平成 26 年 3 月 25 日 No.452 不動産賃貸業に係る消費税の取扱い 消費税及び地方消費税の合計税率が 8%に引き上げられる日が間近に迫ってきました。消費税の税率が上がれば取引額 のうち消費税の占める割合が当然増えるため今まで以上に消費税を意識して事業活動を行っていく必要があります。そこ で、不動産賃貸業を行う方の消費税について課税区分の判断事例の一部をご紹介します。 1.不動産賃貸に伴う消費税の課税区分 不動産賃貸により生じる取引のうち代表的なものとして以下の取引があります。 消費税が課税される取引 事務所・倉庫などの賃貸料 消費税が非課税となる取引 居住用家屋の賃貸料 賃貸料 駐車場の賃貸料 土地の賃貸料 礼金・敷引収入(上記取引に係るもの) 礼金・敷引収入(上記取引に係るもの) 譲渡 事業用建物の譲渡 事業用土地の譲渡 2,駐車場付住宅を貸付けた場合 駐車場付住宅の賃料については、原則的には受取る賃料を住宅部分と駐車場部分とに分けて課税対象を判断すること になりますが、その契約が以下の全ての要件に該当する場合には、受取る賃料すべてが住宅の貸付けに係る賃料として 取り扱われます。 ・入居について 1 戸当たり 1 台分以上の駐車スペースが確保されていること ・自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられていること ・住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないこと 3.違約金を受領した場合 契約期間中に賃借人より中途解約の申し出があり違約金として数か月分の家賃相当額を受け取った場合には、その違 約金は逸失利益を補填する性格の損害賠償金として取扱われますので消費税の課税対象とはされません。これに対し賃 貸契約期間終了後においても賃借人が立退かない場合等にその終了後の期間における賃料及び違約金を受け取った場合 は、その違約金の性格は賃料の割増としての性格を有するため、全額賃料として取扱われ、事務所等の賃料である場合 には全額課税の対象となります。 4.相続税の納税を物納で行った場合 個人事業者が相続税の納付のため賃貸用建物を物納した場合には、その物納行為は建物の譲渡として取り扱われ消費税の 課税対象とされます。この取扱いについては過去の裁決事例において以下のような判断がなされています。 ◆ 相続納付のための賃貸マンションの物納が消費税の課税対象となるかどうかを争った事例 (国税不服審判所 平成 12 年 10 月 11 日裁決、一部抜粋) [ 納税者の主張 ] ・相続税納付のための物納による資産の譲渡は事業としての行為ではなく、かつ、物納した財産は消費税が非課 税とされる住宅の貸付けの用に供していた資産であるから事業資産ではない。 ・物納につき所得税は課税されないのに対し消費税の課税事業者のみ消費税が課されるのは不公平である [ 判断] ・消費税の課税対象である資産の譲渡等には代物弁済による資産の譲渡を含むため、賃貸マンションにより相続 税を物納する行為は資産の譲渡等に該当する。 ・資産の譲渡等には、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等を含む旨が規定されており、事業の用に 供している建物の譲渡はこれに該当する。 ・消費税法には物納による資産の譲渡が非課税である旨の規定はなく不公平である旨の主張は認められない 上記事例から、相続税の納税のために賃貸マンションを物納した場合には消費税の課税対象とされ、代物弁済(物納) により消滅した債務の額(物納許可額)で資産の譲渡を行ったものとして取り扱われます。物納した資産が土地であれ ば非課税売上であるため消費税に直接的な影響は少ないものと考えられますが、建物の場合には物納許可額の課税売上 が計上されるため、課税事業者である方は消費税の納税額が増えることになります。また、課税事業者でない方も物納 許可額が 1,000 万円を超えるときは物納をした翌々年は課税事業者となりますので事業用資産を相続税の物納に充て るときはその影響を考慮する必要があります。 (担当:宮城 博之)
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