コカ・コーラの原液 ソフトウェアの法的保護 No.１０ 不正競争防止法と企業秘密 弁護士・弁理士：近藤剛史 tsuyoshi@kondolaw.jp • 1886年、ジョージア州アトランタにおいて、 薬剤師のジョン・S・ペンバートン博士が開 発。その原液は、シトラス、シナモン、バニラ などをブレンド（配合）した香料である「ファ ンタジア」にコーラ・ナッツのエキス、砂糖の シロップ、アルコール、カフェイン、リン酸、 カラメル色素などを加えて作っていると言わ れている（このレシピのことを「フォーミュラ」 と呼ぶ）。 • しかし、この原液製法はコカ・コーラ社の最 重要機密であり、コカ・コーラ社のフォーミュ ラは非公開とされている。 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 問 題 ソフトウェア（情報）に関する法的保護 技術的保護手段 契約法 不正競争防止法 特許法 著作権法 • コカ・コーラ社が、特許法による法的保護を受け るために技術を公開しようとせずに、その製法を 非公開にしたのは、どういう理由に基づくと考え られるか？ ソフトウェア （情報） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 1 特許法との比較 営業秘密に関する各国の法制 特許法 不正競争防止法 対象 発明 営業秘密 保護手段 出願公開 秘匿 期間 出願から20年 半永久的 権利行使 相手方が善意、偶然 でも可 相手方の故意又は過 失が必要 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ ・日本においては、不正競争防止法 （TRIPs 協定 第39 条2項） ・米国（経済スパイ法、州法（common law））、ドイ ツ（不正競争防止法）、フランス（刑法典、労働法 典、民法判例法）、中国（反不正当競争法、刑法）、 韓国（不正競争防止及び営業秘密保護法） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 特許制度と営業秘密 技術は積み重ねによって進歩する 携帯電話 非公開技術 公開技術 GPS 半導体 通信技術 ＡＶ（音楽） ワンセグ (地上デジタル放送) ソフトウェアデジタルカメラ 液晶画面 液晶画面光学式カメラ 電話機 レンズ 営業秘密・ノウハウ 営業秘密・ノウハウ 営業秘密・ノウハウ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 2 不正競争行為(1号～3号) • ２条１号（混同惹起行為） ex.ある店が、「マックバーガー」（商品表示）や 「マクドナルド」（営業表示）を自己の営業に用い て混同を生じさせるような場合 • ２条２号（著名表示冒用行為） ex.あるパチンコ店が、「シャネル」や「ディズニー ランド」という名前を用いる場合 • ２条３号（形態模倣行為） ex.ｉpodなどの商品形態のデッド・コピー 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 営業秘密とは（不正競争防止法２条４項） 営業秘密の３要件 • この法律において「営業秘密」とは、秘密として 管理されている生産方法、販売方法その他の 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報 であって、公然と知られていないものをいう。 「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公 然と知られていないものをいう」（法２条６項） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ ①秘密として管理されていること（秘密管理性） ②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること （有用性） ③公然と知られていないこと（非公知性） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 3 ①秘密管理性 ③非公知性 • 従業員、外部者から、認識可能な程度に客観的 に秘密の管理状態を維持していること 具体的には、 ア）当該情報にアクセスした者に当該情報が営 業秘密であることを認識できるようにされているこ と（「マル秘」、「部外秘」、「Confidential 」etc.） （客観的認識可能性） イ）当該情報にアクセスできる者が制限されている こと（権限によるアクセス制限） • 公然と知られていないこと 非公知性は、既存の書籍、雑誌、学会発表、 インターネット等から容易に引き出せない情報 であることである。 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ ②有用性 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 秘密管理性 考慮ファクターＡ • 事業活動に有用な情報であること 有用性については、例えば、保有することに より経済活動の中で優位な地位を占めることが できるような情報であること。 そして、ネガティブ情報と呼ばれる失敗に関す る情報など潜在的な価値のある情報や、将来 の事業に活用できる情報なども含まれる。 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ Ａ．アクセスできる人が限定され、権限のない者によるアクセスを防ぐよう な手段が取られている ・アクセス権者の限定（大阪高裁平成14年10月11日、東京地裁平成16 年5月14日） ・施錠されている保管室への保管（東京地裁平成11年7月23日） ・事務所内への外部者の入室の禁止（東京地裁平成16年5月14日、大 阪高裁平成17年2月17日） ・電子データの複製等の制限（大阪高裁平成17年2月17日） ・コンピュータへの外部者のアクセスの防止措置（東京地裁平成16年5月 14日、大阪地裁平成15年2月27日）及びその実効的な実施（東京地裁 平成15年5月15日） ・システムの外部ネットワークからの遮断（東京地裁平成17年6月27日） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 4 秘密管理性 考慮ファクターＢ Ｂ．アクセスした人が、管理の対象となっている情報をそれと認識し、 またアクセス権限のある人がそれを秘密として管理することに関す る意識を持ち、責務を果たすような状況になっている ・「秘」の印の押印（東京地裁平成12年9月28日、東京地裁平成17 年6月27日） ・社員が秘密管理の責務を認知するための教育の実施（大阪高裁 平成14年10月11日、東京地裁平成16年5月14日） ・就業規則における秘密保持義務についての明確な規定（東京地 裁平成11年7月23日、東京地裁平成17年2月25日） ・誓約書や秘密保持契約による責務の設定（京都地裁平成13年11 月1日、東京地裁平成17年6月27日） 問 題 • 会社におけるプログラム（ソフトウェア）も、 営業秘密に含まれ、不正競争防止法に よる法的保護を受け得ると言えるか？ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 秘密管理性 考慮ファクターＣ Ｃ．それらが機能するように組織として何らかの仕組みを持ってい る（組織的管理） ・情報の扱いに関する上位者の判断を求めるシステムの存在（東 京地裁平成11年7月23日） ・外部からのアクセスに関する応答に関する周到な手順の設定 （大阪地裁平成14年10月11日） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 具体例 • • • • • • • • • • 技術文書：各工程で作成する設計書 ソースコード：各工程で開発するプログラム 原価計算書：プロジェクトごとの工数算定資料 コンサルティングの成果物 サービス仕様書 委託先（協力会社、その社員）名簿 顧客名簿 契約書 バグ情報 社員のスキル情報 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 5 ソフトウェア開発工程における法的保護 企画・計画 企画 要件定義 設計 製造 ・外部設計 ・プログラム製造 ・入出力設計 ・単体テスト テスト・移行 ・結合テスト テストラン ・運用操作指導 否定例（東京地裁平成16年4月13日判決） 運用・保守 ・運用操作指導 ・総合テスト ・システム評価 ・ネットワーク設計 ・マニュアル作成 ・システム改善 ・内部設計 ・システム移行 ・プログラム設計 ・モジュール設計 ・インターフェイス設計 ・運用設計 ・テスト設計 著作物（表現物）については、著作権法による法的保護 コンセプト発明 機能発明、改良発明 工数見積が困難な場合が多く、専門的知識 を有する業者と委託契約を行う 製造効率化発明 要因増加に対応す るため、複数会社と 請負契約 テスト効率化発明 本件情報④は原告所有のパソコンに保管されており， 被告Ａら原告従業員は，それぞれ各自が所有するパソ コンあるいは原告所有のパソコンにおいて見積書を作 成していたものである。他方，原告が，原告所有のパ ソコンにアクセスできる者を制限する措置を執ったり， 原告従業員各自が所有するパソコンで見積書を作成し た場合に，その情報を直ちに消去することを徹底して 指導したり，上記情報を第三者に漏洩することを厳格 に禁止するなどの措置を執ったことを認めるに足りる 証拠はない。そうすると，原告は，本件情報④を客観 的に秘密として管理していたとはいえない。 設計工程担当者及びプログラムの保守作業のため製造工程担 当者と請負契約 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 肯定例（東京地裁平成17年6月27日判決） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 秘密管理性に関する物理的・技術的管理のまとめ ① 情報の区分と表示 原告は，平成１４年６月ころ以降，原告代表者以外の 者が本件営業秘密に触れないように管理しており，原 告従業員が本件営業秘密を使用する場合には，原告 代表者のみが保有する書庫の鍵を使用するか，原告 代表者が管理するパスワードを用いて原告代表者用 のコンピュータを使用しなければならず，また，本件営 業秘密が第三者に知られないよう，原告従業員に誓約 書を提出させたり，就業規則を作成するなどしていたこ とからすると，本件営業秘密は，平成１４年６月ころ以 降，秘密として管理されていたと認められる。 秘密情報は、その他の情報と区分して管理することが必要である。秘密情報については、 秘密性のレベルを決め、それに応じた管理を行うことが望ましい。営業秘密であること及 び秘密性の区分を、権限を持ってアクセスした者が客観的に認識可能な状態（マル秘 マーク等）にすること、自社の営業秘密に他者の営業秘密が混入（コンタミネーション）しな いようにすることが重要である。 ② アクセス権者の特定 誰がどの営業秘密にアクセスできるかをあらかじめ特定する。その際には、営業秘密へ のアクセス記録を残すことにより、管理の実効性が増す。 ③ 媒体の保管、持ち出し制限と廃棄 情報を媒体に記録した場合は、施錠可能な保管庫に、施錠して保管する必要がある。ま た、持ち出し制限を行うとともに、媒体の廃棄の際には、焼却やシュレッダーによる処理、 溶解、破壊等の措置を講ずることが重要である。 ④ 施設等の管理（建物・事務所・研究室等のセキュリティ配慮・警備） 営業秘密の保管場所の施錠や、保管されている施設への入退出を制限する。 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 6 予防法務の視点 不競法２条１項４号 コンタミネーション（情報の混入）の防止 ①管理方針等（基本方針、基準、規程等）の整備 ②責任者の存在とその権限の明確化 ③営業秘密侵害を防止するための教育及び管理 方針等の周知・徹底 ④日常的なモニタリングの実施 ⑤内部監査の実施 ⑥事後対応体制の整備 • 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得 する行為（以下「不正取得行為」という。）又は不正取得行為 により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為（秘 密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。） 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 不正競争行為の類型(4号～9号) 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 不競法２条１項５号 • その営業秘密について不正取得行為が介在したことを 知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密 を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは 開示する行為 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 7 不競法２条１項６号 不競法２条１項８号 • その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介 在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取 得した営業秘密を使用し、又は開示する行為 • その営業秘密について不正開示行為（前号に規定する場合において同号 に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上 の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。）であ ること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知っ て、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取 得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 不競法２条１項７号 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 不競法２条１項９号 • 営業秘密を保有する事業者（以下「保有者」という。） からその営業秘密を示された場合において、不正の 競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保 有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、 又は開示する行為 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ • その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があっ たこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在し たことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得し た営業秘密を使用し、又は開示する行為 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 8 不正競争防止法違反の効果 Ｂ社 Ａ社 ・差止請求（第３条） ・・・将来の行為に関するもの ・損害賠償請求（第４条） ・・・過去の行為に関するもの 問 題 ・損害額の推定規定（第５条） ・信用回復のための措置（第１４条） ・行為者に関する罰則（第２１条） ・両罰規定（２２条） • 元従業員ａの頭の中 に入っていたαプログ ラム（ソフトウェア）等 に関するノウハウや アイデア部分につい て、それをＢ社で利用 することは法的に問 題となり得るか？ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 問 題 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 会社と元従業員との関係 職業選択の自由 元従業員ａに関する 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 知的財産権の保護 Ａ社が有している Ｂ社 Ａ社 • Ａ社の従業員ａがＡ社 を退社する際、Ａ社の αプログラム（ソフト ウェア）を持ち出し、再 就職先であるＢ社に それを渡した。この場 合、不正競争防止法 違反となるか？ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 9 ソフトウェアにおけるブラックボックス化 コンピュータのOSやミドルウェアがアプリケーション ソフトウェアに機能を提供するために用意している API(Application Programming Interface)群は、開発者 に対して仕様は公開しているが内部は公開していな いのが一般的である。 ソースコードを公開していないソフトウェアの内部構 造は、逆アセンブルという非常に高度なスキルを持つ エンジニアが膨大な手間と労力をかけてのみ達成で きる作業によってしか知ることはできない。 また、商用ソフトウェアは使用許諾契約によって逆 アセンブル（リバース・エンジニアリング）を禁止してい ることが通常である。 リバースエンジニアリングの意義 • 設計図や仕様書に記載されているような非公開情報を入手するた め、従来の工業製品やソフトウェア製品をリバースエンジニアリン グすることにより、使用されている技術を分析、調査、確認すること は、より優れた製品の開発に欠かせないプロセスである。 • リバースエンジニアリングを行うことは、原則的に合法的な行為で あり、秘密保持契約(NDA)を締結せずに入手できる製品、文献、各 種情報等についてリバースエンジニアリングを行うことは問題がな い。 但し、その技術的思想（アイデア）について特許として成立してい る場合は、特許権侵害となる可能性がある。 また、その中間的複製物の点については議論がある。 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ リバースエンジニアリングとは 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ プログラムの場合(1) リバースエンジニアリング （Reverse engineering）とは、機 械を分解したり、製品の動作を観 察したり、ソフトウェアの動作を解 析するなどして、製品の構造を分 析し、そこから製造方法や動作原 理、設計図、ソースコードなどを 調査する方法。『ウィキペディア （Wikipedia）』 例えば自動車の場合、①クレイ モデル、②非接触カメラ撮影式の 3次元計測器での形状データ測 定、③測定結果である点群データ の張り合わせ、断面線の作成、 ④3D CAD化、⑤実車製作 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 出典：日経ＢＰ社ＩＴＰＲＯ システムから仕様をひも解く「リバース・エンジニアリング」 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070903/280974/ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 10 リバースエンジニアリングの弊害 プログラムの場合（２） 市販のソフトウェア製品をリバースエンジニアリングによって解 析し、本来はライセンスキーをインストール時に入力しないと 動かないソフトウェアを、このライセンスキーが無くても動くよう にするプログラム（「クラック版」）を製作・配布することが行わ れ、違法な不正コピーの蔓延を助長している。 このJAVAのケースにおいて、 2種類のUMLモデル，機能を 示す「クラス図」とプロセスを示す 「シーケンス図」の生成が可能と されている。 コンピュータウイルスのオリジナルの作者以外がコンピュータ ウイルスを入手し、リバースエンジニアリングによってソース コードを解析し、その上で、本来無かった新しい機能を組み込 んだり、特定の企業や組織を攻撃するように改造し（改造され たウイルスは亜種と呼ばれる）、再配布する事例が後を絶たな い。 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ クリーンルーム設計（チャイニーズウォールテクニック） リーガル チェック アイデア アイデア 中間的複製物 他社製品 自社製品 解析チーム 製作チーム 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ まとめ ある製品をリバースエンジニアリ ングし、かつ著作権や企業秘密に 関わる部分に抵触することないよ うに、その製品を模倣する手法。 通常、クリーンルーム設計は、模 倣するために製品を調べ、仕様書 を書き、その仕様書の内容につい て著作権侵害等がないか法律家 による検査を受ける。 その後、つながりの全くない別の チームによって、その仕様書通り の製品が作られる手法。 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 近藤総合法律事務所 大阪市北区西天満５−１−３南森町パークビル６階 URL: http://www.kondolaw.jp/ TEL: ０６−６３１４−１６３０ 11
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