「リスキービジネス」バーゼル、 銀行、非難合戦

CAPITAL MARKETS
WHITE PAPER
「リスキービジネス」
バーゼル、
銀行、
非難合戦
George Mutema
市場リスク部門、
シニアビジネスアナリスト
トレーディング勘定の信
頼性は今、
規制強化の波
にさらされています
世界各国の銀行が、
これまでに例を見ない厳しさでのトレーディング
勘定の監査を経験しており、
何十年も”問題にされなかったった
リスクモデルが見直されています。
サンガードのGeorge Mutema
が新しいリスクモデルを説明します。
その変化はこれまでのものが進
化したのではなく、
すっかりその姿を変えたものなのです。
世界経済危機以降、
リスクモデルは巨大なプレッシャーに晒されてい
ます。
世界経済のメルトダウンによって、
リスク管理機能がにわかに
注目されるようになり、
銀行や規制当局が1990年代以来金融システ
ムを支えてきた基本的前提に対する覆いを外し始めています。
経済危
機の最中に、
自行のエクスポージャーすらも把握できない銀行が存在
することが明るみに出ました。
そうなれば、
より複雑なリスク指標
などまして、
より複雑なリスク・メトリクスに至っては言うまでもありま
せん。
数十年間、
問題なく作動してきたシステムには重圧による亀裂
が生じています。
現在のトレーディング勘定の検査では、
「内部モデルで産出された
VaRの数字は信頼できるのか?」
という疑問が提起されます。
現在行
われている検査から導かれる結果として、
金融機関が次の経済危機
に耐えられるということを確認しなければならないというプレッシャ
ーを規制当局が感じることによって、
トレーディング勘定の資本賦課
額が大幅に引き上げられることになると考えられます。
2012年5月、
バーゼル銀行監督委員会
(BCBS)
は
「トレーディング
勘定の抜本的見直し」
(原題:Fundamental review of the
Trading Book)
を公表しました。
委員会は以下の事項を要点として
提案しています。
››バリュー・アット・リスク(VaR)から期待ショートフォール(ES)
へ―テールリスクの捕捉を可能に
››流動性リスクの組入れ―非流動性ポジションのリスクを適正
に反映する
››ストレス時のデータを勘案した資本水準の調整―ストレス
時の市場ではストレス下の市場では、流動性のある取引の流動性
を失う可能性がある。
››標準的方式 と内部モデル方式 (IMA)
››ヘッジメリットの限定的使用
››トレーディング勘定と銀行勘定間の境界の厳密化―規制逃
れを制限
2013年2月には、
BCBSはマーケット・リスクのリスク加重資産の
分析結果を公表しました。
この報告書の要点となるのは、
リスクモデ
ルが、
類似のリスク・アセットに対して銀行間で資本水準に大きな相
違を生んでいることがわかったことです。
明らかに、
一貫性があると
考えられていたモデルに一貫性は無く、
このことはマクロレベルでの
リスク管理にとって望ましいことではありません。
バーゼル委は
調和がその答えとなることを示唆しましたが、
本当にそうでしょうか。
各銀行が類似の数値を出せる類似のモデルを利用すべきであるとい
うのは、
直感的には正しいと思えますが、
銀行がリスクを測定・管理す
るモデルがあまりにも規定的になってしまうと、
市場のストレスが高ま
った場合に思いがけない深刻な結果をもたらすことになりかねませ
ん。
経済危機の状況で、
すべての金融機関が同じモデルをすればすべ
ての機関から同時に売りが殺到して市場が凍結し、
市場全体の流動
性リスクが著しく増大します。
また様々な銀行や管轄区域の様々なモ
デルが、
固有のエクスポージャーを持つ各行に対応する最良のリスク
カバレッジに向けて進化することはありません。
このリスクを認識した
上で、
規制当局は、
銀行に自行のリスクマネジメントが信頼できる
数値を算出しているということについて、
当局を納得させるよう求
めています。
2 「リスキービジネス」
バーゼル、銀行、責任転嫁
金融危機がVaRの衰退を促したことは間違いありませんが、
そのまま
すんなりいくものではありません。
VaRでは、
極端な市場イベントのリ
スクを捕捉できません。
つまり、
通常の状態やボラティリティの低い状
態下ではうまく作動するものの、
ブラックスワン
(予期せぬ状況)
が発
生した場合にはまったく役に立ちません。
VaRはまた、
複雑性が非常
に高い場合にも機能しません。
VaRが開発された1990年代のトレー
ディング勘定商品はより単純だったので、
VaRは十分機能していまし
たが、
今よりも単純でためにうまくいきましたが、
今日の商品に内在す
る金融エンジニアリングを考慮した場合には、
リスクを簡単に見逃し
てしまう可能性があります。
銀行がそのリスク許容度強化にいっそう
力を入れていった2000年代半ばに、
VaRは、
各行の実際のリスクを
反映するには不適切であるとうことが一部に明らかになっていまし
た。
残念ながら、
その当時にこの問題に対処できなかったことには理
由があり、
今もその影響を受けています。
現在、
多くの銀行では、
単純なVaRに加えて、
ストレステストや自己資
本賦課
(IRC)
などVaRの応用型によるその他のモデルやテクニック
を用い、
VaRの弱点補完に努めています。
バーゼル委員会は期待ショ
ートフォール
(ES)
をVaRに代わるものとして提案しており、
これが問
題対処への足がかりになると考えられます。
しかし、
私たちが注意し
なければならないのは、
モデルには必ずある程度の誤りがあるという
ことです。
期待ショートフォール算出もVaRと同程度の複雑性を伴
い、
テールリスクの捕捉には優れているものの、
やはり弱点は存在す
るのです。
の背後にある計算を掘り下げて示し、
デスクにいるトレーダーに
戻せるようにすることも求められていくでしょう。
これは、
例えば、
取引所の要件とも整合性があり、
非常に強力なデータベースツー
ルを必要とします。
3. 現在、
金融機関が抱える大きな課題は、
複雑なリスクモデルを作
動させるのに時間がかかりすぎることです。
リスクレポートやその
処理には、
一晩もしくはそれ以上の時間がかかっています。
いっそ
う複雑なモデルを導入していくと、
今よりもさらに長時間かかる
ということになります。
月曜日のリスクレポートが水曜日に出ると
いうことでは、
規制当局にも、
顧客にも、
社内のユーザーにも満足
してもらえないでしょう。
特に、
市場が不安定であれば尚更です。
意思決定者は、
即座、
または遅くとも同日中には情報を得必要が
あり、
それを実現するためにはテクノロジーに重により大きな重
点を置く必要があるでしょう。
規制逃れは、
大きな変化が進行中の場合、
必ず考慮に入れなければ
ならない背景因子です。
グローバルな銀行は、
営業行為が最もやり易
い場所に営業拠点を設けるということに長けています。
一方、
規制当
局はここ数年その事に対し一層注目し注目を強化し、
かつて存在した
抜け道は非常に小さくなっています。
複数の法域で事業を行う銀行
は、
グローバルなリスクポジションの全体としての総合的な把握に注
目しており、
このことは、
業務を管理する上で最良の方法であると広く
考えられています。
もっとも効果的であると考えられています。
しかし、
治外法権、
つまり最近アメリカの規制当局が示したものなどが、
銀行
流動性リスクは常時耳にする課題であり、
規制当局も当分の間はこの にグローバルな親会社とは別に、
地域の子会社で流動性を保持する
ことに照準を合わせることはわかっています。
従来のVaRモデルでは、 ことを要求し、
銀行業務の妨げとなっています。
繰り返しになります
流動性は経済危機の状況下でも維持されるという想定を採用してい
が、
ここでもテクノロジーに重点を置くことが必要とされます。
多くの
ましたが、
と考えていましたが、
もちろんそうではないことが今や明ら
複雑なモデリングシナリオを用いてグローバルレベルでリスクを算出
かになっています。
経済危機の最中、
10日以内に暗に10日以内に清
しつつ、
地域による規制の違いを考慮することのできるシステムが必
算されると想定された商品が突然完全に流動性を失いました。
にな
要とされてくるからです。
またその同じシステムで、
特定の国に特有な
り、
そういった取引を決済するために十分な資金がないことが、
すぐ
リスクを、
さらにミクロのレベルでのリスク管理が可能でなければな
に明らかになりました。
りません。
さらに資本賦課額の引き上げには、
銀行に対するストレス時のデータ
を勘案したVaRモデルの調整を求めるバーゼル要件も関わっていま
す。
もっとも価格が上昇しているときに大量の追加資本を見つけるの
は、
多くの機関にとって困難であることは言うまでもありません。
リス
クを軽減することは、
資本賦課額低減への直接的な対処となるもの
の、
そこには利益率の低下が伴います。
たとえば、
アジア・パシフィック地域ではオーストラリアの銀行は、
世界
的に同様の銀行と比較した場合、
そういった課題にうまく取り組んで
いると言えます。
オーストラリアのリスク管理傾向は保守的で、
概ね従
来からの規制に基づいて行われています。
とはいえ、
オーストラリアも
現在起こっている変化に無縁というわけではありません。
しかしなが
ら、
銀行はこれら変化を免れるとは言い難い状況です。
ブラックボック
ス的なモデルを使用している銀行もオーストラリアにはあり、
それを今
世界中の銀行でリスクと利益のバランスと取ることの優先性がますま
後も継続していくことはできないため、
リスク管理部門はそのモデルの
す高まるにつれて、
組織内でのリスク専門家の重要性が注目されるよ
透明性を向上しつつ、
複雑な要求に対処していく必要が出てきます。
うになっています。
大規模銀行では、
顧客窓口部門との連携でそのバ
オーストラリアは、
トレーディング勘定に対するバーゼルIIとバーゼル
ランスを適正化することがリスク管理機能に不可欠となっていると同
2.5の要件を早期に採用した国のひとつであり、
リスクマネジメントが
時に、
透明性向上への要求の高まりによって、
リスク管理に関するモ
次の段階に進化していく上で、
業界をリードし続けることが今後の課
デリングとレポーティングに非常に時間がかかるようになっています。
題となります。
古臭いシステムが、
必ずしも理想的な状態で適合していない新しいパ
ラダイムの中で再利用されているような場合には、
特にそう感じられ
新たな経済危機を回避するため、
規制当局は、
規制逃れの抜け道を封
ます。
鎖することを目指しています。
当局は、
引き続き
「プライバシー侵害」
を
実行し、
使や、
銀行がさまざまなレベルでリスクのモデル化手法やモデ
この新たな
「通常の状態」
にのリスクシステムにのしかかる数々の重
ル化資産勘定の計上方法を管理するでしょう。
今後も継続するでしょ
大な要求を以下に示します。
…
う。
各地域、
各国、
各機関、
それぞれがたえず変化し続ける規制の状況
1. 規制当局による透明性の要求。
ブラックボックスによるリスクモデ に取り組んでいくにあたって、
それぞれが採用する多様なソリューショ
ルの時代は終わりました。
求められる透明性を確保しつつ、
市場
ンにとって透明性と柔軟性は中心的課題となるでしょう。
その多様な
競争力を持ち、
さらに規制当局、
顧客、
経営陣を同時に満足させ
リスクモデルに内在する知的所有権の保護と、
透明性や柔軟性との
るモデルを開発・管理することが、
今後数年間のリスク専門家の
バランスを取っていくことが、
リスクにおける信頼性獲得のカギ
主な役割となっていきます。
となるのです。
2. 再現可能性はリスクモデルのもうひとつの課題です。
あるシナリ
オを再構築して再実行したときに、
同じ結論にたどり着くでしょう
か。
今はそうならない場合が多いのが現状です。
今後は、
モデル
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3
サンガードの資本市場向けソリューションについて
サンガードの資本市場向けソリューションでは、
銀行、
ブローカー/ディーラー、
先物取次業
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客様の業務効率の向上、
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詳細については、以下をご覧ください。:
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サンガードについて
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サンガードは、
17,000人を超える従業員を擁し、
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います。
サンガードは、
金融サービス、
教育機関、
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(障害復旧サービス)
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