NO.14(2003.3) Indigenous Technologyの発掘と活用

NEWSLETTER No.14 MARCH 2003
-環境分野の途上国協力ネットワーク-
国
際
環
境
協
力
通
信
国際開発学会国際環境協力研究部会ニュースレター
Indigenous Technology
の
発
掘
と
活
国際開発学会国際環境協力研究部会主査
途上国の現場で仕事をしていると、現地で工夫され
た生活の知恵に学ぶことが多い。それらは科学的な根
拠は示されないで用いられているが、理論的な説明が
可能な場合も多い。このような現場の情報に科学の光
を当てて理論的に解明し、実用に耐える技術へと発展
させたいものである。以下に飲料水供給を例にとって
いくつかの例を紹介する。
バングラデシュで問題になっている地下水中のヒ素
の存在に現地では「グアバの葉を入れて黒くなる水に
はヒ素が入っている」と言われてきた。これはヒ素と
共存する鉄とグアバ葉中のタンニンが反応して黒くな
るという現象であろう。このような原水は簡単なエア
レーションと砂ろ過により家庭で鉄分とヒ素とを同時
除去でき、グアバの葉で変色しなくなる。バングラデ
シュの農村には、どこの家の庭にも植えてあるグアバ
の木の葉を利用し、視覚に訴える方法でヒ素除去のモ
ニタリングを行う手法は住民への衛生教育にもなると
期待されている。
またミャンマーの乾燥地域では、シルトで茶色く濁
った溜め池の水を伝統的に飲料水として用いているが、
用
を
北脇
秀敏
最近は深井戸の建設も行われている。ところが地下水
に塩分が多くて飲料水に適さない場合がある。このよ
うな場合、溜め池の水に少量の地下水を混合すれば塩
分による凝集沈殿効果により良質の飲料水が得られる
ことを一部の住民は知っている。援助機関がその混合
比率や沈殿・ろ過法などを記載したマニュアルを整備
し、技術移転すれば安全な飲み水の供給に大きく寄与
することができよう。
さらにインドネシアの一部などでは、地元に生えて
いるMolinga Oleifera(和名ワサビノキ)という植物
の種子をすりつぶして原水に混合し、高分子凝集剤の
代替物として用いられている。水供給はどこの国でも
死活問題であるため、このような適正技術が多くの途
上国で発見できるものと期待されている。
病気に効く薬に漢方薬(伝統医薬品)があるように、
水供給や環境衛生などの分野でも現地の経験から生み
出されたindigenous technologyがある。途上国援助に
おいては、先進国の技術を強引に移転するのでなく、
現地で入手可能な材料と知恵を使用した適正技術も選
択肢として考えるべきであろう。
国際環境協力研究部会講演会のお知らせ
第9回の研究部会講演会を以下の要領で開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
なお資料準備の関係上、出席希望の方はファックス、e-mailまたは郵送で下記連絡先までご連絡下さい。
演題:「水道分野のODA方針検討会報告」
話題提供:国包章一氏(国立保健医療科学院水道工学部長)
日時:平成15年5月31日(土)午後2~5時(終了後希望者による懇親会)
場所:東京都文京区白山5-28-20 東洋大学白山キャンパス1604教室(新1号館6階)
(最寄り駅:地下鉄営団南北線本駒込駅または都営地下鉄三田線白山駅)
連絡先:東洋大学国際地域学部北脇研究室
〒374-0193 群馬県邑楽郡板倉町泉野1-1-1
電話/FAX 0276-82-9022 e-mail: kitawaki@itakura.toyo.ac.jp
国際厚生事業団では平成14年度に「開発途上国保健衛生福祉開発企画推進事業(水道部会)として水道
分野のODA方針検討委員会」を実施し、水道分野の国別援助計画等の作成を行いました。国際環境協力研
究部会では、このたびその成果の発表を検討会委員長の国包氏に行っていただきます。水道分野の国際協力
の情報交換の良い機会ですのでふるってご参加下さい。
国
際
環
境
協
力
研
究
部
会
活
動
報
告
国際開発学会全国大会で活動状況展示
国際環境協力研究部会では、平成14年11月30
日~12月1日に上智大学で開催された全国大会にお
いて企画展示を行い、多くの会員のご参加を得ました。
控え室の一部を借りて行った展示では大学、NGO、
企業、協会等に所属する研究部会員有志が情報を持ち
寄り、開発途上国の環境衛生の現状の写真パネルや水
運搬用の手桶などが出品されました。
第8回国際環境協力研究部会講演会開催
平成15年2月8日に甫水会館で開催された第8回
国際環境協力研究部会講演会は約20名の方々のご参
加を得て開催され、活発な討議が行われました。講演
の概要は本ニューズレターに示した通りです。
企 画 展 示 会 場 の 様 子
研 究 室 の 活 動 か ら
カンボジア廃棄物処理計画事前調査
平成14年10月14日~20日、国際協力事業団
の開発調査「カンボディア国プノンペン市廃棄物管理
計画調査」の事前調査のためプノンペン市を訪問し、
現地調査を行いました。プノンペン市では廃棄物処理
事業の大部分がカナダの民間会社の手で行われていま
すが、新規最終処分場の建設や収集運搬の改善などが
急務となっています。
訪問し、日中友好環境保全センター等でヒアリング調
査を行いました。同センターはわが国の無償資金協力
・プロジェクト方式技術協力のスキームで1996年
に開所した施設で中国の環境のモニタリングの情報の
拠点となっています。
青年海外協力隊第20回技術補完研修実施
環境や保健等の職種の隊員候補者を対象とする技術
研修「国際環境計画講座」を平成14年12月20日
~23日に広尾訓練所および東洋大学国際地域学部を
会場として開催しました。記念すべき第20回となる
今回の研修には環境・衛生関連の12の職種で20カ
国に派遣される予定の隊員候補者25名が参加しまし
た。今後ますます任務が多様化する協力隊員のニーズ
に合わせてこの技術補完研修のカリキュラムも大幅な
改訂を行う予定です。
プノンペン市内のごみ収集の様子
日中友好環境保全センター調査
国際開発学会が国際協力事業団の委託で進めている
「環境ODA評価研究会」の中国フォローアップ調査
のため、平成14年11月14日~18日、北京市を
青年海外協力隊第20回技術補完研修参加者
発 行 者:東 洋 大 学 国 際 地 域 学 部 北 脇 研 究 室
〒374-0193 群馬県邑楽郡板倉町泉野1-1-1 Tel/fax: 0276-82-9022 e-mail: kitawaki@itakura.toyo.ac.jp