邊朋也, 服部 誠, 立石剣, 高岩文雄 (2008) スギ花粉症緩和米の安全性確保への取り組み-大規模隔離ほ場栽培と 生物多様性影響評価- 育種学研究 10(1):23-30 6. 飯塚哲也, 間瀬啓介, 岡田英二, 山本俊雄 (2007) パソコンを利用した繭秤量システム 蚕糸・昆虫バ イオテック 76(1):69-72 7. 小島桂, 桑名芳彦, 瀬筒秀樹 (2007) オニグモ縦糸タンパク質を導入した遺伝子組換えカイコ絹糸の 高次構造解析 高分子論文集 64(11):817-819 8. 間瀬啓介, 飯塚哲也, 岡田英二, 山本俊雄, 原和二郎 (2007) カイコ cDNA 領域の 3 点法による遺伝 的距離と染色体上の位置との比較 蚕糸・昆虫バイオテック 76(2):165-169 9. 本橋慶一, 青木孝之, 小林享夫 (2007) Fusarium dimerum Penzig var. dimerum によるアロエ株腐病(新 称) 日本植物病理学会報 73(4):304-308 31 10. 村松昇, 平岡潔志, 佐竹大輔, 塩見良男, 篠原一典 (2007) 誘電率計測によるカンキツ葉の簡易水分 含量測定 日本土壌肥料学雑誌 78(4):379-382 11. 西村実, 宮原研三, 森田竜平 (2007) 水稲の種子貯蔵タンパク質変異系統におけるタンパク質組成お よびその集積過程に及ぼす施肥法の影響 日本作物学会紀事 76(4):562-568 12. 野口友嗣, 細渕朗子, 高宮知子, 飯塚弘明, 村上康文, 山下秀次, 奥泉久人 (2007) コンニャク品種識 別マーカーの開発 DNA 多型 15:154-158 13. 小原直美, 光原一朗, 瀬尾茂美, 大橋祐子, 長谷川守文, 松浦雄介 (2007) 酵母抽出液(アグリボ EX) 処理による PR 遺伝子群発現誘導機構の解析 日本植物病理学会報 73(2):94-101 14. 岡田英二, 中島健一, 三澤利彦, 宮﨑栄子, 間瀬啓介, 髙林千幸 (2007) 家蚕繭の新たな特徴としての 光沢・色彩とその評価 日本シルク学会誌 16:83-89 15. 坂井真, 岡本正弘, 田村克徳, 梶亮太, 溝淵律子, 平林秀介, 深浦壮一, 西村実, 八木忠之 (2007) 玄米 品質に優れる暖地向き良食味水稲品種「にこまる」の育成について 育種学研究 9(2):67-73 16. 白井淳資, 宮下正光, 坂上万里子, 中島健一, 高林千幸, 町井博明 (2008) ウイルス除去効果を示す天 然素材カーボンシルク 日本獣医師会雑誌 61(1):48-54 17. 常山泉, 池嶋智美, 飯田のり子, 鶴井裕治, 田中幸夫, 原和二郎, 蜷木理 (2007) 蟻蚕の炭酸カルシウ ムに対する摂食反応性とその遺伝様式 蚕糸・昆虫バイオテック 76(1):55-61 18. 渡邊和洋, 新野孝男, 村山徹, 南條正巳 (2007) 移植前リン酸薗施用による水稲の初期生育促進 日 本作物学会紀事 76(2):181-188 19. 山口倫子, 美川智, 林武司, 中根崇, 神山佳三, 栗田崇 (2008) ランドレース種と大ヨークシャー種に よる F1 母豚およぴデュロック種種堆豚を用いて生産された三元交雑豚の親子判定に有効なマイクロ サテライトマーカーセットの作製 日本畜産学会報 79(1):19-27 32 平成 19 年度に係る業務実績報告書 資料 4 特許等取得・品種登録一覧 1.特許出願及び登録一覧 平成20年3月31日現在 1) 出願(国内) 番号 整理番号 発明の名称 1 独212 複合絹成形体とその製造方法 出願月日 H19.3.16 出願番号 備考 2007-068463 共願 2 新規タンパク質、該タンパク質をコードする遺伝 子、該遺伝子を含有する組換えベクター、及び 独217 該遺伝子により形質転換された形質変換体 H19.3.2 2007-052798 共願 3 遺伝子クラスタリング装置、遺伝子クラスタリン 独214 グ方法およびプログラム H19.3.9 2007-060745 共願 4 独178 超音波形質転換法 H19.4.5 2007-99922 (2006-107585) 単独 5 フィブロインスポンジの製造方法及びフィブロイ 独223 ンスポンジ体 H19.4.9 2007-101645 共願 6 作物の生育や花成の促進、種子肥大をもたら すイネZIMモチーフ遺伝子ファミリー並びにその 独219 利用法 H19.4.26 2007-117272 共願 7 独221 短日装置 H19.4.24 2007-113689 単独 8 独228 新規癌マーカーおよびその用途 H19.5.31 2007-146342 共願 H19.8.24 2007-218410 単独 9 独111-2 種子特異的プロモーターおよびその利用 10 独224 脂溶性生理活性物質の抽出方法 H19.8.24 2007-218986 共願 11 独227 植物の減数分裂期組換え位置を変更する方法 H19.8.23 2007-216916 単独 12 イネいもち病等の感染方法及びこれを用いるイ ネいもち病等抵抗性の効率的検定法 独225 (イネいもち病の効率的接種・検定法) H19.9.18 2007-241367 単独 13 遺伝子導入による内在性遺伝子の転写活性化 (遺伝子導入によって内在性遺伝子を活性化す 独199 る方法) H19.9.11 2007-235222 (2006-245164) 単独 14 独226 ダニ抗原米 15 抗微生物活性増強ペプチド及びそれを含む抗 微生物剤 独206 (抗微生物ペプチドの働きを増強するペプチド) H19.9.27 H19.10.12 1 2007-266864 単独 2007-251285 (2006-262408) 単独 16 タンパク質複合体の会合領域の空間を評価す る方法およびプログラムならびに解析装置 (蛋白質複合体の会合領域を検出する方法およ 独207 びその利用) H19.10.26 17 塩基配列決定プログラム、塩基配列決定装置 および塩基配列決定方法 独229 (塩基配列決定法) H19.10.31 2007-283480 単独 18 転写因子遺伝子の導入による植物の病害抵抗 独162 性の改良 H19.11.14 2007-517912 (2005-154731) 単独 19 キチンエリシター応答性を高めた植物及びその 作出方法 独232 (植物のエリシター応答性を高める方法) H19.11.19 2007-299266 単独 雌しべの各組織に特異的な活性を有するプロ 生84-1(分 モーター およびその利用 20 割) 2007-279664 (2006-291846) 単独 H19.7.3 2007-175685 (2000-620081) (JP99/02692) 共願 タバコのレトロトランスボゾンを利用した遺伝子 破壊法 生85-1(分 (COE) 21 割) (PCT出願) H19.6.8 2007-153382 (2000-620076) (JP99/02749) 単独 22 23 独241 成長が促進された形質転換植物 独111-3 種子特異的プロモーターおよびその利用 H19.12.6 2007-315953 共願 H20.2.4 2008-23486 単独 24 アブラナ科野菜根こぶ病菌による根こぶ形成時 独233 特異的プロモーター H20.1.30 2008-19879 共願 25 独239 動物由来DNA検出用プライマー配列 H20.1.25 2008-14900 共願 26 抗微生物活性ペプチド 独243 (新規の半合成抗微生物ペプチド) H20.2.21 2008-40590 単独 27 イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝 独248 子の利用 H20.2.29 2008-050901 単独 28 新規タンパク質、該タンパク質をコードする遺伝 子、該遺伝子を含有する組換えベクター、及び 独217 該遺伝子により形質変換された形質変換体 H20.3.3 29 植物色素体への遺伝子導入法 (葉緑体の誘導処理を行ったイネカルスの葉緑 独234 体への遺伝子導入法) H20.3.24 2008-75181 単独 30 独237 イネの感光性遺伝子Ehd3とその利用 2008-63300 共願 H20.3.12 2 2008-52699(2007-0 共願 2) 出願(外国) 番号 整理番号 発明の名称 出願月日 出願番号 出願国 1 独外82-1 単子葉植物の種子の形質転換法 H18.9.25 10/594130 米国 2 H19.5.16 11/804050 (10-719702) 米国 11/762586 米国 独外48 未分化細胞を選別する方法およびその利用 3 独外68-3 (分割) 種子特異的プロモーターおよびその利用 H19.6.13 4 生外160-7 種々の特性を持つイネペルオキシダーゼ (分割) (C0E) H19.7.2 5 独外70-1 (分割) 種子特異的プロモーターおよびその利用 H19.10.10 6 独外92-1 誘電体とその製造方法 H19.9.25 7 独外92-2 誘電体とその製造方法 H19.9.24 8 独外92-3 誘電体とその製造方法 H19.10.23 9 独外92-4 誘電体とその製造方法 H19.7.26 07012992.9 (PCT/JP00/08728) EP 2007221926 オーストラリア 11/909676 米国 2603194 カナダ 10-2007-7024357 韓国 欧州(フラン 6730011.1 ス、ドイツ) 転写因子遺伝子の導入による植物の病害抵抗 10 独外94-1 性の改良 H19.10.30 11/919864 米国 転写因子遺伝子の導入による植物の病害抵抗 11 独外94-2 性の改良 H19.12.18 6756642.2 EP イネいもち病罹病性遺伝子Pi21および抵抗性 12 独外95-1 遺伝子pi21ならびにそれらの利用 H19.12.27 11/922994 米国 生分解性生体高分子材料、その製造方法、お 独外40-2 よびこの高分子材料からなる機能性素材 13 (分割) (生分解性生体高分子およびその製造方法) 12/025524 米国 H20.2.4 イネいもち病罹病性遺伝子Pi21および抵抗性 14 独外95-2 遺伝子pi21ならびにそれらの利用 H20.1.18 減圧処理/加圧処理の使用を含むエレクトロ ポーレーション方法(PCT出願時に名称変更) (減圧処理または加圧処理と、エレクトロポー 独外39-8 レーションによる植物の形質転換方法) 15 (分割) (高電圧パルスによるコムギへの遺伝子導入系 H19.12.21 3 6757079.6 欧州 2007254642 オーストラリア 生分解性生体高分子材料、その製造方法、お 独外40-1 よびこの高分子材料からなる機能性素材 16 (分割) (生分解性生体高分子およびその製造方法) H20.2.4 3) 出願(PCT出願) 番号 番号 発明の名称 出願月日 チョウ目昆虫用人工飼料及びその製造方法、 チョウ目昆虫及びその製造方法、並びに生体物 1 独外99 質 H19.5.17 2 3 独外101 TRACP5bの製造方法 独外102 RSISを用いた簡便な遺伝子発現抑制方法 4 新規タンパク質、該タンパク質をコードする遺伝 子、該遺伝子を含有する組換えベクター、及び 独外103 該遺伝子により形質変換された形質変換体 H20.3.2 4) 登録(国内) 番号 番号 1 発明の名称 12/025484 米国 出願番号 備考 CT/JP2007/060145 H19.12.28 PCT/JP2007/75263 H20.1.17 T/JP20078/050481 登録日 麦類植物の受粉性の識別方法とその利用によ ④ 独75 る麦類植物の改良方法 H19.3.16 ④ H19.4.6 PCT/JP2008/53794 登録番号 備考 3928044 共願 2 天然生体高分子を含有するコンタクトレンズ及 蚕438 びその製造方法 3 植物プロトプラストによる非セルロース系カロース繊維体 ④ 生105 の産生方法とカロース繊維体 H19.3.30 3936522 共願 3936999 共願 4 生80 ナトリウム/プロトン対向輸送体遺伝子 ⑥ H19.5.18 3955938 単独 5 花粉特異的ジンクフィンガー転写因子の遺伝子を用 ⑤ 生97 いて花粉稔性を低下させる方法 H19.5.11 3952246 共願 6 MADSボックス遺伝子を標的とした植物の花型 ⑤ 生107 の改良 H19.4.13 3943321 共願 ⑥ H19.6.1 7 独32 病害抵抗性イネ科植物 8 任意のペプチドを植物のタンパク顆粒で蓄積さ ⑤ 独34 せる方法 H19.4.13 4 3964701 共願 3940793 単独 独68 嵩高生糸の製造法及びその製造装置 ⑤ H19.5.11 3950962 単独 10 独40 ゴマダラカミキリの性刺激剤 ⑩ H19.10.12 4023721 単独 11 ブラシノステロイドの生合成に関与しているシト クロムP450モノオキシゲナーゼ遺伝子の改変 および/または過剰発現による単子葉植物の 形質の制御方法およびこの遺伝子を用いて改 ⑩ 独56 変された単子葉植物 H19.9.21 4015911 共願 ⑩ H19.10.5 4019147 単独 9 12 独111 種子特異的プロモーターおよびその利用 13 ⑩ H19.10.19 生108 イネ貯蔵タンパク質の発現を制御するbZIP型転写 4028956 共願 14 蚕439 イチモンジカメムシの誘引剤 ⑫ H19.11.30 4045380 共願 15 生115 アセト乳酸シンターゼ遺伝子をコードする遺伝子 H20.3.7 5) 登録(外国) 番号 番号 発明の名称 登録日 4091429 共願 登録番号 登録国 1 坑微生物蛋白質、それをコードする遺伝子及び それらの利用法 ④ 独26-2 (抗菌性蛋白質) H19.4.4 EP (フランス 1443054 ドイツ) 2 新たな機能を持つジベレリン2-酸化酵素遺伝 子およびその利用 (イネの新たな機能をもつジベレリン2β水酸化 ④ 独外32 酵素の遺伝子) H18.12.26 7154028 米国 3 ④ 独外50 絹タンパクから細胞生育ペプチドの抽出と利用 H19.3.2 7193038 米国 4 生外29 C4植物の光合成酵素を発現するC3植物体 MADSボックス遺伝子を標的とした植物の花型 5 生外166-3 の改良 5 ④ H19.2.13 2219962 カナダ ④ H19.1.9 2406820 カナダ ⑤ H19.3.14 6 生外135-3 植物の感光性遺伝子およびその利用 栄養成長特異的プロモーターおよびそれにより得ら ⑤ 7 生外149-1 れた遺伝子組換え植物 H19.2.13 8 生外156 キレート剤を含むヘリコバクターピロリ菌用抗菌剤 ⑤ H19.5.1 植物の病斑形成を抑制する遺伝子Spl7および ⑥ 9 生外168-2 その利用 H19.3.14 1229118 EP (フラン ス) 7176347 米国 2340545 カナダ 1325956 EP 植物の開花を誘導する遺伝子Hd3aおよびその ⑥ 10 生外169-1 利用 H19.3.27 7196246 米国 アセト乳酸シンターゼ遺伝子をコードする遺伝 11 生外170-1 子 I280279 台湾 ⑥ H19.5.1 12 ⑤ 独外15 植物の再分化能に関与する遺伝子およびその利H19.3.13 7189890 米国 13 ⑤ 独外22 低温ストレスに応答するCRTintP遺伝子およびそH19.3.6 7186888 米国 14 ⑥ 独外23 低温ストレスに応答するCRTintP遺伝子およびそH19.5.1 2408224 カナダ 15 ⑥ 独外35-8 遺伝子組換えカイコを利用した生理活性タンパクH19.2.26 16 独外38-3 ストレスに応答する根特異的遺伝子 17 18 韓国 10-0689932 (分割) ⑤ H19.2.22 2003234937 オーストラリア ⑤ H19.2.30 7192774 米国 遺伝子組換えカイコを利用した生理活性タンパ ク質生産法 (サイトカイン遺伝子組換えカイコおよびそのタン パク質の製造方法ならびに昆虫への遺伝子導 ⑦ 独外35-4 入ベクターおよび遺伝子産物製造法) H19.5.23 10-0723565 韓国 独外68 種子特異的プロモーターおよびその利用 6 19 20 ペチュニアの転写因子PetSPL2の遺伝子の導 入によって花序の節間を短縮させる方法 ⑦ 生外51-1 (分割出願) H19.6.5 生外116 ナトリウム/プロトン対向輸送体遺伝子 ⑦ H19.4.11 RE39685 米国 ZL99816068.7 中国 イネ由来のジベレリン2β水酸化酵素遺伝子お よびその利用 ⑦ 21 生外143-6 (COE) H19.5.16 1245680 EP イネ貯蔵タンパク質の発現を制御するbZIP型転 ⑦ 22 生外167-1 写因子 H19.5.8 7214851 米国 23 任意のペプチドを植物のタンパク顆粒で蓄積さ せる方法(イネ胚乳組織のタンパク顆粒PB-1で 外来遺伝子産物の蓄積に必要なアミノ酸配列 ⑧ 独外37-2 の同定とその利用) H19.4.12 イネ貯蔵タンパク質の発現を制御するbZIP型転 ⑨ 24 生外167-2 写因子 H19.6.5 25 独外73 アセト乳酸合成酵素遺伝子プロモーター ⑨ H19.7.3 26 植物の開花時期を促進するEhd1遺伝子および ⑨ 独外36-3 その利用 H19.7.26 27 緑きょう病菌由来エクジステロイド22位酸化酵素と 蚕外27-1 それを用いた脱皮ホルモン不活性化システム 28 生外136-3 植物の感光性遺伝子Hd1およびその利用 29 30 7 2394018 カナダ 7238864 米国 2003242341 オーストラリア ⑩ H19.3.20 7192754 米国 ⑩ H19.8.7 7253339 米国 ⑩ 独外2-2 所望の部位において発現する遺伝子のスクリーニ H19.8.14 タバコのレトロトランスポゾンを利用した遺伝子 ⑪ 生外95 破壊法 H19.9.18 イネ由来高発現型ポリペプチド鎖延長因子プロ 31 生外150-1 モーターおよびその使用方法 MADSボックス遺伝子を標的とした植物の花型 32 生外166-2 の改良 緑きょう病菌由来エクジステロイド22位酸化酵素と 33 蚕外27-3 それを用いた脱皮ホルモン不活性化システム 2003235249 オーストラリア ⑪ H19.9.18 ⑪ H19.10.16 ⑫ H19.10.31 7255990 米国 7271314 米国 7271003 米国 7282622 米国 PCT(EP 1362915 C) 34 35 ブタについてRNAウイルス由来の疾病に対する ① 独外46-3 遺伝的抵抗性を知る方法 H19.8.9 独外70 種子特異的プロモーターおよびその利用 ① H19.10.25 植物の病班形成を抑制する遺伝子Spl7および ② 36 生外168-3 その利用 H19.12.4 37 生外170- アセト乳酸シンターゼ遺伝子をコードする遺伝 10 子 ② H19.11.9 38 アセト乳酸シンターゼ遺伝子をコードする遺伝 独外27-5 子 ② H20.1.4 39 遺伝子組換えカイコを利用した生理活性タンパ ク質生産法 ③ 独外35-6 H20.2.14 2003275705 オーストラリア 2004224913 オーストラリア 2,395,453 カナダ 211,787 インド 2,003,207,101 オーストラリア 2003211765 オーストラリア 40 生外113-1 ナトリウム/プロトン対向輸送体遺伝子 ③ H20.2.5 7326827 米国 アセト乳酸シンターゼ遺伝子をコードする遺伝 41 生外170-6 子 ③ H20.2.14 2002214303 オーストラリア 植物の病斑形成を抑制する遺伝子Spl7および ③ 42 生外168-1 その利用 H20.2.12 7329544 米国 6) 実用新案出願 番号 番号 発明の名称 出願月日 出願番号 備考 1 独実5 セリシン繭層回収装置 H19.4.12 2007-2585 共願 2 独実6 スライド式スケール H19.7.9 2007-005258 単独 発明の名称 登録日 登録番号 備考 1 独実5 セリシン繭層回収装置 H19.5.30 3132883 共願 2 独実6 スライド式スケール H19.8.29 3135560 単独 7)実用新案登録 番号 番号 ※出願(国内)、登録(国内)、登録(外国)には、発明者の転出により中課題の担当者でない記録も含む。 ※出願(外国)、登録(外国)の「発明の名称」の( )内は国内特許の名称を指す。 8 2.品種登録・命名登録一覧 1) 出願 番号 整理番号 農林水産植物の種類及び名称 1 独品26 稲(関東HD2号) 2 独品27 稲(コシヒカリ富山BL7号) 出願日 H19.9.28 H20.1.30 2) 登録(国内) 番号 番号 農林水産植物の種類及び名称 1 独品17 ばら(ひたちスマイル) 2 独品20 ばら(ひたちポエニー) 登録日 H19.10.22 H19.10.22 9 出願番号 備 考 21536 農研機構 22072 富山県 登録番号 第15714号 第15715号 備 考 沖縄県 沖縄県 平成 19 年度に係る業務実績報告書 資料 5 主要な研究成果 平成19年度主要研究成果採択課題一覧 分野 センター・ユニット 成果名 成果の要約 分類 1 植物 日本型品種「ササニシキ」の遺伝的背景に多収性インド型品種「ハバタキ」の染色体断片 QTLゲノム育種研究セ イネ染色体断片置換系統群の作出 を置換した系統群を作出し、一穂籾数などシンクサイズに関わる穂形態関連QTLを多数 知的貢献 ンター と穂形態形質の遺伝解析 検出した。各QTLの効果は小さく、一穂籾数に対して独立かつ相加的に作用することが明 技術開発 らかとなった。 2 植物 遺伝子組換え作物開 発センター イネ種子を基盤とする経口コレラワ クチンの開発 3 植物 耐病性研究ユニット イネの誘導抵抗性に関わる転写因 子WRKY45の発見とその利用 4 植物 5 植物 6 昆虫 7 昆虫 8 昆虫 9 昆虫 10 動物 コレラワクチンを種子に蓄積する遺伝子組換えイネを開発した。このイネの種子をマウス へ経口投与した結果、コレラ毒素に対する防御抗体が産生され、下痢の症状が抑えられ たことから、経口コレラワクチンとしてのイネ種子の有効性が明らかになった。 イネにおいて抵抗性誘導剤ベンゾチアジアゾールの作用に必須の役割を担う転写因子 WRKY45を見出し、この転写因子を過剰発現させたイネが、プライミング効果によりいもち 病および白葉枯病に極めて強い抵抗性を示すことを明らかにした。 ToMV抵抗性遺伝子Tm-1 をもつトマトの細胞抽出液に、試験管内ToMV RNA複製阻害 植物・微生物間相互作 トマトモザイクウイルス (ToMV) のゲ 活性を検出し、これを精製することによりTm-1 遺伝子産物を同定した。さらにこのタン 用研究ユニット ノム複製を阻害する遺伝子を同定 パク質が、ToMVのRNA複製を司るタンパク質に結合して、その働きを阻害することを明ら かにした。 遺伝子組換え技術研 遺伝子組換 え技術研 イネ遺伝子のピンポ イネ遺伝子のピンポイント イント改変によ 改変によ 標的遺伝子をピンポイントで改変することにより 標的遺伝子をピンポイントで改変することにより、除草剤に耐性のイネを育成することに 除草剤に耐性のイネを育成することに 究ユニット る除草剤耐性の付与 成功した。 遺伝子組換えカイコ研 遺伝子組換えカイコを利用したネコ 究センター インターフェロンの生産 遺伝子組換えカイコを用いてタンパク質生産をより効率的にするため、フィブロインH鎖遺 伝子を利用した発現ベクターを作成し。ネコインターフェロンの生産を試みた。このベク ターはフィブロインH鎖遺伝子のN末とC末の配列の間に目的とするタンパク質をコードす る塩基配列を挿入するという特徴を持ち、目的遺伝子をカイコに導入しところ、大量のタン パク質を生産できることが分かった。また、プロテアーゼの切断部位を利用することによ り、活性の高いネコインターフェロンを調製できることが示された。 1755個のBACマーカーをマップした高密度BACマーカー連鎖地図を作成した。BACクロー ン約8万個のフィンガープリントからBACコンティグを作成し、BACマーカーを用いて連鎖 地図に貼付け、染色体の76%をBACクローンでカバーするカイコゲノム統合地図を作成し た カイコゲノム情報を利用して幼若ホルモン(JH)生合成前期経路の遺伝子を全て同定し、 制御剤標的遺伝子研 カイコの幼若ホルモン前期生合成酵 ファルネシルピロリン酸シンターゼが3種存在することを見出した。前期遺伝子の大多数 究ユニット 素遺伝子群の同定と発現解析 がアラタ体で強く発現しており、またアラタ体での発現レベルとJH合成活性の間に一定の 相関が認められた。 トレハローストランスポーター遺伝子 トレハロースを細胞に大量に蓄積するネムリユスリカという昆虫において、トレハロースを 乾燥耐性研究ユニット の単離と機能解析 特異的に細胞膜の内外に輸送する遺伝子の単離に世界で初めて成功した。 ブタの椎骨数に関与する量的形質遺伝子座(QTL)に位置する遺伝子が核内受容体 Germ Cell Nuclear Factor (NR6A1)であることを明らかにした。NR6A1にはQTLタイプに対 家畜ゲノム研究ユニッ ブタの椎骨数を決める責任遺伝子 応するアミノ酸置換があり、その原因となるSNPによりDNAマーカー選抜が可能となった。 ト の同定 また体節形成期のマウス胚において、椎骨のもととなる体節内にNR6A1の発現が認めら れた。 昆虫ゲノム研究・情報 カイコゲノム統合地図 解析ユニット 知的貢献 技術開発 技術開発 知的貢献 知的貢献 技術開発 生物産業 知的貢献 知的貢献 知的貢献 知的貢献 技術開発 平成19年度の主要な研究成果 農業生物資源研究所 主要成果一覧 <植物生命科学研究> 1 イネ染色体断片置換系統群の作出と穂形態形質の遺伝解析 (QTL ゲノム育種研究センター) 2 イネ種子を基盤とする経口コレラワクチンの開発 (遺伝子組換え作物開発センター) 3 イネの誘導抵抗性に関わる転写因子 WRKY45 の発見とその利用 (耐病性研究ユニット) 4 トマトモザイクウイルス (ToMV) のゲノム複製を阻害する遺伝子を同定 (植物・微生物間相互作用研究ユニット) 5 イネ遺伝子のピンポイント改変による除草剤耐性の付与 (遺伝子組換え技術研究ユニット) <昆虫・動物生命科学研究> 6 遺伝子組換えカイコを利用したネコインターフェロンの生産 (遺伝子組換えカイコ研究センター) 7 カイコゲノム統合地図 8 カイコの幼若ホルモン前期生合成酵素遺伝子群の同定と発現解析 (制御剤標的遺伝子研究ユニット) 9 トレハローストランスポーター遺伝子の単離と機能解析 (乾燥耐性研究ユニット) 10 ブタの椎骨数を決める責任遺伝子の同定 (昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット) (家畜ゲノム研究ユニット) 1 [主 要 研 究 成 果 名 ]イネ染 色 体 断 片 置 換 系 統 群 の作 出 と穂 形 態 形 質 の遺 伝 解 析 [要 約 ]日 本 型 品 種 「ササニシキ」の遺 伝 的 背 景 に多 収 性 インド型 品 種 「ハバタキ」の染 色 体 断 片 を置 換 した系 統 群 を作 出 し、一 穂 籾 数 などシンクサイズに関 わる穂 形 態 関 連 QTL を 多 数 検 出 した。各 QTL の効 果 は小 さく、一 穂 籾 数 に対 して独 立 かつ相 加 的 に作 用 することが 明 らかとなった。 [キーワード]イネ、染 色 体 断 片 置 換 系 統 群 、シンクサイズ、穂 形 態 、QTL、準 同 質 遺 伝 子 系 統 [担 当 ]農 業 生 物 資 源 研 究 所 ・QTL ゲノム育 種 研 究 センター [連 絡 先 ]029-838-7135 [分 類 ]知 的 貢 献 、技 術 開 発 [背 景 ・ねらい] イネのシンクサイズ増 加 に重 要 な穂 形 態 形 質 に関 する遺 伝 学 的 研 究 は QTL 解 析 手 法 の発 展 に伴 って数 多 く報 告 されている。しかしながら多 収 インド型 品 種 と日 本 型 品 種 の収 量 差 の要 因 とされる穂 長 や粒 数 の差 を完 全 に説 明 できているとは言 い難 い。本 研 究 では、日 本 型 品 種 「ササニシキ」の遺 伝 的 背 景 にインド型 品 種 「ハバタキ」の染 色 体 断 片 を導 入 した染 色 体 断 片 置 換 系 統 群 (CSSLs)を作 出 するとともに、それらを用 いて穂 形 態 関 連 QTL の網 羅 的 な検 出 を 行 った。さらに、検 出 された QTL の集 積 によるシンクサイズ増 大 の可 能 性 を検 討 した。 [成 果 の内 容 ・特 徴 ] 1.日 本 型 品 種 「ササニシキ」を遺 伝 的 背 景 として、多 収 性 インド型 品 種 「ハバタキ」の染 色 体 断 片 を置 換 することでゲノムのほぼ全 領 域 をカバーした 39 系 統 からなる染 色 体 断 片 置 換 系 統 群 (CSSLs)を作 出 した(図 1)。 2.CSSLs を用 いて 5 つの穂 形 態 形 質 (一 穂 粒 数 、一 次 枝 梗 数 、二 次 枝 梗 数 、穂 長 および一 次 枝 梗 長 )に関 連 する QTL を網 羅 的 に検 出 した。QTL は第 11 染 色 体 を除 く全 染 色 体 に分 布 し、その数 は、ハバタキ対 立 遺 伝 子 がシンクサイズを増 加 させる QTL が 21 箇 所 、減 少 させる QTL が 17 箇 所 であった(図 1)。 3.第 1 染 色 体 の二 次 枝 梗 数 を増 加 させる QTL(qSBN1)と第 6 染 色 体 の一 次 枝 梗 数 を増 加 させる QTL(qPBN6)について準 同 質 遺 伝 子 系 統 (QTL-NILs)およびそれらの集 積 系 統 を作 出 した(図 2A)。2 つの QTL は独 立 かつ相 加 的 に働 くことで一 穂 粒 数 を増 加 させることが明 ら かとなった(図 2B) [成 果 の活 用 上 の留 意 点 、波 及 効 果 、今 後 の展 望 等 ] 1.作 出 した CSSLs は、出 穂 期 や稈 長 の変 異 が小 さい恒 久 的 な実 験 系 統 群 であり、収 量 性 ば かりでなく他 の形 質 の遺 伝 研 究 にも利 用 できる。 2.作 用 力 の大 きな QTL は単 独 でもシンクサイズを増 大 させることができ、さらにはその集 積 効 果 も期 待 できる。しかしながら作 用 力 の小 さな多 数 の QTL をひとつずつ積 み上 げて集 積 するこ とは労 力 的 に困 難 である。 3.CSSLsの種 子 は遺 伝 子 型 情 報 と合 わせて農 業 生 物 資 源 研 究 所 ゲノムリソースセンターより 入 手 できる( http://www.rgrc.dna.affrc.go.jp/jp/ )。 [具 体 的 データ] CSSLs No. SL401 SL402 SL403 SL404 SL405 SL406 SL407 SL408 SL409 SL410 SL411 SL412 SL413 SL414 SL415 SL416 SL417 SL418 SL419 SL420 SL421 SL422 SL423 SL424 SL425 SL426 SL427 SL428 SL429 SL430 SL431 SL432 SL433 SL434 SL435 SL436 SL437 SL438 SL439 SN PBN SBN PBL chr.1 B B B B B B B B B B B B B B B B B chr.2 PBL B B B B B B B B B B B chr.3 SN PL PBL B B B B B B B B H PBL B B B B B B PBL(* PBN (* chr.6 chr.7 chr.8 chr.9 chr.10 SN SBN PBL B B B B B B chr.12 SN PBN PL PBL H H SN B B B SBN B B B B B B B SN SBN PBN SBN B B B B B SN 2005 B B B B B B B B B SN SBN PL chr.11 H H SBN chr.5 B SBN B B B SN chr.4 B B B B B SN PL PBL PBL B B B B B B B B B B B B B B B B SBN B B B B B PBN B B B B B B H B B B B B SN SBN PBL B B B B B B B B B B B B B B PBN B B SN PBN PL PBL B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B B PBL B B B B B B B B B B B SN B B B B B SN SBN PBL B SBN H SN PBN PL H 2004 B PL PBL B B B B B B B B B B B B B B H B B B B B B SBN PBL SBN B B B B H B B B B B B B B B PBN PL PBL B B B B B B B SN B B B PBL H B B B B PBL B B B B B B B B PBN B B B B B SBN B B SBN B B B B B B B H H B B B B B B B B B B ササニシキ型 XXX ハバタキ型 ハバタキ断片により値が増加する XXX 遺伝子型不明 SBN SN PBL ハバタキ断片により値が減少する PBN 図 1.ササニシキとハバタキの染 色 体 断 片 置 換 系 統 群 のグラフ遺 伝 子 型 および 2 年 間 で検 出 した穂 形 態 関 連 QTL。SN は一 穂 粒 数 、PBN は一 次 枝 梗 数 、SBN は二 次 枝 梗 数 、PL は穂 長 、PBL は一 次 枝 梗 長 を表 す。 A B 二次枝梗数 (SBN) a a ササニシキ NIL(PBN6) b NIL(SBN1) b NIL(SBN1+PBN6) 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 一次枝梗数 (PBN) a ササニシキ NIL(PBN6) b a NIL(SBN1) b NIL(SBN1+PBN6) 5.0 7.0 9.0 11.0 13.0 15.0 一穂籾数 (SN) 図 2.(A)ササニシキ遺 伝 背 景 にハバタキ由 来 の 2 種 類 の穂 形 態 関 連 QTL を導 入 した準 同 質 遺 伝 子 系 統 (QTL-NILs)およびその 集 積 系 統 のグラフ遺 伝 子 型 (上 )および穂 形 態 (下 )。(B) QTL-NILs およびその集 積 系 統 の二 次 枝 梗 数 、一 次 枝 梗 数 およ び一 穂 籾 数 に対 する効 果 a ササニシキ b NIL(PBN6) c NIL(SBN1) d NIL(SBN1+PBN6) 0 50 100 150 200 250 [その他 ] 研 究 課 題 名 :遺 伝 子 探 索 のためのイネ染 色 体 断 片 置 換 系 統 群 の作 出 と評 価 、イネの多 収 性 関 連 形 質 に関 する DNA マーカー選 抜 技 術 の開 発 /イネシンクサイズに関 与 する遺 伝 子 のマッ ピングとピラミディング 予 算 区 分 :農 水 委 託 「DNA マーカー」、中 期 計 画 課 題 コード:A01、研 究 期 間 :2002~2006 年 度 。農 水 委 託 「QTL」、中 期 計 画 課 題 コード:A01、研 究 期 間 :2005~2007 年 度 研 究 担 当 者 :山 本 敏 央 、矢 野 昌 裕 、安 藤 露 (農 林 水 産 先 端 研 )、清 水 武 彦 (農 林 水 産 先 端 研 ) 発表論文等: Ando T, Yamamoto T, Shimizu T, Ma XF, Shomura A, Takeuchi Y, Lin SY, Yano M (2008) Genetic dissection and pyramiding of quantitative traits for panicle architecture by using chromosomal segment substitution lines in rice. Theor Appl Genet (in press) 5 [主要研究成果名]イネ種子を基盤とする経口コレラワクチンの開発 [要約]コレラワクチンを種子に蓄積する遺伝子組換えイネを開発した。このイネの種子を マウスへ経口投与した結果、コレラ毒素に対する防御抗体が産生され、下痢の症状が抑えら れたことから、経口コレラワクチンとしてのイネ種子の有効性が明らかになった。 [キーワード]遺伝子組換えイネ、種子、経口ワクチン、コレラ [担当]農業生物資源研究所・遺伝子組換え作物開発センター [連絡先]029-838-8373 [分類]技術開発 -------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] コレラ毒素 B サブユニット (CTB) は、コレラ感染を予防するための有効かつ安全な経口 ワクチンとして注目され、CTB を経口投与するヒト臨床試験も実施されている。そこで本研 究では、イネの遺伝子組換え技術を活用して、種子の中に CTB を蓄積する遺伝子組換えイ ネを開発するとともに、イネ種子をマウスへ経口投与する試験を行い、経口コレラワクチン として、CTB を蓄積するイネ種子の有効性を評価した。 [成果の内 容 ・ 特 徴 ] 1.イネ種子貯蔵蛋白質であるグルテリンのプロモーターを利用して、イネ種子の中に CTB を蓄積させるためのプラスミドを作製し (図 1)、遺伝子組換えイネを作出した。 2.CTB を蓄積するイネ種子の有効性を評価するため、マウスへの経口投与試験を実施した。 その結果、CTB を蓄積するイネ種子の経口投与により、コレラ感染の防御に必須である 腸管粘膜表面への抗 CTB IgA 抗体の分泌が誘導された (図 2)。 3.さらに、CTB を蓄積するイネ種子を経口投与したマウスでは、コレラ毒素による下痢の 症状が顕著に抑えられた (図 3)。これらの結果から、経口コレラワクチンとして、CTB を蓄積するイネ種子の有効性が明らかになった。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] 1. 本研究により、低コストで負担の少ない、新しい経口ワクチンの生産・投与方法として のイネ種子の利用可能性が示された。また、未だ不明な点の多い腸管免疫応答に関する基 礎医学的研究にも、新規素材の提供を通しての貢献が期待できる。 2. 消費者が実感できるメリットを備えた遺伝子組換え技術・遺伝子組換え農作物の開発に もつながることが期待される。 3. 今後の実用化へ向けては、イネの野外栽培試験に加えて、医学的・社会学的観点からの 慎重な試験・調査が必要である。 [具体的データ] コレラ毒素 B サブユニット (CTB) グルテリン GluB-1 プロモーター グルテリン GluB-1 シグナルペプチド KDEL グルテリン GluB-1 ターミネーター 図 1. 発現プラスミドの構造 Diarrhea volume (µl) 5 Log2 titer 4 3 2 800 700 600 500 1 18.75 37.5 75 150 CTB Dose (µg) 図 2. 腸管粘膜表面へ分泌された抗 CTB IgA 抗体の量。CTB rice の投与により、 感 染 の 防 御 に 必 須 で あ る IgA抗 体 が 分 泌 された。 ■: CTB rice (CTB を蓄積するイネ種子) □: rCTB (精製した CTB 蛋白質) ★★ : P < 0.01 CTB Rice rCTB WT Rice PBS 図 3. コレラ毒素による下痢の症状。CTB rice の投与により、下痢の症状が顕著に抑 えられた。WT Rice: 遺伝子組換えでない イネ種子、PBS: 生理食塩水、★: P < 0.05 [その他] 研究課題名:健康機能性作物や有用物質高度生産技術の開発 予算区分:アグリバイオ、中期計画課題コード:C12、研究期間:2004~2007年度 研究担当者:高岩文雄、高木英典、楊麗軍 発表論文等:Nochi T, Takagi H, Yuki Y, Yang L, Masumura T, Mejima M, Nakanishi U, Matsumura A, Uozumi A, Hiroi T, Morita S, Tanaka K, Takaiwa F, Kiyono H (2007) Rice-based mucosal vaccine as a global strategy for cold-chain- and needle-free vaccination Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(26):10986-10991 [ID:1839]. 6 [主要研究成果名]イネの誘導抵抗性に関わる転写因子WRKY45の発見とその利用 [要約]イネにおいて抵抗性誘導剤ベンゾチアジアゾールの作用に必須の役割を担う転写因 子WRKY45を見出し、この転写因子を過剰発現させたイネが、プライミング効果によりいもち 病および白葉枯病に極めて強い抵抗性を示すことを明らかにした。 [キーワード]イネ、抵抗性誘導剤、転写因子、いもち病、白葉枯病 [担当]農業生物資源研究所・植物科学研究領域・耐病性研究ユニット [連絡先]029-838-8383 [分類]技術開発・知的貢献 -----------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] ベンゾチアジアゾール(BTH)などの抵抗性誘導剤は、植物の防御応答シグナル伝達経路 (サリチル酸経路)に作用し、プライミング効果により病害抵抗性を高めることが知られて いる。この過程において、多数の防御遺伝子を統括的に制御し、プライミング効果のキーと なる転写因子の存在が想定された(図1)。本研究では、抵抗性誘導剤BTHの作用の中核を 担う転写因子を同定し、これを用いてイネの耐病性を飛躍的に向上させ、無農薬栽培を実現 するための手法を開発することを目指した。 [成果の内容・特徴] 1. イネにおいて、BTHにより発現誘導される転写因子WRKY45(ワーキー45)を同定した。RNAi 法によりWRKY45遺伝子を発現抑制したイネでは、BTHによるいもち病抵抗性誘導が失われるこ とから、本転写因子がBTHの作用に必須であることが示された(図1)。また、WRKY45は約300 種の防御遺伝子を制御していることがわかった(図1) 2. 構成的プロモーター(トウモロコシ・ユビキチン・プロモーター)の制御下にWRKY45遺伝子 をイネで過剰発現させた結果(WRKY45-oxイネ)、いもち病(糸状菌病)に対して極めて強い 抵抗性が認められた(図2)。WRKY45-oxイネのいもち病抵抗性の強さは極強品種の「戦捷」 よりも強いことがわかった。 3. WRKY45-oxイネは、細菌病の白葉枯病にも極めて強い抵抗性を示した(図2)。このことから、 BTHなどの抵抗性誘導剤と同様、WRKY45-oxイネは多種の病害に対して抵抗性を有すると考え られる(複合病害抵抗性)。 4. 防御応答に関わる転写因子の過剰発現は生育障害をともなう場合が多いが、WRKY45-oxイネは、 プライミング効果により抵抗性反応が病原体感染後に活性化するため、生育障害が比較的少 ない(図1、図3)。しかしながら環境の影響により恒常的に抵抗性反応が誘導され、生育 障害が強くなる場合があることがわかった(図3)。 5. イネのサリチル酸経路は、サリチル酸の下流でWRKY45の経路とOsNPR1の経路に分岐して いることがわかった(図4)。この点でモデル植物シロイヌナズナのサリチル酸経路と は明らかに異なり、イネは、おそらく単子葉植物に特有のより高度な病害応答制御機構 を有することが示唆された。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] 1. 環境により影響を受ける生育遅延を最小化するため、プロモーターの検討等により導入 WRKY45の発現レベルを最適化する必要がある。 2. 飼料用イネへの導入により、実用化が期待される。 3. WRKY45の機能は広くイネ科作物に応用できる可能性が高いと考えられ、コムギやトウモ ロコシへの応用が期待できる。 [具体的データ] 図1.BTHによるプライミングにおける転写因 子WRKY45の役割。 図 2.WRKY45-oxイネのいもち病および白葉枯 病抵抗性。いもち病抵抗性(A)および白葉 枯病抵抗性 (B)。いもち病抵抗性は極強の 抵抗性品種‘戦捷’より強い(C)。 図3.WRKY45-ox イネの生育と遺伝子発現に及ぼ す生育環境の影響。温室育成 WRKY45-ox イネでは 抵抗性反応の指標となる PR1b および PR2 が発現 しないが、人工気象室生育 WRKY45-ox イネでは PR1b および PR2 が発現し、初期生育が遅延した。 図4.イネの SA 経路は SA の下流で分岐してい る。シロイヌナズナでは、SA 下流の遺伝子の 99%以上が NPR1 に制御されているのに対し、イ ネでは WRKY45 と OsNPR1 の経路に分岐している。 [その他] 研究課題名:病害抵抗性に関与する転写因子の同定と作用機構の解明 予算区分:重要形質IP4006、中期計画課題コード:B13、研究期間:2003-2007年度 研究担当者:高辻博志、霜野真幸、菅野正治、中山明、姜昌杰、林長生、加来久敏 発表論文等: 1) Shimono M, Sugano S, Nakayama A, Jiang C-J, Ono K, Toki S and Takatsuji H (2007) Rice WRKY45 Plays a Crucial Role in Benzothiadiazole-Inducible Blast Resistance. Plant Cell 19: 2064-2076. 2) 特許申請:国内出願 高辻博志、菅野正治、霜野真幸、姜昌杰、加来久敏「転写因子遺伝子の 導入による植物の病害抵抗性の改良」特願2007-517912(および同国際出願) 8 [主要研究成果名]トマトモザイクウイルス (ToMV) のゲノム複製を阻害する遺伝子を同定 [要約]ToMV抵抗性遺伝子Tm-1 をもつトマトの細胞抽出液に、試験管内ToMV RNA複製阻害 活性を検出し、これを精製することによりTm-1 遺伝子産物を同定した。さらにこのタンパク質 が、ToMVのRNA複製を司るタンパク質に結合して、その働きを阻害することを明らかにした。 [キーワード]トマト、トマトモザイクウイルス、抵抗性遺伝子 [担当]農業生物資源研究所・植物科学研究領域・植物・微生物間相互作用研究ユニット [連絡先]029-838-7009 [分類]知的貢献 -------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] ウイルスに対する抵抗性を付与する植物遺伝子は、作物をウイルスによる病害から守るために 広く利用されている。これまでに多くの抵抗性遺伝子が同定されたが、そのほとんどは、感染を 感知してウイルスに対する防御反応を活性化するスイッチの働きを担うものであった。ToMVに 対する抵抗性遺伝子Tm-1 は、これらとは異なった機構でToMVの増殖を阻害していることが示 唆されていたが、組み換え頻度が極端に低い染色体領域に座乗しているため、遺伝学的な位置情 報に基づいて同定することができず、その実体は謎に包まれたままであった。本研究では、試験 管内ToMV RNA翻訳・複製系を用いてTm-1 の作用機作の解明と遺伝子産物の同定を試みた。 [成果の内 容 ・ 特 徴 ] 1.タバコの細胞抽出液を用いた試験管内ToMV RNA翻訳・複製系に、Tm-1 トマトの細胞抽出 液を添加すると、複製反応が阻害されることを見いだした。 2.Tm-1 トマトの細胞抽出液から、試験管内ToMV RNA複製を阻害する活性を担う因子を、各 種カラムクロマトグラフィー等による6段階の分画操作を経て精製し、分子量約8万のタン パク質 (p80) を同定した(図1)。さらに、試験管内翻訳により合成したp80が、試験管内 ToMV RNA複製阻害活性をもつことを確認した(図2)。p80は、ToMVがコードし、RN A複製を司るタンパク質(130-kDa, 180-kDa複製タンパク質)の合成あるいは蓄積には 影響を与えなかった。 3.p80をコードする遺伝子が Tm-1 と遺伝学的に共分離すること、Tm-1 トマトにおいてp 80遺伝子をノックダウンするとToMVの増殖が許容されること、ToMV感受性トマトでp 80を発現させるとToMVに対して抵抗性となること(図3)から、 Tm-1 がp80をコー ドすることが明らかとなった。 4.p80 (Tm-1) はToMVの130-kDaタンパク質に結合した(図4)。また、一旦ToMVのR NA複製複合体が生体膜上に形成されてしまうと複製を阻害できなかった。従ってTm-1 は、複製タンパク質に結合して複製複合体の形成過程を阻害すると考えられた。 Tm-1 遺伝子のこれらの性質は、これまでに同定された植物ウイルス抵抗性遺伝子のいずれとも異 なるユニークなものである。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] これまでの植物-病原体相互作用に関する研究の多くは、病原体の増殖を許容する宿主あるい は病原体に対する検知可能な抵抗性反応が誘導される宿主を使って行われてきた。今回の結果は、 接触しても「何も起こらない」病原体と植物の組み合わせにおいて、植物が、病原体の増殖を抑 制する因子を予め備えている場合があることを示している。ある病原体の増殖を全く許容しない 生物が、その病原体に対する増殖阻害因子を備えている場合がいかに遍く存在しているかを明ら かにすることは今後の課題である。もし広く存在するならば、この視点から研究を進めることに より、新規抵抗性遺伝子が多数発見されることが期待される。 [具体的データ] 図3 p80の発現によるToMV抵抗性の付 与.ToMV感受性トマトでp80を発現させ、 図1 Tm-1の精製.Tm-1 トマト細胞抽 ToMVを接種した(右)。左は非形質転換 出液を各種クロマトグラフィーによっ コントロール植物で、同時にToMVを接種 て分画し、最終精製標品である MonoQ したものである。右側の植物は、p80によ カラム溶出画分に含まれるタンパク質 ってToMVの増殖が抑制され、健全に生育 をSDS-PAGEにて解析した。画分6,7 した。 にTm-1活性が検出された。 図2 試験管内合成したp80によるToMV 図4 p80とToMV複製タンパク質の結合. RNA複製の阻害. ToMV複製タンパク質と、FLAGタグを付し 'wt' はTm-1 感受性のToMV野生株、 たp80を試験管内翻訳により合成し、混合 'T1' はTm-1 非感受性ToMV変異株。 後、FLAGによる精製を行い、ウエスタン 法により各タンパク質を検出した。 'wt', 'T1' については図2参照。 [その他] 研究課題名:トバモウイルスと宿主の共存を支える分子基盤の解明 予算区分:交付金プロ「共生系」、中期計画課題コード:B41、研究期間:2005~2007年度 研究担当者:石橋和大、飯哲夫、石川雅之 発表論文等: 1) Ishibashi K, Masuda K, Naito S, Meshi T, Ishikawa M (2007) An inhibitor of viral RNA replication is encoded by a plant resistance gene Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(34):13833-13838 [ID:1888] 2) 特許申請:国内出願 石川雅之、石橋和大.(2006)「トバモウイルス抵抗性遺伝子 Tm-1」 特願2006-094152 平成18年3月30日提出 9 [主要研究成果名] イネ遺伝子のピンポイント改変による除草剤耐性の付与 [要約] 標的遺伝子をピンポイントで改変することにより、除草剤に耐性のイネを育成することに 成功した。 [キーワード] ジーンターゲッティング、アセト乳酸合成酵素 (ALS)、イネ、ビスピリパックナト リウム塩 (BS) [担当] 農業生物資源研究所・植物科学研究領域・遺伝子組換え技術研究ユニット [連絡先] 029-838-8450 [分類] 技術開発 ----------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] ピンポイントで目的の遺伝子のみを改変するジーンターゲッティングは社会的受容性の高い新 規植物の創出につながる技術である。しかしながら、植物における成功例は僅かであり、ジーン ターゲッティングによる作物への有用形質の付与は前例がなかった。本研究では、ジーンターゲ ッティングにより、イネのアセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子の極一部を改変し、これまでにない高 度な除草剤耐性イネを作出した。 [成果の内容・特徴] 1. ジーンターゲッティングとは、染色体上のゲノム配列と相同性のある外来遺伝子を核内に導入 し、染色体上の遺伝子が外来遺伝子で置き換わった細胞を選抜する技術である。本研究では、 ジーンターゲッティングにより、除草剤 (ビスピリパックナトリウム塩, BS) 感受性型のイネ ALS 遺伝子を BS 耐性型 ALS 遺伝子で置換することに成功した。 2. ジーンターゲッティングが生じた場合のみ、BS 耐性を付与するベクターを作製した。ジーンタ ーゲッティングベクター上の ALS 遺伝子は、BS 耐性を付与する二点変異(W548L, S627I)を含ん でいるが、開始コドンから約 150bp を欠損しているため、イネゲノム中へのランダムな挿入で は BS 耐性を付与しない。イネゲノム中の ALS 遺伝子とベクター上の ALS 遺伝子間で相同組換 えが生じ、BS 耐性変異を含む機能的な ALS 遺伝子が構成された場合のみ BS 耐性となる(図 1)。 3. 約 1500 個のイネカルスにジーンターゲッティングベクターを形質転換した後、BS 耐性細胞の 選抜を行い、最終的に 66 個体のジーンターゲッティングを生じた植物体を獲得した。 4. ジーンターゲッティング後代で得られた BS 耐性型 ALS 遺伝子ホモ接合体は、従来の形質転換 法で作出した BS 耐性型 ALS 遺伝子過剰発現イネと比較して著しい BS 耐性を示した (図 2)。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] 1. ジーンターゲッティング手法によるイネの遺伝子破壊は既に成功例があるが、望み通りの点変 異の導入は本研究が世界初である。ジーンターゲッティングにより点変異のみを導入した植物 体は、従来の突然変異育種法で作出された植物体と同等のものを、狙いを定めて育成したと見 なせるだろう。 2. 除草剤耐性とは異なり、点変異の導入そのものが選抜形質とならない遺伝子にも適用可能なジ ーンターゲッティング系の構築が今後の課題である。 図 1. ジーンターゲッティングによる ALS 遺伝子の改変 イネゲノム中の ALS 遺伝子とベクター上の ALS 遺伝子間で相同組換えが生じた場合のみ、 機能的な BS 耐性型 ALS 遺伝子ができる。 図 2. ALS 酵素活性の阻害率 ジーンターゲッティング法により作出した BS 耐性型 ALS ホモ接合体では、高濃度の BS 添加時も ALS 酵素活性の阻害はほとんど生じない。 [その他] 研究課題名: 組換え体を用いた有用遺伝子の大規模機能解明と関連技術の開発 予算区分: 農水委託「大規模機能解明」、交付金、 中期計画課題コード:C11、研究期間: 2002 ~2007 年度 研究担当者: 遠藤真咲、刑部敬史、土岐精一 発表論文等: Endo M, Osakabe K, Ono K, Handa H, Shimizu T, Toki S. (2007) Molecular breeding of a novel herbicide-tolerant rice by gene targeting. The Plant Journal 52 (1), 157–166. 11 [主要研究成果名]遺伝子組換えカイコを利用したネコインターフェロンの生産 [要約]遺伝子組換えカイコを用いてタンパク質生産をより効率的にするため、フィブロ イン H 鎖遺伝子を利用した発現ベクターを作成し。ネコインターフェロンの生産を試みた。 このベクターはフィブロイン H 鎖遺伝子の N 末と C 末の配列の間に目的とするタンパク質 をコードする塩基配列を挿入するという特徴を持ち、目的遺伝子をカイコに導入しところ、 大量のタンパク質を生産できることが分かった。また、プロテアーゼの切断部位を利用す ることにより、活性の高いネコインターフェロンを調製できることが示された。 [キーワード]遺伝子組換えカイコ、有用物質生産、絹糸腺、ネコインターフェロン、 [担当]農業生物資源研究所・遺伝子組換えカイコ研究センター 東レ・先端y [連絡先]029-838-6091 [分類]生物産業 ------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] 遺伝子組換えカイコを用いたタンパク質生産系には、これまで酵母の GAL4/UAS 系やカ イコの核多角体病ウイルスの IE1 とその標的配列 hr3 を利用したもの、フィブロイン L 鎖遺伝子を用いた方法等が開発されている。しかしながら、タンパク質の生産量が最も 多いフィブロイン H 鎖の遺伝子を利用して、活性のある組換えタンパク質を後部絹糸腺 において作る方法についてはまだ十分研究が進んでいない。本研究では、フィブロイン H 鎖遺伝子を利用したベクターを作成し、このベクターを用いて、ネコインターフェロン の生産が可能かどうかを検討する。 [成果の内容・特徴] 1.ネコインターフェロンをコードする塩基配列をフィブロイン H 鎖遺伝子に挿入したベ クターを構築した(図 1)。 2.このベクターを利用してネコインターフェロン遺伝子を挿入した組換えカイコを作出 した。 3.得られた遺伝子組換えカイコが作る繭を溶かし、SDSPAGE 及びウェスタンブロッティン グによって発現量を調べた結果、大量のタンパク質が発現していることが分かった。 4.しかしながら、インターフェロンとしての生理活性は低かった(図 2)。 5.そこで、ネコインターフェロンの前後にプロテアーゼによる切断される配列を挿入し、 この配列を持つ遺伝子組換えカイコを作出した。このカイコが作る繭から精製したタンパ ク質をプロテアーゼで処理した結果、活性の高いネコインターフェロンが得られた(図 2)。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] 1.カイコの後部絹糸腺でも大量の組換えタンパク質の生産が可能であることが分かった。 2.組換えカイコで生産されるネコインターフェロンがフィブロイン H 鎖との融合型にな るため、精製後プロテアーゼ処理を行う必要がある。この方法が適用できるタンパク質の 種類は限られると考えられる。 [具体的データ] 図 1 遺伝子組換えカイコでネコインターフェロンを作るために用いたベクタープラスミド の構造。a.プロテアーゼの切断部位を持たないベクター(StFeIFN)。b、プロテアーゼによる 切断部位のあるベクター(PreFeIFN)。FeIFN はネコインターフェロン遺伝子。矢印はトラン スポゾンの逆位末端反復配列。 図 2 繭から抽出したタンパク質の SDS-PAGE(a)とネコインターフェロンの活性(b)。 StFeIFN と PreFeIFN は図 1 参照。 [その他] 研究課題名:「カイコによる組換えタンパク質の大量発現システムの構築」及び 「組換えカイコによるサイトカイン生産技術の開発」 予算区分:(昆虫ゲノム)、中期計画課題コード:C13、研究期間:19~23 年度 研究担当者:生物研;田村俊樹、米村真之、飯塚哲也、立松謙一郎、瀬筒秀樹、小林功。 東レ;栗原宏征、山田勝成 発表論文等: 1) Kurihara H, Sezutsu H, Tamura T, Yamada K. 2007. Production of an active feline interferon in the cocoon of transgenic silkworms using the fibroin H-chain expression system. Biochem. Biophys. Res. Commun. 355, 976-980. 13 [主要研究成果名]カイコゲノム統合地図 [要約]1755個のBACマーカーをマップした高密度BACマーカー連鎖地図を作成した。BACク ローン約8万個のフィンガープリントからBACコンティグを作成し、BACマーカーを用いて 連鎖地図に貼付け、染色体の76%をBACクローンでカバーするカイコゲノム統合地図を作成 した。 [キーワード]カイコ、一塩基多型(SNP)連鎖地図、フィンガープリント、BACコンティグ [担当]農業生物資源研究所・昆虫科学研究領域・昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット [連絡先]029-838-6120 [分類]知的貢献 -------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] カイコには、食性、斑紋、ウイルス抵抗性、休眠等の様々な突然変異形質を示す変異系統が ある。それらの原因遺伝子を同定・単離することは、遺伝子機能と形質発現メカニズムの解明 につながり、それら遺伝子機能の応用を進める上で重要である。ポジショナルクローニングは 、遺伝子の同定・単離に有効な手法であるが、その効率化には、高密度に分子マーカーがマッ プされた連鎖地図と物理地図を統合したゲノム統合地図が不可欠である。本研究では、BAC末端 塩基配列情報から一塩基多型(SNPs)を検出し、その連鎖地図を作成するとともに、BACクローン のフィンガープリント解析からBACコンティグ(物理地図)を作成し、共通のBACマーカーによ り両者を統合した地図作製を目指している。 [成果の内 容 ・ 特 徴 ] 1. BAC末端塩基配列から一塩基多型(SNPs)を検出し、1755のBACマーカーを28本の染色体にマ ップした高密度BACマーカー連鎖地図を作成した。この地図は平均マーカー間距離が270 kbと いう高密度のものである。 2.BACクローン約8万個のフィンガープリントを行い、6221個のBACコンティグを作成した。共 通のBACマーカーによりBACコンティグを連鎖地図上に貼付け、染色体の76% (361.1 Mb)をBAC クローンでカバーすることができた(図1)。 3.ESTをプローブとするBACフィルターハイブリダイゼーションにより724個の遺伝子を統合地 図上にマップできた。 4.制限酵素断片多型解析 (RFLP)により964個のESTを28本の染色体に帰属させた。 5.これらの情報を統合したゲノム統合地図を作成した。この統合地図は様々な形質突然変異体 のポジショナルクローニングに強力なツールとして利用されている。また全ゲノムショット ガンアセンブリの評価およびスキャホルドのマッピングの基盤となっている。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] 1.BACマーカー間の平均距離が270kbという極めて高密度の地図および染色体の76%をBACクロー ンでカバーする地図の構築は有用形質原因遺伝子のポジショナルクローニングの効率を極め て高め、有用遺伝子の簡便な単離を通じて機能解析研究への貢献が非常に大きくなった。 3.今後は、ポジショナルクローニング、遺伝子単離をより一層加速させるために、全染 色体をBACクローンで網羅するBACミニマムタイリングパスを作成し、より強力なツール 、リソースを構築する。これらの情報やツールを国内外の研究者が利用できる共同利用 施設ができれば、効率的に機能解析研究に寄与できることは明らかである。 [具体的データ] 図1 カイコゲノム統合地図 2番染色体 [その他] 研究課題名:ゲノム情報に基づく有用遺伝子単離の基盤構築 予算区分:昆虫ゲノム、 中期計画課題コード:A-(3)、 研究期間:03~07年度 研究担当者:山本公子、野畑順子、門野敬子、生川潤子、末次克行、三田和英 発表論文等: 1) Yamamoto K, Nohata J, Kadono-Okuda K, Narukawa J, Sasanuma M, Sasanuma S, Minami H, Sh imomura M, Suetsugu Y, Banno Y, Osoegawa K, de Jong P, Goldsmith MR, Mita K. (2008) A BAC -based integrated linkage map of the silkworm, Bombyx mori. Genome Biology 9 (in press). 2) Suetsugu Y, Minami H, Shimomura M, Sasanuma S, Narukawa J, Mita K, Yamamoto K. (2007) End -sequencing and Characterization of Silkworm (Bombyx mori) BAC Libraries. BMC Genomics 8, 314. 14 [主要研究成果名]カイコの幼若ホルモン前期生合成酵素遺伝子群の同定と発現解析 [要約]カイコゲノム情報を利用して幼若ホルモン(JH)生合成前期経路の遺伝子を全て同定 し、ファルネシルピロリン酸シンターゼが3種存在することを見出した。前期遺伝子の大多 数がアラタ体で強く発現しており、またアラタ体での発現レベルと JH 合成活性の間に一定の 相関が認められた。 [キーワード]幼若ホルモン、アラタ体、酵素、カイコ、ゲノム、cDNA [担当]農業生物資源研究所・昆虫科学研究領域・制御剤標的遺伝子研究ユニット [連絡先]029-838-6075 [分類]知的貢献 -------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] 幼若ホルモン(JH)はアラタ体で合成される昆虫特異的ホルモンである。過去の生化学的 研究から、JH 生合成経路は、コレステロール合成と共通の前期経路(メバロン酸経路)と JH 合成に特異的な後期経路から成るとされている。しかし、その分子的実体は未だに不明 な点が多い。そこで本研究ではカイコゲノム情報を利用して JH 前期経路の酵素をコードす る遺伝子を網羅的に単離・同定しようとする。さらに、各遺伝子のアラタ体における発現変 動と、JH 合成活性レベルを比較し、それら遺伝子の JH 生合成制御における役割を明らかに しょうとする。 [成果の内容・特徴] 1.カイコゲノム情報に基づき、アセチル CoA からファルネシルピロリン酸にいたる JH 生合 成前期経路(メバロン酸経路、図1)の酵素遺伝子を全て同定し、その cDNA を単離した。 2.各酵素に対応する遺伝子は基本的に一種であったが、例外的にファルネシルピロリン酸 シンターゼ遺伝子(FPPS)は3種存在していた。ヒトやショウジョウバエでは FPPS は1種しか 存在せず、これはカイコゲノムに特徴的な現象である。 3.前期酵素遺伝子の組織特異性を調べると、FPPS1 と MevPK 以外の酵素遺伝子はいずれもア ラタ体で著しく強い発現が認められた(図2)。このことはアラタ体が JH 合成に著しく特化し た器官であることを示している。 4.3種 FPPS のうち、FPPS2 および FPPS3 はアラタ体でほぼ特異的に発現しており、特に FPPS2 は発現量が高く、JH 合成に関わる主要な FPPS であると考えられる(図2)。通常の昆 虫の JH は1種(JH III)であるが、カイコなど鱗翅目昆虫では、複数種の JH(JH I, JH II, JH III など)を合成することが知られ、複数の FPPS を持つこととの関連が注目される。 5.前期酵素遺伝子のアラタ体における発育変動と JH 合成活性レベルを比較したところ、5齢 幼虫初期の JH 合成活性が低下する時期に、ほとんどの前期酵素遺伝子の発現レベルが低下した (図3)。一方で、JH 合成が完全に停止する5齢中期〜蛹中期にかけて、いずれの前期酵素遺 伝子も多少は発現していた(図3)。このことから、前期酵素遺伝子群の発現レベルと JH 合成 活性レベルに一定の相関関係があるが、前期酵素遺伝子群の発現制御だけでは JH 生合成制御を 完全には説明できないことが明らかになった。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] 1. JH 生合成制御には、JH 酸メチル基転移酵素(JHAMT)遺伝子など JH 生合成後期経路遺 伝子の発現制御がより重要な可能性がある。JH 生合成後期経路の酵素遺伝子の一部は未 同定であり、今後明らかにする必要がある。 2. 1.[具体的データ] 図1.前期 JH 合成経路(メバロン酸経路) 図2.カイコ4齢2日幼虫の主要組織におけ る前期 JH 合成酵素遺伝子の発現量 図3.カイコの発育とアラタ体における各前期 JH 合 成酵素遺伝子の発現変動(A)および JH 合成活性の 変動(B).幼虫期は♂・♀区別せずに測定した。 [その他] 研究課題名:カイコゲノム情報に基づく幼若ホルモンネットワーク遺伝子の解明 予算区分:(生研プロ)、 中期計画課題コード:B21、 研究期間:17~18 年度 研究担当者:篠田徹郎、三田和英、金城輝則、金児雄、糸山享、比留間潔 発表論文等: 1) Kinjoh T, Kaneko Y, Itoyama K, Mita K, Hiruma K, Shinoda T (2007) Control of juvenile hormone biosynthesis in Bombyx mori: Cloning of the enzymes in the mevalonate pathway and assessment of their developmental expression in the corpora allata. Insect Biochemistry and Molecular Biology 37(8):808818 ◎ [ID:1492] 15 [主要研究成果名] トレハローストランスポーター遺伝子の単離と機能解析 [要約] トレハロースを細胞に大量に蓄積するネムリユスリカという昆虫において、トレハロースを 特異的に細胞膜の内外に輸送する遺伝子の単離に世界で初めて成功した。 [キーワード] トレハロース、トランスポーター、膜タンパク質、乾燥耐性、糖代謝 [担当] 農業生物資源研究所・昆虫科学研究領域・乾燥耐性研究ユニット [連絡先] 029-838-6170 [分類] 知的貢献 -------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] トレハロースは、昆虫や植物、キノコ類、酵母、細菌などに存在する天然の非還元二糖で、 他の糖類と同様に、これらの生物のエネルギー源として利用されている。トレハロースが細胞内 へ入る際にトランスポーターと呼ばれる膜タンパク質が介在すること考えられるが、これまで多 細胞生物から単離されていなかった。 クリプトビオシスという特殊な生理現象を持つネムリユスリカ幼虫は、乾燥に伴って多量のトレ ハロースを合成・蓄積して生体成分を保護していることがわかってきた。そこで、このネムリユス リカからトレハロースを特異的に輸送するトランスポーター遺伝子の単離を試みた。 [成果の内容・特徴] 1) トレハロースを大量に蓄積する能力をもつ昆虫、ネムリユスリカから、糖の輸送に関わる遺 伝子(Tret1)を単離した。 2) Tret1 遺伝子は、ネムリユスリカ幼虫が、脱水されるとともに誘導され、トレハロースを合成 する器官である脂肪体に特異的に発現していた。 3) アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた実験の結果、TRET1 タンパク質は、細胞膜に 局在し、トレハロースだけを細胞内外へ輸送していることが明らかとなった。 4) TRET1 は高容量型のトランスポーターで、ネムリユスリカにおいては、このタンパク質により 大量のトレハロースの細胞内外への移動を可能にして脱水状態に耐えていることが予想さ れた。 5) エネルギーに依存しない TRET1 は促進拡散型のトランスポーターであり、細胞内のエネル ギーの消費なしにトレハロースを細胞の内外へ出入りさせる。 6) TRET1 は哺乳動物細胞でもその活性を発揮し、それらの細胞のトレハロースの取り込み能 力を高めることが証明された。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] (1) Tret1 遺伝子を導入して TRET1 タンパク質を発現させることにより、自由自在にトレハロー スを細胞内外に出し入れすることが可能になる。このことから、将来的には切り花の花持ち の延長、乾燥に強い作物の作出等の農業分野の他、細胞や組織の常温乾燥保存法開発 による医療等の産業分野の発展にも貢献することが期待される。 (2) TRET1 タンパク質の高い基質特異性を利用して、新規のトレハロース類似化合物のスクリ ーニングにも利用でき、トレハロースの基礎及び応用研究が加速度的に進むことが考えら れる。 [具体的データ] [その他] 研究課題名:昆虫の乾燥耐性機構の解明と利用技術の開発 予算区分:生研基礎(ユスリカ)、中期課題コード:B22、研究期間:2006〜2010 年度 研究担当者: 黄川田隆洋、斉藤彩子、金森保志、中原雄一、岩田健一、田中大介、渡邊匡彦、 奥田隆 発表論文等: 1) Kikawada T, Saito A, Kanamori Y, Nakahara Y, Iwata K, Tanaka D, Watanabe M, Okuda T (2007) Trehalose transporter 1, a facilitated and high-capacity trehalose transporter, allows exogenous trehalose uptake into cells Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104(28):11585-11590 [ID:1843] 2) 国内特許出願「トレハローストランスポーター遺伝子及び該遺伝子を利用した細胞内にトレハロ ースを導入する方法」(特願 2006-058787) 18 [主要研究成果名]ブタの椎骨数を決める責任遺伝子の同定 [要約]ブタの椎骨数に関与する量的形質遺伝子座(QTL)に位置する遺伝子が核内受容体 Germ Cell Nuclear Factor (NR6A1)であることを明らかにした。NR6A1 にはQTLタイプに対応 するアミノ酸置換があり、その原因となるSNPによりDNAマーカー選抜が可能となった。ま た体節形成期のマウス胚において、椎骨のもととなる体節内にNR6A1 の発現が認められた。 [キーワード]ブタ、椎骨数、QTL、核内受容体、NR6A1、SNP [担当]農業生物資源研究所・動物研究領域・家畜ゲノム研究ユニット [連絡先]029-838-8627[分類]知的貢献、技術開発 -------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] 一般的に哺乳類では頸椎は 7 個に保存され、また胸椎と腰椎を合わせた椎骨数も 19 個とな る傾向があり、その種内変動は小さい。しかし、ブタの祖先であるイノシシの椎骨数は 19 個であるが、現在の肉用豚は品種改良の過程で椎骨数が増大しており、20 個から 23 個とバ ラツキがある。椎骨数が増大すると体長が伸び、産肉性、繁殖性が良くなることから、これ を支配する遺伝子を単離し、その多型によってブタを選抜育種することが求められている。 これまでに 2 ヵ所の遺伝領域に椎骨数増大効果を有する量的形質遺伝子座(QTL)を検出し ているが、その内、第 1 染色体q腕末端領域のQTLにおいて責任遺伝子の同定を行った。 [成果の内 容 ・ 特 徴 ] 1.アジア系品種、西洋系品種およびミニブタを用いた複数のF2 家系の連鎖解析により、椎 骨数QTLが第 1 染色体および第 7 染色体に検出された。その効果はともにほぼ等しく対立遺 伝子あたり約 0.6 個の椎骨数を増大させた。これらを合わせると平均で約 2.4 個の椎骨数が 増大し、表型変動の約 75%が説明された。 2.第 1 染色体のQTL領域において、椎骨数が増大したブタに特徴的な約 300kbの領域を、 マイクロサテライトマーカーを用いて検出した(図 1)。この領域はイノシシやアジア在来 豚など椎骨数の増大が見られない品種では多様性が保たれていた。この領域には核内受容体 Germ Cell Nuclear Factor (NR6A1)の遺伝子が位置することを明らかとし、QTLタイプと一致 するアミノ酸置換(Pro192Leu)を単離した(図 2A)。 3.NR6A1 のアミノ酸置換は、活性の発現に必要な 2 種類のコリプレッサー(RAP80、NCOR1) との結合領域に位置しており、また椎骨数増大型のアミノ酸置換(Leu:ロイシン)によっ てこの結合は強くなっていることが明らかとなった( 図 2B) 。 4.椎骨のもととなる体節が形成される時期におけるNR6A1 の発現様式を、マウス胚(10.5 日)を用いて解析した。その結果、NR6A1 は体節の内部において発現していることが明らか となった(図 3)。 [成果の活用上の留意点、波及効果、今後の展望等] 1.ブタ第 1 染色体上のQTLタイプは、NR6A1 のアミノ酸置換を引き起こすSNPによって、 または椎骨数増大型のQTLにおいて固定されたマイクロサテライトマーカーによって判定 することができる。特に西洋豚とアジア在来豚などを用いて造成される系統においては、こ のDNA情報が選抜育種に大きな効果を発揮する。 2.核内受容体NR6A1 はリガンドが不明ないわゆるオーファン受容体でありその機能も未知 な部分が多い。NR6A1 が体節形成に関わるということは初の知見であり、NR6A1 の機能解 明への糸口となるとともに、体節形成に関わる研究においても新たな進展が期待される。 [具体的データ] 図 1.マイクロサテライト(MS)マーカーによるQTLのファインマッピング。A:QTL領域のゲノム構 造。B:BAC整列地図。C:BAC整列地図より開発したMSマーカーの連鎖地図。D:QTL領域の遺伝子 とMSマーカー。C、Dにおいて三角形(白)は椎骨数増大型QTLで固定されたMSマーカーを示す。 図 2.椎骨数の多い、および少ない品種ブタの NR6A1 のアミノ酸置換(A)とコリプレッサーと の結合能の変化(B)。Two-hybrid解析における 相対ルシフェラーゼ活性を示した。 図 3.マウス胚(10.5 日)における抗NR6A1 抗 体による免疫染色。Aのボックスの拡大写真がB およびDである。C、EはそれぞれB、Dのネガテ ィブコントロール。Fは切片の方向を示す。 [その他] 研究課題名: ブタ第1染色体の椎骨数QTLに位置するNR6A1 遺伝子の多型と機能の解析 予算区分:畜産ゲノム、中期計画課題コード:A04、研究期間:2001~2007 年度 研究担当者:美川智、林武司、上西博英、粟田崇 発表論文等: 1) Mikawa S, Hayashi T, Nii M, Shimanuki S, Morozumi T, Awata T. (2005) Two quantitative trait loci on Sus scrofa chromosomes 1 and 7 affecting the number of vertebrae. Journal of Animal Science 83:2247-2254 2) Mikawa S, Morozumi T, Shimanuki S, Hayashi T, Uenishi H, Domukai M, Okumura N, Awata T (2007) Fine mapping of a swine quantitative trait locus for number of vertebrae and analysis of an orphan nuclear receptor, germ cell nuclear factor (NR6A1) Genome Research 17:586-593 [ID:1699] 3) 特許出願「ブタの椎骨数増大能力を識別するDNAマーカー(特開 2006-101871)」美川智、上 西博英、林武司、粟田崇、両角岳哉、島貫伸一、堂向美千子、奥村直彦 平成 19 年度に係る業務実績報告書 資料 6 農業生物資源研究所が公開している ホームページと主な知的基盤データベース 一覧 ※記載した「平成 19 年度アクセス数」は、平成 19 年 4 月 1 日から平成 20 年 3 月 31 日 までの数値である。 1.農業生物資源研究所公式ウェブサイト (http://www.nias.affrc.go.jp/index.html) 1.平成 19 年度アクセス数 :2,518,095(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:広報室 3.内容:農業生物資源研究所(生物研)の公式ホームページです。内容は生物研の最新情 報、研究分野ごとの研究概要、プロジェクト研究概要、公開データベース情報、知的 所有権情報、公募・募集のお知らせ、プレスリリース、情報公開、生物研 Q & A、 問い合わせ窓口一覧等です。 -1- 2.農業生物資源ジーンバンク (http://www.gene.affrc.go.jp/index_j.php) <植物遺伝資源部門、微生物遺伝資源部門、動物遺伝資源部門> 1.平成 19 年度アクセス数 :1,941,705(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:ジーンバンク 3.内容:農業生物資源ジーンバンクで保存する植物、微生物、動物遺伝資源を試験研究 及び教育用に利用していただくため、遺伝資源の来歴や特性を紹介するページです。 -2- 3.農林水産 DNA バンク (http://www.dna.affrc.go.jp/jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 :24,049,215(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:ゲノムリソースセンター 3.内容:農林水産 DNA バンク(NIAS DNA Bank)は、農林水産省のプロジェクト研究か ら得られたイネ、カイコ及びブタゲノムの情報を公開しています。また、類似性検索 やキーワード検索システムも提供しています。 -3- 4.イネゲノムリソースセンター(RGRC) (http://www.rgrc.dna.affrc.go.jp/jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 :100,857(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:ゲノムリソースセンター 3.内容:イネゲノムリソースセンターは、グリーンテクノプロジェクトで得られた多様 かつ貴重なゲノム研究材料を、国内外の多くの研究コミュニティーに提供しているサ イトです。 -4- 5.RAP-DB(イネアノテーションデータベース) (http://rapdb.dna.affrc.go.jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 :416,162(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:ゲノム情報研究ユニット 3 . 内 容 : 2004 年 に イ ネ の 全 ゲ ノ ム 塩 基 配 列 が 決定 さ れ たこ と を 受け て 、 我々 は イ ネア ノテーション計画(RAP)を組織し、国際協調下でアノテーション会議を開催するな どして、専門家によって精査された高精度の遺伝子アノテーション情報を提供してき た。NCBI、Gramene、アリゾナ大学などの外部データベースや機関と連携を図り、NCBI アノテーションや OMAP の BAC 端配列のような外部データも順次取り入れている。 2007 年 9 月、データベース間の ID を相互変換する ID コンバータ、簡易キーワード 検索、詳細な検索とデータ一括ダウンロード可能な上級キーワード検索を追加した上 で、最新のアノテーションデータを公開した。 -5- 6.イネ完全長 cDNA データベース(KOME) (http://cdna01.dna.affrc.go.jp/cDNA/) 1.平成 19 年度アクセス数 :13,504,915(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:植物ゲノム研究ユニット 3.内容:イネゲノムプロジェクトの一環として 2000 年 1 月から、2003 年 9 月末までに 遂行された「イネ完全長 cDNA プロジェクト」で収集、マッピング、意味づけされた 約 28,000 の完全長 cDNA クローンの情報を公開しています。 -6- 7.イネゲノム地図統合データベース (http://rgp.dna.affrc.go.jp/J/) 1.平成 19 年度アクセス数 :4,739,764(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:植物ゲノム研究ユニット 3.内容:イネゲノム解析研究の成果である高密度分子遺伝地図、酵母人工染色体(YAC) の整列化地図、65,000 個の EST 塩基配列情報およびこれら EST を YAC 整列化地図上 に位置付けた発現遺伝子地図が公開されています。また、これらの情報を基に開始さ れたわが国のイネゲノム全塩基配列解読プロジェクトおよびわが国を中心とした国際 共 同 体 制 (国 際 コ ン ソ ー シ ア ム )に よ る 解 読 成 果 が 、 独 自 に 開 発 し た デ ー タ ベ ー ス (INE)によって日々更新掲載されています。このほか塩基配列自動アノテーションシ ステム RiceGAAS の利用が可能であり、またこのプロジェクトで産み出された論文リ ストが掲載されイネゲノム文献情報を提供しています。 -7- 8.ミュータントパネルデータベース (http://tos.nias.affrc.go.jp/~ miyao/pub/tos17/) 1.平成 19 年度アクセス数 : 930,950(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:ゲノムリソースセンター 3.内容:農業生物資源研究所で作出された、イネ(品種:日本晴)の内在性レトロトラン スポゾン Tos17 による遺伝子破壊系統(5 万系統)の表現型と破壊された遺伝子を整理 したデータベースです。RAP-DB でアノテートされた全てのイネの遺伝子情報も保持 しており、それぞれの遺伝子の破壊部位と対応する系統、および、その表現型情報が 閲覧できます。現在、33,000 ヶ所を上回る破壊部位情報が登録されています。また、 種子が必要な場合は、系統のリンクよりゲノムリソースセンターへ分譲依頼ができま す。 -8- 9.シスエレメントモチーフ検索 (http://www.dna.affrc.go.jp/PLACE/) 1.平成 19 年度アクセス数 :165,882(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:ゲノムリソースセンター 3.内容:高等植物遺伝子のプロモーター等の発現制御に関わる領域(シスエレメント)の 塩基配列モチーフ(特定の塩基配列パターン)を論文から収集し、解説や文献などの情 報を付加したデータベースです。キーワード検索機能、解析ツールSignalScanによる 検索機能などを有します。 -9- 10.カイコプロテオームデータベース(http://kaiko2ddb.dna.affrc.go.jp/cgi-bin/search_2DDB.cgi) 1.平成 19 年度アクセス数 : 47,068(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:タンパク質機能研究ユニット 3.内容:カイコのゲノム解析が終了しつつあるが、このデータベースはそのカイコの各 遺伝子がいつどこで発現しているか、時系列的・網羅的に調べたものである。昆虫で 最もゲノム解析が進んでいるのはショウジョウバエだが、あまりにもそれは小さく、 詳細に各組織ごとに発現しているタンパク質を分析するのは難しい。論文等でショウ ジョウバエのプロテオーム解析例が報告されているが、どれも特定の時期の特定の組 織を分析したもので単発的である。一方、このカイコプロテオームデータベースは 8 つの主要組織で発現しているタンパク質を同定するばかりでなく、時系列的に成虫ま での 22 日間に渡ってそのスポットを追跡したという点で非常にユニークで、他に類 するものはない。これはゲノム解析の次の段階、即ち、カイコおよび昆虫のポストゲ ノム解析の基礎あるいは出発点となるべきものである。昆虫の発生分化機構を分子レ ベルで知るための基礎研究だけでなく、カイコを利用した有用物質生産や害虫駆除研 究のために活用できる。なお、本データベースはカイコゲノム情報その他と直接リン クできるように設計しており、それらの情報が更新され次第、各タンパク質の再解析 および機能発現に関係するアミノ酸修飾情報分析を行い、順次、アップデートされる ことになっている。 - 10 - 11.カイコ cDNA(EST)情報 (http://kaikocdna.dna.affrc.go.jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 :756,605(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット 3.内容:カイコゲノム研究プロジェクトで得られた様々な組織や異なる発生段階の組織 から作成された 40 種類の cDNA ライブラリーから得られた 41,068 個の EST(Expressed Sequence Tag、部分 cDNA シーケンス)を収集・分類し、自動アノーテーションがつ けられています。このデータベース内で、キーワード検索、クローン名検索、BLAST によるホモロジー検索が行えるようになっています。GeneBank、EMBL、DDBJ、Swiss Protein、PIR 等の公共データベースともリンクしています。 - 11 - 12.カイコゲノムデータBLAST検索 (http://kaikoblast.dna.affrc.go.jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 :131,377 ( 2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット 3.内容:カイコゲノム研究プロジェクトで得られた WGS (Whole Genome Shotgun)法によ るカイコゲノムシーケンスデータ(2004 年日本と中国で独立に実施された)、日本、 中国および公開されている EST 情報、カイコ末端シーケンス情報に対して BLAST に よるホモロジー検索が行えます。 - 12 - 13.カイコゲノムアノテーションデータベース (http://kaikogaas.dna.affrc.go.jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 :4,354,837(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:昆虫ゲノム研究・情報解析ユニット 3.内容:KAIKOGAAS はカイコゲノム解析用に設定された自動アノーテーションシステ ムです。このシステムは遺伝子予測とタンパク質コード領域の構造解析機能を持って います。含まれるソフトウェアは、コード領域予測プログラム(GENSCAN, FGENESH, MZEF)、 ス プラ イ ス サイ ト 予測プ ログラ ム(SplicePredictor)、DNA シー ケンス ホモロジ ー検索プログラム(Blast, HMMER, ProfileScan, MOTIF)、tRNA 遺伝子予測プログラム (tRNAscan-SE)、繰り返し配列解析プログラム(RepeatMasker, Printrepeats)、膜タンパク質 分類および二次構造予測プログラム(SOSUI)を含んでいます。 - 13 - 14.トビイロウンカEST情報 (http://bphest.dna.affrc.go.jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 :9,741(平成 20 年 2 月 6 日公開~平成 20 年 3 月 31 日) 2.担当:昆虫・微生物間相互作用研究ユニット 3.内容:イネ害虫トビイロウンカの 18 の組織・ステージ別 cDNA ライブラリーから任 意のクローンの塩基配列を解読し、ネットで公開した。5 万以上のクローンからデー タ を 整理 し 、 ミト コ ン ドリ ア、 リボソ ーム RNA、感 染共生 ウイルス などの 遺伝子情 報を削除して、最終的に約 37,122 の EST(DNA データベースにも登録)を選び出し た。EST の平均サイズは 627 bp で、未同定塩基"N"を含む割合は 0.065 %である。ク ラスタリング結果から、約 10,261 クラスター(6196 singleton, 40,65 contigs)に分けら れた。すでに、一部のウンカ研究者に利用され、その配列情報はトビイロウンカのマ イクロアレイ作製に利用されている。このトビイロウンカのサイトでは EST のクロ ーン名でデータを取り出す他に、EST に対するブラスト検索、gene ontology による検 索も可能である。ブラスト検索時のフィルターの on/off も選択でき、繰り返し配列の 多い場合などにも対応した。ショウジョウバエとセンチュウに対する EST の検索結 果も見られる。DNA データバンクと三菱スペースソフトウエアの協力を得た。 トビイロウンカの EST 情報の解析内容、特徴的な遺伝子などについては、論文と して公開予定である。 Noda H, Kawai, S. Koizumi Y. Matsui K, Zhang Q. Furukawa S. Shimomura M. Mita K. (2008) Annotated ESTs from various tissues of the brown planthopper Nilaparvata lugens: a genomic resource for studying agricultural pests. BMC Genomics in press. - 14 - 15.ブタ発現遺伝子データベース(PEDE) (http://pede.dna.affrc.go.jp/) 1.平成 19 年度アクセス数 : 7,366,585(2007 年 4 月 1 日~ 2008 年 3 月 31 日) 2.担当:家畜ゲノム研究ユニット 3.内容:ブタ各種臓器の完全長 cDNA ライブラリ(発現している遺伝子を収集したもの) を構築し、それらを用いて解読した発現遺伝子の断片 16 万個以上、また完全長 cDNA 配列 1 万個以上について、ヒト、マウス、ウシ、イヌなど他の動物種の遺伝子との相 同性検索を行うことで、遺伝子の機能について明らかにした結果など、ブタの総合的 な発現遺伝子情報を提供するシステムです。 - 15 - 16.ブタの DNA マーカー情報 (http://agp.gene.staff.or.jp/agp/db/marker/marker.html) 1.平成 19 年度アクセス数 :43,978(平成 19 年 4 月 1 日~平成 20 年 3 月 31 日) 2.担当:家畜ゲノム研究ユニット 3.内容:マイクロサテライトマーカーなどのブタゲノム上に存在する DNA 多型マーカ ーについて、その PCR 増幅のためのプライマーやマーカーの位置情報について提供 しています。連鎖地図、及び放射線雑種細胞パネルで作製された地図(RH マップ) の情報にもリンクしています。 - 16 - 平成 19 年度に係る業務実績報告書 資料 7 業務効率化推進基本計画 業務効率化推進基本計画 平成19年10月1日 第1 目的 本 基 本 計 画 は 、 独 立 行 政 法 人 農 業 生 物 資 源 研 究 所 ( 以 下 「 研 究 所 」 と い う 。) に お ける業務の効率的推進並びに経費の節減等のための効率的運営に関し、必要な基本的 事項を定めることを目的とする。 第2 第3 1 実施期間 基本計画の実施期間は、第Ⅱ期中期計画期間(平成22年度まで)とする。 計画内容 組織運営の効率化 理事会及び運営会議における審議の迅速化、各種委員会等の機動的かつ効率 的な運営、決定事項等の職員への速やかな周知徹底を図る。 2 施設・設備の効率的な維持及び有効活用 (1)施設・設備については、利用に関する基本方針を策定するとともに、その利 用状況及び利用計画を調査し、居室、実験室等の配分見直し等を通じて、効率的 利用及び有効活用を図る。 (2)別棟施設については、研究の進展等に応じた改修、施設の廃止及び集約、共 同利用の促進などを通じて、効率的な利用を図る。 3 情報システムを活用した情報共有・業務効率化の促進 (1)グループウェアを核として情報の共有を進め、情報伝達の迅速化及び共有情 報の一元化を図る。 (2)個別システムの統合化及びデータの一元管理を進めることにより業務の効率 化を図る。 4 研究支援部門の効率化 研究支援部門については、業務の再点検を行うとともに、各部署間の連携強 化を進め、事務処理の迅速化及び簡素化を図る。 5 調達手続きの効率化 (1)物品・役務契約については、契約機会の均等、公正性の保持及び経済性を確 保するため競争契約の徹底を図るとともに、研究機器類・薬品等の計画的調達、 一括契約の拡大により経費の節減を図る。 (2)研究機器や施設の保守管理業務契約については、契約内容の点検、見直し等 により経費の節減を図る。 第4 実施計画 基本計画を基に、毎年度、業務効率化実施計画を策定し、その実施を図るとともに 進捗状況の点検を行う。 第5 啓発活動 基本計画及び毎年度の実施計画を職員に周知徹底するとともに、管理運営コスト、 業務効率化に対する意識の醸成を図る。 第6 その他 基本計画は、第Ⅱ期中期計画期間中において、必要に応じて見直す。 平成 19 年度に係る業務実績報告書 付表 農林水産省独立行政法人評価委員会による 農業生物資源研究所の平成18年度に係る 業務実績評価結果の対応状況 独立行政法人農業生物資源研究所 平成20年3月31日 農林水産省独立行政法人評価委員会による平成18年度業務実績評価結果の対応状況 法人名 : 独立行政法人 農業生物資源研究所 中期計画の対応箇所 評価結果における意見・指摘の内容 法人の対応状況 ◎世界をリードする生命科学の基盤研究を目指すとともに、生物関連 ◎業務効率化基本計画を策定し、各分野・部門から委員を選出し、効率化の推進を 産業のための革新的な技術開発を、業務運営全般の効率化を進めつ 図っている。 つ行うことが求められている。 ◎バイオテクノロジーを活用した新たな生物産業の創出を目指した研 究開発については、研究レベルは高いものの、社会受容の観点から 開発には困難を伴うこともあると予測されるため、引き続き、研究開発 の推進とともに国民理解の促進に向けた努力を続けることを期待す る。 ◎研究開発では、引き続き消費者に安心感を与える遺伝子組換え技術の開発と、直 接メリットを享受できる組換え農作物の開発に取り組んだ。一般市民に遺伝子組換え 作物に関する理解を深めてもらうため、一般公開や見学者対応のおりに、積極的に 遺伝子組換え研究の紹介をした。また、第一使用にあたっては、一般説明会や田植 え見学会を開催するとともに、メディアへの積極的な情報の公開、ホームページを利 用した情報提供を継続して行った。さらに、除草剤耐性ダイズや害虫抵抗性トウモロ コシの展示栽培を行い、一般市民に考えるきっかけを作る活動等も継続して行った。 双方向コミュニケーションの新たな取り組みとして、市民参加型展示圃場を行った。 総合評価 ◎課題評価のフローの中に課題判定会を設けるとともに、所内推進戦略会議におい ◎業務運営の自己評価については、問題点の明確化、対応策の検討 て管理支援部門の参加の下、議論を進めた。 を十分に行うことを期待する。 ◎松本・岡谷の移転に向けた準備を進め、H20年度中には松本の移転が可能となっ ◎松本・岡谷・北杜地区の再編統合に向けた取り組みついても評価で た。 きる。本中期目標期間中に着実に実行されることを期待する。 ◎外部資金はほぼ従来通り獲得できた。また、任期付き若手研究員に対して、科研 ◎また、競争的研究資金などの外部資金の獲得については、今後、さ 費の申請セミナーを開催し、提案能力の向上を目指した。 らなる取り組みを期待する。 ◎科研費の獲得に関しては、金額、採択率共に上昇した。他の制度についても引き 続き獲得に向けて努力する。 ◎業務運営の自己評価については、自身の有する問題点の明確化、 ◎課題評価のフローの中に課題判定会を設けるとともに、所内推進戦略会議におい て管理支援部門の参加の下、議論を進めた。 対応策の検討が不十分であり、改善が必要である。 第1 業務運営の効 ◎組織のフラット化を行ったことは機動的な組織運営の第一歩である ◎ダイズゲノム研究を進めるため中期計画を変更して位置づけを明確化し、国内外 率化に関する目標を し、一部組織の再編統合を進めていることも評価できる。今後、これら に生物研のダイズゲノム研究をアピールした。 達成するためとるべ の効果の分析を行い、より効率的な組織運営を進めることを期待す き措置 る。 1 ◎業務運営の自己評価については、外部評価委員を活用した客観性 ◎課題評価のフローの中に課題判定会を設け、評価結果の分析を進めるとともに、 の高い評価システムを構築したが、自身が有する問題点の明確化、 所内推進戦略会議において管理支援部門の参加の下、議論を進めた。また、業務実 対応策の検討が不十分であり、次年度の業務実績報告書の作成、自 績報告書の作成にも反映することとしている。 己評価実施にあたっては改善の必要がある。 1-1 評価・点 ◎今後、その処遇への反映を早期に研究職員へ拡大することを期待 ◎研究職の業績評価結果の反映については、管理職については実施しているが、そ れ以外の研究職については、職員組会との協議を進めたが、未だ実現していない。 検の実施と反映 する。 次年度は試行を行い問題点の抽出と対応策の策定を目指し、現在協議中。 ◎また、一般職員の業績評価についても取り組むことを期待する。 ◎一般職員の評価については、研究所内に制度の検討会を設置し、一般職員を対 象とした個々の職員の能力や実績等を重視した新たな人事評価制度の導入につい て、平成20年度に制度の試行が実施できるよう検討している。 ◎研究資源の効率的利用に向けた組織の見直しを継続することを期 ◎研究の着実な発展を推進するため、本年度は組織の改編は行わず、招聘型任期 付き研究員として第一線のダイズ研究者をチーム長に採用し、中期計画を変更して 待する。 課題の位置づけを明確化し、国内外に生物研のダイズゲノム研究をアピールした。 ◎研究資金配分に多くの制度を導入するなど努力は認められるが、 1-2 研究資源 重点化による効率化を実現するため、重点化の方向性を明確にして の効率的利用及 取り組むことを期待する。 充実 高度 び充実・高度化 ◎競争的研究資金の獲得に向けた制度整備努力は認められるが 獲 ◎競争的研究資金の獲得に向けた制度整備努力は認められるが、獲 得件数、金額ともに前年に比べて減少した。今後はこうした新制度を 外部資金の獲得増加につなげることを期待する。 ◎イネ、ダイズ、カイコ、ブタゲノム研究を推進するため重点的に予算配分を行った。 ◎本年度は、外部資金はほぼ従来通り獲得できた。また、任期付き若手研究員に対 ◎本年度は 外部資金はほぼ従来通り獲得できた また 任期付き若手研究員に対 して、科研費の申請セミナーを開催し、提案能力の向上を目指した。 ◎科研費については19年度173百万円(18年度143百万円)を獲得し、採択率も26% (18年度20%)に上昇した。他の制度についても引き続き努力する。 ◎研究支援部門の効率化のため、その業務を見直し、体制を再編成 ◎本年度は、生物研の推進戦略会議において、研究管理支援部門の室長自らが年 1-3 研究支援 していることは評価できる。今後、その効果を明らかにしつつ、研究支 度の報告を行い、主体的に効率化・高度化を進めるための議論を行った。 部門の効率化及 援業務の全体像を明らかにして、効率化・高度化を実現することを期 び充実・高度化 待する。 ◎今後、他機関、特に農業生産関係の機関との連携を拡大・深化さ ◎プロジェクト等を通じて、他機関との連携を進めるとともに、カイコの遺伝子組み換 1-4 産学官連 せ、研究水準の向上や研究の効率的実施を進めるとともに、生物関 え技術等を中心に、企業、大学等との共同研究を進めた。 携、協力の促進・ 連産業の活性化や農業問題の解決につながる研究を実施するよう期 強化 待する。 2 ◎今後も国際的なイニシアチブを確保し続けるための長期的な戦略を ◎国際シンポジウムの開催、最先端のゲノム情報データベースの構築、ゲノムリソー 構築することを期待する。 スの開発、各種ゲノム研究の国際コンソーシアムへの積極的な参加等により、国際 的なイニシアチブを確保して参りたい。今年度は、第5回イネ機能ゲノミクス国際シン ポジウムや第1回国際ダイズゲノム会議等をつくばで開催した。 ◎平成18年1月から全ゲノム解読を本格的に始めた国際ブタゲノムシーケンシングコ ンソーシアムに、農業生物資源研究所も参画し、昨年度と同様に今年度も担当する ブタゲノムを解読することにより、国際的貢献を行なっている。日本が優位に立ってい る遺伝子発現情報を充実させるため、ゲノム解読に用いているブタのクローン個体由 来組織から完全長cDNAライブラリーの作成に向け、イリノイ大よりサンプル提供を受 ける手配を進めている。今後順次公開されるゲノム塩基配列について、アノテーショ ンをコンソーシアムの中で行うことになっており、当研究所としても参画することを検 1-5 海外機関 討している。 及び国際機関等 ◎カイコゲノムに関しては、日中双方がもつデータを統合しより精緻なゲノム情報とす との連携の促 ることで連携し、2008年2月には論文として公表、データベースの公開の運びにな 進・強化 る。また、フランス国立農業研究センターとは鱗翅目ゲノム研究の推進に関して共同 研究を締結している。 ◎今後、その波及効果を把握し、一層の連携の強化につなげることを ◎また、ダイズやカイコ、ブタゲノム研究において各国と協力しつつ、データベースを 期待する。 構築して世界に発信することで、我が国の地位を確保している。 ◎バイオテクノロジーを活用した新たな生物産業の創出を目指した研 究開発については、研究レベルは高いものの、社会受容の観点から 開発には困難を伴うこともあると予測されるため、引き続き、研究開発 第2 国民に対して の推進とともに国民理解の促進に向けた努力を続けることを期待す 提供するサービスその る。 他の業務の質の向 ◎研究成果の公表と広報に関しては、著名な国際学術誌に多くの論 上に関する目標を達 文が掲載されるなど、着実に実績をあげている。しかしながら、一部の 成するためとるべき 科学コミュニティーへの成果発信にとどまっている感があり、国民への 措置 研究成果のアピールについては、さらなる努力を期待する。 2-1 試験及び 研究並びに調査 (別紙) 3 ◎遺伝子組換え研究推進室及び広報室が協力し、引き続き双方向コミュニケーショ ンを図るとともに、市民参加型展示を企画して組換え作物の理解促進を図った。 ◎本年度は、アグリビジネスフェアー、サイエンスカフェ、文科省のSSHの一環として のサイエンスキャンプ等に特に力を入れた。 ◎遺伝子組換えカイコを用いた有用物質生産では、研究者に加え行政、民間関係者 が参画した検討会を設置し、国民の理解を得るため段階的に環境を整備することに よって、実用化を目指している。 ◎遺伝子組換え農作物についての情報提供が国民の理解にどのよう ◎遺伝子組換え農作物に対する新聞やアンケート調査等の結果を注視しながら、国 につながっているのかを検証しながら国民との双方向コミュニケーショ 民理解と双方向コミュニケーションを深めるために市民参加型展示ほ場を開催し、一 ンの確保、その拡大・深化を進めることを大いに期待する。 般市民を募り、実際に除草などの農作業を体験しながら各種農業技術や遺伝子組換 え農作物の生産現場における必要性等について情報提供する場を設けた。さらに県 民大学における講義や、お茶の水女子大学公開講座『化学・生物総合管理の再教 育講座』を企画し講義を行うことで、様々なチャンネルを用いた情報提供を試みた。 2-2 研究成果 ◎普及に移しうる成果、新品種・中間母本登録出願、国内特許出願に ◎普及に移しうる成果については、所内審査を厳しくしているため件数が少ないが、 の公表、普及の ついては、数値目標の達成に向けた進捗が遅れており、一層の努力 研究が進展する中期計画期間後半には増えると考えられる。 促進 を期待する。 ◎特許等の出願については、特に遺伝子特許が減っている。これは特許侵害の検 証が難しいことなど、特許保有の有効性を厳しく検証した結果であり、費用対効果を 考慮した特許出願の見直しを検討したい。同時に、特許出願講習会、特許情報検索 講習会等を開催し、職員の特許等出願意識の向上を図り、数値目標の達成に努め る。 ◎今後、専門家集団としての知識と情報を利用したさらなる社会貢献 ◎現在連携大学院協定を積極的に結び、専門分野の教授として若手の育成に貢献 している。 2-3 専門分野 を行うことを期待する。 を活かしたその 他の社会貢献 ◎可能性のある外部資金については、これまで同様グループウェアを通じて周知す るとともに、研究領域長を通して直接研究者に応募を奨励する等、努力を強化する。 ◎今後、可能性のある制度に幅広く積極的に応募し、外部資金の獲 得に向けた努力を強化することを期待する。 第3 予算(人件費 の見積もりを含 む。)、収支計画及 び資金計画 ◎競争入札促進のため、平成19年9月に会計実施規則、契約事務実施規則等の規 定を改正し、10月1日から施行。随意契約の限度額を超えるもの並びに一般競争契 約によったものについて国の基準に準じて公表している。また、随意契約見直し計画 に基づき、平成20年度契約については、原則として随意契約限度額を超える案件に ついては一般競争契約へ移行することとし、経費節減に努めていく。 ◎また、入札監視委員会、契約審査委員会及び内部監査により透明 ◎平成18年度施工分入札監視委員会を平成19年12月10日に開催し、審議概要等に ついてはホームページで公表している。契約審査委員会において、会計規程第37条 性、公平性等が常に検証されていることを期待する。 第1項を適用する随意契約理由について、第1号適用(契約の性質又は目的が競争 を許さないとき)5件、第3号適用(競争に付することが、不利と認められるとき)1件に ついてそれぞれ審査を行い、随意契約により契約することが真にやむを得ないものと して承認した。平成19年度の内部監査は8部門(庶務室、経理室、管理室、生物遺 伝資源管理室、常陸大宮庶務チーム、研究企画調整室、産学官連携推進室、安全 管理室)を実施した。監査結果については所内LAN(ガルーン)に公表している。 ◎一般競争入札の拡大を図り、競争性の確保に努めていることは評 価できるが、今後、規則の改正を行うなど、さらに一般競争入札への 移行を加速させ、競争性、透明性、公平性が高められ、経費節減効果 が現れることを期待する。 第4 短期借入金の 限度額 (該当なし) 第5 重要な財産を 譲渡し、又は担保に 供しようとするとき は、その計画 (該当なし) 4 第6 剰余金の使途 (該当なし) 第7 その他農林水 産省令で定める業務 運営に関する事項 等 (対応を要する意見なし) ◎施設が今後有効に活用され、研究の効率的な推進、快適な執務環 ◎19年度に策定した、中期計画期間及びさらにその先を見通した研究施設の計画的 7-1 施設及び 境が維持されるよう、計画的な施設整備が継続することを期待する。 改修・修繕整備計画については、適宜必要な見直しを行って、研究の効率化、加速 化を図る。 設備に関する計 画 ◎女性研究者の積極的な採用など、女性の能力活用についても、引 ◎平成20年4月採用の5ポストの内、1ポストは女性を採用することとなった。このポス トは、ユニット長である。今後とも、女性研究者の能力活用や、次世代育成のための き続き努力することを期待する。 7-2 人事に関 仕組みを整えてゆきたい。 する計画 ◎今後とも研究所の諸活動に関する各種情報については、ホームページにより正確 かつ迅速な公開に努める。また、法人文書の開示についても、正確かつ迅速な情報 提供を行うよう努める。 ◎引き続き、情報の適切な公開と保護に努めることを期待する。 7-3 情報の公 開と保護 7-4 環境対 策・安全管理の 推進 ◎今後とも、関係する法令の変更に対応しつつ、適切な管理を継続す ◎適切な安全管理の継続に努めている。平成19年度は、屋外で栽培される第1種 使用規程承認遺伝子組換え作物の使用に関する所内規程を改正し、管理体制等の ることを期待する。 整備を図るとともに、栽培等作業担当者に対する教育訓練を実施した。また、感染症 法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の改正施行(平成 19年6月)に対応して、所内の微生物実験安全管理規程を改正し、法令遵守に関す る注意喚起を行った。その他RIや動物実験等の研究業務における安全意識向上活 動や研究施設の点検調査などを実施した。 5 平成20年3月31日 平成18年度業務実績評価結果の対応状況 法人名 : 独立行政法人 農業生物資源研究所 中期計画の対応箇所 第2-1 試験及び研究 並びに調査 評価結果における意見・指摘の内容 法人の対応状況 - ◎カイコゲノムリソースも着実に充実しているが、今後はこの優位性を産業にどのように活かす ◎国外からの遺伝資源の導入に関しては、特にアジア地域を重 視し、複数年にわたる研究協定を積極的に結び、共同現地調査 のかが課題である。 と収集遺伝資源の多様性の共同解析を通じ進めている。 ◎ジーンバンク事業は着実に進展しているが、国外からの生物資源の入手が困難となる国際 ◎イネゲノム研究については、国際的なリーダーシップを示すた め、佐々木理事を大会委員長として2007年10月に第5回国際 環境の中、着実な実施に向けた戦略的な取り組みを期待する。 イネ機能ゲノミクス国際シンポジュームをつくばで開催した。ダイ ズゲノムについても、2007年4月に第1回国際ダイズゲノム会議 をつくばで開催した。 ◎イネ、ダイズ、カイコ及びブタのゲノムを中心に引き続き世界をリードすることを期待する。 A アグリバイオリソー スの高度化と活用研究 B ゲノム情報と生体 情報に基づく革新的農 業生産技術の研究開 発 - 6 ◎平成18年1月から全ゲノム解読を本格的に始めた国際ブタゲノ ムシーケンシングコンソーシアムに、農業生物資源研究所も参画 し、昨年度と同様に今年度も担当するブタゲノムを解読すること により、国際的貢献を行なっている。日本が優位に立っている遺 伝子発現情報を充実させるため、ゲノム解読に用いているブタの クローン個体由来組織から完全長cDNAライブラリーの作成に向 け、イリノイ大よりサンプル提供を受ける手配を進めている。今後 順次公開されるゲノム塩基配列について、アノテーションをコン ソーシアムの中で行うことになっており、当研究所としても参画す ることを検討している。 ◎日中カイコゲノム統合データが近日中に公表されることになっ ているので、それを利用した遺伝子機能解析が世界中から関心 を持たれる。わが国が優位性を維持するためにも完全長cDNAの 解読を精力的に進めている。また産業への利用を図るため、オー プンラボを設置し所内外の研究者を受け入れる体制を作ることに なっている。 ◎引き続き、重要な遺伝子の機能解析を推進することが重要である。 1) イネの環境適 応機構の解明と利 用技術の開発 ◎耐病性関係では、2007年度農水10大成果トピックの1位に 選ばれたWRKY45を中心に、実用化に向けた研究と、その基盤を なす基礎的解析を進めた。H19年度には、圃場抵抗性を付与する 遺伝子の同定を達成し、その解析から、WRKY45との関係も見え てきた。穂発芽耐性や種子収量増加を付与するQTLの原因遺伝 子等の機能解析を行った。今後とも農業形質に重要な遺伝子の 解析を進めていく。 ◎カイコを材料にした研究を中心に様々な昆虫の興味深い研究が展開されており、個別には 順調に進んでいると評価できるものの、環境適応機構の解明と昆虫の制御技術の開発という 2) 昆虫の環境適 研究目標の達成に向けた成果を多くあげることを期待する。 応機構の解明と制 御技術の開発 ◎環境適応機構の解明については継続的に進めていく。また、 昆虫制御剤の開発という目標については発育制御剤特に幼若ホ ルモン代謝系の解明における成果を積極的に発信し、企業との 連携を構築していく。 ◎課題によってはテーマの重点化や成果の活用場面の検討なども考慮することを期待する。 ◎発生分化に関する分野においては、中期計画の内容に加え、 家畜幹細胞の樹立・培養技術および家畜幹細胞からの配偶子生 産等に関する生殖工学技術を確立することにより、生殖系列を個 体から切り離した全く新しい家畜改良・繁殖技術の開発を、ユニッ ト内で横断的に実施している。 本能行動の制御要因の解明分野 おいては、繁殖機能制御を司る最上位の中枢神経と予想される メタスチンニューロンについての研究を、武田薬品との共同研究 や生研センタープロジェクトの参画等により重点化している。来年 度は、マンパワーの補充も予定している。学習に関する研究部分 は、平成20年度で学習と海馬の神経機能の関係についてほぼ当 初の目的が達成可能なことから、平成20年度の研究計画の実施 をもって終了し、代わる研究テーマを検討する。 3) 家畜の発生分 化・行動の生体制 御機構の解明 ◎生物間相互作用の制御技術の開発においては、生物的防除技術の新たな素材開発などに ◎生物的防除技術に関して利用技術につながる研究成果が期 4) 生物間相互作 関して成果があがっているが、今後は研究分担を整理し、利用技術につなげる方策を検討する 待される分野についてできるだけ重点化する方向を考えている。 用の解明と制御技 ことを期待する。 術の開発 ◎今後、他の研究ユニットとの連携を一層深めるとともに、研究成果の取りまとめを急ぐことが ◎植物分野のみならず、昆虫分野との連携も積極的に推進して いる。論文取りまとめに関しては、第2期中期計画に入り開始した 求められる。 5) ゲノム情報に基 研究の成果が出始めており、特に幼若ホルモン結合タンパクや づくタンパク質の構 SUMO化の解析では、近々に複数の密度の濃い論文を投稿でき 造と機能の解明 る状況になった。 7 C バイオテクノロジー を活用した新たな生物 産業の創出を目指した 研究開発 - ◎社会受容の観点から開発には困難を伴うこともあると予測されるが、今後も、研究開発の推 ◎消費者に安心感を与える遺伝子組換え技術の開発を進めてい 進とともに国民理解の促進に引き続き努力を重ねていくことが求められる。 る。特に、特定の遺伝子のみを改変することができるジーンター ゲティング技術は自然変異に極めて近いものであり、また遺伝子 改変の結果起こることも予想範囲内で易しく説明ができることか ら、この技術をより洗練されたものにすべく、研究を推進してい る。一方で、所として取り組んでいる遺伝子組換え技術の理解に 向けての広報活動や啓蒙活動に協力している。今後協力をより 深めていく予定である。 ◎遺伝子組換えカイコによる医薬品開発に関しては、H19年度か 1) バイオテクノロ ら行政部局、民間関係者の参画も得て検討委員会を設置し、早 ジーによる有用物 期実用化に向けての検討を進めている。 質生産技術の開発 ◎花粉症緩和米は、今後、医薬品として開発することとなったが、今回の経験を今後の研究開 ◎花粉症緩和米やワクチン米などは、消費者が直接メリットを享 発に生かし、研究の初期段階から関係者との緊密な連携のもとに推進することを期待する。 受できる組換え農作物の開発の一環として進めてきたものだが、 医薬品となったことから、方針の変更を余儀なくされた。技術自体 は高い将来性を秘めたものであることから、まずは種子を用いた 腸管へのタンパクのデリバリー技術としての基礎研究を充実させ ることとした。機能性食品としての開発が可能なものについては、 今後ともパートナーを模索しつつ開発を進めていく。 2) シルクテクノロ ジーによる生活・医 療素材の開発 ◎一方で民間との共同研究の充実、素材の安全性点検にも取り組むことを期待する。 8 ◎民間との共同研究は積極的に進めている。また素材の安全性 点検にもモルモットを用いた感作評価により行っている。
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