AHP による飲食店 Web サイトの視覚デザイン評価

AHP による飲食店 Web サイトの視覚デザイン評価
Evaluating visual design of website on restaurant by analytic hierarchy process
○酒井浩二,仲野理恵子,山本嘉一郎(京都光華女子大学 人間関係学部)
1.はじめに
評価基準のみ有意差がみられた(t(18)=7.38, p<0.001).
近年の有力な販売促進方法の一つが,Web サイトによる
表2は,上位の評価基準ごとの代替案のウェイトを示す.
情報発信である.Web サイトのよい印象と,その要因とな
配色は飲食店 A,画像は飲食店 C で評価が高く,文章はど
るデザインは,Web サイトでの商品やサービスを選択・購
の代替案でもほとんど差がなかった.
入する大きな動因になると考えられる.本研究では AHP
表1と表2をかけ合わせ,代替案の最終的な総合評価の
(Analytic Hierarchy Process,階層分析法)を用い,飲
ウェイトを計算した結果,飲食店 A が 0.365,飲食店 B が
食店 Web サイトの視覚デザインの評価実験を行った.
0.197,飲食店 C が 0.438 であった.総合評価のウェイト
2.実験方法
の効果は有意で(F(2,36)=13.2, p<0.001),多重比較の結
2.1 回答者:女子大学生 21 名(21~22 歳),および一般
3 名(31 歳~35 歳)で,計 24 名であった.
果,飲食店 A と飲食店 B,および飲食店 B と飲食店 C のあ
いだに 5%水準で有意差がみられた.
2.2 調査時期:平成 17 年 10 月下旬~11 月上旬,および
平成 18 年 5 月.
画像のウェイトは最も高く,料理画像は飲食店のメニュ
ーのイメージを決定づけるといえる.店舗のメニューの特
2.3 AHP 評定の項目:評価基準は 2 階層に分けた.評価
色,価格帯,客層などを考慮して料理画像を選択し,色彩
基準の用語の定義について,実験者は回答者に説明しなか
豊かに撮影する必要がある.配色は飲食店の飲食サービス
った.代替案として,「ぐるなび」から引用した 3 つの飲
内容と関係ないがウェイトは高く,Web サイトの配色を通
食店 Web サイトを設定した(図 1 を参照).
じて店舗のイメージが形成されやすいと思われる.文章の
2.4 AHP 評定の手続き:回答者は,飲食店 A から飲食店
ウェイトは低く,料理のメニューなどの文字情報は Web
C の 3 つの Web サイトを参照しながら,上位の評価基準の
サイトの評価に大きく影響しなかった.飲食店 Web サイト
一対比較,下位の評価基準の一対比較,下位の評価基準ご
の構築では見ための印象をより重視すべきといえる.
とに代替案の一対比較を行った.それぞれ,どちらの項目
表 1.上位・下位の評価基準のウェイトの平均(n=19)
上位
下位
のほうが重要かを 5 段階「同程度に重要」「若干重要」「重
要」「明らかに重要」「絶対に重要」で一対比較した.
2.5 評定データの分析:評価基準,代替案のいずれの一
対比較行列でも,一対比較の一貫性の指標である整合度を
算出し,一般的に AHP で許容できる 0.15 以下の回答者の
データのみ分析対象とした.その結果,全回答者 24 名の
配色
0.325
画像
0.490
文章
0.186
うち,19 名の回答者が分析データとして採用した.
評価基準
上位
配色
画像
文章
表1は,19 名の回答者における評価基準のウェイトの平
均を示す.上位の評価基準の効果は有意で(F(2,36)=12.7,
p<0.001),多重比較の結果,すべての対のあいだに 5%水
準で有意差がみられた.下位の評価基準では,「配色」の
代替案
飲食店A
0.460
0.316
0.339
飲食店B
0.188
0.153
0.329
飲食店C
0.352
0.532
0.332
飲食店の選択
最終評価
配色
上位
下位
代替案
0.736
0.264
0.410
0.590
0.398
0.602
表2.上位の評価基準ごとの代替案のウェイトの平均(n=19)
3.結果・考察
評価基準
好感度
適切さ
美しさ
食欲促進度
量の適切さ
親しみやすさ
配色の
好感度
画像
配色の
適切さ
飲食店A
画像の
美しさ
文章
画像の
食欲促進度
文章の
量の適切さ
飲食店B
文章の
親しみやすさ
飲食店C
図 1.本実験での AHP 階層図.評価基準は上位・下位の 2 階層で設計された
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