高齢運転者の事故防止 高齢運転者の事故防止

「経営者のための Topics Note」Vol.21
2011 年 12 月 1 日(木)発行
高齢運転者の事故防止
65 歳以上の高齢運転者が起こした交通事故は昨年、約 10 万 6000 件で過去最多でした。事故を防
ぐため、自主的に免許の取り消しを申請する「免許の返納制度」があり、返納すると、バスやタクシ
ー料金の割引サービスが受けられるなどの支援もあります。
■免許返納でバス割引も
免許返納でバス割引も
静岡市の池本晃さん(75)は今月上旬、地元の警察署に行き、運転免許を返納した。
「足腰が弱り、
体の反応も鈍ってきた。運転はもうやめた方がいいと思った」。自宅から徒歩圏内に食料品店があり、
離れて住む長男に毎週末、車で大型スーパーなどに連れて行ってもらえることも、背中を押してくれ
た。
全国の警察署では、運転免許証と引き換えに、
「運転経歴証明書」を交付している。写真入りで、生
年月日や住所が記されている。免許証と同じサイズで見た目も似ている。
池本さんは現在、タクシーを利用した際、運転手に証明書を見せる。「運賃が 1 割引きになるんで
す」。静岡県内ではバス運賃の割引もある。
警察庁によると、今年 6 月現在、免許返納者を対象にした割引サービスなどの支援があるのは、大
阪府と沖縄県を除く 45 都道府県。市町村や企業が実施するケースが多い。運賃割引のほか、
「住民基
本台帳カード」の発行手数料の補助、温泉の無料入浴券(宮城県栗原市)や旅館・ホテルの割引(鹿
児島県)などもある。
支援が広がる背景には、高齢者による交通事故の増加がある。同庁の調査では、65 歳以上のドライ
バーが起こした事故件数は、2010 年は 10 万 6311 件と過去最多で、1997 年の約 2 倍に。今後も高齢
化で増加が見込まれる。
免許更新の際、70 歳以上のドライバー全員に「高齢者講習」、75 歳以上には「認知機能検査」が義
務付けられている。ただ、認知症と診断されて免許が取り消された高齢者は昨年は全国で 96 人にと
どまる。静岡県警交通企画課次席の金原康倫さんは「多くは、自主的な返納を促すしかない。支援の
拡充は高齢者の事故防止にもつながる」と語る。
香川県では、昨年の免許返納者数は 976 人で前年の約 3 倍に増えた。県タクシー組合が 3 年前に運
賃割引サービスを始めたのに加え、人口の多い高松市が昨年、5000 円分の IC 乗車券の配布を始めた
ことなどが理由のようだ。
課題もある。運転経歴証明書は発行から 6 か月以内しか銀行口座開設に使う身分証明書として認め
られず、免許証を手放したくない人も多い。また、公共交通機関が乏しく、マイカーがないと生活に
支障が出る地域もある。
千葉大名誉教授(交通社会学)の鈴木春男さんは、
「高齢者の視点に立った交通手段の確保がまず必
要。
『自分は大丈夫』と考える高齢者は多いので、周囲が注意して見て、プライドを傷つけないよう説
得することが重要」と話す。
発
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資料提供:2011 年 10 月 27 日『読売新聞』より抜粋
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