20140613リーサー先生講演会資料 - 教授システム学専攻

熊本大学 教授システム学専攻主催 2014年6月13日(金)@CIC501 講演資料 1/6
ロバート・A・リーサー(Robert A. Reiser)教授
Distinguished Teaching Professor and Robert M. Morgan Professor of Instructional Systems
Department of Educational Psychology and Learning Systems, Florida State University, U.S.A.
e-mail: rreiser@mailer.fsu.edu
professional website: http://mailer.fsu.edu/~rreiser/
学歴
1970年6月 ニューヨーク市立大学クイーンズ校卒業(経済学)
1974年6月 アリゾナ州立大学大学院修士課程修了(学校図書館メディア学)
1975年8月 同大学院博士課程修了、Ph.D(教育工学)
職歴
1975年8月 アリゾナ州立大学助教授
1976年1月 フロリダ州立大学大学院助教授
1985年5月~現在 同大学院教授
1987年7月~1996年9月 同大学大学院教育学研究科長
2003年~現在 同大学院教授システム学専攻長
主な業績
編著:
Reiser, R.A., & Dempsey, J.V. (Eds.) (2011). Trends and Issues in Instructional Design and
Technology (3rd ed.). Saddle River, NJ: Pearson Education.
共著:
Reiser, R.A., & Dick, W. (1996). Instructional planning: A guide for teachers (2 nd ed.). Boston,
Massachusetts: Allyn & Bacon.
Dick, W., & Reiser, R.A. (1989). Planning effective instruction. Englewood Cliffs, New Jersey:
Prentice Hall.
Reiser, R.A., & Gagne, R.M. (1983). Selecting media for instruction. Englewood Cliffs, New Jersey:
Educational Technology.
学会活動など:
Educational Technology Research and Development 編集者17年間
AECT Division for Design and Development Awards Program 代表23年間
主な受賞:
2006 優秀書籍賞(米国教育工学コミュニケーション学会)
2004 ロバートモーガン記念教授表彰(フロリダ州立大学)
2002 優秀書籍賞(米国教育工学コミュニケーション学会)
2001 優秀書籍賞(米国教育工学コミュニケーション学会)
2000 優秀教員表彰(フロリダ州立大学)
1999 卓越業績表彰(フロリダ州立大学)
1999 貢献感謝表彰(米国教育工学コミュニケーション学会)
©2014 Robert A. Reiser (based on Lecture at TokyoCIC, Japan)
和訳:平岡斉士・鈴木克明
熊本大学 教授システム学専攻主催 2014年6月13日(金)@CIC501 講演資料 2/6
○10のトレンド
10のトレンドを意識し、使えるようになるべきだ
 この分野のプロが行っている仕事の種類に影響する
 学習とパフォーマンスを促進するための新しいツールをさずけてくれる
○現在と将来に影響を与えている10のトレンド
The Present and Future: Ten Trends Affecting the Field Today AND Tomorrow
1.
パフォーマンス向上(Performance Improvement)
2.
知識管理(ナレッジマネジメント)(Knowledge Management)
3.
パフォーマンス支援(Performance Support)
4.
オンラインラーニング(Online Learning)
5.
学習科学と構成主義(Learning Sciences / Constructivism)
6.
ソーシャルメディア(Social Media)
7.
教育的ゲーム(Educational Games)
8.
インフォーマルラーニング(Informal Learning)
9.
モバイルラーニング (Mobile Learning)
10. MOOCs
・20年以上前からあるものもあるし、ごく最近のものもある。
・教授/学習プロセスに焦点をあてたものものある。
・インストラクションの提示のためのツールもある。
・これらすべてに、ID&T分野に与える重要なインパクトがある
○5つのさらなるトレンド
オープンエデュケーションリソース(Open Educational Resources)
ラーニング アナリシス(Learning Analytics)
グローバル学習/グローバル人材開発(Global learning/Global Workforce Development)
問題解決型学習(Problem-based Learning)
学習コミュニティ/実践コミュニティ(Learning Communities/Communities of Practice)
教授設計工学(Instructional Design and Technology)という領域名を好む理由
教育工学(Educational Technology)はより狭い意味になるおそれがあるから
教育工学が扱う内容
20世紀の前半: 視聴覚教材(映画、ラジオ、テレビなど)=メディア
現在
: コンピュータ、インターネット、デジタルビデオなど)
○過去(1970年代から1980年代までの見方):教育工学=教授設計(ID)へのシステム的アプローチ
「学習とティーチングのプロセス全体を設計し、実行し、評価するシステム的方法」“a systematic way
of designing, carrying out and evaluating the total process of learning and teaching”
(Commission on Inst. Technology, 1970)
オンライン辞書で「テクノロジー」を調べると:cf. Webster’s online dictionary: “Technology:
1. 実践的な知識の応用(the practical application of knowledge)
2. 技術的なプロセス、方法、知識を用いて、課題を達成する方法(a manner of accomplishing a task,
especially using technical processes, methods, or knowledge)
→ディック&ケリーのシステム的アプローチがその代表
要するに
「教育工学」分野:メディアを教育目的で使う & 教育のシステム的デザインを含む。
「教育工学分野」の名称と定義: メディアを教育目的で使う & 教育のシステム的デザインを意
味するべき。
©2014 Robert A. Reiser (based on Lecture at TokyoCIC, Japan)
和訳:平岡斉士・鈴木克明
熊本大学 教授システム学専攻主催 2014年6月13日(金)@CIC501 講演資料 3/6
○この分野の新しい領域名称「インストラクショナルデザインとテクノロジ」
リーサー(2012)による定義:A Definition for Today: Reiser 2012
The field of instructional design and technology encompasses the analysis of learning and
performance problems, and the design, development, implementation, evaluation and management
of instructional and non-instructional processes and resources intended to improve learning and
performance in a variety of settings, particularly educational institutions and the workplace.
Professionals in the field of instructional design and technology often use systematic
instructional design procedures and employ a variety of instructional media to accomplish their
goals.
○この定義で強調している3つのキーとなる考え方
・教授法のシステム的デザイン(the systematic design of instruction)
・メディアを使った学びの促進(using media to enhance learning)
・パフォーマンスの改善(performance improvement)
1.
パフォーマンス向上(Performance Improvement)
○ アメリカのインストラクショナルデザイナの多くは、職場(ビジネス、軍事、政府、ヘルスケ
アなど)のために働く。
○ 学習効果を高めることに加えて、(個人と組織の)パフォーマンス向上に焦点化
○ 教育以外の方法を用いてパフォーマンス向上を実現(教育に加えて、あるいは代替して)
 動機づけ手法(motivational techniques)
 フィードバックシステム(feedback systems)
 採用(personnel selection)
 職務と職場の再設計(job and workplace re-design)
 コーチングとメンタリング(coaching and mentoring)
 パフォーマンス支援(performance support)
 知識管理(ナレッジマネジメント)(knowledge management)
 インフォーマル学習(informal learning)
2.
知識管理(ナレッジマネジメント)(Knowledge Management)
○知識管理は以下を含む
電子的な手段を用いて、組織内の価値のある情報・専門性・洞察を収集・蓄積する。
その情報を必要とする人が、簡単にアクセスできるようにする。
似たような職種、または仕事に関連するニーズを共有する人の電子的な「実践コミュニティ」を構築し、コ
ミュニティのメンバーが簡単に問題や解決策についてディスカッションできるようにする。
3.
パフォーマンス支援(Performance Support)
○定義:必要な時に、パフォーマンスを高めるツールと情報へのアクセスを提供するシステム
A system that provides performers with access to tools and information that support
performance at the moment of need.(adapted from Nyugen, in Reiser & Dempsey, 2012)
例:GPS、所得税計算ソフト、教育目的を作成するためのツール
©2014 Robert A. Reiser (based on Lecture at TokyoCIC, Japan)
和訳:平岡斉士・鈴木克明
熊本大学 教授システム学専攻主催 2014年6月13日(金)@CIC501 講演資料 4/6
4.
オンラインラーニング(Online Learning)
○オンラインコースで学ぶ中学生・高校生・大学生が急増している (Babson Group, Grade Change:
Tracking online education in the US, 2013, Blackboard, Learning in the 21st Century 2011 Trends
Update)
○初等中等教育における、オンライン授業への関心が高まっている。(Speak Up National Research
Project, Learning in the 21st Century, 2012)
○効果的なオンラインコースを作るためにはIDのスキルが必要なので、オンラインコースが増える
とIDerの活躍の機会が増える。
5.
インフォーマル学習(Informal Learning)
○定義1:インフォーマル学習とは、非公式で、スケジュールされていない、準備なしで即興的な
方法で仕事のやり方を学ぶことを指す(Informal learning is the unofficial, unscheduled,
impromptu way people learn to do their jobs.)(Jay Cross, Informal Learning, 2006)
○定義2:教室やその他の公式の教育場面で典型的に行われるもの以外の学習(Learning other
than that which typically takes place in a classroom or other formal instructional settings.
adapted from Rossett & Hoffman, in Reiser & Dempsey, 2012)
○フォーマル学習とインフォーマル学習との比較
フォーマル学習
インフォーマル学習
コース、ワークショップ
人間関係、会話
インストラクタが感じ取った必要
学習者が知覚した必要性に基づく
性に基づくコンテンツ
コンテンツ
インストラクタ主導
学習者主導
学校文化:プッシュ
Web 2.0文化: プル
注:インフォーマル学習は、フォーマル学習の代替を目指すのではなく、それを
拡張・向上する目的で用いられる。
○ インフォーマル学習の促進法に対してIDerができることの例
 知識管理システム(Knowledge management systems)
 実践コミュニティ(Communities of practice)
 組織のニュースレター(Organizational newsletters)
 よくある質問集(FAQs lists)
 良い実践例(Best practices lists)
 従業員ブログ(Employee blogs)
 「教訓」集(“Lessons Learned” lists)
 内容領域専門家(Subject Matter Expert)の名簿(Lists of SMEs)
 スタッフ昼食会(Staff lunches)
 休憩室での(所属が違う人たちの)会話(“Breakroom” discussions)
6.
ソーシャルメディア(Social Media)
定義:教育者、インストラクショナルデザイナ、そのほかの権威者だけでなく、全ての人の能力を促進して
くれるウェブベースのツール
・コンテンツを作成し、提示する。
・知識を共有する。
・他者とコラボレーションする。
©2014 Robert A. Reiser (based on Lecture at TokyoCIC, Japan)
和訳:平岡斉士・鈴木克明
熊本大学 教授システム学専攻主催 2014年6月13日(金)@CIC501 講演資料 5/6
7.
教育ゲーム(Educational Games)
○近年、学校や職場での学びを促進させるための映像やコンピュータを使った教育ゲームへの関心
が高まっている。(Reiser, in Reiser & Dempsey, 2012)
○ 教育ゲームの特徴
 教育成果の達成をサポートするように設計
 問題解決をする課題の提供
 明確な目標やルールを提供
 高度なレベルでの学習者の制御
 継続的なフィードバックを提供
タスクへのゲームの適用が有効であるかどうかよりも、ゲームを教育に使ってみたいという熱意の方
が先行してしまっている」(要は、ゲームを使ってみたいだけだろ、という話)from Tobias &
Fletcher (2012) Review of Educational Research
○ デザイナの課題:ゲーム環境から現実の課題へスキルを応用させるために、どのように教育ゲ
ームをデザインすればよいのか。
8.
構成主義(Constructivism)と学習科学(Learning Sciences)
○ 構成主義:学習と教育の観点からの下記の点を強調
 複雑で真正な(現実世界の)問題/タスクを学習者に提示する
 インストラクタの最小限の支援によって、学習者が問題の解決法を見つけることが必要
 学習者たちが問題を解決するために恊働
*過去20年間、これらの特徴を組み込んだ学習環境(学習活動)の構築が強調されてきた。

学習科学:構成主義者が提唱した原理を取り入れ、教育と学習へのアプローチの設計に焦
点を当てた研究分野(例えば、複雑で真正な課題に対して、学習者たちが問題を解決するた
めに自ら協力する)。
 学習科学のコミュニティが開発した、学習促進のための革新的アプローチ
 PBL(Problem Based Learning)
 ケースベースのシナリオ
 認知的徒弟制
○ デザイナの課題:学習者が構成主義型学習環境での複雑な問題を解決することを支援するため
に、適切な足場かけ/学習ガイダンスを提供するにはどうすればよいのか。
9.
モバイルラーニング(Mobile Learning)
○定義:モバイルデバイスに支援された学び(スマホ、タブレット、電子ブックリーダーなど)
「世界中の学習機関は、ウェブサイト、教育素材、リソース、機会をオンライン上に置き、モバイ
ルデバイスでの使用に最適化する方法を模索している。(New Media Consortium Horizon Report;
2013 K-12 Education Edition)」
○ デザイナの課題:これらのデバイスが学習者の気を散らせてしまう可能性を防ぐにはどうすれ
ばよいか?
©2014 Robert A. Reiser (based on Lecture at TokyoCIC, Japan)
和訳:平岡斉士・鈴木克明
熊本大学 教授システム学専攻主催 2014年6月13日(金)@CIC501 講演資料 6/6
10.
Massive Open Online Courses( MOOCs)
○定義:非常に多くの人がインターネット上で無料で利用できる学習コース(通常は大学レベル)
 Coursera:スタンフォード大学、100大学以上、600コース以上
 edX:ハーバード大学&MIT、30大学以上、150コース以上
○ デザイナの課題:MOOCsでの高いドロップアウト率を減らすためには、どのような学習活動や
サポートツールを導入することができるか?
結論:道具箱は大きくなってきている
○大きくなる道具箱
Performance Improvement
Knowledge Management
Performance Support
Online Learning
Informal Learning
Social Media
Educational Games
Constructivism & the Learning Sciences
Mobile Learning
Massive Open Online Courses (MOOCs)
さらに追加!
Open Educational Resources
Learning Analytics
Global learning/Global Workforce Development
Problem-based Learning
Learning Communities/Communities of Practice
○結論
問題を解決するための選択肢を広げる
↓
適切なツールを見つける可能性を高める
↓
学生の学習とパフォーマンスにプラスの効果
↓
あなたがプロとしてもっと成功する!
©2014 Robert A. Reiser (based on Lecture at TokyoCIC, Japan)
和訳:平岡斉士・鈴木克明