塗装設備用VOC処理技術

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解 説
J. Jpn. Soc. Colour Mater., 84〔4〕,133 – 137(2011)
塗装設備用 VOC 処理技術
三 輪 朋 孝*,†
* ㈱大気社 塗装システム事業部設計・開発統括部開発部技術開発課 大阪府枚方市伊加賀緑町 3-24(〒 573-0067)
† Corresponding Author, E-mail: t-miwa@taikisha.co.jp
(2010 年 11 月 15 日受付; 2011 年 1 月 28 日受理)
要 旨
近年,環境対策として,VOC の排出を抑制することが重要になっている。
その中で蓄熱式直燃装置(RTO)は,VOC および脱臭処理として優れ,かつさまざまな用途に使用されている。
日本でも,悪臭防止法の施行をきっかけに,多量の塗料を扱う自動車メーカーなどでは,環境にやさしい塗料を採用する一方で,
小∼中排気量の乾燥炉の脱臭処理に加え,工場周辺の環境のため大風量の塗装ブース排気中の VOC と臭気を処理する事例が増えてき
ている。大風量化に対応するため,従来商品の小∼中型の RTO 技術を基に回転方式の新技術が導入され,大型 RTO が商品化されてい
る。また塗装工場の乾燥炉下には,高さ制限のある余剰空間がある。その空間を活用するため,高さの低い横型 RTO が開発され,空
間活用と抽気ダクト削減で,脱臭効率向上とコスト削減が達成されている。
これら回転弁式 RTO を中心に,VOC 処理関連の商品と取組みを紹介する。
1.はじめに
現在でも人体への影響が懸念されている浮遊粒子状物質
(Suspended Particulate matter ; SPM)や光化学オキシダントに
係る大気汚染の状況はいまだ深刻であり,その原因にはさまざ
ま な も の が あ る が , 揮 発 性 有 機 化 合 物 ( Volatile Organic
Compounds ;以下 VOC)もその一つである。そのため SPM お
よび光化学オキシダント対策の一環として,VOC の排出を抑制
するため 2004 年 5 月に大気汚染防止法が改正され,2006 年 4 月
より施行されている。
工場および自動車から排出される VOC のうち,日本では自
動車排出ガスについて炭化水素の排出規制を数次にわたって強
図-1 2000 年度の VOC 排出量 1)
化してきたため,VOC の 9 割が工場などの固定発生源から排出
されている。そのため大気汚染防止法では,2010 年までに工場
において,1995 年に特定悪臭物質(22 物質)について臭気指数
などの固定発生源からの VOC 排出総量を 2000 年度比で 3 割削
規定*1 が導入されており,悪臭への対応も不可欠となっている。
減することを目標に掲げている。塗料を扱う塗装設備は VOC
本稿では,VOC 処理および脱臭装置として優れている蓄熱式
排出量として大きな割合を占めており,VOC 排出削減が大きな
直接燃焼装置(Regenerative Thermal Oxidizer :以下 RTO)につ
課題になっている。図-1 に,2000 年度の日本国内固定発生源か
いて,近年自動車メーカーにおいて非常にニーズの高い大風量
らの VOC 排出量を示す。
および背を低くした回転弁式 RTO(図-13)を中心に紹介する。
また地球規模の大気汚染防止法に対して,工場近隣住民の生
2.一般的な VOC 処理技術
活環境を保全するため,工場からの悪臭を規制する悪臭防止法
工場などから排気されるものは多種多様な物質があり,VOC
* 1 臭気指数…人間の嗅覚にて悪臭の程度を数値化したもの
〔氏名〕 みわ ともたか
〔現職〕 ㈱大気社塗装システム事業部設計・開発統
括部開発部技術開発課 主事
〔趣味〕 旅行,スポーツ観戦
〔経歴〕 2002 年茨城大学大学院理工学研究科機械
工学専攻修了。同年㈱大気社入社,現在に
至る。
としてはトルエン・キシレン・酢酸エチルなど,悪臭物質とし
ては硫化物,アミン類,アルデヒド類,酪酸,吉草酸などが含
まれる。ガス濃度も低濃度∼高濃度のものがあり,それぞれの
用途に見合った排気処理装置を選定する必要がある。
一般的な VOC 処理技術としては,燃焼法「酸化分解法」
・洗
浄法・吸着法の三種類の方式がある。RTO は燃焼法に属し,
VOC と脱臭処理において優れており,環境対策とともに導入件
数は増加している。表-1 に VOC 処理装置の種類と特徴を示す。
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