温室効果とオゾン層破壊をもたらす亜酸化窒素(N2O) の発生が少ない豚

TX テクノロジー・ショーケース
in つくば 2010
環境
P-27
温室効果とオゾン層破壊をもたらす亜酸化窒素(N2O)
の発生が少ない豚ぷん堆肥化技術
■ はじめに
亜酸化窒素(N2O)は、温暖化係数がCO2の310倍ある
温室効果ガスであり、最も重要なオゾン層破壊物質です。
農業は最大の人為的N2O排出源ですが、特に家畜排せ
つ物由来のものは大きな割合を占めています。堆肥化は
家畜排せつ物の基幹的な処理法ですが、その過程で発
生するN2Oに関してはこれまで有効な抑制法がありません
でした。そこで本研究では、堆肥化が必須となっている豚
ぷんに注目してN2O抑制法の開発を試みました。
■ 堆肥化におけるN2O生成メカニズム
生物学的に、N2Oは硝化作用の副産物か、脱窒の中間
代謝物として生成されますが、排せつ直後の家畜ふんに
は脱窒の材料となる硝酸塩が含まれていないため、N2O
が発生するためには最初に硝化作用(アンモニア[NH3]
が亜硝酸[NO2-]を経て硝酸[NO3-]まで酸化される微生物
による作用)が起こる必要があります。硝化は2種類の微生
物(アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌)の連携作業
によって進行しますが、豚ぷんの堆肥化では、亜硝酸酸
化細菌の増殖開始がアンモニア酸化細菌よりも大きく遅
れるため、硝化の中間生成物であるNO2-が長期間蓄積す
る場合があります。NO2-の存在はN2Oの生成を促進するこ
とが知られており、そのため長期間のNO2-蓄積はN2O発
生量を増大させます。
進することでNO2-蓄積を解消すれば、NH3蓄積などの問
題を起こすことなくN2Oの発生を抑制できるのではないか
と考え、亜硝酸酸化細菌を多く含み堆肥生産現場で容易
に入手できる熟成堆肥を堆肥化途中の豚ぷんに添加し、
NO2-の酸化とN2O発生に及ぼす影響を検証しました。
試験の結果、堆肥化の高温発酵後に熟成堆肥を添加
することで酸化が促進され、速やかにNO2-蓄積が解消し、
これに連動するようにN2Oの発生も終息しました。これまで
に行った小規模の堆肥化試験では、N2Oの発生量を平均
で60%、最大80%削減することができ、本方法が豚ぷん堆
肥化からのN2O発生を抑制する上で有効な手段であるこ
とが証明されました。
■ まとめ
豚ぷんでは、堆肥化の過程で硝化作用が不完全となっ
てNO2-が蓄積し、これがN2Oの生成を促進していますが、
亜硝酸酸化細菌を含む熟成堆肥を適時添加することによ
りNO2-蓄積が解消され、N2Oの発生量を顕著に削減でき
ることがわかりました。今後は、実用化のため、より実規模
に近い堆肥化試験による検証などを予定しています。
■ 亜硝酸酸化細菌の添加によるN2Oの発生制御
豚ぷん堆肥化では長期間のNO2-蓄積がN2O発生量を
増大させているため、堆肥化の過程でNO2-を蓄積させな
いことが、N2Oを抑制するための重要なカギとなります。薬
剤によりNH3の酸化を抑制してNO2-蓄積を回避する方法
がありますが、処理コストとNH3蓄積による悪臭問題の増
加が懸念されるため、家畜排せつ物処理の場面では適当
ではありません。そこで、逆にNO2-からNO3-への酸化を促
代表発表者
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所
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
畜産草地研究所 浄化システム研究チーム
属
問合せ先
〒305-0901 茨城県つくば市池の台 2
TEL: 029-838-8677, FAX: 029-838-8606
yasuyuki@affrc.go.jp
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■ キーワード: (1) 亜酸化窒素
(2) 豚ぷん堆肥化
(3) 地球温暖化