独立行政法人国立病院機構東京医療センター 登録医ニュース 【 心臓血管外科の診療案内 】 心臓血管外科医長 大迫 茂登彦 第26号 心臓血 管外 科 領域の医療 は、命に直結する臓器と向き合わねば るようにしていますが(図 3)、最近は Stealth という名前の内視鏡デ ならないという特性もあり、少し特殊な領域になると思います。心臓で バイスを用いて約 2cm×2 の皮膚切開で採取が可能となっておりま あれば、その修 復のために多 くが心 臓 を止 める、また大 動 脈であれ す。 冠 動 脈バイパスで用 いるグラフト中 枢 側 吻 合 では、より簡 便、 ば血流を止める必要があり、手術を確立させるためには人工心肺装 迅 速 、大 動 脈 に 対 するストレ ス軽 減 として吻 合 デバイス; PAS-port 置が必要になります。人工心肺装置を安全に稼働させるためには、 system(図 4)を用いています。 2014年1月発行 【 皮膚科の診療案内 】 皮膚科医長 佐藤 友隆 大 量 のヘパリンと希 釈 体 外 循 環 を行う必 要 があり、術 後はいわゆる 意図的に作られた心源性ショックと出血との戦いになるわけです。ま たいろいろな臓 器 への配 慮 も必 要 になります。これらの理 由 から、 図1 Major surgery と比較すると安全な医療を提供できるという点におい 図2 て少し遅れをとっていたかもしれませんが、心臓 血管 外科 領 域の成 績もこの 10 年で安定したものが提供できるようになって来ました。一 図3 昔前には一月 以上の入 院が、最近では術後 早 期離 床をはかり、心 臓リハビリテーションを行うことで、2 週間前後で多くの方が退院され ていくようになりました。特に人工心肺装置を用いない冠動脈バイパ ス手術では 10 日前後の退院が可能になってきました。また医療機 図4 器の進歩に伴い、確立されたスタンダードな術式も、これからは低侵 襲を目指した術式へと進化していくことが予測されます。 図5 心 臓 弁 膜 症に対しても、僧 帽 弁 閉 鎖 不 全 症に関しては弁 形 成が 当院心臓血管外科は昨年 4 月より新体制となり、チーム医療によ 主流となり、自己弁が温存できるようになりました。日本人においては るテーラーメードな医療が提供できることを目指して行ってまいりまし けっして人工弁の成績が悪いわけではなく、僧帽弁に関しては自己 た。術前は関係各診療科との連携、個体差に対する対応の上治療 弁を温存できる方が心機能の温存に繋がるからです。大動脈弁はと 方針・手術戦略を決定し、Co-medical staff とは術前・術後の診療プ いえば、構造がちがうので人工弁との違いはより生理的かどうか、弁 ランの伝達・確認を行い、リハビリテーション、退院支援等を行い、地 口面積は十分かどうか、耐久性はどうかという点を論ずる必要があり 域連携として、近隣の先生方へのご配慮も怠らないよう心がけており ます。当院では大動脈弁の人工弁;生体弁については、いわゆる外 ます。 巻き弁(図 5)は弁口面積がより効率よく得られる点から主に同弁を 昨年 4 月以降の心大血管手術症例は 67 例、その内訳は単独心 用いるようにしています。今後、大動脈弁に対しても自己弁温存(弁 拍動下冠動脈バイパス(non-pomp) 25 例、弁膜症 16 例(AVR 12 / 形 成 ) が 主 流 に な る 可 能 性 も あ り ま す が 、 BAV; balloon aortic MVR 1 / MVP 6 / TVP 1 / TAP 1、IE 2)、その他の心疾患 4 例 valvuloplasty による AS 解除(一時的、あるいは短期的に圧格差を (VSP 1 / 心臓腫瘍 3)、大動脈疾患 22 例(急性大動脈解離 8 例 軽 減 できるため、治 療 計 画 を立 てやすくなります、図 6)や、TAVI; / 慢性解離 1 例 / 大動脈弁輪拡張症 1 例 / 胸部真性瘤 8 例 / Transcatheter Aortic Valve Implantation(図 7、8)といったカテーテ 胸腹部瘤 3 例 / Valsalva 瘤 1 例)でした。これらの成績について、 ル治療も低侵襲治療が必要な症例には有用です。 幸い心疾患の予定手術症例において死亡例はなく、緊急手術につ いても急性大動脈解離症例は皆さん無事に退院されておられます。 近年高齢化社会となり、複合疾患が増え、80 歳以上で手術を受け られる方が増えてきました。いかに安全に、単独あるいは合併手術を 行うか、これから重要な点だと考えております。昨年の方々のうち複 合疾患合併手術として+冠動脈バイパス 6 例、弁+大動脈 3 例に行 図6 図7 図8 大 動 脈 疾 患 に対 しても低 侵 襲 化 が進 んでおり、従 来 の侵 襲 度 の っております。大動脈 疾患では大動脈基部 置換+弓部 全 置換、胸 高い手術方法の簡便化を図るとともに、ステント内挿術に対しても適 腹部瘤に対する腹部 4 分枝再建や脊髄動脈再建といった最重症疾 応を積極的に検討し、胸部・腹部大動脈に対応して行うようにしてお 患に対する手術も行ってきました。また Valsalva 瘤に伴う AR に対す ります。 る弁 形 成、必 要に応じて、胸 骨 部分 切 開による冠 動 脈バイパス(永 今後も、安全性を重視し、確立された最新の医療が提供できるよう 久 気 管 孔 を有する方)やや右 小 開 胸 による大 動 脈 弁 置 換 術(食 道 に努めてまいりますので、お気軽にご相談いただければと思います。 癌術後)も行ってまいりました。 皮 膚 小 切 開は低 侵 襲 にも繋 がる手 段の一 つですが、冠 動 脈バイ パスで使用する静脈グラフト採取の際に、必要なグラフト長すべて皮 膚切 開するのではなく、あらかじめ超音 波 検査で静 脈走 行・分枝を 確認し(図 1、2)、皮膚切開は 4~5cm×2~3 箇所に留めて採取す 地 域 の先 生 方 には病 診 連 携 の点 から多 くの患 者さんをご紹 介いただき、また逆紹 介の患者さんを受け入れていただいて いることに大変感謝しております。 いつも大変お世話になっております。現在の当院の皮膚科 診療体制についてご紹介申し上げます。 スタッフは医長 佐藤友隆、 医員 吉田哲也 です。 以下レジデントが各学年 1 名で 3 名、慶應大学からのロー テーションで 1 名(山本紗規子平成 22 年卒)ですが、当院レ ジデント(深田 彩 子 平 成 年 21 卒、矢 野 優 美 子 平 成 22 卒 佐々木優平成 23 年卒)も 6 ヵ月ごとに慶應大学皮膚科をロー テーションするため、院内にはスタッフ 2 名 レジデント 3 名の 5 名体制で診療にあたっています。6 ヵ月ごとにレジデントが入 れ替わる為、大 学 病 院からの最 新の治療 法 や、入院 疾 患の 傾 向 などが風 通 し よく伝 達 され、よい緊 張 感 が生 まれていま す。 最近の入院患者さんの傾向としては、帯状疱疹、蜂窩織炎 を中心とした皮膚感染症、皮膚腫瘍の切除目的の紹介が増 加しています。 毎 日 病 院 で診 療 させて頂 いていますと、超 高 齢 化 社 会が 目前に迫っているのを痛感します。 施設からは 100 歳を越える蜂窩織炎や水疱性類天疱瘡の 患者さんのご紹介があり、主に総合内科を中 心とした内科の 先生方のご併診をいただきつつ当科で管理しています。 地域がん診療連携特 定機 能病院に認定されてからは、皮 膚 病から発 見につながる内 臓 悪 性 腫 瘍の患 者さんも多い印 象があります。その際には外科、呼吸器科、血液内科を中心 としたスペシャリストへのご依頼を行い、診断 治療をすすめて います。 光 老 化 現 象 を背 景 とした、日 光 角 化 症 、基 底 細 胞 癌 を始 めとした皮膚癌は老化に伴い確実に増加しています。 切除を中心とした治療で、再建の必要な際には形成外科と 連携をしており、週 1 回の形成外科皮膚科カンファレンスで検 討しています。 人体最大の臓器である皮膚を扱う為に皮膚科は院内すべて の科の先生方、職員の皆様に色々な点でお世話になってお り感謝しています。 忙しいクリニックの先生方では施行しにくい、皮膚生 検は随 時 行 え ま すし 、 皮 膚 腫 瘤 のエコ ー 検 査 、 癌 病 名 が あれ ば、 PETCT を始めとした画像検査も可能です。電子カルテに画 像を添付することで、ダーモスコピーによる足底の色素性母斑 などの皮膚病変の経過観察も問題なく行うことができます。 当科の方針としては、できるだけ地域の先 生 方のできない 皮膚病の入院加療に重点を置き、クリニックでできる領域はで きるだけ、お戻しする。つまり他の診療科は当院にご通院され ていても、脂漏性湿疹、皮脂欠乏性湿疹などのご加療につい ては地域の先生方にご紹介申し上げるように考えております。 また当院は優秀な研修医が各科をローテーションしており、大 学病院よりも診療科間の垣根が低く、総合病院の特徴を生か して、各科の優れた専門医 へのコンサルテーションを行うこと ができますので、安心して当院にご紹介頂けると幸いです。 ここから最 近の話 題 を述べたいと思 います。MRSA に対 する新規抗生剤の治験を行っております。2 例の予定ですが、 現在まだ該当 症 例がございません。詳細は治験 管 理室にお 問い合わせ頂けると幸いです。 【動物由来菌による白癬にご注意を】 当院は駒沢公 園に隣接することから、東京としては自然が 豊かでペットを飼育されているご家庭も多いです。今回は私が 専 門としている皮 膚 真 菌 症 の中でも最 近 注意が必 要 な動 物 由来菌による白癬をご強調申し上げます。 顔面など露出部を中心とした環状紅斑で、一部に膿疱など を伴う炎症が強い点が特徴であり、ペットとの接触歴がキーワ ードです。頻度の高いペットは猫、犬ですが、ペットの多様化 に伴い、げっ歯 類であるチンチラ(図1)由 来の白 癬も経 験し ています。確定診断には KOH 直接鏡検による真菌感染の証 明と原因菌の培養同定が重要となります。該当する患者さん がございましたら、是非ともご紹介の程宜しくお願い申し上げ ます。 今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。 図1 地域医療カンファレンス 2013 年 10 月 17 日 第87 回 「高 齢 者 ケアの質 を 高 めるメ ソッド:ユマニチュード」 総合内科医長 本田 美和子 第87回の地域医療カンファレンスとして、 「 高齢者ケ アの質を高めるメソッド:ユマニチュード」に関する お話をいたしました。85才以上の人口の約3分の1 は明らかな認知機能の低下を有すると報告されている 日本で、急性期病院には深刻な問題が起きています。 急性疾患でご入院となる高齢の患者さんには、入院の 原因となった、原因疾患だけでなく、基礎疾患として 認知機能の低下があることが十分に理解されておらず、 認知機能の低下のない若年者と同様のケアアプローチ を行うことが、高齢者の不安を惹起させ、せん妄やケ アの実施が困難になることの原因となっています。医 療機関を受診する高齢の患者さんにこのような背景が あることが、ご本人の治療の受け入れやその継続をめ ぐる困難の原因となり、医療・介護の現場における適 切な対策が喫緊の課題となってきました。 フランスで35年の歴史を持つケア方法論・ユマニチ ュードは、 「ケアを行う人とは何か」という哲学に基づ いた技術で、多くのケアの困難例に目覚ましい効果を 上げています。この方法論の特徴は「ケアをする人と は何か」、 「人とは何か」、という哲学に基づいた、知覚・ 感情・言語による包括的なコミュニケーション技術に あります。この方法論は具体的には、4つの基本から 成り立ちます。1つ目は相手の目を見つめること、2 つ目はたとえ相手から言葉による返答が得られにくい 状態であっても、話しかけ、会話を続けること、3つ 目は相手を大切に思っていることを伝える方法で相手 に触れること、4つ目は立位をとることによって本人 の「人間らしさ」を取り戻すため、立つことの援助を 行います。 この4つの基本のそれぞれは、従来からその重要性が 指摘されてきましたが、これを包括的に同時に行うこ とで、相手に「自分がひととして尊重されている」こ とを感じてもらうことができ、おだやかな関係を結ぶ ことが可能となりました。 それぞれの基本には、学ぶべき細かい技術があります。 言い換えればケアを行う相手に「自分が大切に 思われている」ことを感じてもらうには具体的な技術 があり、それは後天的に学ぶことができるものなので す。 たとえば、寝ている方を見下ろすような視線で相手を 見ていないか、アイコンタクトはきちんと成立してい るか、認知機能が低下してるひとの視野は狭くなって いることがあるので、正面から相対しているか、など に配慮することは「見る」ことについての基本的な技 術です。また、触れることについては、ケアを行う際 に相手の腕をつかまない、話すことについては相手か らの返答がなければ、つい黙々と作業を進めてしまい がちですが、前向きなことばでできるだけ話し続ける ことなどの技術を包括的に実施することで、ケアの質 を向上させることが可能となります。今回のカンファ レンスでは、実際の患者さんの映像を交えながら、こ の技法の効果についての紹介をいたしました。 東京医療センターでは、来年度からこのケア方法論に ついての研修を定期的に開催する予定です。また、2 014年2月22日午後1時より、上智大学10号館 講堂にて東京医療センターと公益財団法人生存科学研 究所の共催で「ユマニチュードを語る」と題した市民 公開講座を開催します。この公開講座では、ケア方法 論の創始者であるイブ・ジネスト先生の基調講演のほ か、この技法を学んだインストラクター看護師と認知 症に関する「回想法」の第一人者である、黒川由紀子 上智大学教授との公開座談会を行います。 高齢社会を迎えた日本で、少しでも多くの方々が心穏 やかに暮らしていける社会を実現するための一助とし て、この技法について学んできたいと考えています。 地域医療カンファレンス 2013 年 11 月 14 日 第88回 「外来における感 染 症 診 療 のトピックス」 総合内科医師 森 伸晃 【はじめに】 われわれを取り巻く医療環境は劇的に変化し、臓器移植や 生 物 学 的 製 剤 など高 度 先 進 医 療 の発 達 に伴 う日 和 見 感 染 症の増加、血管留置カテーテルや膀胱留置カテーテルをはじ めとしたデバイスに関連した感染 症の増加、高 齢化 に伴う疾 病構造の変化など、感染症診療も時代とともに複雑に変化し てきています。また交通・輸送手段の発 達やメディカルツーリ ズムなどにより、海外でみられる感染症が国内でもみられるよ うになりました。その中でも耐性菌の増加と蔓延は社会的な問 題となり、多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターなどの 院内感染の話題はすでに医療従事者のみならず、一般人に おいても深刻な問題として取り上げられています。さらに耐性 菌の問題は、市中感染症にまで広がっています。 【ヒト以外の耐性菌】 2013 年 9 月に多摩川から採取された大腸菌 3452 株のうち 75 株が第三世代セフェムに耐性と報告されました。また現在 わが国では、ヒトに対して使用するよりもはるかに多くの抗菌薬 が家畜に対して使用されています。驚くことに国内で消費され る抗菌薬の約 75%が、家畜・農業・養殖業分野にて使用され ています。1990 年代に欧州では家畜に対する成長剤としてバ ンコマイシンに類似したアボパルシンという抗菌薬が使用され ていましたが、ヒトにおけるバンコマイシン耐性腸 球菌 の出現 との因果関係が示唆され使用中止となっています。このように 耐性菌の問題はヒトだけでなく、環境や動物など様々な要素 が関与し発生しているものと考えられます。 【市中でみられる耐性菌】 基 質 特 異 性 拡 張 型 β ラ ク タ マ ー ゼ (ESBL) 産 生 腸 内 細 菌 : ESBL 産生腸内細菌は、ペニシリンやセフェム系抗菌薬のβラ クタム環を基質として分解するために、カルバペネム系などの 限られた抗菌薬でしか治療できない耐性菌です。またその耐 性遺伝子はプラスミド上に存在することが多いため、容易に他 の菌種に耐性 遺伝 子 が伝播することが問題となっています。 わが国での ESBL 産生菌の分離頻度は 2002 年に 3.1%だっ たものが 2009 年には 10.4%まで増加しています。当院で外来 の尿検体から分離された ESBL 産生大腸菌は、2008 年は 4% でしたが、2012 年は 11.3%と増加しています。また世界では CTX-M 型と呼ばれるβラクタマーゼを産生する ST131 の遺伝 子型をもつ ESBL 産生大腸菌が主流となっており、この菌はフ ルオロキノロンにまで耐 性 を獲 得していることが知られていま す。 マクロライド耐性マイコプラズマ:2000 年以降わが国において マクロライド耐 性 マイコプラズマが増 加しています。成 人 では 30%程度ですが、小児に関しては約 70%が耐性であると報告 されています。しかしながらほとんどが自然治癒することやマク ロライド耐性であったとしても投与後 2-3 日で解熱するという 報告もあることから小児呼吸器感染症診療ガイドラインは今で もマクロライドを第一選択薬としています。また診断に関して、 マイコプラズマの P1 タンパクやリボソームの L7/L12 を標的と した迅速抗原検査が使用できるようになったため早期診断が 期待されます。 市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA): 1980 年 代 はじ めより 、 病 院 と は 無 縁 の 健 常 成 人 や 小 児 に お ける皮 膚・軟部組織感染症や致死的な肺炎から MRSA が分離され る症例が報告され始めました。この菌は、SCCmec と呼ばれる 耐性遺伝子を運ぶ染色体カセットが従来の MRSA とは異なる ことやβラクタム系の抗菌薬以外に感受性があることが特徴で す。また米国では USA300 と呼ばれる株が主流で白血球溶解 毒素(PVL)を産生する株が多くみられます。一方わが国で報 告される CA-MRSA の中で PVL を産生する割合は、3-5%程度 と低いものとなっていますが、CA-MRSA 自体が増加傾向にあ るために今後の動向が注目されています。 クロストリジウム・ディフィシル:クロストリジウム・ディフィシル感 染症(CDI)は、院内における抗菌薬関連腸炎の原因として広 く知られていましたが、近 年 諸 外 国 では外 来における報 告も 増加し、中には分離されたクロストリジウム・ディフィシルの 41% が外 来 由 来 であったという 報 告 もあります。この菌 は もともと 様々な抗菌薬に耐性で、治療薬剤が限られています。わが国 における実 情 はよくわかっていませんが、当 院 の外 来 では 2012 年に 6 人の下痢の患者さんからクロストリジウム・ディフィ シルが分離されており、このうち半数にあたる 3 人は過去の入 院 歴 はありませんでし た。このように外 来 での下 痢 症 の中 に CDI が隠れている可能性があると考えられます。 【抗菌薬の適正使用】 様々な耐 性菌が増加していく一 方で、新 規抗 菌 薬の開 発 は停滞しています。古い抗菌薬が耐性菌のために使えなく なれば新たに開発した抗菌薬 を使用すればよいという以 前の発想での対処では、もはや難しくなってきており、 このままであれば私たちは感染症に対して 治療薬のない 時代に逆戻りすることが予想されます。今後われわれは、 抗菌薬を選択する際には治療可能というだけでなく耐性菌を 産み出さないという観点も必要になってきています。
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