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技術情報ライブラリー 08.04
JFE商事テールワン株式会社
テールアルメ設計例(基礎フーチング)
1.概説
テールアルメの安定性は,その盛土内に発生する応力に見合ったストリップの本数と,作用する土
圧力に抵抗できる十分な長さのストリップを敷設することにより確保されることから,テールアルメ
の壁高が高くなればストリップの本数も増え,その長さも長くなる。
急斜面の谷部などにテールアルメを計画するときには,その壁高に応じた所定の長さのストリップ
を敷設するために,地山を大きく掘削しなければならない。その地山が岩質でない限り,一度掘削し
てストリップを敷設しながら再度埋め戻すことはやむを得ない。しかし,地山が安定した岩盤の場合
にはその掘削に非常な困難を伴い,またわざわざ安定している地山を除去し,新たな盛土構造物を
構築することは合理的でない。
そこで,その安定した岩盤を利用してある程度の高さの基礎フーチングを設け,その上にテールア
ルメを設置しようとする考え方が,「基礎フーチングを設けたテールアルメ」の基本である。
この方法は岩盤掘削を少なくすることを主目的としているが,谷部で急激に落ち込んでいる部分を
基礎フーチングで置き換え,ある程度,高さの一定したテールアルメにすることにより,施工性を高め
ることなども目的の一つである。
また,急流河川の近くなどで流水による洗掘や裏込め土の吸い出しの恐れがある場合などにも,こ
の方法が適用されている。
2.設計上のポイント
「基礎フーチングを設けたテールアルメ」は前述のような利点をもっているものの,土を主体とした
柔な構造物であるテールアルメと,コンクリートの塊である剛な基礎フーチングとを併用してひとつ
の構造物とするためには,いくつかの対策が必要である。
その対策についてはつぎの項で述べるとして,基礎フーチングの種類について簡単に説明してお
く。
(1)基礎フーチングの種類
基礎フーチングにはつぎのような 3 種類のものがある。
①重力式擁壁タイプ(図1)
②人工岩盤タイプ(図2)
図1に示すような重力式擁壁タイプの基礎フーチングは,テールアルメ壁面直下に重力式擁壁のよ
うなコンクリート構造物を設け,その裏込めに透水性がよく,かつ,圧縮性の少ない砕石などを用いる
方法で,もっとも一般的に適用されている形式である。
図2に示すように,岩盤上の不安定な地山を取り除き,岩盤を段切りして,その上にコンクリートで人
工岩盤のような基礎フーチングを設ける形式も適用されている。
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解説:テールアルメ設計例(基礎フーチング)
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図 1 基礎フーチング(重力式擁壁タイプ)
図 2 基礎フーチング(人工岩盤タイプ)
このタイプは,安定した岩盤上に設置されれば基礎フーチングには土圧が作用しないので,地下排
水の処理さえ十分に行っておけば安全確実な方法である。
一般に,基礎フーチングは高さが 4~5m 程度以下の小さな形状であり,軽微な構造物と考えられが
ちであるが,この上に基礎フーチングより数倍もの高さのテールアルメが載ることから考えれば,大
きな支持力を必要とする大型構造物と同等の慎重な対応が必要である。
ここでは重力式擁壁タイプの基礎フーチングについて述べる。
(2)基礎フーチングを用いる場合の注意点
基礎フーチングを用いる場合には,その基礎地盤となる岩盤の性質とその位置を,事前に,確実に
把握しておくことが大切であり,テールアルメの全体にわたって,支持条件が均等になるような方策
を講じておくのがよい。
「基礎フーチングを設けたテールアルメ」の場合には,全体の高さが高くなることが多く,その基礎に
作用する鉛直荷重も相当大きなものとなる。このとき,岩盤が脆弱であったり,あるいは,その位置が
当初の想定より深かったりすると,基礎フーチングの安定が得られないこととなる。
また,地盤の支持条件が均等でないと,大きな不同沈下を起こして,壁面に異常なクラックが発生し
たり,ストリップに過大な引張り応力が生じたりすることがある。
そこで,これらの問題が発生することのないよう,下記のような検討と対策を施しておくことが重要で
ある。
①基礎となる岩盤について,所定の支持力が得られないと判定されたとき,あるいは,岩盤の位置が
明確でないときには,基礎フーチングの適用を取り止めるか,基礎フーチングの形状,寸法等の再検
討を行う。
②岩盤の支持力やその位置が明確な場合でも,あまり壁高の高い基礎フーチングを用いるのは好
ましくない。テールアルメや盛土全体の規模にもよるが,基礎フーチングの高さは,4m 程度以下とし
ておくのがよい。
③基礎フーチングの裏込め土には,透水性がよく,かつ,圧縮性の少ない砕石などを用いるものとす
る。また,岩石質材料を用いる場合には,大小粒が適度に混合したものとし,大粒径の含有量が多い
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場合には,間隙を間詰め砂で充填する。
④上記の裏込めの施工にあたっては,1 層の締固め厚さを 25cm として十分に締固めるものとす
る。
⑤谷留め形式の場合には地下水などの流れを遮ることになるので排水には十分な配慮をすべき
であり,基礎フーチングの最深部に流入する地山からの浸透水や地下水等を排出するために,十
分な断面をもった地下排水施設を設けることを基本とし,それ以外にも擁壁背面に集った水を排出
するための水抜孔を設ける。
(3)設計計算
基礎フーチングの設計計算は,図3に示すように,基礎フーチングから上のテールアルメの自重等
を載荷重として,作用する土圧力を算定し,重力式擁壁と同様に転倒,滑動および地盤支持力に対
する安定計算を行い,所定の安全率を満足する断面形状を決定する。
図 3 基礎フーチングの安定に対する考え方
基礎フーチング上のテールアルメ自体の設計は,通常のテールアルメと同様の考え方をすればよ
いが,基礎フーチングの背面下端より引いた主働崩壊線よりストリップ長を長くすることが肝要であ
る(図1)。このときの主働崩壊線は,裏込め土の主働崩壊線を基準としてストリップ長を決定するの
がよい。
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