X線透過観察の話 X線透過観察の原理

2015年7月 第
1. X線透過観察の話
2. X線透過観察の原理
3. こぼれ話
13 号
本号では、X線透過像、およびX線CTを紹介
いたします。MBPではマイクロフォーカス、ナ
ノフォーカスといった微小部に対応できる設備
を導入しています。
きっと、皆様のお仕事で役立てる場面があ
ると思います。ぜひ、ごらんください。
X線透過観察の話
はじめに
「大きく息を吸って~、はい、止めて~」、「ビ~」、「はい、楽にして
~」、おなじみ?胸部レントゲン撮影の一場面です。で、図1はそのレ
ントゲン写真です。体の中が透けて「肺」「背骨」「肋骨」「鎖骨」等の
様子が見えています。この画像から、肺の病気や骨折等の異常を見
つけることができます。ご存知の方は多いと思いますが、レントゲン
写真は別名X線写真とも言います。X線を使って中を透かして見てい
るのです。
電子機器や電子部品においても、破壊せずに透かして中を見たい
という要望はよく聞きます。特に最近の電子機器や部品は、微小な
部分(μ m~mmオーダー)の故障が致命傷になることが多々あり、こ
ういった小さい部分を観察する要求が高くなっています。
図1.胸部レントゲン
X線透過観察の原理
X線透過観察の基本原理
X線透過観察の基本原理は、プロジェクターとスク
リーンを想像していただければ、理解しやすいかと
思います。プロジェクターとスクリーンの間に物体を
置くと、その「影」がスクリーンに映ります。そこでプ
ロジェクターの光源をX線にすると、物体の中身が
スクリーンに映し出されることになります。
また、図2は、プロジェクターとスクリーンの間にセ
イサク君を置いて、影を映し出している事例ですが、
セイサク君の位置の違いにより、スクリーンに映っ
ている影の大きさが異なっていることが分かります。
X線透過観察でも、この事例と同様に物体を光源に
近づけることで、より高い倍率で観察することが可
能となります。
では、とことん倍率を高くすれば微小な部分(μ m
~mmオーダー)の様子が見えるかというと、そうは
問屋が卸さないのが、この分析の世界なのです。
セイサク君の影
セイサク君
プロジェクタ
図2.セイサク君の影を映した事例
微小部のX線透過観察
X線透過観察の基本原理は、光源とスクリーン、そしてその
間にある物体でした。前述のプロジェクタとセイサク君の事例
では、光源にセイサク君(物体)を近づけるとスクリーンに大き
な影が映りました。では、もう少し大きいスケールのものを考
えてみましょう。
図3.友情出演のムラタセイサク君® (模型)
図4は太陽系の一部を表したものです。ほとんどの人が気づいていな
いとは思いますが、2004年6月8日と2012年6月6日に太陽と金星と地球
が一直線に並んでいたのです。つまり、光源が太陽、物体が金星、スク
リーンが地球という状況になっていたのです。でも、「金星の影で地球
は昼間なのに真っ暗闇!」とはなりませんでしたよね。実はこれ、太陽
(光源)と金星(物体)の大きさが、太陽>金星となっているためなんです。
つまり、光源と物体の大きさの関係が、光源<物体とならないと、そ
の物体を拡大して映すことはできないのです。微小部のX線透過像を見
るときは、X線の光源を小さくする必要があります。MBPでは、マイクロ
フォーカス、ナノフォーカスといった微小部に対応できる設備を導入して
います。
図4.太陽系(一部)
X線CT
CTとはComputed Tomographyの略で、日本語ではコンピュータ断層撮影
といい、物体を立体的にとらえる手法になります。
図5はロダンの考える人をいろんな角度から撮影したものです。この画
像を基に頭の中で考えると「考える人」の立体的なイメージが想像できるか
と思います。X線CTもこれと同じように、ぐるっと360°のX線画像を基にコン
ピュータが考えて、内部構造を立体的なイメージに再構築する手法になり
ます。
図5.考える人
観察事例とまとめ
10μm
図6.BGAのX線透過像
(黒い丸がはんだ)
図7.BGAのX線CT断面像
(白い丸がはんだ)
図8.半導体のX線CT(ワイヤ径50μ m)
上:全体の3D像
下:ワイヤのみ抽出した像
事例に示すように、BGAやワイヤボンドといった微小な領域も非破壊で観察できるようになってきまし
た。きっと皆様のお仕事にお役に立てるはず、お気軽にご相談ください。
こぼれ話
またまた、痛い話・・・
体をはった実験ではありませんが、左手親指の付け根を骨折してしまい
ました。前号から引き続き、怪我が多いです。お祓いにでもいった方がよさ
そうですね。
(ペンネーム:うしろのひゃくじろう)
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