呼吸器内科 初期臨床研修 ■研修目標 呼吸器疾患に対し適切な初期対応ができるよう,基本的診療能力を身につけることを目標 とする.すなわち,Common disease の診断を適切に行い,治療方針の立案ができることや, 他科でも役立つ知識・技術(胸部 X 線の読影,動脈血ガスの採取・解析など)を習得する ことを目標とする. また、応用的手技についても、見学・介助・実際に経験する事ができる。 1.病歴聴取(コミュニケーションスキル) (a) 呼吸器特異的症状(呼吸困難,咳嗽,喀痰,喘鳴, 胸痛など)やそれに関連する全身 的症状(発熱,関節痛,食欲低下など)の聴取を行い,経時的に把握し,まとめることが できる. 慢性呼吸器疾患の病歴については,過去の経過を聴取し,まとめることができる. (b) 家族歴や生活歴(喫煙歴,職業歴,ペット飼育,居住環境,感染者への暴露歴)を適 切に聴取し,疾患に関連する要因を拾い上げることができる. (c) 患者さんと良好な人間関係(お互いに話やすいなど)を築くことができる. これらの問診を通して,鑑別疾患を挙げることができる. 2.身体診察 (a) 全身の診察.口腔・咽頭,頚部,皮膚,関節,手指などを診察し,呼吸器疾患の胸部外 所見や呼吸器疾患を呈する全身疾患(膠原病など)について異常所見を把握することがで きる. (b) 胸部の診察.視診,聴診,打診を行い,所見を適切に表現することができる. (c) 全身状態の把握.バイタルオーガン(vital organ)の 1 つである肺を主とする呼吸器の 疾患を理解し、患者の重症度を評価し把握、理解することができる。 3.臨床検査 (a) 胸部単純 X 線写真.正常と異常の区別ができる.異常所見を指摘し,適切な用語で表 現できる.また,鑑別疾患を挙げることができる. (b) 動脈血ガス分析.自ら実施し,手技を向上させる.結果を解釈し,適切な用語で表現 できる. (c) 肺機能検査.閉塞性,拘束性,混合性,拡散障害を診断できる.フローボリューム曲 線を解析できる。 (d) 喀痰検査.塗抹・培養検査,細胞診検査ともに,結果を解釈することができる. (e) 胸部 CT 検査.適応を理解し,所見を指摘することができる.また,鑑別疾患を挙げる ことができる. (f) 胸腔穿刺.適応と合併症を理解する.結果を解釈し,適切に表現できる. (g) 気管支内視鏡検査.適応と合併症を理解する.指導医のもとで,操作を行いつつ観察・ 介助できる. (h) ポリソムノグラフィー.適応と検査結果について理解する. (i) 経皮的肺生検(CT ガイド下生検を含む). 適応と合併症について理解する. 4.診断 (a) 鑑別疾患を挙げることができる. (b) 診断に必要な検査を考えることができる. 呼吸器疾患の診断には、多くの鑑別診断の中から幾つかの候補疾患を抽出することが必 要であるが、通常、鑑別疾患は多岐にわたる。それらを系統立てて考える訓練を通じて、 内科的思考を身に付ける. 5.治療 治療の種類を把握し,目的・適応,副作用や限界を理解する.治療効果を適切に判定でき る.基本的な治療を立案できる. (a) 酸素療法.指導医のもとで,適切な酸素投与量を設定できる. (b) 抗菌薬の種類と適応,選択方法を理解する. (c) 吸入薬の種類と適応,吸入方法を理解する. (d) 肺癌の組織分類や臨床病期,患者の状態などに基づいた治療方法を理解し,副作用を 理解する. (e) 人工呼吸器の適応と設定やモニタリングの基本を理解する. (f) 胸腔ドレナージ. 適応と合併症について理解する.ドレーン管理について理解し、適 切に表現できる. 6.その他 (a) 毎日患者さんの病状を伺い,評価する. (b) カルテを SOAP システムで記載できる.毎週(と入退院時)サマリーを作成できる. (c) 他人に理解しやすいように,系統立ったプレゼンテーションを行うことができる. (d) 呼吸器以外の問題点に関して他科に適切にコンサルテーションできる. (e) メディカルスタッフの役割を理解し,協調して診療にあたることができる. ■研修医教育プログラムについて <病棟> 呼吸器内科の入院患者診療は、初期研修医の先生、医員等の病棟担当医(中間医)、外来 主治医の 3 人主治医制を基本とし、チームで診療を行っています。 外来主治医は各専門外来を担当しており、専門的な視点からの治療方針決定を行います。 外来主治医からは各病態の専門家としてのより深く、最新の知見について、中間医からは 病棟診療に関する事項をはじめとした実地医療について学ぶことが出来ます。 特定の疾患、治療や手技に偏ることの無いように、担当患者を決定しています。研修目 標を達成できるよう、なるべく多くの経験を積めるよう配慮していますが、将来のため特 定の希望がある場合には、病棟医長に相談してもらっています。 ■研修スケジュール(研修期間2ヶ月の場合) 第0週 患者引き継ぎ 第1週 オリエンテーション 第2-4週 分野別レクチャー(約12コマ)※ 第8週 指導医による評価とまとめ ※分野別研修医レクチャー:各分野の担当者が解説するレクチャーシリーズ.2 ヶ月毎に 各レクチャーを 1 回ずつ開催。日程は適宜調整。 動脈血ガス分析 三嶋 気管支鏡 佐藤晋 画像※※ 平井 COPD 室 喘息 松本 間質性肺疾患 半田 呼吸器感染症 伊藤穣 肺炎の治療 伊藤功朗 肺癌 金 呼吸管理(NPPV) 陳 睡眠時無呼吸(SAS) 小賀 ※※ 2013 年より、画像診断については「胸部単純 X 線写真の読影」(担当;平井)として『研 修医のためのユニット式レクチャー』の一環で開催中。 ●週間スケジュール 火 水 木 金 10:30-11:30 気管支鏡* 外来棟内視鏡センター 16:30-17:30 感染症カンファレンス 積貞 5 階会議室 18:30-19:30 間質性肺疾患カンファレンス 積貞 5 階会議室 14:00-15:30 気管支鏡* 外来棟内視鏡センター 18:00-19:00 肺癌カンファレンス 積貞 4 階会議室 8:45-11:00 臨床カンファレンス 積貞 5 階会議室 11:00-12:00 教授回診 病棟 14:00-15:00 CT ガイド下肺生検 中央診療棟アンギオ室 17:00 呼吸器外科合同カンファレンス* 積貞棟 4 階会議室 9:00-11:30 気管支鏡* 外来棟内視鏡センター 尚、 『呼吸器内科研修医マニュアル』 『市中肺炎・院内肺炎の抗生剤使用マニュアル』を全 員に配布して、日常臨床の参考資料として役立ててもらっている。 『呼吸器内科研修医マニュアル』 ;全 61 ページにわたり,全ての分野の呼吸器疾患をカバ ーした京大呼吸器内科独自のマニュアル.疾患ごとに参照できる.(年次改訂予定) 『市中肺炎・院内肺炎の抗生剤使用マニュアル』:全 47 ページにわたり,多彩な肺炎の診 断および治療を論理的に解説したマニュアル.他科希望者にも役立つ. ■診療科からのメッセージ 呼吸器疾患は他臓器の疾患に比べて多岐に分かれており、大まかに分けても呼吸器感染症、 気道系疾患(気管支喘息・COPD)、腫瘍性疾患(肺癌・胸膜中皮腫)、びまん性肺疾患(間質性 肺炎等)、呼吸不全・呼吸障害(睡眠時無呼吸を含む)、環境・職業性肺疾患(稀少疾患)な どからなります。初期研修の期間に全てを経験することは難しいですが、感染症とびまん 性肺疾患、腫瘍性疾患については毎週グループカンファレンスを行っており(週間スケジュ ール参照)、担当以外の患者さんについても症例提示・議論に参加することが出来るため、 個々の経験値を増やしていく事が出来ます。 内科系診療科としては、比較的観血的な手技もあり、研修医の先生でも、上級医の指導の 下、実際に実施して戴くことが可能です。 また、酸素の投与法や呼吸管理を知っておくことは、医師として必須のことです。胸部 X 線写真の読影なども他の診療科でも間違いなく役立つ事項です。 是非、京大病院呼吸器内科での臨床研修を選ぶことをお勧め致します。 後期研修 ■研修目標 初期研修で身に付けた基本的診療能力を生かし,急性疾患,慢性疾患を問わず,一人で大 抵の呼吸器疾患に基本的な対応ができることを目標とする.また,他科からのコンサルテ ーションにも役立てる知識・技術(CT 読影,鑑別診断を挙げること,気管支鏡,胸腔ドレ ナージなど)を習得することを目標とする.後期研修後半では、病棟診療だけでなく、外 来の初期診療にも従事して専門研修を行う. 1.病歴聴取(コミュニケーションスキル) (a) 症状,病歴の聴取,(b) 家族歴や生活歴の聴取に関しては,初期研修に同じ. (c) 患者の苦痛や不定愁訴にも適切に対応できる. 2.身体診察 (a) 全身の診察,(b) 胸部の診察に関しては,初期研修に同じ. 3.臨床検査 (a) 胸部単純 X 線写真,(b) 動脈血ガス分析,(c) 肺機能検査,(d) 喀痰検査に関しては, 初期研修に同じ. (e) 胸部 CT 検査.所見を適切な用語で表現し,鑑別疾患を挙げることができる. (f) 胸腔穿刺.適応と合併症について患者に説明できる,指導医のもとで自ら行うことが できる. (g) 気管支内視鏡検査.適応と合併症について患者に説明できる,指導医のもとで自ら BAL や生検まで行うことができる. (h) 基本的な疾患の典型的病理像について,理解できる. (i) 経皮的肺生検(CT ガイド下生検を含む). 適応と合併症について患者に説明できる。指 導医とともに検査を行うことができる. 4.診断 (a) 鑑別疾患を挙げ,自ら検査計画を立案できる. (b) 病歴や検査結果を自ら解釈し,診断をすることができる. 5.治療 全般的に,治療の種類を把握し,目的・適応,副作用や限界を理解する.また,治療の導 入にあたり,適切な説明を行うことができる.治療効果を適切に判定できる. (a) 酸素療法.自ら適切な酸素投与量を設定できる. (b) 抗菌薬の種類と適応・投与方法を判断し,自ら選択できる. (c) 吸入薬の種類と適応・投与方法を判断し,自ら選択できる. (d) 肺癌の組織分類や臨床病期,患者の状態などに基づいた治療方法を立案し,患者に説 明できる. (e) ステロイドを含む免疫抑制剤・免疫調節剤、肺高血圧治療薬の種類と適応・投与方 法を理解する. (f) 人工呼吸器の適応を判断し,自ら設定できる.気管内挿管を行うことができる. (g) 在宅 CPAP 療法.ポリソムノグラフィー検査結果にもとづいて,睡眠時無呼吸症候群の 治療の立案ができる. (h) Best Supportive Care.患者の症状に合わせて適切な緩和軽減処置がとれる. (i) 胸腔ドレナージ. 胸腔ドレーンを指導医のもとで自ら挿入できる.術後管理を指導医 のもと行うことが出来る. 6.その他 (a) 検査・治療方針や経過の説明を,指導医同席のもとで自ら患者さんに行うことができ る. (b) 他科からのコンサルテーションに適切に対応する.対応が困難な場合は,適切に上級 医にコンサルトできる. (c) 自らが患者の診療の主体となり,メディカルスタッフと協調しつつ,統率して診療に あたることができる. ■将来について ●専門医資格取得 日本呼吸器学会専門医資格は下記の通りであり、日本内科学会への入会、認定医資格の取 得が求められています。 ①日本内科学会認定内科医資格取得した年度も含めて 3 年以上継続して本学会の会員であ ること。 ②この規則により認定された認定施設において、本学会所定の研修カリキュラムに従い日 本内科学会認定内科医資格取得した年度も含めて 3 年以上、呼吸器病学の臨床研修を行い、 これを終了した者。 ③呼吸器学会関連施設における研修期間は、認定施設の研修期間に 0.7 を乗じたものとす る ④非喫煙者であること。 また、専門医・研修カリキュラムとして下記の点が求められています。(学会 HP より抜粋) ●専門医取得を目指す研修プログラム 下に 1 例を示しますが、各種バリエーションがあります.詳細は事務局まで問い合わせ下 さい.また、希望に合わせて調整することが可能です. ●関連病院・施設 兵庫県 公立八鹿病院 京都府 赤穂市民病院 神戸市中央市民病院 姫路医療センター 西神戸医療センター 医仁会武田総合病院 宇多野病院 京都桂病院 京都市立病院 西京都病院 洛和会音羽病院 国立病院機構京都医療センター 国立病院機構南京都病院 京都大学医学部附属病院 県立尼崎病院 神戸市西市民病院 神鋼病院 神戸逓信病院 豊岡病院 高雄病院 京都南病院 洛陽病院 福井県 大阪府 大阪赤十字病院 関西電力病院 北野病院 枚方公済病院 市立堺病院 高槻日赤病院 堀川病院 福井赤十字病院 大阪府済生会中津病院 大阪府済生会野江病院 近畿中央胸部疾患センター 市立岸和田市民病院 住友病院 奈良県 大阪回生病院 天理よろづ相談所病院 岡山県 和歌山県 倉敷中央病院 香川県 静岡県 高松赤十字病院 静岡市立病院 滋賀県 大津赤十字病院 滋賀成人病センター 市立長浜病院 豊郷病院 彦根市立病院 滋賀医科大学 ヴォーリス記念病院 公立甲賀病院 日赤和歌山医療センター 赤字:呼吸器学会認定施設 ●同門会について 当教室では、上記の西日本の呼吸器内科関連施設が一体となり、NPO 法人を立ち上げてい ます。以下の HP を御参照ください. NPO 法人 西日本呼吸器内科医療推進機構(http://www.npo-harmonni.org/) 当教室が主体となって行っている研修医・学生向けのセミナーなどの開催情報を得ること が出来ます. 2014 年度の活動内容(抜粋) 平成 26 年度夏期学術集会 7月 26 日(土) 京都リサーチパーク (幹事 京都市立病院) 若手医師のための臨床に役立つ呼吸器セミナー 第1回 5 月 24 日(土) 午後 3 時 30 分~ テーマ「喘息・COPD」 第2回 6 月 21 日(土) グランフロント大阪 午後 3 時 30 分~ テーマ「肺癌」 第3回 7 月 12 日(土) グランフロント大阪 午後 3 時 30 分~ テーマ「呼吸器感染症」 グランフロント大阪 参加希望の方は、NPO の HP より御連絡下さい。又は、下記連絡先(呼吸器内科事務局)に 御連絡いただいても結構です。 ●病院・医局見学について 当教室に関心をお持ちいただいた学生さん・初期研修医の先生方へ、当教室では随時見学 を受け付けております。平日の午前・午後、特に制限はありませんが、御都合が付くよう でしたら全体カンファレンスのある木曜日をお薦めしております。(「週間スケジュール」 参照下さい) 京都大学医学部大学院医学研究科 呼吸器内科学 独自 HP http://kukonai.com e-mail; konai@kuhp.kyoto-u.ac.jp もしくは、上記 HP 内の「連絡先」にて御連絡下さい。 連絡先 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学事務局 〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町 54 TEL: 075-751-3830 FAX: 075-751-4643
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