DS-CDMA 周波数領域信号検出における MMSE

社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE
DS-CDMA 周波数領域信号検出における
MMSE 等化重みに関する一考察
山本 哲矢†
武田 一樹†
安達 文幸‡
†‡
東北大学大学院 工学研究科 電気・通信工学専攻 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-05
E-mail:
†
{yamamoto, kazuki}@mobile.ecei.tohoku.ac.jp,
‡
adachi@ecei.tohoku.ac.jp
あらまし 周波数選択性フェージング環境下での直接拡散符号分割マルチアクセス(DS-CDMA)の伝送特性を改
善する技術として,最小平均二乗誤差(MMSE)規範に基づく 1 タップ周波数領域等化(FDE)が知られている.しかし
ながら,等化後の残留チップ間干渉(ICI)がビット誤り率(BER)特性の改善に限界を与える.筆者らはこれまで,周
波数領域で等化と逆拡散を同時に行うことで残留 ICI を抑圧する周波数領域ジョイント等化・逆拡散を提案してき
た.しかし,1 タップの周波数領域ジョイント等化・逆拡散では,従来の MMSE-FDE に比べて BER 特性の改善効
果はわずかである.本論文では,すべての周波数での総合平均二乗誤差を最小とする MMSE 等化重みを導出し,マ
ルチタップの周波数領域ジョイント等化・逆拡散を用いた時の DS-CDMA の平均 BER 特性を計算機シミュレーシ
ョンにより明らかにしている.また,従来の 1 タップ MMSE-FDE およびこれまで用いていた 1 タップ周波数領域
ジョイント等化・逆拡散との比較を行っている.
キーワード DS-CDMA,周波数領域信号検出,MMSE 重み
A Study on MMSE Weight of Frequency-Domain Signal Detection for
Multi-Code DS-CDMA
Tetsuya YAMAMOTO†
Kazuki TAKEDA†
and Fumiyuki ADACHI‡
†‡
Dept. of Electrical and Communication Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University
6-6-05, Aza-Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai, 980-8579, JAPAN
E-mail:
†
{yamamoto, kazuki}@mobile.ecei.tohoku.ac.jp,
‡
adachi@ecei.tohoku.ac.jp
Abstract One-tap frequency-domain equalization (FDE) based on the minimum mean square error (MMSE) criterion is a
powerful technique to improve the bit error rate (BER) performance of direct sequence code division multiple access
(DS-CDMA) signal transmission in a frequency-selective fading channel. However, the presence of the residual inter-chip
interference (ICI) limits the improvement of the BER performance of DS-CDMA. In our previous paper, we proposed joint
FDE and despreading which can simultaneously perform equalization and despreading in the frequency-domain to reduce the
residual ICI. However, one-tap joint FDE and despreading can achieve only slightly better BER performance than the
conventional one-tap MMSE-FDE. In this paper, we derive the MMSE weight of joint FDE and despreading for multi-code
DS-CDMA by taking into account the totality of equalization errors at all frequency. We evaluate, by the computer simulation,
the average BER performance and the BER performance of the multi-tap joint FDE and despreading using a new MMSE
weight is compared with that of the conventional one-tap MMSE-FDE and the one-tap joint FDE and despreading.
Keyword DS-CDMA, frequency-domain signal detection, MMSE weight
1. ま え が き
次世代の移動無線通信では,高速かつ高品質なデー
て い る [4]が , Rake 受 信 の 代 わ り に 最 小 平 均 二 乗 誤 差
規 範 に 基 づ く 周 波 数 領 域 等 化 (MMSE-FDE)を 用 い れ ば ,
タ伝送の実現が望まれている.しかし,移動無線チャ
DS-CDMA の BER 特 性 を 大 幅 に 改 善 で き る [5].従 来 の
ネルは,遅延時間の異なる様々な伝搬路から構成され
MMSE-FDE で は ,ま ず 受 信 信 号 を 周 波 数 領 域 信 号 に 変
る周波数選択性フェージングチャネルであり,厳しい
換 し た 後 に 1 タ ッ プ MMSE-FDE を 行 い , そ の 後 に 時
符 号 間 干 渉 が 発 生 す る [1, 2]. 周 波 数 領 域 等 化 (FDE)を
間領域信号に戻して逆拡散を行っている.しかし,
用いれば,周波数ダイバーシチ効果を得ることができ
MMSE-FDE 後 に 残 留 す る チ ッ プ 間 干 渉 (ICI)が BER 特
る の で , の ビ ッ ト 誤 り 率 (BER)特 性 を 大 幅 に 改 善 で き
性 の 改 善 に 限 界 を 与 え て し ま う [6].
る [3]. 第 3 世 代 移 動 無 線 通 信 で Rake 合 成 が 用 い ら れ
筆 者 ら は 以 前 , マ ル チ コ ー ド DS-CDMA を 対 象 に 残
留 ICI を 低 減 す る た め 周 波 数 領 域 で 等 化 と 逆 拡 散 を 同
こ こ で Ec は 1 コ ー ド チ ャ ネ ル 当 た り の チ ッ プ エ ネ ル ギ
時 に 行 う 信 号 検 出 法 (周 波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化・逆 拡
ー ,T c は チ ッ プ 長 で あ る .最 後 に ,SF チ ッ プ ブ ロ ッ ク
散 )を 提 案 し た [7]. 文 献 [7]で は , 1 タ ッ プ で 等 化 と 逆
の 後 尾 N g チ ッ プ を コ ピ ー し て ,各 ブ ロ ッ ク の 先 頭 の ガ
拡散を同時に行うために,各周波数成分ごとに平均二
ー ド イ ン タ ー バ ル (GI) に 挿 入 し て 送 信 す る . つ ま り ,
乗 等 化 誤 差 を 最 小 と す る よ う な MMSE 等 化 重 み (以 下
拡 散 率 SF と FFT ブ ロ ッ ク サ イ ズ は 同 じ で あ る .
で は MMSE 重 み type I と 呼 ぶ )を 導 出 し て い た . し か
送信信号は L 個の離散パスから構成される周波数選
し,マルチコード伝送の場合,逆高速フーリエ変換
択性ブロックフェージングチャネルを伝搬して受信さ
(IFFT)が 不 要 と な る こ と に よ る 演 算 量 低 減 効 果 は あ る
れるものとする.チャネルのインパルス応答は次式で
も の の , BER 特 性 の 改 善 効 果 は わ ず か で あ る .
与えられる.
そこで,本論文では,すべての周波数成分を考慮し
た MMSE 等 化 重 み (以 下 で は MMSE 重 み type II と 呼 ぶ )
を 導 出 し て い る .そ し て ,MMSE 重 み type II を 用 い る
マルチタップ周波数領域ジョイント等化・逆拡散をマ
ル チ コ ー ド DS-CDMA に 適 用 し た 時 の 平 均 BER 特 性 を
計算機シミュレーションにより明らかにしている.ま
た , 従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE や MMSE 重 み type I
を用いる 1 タップ周波数領域ジョイント等化・逆拡散
と比較している.本論文の構成は以下のようになって
L −1
h(τ) = ∑ hl δ(τ − τ l )
こ こ で , hl お よ び τ l は そ れ ぞ れ 第 l パ ス の 複 素 パ ス 利
得 お よ び 遅 延 時 間 で あ り , E[∑l = 0 hl ] = 1 で あ る も の と
L −1
し て い る . GI を 削 除 し た 後 の 受 信 チ ッ プ 系 列
L −1
r (t ) = ∑ hl s (t − τ l ) + η(t )
l =0
=
いて述べる.第 3 章では周波数領域ジョイント等化・
る .第 4 章 で は ,平 均 BER 特 性 を 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ
ョンによって求め,最後に第 5 章でまとめる.
2
{r(t);t=0~SF − 1} は 次 式 の よ う に な る .
い る . 第 2 章 で は マ ル チ コ ー ド DS-CDMA 伝 送 系 に つ
逆 拡 散 に つ い て 述 べ ,MMSE 重 み type II を 導 出 し て い
(2)
l =0
2 Ec
Tc
U −1
L −1
u =0
l =0
(3)
∑ d u ∑ hl c~u (t − τ l ) + η(t )
こ こ で , c~u (t ) = cu (t mod SF )c scr (t ) は , 直 交 拡 散 符 号 と ス
ク ラ ン ブ ル 符 号 の 積 で あ る .η (t) は 零 平 均 で 分 散 2N 0 /T c
の 複 素 ガ ウ ス 過 程 で あ り ,N 0 は 加 法 性 白 色 ガ ウ ス 雑 音
(AWGN) の 片 側 電 力 ス ペ ク ト ル 密 度 で あ る .
2. マ ル チ コ ー ド DS-CDMA 伝 送 系
c0(t)
…
S/P
converter
Data
Data
modulation
受 信 機 で は ,GI を 削 除 し た 後 ,受 信 チ ッ プ 系 列 {r (t);
+GI
t=0~SF − 1} に SF ポ イ ン ト FFT を 適 用 し て 周 波 数 領 域 信
s(t)
号 {R(k); k=0~SF − 1} に 変 換 す る .R(k) は 次 式 で 与 え ら れ
る.
cscr(t)
R (k ) =
cU-1(t)
図 1
SF
=
マ ル チ コ ー ド DS-CDMA 送 信 系
マ ル チ コ ー ド DS-CDMA 送 信 系 を 図 1 に 示 す . 本 論
文 で は ,チ ッ プ 時 間 T c 間 隔 の 離 散 低 域 等 価 表 現 を 用 い
る.送信側では,2 値送信データ系列をデータ変調シ
ンボル系列に変換し,U 個の並列シンボル系列に直/
並 列 変 換 す る . 第 u 系 列 (u=0~U−1)の デ ー タ シ ン ボ ル
を d u ,拡 散 率 SF の 拡 散 符 号 を {c u (t); t=0~SF−1}と す る
(u=0~U−1).U 個 の デ ー タ シ ン ボ ル を そ れ ぞ れ 直 交 拡 散
符 号 を 用 い て 拡 散 し ,加 算 す る (こ れ を コ ー ド 多 重 と い
う ). コ ー ド 多 重 後 に ス ク ラ ン ブ ル 符 号 c scr (t)を 乗 算 し
て 得 ら れ る 送 信 チ ッ プ ブ ロ ッ ク の 等 価 低 域 表 現 {s(t);
t=0∼SF−1}は 次 式 の よ う に 表 せ る .
s (t ) =
2 Ec
Tc
U −1
∑d
u =0
u
⋅ cu (t mod SF )cscr (t )
1
SF −1
⎛
t ⎞
∑ r (t ) exp⎜⎝ − j 2πk SF ⎟⎠
t =0
(4)
U −1
2 Ec
H ( k )∑ d u C u ( k ) + Π ( k )
Tc
u =0
こ こ で , C u (k) , H(k) お よ び Π (k) は , そ れ ぞ れ { c~u (t ) ;
t=0~SF − 1} の 第 k 周 波 数 成 分 ,チ ャ ネ ル 利 得 お よ び 雑 音
の第 k 周波数成分であり,次式で与えられる.
⎧
1 SF −1~
t ⎞
⎛
cu (t ) exp⎜ − j 2 πk
⎟
∑
⎪Cu (k ) =
SF
SF t = 0
⎝
⎠
⎪
L −1
τl ⎞
⎛
⎪⎪
⎟
⎨ H (k ) = ∑ hl exp⎜ − j 2πk
SF ⎠
⎝
l =0
⎪
⎪
1 SF −1
t ⎞
⎛
⎪Π (k ) =
η(t ) exp⎜ − j 2πk
⎟
∑
⎪⎩
SF
SF t = 0
⎝
⎠
(5)
3. 周 波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散
(1)
周波数領域ジョイント等化・逆拡散を用いるマルチ
コ ー ド DS-CDMA 受 信 系 を 図 2 に 示 す .次 式 の よ う に ,
周 波 数 成 分 毎 に 周 波 数 領 域 重 み W u (k) を 乗 算 し て 周 波
数領域ジョイント等化・逆拡散を行う.
3.2. MMSE 重 み type II
第 k 周 波 数 成 分 の み を 考 慮 し た MMSE 重 み type I を
用いる 1 タップ周波数領域ジョイント等化・逆拡散で
Rˆ u (k ) = R (k )Wu (k )
(6)
~
送 信 シ ン ボ ル du の 軟 判 定 値 du は
は 他 コ ー ド に よ る 残 留 ICI を 抑 圧 で き な い た め , す べ
てのデータ系列および周波数成分を考慮したマルチタ
ッ プ の
MMSE 重 み
type II{ Wu( II ) (k ) ; u=0~U−1,
k=0~SF−1} を 導 出 す る . マ ル チ タ ッ プ MMSE 重 み を 導
~ SF −1
d u = ∑ R (k )Wu (k )
(7)
k =0
出 す る た め ,式 (4) の 周 波 数 領 域 受 信 信 号 を 次 式 の よ う
にベクトル表記する.
と な る . 以 下 に , 周 波 数 領 域 重 み W u (k) に つ い て 述 べ
る . 3.1 節 で は , 文 献 [7] で 提 案 し た 1 タ ッ プ で 等 化 と
R = [ R (0),..., R ( SF − 1)]T =
逆 拡 散 を 同 時 に 行 う た め の MMSE 等 化 重 み (MMSE 重
2 Ec
HCd + Π
Tc
(10)
H は SF×SF チ ャ ネ ル 利 得 行 列 ,C は SF×U 周 波 数 領 域
成 分 を 考 慮 し た MMSE 等 化 重 み (MMSE 重 み type II) を
拡 散 符 号 行 列 , d =[d 0 , ..., d U− 1 ] T は デ ー タ 変 調 シ ン ボ ル
導出する.
ベ ク ト ル ,Π=[Π (0), ..., Π(SF−1)] T は 周 波 数 領 域 雑 音 ベ
Wu(0)
Σ
Data
de-modulation
−GI
ク ト ル で あ る .チ ャ ネ ル 利 得 行 列 H お よ び 周 波 数 領 域
・
・
・
SF-point FFT
み type I) に つ い て 述 べ る . 3.2 節 で , す べ て の 周 波 数
Received data
Wu(SF−1)
図 2
周波数領域ジョイント等化・逆拡散を用いる
DS-CDMA 受 信 系
3.1. MMSE 重 み type I
文 献 [7] で は ,周 波 数 成 分 毎 に 1 タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ
ョイント等化・逆拡散を行うため第 k 周波数成分にお
け る 等 化 誤 差 {e u (k); k=0~SF − 1} を
eu (k ) = Rˆ u (k ) − d u
(8)
拡散符号行列 C は次式で与えられる.
⎧
0
⎡ H ( 0)
⎤
⎪
⎢
⎥
H
(
1
)
⎪H = ⎢
⎥
⎪
⎢
⎥
O
⎪
⎢
⎥
H ( SF − 1)⎦
⎪
⎣ 0
⎪
L
CU −1 (0) ⎤
⎡ C 0 ( 0)
⎪⎪
⎢
⎥
⎨
⎢
⎥
⎪
⎢
⎥
⎪
⎢
⎥
⎪C = ⎢
M
O
M
⎥
⎪
⎢
⎥
⎪
⎢
⎥
⎪
⎢
⎥
⎪
⎢C ( SF − 1) L C ( SF − 1)⎥
⎪⎩
U −1
⎣ 0
⎦
式 (10) か ら ,拡 散 と 伝 搬 路 の 連 結 HC は 等 価 的 な SF×U
マ ル チ 送 受 信 ア ン テ ナ (MIMO) チ ャ ネ ル と 見 な す こ と
のように定義して各データ系列の第 k 周波数成分のみ
2
を 考 慮 し て 平 均 二 乗 誤 差 E [ eu ( k ) ] を 最 小 と す る
MMSE 重 み type I{ Wu( I ) (k ) ; u=0~U − 1, k=0~SF − 1} を 導 出
が で き る . つ ま り , HC を チ ャ ネ ル と 見 な し て Wiener
理 論 に よ り MMSE 重 み を 導 出 で き る [8] .
U×1 誤 差 ベ ク ト ル e を 次 式 の よ う に 定 義 す る .
し た . MMSE 重 み type I は 次 式 で 与 え ら れ る .
{Cu (k ) H (k )}
⎛ 1 Es ⎞
2
2
⎟⎟
Cu ′ (k ) H (k ) + ⎜⎜
∑
u′= 0
⎝ SF N 0 ⎠
U −1
2 Ec
d
Tc
e = W ( II ) R −
*
Wu( I ) (k ) =
(11)
−1
(9)
こ こ で ,E s /N 0 は 1 シ ン ボ ル あ た り の 受 信 信 号 エ ネ ル ギ
MMSE 重 み W ( II ) は ,誤 差 ベ ク ト ル の 共 分 散 行 列 の ト レ
ー ス tr[E( ee H )] を 最 小 と す る よ う な W ( II ) で あ り , 次 式
で与えられる.
ー対雑音電力スペクトル密度である.
式 (7) を 用 い て 軟 判 定 値 を 得 る .MMSE 重 み type I を
用いれば,1 タップで周波数領域等化と逆拡散が同時
に行える.周波数領域で等化と逆拡散を同時に行うこ
と で ,自 コ ー ド に よ る 残 留 ICI は 発 生 し な い .し か し ,
第 k 周波数成分のみしか考慮していないため,他コー
ド に よ る 残 留 ICI を 抑 圧 で き な い .
(12)
W ( II )
⎡W0( II ) (0) W0( II ) (1)
⎢ ( II )
W (0) W1( II ) (1)
=⎢ 1
⎢ M
M
⎢ ( II )
( II )
⎢⎣WU −1 (0) WU −1 (1)
L W0( II ) ( SF − 1)⎤
⎥
L W1( II ) ( SF − 1)⎥
⎥
O
M
⎥
( II )
L WU −1 ( SF − 1)⎥⎦
−1
⎡
⎛ 1 Es ⎞ ⎤
H
H
⎜
⎟
⎢
= C H HCC H + ⎜
⎟ I⎥
⎢⎣
⎝ SF N 0 ⎠ ⎥⎦
H
H
−1
(13)
(.) H は エ ル ミ ー ト 転 置 操 作 を 表 し , I は SF×SF 単 位 行
イ ン ト 等 化・逆 拡 散 に 比 べ て 大 幅 に BER 特 性 を 改 善 で
列である.
きる.これはすべての周波数における等化誤差を考慮
式 (7) を 用 い て 軟 判 定 値 を 得 る . MMSE 重 み type II
し た MMSE 重 み を 用 い て い る た め で あ る . 16QAM を
を用いた場合,マルチタップの周波数領域ジョイント
用 い た 場 合 ,従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE と 比 較 し て ,
等 化・逆 拡 散 と な る .U×U 逆 行 列 演 算 が 必 要 と な る た
BER=10 −4 を 達 成 す る 所 要 E b /N 0 を U=4 で は 3.6dB ,
め 演 算 量 は 従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE お よ び MMSE
U=16 で は 6.2dB 低 減 で き る . し か し な が ら , U=64 の
重 み type I を 用 い る 1 タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等
と き は ,MMSE 重 み type II を 用 い る マ ル チ タ ッ プ 周 波
数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化・逆 拡 散 と MMSE 重 み type I を
化・逆拡散に比べて大幅に増加する.
用いる 1 タップ周波数領域ジョイント等化・逆拡散の
4. 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 諸 元 を 表 1 に 示 す .変 調 方
式 は QPSK お よ び 16QAM ,拡 散 率 SF=64 ,ガ ー ド イ ン
タ ー バ ル N g =16 サ ン プ ル と し た .ま た ,伝 搬 路 は ,L=16
パスで一様電力遅延プロファイルを有するブロックレ
イリーフェージングを仮定した.チャネル推定は理想
としている.
Modulation
QPSK, 16QAM
GI
N g =16
Spreading
sequence
Spreading factor
No. of parallel
codes
Scramble code
Fading type
Channel
Receiver
(13) 内 の CC H の 非 対 角 成 分 が 0 と な り ,MMSE 重 み type
II が MMSE 重 み type I と 等 し く な る た め で あ る .
次 に ,コ ー ド 多 重 数 U を パ ラ メ ー タ と し た と き の 平
均 BER=10 -4 を 満 た す 所 要 E b /N 0 特 性 を 図 4 に 示 す .従
来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE お よ び MMSE 重 み type I を
用いる 1 タップ周波数領域ジョイント等化・逆拡散で
表 1 計算機シミュレーション諸元
Transmitter
BER 特 性 は 同 等 で あ る . こ れ は , U=SF の と き は , 式
は ,U=1 か ら コ ー ド 多 重 数 を 増 や し て い く と BER 特 性
が 急 激 に 増 加 し , U=64 に 近 づ く に つ れ て BER 特 性 の
劣 化 は 緩 や か に な る . つ ま り , 等 価 拡 散 率 SF/U=1 の
Walsh sequence
特 性 か ら BER を 改 善 す る た め に は ,U を 大 幅 に 小 さ く
SF=64
して等価拡散率を大きくし伝送レートを落とさなけれ
U=1~64
Long PN sequence
Frequency-selective
ば な ら な い .一 方 ,MMSE 重 み type II を 用 い る マ ル チ
タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散 で は , U=1
か ら コ ー ド 多 重 数 を 増 や し て い く と BER 特 性 が 緩 や
block Rayleigh
か に 増 加 し , U=64 に 近 づ く に つ れ て BER 特 性 の 劣 化
Power delay
L=16-path uniform
が急峻になる.つまり,等価拡散率を少し大きくして
profile
power delay profile
伝 送 レ ー ト を 少 し 落 と す だ け で 等 価 拡 散 率 SF/U=1 の
FFT block size
SF
特 性 か ら BER を 大 幅 に 改 善 で き る . QPSK の 場 合 の
Ideal
BER=10 -4 を 満 た す 所 要 E b /N 0 =15dB を 達 成 で き る コ ー
Channel
estimation
ド 多 重 数 を 比 較 す る と , 従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE
図 3 に MMSE 重 み type II を 用 い る マ ル チ タ ッ プ 周
お よ び MMSE 重 み type I を 用 い る 1 タ ッ プ 周 波 数 領 域
波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化・逆 拡 散 の 平 均 BER 特 性 を 示
ジ ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散 で は U=20 で あ る の に 対 し ,
す . こ こ で , 横 軸 E b /N 0 (=(E s /N 0 )(SF+N g )/log 2 M) は 1 ビ
MMSE 重 み type II を 用 い る マ ル チ タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ
ットあたりの平均信号エネルギー対雑音電力スペクト
ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散 で は U=55 と な り , 2.75 倍 の レ
ル 密 度 で あ る (M は 変 調 レ ベ ル で あ る ) . ま た , 比 較 の
ー ト で 伝 送 で き る . 16QAM の 場 合 は , BER=10 -4 を 満
た め 従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE の 平 均 BER 特 性 ,
た す 所 要 E b /N 0 =20dB で 比 較 す る と ,約 7 倍 の レ ー ト で
MMSE 重 み type I を 用 い る 1 タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ ョ イ
伝送できる.
ン ト 等 化・逆 拡 散 の 平 均 BER 特 性 お よ び 理 論 的 下 界 [9]
MMSE 重 み type II を 用 い れ ば , U<64 の 場 合 , 従 来
の 特 性 も 示 す . MMSE 重 み type I を 用 い る 1 タ ッ プ 周
の 1 タ ッ プ MMSE-FDE に 比 べ て BER 特 性 を 大 幅 に 改
波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散 で は ICI を 十 分 に 低
善 で き る .し か し ,U×U 逆 行 列 演 算 が 必 要 と な る た め
減 で き な い た め , 従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE に 比 べ
U が 大 き く な る に つ れ て 演 算 量 は 増 加 す る .16QAM の
て BER の 改 善 効 果 は U=4 ま た は 16 の 時 に わ ず か に 得
場 合 の BER=10 -4 を 満 た す 所 要 E b /N 0 =20dB で 比 較 す る
ら れ る 程 度 で あ る .一 方 ,MMSE 重 み type II を 用 い る
と ,MMSE 重 み type-2 を 用 い る マ ル チ タ ッ プ 周 波 数 領
マ ル チ タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化・逆 拡 散 で は ,
域 ジ ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散 は , 演 算 量 は 約 300 倍 と 非
U=4 お よ び 16 の 時 ,従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE お よ
常に大きくなってしまうものの,従来の 1 タップ
び MMSE 重 み type I を 用 い る 1 タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ ョ
MMSE-FDE に 比 べ て 約 7 倍 の レ ー ト で 伝 送 す る こ と が
1.0E-01
可能である.
One-tap MMSE-FDE
One-tap joint FDE & Despreading
Multi-tap joint FDE & Despreading
Lower bound
5. ま と め
本論文では,すべての周波数における等化誤差を考
1.0E-02
MMSE 重 み type II を 用 い る マ ル チ タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ
ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散 を マ ル チ コ ー ド DS-CDMA に 適
用 し た 時 の 平 均 BER 特 性 を 計 算 機 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
に よ り 明 ら か に し た .MMSE 重 み type II を 用 い る マ ル
Average BER
慮 し た MMSE 等 化 重 み (MMSE 重 み type II) を 導 出 し ,
チタップ周波数領域ジョイント等化・逆拡散では,
U=4
U=16
U=64
1.0E-03
1.0E-04
U<64 の 時 , 演 算 量 の 増 加 と 引 き 換 え に 従 来 の 1 タ ッ
プ MMSE-FDE お よ び 1 タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト
等 化・逆 拡 散 に 比 べ て 大 幅 に BER 特 性 を 改 善 で き る こ
1.0E-05
5
と を 示 し た .MMSE 重 み type II を 用 い る 周 波 数 領 域 ジ
QPSK
SF=64
Ng=16
10
15
20
Average received Eb/N0 (dB)
ョイント等化・逆拡散では,伝送レートをわずかに落
(a) QPSK
と す だ け で 等 価 拡 散 率 SF/U=1 の 特 性 か ら BER を 大 幅
-4
に 改 善 で き る た め , BER=10 を 満 た す 所 要 E b /N 0 が 同
1.0E-01
One-tap MMSE-FDE
One-tap joint FDE & Despreading
Multi-tap joint FDE & Despreading
Lower bound
じ 場 合 , 従 来 の 1 タ ッ プ MMSE-FDE お よ び MMSE 重
み type I を 用 い る 1 タ ッ プ 周 波 数 領 域 ジ ョ イ ン ト 等
化・逆拡散に比べて伝送レートを向上させることがで
1.0E-02
文
献
[1] W. C., Jakes Jr., Ed,. Microwave mobile communications,
Wiley, New York, 1974.
[2] J. G. Proakis, Digital communications, 4 t h ed.,
McGraw-Hill, 2001.
[3] D. Falconer, S. L. Ariyavisitakul, A. Benyamin- Seeyar B.
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broadband wireless systems,” IEEE Commun. Mag., Vol.
40, No. 4, pp. 58-66. Apr. 2002.
[4] F. Adachi, M. Sawahashi, and H. Suda, “Wideband
DS-CDMA for next generation mobile communications
systems,” IEEE Trans. Mag., Vol. 36, No.9, pp. 56-69, Sept.
1998.
[5] F. Adachi, D. Garg, S. Takaoka, and K. Takeda,
“Broadband CDMA techniques,” Special Issue on
Modulation, Coding and Signal Processing, IEEE Wireless
Commun. Mag., Vol. 12, No. 2, pp. 8-18, Apr. 2005.
[6] K. Takeda, K. Ishihara, and F. Adachi, “Frequency-domain
ICI cancellation with MMSE equalization for DS-CDMA
downlink,” IEICE Trans. Commun., Vol. E89-B No. 12, pp.
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[7] T. Yamamoto, K. Takeda, and F. Adachi, “Joint
frequency-domain equalization and despreading for
DS-CDMA cyclic delay transmit diversity,” The 14th
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Oct. 2008.
[8] S. Haykin, Adaptive Filter Theory, 4th ed., Prentice Hall,
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[9] F. Adachi and K. Takeda, “Bit error rate analysis of
DS-CDMA with joint frequency-domain equalization and
antenna diversity combining,” IEICE Trans. Commun., Vol.
E87-B, No. 10, pp.2991-3002, Oct. 2004.
Average BER
きる.演算量の問題が残っているが,これは今後の重
要な検討課題である.
25
U=4
U=16
U=64
1.0E-03
1.0E-04
1.0E-05
10
16QAM
SF=64
Ng=16
15
20
25
Average received Eb/N0 (dB)
30
(b) 16QAM
図 3
MMSE 重 み type-2 を 用 い る マ ル チ タ ッ プ 周 波 数
領 域 ジ ョ イ ン ト 等 化 ・ 逆 拡 散 の 平 均 BER 特 性
Average received Eb/N0 at average BER=10-4 (dB)
20
One-tap MMSE-FDE
One-tap joint FDE & Despreading
Multi-tap joint FDE & Despreading
18
16
14
12
QPSK
SF=64
Ng=16
10
0
64
48
32
16
Code multiplexing order U
(a) QPSK
Average received Eb/N0 at average BER=10-4 (dB)
28
One-tap MMSE-FDE
One-tap joint FDE & Despreading
Multi-tap joint FDE & Despreading
26
24
22
20
18
16
14
16QAM
SF=64
Ng=16
0
32
48
16
Code multiplexing order U
(b) 16QAM
図 4
コード多重数の影響
64