Q2 / 2014 - CBRE Japan

Japan Retail
MarketView
CBRE Global Research and Consulting
Q2 2014
6月期 GDP成長率予想*
+0.9% (前年同期比)
小売売上高**
+0.4% 5月(前年同月比)
消費者態度指数***
6月 41.1(前月比+1.8)
出所: *JCER予想、 **経済産業省、***内閣府
消費税増税後の反動減は早くも収束へ
消費者心理は改善
消費者心理は改善傾向
は改善傾向、
傾向、賃金の上昇機運も高まる
消費税増税後の反動減は、早くも収束に向かっているよ
うだ。経済産業省による小売業の販売額は4月こそ前年
同月比4.3%減と、97年の増税時をやや上回る減少率と
なったものの、5月は同0.4%と早くも前年並みに戻して
いる。また、昨年9月から下落傾向にあった消費者態度
指数も、4月の37をボトムとして、5月(39.3)、6月
(41.1)と2か月連続で改善した。厚生労働省が発表し
た5月の有効求人倍率(季節調整値)も1.09倍と18カ月
連続で改善して約22年ぶりの高水準となるなど、景気の
基調は底堅い。消費者物価指数も、消費税増税の影響を
除き4月が1.5%、5月が1.4%と、日銀の14年度見通し
の「1%台前半」見合いで推移しており、日銀は2015年
度には目標の2%に達する可能性が高いとしている。一
方で懸念されるのは賃金の動向だが、こちらも上昇の機
運が高まっている。経済産業省の東証上場企業対象の調
査によれば、ベースアップを実施したと回答した企業の
割合は46.7%で、昨年度の7.7%から大幅に増加した。ま
た、財務局調査による中堅・中小企業のベースアップも、
2014年は1383社中29%となり、昨年の11.4%から上昇
している。1-3月期に需給ギャップが約6年ぶりにプラス
に転じたことも、雇用のさらなる逼迫から賃金上昇につ
ながる可能性を示唆している。夏のボーナスも前年比伸
び率は8.5%と、89年、90年を上回る伸びとなっており、
個人消費を促進するものと期待される。
小売業販売額の
月にはほぼ前年並みの水準に
小売業販売額の5月にはほぼ前年並みの水準に
経済産業省が発表した4月の商業販売統計(確定値)に
よると、小売業販売額は前年同月比4.3%減の11兆160億
図1: 小売業販売額 (前年同月比%)
(前年同月比 )
(%)
円となり、9カ月ぶりに前年の実績を下回った。前回の
消費税増税があった1997年と比較すると、3月の増加
率は1.4ポイント下回り、4月の減少率は0.5ポイント広
がった。業種別にみると、家電量販店など機械機器小
売業が11.8%減と最も大きく、自動車小売業の9.9%減
が続いた。ただし5月は前年同期比0.4%減にとどまっ
ており、すでに前年並みの水準に戻っている。
全国百貨店売上高は免税売上高が
全国百貨店売上高は免税売上高が下支えに
百貨店売上高は免税売上高が下支えに
日本百貨店協会による4月の全国百貨店売上高は、既存
店ベースで前年同月比12%減少し、6カ月ぶりに前年の
実績を下回った。前回の消費増税があった1997年と比
較すると、3月の増加率は2.4ポイント上回り、4月の減
少率は2.0ポイント縮まっており、反動減は今回のほう
が小さかった。理由としては、高額商品の反動減はや
や大きかった一方で、訪日外国人の増加により免税売
上高が下支えとなったことなどが考えられる。4月の訪
日外国人による免税売上高は前年同月比54.3%増、60
億9, 000万円と過去最高を更新した。なお、全国百貨
店売上高は5月に前年同月比4.2%減、6月には同4.6%
減と、3か月連続のマイナスとなった。6月は天候不順
が続いた影響でマイナス幅が5月に比べて悪化したもの
の、4月に駆け込み需要の反動減が目立った美術・宝
飾 ・貴 金属の マイ ナス幅 は5月 の 23.2%減に 比べて
10.8%減と半減した。百貨店協会は、天候要因を除け
ばマイナス幅は5月に比べて改善しているとの見方を示
している。なお、訪日外国人による免税売上高は5月、
6月ともにそれぞれの月としては過去最高の売上高を記
録している。
図2: 全国百貨店売上高 店舗調整(前年同月比
店舗調整(前年同月比%)
(前年同月比 )
(%)
30
25
10
20
15
5
10
5
0
0
(5)
1
(5)
(10)
(15)
(10)
(20)
出所: Datastream, 経済産業省、2014 Q2
出所: 日本百貨店協会、2014 Q2
Q2 2014
ECONOMIC OVERVIEW
Japan Retail | MarketView
外国人観光客の増加により旅行収支が44年ぶりの黒字
外国人観光客の増加により旅行収支が 年ぶりの黒字に
年ぶりの黒字に
アウトルック
日本政府観光局(JINTO)による4月の訪日外客数(推計
値)は、123万2千人と2カ月連続で過去最高値を更新し
た。昨年夏にビザ(査証)の発給要件が緩和され、東南
アジアからの旅行客が増加していることに加え、3月30
日に国際線枠を拡張したことで、羽田空港経由の外国人
入国者数が前年同月比2割増しとなったことなどが、増
加の主因とみられる。
5月以降の消費者態度指数の改善傾向でみても、消費増
税による個人の消費意欲の低下は、一時的なものと考え
られる。夏のボーナス商戦へ向け、自動車各社は特別車
を投入するなど販売のてこ入れをおこなっており、家電
量販店も4Kテレビなどの新製品の拡販を軸に、反動減か
らの脱却を目指している。全国百貨店売上高も、夏の
セールが本格化する7月には増加に転じる可能性が高い。
JAPAN
財務省が発表した4月の国際収支速報によると、訪日外
国人が国内で使う金額から、日本人が海外で支払う金額
を差し引いた旅行収支は、177億円の黒字となった。旅
行収支が黒字に転じたのは、日本万国博覧会(大阪)が
開かれた1970年7月以来、約44年ぶりのことである。
消費者態度
消費者態度指数は
態度指数は5月に反転上昇、
指数は 月に反転上昇、6月も更に改善
月に反転上昇、 月も更に改善
総務省が発表した4月の全国消費者物価指数(CPI:2010
年=100)は、生鮮食品を除く指数が103.0と前年同月比
3.2%上昇した。日銀が想定する、消費増税による押し上
げ効果の1.7ポイントを差し引くと1.5%の上昇となり、
前月の実質1.3%の上昇率を0.2ポイント上回った。電気
代が10.1%上昇したほか、ルームエアコンなどの家庭用
耐久財が9.4%上昇するなど、一部で増税分を大きく上回
る値上がりがみられた。5月の全国消費者物価指数も、
生鮮食品を除く指数が103.4と前年同月比3.4%上昇し、
12カ月連続の上昇となった。
内閣府が発表する消費者態度指数(季節調整値)は、4
月まで5カ月連続で低下したものの、5月には6ヵ月ぶり
に反転上昇した。「暮らし向き」、「収入の増え方」、
「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」のすべてが
上昇し、特に「耐久消費財の買い時判断」は前月比4.8
ポイントの上昇と、高い伸び率となった。なお、1年後
の物価に関する見通しについては、「上昇する」が2か
月連続で低下したものの依然として8割を超えている。
なお、同指数は6月に41.1と、前月比で更に4.1ポイント
の上昇となった。
日本銀行による6月の全国企業短期経済観測調査(短
観)でも、大企業製造業の先行き3か月後の業況判断指
数(DI)は、プラス15ポイントと3ポイントの改善を見
込んだほか、前回3月調査時点の先行き見通し(プラス8
ポイント)も上回っている。6月上旬には、日経平均株
価も約2か月ぶりに1万5,000円台に回復しており、先行
きの景況感の改善に期待感は強い。
図3: 消費者態度
生鮮食品を除く)
消費者態度指数
態度指数vs消費者物価指数
指数 消費者物価指数(生鮮食品を除く
生鮮食品を除く
CPI (コア、右軸)
消費者態度指数(左軸)
104
50
103
45
102
40
101
35
100
30
99
25
98
出所:内閣府, 総務省、2014 Q2
図4: 景気動向指数 vs 東証株価指数
日経平均株価(左軸)
2
19,000
18,000
17,000
16,000
15,000
14,000
13,000
12,000
11,000
10,000
9,000
8,000
7,000
6,000
景気動向指数(先行、右軸)
115
110
105
100
95
90
85
80
75
出所:内閣府、東京証券取引所、2014 Q2
Q2 2014
RETAIL MARKET MOVEMENTS
TOKYO Q2 2014
表参道・
表参道・原宿・
原宿・青山
リーマンショック前の賃料水準を超える事例も
リーマンショック前の賃料水準を超える事例も
通りによっては賃料水準の更なる二極化も
通りによっては賃料水準の更なる二極化も
テナントの出店ニーズが高い、中央通りや晴海通りなど
のメインストリート沿いの空室は少なく、 空室が出て
も複数のテナントが競合し、時間を掛けずに成約する状
況が続いている。メインストリートから少し離れた区画
でも、オーナーの強気な賃料設定をテナントが受け入れ
る成約事例がみられた。この一年間で賃料はメインスト
リートを中心に大きく上昇し、リーマンショック前の水
準を超える事例も増えつつあるが、エリア全体へ波及す
るには至っていない。賃料は、既に大幅に上昇した通り
では伸び率が鈍る一方、周辺エリアでの上昇が期待でき
ることから、全体的には強含みで推移すると考えられる。
表参道などメインストリート沿いでは空室が少ないため、
好立地の物件は引き合いが強く、今後、資金力のあるテ
ナントが高額な賃料で決まることが予想される。一方、
メインストリートから中に入った通りでは、需要の強弱
が分かれている。人気のある個性派ブランドが集積した
ことで回遊性が高まり、ここ数年の間で、賃料の坪単価
が数万円単位で上昇した通りがある一方、募集区画がな
かなか埋まらず、既存のテナントも撤退するなど苦戦し
ている通りもみられる。今後のリーシング状況によって
は、賃料水準の二極化が更に進むことも予想される。
Japan Retail | MarketView
銀座
「アップルストア表参道」がオープン
「アップルストア表参道」がオープン
開発計画のリーシングは順調に進むと予想
開発計画のリーシングは順調に進むと予想
オリックス不動産株式会社は、2014年秋のオープンを予
定している商業施設、「KIRARITO GINZA(キラリトギン
ザ)」(延床面積:5016.20坪、建物規模:地上12階地
下3階)に入居するテナントを一部発表した。日本初の
旗艦店として、アメリカのバッグブランド「HARTMANN
(ハートマン)」が出店するほか、サムソナイトのラグ
ジュアリーブランド、「サムソナイト・ブラックレーベ
ル銀座」が銀座8丁目の現店舗から移転し、国内最大規
模の売り場面積となる。ハワイ発のパンケーキで知られ
る「Eggs’n Things(エッグスン シングス)」も、同エリ
ア初となる出店を予定している。
J.フロントリテイリングをはじめとする事業体4社は、
2016年11月にオープン予定の松坂屋跡地の再開発計画
について、百貨店は出店せず、外資系ラグジュアリーブ
ランドを核とした商業施設とすることを発表した。1階
には、銀座で初となる観光バスの乗降所や、外国語に対
応した観光案内所を新設するなど、急増する訪日外国人
の取り込みに力を入れている。
このほか、複数の開発計画が進められているが、竣工を
一年以上先に控えた計画についても複数のテナントが興
味を示しており、景気の回復を背景に、リーシングは
オーナーの意向に沿って順調に進むと予想される。
図5: エリア別出店事例
年Q2
エリア別出店事例 2014年
新宿
9%
今期も、話題性のある大型店や旗艦店のオープンが複数
あった。国内8店舗目、都内では銀座・渋谷に続く3店舗
目となる「アップルストア表参道」が、表参道沿いに6
月13日オープンした。地上1階、地下1階の2フロアで、
売場面積は同社店舗の中で国内最大である。アップルの
出店は長らく噂されていたこともあり、建築設計から
アップルが参加していたことを想像させる店舗デザイン
となっている。日本での新規オープンは、2006年の札幌
以 来 8 年 ぶ り と な る 。 ま た 、 「 GIVENCHY ( ジ バ ン
シィ)」が3フロア構成の旗艦店をONE表参道にオープ
ンしたほか、「Alexander McQueen(アレキサンダー・
マックイーン)」が国内初の旗艦店をみゆき通りに、
「CHAN LUU(チャンルー)」が世界初の旗艦店を骨董
通りに、それぞれオープンした。
新たな商業施設としては、アメリカ西海岸のファッショ
ン や カ ル チ ャ ー を コ ン セ プ ト に し た 「 SO-CAL LINK
OMOTESANDO(ソーカルリンク表参道)」が5月19日
にオープンした。地上1階で店舗面積は約130坪で、セレ
クトショップ「Planet Blue World(プラネット ブルー
ワールド)」など計4店舗が出店している。
図6: 業態別出店事例
年Q2
業態別出店事例 2014年
銀座
22%
飲食
34%
渋谷
22%
物販
62%
3
表参道
47%
*プレスリリース、メディア報道などの情報をCBREで加工して算出
**4エリア(銀座・表参道・新宿・渋谷)の中での出店・業態比率とする
3
サービス
4%
Q2 2014
Japan Retail | MarketView
新宿
渋谷
逼迫した需給バランスは今後も継続
公園通りや神南エリアの空室も引き続き消化
公園通りや神南エリアの空室も引き続き消化
今期も、テナントの旺盛な出店ニーズに対して、空室が
少ないという状況は変わっていない。路面店舗の供給が
少ない上、テナントの入れ替わりも多くはないため、空
き区画が出ても次のテナントが内定するまでに時間を要
しない。販売効率の高いエリアであり、今後もひっ迫し
た需給バランスが続くと考えられる。
前期に引き続き好立地の空室は希少で、近隣の原宿や表
参道と比較すると、出店事例は少なかった。話題性の
あった出店としては、ブランディングの一環としてオー
プンした楽天による初の実店舗「楽天カフェ」、アジア
最大規模の店舗をオープンした米系レストランチェーン
「HOOTERS(フーターズ)」、改装後のパルコパート3
にエリア初店舗をオープンした「GU(ジーユー)」な
どがあった。「GU」は、服を試着したまま街に出て、
着心地や他店の商品とのコーディネートを確認できる新
サービスを期間限定で実施し話題を呼んだ。駅から少し
離れた公園通りや神南エリアなどでわずかに残っていた
空室も、前期に引き続き次第に消化されつつある。
ラグジュアリーブランドの出店が相次ぐ
ラグジュアリーブランドの出店が相次ぐ
「TIFFANY & Co.(ティファニー)」が、単独としては5
年ぶり、新宿では初となる路面店を、今秋10月にオープ
ンすることを発表した。新宿通り沿いとなる店舗は3フ
ロアで構成されており、約100坪の店舗面積となる模様。
パリのシャンゼリゼ通りに今春オープンした旗艦店と同
じく、ティファニーの最新ストアデザインを取り入れて
いる。また、10月29日にオープンする「新宿中村屋ビ
ル」の1・2階には、「COACH(コーチ)」の旗艦店の
入居が発表された。国内で10店舗目、東京都内で5店舗
目となる。昨年11月には「LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィ
トン)」も路面店をオープンしており、ラグジュアリー
ブランドの出店が相次いでいる。
渋谷エリアではテナントの入れ替わりが少なく、好立地
への出店余地が限られているため、需要が顕在化しにく
い。しかし長期的には、JR渋谷駅を中心とした大型再開
発が複数計画されており、それらが需要の受け皿となっ
て、エリアの更なる活性化に寄与すると考えられる。
ラグジュアリーブランドの出店ニーズは、JR新宿駅方面
から明治通りまでの新宿通り沿いに集中していたが、
「LOUIS VUITTON」が明治通りを挟んだ伊勢丹の対岸に
出店したことから、今後は出店エリアに広がりが出るこ
とも予想される。
テーブル1:
新規出店事例
テーブル
(2014年
年4月~
月~6月期)
月~ 月期)
面積
テナント
4
エリア
(推定坪数)
推定坪数)
ビル名
ビル名
kate spade new york 銀座店
銀座
130
銀座ポニーグループビル
コール ハーン 銀座本店
銀座
N/A
文祥堂銀座ビル
ウィークエンド マックスマーラ銀座店
銀座
N/A
第1弥生ビルディング
ZARA HOME AOYAMA
表参道・原宿
210
青山ライズスクエア
SO-CAL LINK OMOTESANDO
表参道・原宿
150
イルチェントロ・セレーノ
COUTUME青山店
表参道・原宿
N/A
コモド青山ビル
マンゴーチャチャ
表参道・原宿
20
原宿メイプルスクエア
BROOKLYN CHARM 原宿本店
表参道・原宿
30
平田レジデンス
ASTRAET 青山店
表参道・原宿
30
T-PLACE
GIVENCHY(ジバンシィ)
表参道・原宿
120
ONE 表参道
ARC’TERYX 原宿ブランドストア
表参道・原宿
50
江守ビル
Doc Popcorn 原宿店
表参道・原宿
30
吉野ビル
Planet blue world
表参道・原宿
70
SO-CAL LINK OMOTESANDO
アレキサンダー・マックイーン 青山店
表参道・原宿
120
TS青山ビル
Atelier Fixdesign 表参道店
表参道・原宿
110
N/A
Apple Store Omotesando
表参道・原宿
570
N/A
CHAN LUU 青山
表参道・原宿
N/A
倉澤ビル
GU(ジーユー)
渋谷
150
渋谷パルコパート3
HOOTERS渋谷店
渋谷
300
渋谷プライム
楽天カフェ
渋谷
100
マ・メゾンしぶや公園通りビル
出所:プレスリリース、メディア報道などを基にCBRE推定、2014 Q2
Q2 2014
RETAIL MARKET OUTLOOK
TOKYO Q2 2014
今期の東京の主要マーケットでは、前期に引き続き店舗需要が堅調に推移し、世界初・日本初の店舗や、旗艦店など
大型店舗のオープンがみられた。また、明らかになったオープン予定も多かった。4月以降、消費増税による小売販
売額の落ち込みはあったものの、個人消費の低下は一時的なものと考えられている。売上不振により出店のペースを
落としたテナントは少なく、今回の消費税増税のテナント出店計画に対する影響は限定的であったと言える。
百貨店を中心に、急増する外国人観光客の取り込みに力を入れる小売企業も多い。今年1月から5月の訪日外国人数
が、過去最速のペースで年間500万人を突破した。10月には免税対象品目も拡大されることから、これを好機と捉え
た出店が増えると考えられる。中国・東南アジアなどの訪日外国人が、日本で旬なファッションや、日本にしかない
ものを買い求めることも多く、アジア向けの情報発信地として、東京を出店地に選ぶ外資系テナントも更に増加する
と予想される。
Japan Retail | MarketView
OUTLOOK
相場をやや上回るような条件でテナントが内定する事例もみられ、この一年の間に大きく賃料が上昇したエリアも
あった。今後は、やや出遅れ感のあった通りでも賃料上昇のペースが上がるとみられ、引き続き全体では強含みで推
移すると予想される。
テーブル2:
今後の新規供給(東京
以降 (延床1,000坪以上)
坪以上)
テーブル
今後の新規供給 東京)
東京 Q3 2014以降
(延床
事業主
OPEN
5,015
オリックス不動産など
2014年秋
銀座
15,035
東急不動産
2015年秋
銀座六丁目地区市街地再開発計画
銀座
44,740
銀座六丁目10地区市街地再開発組
合
2016年11月
(仮称)サッポロ銀座ビル再開発事業
銀座
2,140
サッポロ不動産開発
2016年夏
(仮称)表参道計画
表参道
2,920
東急不動産
2015年1月
(仮称)八分目プロジェクト
表参道
1,120
アッシュホールディングス
2015年9月
表参道プロジェクト
表参道
3,025
ヨドバシカメラ
2015年
ヒューリック新宿ビル建替え計画
新宿
2,940
ヒューリック
2014年10月
(仮称)新宿中村屋ビル
新宿
1,940
中村屋
2014年9月
新宿東宝ビル開発計画
新宿
16,760
東宝
2015年
新宿駅新南口ビル(仮称)
新宿
33,580
JR東日本
2016年
渋谷駅南街区プロジェクト
渋谷
35,545
東京急行電鉄
2017年
渋谷駅地区 道玄坂街区開発計画
渋谷
17,850
道玄坂一丁目再開発組合
2018年
面積
施設名
5
エリア
(推定坪数)
推定坪数)
キラリトギンザ
銀座
(仮称)銀座五丁目計画
出所:プレスリリース、メディア報道などを基にCBRE推定、2014 Q2
5
Q2 2014
RETAIL MARKET MOVEMENTS
Japan Retail | MarketView
心斎橋
梅田
栄
出店ニーズの勢いが強まるも受け皿
不足が続く
不足が続く
需要の受け皿不足が継続
需要の受け皿不足が継続
受け皿がなく出店戦略を変更したテ
OSAKA・NAGOYA Q2 2014
御堂筋沿いや心斎橋筋商店街では、
旗艦店や関西初出店からあらゆる業
態の小規模な新規出店ニーズに至る
まで、需要の勢いが強まる一方、テ
ナントにとって魅力のある好立地に
空室在庫がほとんど存在しない状況
が続いている。そのため、参入機会
をうかがうテナントは、御堂筋や心
斎橋筋商店街といったハイストリー
トだけでなく、裏通りや長堀通、堀
江方面にまで出店候補先を広げざる
を得ない状況となっている。現状、
長堀通方面へ広がりはみられるが、
今後、更にエリアの広がりがみられ
るかどうかが注目される。
旗艦店や関西初出店が相次ぐ
旗艦店や関西初出店が相次ぐ
今期の代表的な動きとしては、エル
メネジルドゼニアが御堂筋沿いに
「エルメネジルド ゼニア大阪グロー
バルストア」をオープンしたこと、
ブルーノートがプロデュースする
「 Brooklyn Parlor ( ブ ル ッ ク リ ン
パーラー)」が関西に初出店したこ
と、アパレルのJUNが展開するセレ
クトショップ「BIOTOP(ビオトー
プ)」の国内2号店が、東京の白金
台の約2倍の広さでオープンしたこ
となどが挙げられる。この他にもア
パレル、雑貨、軽飲食店舗の新規出
店が相次いでみられた。特に、旗艦
店や関西初出店が多くみられ、心斎
橋エリアに積極展開を目指すテナン
トが多数存在することが改めて確認
された。
6
ナントも
心斎橋エリア同様、梅田エリア、と ナントも
りわけ茶屋町において、テナントに 物販業を中心とした出店ニーズが、
とって魅力のある好立地に空室はほ 前期から高い水準で推移している。
とんど存在しない状況が続いている。 旺盛な需要に対して空室は少なく、
今秋にユニクロのグローバル旗艦店 外資系ブランドなど、長期スパンで
がオープンし、一段と賑わいが増す 探し続けているテナントも少なくな
ことが予想されている。しかし路面 い。中には、出店の機会を覗ってい
店舗のストック増加が期待できない たものの、路面店の受け皿がないた
ため、テナントの受け皿不足が続き、 めに郊外型SCを含む出店戦略に変更
出店機会をうかがうテナントの選択 したテナントもみられる。今期、話
肢は非常に限定的となっている。
題性のあるテナントの出店が少な
かったのも、こうしたエリアの状況
日本初進出先を大阪にするケースが
を反映している。
増加
今期の代表的な動きとしては、雑貨
店「ASOKO(アソコ)」が全国で3
店舗目となる店舗を既存店の約3倍
の270坪でオープンしたこと、イタ
リアのカルツェドニアの日本1号店
が“駅ナカ”「ekimo(エキモ)梅田」
にオープンし、同社の展開するイン
ナーブランド「intimissimi(インティ
ミッシミ)」の日本初の路面店舗が
オープンしたことが挙げられる。近
年、外資系のテナントが大阪を日本
の初出店先とするケースが増えてき
ている。大阪の消費者の、価格や商
品性に対するシビアな感覚を日本進
出のマーケティング戦略の一環とし
て活かそうとする戦略のようだ。
グローバル旗艦店「UNIQLO
グローバル旗艦店「
OSAKA」が今秋
」が今秋オープン
」が今秋オープン
ユニクロは今秋に、国内では銀座店、
心斎橋店に次ぐ3店目のグローバル
旗艦店をオープンする。地上1~4階
に 「 ユ ニ ク ロ 」 ( 売 場 面 積 約 890
新規供給が相次ぐも需給逼迫の解消
坪)、地下1~2階にグループブラン
にならず
ド「GU」(売場面積約260坪)が出
年内にはハイストリートで3棟、合 店する。同社は、同店舗を世界に向
計約1,000坪(延床面積ベース)の けてユニクロを発信していく情報発
新規供給が見込まれている。しかし、 信基地と位置付けており、世界一の
この内1棟では、ZARAの姉妹ブレン 商品数、VMD(ビジュアルマーチャ
ド「Stradivarius(ストラディバリウ ンダイジング)、店舗運営、サービ
ス) 心斎橋店」が、国内最大、世界 ス、クリエイティビティを凝縮し、
でも最大級規模の旗艦店としてオー 大阪から関西へ、そして世界へとユ
プンすることが決定している。その ニクロを発信していくと述べている。
他2棟に関しても、テナントは既に 大型商業施設中心に展開する梅田エ
内定している模様であり、心斎橋エ リアの店舗マーケットにおいて、こ
リアのハイストリートの需給逼迫の うした集客力、話題性の高い店舗が
解消にはつながらないであろう。
出店することは、同エリアの路面店
舗マーケットの活性化にプラスに作
用するであろう。
「 名 古 屋 ZERO GATE ( ゼ ロ ゲ ー
ト)(仮称)」
仮称)」が今秋
)」が今秋オープン
が今秋オープン
現在、開発が明らかになっている物
件についても、時間を掛けずにテナ
ントが内定しているとみられる。大
津通り沿いに今秋オープン予定の
「名古屋ZERO GATE(ゼロゲート)
(仮称)」(延床面積:約2,270坪、
建物規模:地上3階)もテナントの
引き合いが強く、既に全テナントが
内定している模様だ。事業主のパル
コが、東海地区初出店となるファス
トファッション系ブランドの誘致を
進めていたという報道もあり、入居
テナントの公表が待たれる。
Q2 2014
RETAIL MARKET OUTLOOK
OSAKA・NAGOYA Q2 2014
大阪の店舗マーケットでは、需給が逼迫し、需要を吸収できない状況が続いている。今後もこうした状況が続く見込
みである。年内には、梅田、心斎橋エリアのいずれにおいても新規供給が行われるが、テナントは既に内定(見込み
を含む)済であり、供給不足の解消の一助にはなり得ない。むしろ新規出店テナントの集客力によって街が活性化し、
テナント需要は更に高まると考えられる。2015年以降も複数の供給計画があるものの、状況に大きな変化は期待で
きない。参入機会をうかがうテナントにとって厳しい状況が続き、賃料も強含みで推移するであろう。
名古屋
2015年秋から2017年にかけ、名古屋駅周辺の大型開発が予定されているが、今のところ栄エリアへの出店ニーズに
大きな変化はみられない。オーナーからの高めの賃料提示にテナントが応じる事例が、賃料負担能力のある物販業な
どで増えている。今後も、テナントの旺盛な出店ニーズを背景に、賃料は強含みで推移すると考えられる。特に、賃
料に値頃感があった通りや物件などで上昇し、相場全体が底上げされると考えられる。
テーブル3:
新規出店事例(大阪・名古屋)
テーブル
新規出店事例(大阪・名古屋)
Japan Retail | MarketView
大阪
(2014年
年4月~
月~6月期)
月~ 月期)
ブランド
エリア
面積
(推定坪数)
推定坪数)
エルメネジルドゼニア
心斎橋
125
心斎橋W-PLACE
BIOTOP
心斎橋
N/A
メブロ16番館
Brooklyn Parlor
心斎橋
175
ORE 心斎橋ビル
チャコット
心斎橋
N/A
心斎橋W-PLACE
ASOKO
梅田
270
NU茶屋町
カルツェドニア
梅田
N/A
ekimo梅田
intimissimi
梅田
30
チロル梅田
ビル名
ビル名
出所:プレスリリース、メディア報道などを基にCBRE推定、2014 Q2
7
7
Q2 2014
OUTBOUND
JAPANESE RETAILERS Q2 2014
Japan Retail | MarketView
テーブル4:
海外進出企業
テーブル
面積
リテーラー
進出先
(推定坪数)
推定坪数)
業態
チュチュアンナ
台湾
N/A
物販
マックスバリュ鉑頓城店
中国
660
スーパー
Soup Stock Tokyo 100AM
シンガポール
N/A
物販
シチズン
アメリカ
7,000
物販
LaCrosse
アメリカ
N/A
物販
中国
N/A
物販
康心美大連佳兆業店
出所:プレスリリース、メディア報道などを基にCBRE推定、2014 Q2
三井不動産がアウトレット事業を拡張
三井不動産がアウトレット事業を拡張
三井不動産は、クアラルンプールにおける「(仮称)三井アウトレットパーク クアラルンプール国際空港(KLIA)」、
台湾北部新北市における「(仮称)台湾林口アウトレット計画」の建築工事に、それぞれ着手したと発表した。
「(仮称)三井アウトレットパーク クアラルンプール国際空港(KLIA)」は、東南アジアにおいて三井不動産初のア
ウトレットモール事業となる。第一期は4月1日に着工し、2015年初頭の開業を予定しているが、最終的には東南ア
ジア最大級のアウトレットモールへと拡張する計画だ。「(仮称)台湾林口アウトレット計画」は、台湾における三
井不動産初の事業となり、4月25日に着工し、2015年後半の開業を予定している。
日系小売企業による出店が加速すると予想
日系小売企業による出店が加速すると予想
東南アジアにおける、SC開発が進んでいる。イオンとイオンモールは、ベトナムで3店舗目、ハノイ市で初となる
ショッピングモール「イオンモールLongBien(ロングビエン)」の建設に4月11日着工し、2015年の開業を目指すこ
とを発表した。延床面積約11万㎡となる施設には、イオンの各店舗と約180の専門店の入居が計画されており、室内
プールや遊園地を備えた娯楽施設となる模様だ。カンボジアでも、1号店となるショッピングモール「イオンモール
プノンペン」を6月30日にオープンする。首都プノンペンの中心地にあり、延床面積約10.8万㎡の施設には、カンボ
ジア初となるテナントが107店、日本からの出店も49店に上る。
東南アジアにおいては、耐久消費財の主たる購買層とされる年間可処分所得5千ドル(約50万円)を超える中間層の
消費者が3億人に達しており、今後、日系小売企業による出店は、加速すると予想される。
8
Q2 2014
CAPITAL MARKETS
JAPAN RETAIL Q2 2014
米Invescoが大阪・心斎橋のビルを売却
が大阪・心斎橋のビルを売却
ドイツのファンド運用会社Union Investment(ユニオン
インベストメント)が、渋谷区神宮前の明治通り沿いに
ある「J6 Front(ジェイシックス・フロント)」を約180
億円で取得した。売主は、アルファ・インベストメン
ト・パートナーズのSPCである。特徴的なファサードを
持つ同ビルは視認性もよく、1・2階にはカジュアルブラ
ンド「collect point(コレクトポイント)」、3・4階には
「ブライダルハウス TUTU(チュチュ)」が入居してい
る。隣接ビルの1階には「Audi(アウディ)」が入居す
るなど、リテールマーケットとしても定評のある好立地
である。買主のUnion Investmentは、2008年を最後に日
本での不動産取得を控えていたが、今回は5年半ぶりの
対日投資となった。リーマンショック後に、日本での投
資活動を控えていた外資系企業の投資意欲が高まってお
り、大型取引は今後も続くと予想される。
2014 年 4 月 、 イ タ リ ア の ア パ レ ル ブ ラ ン ド 、
「Dolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)」の旗艦店
が入居する「プライムスクエア心斎橋」が、約130億円
で売却された。ラグジュアリーブランドが集積する御堂
筋通り沿いにあり、地下鉄心斎橋駅からも徒歩4分とい
う好立地の物件である。2007年に竣工した同ビルは、1
階と2階に「Dolce&Gabbana」が入居しているほか、最
上部の2フロアは高級中華料理店「福臨門」が営業する
など、約25テナントが入居している。北隣の街区では、
2013年7月にプラダの大型旗艦店が入るビルが開発され
たほか、三井不動産も新たな店舗ビルの開発を計画して
いる。売主は米Invesco(インベスコ)、買主は、米Elliot
Management(エリオット・マネジメント)が出資する
SPCと報道されている。同報道によれば、キャップレー
トは4%台前半とみられている。
Japan Retail | MarketView
独Unionが神宮前のビルを取得
が神宮前のビルを取得
図7: 銀座プライムイールド Q2 2014
上限値
中間値
下限値
4.4
4.2
4.0
3.8
3.6
3.4
3.2
3.0
出所: CBRE、2014 Q2
図8: 御堂筋プライムイールド Q2 2014
上限値
中間値
下限値
5.6
5.4
5.2
5.0
4.8
4.6
4.4
9
9
4.2
4.0
3.8
出所: CBRE、2014 Q2
Q2 2014
RECENT RETAIL TRANSACTIONS
JAPAN Q2 2014
Japan Retail | MarketView
テーブル5:
主な取引事例(
年4月~
月~6月期)
テーブル
取引事例(2014年
事例(
月~ 月期)
(百万円)
百万円)
キャップ
レート
(報道/
報道/公表
ベース)
ベース)
(報道/
報道/公表
ベース)
ベース)
価格
ビル名
ビル名
買い主
売り主
主要テナント
主要テナント
J6 Front
ユニオン・
インベストメント
J6Front特定目的会社
(アルファ・インベストメント・
パートナーズ)
collect point、
ブライダルハウス TUTU
18,000
-
プライムスクエア
心斎橋
合同会社心斎橋開発
(エリオット・
マネジメント)
アクエリアス・
プロパティ合同会社
(インベスコ)
Dolce&Gabbana
13,000
4.0%
ビーコンヒルプラザ
(イトーヨーカドー
能見台店)
イトーヨーカ堂
東急リアル・エステート
投資法人
イトーヨーカ堂
8,720
5.04%
出所:プレスリリース、メディア報道など、2014 Q2
10
Q2 2014
CONTACTS
本社(東京)
東京都千代田区丸の内2-1-1
明治安田生命ビル 18F
リテールサービス部
t: 03-5288-9790
関西支社(大阪)
大阪市中央区安土町2-3-13
大阪国際ビルディング
リテールサービス部
t: 06-6261-2115
名古屋
名古屋市中区錦3-20-27
御幸ビル
リテールサービス部
t: 052-205-6951
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各地のマーケットに関するお問い合わせ:
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Japan Retail MarketViewついてのお問い合わせ
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大久保 寛
Executive Director
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栗栖 郁
Retail Analyst
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CBRE
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CBRE Japan Research Teamは、不動産マーケットに関するリサーチ、計量経済学的予測、コンサルティングサービスをグローバルに協働して提供す
る卓越したリサーチャーのネットワークであるCBRE Global Research and Consultingの日本部門として、世界中の不動産投資家やオキュパイヤーに
向けて本レポートを提供しております。
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