クリオスターNX70 / EVOS FL Auto Cell Imaging System 実験入門者の練習や学生実習に 食肉サンプルを使った凍結切片の蛍光染色 大滝真作1、小林英夫2 1 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 アナトミカルパソロジー部 2 サーモフィッシャーサイエンティフィック ライフテクノロジーズジャパン株式会社 イントロダクション 近年、蛍光染色は細胞観察の技法として非常に身近な ものとなっている。しかし、実 際 の 実 験に使 用するサン プルは貴重なものが多く、基本的な実験手技を学ぶの が難しいという問題点がある。例えば、ヒトの検体であ れば、練習に使うことはなかなか難しく、マウスのサンプ ルであってもマウスを解体する必要があり、入門者には 敷居が高い。また、実験に用いる抗体も貴重なものが多 く、入門者が手技の練習のために消費してしまうと、本番 の実験までに貴重な抗体を使い果たしてしまうという問題 点もある。本アプリケーションノートでは、入手が簡単な食 肉サンプルを用いた蛍光染色実験例をご紹介する。動物 種を選ばない染色試薬を使用するため、蛍光染色入門者 の手技の練習や、学生実習などに最適な実験方法である。 材料および方法 サンプルは、スーパーマーケットで市販されている豚タンを 購入した (図1) 。購入した豚タンをカッターで約1cm角に切っ た。この豚タンをクリオスタット内にセットした試料チャック上 に静置し、 クリオマトリックスコンパウンドで包埋した。そして Thermo Scientific™ クリオスター NX70の凍結バー機能を 利用して、凍結を行った。切片の作成にはMX35 Ultraの替刃 を用い、厚み 10µmの切片を薄切りした。 試料ヘッドと替刃 は-20℃で温度制御した。切片をカラーフロストプラススラ イドホワイトに乗せたものを蛍光染色に用いた。 図1. スーパーマーケットで 購入した豚タン 精肉コーナーで売られている 通常の豚タンを購入し、実験 に用いた。 蛍光染色の手順 切片を風乾 ↓ 4% パラホルムアルデヒド in PBS, 15 min で固定 ↓ 10 mM Glycine / PBS, 3 min × 3 回 で洗浄 ↓ 0.5% Triton X in PBS, 10 min で膜透過処理 ↓ 10 mM Glycine / PBS, 3 min × 3回 で洗浄 ↓ 200 µL の染色液で染色 ・Alexa Fluor 594-phalloidin(final 5 units/mL) ・Alexa Fluor 647-Wheat Germ Agglutinin(final 5 µg/mL) ・Hoechst 33342(final 2.5 µg/mL) (1% Normal Goat Serum/PBS に溶解) ↓ Incubation 1 hour ↓ 1% Normal Goat Serum/PBS, 3 min × 3 回で洗浄 ↓ SlowFade Gold でマウント ↓ EVOS FL Auto Cell Imaging System で観察・撮影 クリオスタット クリオスター NX70 • タッチパネルで簡単操作 • 操作画面の日本語表記 • 本体高さ調節機能付き 蛍光顕微鏡 EVOS FL Auto Cell Imaging System • 暗室いらずの蛍光観察 • 画面を見ながらみんなで観察 • デジタルデータを簡単取得 結果および考察 Invitrogen™ EVOS FL Auto Cell Imaging Systemで蛍光 観察した。それぞれの蛍光を別々のフィルターで検出し、重 ね合わせたのちに、それぞれの蛍光を擬似色で表示したも のを図2に示す。豚タンでも、部位によっては複数種類の細 胞が存在しており、 核:青、 細胞膜:緑、 F-アクチン:赤で染め分 けることができた。今回使用した蛍光試薬は哺乳動物であ れば幅広く使用できるものであり、宿主特異性がない。今 回は豚タンを用いて実験を行ったが、豚以外の食肉であっ ても、 またタン以外の臓器であっても、実験が可能であると Hoechst(核) WGA(細胞膜) 思われる。切片作成、 そして蛍光染色の手技を学ぶためには、 繰り返し実験を行い手技を身に付ける必要がある。食肉サン プルは比較的手に入れやすいサンプルであるため、 入門者で も実験に取り組み易いであろう。十分に手技を身に付けた後 に、 ヒト、あるいはマウスのサンプルで本番の実験を行うこと ができれば、本番の実験での失敗のリスクを低減させること ができる。本実験で切片作成、蛍光観察の基礎を身に付け、 より難しい実験にステップアップしていただきたい。 Phalloidin(F-アクチン) 重ね合わせ (疑似色) 図2. 豚タン切片の蛍光観察例 Hoechst、WGS、Phalloidin を個別の蛍光フィルターで検出し、疑似色をつけて重ね合わせた (青:核、細胞膜:緑、F-アクチン:赤) Ordering Information ブランド 製品名 包装 クリオスター NX70 Thermo Scientific 一式 クリオマトリックス 956960 120mL × 4 6769006 Shandon ミクロトーム替刃 MX35 Ultra 50 / 包 3053835J カラーフロストプラススライドホワイト 144 / 包 6776214 EVOS FL Auto Cell Imaging System 一式 Hoechst 33342, Trihydrochloride, Trihydrate 10 mg/mL Solution in Water Invitrogen 製品番号 Wheat Germ Agglutinin, Alexa Fluor 647 Conjugate Alexa Fluor 594 Phalloidin Normal Goat Serum (10%) SlowFade Gold Antifade Mountant 10 mL 5 mg お問い合わせ H3570 W32466 300 units A12381 100 mL 50-062Z 10 mL S36936 製品の仕様、外観等は予告なく変更されることがあります。 ライフテクノロジーズジャパン株式会社の標準販売条件は、こちらをご覧ください。www.thermofisher.com/TC ©2015 Thermo Fisher Scientific Inc. All rights reserved. All trademarks are the property of Thermo Fisher Scientific and its subsidiaries unless otherwise specified. APD046_A1510IH Thermo Scientific ブランド製品 Invitrogen ブランド製品
© Copyright 2024 Paperzz