1/x の世界の不思議

1/x の世界の不思議
《はじめに》
これは若い頃から長年、気になり続けていて 50
年掛かりですっきりしたつもりになっている問題で
ある。この導出は書いてある本を見たことがない。
ある種の本で 10 年程前に、この導出を見たことがあ
るのだが、e や結果を知っているからと言うような
ごまかしのように見えて納得が行かない。こんなこ
とで 10 年「代数的に積分で正攻法で求める方法」が
あるのではないかと延々と気になっていたものであ
る。
まず、指数部分を整数として、こんな対応を考えて
みよう。
微分→ ←積分
(1/3)(x^3)’=x^2 ←→∫x^2dx=(1/3)[x^3]
(1/2)(x^2)’=x ←→∫xdx=(1/2)[x^2]
(x^1)’ =1 ←→∫1dx=[x^1]
(x^0)’ =0 ←→∫0dx=0
??? ←→∫(1/x^1)dx=[???]
-(1/x)’ =1/x^2 ←→∫(1/x^2)dx=-[1/x^1]
-2(1/x^2)’=1/x^3 ←→∫(1/x^3)dx=-2[1/x^2]
-3(1/x^3)’=1/x^4 ←→∫(1/x^4)dx=-3[1/x^3]
この流れで考えてみると「積分から見て1個所対応が取れないところが出てくる」のである。1/x を積分す
るとどうなるのだろう?欠落部分は不思議である。
下記の公式がある。
𝑥 !!! 𝑑𝑥 =
!!
!
𝑛 ≠ 0 ⋯ 1𝑎 𝑥 !! 𝑑𝑥 = 𝑙𝑜𝑔𝑥 𝑛 = 0 ⋯ (1𝑏)
n は実数、は誰でも知っている微積分である(と言いたいところだが、整数の場合はともかくとして、自然
数や無理数までの証明は、こんな風にすればよいはずである。n=0 の時だけ違和感がある関数となっているよ
うに見えるのだが、やって行くと、これは関係ある一連の関数であることがわかる。
x^n、a^x、e(exponential)は微積分一族では親戚関係にあることもわかって面白い。
・ まず、𝑦 = 𝑥
!
! であるから、𝑦 !
= 𝑥 ! のようにして、これを辺々微分して、x^(m/n)(m,n は整数)の微
分を証明する。・・・有理数の場合を証明
!
・ さらに、𝑦 = 𝑥 ! ! =
!
!
として部分積分で証明出来る。
!!
・ x^(m/n)と x^(m/(n+α))(αは有理数)に挟まれる有理数は上で証明出来ているから、m/n の比を一定に
して、限りなく大きくして行けば、特定の無理数はこの間に挟み込めることになり、無理数でも成立す
ることがわかる。
1
更に不思議なことは、ポテンシャルエネルギー、万有引力、電磁気力など 1/X(距離などに反比例)
を要素とする基本現象が多々あるということである。1/X は自然界を制するもののように思えてくる。
《有理数と無理数におけるy = 𝑥
!
! の証明》
𝑦 ! = 𝑥 ! 両辺を x で微分すると、
(左辺)
!"
!"
=
𝑑
𝑑𝑦 𝑑
𝑑𝑦
𝑑
𝑦! =
𝑦 ! = 𝑛𝑦 !!!
= (右辺)
𝑥 ! = 𝑚𝑥 !!! 𝑑𝑥
𝑑𝑥 𝑑𝑦
𝑑𝑥
𝑑𝑥
!! !!!
!! !!!
=
! ! !!! !
!!
!
=
! ! !!!
! !!
!
!
𝑥!
=
!
!
𝑥
!
! !!
!
となり有理数においても成立することがわかる。
これがわかれば、x^(-m/n)の場合も部分積分で証明できる。ただ、これを納得するためには dx,dy のような
演算が機械的に出来ることを完全に理解しておく必要がある。
!
無理数の場合は、その無理数を必ず、 𝑥
!
!
!!
!
と
!!!
!
𝑥
!!!
!!
!
との間に挟み込むことが可能であり、
m/n の比を一定に保ちながらの極限は両方とも一致するので、無理数における成立もわかる。対数
などは、そもそも有理数を無理数で表現しているのであって、当然と言えば当然と言えるのだろう。
《1/xの追求》
1/X だが、知っている逆関数の微分から探ってみると、
𝑦 = 𝑙𝑜𝑔𝑥 𝑥 = 𝑒 ! 𝑑𝑥 𝑑(𝑒 ! )
𝑑𝑦
1
1
=
= 𝑒 ! = 𝑥 = ! = ⋯ (2𝑎)
𝑑𝑦
𝑑𝑦
𝑑𝑥 𝑒
𝑥
ここでは範囲もなく定義されてしまう。ただ、これは e の微分を知らなければわからないことであり、知ら
ない段階では説明ができないものである。 dx や dy をあたかも常数や変数のごとく扱ってしまう点である
が、これは別途理解していただくしかないのは前述のごとくである。簡単な理解の方法だが「dy/dx は勾配
をイメージすれば、単に dx,dy のように分離して考えてよい、dx/dy と逆になったらグラフを左右反転や回
転させて考えればよい」と言うだけである。
これを積分して元に戻そうとする。1/xであるから 0 からの積分は出来ないので、
!
!
1
𝑑𝑥 =
𝑥
!
!
!"#$
1
𝑑 𝑒! =
𝑒!
!"#$
1 !
𝑒 𝑑𝑦 =
𝑒!
!"#$
𝑑𝑦 = 𝑦
!"#$
!"#$
!"#$
𝑥
= 𝑙𝑜𝑔𝑥 − 𝑙𝑜𝑔𝑎 = 𝑙𝑜𝑔 ⋯ (2𝑏)
𝑎
と a 入りになってしまう。ただ、これも e^y は微分しても変化しないということを知っているからこその式
の誘導である。
前者後者は微妙に違ってくる。あっさり明らかになってしまうと言いたいところだが a のあるなしは不思
議である。何故そうなるのかだが、(2a)では積分常数が省略されてしまっているからである。原型は c を加
えて、
𝑦 + 𝑐 = 𝑙𝑜𝑔𝑥 𝑥 = 𝑒 !!! 𝑑𝑥
𝑑𝑦
1
1
= 𝑒 !!! = 𝑥 = !!! = ⋯ (3)
𝑑𝑦
𝑑𝑥 𝑒
𝑥
となる。これは、c=0 の時と比較すると同じ x において e^c だけ y 軸がずれている曲線である。
c=0=log(a)∴a=1 としてやると(3)と(2a)は一致する。
この c=0 即ち a=1 は定義である。即ち、1/x の 1 から x までの積分を log と定義しているのである。
2
《代数的正攻法で》
ここからがやりたかったこと、発見?したことである。
こんな疑問は若い頃から持っていたから 50 年にはなるだろう。72 歳も半ば過ぎたあるときに、例えば
x^(-1.001)・x^(-0.999)のようなものも指数関数で(1a)の式が適用できるのであるから「極限で考えたらど
うだろう」と偶然思った。x^(-1)はこれらに挟み込まれている関数であって、結果の存在は明らかである。
そこで、極限値へのアプローチをしてみる。これは不定積分であっさり下記のような式が出てくる。
!
𝑛 ≠ 0 𝑡
1
𝑑𝑡 = 𝑡 !
𝑛
!!!
!
𝑥 ! − 𝑎!
=
⋯ (4)
𝑛
!
!
積分範囲を基点 a としてあるのは、調べる関数に x^(-n)のような関数が含まれており、積分範囲として t=0
を含めては具合が悪いからである。この式でn を 0 に近づけたときに(4)がどうなるかである。一見すれば
0/0=不定であるがそれはおかしい。0 への近づき方が問題であるからである。
はて?と考えている、とある微積分の演習の参考書に「ド・ロピタルの定理」と言うものがあることがわか
った。これはある意味では簡単な定理であって、適用条件はあるのだが f(0)/g(0)=0/0 の極限値がこのよ
うなものになる場合で、lim!→!
!!(!)
!! !
= 𝑙 が存在しているときは、lim!→!
!(!)
!(!)
= 𝑙 というものである
(後述:簡単に理解できるし、図でも書いてみれば直感的にもわかる)。
これを利用すれば、
𝑑
𝑥 ! − 𝑎!
𝑓 𝑛
𝑥 ! − 𝑎!
𝑙𝑜𝑔𝑥 ∙ 𝑥 ! − 𝑙𝑜𝑔𝑎 ∙ 𝑎 !
𝑑𝑛
lim
= lim
= lim
= lim
𝑑
!→! 𝑔 𝑛
!→!
!→!
!→!
𝑛
1
(𝑛)
𝑑𝑛
𝑥
= 𝑙𝑜𝑔𝑥 − 𝑙𝑜𝑔𝑎 = 𝑙𝑜𝑔 𝑎 = 1 𝑎
x
!
1
𝑑𝑥 = 𝑙𝑜𝑔𝑥 ⋯ (5)
𝑥
とあっさり結果は求まってしまう。ただ、この指数の微分過程で下記のように、指数の微分や e を知らなけ
ればならないもので、それを知らなければできないものである。
そこで我流だが、こんな定理を知らなくとも、こんな方法が考えられる。
lim!→!
! !
𝑎
! !
!
! ! !!!
!!
!
! !
= lim!→! 𝑎
= 𝜀
! !
!
𝑡 → ∞ 𝑛 → 0 で
! !
=1+
!
!
!!!
!
!"
!!
= 1+
!
!
= 𝜀 の様な値が存在すると仮定し、以下のように式を変形する。
!
!
!
= 1+
!
t !
!
=
!" !
!"
!!
!!
1+
!
! !
!
!
= とすると
!
= 𝑒 ! ∴ 𝜀 = log
!
!
= log (𝑥) − log (𝑎) である。
ただ、n=0 は最終結果に入れることに注意しなければならない。また、ここでは指数の微分を知らなけれ
ばならない。a^x の微分が log(a)a^x となることを理解していなければならない(指数の微分参照)。指数の
微分は上のようになるのだが、指数の微分というものを追求すると、e の計算にぶち当たり、e の存在を知る、
多分これが一番オーソドックスな e との触れ合いになるのだろう。何故ならば、高校などでは n を整数とし
て x^n の微分を習う。ただ、その有理数や無理数への拡張は教えない。指数や常用対数は上辺とは言え中学
時代から知っている。ただその計算方法を調べようとすることはなかった。高校で微分を習う、では指数 a^x
の微分は?とある程度の頭の人はそう思う。こうなると e の計算にぶつかるからである。ただ、それらは大
学からのこととして、高校ではこれは跳ばしているのかも知れない。ところが大学でもそんな説明はなかっ
たような気がする。私の場合は高校時代にこのような疑問を持ち、一般的な数学参考書から e を知ったよう
な記憶がある。e は知ったが、それ以上は追求もせず無知だったと言うことである。ただ、自然界や科学界
3
ではやたらに e や log が出てきて、その理由がポテンシャルなどでの 1/xの関係、これは自然界の大変な関
係、ということを意識したのは 70 歳を過ぎてからだった。
(5)の式でだが、x^0=1 ではあるのだが、単純にそう扱ってはならない部分が出てくる。純粋な 1 と不純な
1 とも言うべきものだろう。不純な 1 は慎重に扱うべきと言うことだろう。零にも次元が在り 0 でも 0^2 の
ようなものもある。同じ次元の 0 ならば 0^0=1、0^2/0=0、なのだろう。x^0=1 とは性質が違うと言うことな
のだろう。不思議のまた不思議である。
感覚を養うために n を振りながら MicrosoftExcel で
! ! !!!
!
を計算してみると次図のようになる。
ただし、n=0 は計算出来ないので log で代用している。
見にくいが log は真ん中に挟まれている。
こんなあっさり、すっきりも珍しい。
2.5000
しかし、世の中の参考は、結果だけ示し
ているだけで、こんな解説を見たことが
2.0000
全くないのは極めて不思議なことである。
1.5000
この結果からわかることは、
・
1.0000
0.5000
0.0000
1 6 11 162126313641465156
-0.5000
-1.0000
-1.5000
x^n を並べた側(n=1,2,3・・・)
x^-1.05
からは見えないが、logx もあると言うこ
x^-1.03
とである。
x^-1.01
・
x^-1
積分では x^0 を単純に 1 として
扱ってはならないと言うことである。2^
0 も 3^0 も 1 なのだが、同じ 1 ではない
x^-0.99
と言うことである。
x^-0.97
・
x^-0.95
ことでもあるのだが、宇宙や数学上には
-2.0000
-2.5000
-3.0000
極限の 0 と真の 0 は違うという
極限の零があっても、その他の零は存在
しないと言うことなのだろうか。
学校などでは 0/0=不定 などとしてそ
れ以上は説明しない。これがおかしいこ
とである、0 の中身によっては定まる場合
もある、0 の中身が問題であると言うことである。有理数は無限大ある。無理数も無限大ある。ただ、無理
数は有理数より無限にある。これも似たようなものである。
こんな例だが、ポテンシャルエネルギーは 1/r という要素を持っている。例えば地球の中心を通過し裏側
に抜けるトンネルを考え、その中を物体が通過させてみる。地球の裏側まで到達するには r=0 というポイン
トを通過し、何か 1/r という要素がある式は不連続になるように思える。しかし、実際問題として不連続は
あり得ない。中心では加速度は零になり通過するだけである。
何故だろう。計算式を考えて行くと、計算の途中で分母に r は出てくるのだが、r=0 では分子にも重力を与
える質量がなくなると言う r^3 要素が存在し消えてしまうからである。重力は GMm/r なのであるが、r=0 の
ところでは M も r^3 に比例して減り続けており、0^3/0=0 となっているのである。わざわざ、r=0 を不連続
4
の特定の条件として考慮する必要もないのである。
量子力学の世界はどうだろう。水素分子はある原子間距離を持っている。核融合してヘリウムに変わった
とする。原子核間距離は少なくとも核の直径程度になり大幅に減るが完全な 0 にはならないだろう。これが
零となるのはブラックホールかも知れないし、それでも何らかの r は存在しているのかも知れない。光だが
質量在りという。光以外の物質を光速度まで上げることは無限のエネルギーを要し出来ないという。光の粒
が光の速度まで上がった時の質量が光の質量とするならば、そもそもの粒は無限小のさらに無限小の世界に
なるのだろうか?ダークマターとは何だろう。
蛇足だが音程も log である。半音で 12 音上に行くとオクターブ上(倍の周波数)になる。これは X^(12)=2
と言うことで、X=1.05946・・・となるのだが、これも e 絡みの指数なのである。この値を掛けると半音上に
ということで Hz の差はドンドンと開いて行くのである。
星の明るさの等級だが 5 等級下を 1/100 と定義している。多分これは X^(5)=100 である。x=2.5118・・・な
どとなるが、多分これは e=2.81828・・・を知らない時に定めた e の近似値なのではなかろうかと思う。
我々が通常使っている数字は、生活用数字・経済数字で自然界は e と指数なのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
《参考》 「ド・ロピタルの定理」の簡単・直感的な説明
例として、lim!→!
!"#$
!
を考えてみる。単
純な結果は 0/0 となり不定になってしま
う。ところが y=sinx は x=0 の近傍では 1
の勾配を持つ関数であり、y=x は一次関数
で勾配は 1、x=0 では相互に接している関
数である。結果極限の比は勾配の比と同
じで 1 であることがわかる(この場合は
テーラ展開でも結果は出せる)。x=0 でも
双方に勾配は 1 としてあるはずである。
式で示せば、
lim!→!
!"#$
!
= lim!→!
!
(!"#$)
!"
!
(!)
!"
=
!"#!
!
= 1 である。sinx も x も同次元の零であるから x=0 であっても答は 1 なのである。
5
1/x と生活
最近、世の中は 1/x と考えることが多い。歳をとり、何事にも面倒になり「物事は簡単に考えたい」とい
う願望が強くなった時に、こんな計算に取りかかっていたからである。そんなことで、何か考える時に 1/x
を思い浮かべることが多い。何事も遠いところとの影響は近いところより小さいと思うからである。
例えば x は、人間関係・親族関係、ある施設の距離である。紛争国や貿易国の間の距離などもある。ただ、
人間関係なら好き嫌い・専門・趣向などがあり、施設の利用度なら適性・価格・広さなどの様々な要素が加
わるので、それらの要素を加味して考えなければならないのは当然である。
なぜ 1/x
ただ、基本的に一番わからないのは重力・電荷など何故 1/xなのだろうかと言うことである。これらは三
次元空間に影響を与えているのだから、直感的には 1/x^3 ではないのだろうかと言う疑問である。でも、
それはもう諦めて、こういうものだと思うようにしている。
《終わりに》
合っているかどうかはわからないのだが、面白い数学遊びをやってみた感じである。もう 75 歳通過、今更
理工学をやり直すつもりも時間もないのだが、こんなことが少なくとも大学時代にわかっていたら、いろい
ろと人生は変わっていたのではないか、技術者としてもっと深い追求が出来たのではないかなどとは思う。
これからの若い人は、こんなことが厳密にわかって先に進んで欲しいと思う。
以上、大学の電気科を卒業し、電気通信企業でこのような数学とは無縁な論理設計に従事し、50 歳頃に家
の事情で退職し不動産賃貸を開始、今 75 歳になっている爺人間が最近思いはじめたことである。こんなこと
で、歳もとったし遠いところとの関係は徐々に薄めるのが私の考えであり、基本になっている。
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